特許第6049411号(P6049411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049411地下水浄化処理装置の運転支援システム及び運転支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049411
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】地下水浄化処理装置の運転支援システム及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   C02F1/00 D
   C02F1/00 V
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-248350(P2012-248350)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2014-94362(P2014-94362A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年2月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】株式会社ウェルシィ
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 智
【審査官】 金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−105905(JP,A)
【文献】 特開2005−226277(JP,A)
【文献】 特開平05−171632(JP,A)
【文献】 特開2006−026572(JP,A)
【文献】 特開2006−341214(JP,A)
【文献】 特表2004−522561(JP,A)
【文献】 特開2002−113459(JP,A)
【文献】 特開2007−090242(JP,A)
【文献】 特開2006−289300(JP,A)
【文献】 実開昭62−035690(JP,U)
【文献】 特開昭60−016626(JP,A)
【文献】 特開2011−256670(JP,A)
【文献】 特開2011−256671(JP,A)
【文献】 特開2014−055441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
E03B 3/08、3/15
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸を水源に有する地下水浄化処理装置の運転支援システムであって、
揚水ポンプにより井戸から揚水した地下水を浄化する地下水浄化処理装置と、前記井戸の地下水位を計測する水位計測器と、演算装置とを含み、
該演算装置は、前記揚水ポンプの稼動状態と、前記水位計測器から得られる前記井戸の地下水位データとを利用して、前記井戸の地下水位の上昇変化率を算出し、該地下水位の上昇変化率に基づいて、前記地下水浄化処理装置の運転支援に必要な運転支援データを算出することを特徴とする地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項2】
前記演算装置は、前記地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出することを特徴とする請求項1記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項3】
前記演算装置は、前記地下水位の上昇変化率と、予め設定されている基準変化率との比較結果に基づいて、前記運転支援データを算出することを特徴とする請求項1又は2記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記基準変化率として、前記地下水浄化処理装置の利用開始初期の前記地下水位の上昇変化率を用いることを特徴とする請求項3記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項5】
前記演算装置は、前記運転支援データに応じて、前記井戸のメンテナンスの要否について発報するものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項6】
前記井戸を洗浄する洗浄手段を含み、
前記演算装置は、前記運転支援データに応じて、前記地下水浄化処理装置の運転を停止させると共に、前記洗浄手段に前記井戸を洗浄させるものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項7】
前記洗浄手段は、前記井戸に水を供給する給水手段を備え、該給水手段による水の供給と、前記揚水ポンプによる揚水とを繰り返して、前記井戸を洗浄するものであることを特徴とする請求項6記載の地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【請求項8】
井戸を水源に有する地下水浄化処理装置の運転支援方法であって、
地下水浄化処理装置が揚水している井戸の地下水位を計測し、該計測結果と、前記地下水浄化処理装置の揚水ポンプの稼動状態とを利用して、前記井戸の地下水位の上昇変化率を算出し、該地下水位の上昇変化率に基づいて、前記地下水浄化処理装置の運転支援を行うことを特徴とする地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項9】
前記地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出することを特徴とする請求項8記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項10】
前記地下水位の上昇変化率と、予め設定した基準変化率との比較結果に基づいて、運転支援を行うことを特徴とする請求項8又は9記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項11】
前記基準変化率に、前記地下水浄化処理装置の利用開始初期の前記地下水位の上昇変化率を用いることを特徴とする請求項10記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項12】
前記地下水浄化処理装置の運転支援として、前記井戸のメンテナンスの要否について発報することを特徴とする請求項8から11のいずれか1項記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項13】
前記地下水浄化処理装置の運転支援として、前記地下水浄化処理装置の運転を停止し、洗浄手段により前記井戸を洗浄することを特徴とする請求項8から12のいずれか1項記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【請求項14】
前記洗浄手段が備える給水手段による水の供給と、前記揚水ポンプによる揚水とを繰り返して、前記井戸を洗浄することを特徴とする請求項13記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水浄化処理装置の運転支援システム及び運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、災害や天候等の影響を受けない水の供給源として、地下水の需要が高まっている。一般的に、地下から揚水された地下水には、鉄、マンガン、アンモニア等の不純物が含まれており、地下水を利用する際には、地下水に対して浄化処理を施し、これらの不純物を除去或いは低減する必要がある。このため、地下水の浄化を行う方法や装置が、多種にわたり発案されている(例えば、特許文献1参照)。一例として、図8に示す地下水浄化処理装置12は、100m程度の深井戸を掘削し、被圧帯水層の地下水(被圧地下水)を揚水して、膜ろ過装置により微生物学的衛生性を担保し、塩素消毒をした後、給水するものである。
【0003】
具体的には、地下水浄化処理装置12において、井戸20から揚水ポンプ16により地下水が揚水され、揚水配管50を経て被処理水(原水)54として原水槽52に一端貯留される。原水槽52内の被処理水54には、次亜塩素酸ナトリウム貯留槽56から次亜塩素酸ナトリウム供給ポンプ58を介して、次亜塩素酸ナトリウムが添加される。そして、原水槽52内の被処理水54は、ブロワ60によりばっ気され、そのばっ気効果と次亜塩素酸ナトリウムの酸化効果とにより、被処理水54に含まれる、鉄、マンガンは不溶性の固形化合物となり、アンモニア性窒素は不連続点塩素処理で窒素ガスを生成した後に除去される。その後、原水槽52内の被処理水54を、原水ポンプ62により揚水し、砂ろ過塔64によりろ過することで、被処理水54中の不純物を更に除去する。続いて、被処理水54を活性炭塔66に通水し、被処理水54内の残留塩素を一旦除去した後、被処理水54が所定の残留塩素濃度となるように、次亜塩素酸ナトリウム貯留槽56から次亜塩素酸ナトリウム供給ポンプ68を介して、再度、次亜塩素酸ナトリウムを添加する。そして、被処理水54を、精密ろ過膜や限外ろ過膜等で構成されるろ過膜70によりろ過し、被処理水54に含まれる、微生物、細菌等を除去した後、処理水槽72内に貯留する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−118664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8に示すような地下水浄化処理装置12では、井戸20の外周の一部に設置されたストレーナ22を介して、井戸20内に地下水が取り込まれている。そして、上述したように、地下水には様々な物質が含まれているため、地下水浄化処理装置12を長期にわたり使用し続けると、ストレーナ22に徐々に物質が付着し、ストレーナ22に形成されている孔やスリットが目詰まりする虞がある。これを防止するためには、井戸20を定期的に洗浄する必要があるが、井戸20を洗浄するタイミングは、地下水浄化処理装置12の使用状況から推測するのが現状であり、又、通常、深井戸である井戸20の洗浄には、多大な費用と時間を要するものである。このため、洗浄のタイミングが遅過ぎると、ストレーナ22に付着した物質が取れ難く、井戸20の耐用年数を縮めることとなり、洗浄のタイミングが早過ぎると、費用と時間の無駄な労費が発生するという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用状況に応じた適切なタイミングで、地下水浄化処理装置の井戸のメンテナンスを行い、井戸の耐用年数を延ばすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0008】
(1)井戸を水源に有する地下水浄化処理装置の運転支援システムであって、揚水ポンプにより井戸から揚水した地下水を浄化する地下水浄化処理装置と、前記井戸の地下水位を計測する水位計測器と、演算装置とを含み、該演算装置は、前記揚水ポンプの稼動状態と、前記水位計測器から得られる前記井戸の地下水位データとを利用して、前記地下水浄化処理装置の運転支援に必要な運転支援データを算出する地下水浄化処理装置の運転支援システム。
【0009】
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、揚水ポンプにより井戸から揚水した地下水の浄化処理を行う地下水浄化処理装置と、地下水浄化処理装置が揚水している井戸の地下水位を計測する水位計測器を含むものである。水位計測器は、地下水浄化処理装置の運転状況により変化する井戸の地下水位を連続して計測するものであり、例えば、井戸内に沈設して使用する圧力感知センサや、地下水面までの距離を計測する超音波センサ等の、連続計測が可能な計測器が用いられる。更に、本項に記載の地下水浄化処理装置の運転管理システムは、例えば、記憶装置やモニタ等を含む各種のコンピュータで構成される、演算装置を含んでいる。
【0010】
演算装置は、井戸から地下水を揚水している地下水浄化処理装置の揚水ポンプの稼動状態、すなわち、揚水ポンプが稼動しているか否かを、例えば、揚水ポンプのON・OFFに係る情報を地下水浄化処理装置から取得することで把握する。又、演算装置は、水位計測器が計測している井戸の地下水位を取得し、時間毎の地下水位を記録することで、時間経過により変化する一連の地下水位データとして管理する。そして、演算装置は、揚水ポンプの稼動状態と、井戸の地下水位データとを利用し、地下水浄化処理装置の運転支援に必要な運転支援データを算出する。このように算出した運転支援データに基づいて、例えば、地下水浄化処理装置のメンテナンス等の運転支援を行えば、揚水ポンプの稼動状態と井戸の地下水位変化との関係から、井戸の使用状況に応じた適切なメンテナンスのタイミングを把握するものとなる。
【0011】
(2)上記(1)項において、前記演算装置は、前記揚水ポンプの稼動状態と前記井戸の地下水位データとに基づいて前記井戸の地下水位の上昇変化率を算出し、該地下水位の上昇変化率に基づいて、前記運転支援データを算出する地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項1)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、演算装置が、地下水浄化処理装置から取得する揚水ポンプの稼動状態と、水位計測器から取得する井戸の地下水位データとに基づいて、所定の計算方法により井戸の地下水位の上昇変化率を算出する。地下水位の上昇変化率とは、単位時間あたりに上昇した水位を示すものである。ここで、地下水浄化処理装置に係る井戸の地下水位は、揚水ポンプの稼動中は井戸内の地下水が揚水されることで徐々に下降し、揚水ポンプの停止中は地下水脈から井戸内に地下水が取り込まれることで徐々に回復(上昇)する。このため、地下水位の上昇変化率は、地下水浄化処理装置に係る井戸においては、地下水位の回復速度とも換言できる。
【0012】
すなわち、揚水ポンプの稼動状態から、揚水ポンプが停止している期間(例えば、揚水ポンプがOFFになった時間から揚水ポンプがONになった時間まで)を把握し、更に、揚水ポンプが停止している期間の地下水位の変化から、上昇変化率を算出する。この際、揚水ポンプの停止期間中において、井戸の地下水位が回復可能な最大水位まで上昇した時間と、揚水ポンプがONになる時間とに差がある場合を考慮して、上昇変化率を算出する計算期間を、揚水ポンプがOFFになった時間から、ポンプ停止期間中の最大の地下水位に達した時間までとしてもよい。更に、井戸の地下水位が上昇し始める、揚水ポンプが停止した直後の期間や、地下水位の変化が小さくなる、ポンプ停止期間中の最大の地下水位に達する直前の期間は、上昇変化率を算出する計算期間に含めないこととしてもよい。このように算出することで、地下水位の上昇変化率を適正に計算することとなる。
【0013】
そして、上述の如く算出した地下水位の上昇変化率は、井戸が地下水脈から地下水を取り込む速度に対応して変化するものであるため、井戸の状態、特に、井戸の外周の一部に設けられているストレーナの詰まり度合いに大きく影響を受ける。従って、地下水位の上昇変化率に基づいて運転支援データを算出し、この運転支援データに基づいて、地下水浄化処理装置のメンテナンス等の運転支援を行うことにより、ストレーナの詰まり度合い等の、井戸の状態を具体的に考慮した、より適切なタイミングで、地下水浄化処理装置の運転支援をすることとなる。
【0014】
(3)上記(2)項において、前記演算装置は、前記地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出する地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項2)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、演算装置が算出する地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出するものである。すなわち、揚水ポンプの稼動と停止とが繰り返されることで、一日で複数回発生する揚水ポンプの停止期間の夫々において、地下水位の上昇変化率を算出し、更に、算出した複数回分の上昇変化率の中から、最も小さい上昇変化率である日最小変化率を選び、その日の地下水位の上昇変化率として採用するものである。これにより、日最小変化率に基づいた運転支援データが算出されるため、ストレーナの詰まりの影響が最も表れた、一日で最も遅い地下水位の回復速度を考慮したタイミングで、地下水浄化処理装置のメンテナンス等の運転支援を行うこととなり、メンテナンスのタイミングが遅れることを防止するものとなる。
【0015】
(4)上記(2)(3)項において、前記演算装置は、前記地下水位の上昇変化率と、予め設定されている基準変化率との比較結果に基づいて、前記運転支援データを算出する地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項3)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、演算装置が、地下水位の上昇変化率と、予め設定されている基準変化率との比較を行い、この比較結果に基づいて運転支援データを算出するものである。基準変化率には、上昇変化率と比較をした場合に、運転支援の対象である地下水浄化処理装置に係る井戸の状態が、比較結果に適切に反映されるような値を設定することが望ましい。そして、上昇変化率と基準変化率との比較は、例えば、基準変化率に所定の割合を乗じた値と、上昇変化率との大小の比較等を行うものである。このようにして得た比較結果に基づいて、運転支援データを算出するため、井戸の状態を反映した適切なタイミングで、地下水浄化処理装置の運転支援を行うこととなる。なお、基準変化率に乗じる所定の割合は、基準変化率に用いた値と、運転支援の内容とに応じて、適切な値を設定するものとする。
【0016】
更に、本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、上昇変化率と基準変化率との比較を、複数パターン行ってもよいものである。例えば、上述したような、基準変化率に所定の割合を乗じた値と、上昇変化率との大小の比較を行う場合には、基準変化率に乗じる所定の割合を複数設定し、これらを乗じた基準変化率の各々と、上昇変化率とを比較することとしてもよい。このように、複数パターンの比較を行うことで、夫々の比較結果に対応した運転支援データを算出することとなるため、夫々の比較結果に応じた複数種類の運転支援を、適切なタイミングで行うものとなる。なお、基準変化率に乗じる複数の所定の割合は、基準変化率に用いた値と、複数種類の運転支援の内容とに応じて、各々適切な値を設定するものとする。
【0017】
(5)上記(4)項において、前記演算装置は、前記基準変化率として、前記地下水浄化処理装置の利用開始初期の前記地下水位の上昇変化率を用いる地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項4)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、演算装置が、上昇変化率との比較に用いる基準変化率として、地下水浄化処理装置の利用開始初期の地下水位の上昇変化率を用いるものである。地下水浄化処理装置の利用開始初期(例えば、利用開始1日目)の井戸の状態は、使用されて間もないことから、物質の付着がほとんどなく、ストレーナの詰まりも発生していない。このため、上述した状態の井戸における地下水位の上昇変化率は、井戸の本来の回復速度を示すものであり、この上昇変化率を基準変化率に用いることで、ストレーナの詰まりがない状態からの、ストレーナの詰まり度合いの変化等が、現在の地下水位の上昇変化率と基準変化率との比較結果として表れることとなる。従って、この比較結果に基づいて運転支援データを算出することで、ストレーナの詰まり度合い等を加味した適切なタイミングで、地下水浄化処理装置の運転支援を行なうものとなる。
【0018】
(6)上記(2)から(5)項において、前記演算装置は、前記運転支援データに応じて、前記井戸のメンテナンスの要否について発報するものである地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項5)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、演算装置が、算出した運転支援データに応じて、井戸のメンテナンスの要否について発報するものである。メンテナンスの要否について発報は、例えば、演算装置が備えるモニタへの表示や、専用ランプの点灯等により行う。これにより、地下水浄化処理装置の管理者等に対し、井戸の使用状況に応じた適切なタイミングで、井戸のメンテナンスを促すものとなる。
【0019】
(7)上記(2)から(6)項において、前記井戸を洗浄する洗浄手段を含み、前記演算装置は、前記運転支援データに応じて、前記地下水浄化処理装置の運転を停止させると共に、前記洗浄手段に前記井戸を洗浄させるものである地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項6)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、地下水浄化処理装置が揚水している井戸を洗浄する洗浄手段を含んでいる。この洗浄手段は、ブラシ等を用いた大掛かりな洗浄と比べて、時間や費用を費やすことなく、井戸のストレーナ等に付着した物資を除去するものである。そして、演算装置は、算出した運転支援データに応じて、地下水浄化処理装置の運転を停止させると共に、この洗浄手段に井戸を洗浄させる。これにより、井戸の使用状況に応じた適切なタイミングで、井戸の洗浄を行うこととなる。
【0020】
(8)上記(7)項において、前記洗浄手段は、前記井戸に水を供給する給水手段を備え、該給水手段による水の供給と、前記揚水ポンプによる揚水とを繰り返して、前記井戸を洗浄する地下水浄化処理装置の運転支援システム(請求項7)。
本項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムは、井戸の洗浄を行う洗浄手段が、井戸に水を供給する給水手段を備えており、この給水手段による井戸への水の供給と、揚水ポンプによる井戸からの揚水とを繰り返して、井戸を洗浄するものである。給水手段には、例えば、地下水浄化処理装置の原水槽から原水を返送して、井戸に給水するものや、地下水浄化処理装置が浄化処理を行うために揚水している井戸とは、別に設けられた井戸から、地下水を揚水して給水するもの等が用いられる。
【0021】
上述の如く給水手段により井戸へ給水すると、井戸の地下水位が上昇し、上昇した水位に応じた水圧が、井戸内に加えられることになる。そして、井戸の外周の一部に設けられているストレーナには、井戸内のストレーナの設置位置から、上昇した水面までの水位に応じた水圧がかかるため、ストレーナにおいて、井戸内に地下水を取り込む方向とは逆の方向の水の流れ、すなわち、井戸内から水を排出する方向への水の流れが発生する。これにより、ストレーナに形成されている孔やスリットに付着していた物質の一部が剥がれる。そして、揚水ポンプにより井戸内の地下水を揚水し、井戸の地下水位を下げた後に、給水手段により井戸へ給水し、上昇した水位に応じた水圧を加えることを繰り返せば、ストレーナに付着していた物質が徐々に剥がれていく。従って、洗浄手段による井戸の洗浄により、ストレーナの目詰まりが改善されるものとなる。
【0022】
(9)井戸を水源に有する地下水浄化処理装置の運転支援方法であって、地下水浄化処理装置が揚水している井戸の地下水位を計測し、該計測結果と、前記地下水浄化処理装置の揚水ポンプの稼動状態とを利用して、前記地下水浄化処理装置の運転支援を行うことを特徴とする地下水浄化処理装置の運転支援方法。
(10)上記(9)項において、前記揚水ポンプの稼動状態と前記井戸の地下水位データとに基づいて前記井戸の地下水位の上昇変化率を算出し、該地下水位の上昇変化率に基づいて、運転支援を行う地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項8)。
(11)上記(10)項において、前記地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出する地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項9)。
【0023】
(12)上記(10)(11)項において、前記地下水位の上昇変化率と、予め設定した基準変化率との比較結果に基づいて、運転支援を行う地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項10)。
(13)上記(12)項において、前記基準変化率に、前記地下水浄化処理装置の利用開始初期の前記地下水位の上昇変化率を用いる地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項11)。
(14)上記(10)から(13)項において、前記地下水浄化処理装置の運転支援として、前記井戸のメンテナンスの要否について発報する地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項12)。
【0024】
(15)上記(10)から(14)項において、前記地下水浄化処理装置の運転支援として、前記地下水浄化処理装置の運転を停止し、洗浄手段により前記井戸を洗浄する地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項13)。
(16)上記(15)項において、前記洗浄手段が備える給水手段による水の供給と、前記揚水ポンプによる揚水とを繰り返して、前記井戸を洗浄する地下水浄化処理装置の運転支援方法(請求項14)。
そして、(9)から(16)項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援方法は、各々、上記(1)から(8)項に記載の地下水浄化処理装置の運転支援システムにより実行されることで、上記(1)から(8)項に対応する同等の作用を奏するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明はこのように構成したので、使用状況に応じた適切なタイミングで、地下水浄化処理装置の井戸のメンテナンスを行い、井戸の耐用年数を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システムの構成を模式的に示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システムによる運転支援方法の手順を示すフロー図である。
図3】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法で用いる井戸の地下水位の上昇変化率を、算出方法の一例と共に説明するためのグラフである。
図4】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法で用いる井戸の地下水位の日最小変化率を説明するためのグラフである。
図5】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法における、井戸洗浄の概要を示す概略図である。
図6】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法における、井戸洗浄の方法を示す概略図である。
図7】本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法における、図8とは別の井戸洗浄の方法を示す概略図である。
図8】地下水浄化処理装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10の構成を示す模式図である。図示の構成において、地下水浄化処理装置12は、例えば、図8に示した地下水浄化処理装置12と同様の構成のものであり、図1に示す水処理部14が、図8における揚水配管50を通過後の被処理水54に対する水処理工程を行う、各構成部位を簡略化して表示した部位である。地下水浄化処理装置12は、井戸20から揚水ポンプ16により地下水を揚水し、揚水配管50を介して水処理部14へ地下水を送水している。井戸20には、図8の例と同様に、外周の一部にストレーナ22が設けられており、このストレーナ22を介して地下水を井戸20内に取り込んでいる。又、井戸20には、井戸20の地下水位を連続して計測する水位計測器24が設置されており、図1の例では、水位計測器24として圧力感知センサが沈設されている。
【0028】
演算装置30は、記憶装置(図示省略)やモニタ32を含むコンピュータ等で構成されるものであり、水位計測器24が計測している井戸20の地下水位を、図1の例では地下水浄化処理装置12の制御システム等を介して取得している。又、演算装置30は、地下水浄化処理装置12から、揚水ポンプ16の稼動状態を取得している。そして、井戸20の地下水位と、揚水ポンプ16の稼動状態とを利用して、地下水浄化処理装置12の運転支援に必要な運転支援データを算出する。この運転支援データの算出方法や利用方法については後述する。又、地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、図1での図示は省略しているが、井戸20の洗浄を行う洗浄手段40(図6及び図7参照)を備えている。なお、図1の水処理部14と演算装置30とを接続している点線は、地下水浄化処理装置12と演算装置30との間に通信が確立されている状態を示すものである。
【0029】
次に、図2に示すフロー図に沿って、図1に示した地下水浄化処理装置の運転支援システム10を利用した、地下水浄化処理装置の運転支援方法の日毎に行う手順について説明する。なお、地下水浄化処理装置の運転支援システム10の構成については、図1を適宜参照されたい。
S10:演算装置30により、揚水ポンプ16の稼動状態と、井戸20の地下水位の変化を記録する。演算装置30は、地下水浄化処理装置12から揚水ポンプ16の時間毎の稼動状態が判別できる情報、例えば、揚水ポンプ16のON・OFFに係る情報を取得しており、この揚水ポンプ16の稼動状態を時間毎に記録する。又、演算装置30は、水位計測器24が連続して計測している井戸20の地下水位を取得しており、この地下水位を時間経過により変化する一連の地下水位データとして管理できるように、地下水位を時間毎に記録する。
【0030】
S20:演算装置30により、揚水ポンプ16が停止している期間中の、井戸20の地下水位の上昇変化率を算出する。地下水位の上昇変化率とは、単位時間あたりの地下水位の上昇変化を表わすものであり、井戸20においては、揚水ポンプ16が停止している間に地下水位が回復して上昇するため、地下水位の回復速度を表わすものでもある。ここで、図3には、井戸20の地下水位変化を表わすグラフを示しており、この図3を用いて、地下水位の上昇変化率の算出方法の一例について説明する。図3において、符号taは、揚水ポンプ16がOFFとなった揚水ポンプOFF時間を示しており、符号tbは、揚水ポンプ16が停止している期間中の、井戸20の地下水位が最大になった最大水位時間を示している。これら揚水ポンプOFF時間taと最大水位時間tbとは、上記S10において記録した、揚水ポンプ16の稼動状態と井戸20の地下水位データとを、時間と関連付けることで算出される。例えば、演算装置30は、揚水ポンプOFF時間taから最大水位時間tbまでの期間を100%とした場合の、揚水ポンプOFF時間taより30%後の時間から、最大水位時間tbより30%前の時間まで、すなわち、中間の40%の期間を、地下水位の上昇変化率を算出する計算期間に設定する。そして、設定した計算期間における、単位時間あたりの地下水位の変化y/xを、井戸20の地下水位の上昇変化率として算出する。なお、上述した地下水位の上昇変化率の算出方法は一例であり、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法では、上昇変化率を算出する計算期間の設定方法が上記とは異なる等の、状況に応じた他の算出方法を用いることもできる。
【0031】
続いて、図4には、井戸20の地下水位変化を表わす別のグラフを示しており、符号tc及びteが、揚水ポンプ16がOFFとなった揚水ポンプOFF時間、符号td及びtfが、揚水ポンプ16の停止期間中の地下水位が最大になった最大水位時間を示している。すなわち、図4に示した範囲では、揚水ポンプ16の停止期間が2回発生している。このように、地下水浄化処理装置12は、井戸20からの地下水の揚水を一日のうちに複数回行うため、揚水ポンプ16のON・OFFが複数回繰り返され、これに応じて揚水ポンプ16が停止している期間が複数回発生する。このため、井戸20の地下水位の上昇変化率の算出は、一日に発生した揚水ポンプ16の全ての停止期間に対し、停止期間毎に行うこととする。図4に示した範囲では、揚水ポンプOFF時間tcと最大水位時間tdとの間に設定されている、符号Xaで示す期間と、揚水ポンプOFF時間teと最大水位時間tfとの間に設定されている、符号Xbで示す期間との夫々において、井戸20の地下水位の上昇変化率を算出する。
【0032】
S30:演算装置30により、日最小変化率を記録及び表示する。日最小変化率とは、上記S20において算出した一日分の地下水位の上昇変化率のうち、一日で最も値が小さい上昇変化率を示すものである。すなわち、図4のグラフが、一日分の地下水位の変化を示していると仮定すると、計算期間Xaで算出した地下水位の上昇変化率と、計算期間Xbで算出した地下水位の上昇変化率とのうち、値が小さい方の上昇変化率が日最小変化率となる。演算装置30は、このように算出した日最小変化率を記録すると共に、モニタ32等に日最小変化率を表示する。この際、日最小変化率と共に、日最小変化率が算出された揚水ポンプ16の停止期間の地下水位変化を、図3図4に示したグラフのような形式で表示することとしてもよい。
【0033】
S40:演算装置30により、日最小変化率が、第1基準変化率よりも小さいか否かの判定を行う。第1基準変化率には、後述するS50の処理手順を実施するか否かの判定を行うための、適切な値を予め設定する。一例として、地下水浄化処理装置12の利用開始初期(利用開始1日程度)における、井戸20の地下水位の上昇変化率を基準変化率として記録しておき、この基準変化率に所定の割合(例えば、0.5)を乗じた値を、第1基準変化率として用いてもよい。このように設定した第1基準変化率と、日最小変化率との比較を行い、日最小変化率が第1基準変化率よりも小さいと判定された場合(YES)は、S50へ移行する。又、日最小変化率が、第1基準変化率と等しい、或いは、第1基準変化率よりも大きいと判定された場合(NO)は、S60へ移行する。
【0034】
S50:上記S40において、日最小変化率が第1基準変化率よりも小さいと判定された場合(YES)は、演算装置30により、この判定結果をモニタ32に表示し、更に、地下水浄化処理装置12を停止させると共に、井戸20の洗浄を開始させる。井戸20の洗浄は、洗浄手段40(図6及び図7参照)により行う。洗浄手段40による洗浄方法については後述する。
【0035】
S60:上記S40において、日最小変化率が、第1基準変化率と等しい、或いは、第1基準変化率よりも大きいと判定された場合(NO)は、更に次の判定を行う。すなわち、演算装置30により、日最小変化率が、第2基準変化率よりも小さいか否かの判定を行う。第2基準変化率は、第1基準変化率よりも大きい値であり、後述するS70の処理手順を実施するか否かの判定を行うための、適切な値を予め設定する。一例として、地下水浄化処理装置12の利用開始初期における、井戸20の地下水位の上昇変化率を基準変化率として設定した場合に、この基準変化率に所定の割合(例えば、0.7)を乗じた値を、第2基準変化率として用いてもよい。このように設定した第2基準変化率と、日最小変化率との比較を行い、日最小変化率が第2基準変化率よりも小さいと判定された場合(YES)は、S70へ移行する。一方、日最小変化率が、第2基準変化率と等しい、或いは、第2基準変化率よりも大きいと判定された場合(NO)は、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援方法の、一日の処理手順が終了となる。
【0036】
S70:上記S60において、日最小変化率が第2基準変化率よりも小さいと判定された場合(YES)は、演算装置30により、この判定結果をモニタ32に表示し、井戸20のメンテナンスが要である旨を発報する。井戸20のメンテナンスが要である旨の発報は、上記S60での判定結果と共に、モニタ32に表示するものであってもよい。或いは、井戸20のメンテナンス要を知らせるための専用のランプ等を予め設けておき、このランプ等を点灯させるものであってもよい。地下水浄化処理装置12の管理者等が、井戸20にメンテナンスが必要であることを把握できる方法であれば、状況に応じた他の発報方法を用いることもできる。
【0037】
次に、図5を参照して、洗浄手段40により行う井戸20の洗浄方法の概要について説明する。図5の左側に示す井戸20は、井戸20の洗浄を行う前に地下水浄化処理装置12が停止されたことにより、揚水ポンプ16が停止した状態を示しており、揚水ポンプ16による地下水の揚水が行われていない状態である。この状態の井戸20では、ストレーナ22に対し、井戸20内の地下水面からストレーナ22の設置位置までの水深に応じた水圧がかかっている。そして、このような状態の井戸20に対し、後述する給水手段により給水すると、図5の右側に示す井戸20のように、給水された水量に応じて地下水位が上昇する。このため、ストレーナ22には、図5の左側の状態でかかっていた水圧に加えて、更に、上昇した地下水位に応じた水圧がかかることになる。すると、ストレーナ22において、井戸20内に地下水を取り込む際とは逆の方向の水の流れが発生する。これにより、ストレーナ22に付着している、ストレーナ22の目詰まりの要因となる物質が、通常とは逆の方向の水の流れを受けることとなるため、ストレーナ22から剥がれる。そして、揚水ポンプ16を稼動させて井戸20内の地下水を揚水し、井戸20を図5の左側に示すような状態にした後、再度、給水手段により井戸20内に給水し、井戸20を図5の右側に示すような状態にすることを繰り返せば、ストレーナ22から物質が徐々に剥がれることになる。このように、洗浄手段40は、井戸20への給水と揚水ポンプ16による揚水とを繰り返して、井戸20の洗浄を行い、ストレーナ22の付着物質を剥がしていくものである。
【0038】
続いて、図6及び図7を参照し、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10が備える、洗浄手段40による井戸20の洗浄方法を、より具体的に説明する。図6は、地下水浄化処理装置12の原水槽52に貯留している原水54を利用して、井戸20の洗浄を行う洗浄手段40を示している。なお、図6には、一例として、井戸20に原水54を供給する給水手段を、給水手段42A、42B、42Cの3種類示しているが、洗浄手段40は、少なくともいずれか1種類の給水手段を備えていればよい。
【0039】
まず、給水手段42Aを用いた洗浄方法について説明すると、給水手段42Aは、給水配管44Aと給水バルブ46Aとで構成されており、給水配管44Aは、原水槽52の所定水位の位置と、揚水配管50とを連結している。洗浄手段40は、井戸20へ給水する際には、揚水ポンプ16を停止した状態で給水バルブ46Aを開き、給水配管44Aと揚水配管50とを介して、原水槽52内の原水54を給水する。この際、原水槽52内の原水54は、原水槽52の給水配管44Aが接続されている所定水位の位置よりも、高い水位にある分だけ給水される。このため、給水配管44Aを接続する原水槽52の所定水位となる位置は、井戸20に給水する水量や原水槽52の大きさ等を考慮して、適切な位置に決定する。又、洗浄手段40は、井戸20から揚水する際には、バルブ46Aを閉じて揚水ポンプ16を稼動し、井戸20内の地下水を揚水配管50を介して原水槽52まで揚水する。これにより、原水槽52内の原水54は、再度、給水配管44Aが接続されている所定水位の位置よりも高い水位となる。洗浄手段40は、上述したような給水手段42Aを用いた給水と、揚水ポンプ16による揚水とを繰り返すことで、井戸20の洗浄を行う。
【0040】
次に、給水手段42Bを用いた洗浄方法について説明すると、給水手段42Bは、給水配管44Bと給水バルブ46Bとで構成されており、給水配管44Bは、原水槽52の下部と揚水配管50とを連結している。洗浄手段40は、井戸20へ給水する際には、揚水ポンプ16を停止した状態で給水バルブ46Bを所定の時間だけ開き、給水配管44Bと揚水配管50とを介して、原水槽52内の原水54を給水する。この際、給水バルブ46Bを開く所定の時間には、井戸20に給水する水量や給水配管44Bの内径等を考慮して、適切な時間を設定する。又、洗浄手段40は、井戸20から揚水する際には、バルブ46Bを閉じて揚水ポンプ16を稼動し、井戸20内の地下水を揚水配管50を介して原水槽52まで揚水する。これにより、原水槽52内の原水54の水位が回復する。洗浄手段40は、上述したような給水手段42Bを用いた給水と、揚水ポンプ16による揚水とを繰り返すことで、井戸20の洗浄を行う。
【0041】
続いて、給水手段42Cを用いた洗浄方法について説明すると、給水手段42Cは、給水配管44Cと給水バルブ46Cとで構成されており、給水配管44Cは、原水槽52の底部から井戸20の内部まで敷設されている。洗浄手段40は、井戸20へ給水する際には、揚水ポンプ16を停止した状態で給水バルブ46Cを所定の時間だけ開き、給水配管44Cを介して、原水槽52内の原水54を給水する。この際、給水バルブ46Cを開く所定の時間には、井戸20に給水する水量や給水配管44Cの内径等を考慮して、適切な時間を設定する。又、洗浄手段40は、井戸20から揚水する際には、バルブ46Cを閉じて揚水ポンプ16を稼動し、井戸20内の地下水を揚水配管50を介して原水槽52まで揚水する。これにより、原水槽52内の原水54の水位が回復する。洗浄手段40は、上述したような給水手段42Cを用いた給水と、揚水ポンプ16による揚水とを繰り返すことで、井戸20の洗浄を行う。
【0042】
一方、図7は、地下水浄化処理装置12が揚水している井戸20とは別に、井戸20Dを設け、この井戸20D内の地下水を利用して、井戸20の洗浄を行う洗浄手段40を示している。図示のように、洗浄手段40は、井戸20Dと、井戸20D内の地下水を揚水する揚水ポンプ16Dと、給水配管44Dとで構成される給水手段42Dを備えている。給水配管44Dは、揚水ポンプ16Dから井戸20の内部まで敷設されている。洗浄手段40は、井戸20へ給水する際には、揚水ポンプ16を停止した状態で揚水ポンプ16Dを所定の時間だけ稼動し、給水配管44Dを介して、井戸20D内の地下水を給水する。この際、揚水ポンプ16Dを稼動する所定の時間には、井戸20に給水する水量や揚水ポンプ16Dの性能等を考慮して、適切な時間を設定する。又、洗浄手段40は、井戸20から揚水する際には、揚水ポンプ16Dを停止した状態で揚水ポンプ16を稼動し、井戸20内の地下水を揚水配管50を介して揚水する。洗浄手段40は、上述したような給水手段42Dを用いた給水と、揚水ポンプ16による揚水とを繰り返すことで、井戸20の洗浄を行う。
【0043】
又、図7の例において、井戸20Dから揚水ポンプ16Dにより揚水した地下水を、原水槽52まで揚水するような揚水配管を敷設し、この揚水配管と揚水配管50とを連結するように、バルブを有する給水配管を設ける構成としてもよい。このようにすることで、井戸20と井戸20Dとの2つの井戸を、浄化処理を行う地下水の揚水に利用できると共に、一方の井戸の洗浄に他方の井戸の地下水を利用することができる。
なお、図6及び図7に示した、いずれの洗浄方法においても、井戸20内から揚水された地下水は、原水槽52まで揚水される。このため、井戸20の洗浄の過程で、ストレーナ22から剥がれた付着物質の一部が、原水槽52の原水54に含まれることとなる。しかしながら、その含有量は低いものであり、水処理部14での浄化処理によって十分に除去できるものであるため、地下水浄化処理装置12が浄化処理を行った被処理水の品質に、何ら影響を与えるものでもない。
【0044】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、図1に示すように、揚水ポンプ16により井戸20から揚水した地下水の浄化処理を行う地下水浄化処理装置12と、地下水浄化処理装置12が揚水している井戸20の地下水位を計測する水位計測器24を含むものである。水位計測器24は、地下水浄化処理装置12の運転状況により変化する井戸20の地下水位を連続して計測するものであり、図1の例では、井戸20内に沈設して使用する圧力感知センサが用いられている。更に、地下水浄化処理装置の運転管理システム10は、記憶装置(図示省略)やモニタ32等を含む各種のコンピュータで構成される、演算装置30を含んでいる。
【0045】
演算装置30は、井戸20から地下水を揚水している地下水浄化処理装置12の揚水ポンプ16の稼動状態、すなわち、揚水ポンプ16が稼動しているか否かを、例えば、揚水ポンプ16のON・OFFに係る情報を地下水浄化処理装置12から取得することで把握する。又、演算装置30は、水位計測器24が計測している井戸20の地下水位を取得し、時間毎の地下水位を記録することで、時間経過により変化する一連の地下水位データとして管理する(図2のS10)。そして、演算装置30は、揚水ポンプ16の稼動状態と、井戸20の地下水位データとを利用し、地下水浄化処理装置12の運転支援に必要な運転支援データを算出する。このように算出した運転支援データに基づいて、例えば、地下水浄化処理装置12のメンテナンス等の運転支援を行えば、揚水ポンプ16の稼動状態と井戸20の地下水位変化との関係から、井戸20の使用状況に応じた適切なメンテナンスのタイミングを把握することができるため、井戸20の耐用年数を延ばすことが可能となる。
【0046】
又、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、演算装置30が、地下水浄化処理装置12から取得する揚水ポンプ16の稼動状態と、水位計測器24から取得する井戸20の地下水位データとに基づいて、所定の計算方法により井戸20の地下水位の上昇変化率を算出する(図2のS20)。地下水位の上昇変化率とは、単位時間あたりに上昇した水位を示すものである。ここで、地下水浄化処理装置12に係る井戸20の地下水位は、揚水ポンプ16の稼動中は井戸20内の地下水が揚水されることで徐々に下降し、揚水ポンプ16の停止中は地下水脈から井戸20内に地下水が取り込まれることで徐々に回復(上昇)する。このため、地下水位の上昇変化率は、地下水浄化処理装置12に係る井戸20においては、地下水位の回復速度とも換言できる。
【0047】
すなわち、揚水ポンプ16の稼動状態から、揚水ポンプ16が停止している期間(例えば、揚水ポンプ16がOFFになった時間から揚水ポンプ16がONになった時間まで)を把握し、更に、揚水ポンプ16が停止している期間の地下水位の変化から、上昇変化率を算出する。この際、揚水ポンプ16の停止期間中において、井戸20の地下水位が回復可能な最大水位まで上昇した時間と、揚水ポンプ16がONになる時間とに差がある場合を考慮して、上昇変化率を算出する計算期間を、図3に示すように、揚水ポンプ16がOFFになった時間taから、ポンプ停止期間中の最大の地下水位に達した時間tbまでとしてもよい。更に、揚水ポンプOFF時間taから最大水位時間tbまでの期間を100%とした場合に、井戸20の地下水位が上昇し始める、揚水ポンプOFF時間taの直後30%の期間や、地下水位の変化が小さくなる、最大水位時間tbに達する直前30%の期間は、上昇変化率を算出する計算期間に含めないこととし、中間の40%の期間を計算期間に設定してもよい。このように算出することで、地下水位の上昇変化率を適正に計算することができる。
【0048】
そして、上述の如く算出した地下水位の上昇変化率は、井戸20が地下水脈から地下水を取り込む速度に対応して変化するものであるため、井戸20の状態、特に、井戸20の外周の一部に設けられているストレーナ22の詰まり度合いに大きく影響を受ける。従って、地下水位の上昇変化率に基づいて運転支援データを算出し、この運転支援データに基づいて、地下水浄化処理装置12のメンテナンス等の運転支援を行うことにより、ストレーナ22の詰まり度合い等の、井戸20の状態を具体的に考慮した、より適切なタイミングで、地下水浄化処理装置12の運転支援をすることができる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、演算装置30が算出する地下水位の上昇変化率として、一日で最も小さい上昇変化率である日最小変化率を算出するものである(図2のS30)。すなわち、揚水ポンプ16の稼動と停止とが繰り返されることで、一日で複数回発生する揚水ポンプ16の停止期間の夫々において、図4に示すような、計算期間XaやXbを設定した後、地下水位の上昇変化率を算出し、更に、算出した複数回分の上昇変化率の中から、最も小さい上昇変化率である日最小変化率を選び、その日の地下水位の上昇変化率として採用するものである。これにより、日最小変化率に基づいた運転支援データが算出されるため、ストレーナ22の詰まりの影響が最も表れた、一日で最も遅い地下水位の回復速度を考慮したタイミングで、地下水浄化処理装置12のメンテナンス等の運転支援を行うこととなり、メンテナンスのタイミングが遅れることを防止することができる。
【0050】
又、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、演算装置30が、地下水位の上昇変化率(日最小変化率)と、予め設定されている基準変化率との比較を複数パターン行い(図2のS40及びS60)、夫々の比較結果に基づいて運転支援データを算出するものである。図2の例で説明すると、基準変化率に乗じる所定の割合を複数(図2では2つ)設定して、第1基準変化率と第2基準変化率とを算出し、これら第1基準変化率と第2基準変化率との各々と、日最小変化率とを比較する。基準変化率には、日最小変化率と比較をした場合に、運転支援の対象である地下水浄化処理装置12に係る井戸20の状態が、比較結果に適切に反映されるような値を設定する。このように、複数パターンの比較を行うことで、夫々の比較結果に対応した運転支援データを算出することとなるため、夫々の比較結果に応じた複数種類の運転支援(図2のS50及びS70)を、井戸20の状態を反映した適切なタイミングで行うことができる。なお、基準変化率に乗じる複数の所定の割合は、基準変化率に用いた値と、複数種類の運転支援の内容とに応じて、各々適切な値を設定する。例えば、第1基準変化率の算出には、図2のS50の処理手順内容を考慮して、基準変化率に乗じる所定の割合を0.5とし、第2基準変化率の算出には、図2のS70の処理手順内容を考慮して、基準変化率に乗じる所定の割合を0.7とするものである。
【0051】
又、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、演算装置30が、上昇変化率(日最小変化率)との比較に用いる基準変化率として、地下水浄化処理装置12の利用開始初期の地下水位の上昇変化率を用いるものである。地下水浄化処理装置12の利用開始初期(例えば、利用開始1日目)の井戸20の状態は、使用されて間もないことから、物質の付着がほとんどなく、ストレーナ22の詰まりも発生していない。このため、上述した状態の井戸20における地下水位の上昇変化率は、井戸20の本来の回復速度を示すものであり、この上昇変化率を基準変化率に用いることで、ストレーナ22の詰まりがない状態からの、ストレーナ22の詰まり度合いの変化等が、現在の地下水位の上昇変化率と基準変化率との比較結果として表れることとなる。従って、この比較結果に基づいて運転支援データを算出することで、ストレーナ22の詰まり度合い等を加味した適切なタイミングで、地下水浄化処理装置12の運転支援を行なうことが可能となる。
【0052】
又、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、演算装置30が、算出した運転支援データに応じて、井戸20のメンテナンスが要である旨を発報するものである(図2のS70)。メンテナンスが要である旨の発報は、例えば、演算装置30が備えるモニタ32への表示や、専用ランプの点灯等により行う。これにより、地下水浄化処理装置12の管理者等に対し、井戸20の使用状況に応じた適切なタイミングで、井戸20のメンテナンスを促すことができる。
【0053】
更に、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、図6及び図7に示すような、地下水浄化処理装置12が揚水している井戸20を洗浄する洗浄手段40を含んでいる。この洗浄手段40は、ブラシ等を用いた大掛かりな洗浄と比べて、時間や費用を費やすことなく、井戸20のストレーナ22等に付着した物資を除去するものである。そして、演算装置30は、算出した運転支援データに応じて、地下水浄化処理装置12の運転を停止させると共に、この洗浄手段40に井戸を洗浄させる(図2のS50)。これにより、井戸20の使用状況に応じた適切なタイミングで、井戸20の洗浄を行うことができるため、常にストレーナ22の詰まり等が酷くなる前に洗浄を行うことができ、井戸20の耐用年数を延ばすことが可能となる。
【0054】
そして、本発明の実施の形態に係る地下水浄化処理装置の運転支援システム10は、井戸20の洗浄を行う洗浄手段40が、井戸20に水を供給する給水手段42(42A、42B、42C、42D)を備えており、この給水手段42による井戸20への水の供給と、揚水ポンプ16による井戸20からの揚水とを繰り返して、井戸20を洗浄するものである。給水手段42には、図6に示すような、地下水浄化処理装置12の原水槽52から原水54を返送して、井戸20に給水するものや、図7に示すような、地下水浄化処理装置12が浄化処理を行うために揚水している井戸20とは、別に設けられた井戸20Dから、地下水を揚水して給水するもの等が用いられる。
【0055】
上述の如く給水手段42により井戸20へ給水すると、図5の右側に示すように、井戸20の地下水位が上昇し、上昇した水位に応じた水圧が、井戸20内に加えられることになる。そして、井戸20の外周の一部に設けられているストレーナ22には、井戸20内のストレーナ22の設置位置から、上昇した水面までの水位に応じた水圧がかかるため、ストレーナ22において、井戸20内に地下水を取り込む方向とは逆の方向の水の流れ、すなわち、井戸20内から水を排出する方向への水の流れが発生する。これにより、ストレーナ22に形成されている孔やスリットに付着していた物質の一部が剥がれる。そして、図5の左側に示すように、揚水ポンプ16により井戸20内の地下水を揚水し、井戸20の地下水位を下げた後に、図5の右側に示すように、給水手段42により井戸20へ給水し、上昇した水位に応じた水圧を加えることを繰り返せば、ストレーナ22に付着していた物質を徐々に剥がすことができる。従って、洗浄手段40による井戸20の洗浄により、ストレーナ22の目詰まりを改善することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10:地下水浄化処理装置の運転支援システム、12:地下水浄化処理装置、16:揚水ポンプ、20:井戸、22:ストレーナ、30:演算装置、40:洗浄手段、42A、42B、42C、42D:給水手段
図1
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図8