特許第6049324号(P6049324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049324
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20161212BHJP
   F24F 11/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F24F11/02 101L
   F24F11/04 F
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-140845(P2012-140845)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-5969(P2014-5969A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(74)【代理人】
【識別番号】100166084
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 要平
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−053094(JP,A)
【文献】 特開平08−178385(JP,A)
【文献】 特開平08−271016(JP,A)
【文献】 特開2008−101875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内のうちの空調対象空間を空調する空気調和機であって、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、前記圧縮機から吐出された冷媒の流路を切り替える流路切り替え手段、及び、冷媒と空気との間で熱交換する室外熱交換器が、少なくとも搭載された室外ユニットと、
冷媒を減圧する絞り装置、冷媒と空気との間で熱交換する室内熱交換器、及び、前記室内熱交換器により熱交換された空気を前記空調対象空間へ送風する室内機ファンが、少なくとも搭載された室内ユニットと、
前記室内の空気温度を検知する室内温度センサと、
暖房運転中に冷媒の流路を切り替えて、前記圧縮機からの吐出冷媒を前記室外熱交換器に流し、前記室外熱交換器に付着した霜を溶かす除霜運転を実行する制御装置と、
前記室内ユニットから前記室内に送風された空気を、前記室内のうち前記空調対象空間以外の空間又は室外へ搬送するエア搬送ファンと、
を備え、
前記制御装置は、
前記除霜運転実行中に、前記室内機ファン及び前記エア搬送ファンを駆動させ
前記除霜運転実行中において、前記室内温度センサにより検出された室内温度が、前記暖房運転における温度の目標値より高い場合、
前記室内温度と前記目標値との差が大きいほど、前記室内機ファンの風量を増加させる
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記暖房運転の運転時間が所定時間を経過し、
前記室内温度センサにより検出された室内温度が、前記暖房運転における温度の目標値より高い場合、前記除霜運転を実行する
ことを特徴とする請求項1記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内ユニットは、前記室内の温度を二次元的に検知する赤外線センサを有し、
前記制御装置は、
前記赤外線センサの検知結果に基づき、前記室内に存在する人を検知し、該人が存在する位置を含む所定範囲を前記空調対象空間として設定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒を循環させる冷媒回路を有する空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機においては、例えば、「暖房運転中に暖房霜取動作判定手段が除霜開始条件と判定すると、室外機制御手段が前記冷房/暖房切り替え手段を冷房運転に切り替えて暖房霜取り運転を開始すると同時に、その情報を通信手段を通じて室内機制御手段が受信し、室内機制御手段は室内機風向設定手段により吹き出し口の風向を吸い込み口へ向くように設定し、室内機ファンモータ動作手段により室内機のファンモータを継続動作させる手段とを備えたもの」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−190548号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気調和機で暖房運転を行う際、蒸発器として機能する室外熱交換器に、室外の空気中の水分が付着して霜を形成する。室外熱交換器に付着した霜を取り除くために、暖房運転中に冷媒の流路を切り替えて、圧縮機から吐出された高温の冷媒を室外熱交換器に流し、室外熱交換器に付着した霜を溶かす除霜運転(以下、霜取り制御ともいう。)を実行する。このとき、室内熱交換器に低温の冷媒が流れる。
【0005】
従来の空気調和機においては、室内温度の低下を防ぐため、室内熱交換器に室内の空気を供給する室内機ファンを停止した状態で霜取り制御が行われている。
しかしながら、霜取り制御時、室内機ファンが停止しているため、室内空気からの採熱量が少なく、霜取りに必要な熱量を得るために時間がかかり、霜取り制御に時間がかかる、という問題点があった。
一方、霜取り制御時に室内機ファンを駆動すると、凝縮器として機能する室内熱交換器と熱交換された冷気が室内に送風される。このため、室内温度が低下し、快適性が損なわれると共に、暖房した空間を冷却することになり省エネルギー化を図ることができない、という問題点があった。
【0006】
上記特許文献1の技術では、除霜運転時に吹き出し口の風向を吸い込み口へ向くように設定して室内ファンを継続動作させることで、除霜運転中の風が使用者にあたることがなく不快感を感じさせないようにしている。しかし、吹き出し口からの冷気が吸い込み口から吸い込まれるため、室内空気からの採熱量が少なく、霜取り制御に時間がかかる、という問題点があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、除霜運転の時間を短縮することができ、暖房運転が可能な時間を増加することができる空気調和機を得るものである。
また、除霜運転時の快適性の低減を抑制することができる空気調和機を得るものである。
また、省エネルギー化を図ることができる空気調和機を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気調和機は、室内のうちの空調対象空間を空調する空気調和機であって、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機、前記圧縮機から吐出された冷媒の流路を切り替える流路切り替え手段、及び、冷媒と空気との間で熱交換する室外熱交換器が、少なくとも搭載された室外ユニットと、冷媒を減圧する絞り装置、冷媒と空気との間で熱交換する室内熱交換器、及び、前記室内熱交換器により熱交換された空気を前記空調対象空間へ送風する室内機ファンが、少なくとも搭載された室内ユニットと、前記室内の空気温度を検知する室内温度センサと、暖房運転中に冷媒の流路を切り替えて、前記圧縮機からの吐出冷媒を前記室外熱交換器に流し、前記室外熱交換器に付着した霜を溶かす除霜運転を実行する制御装置と、前記室内ユニットから前記室内に送風された空気を、前記室内のうち前記空調対象空間以外の空間又は室外へ搬送するエア搬送ファンと、を備え、前記制御装置は、前記除霜運転実行中に、前記室内機ファン及び前記エア搬送ファンを駆動させ、前記除霜運転実行中において、前記室内温度センサにより検出された室内温度が、前記暖房運転における温度の目標値より高い場合、前記室内温度と前記目標値との差が大きいほど、前記室内機ファンの風量を増加させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、除霜運転実行中に室内機ファン及びエア搬送ファンを駆動させるので、除霜運転の時間を短縮することができ、暖房運転が可能な時間を増加することができる。
また、除霜運転実行中における空調対象空間の温度低下を抑制でき、除霜運転時の快適性の低減を抑制することができる。
また、除霜運転実行中における空調対象空間の温度低下を抑制できるので、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る空気調和機の制御に関するブロック図である。
図3】実施の形態1に係る室内ユニットおよびエア搬送ファンの配置の一例を示す図である。
図4図3における空調対象空間と非空調対象空間とを説明する図である。
図5】実施の形態1に係るエア搬送ファンの動作を説明する図である。
図6】実施の形態1に係るエア搬送ファンの他の配置例を示す図である。
図7】本発明の実施の形態1に係る霜取り制御の開始手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態1に係る霜取り制御の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態1における空気調和機は、室外ユニット10と、室内ユニット20と、この室外ユニット10と室内ユニット20とを接続する液冷媒配管30およびガス冷媒配管40と、エア搬送ファン50と、リモコン21を備えている。
【0012】
室外ユニット10は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機1を備えている。圧縮機1の吐出側には、冷媒の流路を切り替える流路切り替え手段である四方弁2、室外熱交換器3が順次配管で接続され、冷媒回路の一部を構成している。圧縮機1の吸入側には、アキュムレータ4、および、四方弁2が順次配管で接続されている。四方弁2はガス冷媒配管40と接続されている。室外熱交換器3の近傍には室外機ファン5が設けられている。
【0013】
室外ユニット10には、高圧圧力センサ14、低圧圧力センサ19、液配管温度センサ15が設けられている。高圧圧力センサ14は圧縮機1の吐出側に設けられ、冷媒圧力を計測する。低圧圧力センサ19は圧縮機1の吸入側に設けられ、冷媒圧力を計測する。液配管温度センサ15は液冷媒配管30に設けられ、液冷媒配管30内の冷媒温度を計測する。なお、液配管温度センサ15の設置位置は、液冷媒配管30内の冷媒温度を計測できる位置であればよい。例えば室内ユニット20内の液冷媒配管30に設けても良い。
【0014】
圧縮機1は、運転容量を可変することが可能な圧縮機であり、例えば、インバータにより制御されるモータによって駆動される容積式圧縮機から構成されている。
室外熱交換器3は、例えば伝熱管と多数のフィンにより構成されたフィン&チューブ型熱交換器により構成され、冷房運転時には凝縮器として作用し、暖房運転時には蒸発器として作用する。
室外機ファン5は、ファンモータ等により駆動され、モータ回転数を変化させることにより風量を調整し、送風量を調整することが可能になっている。
【0015】
室内ユニット20は、室内熱交換器7、室内絞り装置6を備えている。室内ユニット20に接続される液冷媒配管30からガス冷媒配管40へと順に、室内絞り装置6と室内熱交換器7とが直列に接続され、冷媒回路の一部を構成している。室内熱交換器7の近傍には室内機ファン8が設けられている。
【0016】
室内ユニット20には、室内ガス管温度センサ17、室内液管温度センサ18が設けられている。室内ガス管温度センサ17はガス冷媒配管40に設けられ、ガス冷媒配管40内の冷媒温度を計測する。室内液管温度センサ18は室内絞り装置6と室内熱交換器7との間に設けられ、冷媒温度を計測する。なお、室内ガス管温度センサ17の設置位置は、ガス冷媒配管40内の冷媒温度を計測できる位置であればよい。例えば室外ユニット10内のガス冷媒配管40に設けても良い。
【0017】
室内絞り装置6は、例えば電子膨張弁により構成され、開度が設定されることで冷媒流量を調整し、減圧弁や膨張弁として機能して冷媒を減圧して膨張させるものである。
室内熱交換器7は、例えば伝熱管と多数のフィンにより構成されたフィン&チューブ型熱交換器により構成され、冷房運転時には蒸発器として作用し、暖房運転時には凝縮器として作用する。
室内機ファン8は、室内熱交換器7により熱交換された空気を、室内のうちの空調対象空間(後述)へ送風する。また、室内機ファン8は、ファンモータ等により駆動され、モータ回転数を変化させることにより風量を調整し、送風量を調整することが可能になっている。室内機ファン8から送風された空気は、室内ユニット20に設けられた風向板等により風向が設定される。
【0018】
リモコン21は、室内に設置され、例えば使用者からの操作入力に応じて、運転モード、室内の設定温度、設定湿度等の情報を制御装置100(後述)に送信する。リモコン21には、室内温度センサ11が設けられている。室内温度センサ11は、当該空気調和機が空調する室内の空気温度(以下、室内温度という)を計測する。なお、室内温度センサ11の設置位置はこれに限るものではなく、室内空気の温度を計測できる位置であればよい。例えば、室内温度センサ11を室内ユニット20内に設け、室内熱交換器7が冷媒と熱交換する室内空気の温度を計測するようにしても良い。
【0019】
エア搬送ファン50は、室内ユニット20から室内に送風された空気を、室内のうち空調対象空間以外の空間又は室外(非空調対象空間)へ搬送する。また、エア搬送ファン50は、例えば風向板等が設けられ、空気の搬送方向を上下・左右に設定可能に構成されている。
【0020】
(制御系)
図2は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の制御に関するブロック図である。
図2において、制御装置100は、室外制御器101と室内制御器102とエア搬送ファン制御器103とを備えている。
室外制御器101は室外ユニット10内に配置され、室内制御器102は室内ユニット20内に配置され、エア搬送ファン制御器103はエア搬送ファン50に配置されている。室外制御器101、室内制御器102、およびエア搬送ファン制御器103は、例えばマイクロコンピュータで構成され、相互に通信することで各種データ等を送受信する。
【0021】
室外制御器101は、高圧圧力センサ14、低圧圧力センサ19、液配管温度センサ15による計測情報が入力される。室外制御器101は、各センサから入力された計測情報や室内制御器102およびエア搬送ファン制御器103から受信した各種データ、リモコン21から使用者により指示された運転内容(運転モード、設定温度等)などに基づいて、圧縮機1の運転周波数F、四方弁2の流路の切り替え、室外機ファン5の回転数(室外熱交換器3の熱交換容量AK)などを制御する。
また、室外制御器101は、後述する動作により、暖房運転中に冷媒の流路を切り替えて、圧縮機1からの吐出冷媒を室外熱交換器3に流し、室外熱交換器3に付着した霜を溶かす除霜運転を実行する。
【0022】
室内制御器102は、室内ガス管温度センサ17、室内液管温度センサ18による計測情報が入力される。また室内制御器102は、リモコン21を介して、室内温度センサ11による計測情報が入力される。室内制御器102は、各センサから入力された計測情報や室外制御器101から受信した各種データ、リモコン21から使用者により指示された運転内容(運転モード、設定温度等)などに基づいて、室内絞り装置6の開度、室内機ファン8の回転数(室内熱交換器7の熱交換容量)などを制御する。
【0023】
エア搬送ファン制御器103は、室外制御器101からの指示に基づいて、エア搬送ファン50の駆動の開始/停止、回転数、風向などを制御する。
【0024】
なお、本実施の形態では、室外制御器101、室内制御器102、およびエア搬送ファン制御器103を設け、相互に通信する構成について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、1台の制御装置100により構成しても良い。
なお、以下の説明において、室外制御器101、室内制御器102、エア搬送ファン制御器103を区別せずに制御装置100という。
【0025】
(運転動作)
次に、空気調和機の運転動作について説明する。
(冷房運転)
まず、冷房運転の動作について説明する。
四方弁2は、図1の実線方向に接続される。この場合、冷媒の流れは以下のようになる。
圧縮機1を駆動すると、高温、高圧のガス冷媒が圧縮機1から吐出され、四方弁2を介し室外熱交換器3へ流入し、室外熱交換器3で周囲室外空気と熱交換し、凝縮・液化し、高圧低温の冷媒となる。
室外熱交換器3を流出した高圧低温の液冷媒は、液冷媒配管30に供給される。液冷媒配管30を通った液冷媒は、室内ユニット20内に入り、室内絞り装置6で低圧に絞られ低圧低乾き度の気液二相冷媒となり、室内熱交換器7で周囲室内空気と熱交換し、蒸発・気化して冷房を行う。室内熱交換器7を流出したガス冷媒は、ガス冷媒配管40を導通し、四方弁2、アキュムレータ4を通り圧縮機1に吸入される。
このような冷房運転により、室内温度は徐々に低下して目標温度に近づくこととなる。
【0026】
(暖房運転)
次に、暖房運転の動作について説明する。
四方弁2は、図1の点線方向に接続される。
圧縮機1を駆動すると、高温、高圧のガス冷媒が圧縮機1から吐出され、四方弁2を介してガス冷媒配管40を導通し、室内熱交換器7へ流入する。室内熱交換器7へ流入した高温の冷媒は、室内熱交換器7で周囲室内温度と熱交換し、凝縮・液化して暖房を行う。室内熱交換器7を流出した冷媒は室内絞り装置6で低圧に絞られ、低圧二相状態または液相状態となり、液冷媒配管30を導通し、室外熱交換器3へ流入する。室外熱交換器3に流入した冷媒は、室外熱交換器3で周囲室外空気と熱交換して蒸発・気化する。室外熱交換器3を流出した冷媒は、四方弁2、アキュムレータ4を介し圧縮機1に吸入される。
このような暖房運転により、室内温度は徐々に上昇して目標温度に近づくこととなる。
【0027】
(除霜運転)
次に、除霜運転の動作について説明する。
上述した暖房運転を実施すると、蒸発器として機能する室外熱交換器3には低温の冷媒が流通する。このとき、室外熱交換器3の表面に、室外の空気に含まれる水分が付着して霜を形成する。暖房運転が継続すると室外熱交換器3は霜で覆われ、通風抵抗が増加して風量が低下すると共に、冷媒と空気の間の熱抵抗が増加して冷却能力が低下する。このため、制御装置100は、暖房運転中に冷媒の流路を切り替えて、圧縮機1からの吐出冷媒を室外熱交換器3に流し、室外熱交換器3に付着した霜を溶かす除霜運転(以下、霜取り制御ともいう)を実行する。
【0028】
除霜運転において四方弁2は、図1の実線方向に接続される。この場合、冷媒の流れは以下のようになる。
圧縮機1を吐出した高温、高圧のガス冷媒が、四方弁2を介し室外熱交換器3へ流入し、室外熱交換器3に付着した霜と熱交換し、凝縮・液化し、高圧低温の冷媒となる。この時、霜は熱を奪い溶けていき、室外熱交換器3から霜が取り除かれる。
室外熱交換器3を流出した高圧低温の液冷媒は、液冷媒配管30を通って室内ユニット20内に入り、室内絞り装置6で低圧に絞られ低圧低乾き度の気液二相冷媒となり、室内熱交換器7で周囲室内空気と熱交換し、蒸発・気化する。室内熱交換器7を流出したガス冷媒は、ガス冷媒配管40を導通し、四方弁2、アキュムレータ4を通り圧縮機1に吸入される。
除霜運転を終了すると、四方弁2は、図1の点線方向に接続され、暖房運転に復帰する。
【0029】
上述した除霜運転実行中において、制御装置100は、室内機ファン8を駆動させて、室内空気を室内熱交換器7に供給する。
これにより、室内熱交換器7の熱交換を促進させて、室内からの採熱量を増加させ、霜取り時間を短縮させる。
ここで、霜を溶かすために加えられる熱を、圧縮機1の入力、ガス冷媒配管40からの採熱、および室内熱交換器7での採熱とし、霜取りに必要な熱量を仮に、10000kJとする。
従来の技術のように除霜運転中に室内機ファン8を停止させた場合、圧縮機1の熱量を10kW、ガス冷媒配管40からの採熱を1000kJ、室内熱交換器7での採熱を1kWとすると、霜取りに必要な熱量である10000kJの熱を得るまで約14分かかる。
一方、本実施の形態1における霜取り制御では、室内機ファン8を駆動させるため室内熱交換器7での採熱量が増える。室内熱交換器7での採熱量が4kW得られるとすると、霜取りに必要な熱量である10000kJ得られるまでの時間は約11分となり、室内機ファン8を停止させた場合と比較して、霜取り制御の時間が3分短縮される。
【0030】
上記のように室内機ファン8を駆動させた場合、室内熱交換器7で熱交換され温度が低下した空気が、室内ユニット20から吹き出されることとなる。
そこで、制御装置100は、除霜運転実行中にエア搬送ファン50を駆動させて、室内ユニット20から室内に送風された空気を、室内のうち空調対象空間以外の空間又は室外(非空調対象空間)へ搬送する。
【0031】
ここで、空調対象空間と非空調対象空間とについて説明する。
図3は、実施の形態1に係る室内ユニットおよびエア搬送ファンの配置の一例を示す図である。
図4は、図3における空調対象空間と非空調対象空間とを説明する図である。
図3に例示するように、室内200には、机201やOA機器等が配置されている空間、通路として利用する空間やキャビネット等を配置する空間等がある。
机201が配置されている領域は、在場する人が快適に感じるように空調を制御する必要がある。また、OA機器等は発熱源でもあるので適切な空調を行う必要がある。
一方、通路やキャビネット等が配置されている領域等は、人が滞在する時間が短いため、人が不快に感じない程度に空調を制御すれば良い。
このようなことから、室内200のうち、空調が必要な領域であるか否かは建物の構造やレイアウトに依存する。
本実施の形態1における制御装置100には、予め、空調が必要な領域である空調対象空間の情報と、空調が必要ではない非空調対象空間の情報と、室内ユニット20及びエア搬送ファン50の設置位置の情報とをフロア情報として記憶される。
例えば図4に示すように、机201が配置された領域を空調対象空間とし、通路202の領域を非空調対象空間とし、各領域の座標情報と、室内ユニット20及びエア搬送ファン50の設置位置の座標情報がフロア情報として記憶される。
【0032】
図5は、実施の形態1に係るエア搬送ファンの動作を説明する図である。図5図3のA−A断面を模式的に示している。また、図5(a)は冷房運転及び暖房運転時における室内に送風された空気の流れを示し、図5(b)は除霜運転時における室内に送風された空気の流れを示している。
冷房運転や暖房運転時には、制御装置100は、フロア情報に基づき、室内ユニット20に対する空調対象空間の方向を判断し、室内ユニット20の風向板等により送風方向が空調対象空間となるように設定する。これにより、図5(a)に示すように、室内ユニット20から室内に送風された空気が空調対象空間に到達して空調される。
一方、除霜運転時には、制御装置100は、エア搬送ファン50を駆動する。これにより、図5(b)に示すように、室内ユニット20から室内に送風された空気が非空調対象空間へ搬送され、空調対象空間の温度低下を抑制する。
なお、除霜運転時には、制御装置100は、フロア情報に基づき、室内ユニット20に対する非空調対象空間の方向と、エア搬送ファン50に対する室内ユニット20及び非空調対象空間の方向を判断し、エア搬送ファン50の風向板等により送風方向が非空調対象空間となるように設定するようにしても良い。
【0033】
なお、上記の説明では、エア搬送ファン50は、室内ユニット20から室内に送風された空気を室内200のうちの非空調対象空間に搬送する場合を説明したが、室外に搬送するようにしても良い。
例えば図6(a)に示すように、室外に開口する壁面にエア搬送ファン50を設ける。そして、図6(b)に示すように、エア搬送ファン50を駆動することで、除霜運転時に室内ユニット20から室内に送風された空気を室外に搬送する。このような構成においても、空調対象空間の温度低下を抑制することができる。
【0034】
なお、上記の説明では、制御装置100に、予め、フロア情報を記憶させる場合を説明したが、室内ユニット20に、室内の温度を二次元的に検知する赤外線センサを設け、制御装置100は、この赤外線センサの検知結果に基づき、室内に存在する人を検知して、人が存在する位置を含む所定範囲を空調対象空間として設定するようにしても良い。
例えば、室内ユニット20に、赤外線を左右の所定範囲で室内を広範囲に監視できる赤外線センサ(輻射センサ)を設ける。そして、例えば、基準温度を34℃とし、この基準温度を予め内部に記憶しておく。この状態で、赤外線センサは左右の所定の範囲(例えば150°)で室内を一定の速度で順次角度を変えながら温度が上記基準温度以上の場所をサーチして監視する。そして、予め定めた閾値より強い赤外線が検出されたら、制御装置100はその方角の位置に人が存在していると判断し、この方角を記憶する。そして人が存在する方向から所定の範囲を空調対象空間として設定し、室内のその他の領域を非空調対象空間として設定する。
そして、上述したように、除霜運転時にエア搬送ファン50を駆動し、その搬送方向を非空調対象空間に向けることで、室内ユニット20から室内に送風された空気を非空調対象空間に搬送する。
【0035】
(除霜運転の開始手順)
次に、除霜運転を開始する際の動作について説明する。
図7は、本発明の実施の形態1に係る霜取り制御の開始手順を示すフローチャートである。
以下、図7の各ステップに基づき説明する。
STEP1では、制御装置100は、暖房運転における圧縮機1の運転時間が、所定時間tを経過したか否かを判断する。暖房運転の時間が所定時間tを経過した場合、STEP2へ進む。
【0036】
STEP2では、制御装置100は、室内のリモコン21に設けられた室内温度センサ11の検知結果から、室内温度を取得する。そして、室内温度が暖房運転における温度の目標値(目標温度)より高いか否かを判断する。
【0037】
室内温度が目標温度より高い場合はSTEP3へ進み、制御装置100は、上述した霜取り制御を実行する。すなわち、暖房運転の時間が所定時間tを経過し、室内温度が目標温度より高い場合には霜取り制御を開始する。
一方、室内温度が目標温度以下であればSTEP4へ進む。
【0038】
STEP4では、制御装置100は、液配管温度センサ15の検知結果から液冷媒配管30の温度を取得する。そして、液冷媒配管30の温度が所定の値T℃以下か否かを判断する。
液冷媒配管30の温度が所定の値T℃より高い場合は、STEP2へ戻り上記動作を繰り返す。
一方、液冷媒配管30の温度が所定の値T℃以下の場合は、STEP3へ進み、上述した霜取り制御を実行する。すなわち、暖房運転の時間が所定時間tを経過し、液冷媒配管30の温度が所定の値T℃以下の場合には、室外熱交換器3に霜が付いていると判断して霜取り制御を開始する。
【0039】
このように、制御装置100は、暖房運転の運転時間が所定時間tを経過し、室内温度センサ11により検出された室内温度が、暖房運転における目標温度より高い場合、除霜運転を実行する。
このため、室内温度が目標温度より高い場合、室内温度が多少低下しても目標温度より高ければ快適性は損なわれないため、液配管温度センサ15の温度が所定温度T℃以下となる前に、霜取り制御を実施する。
従来の制御では、液配管温度センサ15の温度が所定の値となるまで(霜が十分につくまで)霜取り制御を行わないため、霜が多く付着して霜取り時間が長くなるが、本実施の形態1の制御では、液配管温度センサ15の温度が所定温度T℃以下となる前に、霜取り制御を実施するので、室外熱交換器3に霜がついている時間が少なくなり、高い暖房能力を得ることができる。
【0040】
(除霜運転の風量制御)
次に、除霜運転時の室内機ファン8の風量の制御について説明する。
図8は、本発明の実施の形態1に係る霜取り制御の動作を示すフローチャートである。
以下、図8の各ステップに基づき説明する。
STEP11では、制御装置100は、圧縮機1の運転周波数を所定の運転周波数Fに設定する。また、制御装置100は、室内機ファン8を所定の回転数に設定する。
【0041】
STEP12では、制御装置100は、室内のリモコン21に設けられた室内温度センサ11の検知結果から、室内温度を取得する。
そして、室内温度が暖房運転における温度の目標値(目標温度)より高い場合には、室内温度と目標値との差が大きいほど、室内機ファン8の回転数を増速させて風量を増加させる。これにより、室内熱交換器7での室内空気からの採熱量を増やし、霜取り時間をさらに短くすることができる。
一方、室内温度が暖房運転における目標温度より低い場合には、室内機ファン8の回転数を減速させて風量を減少させて、室内温度の低下を抑制する。
【0042】
STEP13では、制御装置100は、エア搬送ファン50が作動しているか否かを判断し、作動していればSTEP14へ進み、エア搬送ファン50を作動させたのち、STEP15へ進む。
STEP15では、制御装置100は、液冷媒配管30の温度を検知し、所定の温度以上であればSTEP16へ進み、四方弁2を切り替えて暖房運転に復帰して、霜取り制御を終了する。
一方、液冷媒配管30の温度が所定の温度以上でない場合は、STEP12へ戻り上記の動作を繰り返す。
【0043】
以上のように本実施の形態1においては、除霜運転実行中に、室内機ファン8及びエア搬送ファン50を駆動させ、室内ユニット20から室内に送風された空気を、室内のうち空調対象空間以外の空間又は室外へ搬送する。
このため、除霜運転中における室内熱交換器7の採熱量を増加することができ、除霜運転の時間を短縮することができる。よって、暖房運転が可能な時間を増加することができる。
また、除霜運転実行中における空調対象空間の温度低下を抑制でき、除霜運転時の快適性の低減を抑制することができる。
また、除霜運転実行中における空調対象空間の温度低下を抑制できるので、省エネルギー化を図ることができる。
また、室内温度が目標温度より高い場合に、室内空気の熱を霜取りに利用することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0044】
なお、本実施の形態1では、室外ユニット10および室内ユニット20がそれぞれ1台の場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、室外ユニット10を複数台設けても良いし、室外ユニット10と並列に複数台の室内ユニット20を接続するようにしても良い。このような構成においても、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 圧縮機、2 四方弁、3 室外熱交換器、4 アキュムレータ、5 室外機ファン、6 室内絞り装置、7 室内熱交換器、8 室内機ファン、10 室外ユニット、11 室内温度センサ、14 高圧圧力センサ、15 液配管温度センサ、17 室内ガス管温度センサ、18 室内液管温度センサ、19 低圧圧力センサ、20 室内ユニット、21 リモコン、30 液冷媒配管、40 ガス冷媒配管、50 エア搬送ファン、100 制御装置、101 制御装置、101 室外制御器、102 室内制御器、103 エア搬送ファン制御器、200 室内、201 机、202 通路。
図1
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図7
図8