特許第6049413号(P6049413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049413ビスアゾ色素骨格を有する顔料分散剤、該顔料分散剤を含有する顔料組成物、顔料分散体、インク及びカラーフィルター用レジスト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049413
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ビスアゾ色素骨格を有する顔料分散剤、該顔料分散剤を含有する顔料組成物、顔料分散体、インク及びカラーフィルター用レジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 33/153 20060101AFI20161212BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20161212BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20161212BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20161212BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   C09B33/153CSP
   C09D11/00
   C09B67/20 K
   C09B67/46 A
   C09B67/20 L
   !B41M5/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2012-248678(P2012-248678)
(22)【出願日】2012年11月12日
(65)【公開番号】特開2013-122049(P2013-122049A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-246929(P2011-246929)
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 由紀
(72)【発明者】
【氏名】村井 康亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 正健
(72)【発明者】
【氏名】豊田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】河村 政志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和香
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 雅史
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−501251(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/098355(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/044283(WO,A1)
【文献】 特開平11−202558(JP,A)
【文献】 特表2001−514320(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157536(WO,A1)
【文献】 特表2009−501249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 33/00
C09B 67/00
C09D 11/00
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)または下記式(2)で表されるビスアゾ構造部位とポリエステル部位とを有する顔料分散剤
【化1】

【化2】

[式(1)及び式(2)において、
乃至Rは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
及びRは、炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、R乃至R11は、水素原子、COOR12基又はCONR1314基を表し、R乃至R11の少なくとも一つはCOOR12基又はCONR1314基であり、R12乃至R14は、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、
は、ポリエステル部位と連結する二価の連結基を表し、
該二価の連結基は、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合又はスルホン酸エステル結合を含む連結基である。]
【請求項2】
該R及び該Rがメチル基である請求項1に記載の顔料分散剤
【請求項3】
該R及び該R10がCOOR12であり、R、R及びR11が水素原子である請求項1又は2に記載の顔料分散剤
【請求項4】
該Lが、
−C(=O)O−*
−COC(=O)−*
−SO−O−* 、または
−NHC(=O)−*
(上記式中、*はポリエステル部位との連結部位を表す。)
である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料分散剤
【請求項5】
該化合物が式(1)で表わされる部分構造を有し、該式(1)で表される部分構造が下記式(7)で表わされる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の顔料分散剤
【化3】
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料分散剤とアゾ顔料とを含有する顔料組成物。
【請求項7】
該アゾ顔料が、下記式(8)で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項6に記載の顔料組成物。
【化4】
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の顔料分散剤、アゾ顔料及び非水溶性溶剤を含有することを特徴とする顔料分散体。
【請求項9】
該アゾ顔料が、下記式(8)で表されるアゾ顔料である請求項8に記載の顔料分散体。
【化5】
【請求項10】
請求項8又は9に記載の顔料分散体を含有するインク。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の顔料分散体及びバインダー樹脂を含有するカラーフィルター用レジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスアゾ色素骨格がポリエステル樹脂と結合した新規な化合物、該化合物を含有する顔料分散剤、顔料組成物及び顔料分散体に関する。更に、該顔料分散体を着色剤とするインク及びカラーフィルター用レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の着色力、透明性等の分光特性を向上させるために、顔料を微細化すると、分散工程やその後の製造工程において、熱履歴や溶剤との接触により結晶の成長や転移等が起きやすくなり、着色力や透明性の低下等の問題を引き起こしてしまう。
【0003】
これらの顔料の分散性を改善するために様々な顔料組成物及びそれを構成する顔料分散剤が提案されている。特許文献1には、Solsperse(登録商標)として知られる酸、又は塩基性部位を有する櫛型ポリマー分散剤を使用した例が開示されている。特許文献2には、インクジェット記録方法において、アゾ顔料の分散剤として、アゾ顔料の分子量の95%より小さい分子量の発色団を水溶性ポリマーの側鎖、もしくは末端に結合させた、ポリマー分散剤を用いた例が開示されている。
【0004】
一方、特許文献3には、有機顔料を用いたR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルターでは、要求される色特性を得るために、2種類以上の顔料を調色して用いられる。特に緑色カラーフィルターの場合、主顔料である銅フタロシアニン系の緑色顔料に、調色用としてアゾ系の黄色顔料が使用する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99−42532号パンフレット
【特許文献2】米国特許第7582152号公報
【特許文献3】特開平11−14825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の顔料分散剤はアゾ顔料への親和性が不十分なために顔料分散性が十分でない。又、特許文献2に記載の顔料分散剤については水溶性ポリマーが使用され、非水溶性溶剤を分散媒としたものに対する分散性が十分でない。
【0007】
又、アゾ顔料をカラーフィルター用レジストに用いた場合、顔料の分散性が悪く、安定な分散が困難であるため、カラーフィルターの色特性を低下させる課題があった。
【0008】
本発明の目的は、アゾ顔料に対する高い親和性を有し、非水溶性溶剤に対する良好な分散性を有する顔料組成物を提供することを目的とする。又、本発明は、非水溶性溶剤中での分散状態が良好な顔料分散体を提供することを目的とする。又、本発明は、該顔料分散体を用いることで、顔料分散状態が良好で色特性に優れたインク及びカラーフィルター用レジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)または下記式(2)で表されるビスアゾ構造部位とポリエステル部位とを有する顔料分散剤に関する。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
[式(1)及び式(2)において、R乃至Rは、水素原子、ハロゲン原子を表し、R及びRは、炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、R乃至R11は、水素原子、COOR12基又はCONR1314基を表し、R乃至R11の少なくとも一つはCOOR12基又はCONR1314基であり、R12乃至R14は、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Lは、ポリエステル部位と連結する二価の連結基を表し、該二価の連結基は、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合又はスルホン酸エステル結合を含む連結基である。]
又、本発明は、上記顔料分散剤を含有する顔料組成物及び顔料分散体に関する。又、本発明は、該顔料分散体を着色剤とするインク及びカラーフィルター用レジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、アゾ顔料に対する高い親和性を有し、非水溶性溶剤に対する良好な分散性を有する顔料組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)のCDCl中、室温、400MHzにおけるH NMRスペクトルである。
図2】ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(38)のCDCl中、室温、400MHzにおけるH NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明において、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ構造部位及びポリエステル部位を有する化合物を「ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル」と称す。また、ポリエステル部位は、前記化合物において、ビスアゾ構造部位を除いたポリエステル樹脂部分を表す。
【0016】
まず、本発明の化合物について説明する。本発明の化合物は、アゾ顔料への親和性が高い下記式(1)または下記式(2)で表わされるビスアゾ構造部位と、非水溶性溶剤への親和性が高いポリエステル部位とを有する。
【0017】
【化3】
【0018】
【化4】
【0019】
[式(1)及び式(2)において、R乃至Rは、水素原子又はハロゲン原子を表し、R及びRは、炭素数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、R乃至R11は、水素原子、COOR12基又はCONR1314基を表し、R乃至R11の少なくとも一つはCOOR12基又はCONR1314基であり、R12乃至R14は、水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、Lは、ポリエステル部位と連結する二価の連結基を表す。]
式(1)及び式(2)で示されるビスアゾ構造部位における各官能基について説明する。
【0020】
乃至Rにおけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。但し、R乃至Rは、顔料への親和性の観点から、水素原子である場合が好ましい。
【0021】
乃至R及び二つのアシルアセトアミド基の置換位置は、アシルアセトアミド基同士が、o−位、m−位、p−位で置換した場合が挙げられる。これら置換位置の違いによる顔料への親和性に関しては置換位置によらずほぼ同等である。ただし、製造のし易さを考慮すると、アシルアセトアミド基同士が、p−位の関係になるように結合していることが好ましい。
【0022】
及びRにおけるアルキル基としては、炭素原子数が1乃至6であれば特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0023】
及びRの置換基は、顔料への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
及びRは、顔料への親和性の観点からメチル基である場合が好ましい。
【0024】
式(1)及び式(2)におけるLは、二価の連結基を表し、ビスアゾ色素骨格とポリエステルとを結合する。
【0025】
式(1)では、ビスアゾ色素骨格とポリエステルとが−L−を介し一箇所で結合しており、式(2)では、二箇所で結合する。
【0026】
は、二価の連結基であれば特に限定されるものではないが、製造の容易性の観点からビスアゾ骨格ユニットと高分子樹脂ユニットの結合によりカルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、スルホン酸エステル結合を形成する場合が好ましい。
【0027】
−L−の置換位置は顔料への親和性の点で、−L−が、ヒドラゾ基に対し4−位である場合が好ましい。
【0028】
乃至R11は、水素原子、COOR12基又はCONR1314基であり、少なくとも1つがCOOR12基又はCONR1314基となるように選択される。その中でも、アゾ顔料への親和性の観点から、R及びR10がCOOR12基であり、R、R、R11が水素原子である場合が好ましい。
【0029】
12乃至R14におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0030】
12乃至R14は、COOR12基においては、R12がメチル基であることが好ましく、CONR1314基においては、R13がメチル基であり、R14がメチル基又は水素原子である場合が好ましい。
【0031】
該ビスアゾ色素骨格部位が、下記式(7)で表される場合が、顔料への親和性の点で特に好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
次にポリエステル部位について説明する。
【0034】
ポリエステル部位は、直鎖状、分岐状、架橋構造を有する構造のいずれでも良い。
非水溶性溶剤への親和性の観点から、ポリエステル部位が、ジカルボン酸とジオールとの縮重合体である場合、もしくはヒドロキシ酸縮重合体である場合が好ましい。
【0035】
ポリエステル部位を形成するモノマーのとしてのジカルボン酸としては、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基である場合が好ましい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基等の直鎖、分岐又は環状のアルキレン基が挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、2−ブテニレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基等が挙げられる。
【0036】
上記のアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、メチル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、トリフルオロメチル基及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
上記のアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、非極性溶剤への親和性の観点から、炭素原子数が6以上のアルキレン基又はフェニレン基の両末端にカルボキシル基が結合したものが好ましい。
【0038】
ポリエステル部位を形成するモノマーのとしてのジオールとしては、非水溶性溶剤への親和性の観点から、アルキレン基又はフェニレン基の両末端に水酸基が結合したものが好ましい。また、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物或いはビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物も好ましい。付加の割合は2〜10が好ましい。
【0039】
上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基等の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、炭素数が6以上のアルキレン基である。
【0040】
上記フェニレン基としては、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基等が挙げられる。
【0041】
上記のアルキレン基又はフェニレン基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、メチル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
ポリエステル部位を形成するモノマーとしてのヒドロキシ酸としては、アルキレン基又はアルケニレン基の両末端に、水酸基或いはカルボキシル基とが結合したものが好ましい。
【0043】
上記アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ネオペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、1,4−シクロヘキシレン基等の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0044】
上記アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘキサジエニレン基、ヘプテニレン基、オクタニレン基、デセニレン基、オクタデセニレン基、エイコセニレン基、トリアコンテニレン基等が挙げられる。これらアルケニレン基は直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。又、二重結合の位置はいずれの箇所でも良く、少なくとも一つ以上の二重結合を有していれば良い。
【0045】
上記のアルキレン基又はアルケニレン基は、非水溶性溶剤への親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
上記のアルキレン基又はアルケニレン基は、特に非極性溶剤への親和性の観点から、炭素原子数6以上のアルキレン基又はアルケニレン基である場合が好ましい。
【0047】
顔料の分散性を向上させる観点から、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの数平均分子量(Mn)が500以上である場合が好ましい。分子量は大きい方が顔料の分散性を向上させる効果が高いが、分子量があまりに大きすぎると非水溶性溶剤への親和性が悪化するため好ましくない。従って、該ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は200000以下である場合が好ましい。このほか、製造容易性の点を考慮すると、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの数平均分子量は2000乃至20000の範囲である場合が好ましい。
【0048】
式(1)で表されるビスアゾ構造部位は、下記図に示されるように、下記式(9)及び(10)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0049】
【化6】
【0050】
[式(9)及び(10)中のL及びR乃至R11は式(1)におけるL及びR乃至R11と各々同義である。]
上記式(2)で表されるビスアゾ構造部位は、下記図に示されるように、下記式(11)及び(12)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0051】
【化7】
【0052】
[式(11)及び(12)中のL及びR乃至R11は式(2)におけるL及びR乃至R11と各々同義である。]
【0053】
上記式(1)もしくは上記式(2)で表されるビスアゾ構造部位は、公知の方法に従って合成することができる。以下にアゾ色素中間体(20)までの合成スキームの一例を示す。
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
[式(13)乃至(20)中のR乃至R11は、上記式(1)もしくは上記式(2)と同義である。X及びXは脱離基である。]
【0057】
上記に例示したスキームでは、式(13)で表されるアニリン誘導体と式(14)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化し、アセトアセトアニリド類縁体である中間体(15)を合成する工程1、中間体(15)とアニリン誘導体(16)をジアゾカップリングさせ、アゾ化合物(17)を合成する工程2、アゾ化合物(17)中のニトロ基を還元し、アニリン類縁体である中間体(18)を合成する工程3、中間体(18)と式(19)で表されるアセト酢酸類縁体をアミド化する工程4によって、アゾ色素中間体(20)を合成する。
【0058】
先ず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる(例えば、Datta E.Ponde、外4名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、1058−1063頁)。又、式(15)中のRがメチル基の場合は原料(14)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である(例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、外2名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、9761−9764頁)。
【0059】
上記アニリン誘導体(13)及びアセト酢酸類縁体(14)は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0060】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐために溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類;水が挙げられる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(13)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0061】
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、下記に示す方法が挙げられる。まず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(16)を塩酸、又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を中間体(15)とカップリングさせて、アゾ化合物(17)を合成する。
【0062】
上記アニリン誘導体(16)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0063】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、上記工程1の説明で挙げた溶剤を用いることができる。溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(16)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0064】
本工程は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0065】
次に、工程3について説明する。工程3では公知の方法を利用できる(金属化合物等を用いる方法としては、例えば、「実験化学講座」(丸善(株)、第1版、第17−2巻、162−179頁)、接触水素添加法としては、例えば、「実験化学講座」(丸善(株)、第1版、第15巻、390−448頁)又は国際公開第2009−060886号パンフレット)。
【0066】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、上記工程1の説明で挙げた溶剤を用いることができる。溶剤の使用量は、基質の溶解性に応じて、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(17)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0067】
次に、工程4について説明する。工程4では上記工程1と同様の方法を利用し、アゾ色素中間体(20)を合成する。
【0068】
得られたアゾ色素中間体(20)から、上記式(1)もしくは(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを得る方法としては、例えば、下記方法(i)乃至(iii)に示す方法が挙げられる。
【0069】
以下、方法(i)について詳細に説明する。
【0070】
【化10】
【0071】
[式(20)乃至(22)中のR乃至R11は、式(1)もしくは式(2)のR乃至R11と同義である。nは1又は2の整数値を表す。Xは、反応して式(1)もしくは式(2)における連結基Lを形成する置換基である。Pはポリエステル樹脂を表す。]
【0072】
上記に例示したスキームでは、アゾ色素中間体(20)とアニリン誘導体(21)をジアゾカップリングさせ、ビスアゾ化合物(22)を合成する工程5、ビスアゾ化合物(22)と予め合成したポリエステル樹脂Pをエステル化もしくはアミド化する工程6によって、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成する。
【0073】
まず、工程5について説明する。工程5では上記工程2と同様の方法を適用し、ビスアゾ化合物(22)を合成することができる。
【0074】
上記ニトロアニリン誘導体(21)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0075】
次に、工程6について説明する。工程6では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂Pと式(21)中のXがヒドロキシル基を有する置換基である原料を使用することで、連結基Lがカルボン酸エステル基となる上記式(1)もしくは(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成することができる。又、ヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂Pと式(21)中のXがスルホン酸基を有する置換基である原料を使用することで、連結基Lがスルホン酸エステル基となる上記式(1)もしくは(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成することができる。更に、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂Pと式(21)中のXがアミノ基を有する置換基である原料を使用することで連結基Lがカルボン酸アミド基となる上記式(1)もしくは(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成することができる。具体的には、脱水縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を使用する方法(例えば、Melvin S.Newman、外1名、「Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、p.2525−2528)、ショッテン−バウマン法(例えば、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、p.237−416)等が挙げられる。
【0076】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、式(21)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0077】
次に、方法(ii)について詳細に説明する。
【0078】
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
[式(20)、式(23)乃至(28)中のL及びR乃至R11は、式(1)もしくは式(2)のL及びR乃至R11と同義である。Xは、反応して式(1)もしくは式(2)における連結基Lを形成する置換基である。Pはポリエステル樹脂を表す。「*」はポリエステル樹脂との連結部位を表す。]
【0082】
上記に例示したスキームでは、原料(23)もしくは原料(26)と予め合成したポリエステル樹脂Pをエステル化もしくはアミド化して中間体(24)もしくは中間体(27)を合成する工程7、中間体(24)もしくは中間体(27)中のニトロ基を還元し、アニリン類縁体である中間体(25)もしくは中間体(28)を合成する工程8、アゾ色素中間体(20)とアニリン類縁体(25)もしくは(28)をジアゾカップリングさせる工程9によって、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成する。
【0083】
まず、工程7について説明する。工程7では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、ヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂Pと、Xがカルボン酸ハライド基を有する置換基である原料(23)もしくは原料(26)とを使用することで連結基Lがカルボン酸エステル基となる中間体(24)もしくは中間体(27)を合成することができる。更に、ヒドロキシル基を有するポリエステル樹脂Pと、Xがスルホン酸ハライド基を有する置換基である原料(23)もしくは原料(26)とを使用することで連結基Lがスルホン酸エステル基となる中間体(24)もしくは中間体(27)を合成することができる。具体的方法としては、例えば、ショッテン−バウマン法(例えば、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、p.237−416)等が挙げられる。
【0084】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、上記方法(i)の説明で挙げた溶剤を用いることができる。溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で式(23)もしくは式(26)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0085】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0086】
上記原料(23)及び(26)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0087】
次に、工程8について説明する。工程8では上記工程3と同様の方法を適用し、中間体(25)もしくは中間体(28)を合成することができる。
【0088】
次に、工程9について説明する。工程9では上記工程2と同様の方法を適用し、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成することができる。
【0089】
次に、方法(iii)について詳細に説明する。
【0090】
【化14】
【0091】
【化15】
【0092】
【化16】
【0093】
[式(20)、式(29)乃至(34)中のL及びR乃至R11は、式(1)もしくは式(2)のL及びR乃至R11と同義である。Xは、反応して式(1)もしくは式(2)における連結基Lを形成する置換基である。「*」はポリエステル樹脂との連結部位を表す。]
【0094】
上記に例示したスキームでは、ポリエステル樹脂の単量体を、原料(29)もしくは原料(32)を重合開始剤として、縮重合もしくは開環重合し、中間体(30)もしくは中間体(33)を合成する工程10、中間体(30)もしくは中間体(33)中のニトロ基を還元し、アニリン類縁体である中間体(31)もしくは中間体(34)を合成する工程11、アゾ色素中間体(20)とアニリン類縁体(31)もしくはアニリン類縁体(34)をジアゾカップリングさせる工程12によって、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成する。
【0095】
まず、工程10について説明する。工程10では、ヒドロキシカルボン酸類、もしくはラクトン類を縮重合もしくは開環重合する際に、重合開始剤として原料(29)もしくは原料(32)を添加することで、中間体(30)もしくは中間体(33)を合成することができる。
【0096】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、上記方法(i)の説明で挙げた溶剤を用いることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で原料(29)もしくは原料(32)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
【0097】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0098】
本工程に使用する原料(29)及び(32)において、式中のXの置換基の種類は、カルボキシル基又はヒドロキシル基を有する場合が好ましい。
【0099】
本工程に使用する原料(29)及び(32)は、多種市販されており、容易に入手可能である。例えば、2−ニトロフェノール、3−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、4−ニトロカテコール、2−ニトロベンジルアルコール、3−ニトロベンジルアルコール、4−ニトロベンジルアルコール、4−ニトロフェネチルアルコール、2−ニトロ安息香酸、3−ニトロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、4−ニトロフタル酸、5−ニトロイソフタル酸、4−ニトロフェニル酢酸等が挙げられる。
【0100】
本工程において、上記、原料(29)及び(32)のポリエステル樹脂の単量体に対する添加量によって、ポリエステル樹脂の分子量を所望の大きさに制御することができる。
【0101】
次に、工程11について説明する。工程11では上記工程3と同様の方法を適用し、アニリン類縁体(31)もしくはアニリン類縁体(34)を合成することができる。
【0102】
次に、工程12について説明する。工程12では上記工程2と同様の方法を適用し、上記式(1)もしくは(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを合成することができる。
【0103】
各工程で得られた上記式(1)、(2)、(15)、(17)、(18)、(20)、(22)、(24)、(25)、(27)、(28)、(30)、(31)、(33)及び(34)で表される化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用いることができる。単離、精製方法としては、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これらの方法を単独、又は2つ以上組み合わせて精製を行うことにより、高純度で得ることが可能である。
【0104】
上記工程で得られた上記式(15)、(17)、(18)、(20)及び(22)で表される化合物は、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、ESI−TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)、HPLC分析[LC−20A、(株)島津製作所製]により同定、定量を行った。
【0105】
上記の工程で得られた上記式(1)、(2)、(24)、(25)、(27)、(28)、(30)、(31)、(33)及び(34)で表される化合物は、高速GPC[HLC8220GPC、東ソー(株)製]、核磁気共鳴分光分析[ECA−400、日本電子(株)製]、JIS K−0070に基づく酸価測定[自動滴定測定装置COM−2500、平沼産業(株)製]により同定、定量を行った。
【0106】
次に、上記Pで表されるポリエステル樹脂(ポリエステル部位)の製造方法に関して説明する。上記ポリエステル樹脂の製造方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法を利用できる。例えば、ジカルボン酸類とジオール類を、溶剤中、不活性ガス雰囲気下で縮重合することにより製造できる。
【0107】
上記重合反応を促進するために触媒の存在下行うことが好ましい。該触媒としては、例えば、三酸化アンチモン、酸化ジ−n−ブチルスズ、シュウ酸第一スズ、ジ(2−エチルヘキサン酸)スズ、酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、酢酸マンガン、ジ(2−エチルヘキサン酸)亜鉛、酢酸亜鉛等の金属触媒が挙げられる。これら触媒の添加量は得られるポリエステル中、0.001乃至0.5モル%の範囲が好ましい。
【0108】
上記重合反応に使用する溶剤は、重合反応によって生成する水と分液分離できるものが好ましい。例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル等の溶剤等を用いることができる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
【0109】
上記重合反応は、使用する溶剤を還流し、反応で副生する水、又はアルコールを系外に除去することが、反応速度、得られるポリエステル樹脂の重合度の点で好ましい。そのため、使用する溶剤の還流温度付近で反応を行うことが好ましい。
【0110】
上記自己縮合型重合反応は、反応系中にモノカルボン酸もしくはモノアルコールを添加し、未反応ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基をエステル化することで、該ポリエステル樹脂の分子量の制御や、分散剤とした場合の顔料分散性を向上させることが可能である。
【0111】
上記ポリエステル樹脂のヒドロキシル基末端の反応停止剤として使用できるモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸、p−トルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、クミン酸、2,3,4,5−テトラメチル安息香酸等の一価カルボン酸が挙げられ、顔料分散性を向上させる点で、分岐状脂肪族カルボン酸がより好ましい。
【0112】
上記ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の反応停止剤として使用できるモノアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−アミルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール等の一価アルコール類があげられ、顔料分散性を向上させる点で、分岐状脂肪族アルコールがより好ましい。
【0113】
上記重合反応は、反応系中に三価以上の多価カルボン酸、又は多価アルコールを添加することで、架橋したポリエステル縮重合体を合成し、分散媒体との親和性を向上させることも可能である。
【0114】
三価以上の多価カルボン酸としては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0115】
三価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0116】
本発明のビスアゾ色素骨格を有するポリエステルは、アゾ顔料との親和性が高く、顔料分散剤として好適に用いることができる。
【0117】
次に、本発明の顔料組成物について説明する。本発明の顔料組成物は、本発明の化合物とアゾ顔料とを含有する。本発明の化合物は、アゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料との親和性が高く、且つ非水溶性溶剤への親和性も高い。
【0118】
本発明の顔料組成物は、塗料、インキ、樹脂成形品等に用いることができる。本発明に使用し得る顔料としては、モノアゾ顔料、ビスアゾ顔料、又はポリアゾ顔料等が挙げられる。
【0119】
その中でも、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.PigmentYellow 93、C.I.Pigment Yellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow 175、C.I.Pigment Yellow 180に代表されるアセトアセトアニリド系顔料は、上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルとの親和性がより強く好ましい。特に下記式(8)で表されるC.I.Pigment Yellow 155は、上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルによる分散効果が高いことからより好ましい。上記顔料は単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0120】
【化17】
【0121】
尚、本発明に使用し得る顔料としては、上記のような顔料以外の顔料でも、上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルと親和性がある顔料なら好適に用いることができ、限定されるものではない。
【0122】
例えば、C.I.Pigment Orange 1、C.I.Pigment Orange 5、C.I.Pigment Orange 13、C.I.PigmentOrange 15、C.I.Pigment Orange 16、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 64、C.I.Pigment Orange 67、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 16、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 32、C.I.Pigment Red 41、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 258、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 13、C.I.Pigment Violet 25、C.I.Pigment Violet 32、C.I.Pigment Violet50、C.I.Pigment Blue 25、C.I.Pigment Blue26、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41等のアゾ顔料が挙げられる。これらは粗製顔料であっても良い。
【0123】
本発明の顔料組成物における顔料とビスアゾ色素骨格を有するポリエステルとの質量組成比は、100:1乃至100:100の範囲である場合が好ましい。また、顔料分散性の点で、100:5乃至100:50の範囲であることがさらに好ましい。
【0124】
顔料組成物は、樹脂を含有していても良い。顔料組成物に使用し得る樹脂としては、顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。又、これらの分散媒を2種以上混合して用いることができる。製造された顔料組成物は、公知の方法、例えば、濾過、デカンテーションもしくは遠心分離によって単離することができる。溶剤は洗浄によって除去することもできる。
【0125】
顔料組成物を製造する際には、助剤を添加しても良い。助剤としては、表面活性剤、顔料及び非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0126】
次に、本発明の顔料分散体について説明する。本発明の顔料分散体は、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル、アゾ顔料及び非水溶性溶剤を有する。本発明の顔料分散体を得るためには、上記顔料組成物を非水溶性溶剤に分散させても良いし、上記顔料組成物の各構成成分を非水溶性溶剤に分散させても良い。具体的には、下記のようにして得られる。非水溶性溶剤中に、必要に応じて本発明の化合物及び樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料、又は顔料組成物粉末を除々に加え十分に非水溶性溶剤になじませる。更にボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
【0127】
顔料分散体に使用し得る非水溶性溶剤は、顔料分散体の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。ここで、非水溶性溶剤とは、水に溶解しない溶剤、又は25℃での水への溶解量が水の質量に対して30質量%以下の溶剤をいう。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、エクソンモービル(有)製の、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV、シェルケミカルズジャパン(株)製のシェルゾールA100、シェルゾールA150等の炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類が挙げられる。
【0128】
顔料分散体に使用し得る非水溶性溶剤は重合性単量体であっても良い。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル等のメタクリレート系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸フェニル等のアクリレート系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
顔料分散体に使用される非水溶性溶剤には、顔料分散性向上のため、必要により非水溶性溶剤と混合可能な有機溶剤を含有させることもできる。使用できる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール等のアルコール類又はフェノール類;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸、2−エチルヘキサン酸、無水酢酸等の脂肪族カルボン酸類又はその酸無水物等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0130】
顔料分散体に使用し得る樹脂としては、顔料組成物の目的用途に応じて決められる。具体的には、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。又、これらの樹脂を2種以上混合して用いることができる。
【0131】
次に、本発明のインクについて説明する。
【0132】
本発明の顔料分散体は、インクの着色剤として好適である。本発明の顔料分散体を用いることにより顔料の分散性が良好に保たれたインクが提供される。
【0133】
本発明のインクは、表面張力や粘度の調整のため、必要により顔料分散体で使用した非水溶性溶剤と混合可能な有機溶剤を含有させることもできる。使用できる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール等のアルコール類又はフェノール類;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸、2−エチルヘキサン酸、無水酢酸等の脂肪族カルボン酸類又はその酸無水物等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0134】
本発明に用いられるインクの着色剤としては、本発明に示される顔料分散体が必ず使用されるが、本発明の顔料分散体の分散性を阻害しない限りは、上記顔料分散体と他の着色剤を併用することできる。
【0135】
併用できる着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等、様々なものが挙げられる。具体的には、黄色顔料としては、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 15、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 62、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Yellow 94、C.I.Pigment Yellow 95、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.PigmentYellow 110、C.I.Pigment Yellow 111、C.I.Pigment Yellow 120、C.I.Pigment Yellow 127、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 168、C.I.Pigment Yellow 174、C.I.Pigment Yellow 176、C.I.Pigment Yellow 181、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 191、C.I.Pigment Yellow 194、C.I.Pigment Yellow 213、C.I.Pigment Yellow 214、C.I.バットイエロー1、3、20、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、C.I.Solvent Yellow 9、C.I.Solvent Yellow 17、C.I.Solvent Yellow 24、C.I.Solvent Yellow 31、C.I.Solvent Yellow 35、C.I.Solvent Yellow 58、C.I.Solvent Yellow 93、C.I.Solvent Yellow 100、C.I.Solvent Yellow 102、C.I.Solvent Yellow 103、C.I.Solvent Yellow 105、C.I.Solvent Yellow 112、C.I.Solvent Yellow 162、C.I.Solvent Yellow 163等を用いることができる。
【0136】
赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 97、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Red 216、C.I.Pigment Red 224、C.I.Pigment Red 226、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 254等、緑色顔料としては、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、ポリ(12乃至16)ブロムフタロシアニングリーン等、青色顔料としては、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 60等、紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet23等を用いることができる。
【0137】
更に、インクとする場合には、前記成分以外にも、必要に応じて、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、紫外線吸収剤、防錆剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0138】
又、本発明のインクは、良好な顔料の分散性や色調を有することから、その組成を後述するカラーフィルター用レジスト組成とすることで、カラーフィルター用インクとして使用することが可能である。
【0139】
次に、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物について説明する。
【0140】
本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、バインダー樹脂及び顔料分散体を含有する。本発明の顔料分散体を用いることにより顔料の分散性が良好に保たれ、色特性に優れたカラーフィルター用レジスト組成物が提供される。
【0141】
基板上に異なる分光特性を持つ二種以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいて、その複数の画素(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1つに本発明の顔料分散体を用いることによって、高透明で高色純度な画素を得ることができるが、特に、緑画素及び赤画素の調色用着色剤として用いることで、色特性に優れたカラーフィルター用レジスト組成物が提供される。
【0142】
カラーフィルター用レジスト組成物に使用し得るバインダー樹脂としては、公知の非反応性のランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、反応性基を有する共重合体、反応性基を有する中分子量のオリゴマー、反応性基を有する単量体、又は架橋剤を含有する重合体が挙げられる。反応性基としては、着色インクの硬化方法により決まるが、公知のメチロール基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタン基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基及びそれらの反応性誘導体等が挙げられる。
【0143】
加熱乾燥型あるいは加熱架橋型の重合体を構成する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、シクロアルキルエステル、アルキルシクロアルキルエステル、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族系ビニル単量体等が挙げられる。また、疎水性分子鎖を有するマクロモノマーとしては、上記で示した疎水性基を有する単量体の単独あるいは共重合体鎖に、α,β−エチレン性不飽和基を結合したマクロモノマーが挙げられる。
【0144】
加熱乾燥型あるいは加熱架橋型の重合体を構成する反応性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−メチロールメラミン、N−メチロールベンゾグアナミン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートエチルアクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート、2−(p−イソプロペニルフェニル)プロピル(2−)イソシアネート等が挙げられる。架橋剤と反応する基を有する分子鎖を有するマクロモノマーとしては、上記で示した反応性単量体の(共)重合体鎖あるいは反応性単量体と上記の疎水性単量体との共重合体鎖にα,β−エチレン性不飽和基を結合したマクロモノマー等が挙げられる。
【0145】
架橋剤としては、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、メトキシメチロール化メラミン、ブトキシメチロールメラミン、メトキシメチロールベンゾグアナミン、ポリ(ヘキサメチレンカルボジイミド)ジイソシアネートとビスモノメトキシポリエチレングリコール及びポリオキシエチレンソルビットモノラウレートとのウレタン反応生成物である多分岐型ポリカルボジイミド、トリメチロールプロパン−トリス(トリレンジイソシアネートアダクト)、トリメチロールプロパン−トリス(ヘキサメチレンジイソシアネートアダクト)のフェノール類からなるマスクイソシアネート等が挙げられる。
【0146】
紫外線ラジカル硬化型、光カチオン重合型、電子線硬化型、熱重合型インクにおけるバインダー樹脂としては、公知の付加重合あるいは付加架橋性を有する不飽和二重結合あるいは重合性環状エーテル基を有する単量体、オリゴマー、重合体が使用される。
【0147】
上記付加重合性オリゴマーや多官能性単量体としては、(ポリテトラメチレングリコール−ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリウレタン)−ビスアクリレート等のウレタンアクリレート類;ビスフェノールA系エポキシ樹脂−ビスアクリレート、フェノールノボラック系エポキシ樹脂−ポリアクリレート等のエポキシアクリレート類;ポリ(ヘキシレンイソフタレート)−ビスアクリレート、(トリメチロールプロパン−アジピン酸系ポリエステル)−ポリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物のジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0148】
脂環式ジエポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジオキサイド等が挙げられ、オキセタン化合物としては、オキセタンアルコール、ジオキセタン、フェニルオキセタン、キシリレンジオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン等が挙げられる。又、ビニルエーテル化合物としては、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0149】
カラーフィルター用レジスト組成物が紫外線ラジカル硬化型、光カチオン重合型、電子線硬化型、熱重合型である場合には、開始剤を含有して構成される。カラーフィルター用レジスト組成物に使用し得る光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロライド、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、ベンゾイルギ酸メチル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。光カチオン重合開始剤としてはトリアリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩等が挙げられる。増感剤としては、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。熱重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノイソバレリン酸、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0150】
カラーフィルター用レジスト組成物は上記バインダー樹脂、重合開始剤、着色剤等を良好に溶解もしくは分散させるために、必要により顔料分散体で使用した非水溶性溶剤と混合可能な有機溶剤を含有させることもできる。使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、フェノール等のアルコール類又はフェノール類;アセトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸、2−エチルヘキサン酸、無水酢酸等の脂肪族カルボン酸類又はその酸無水物等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0151】
さらに、カラーフィルター用レジスト組成物をガラス基板に塗布する場合には、該組成物中に反応性有機官能基を有するシランカップリング剤を添加することによって、形成される着色膜のガラス基板に対する密着性が向上し、優れた塗膜性能をもたらすことができる。これらの化合物としては、公知のシランカップリング剤が使用される。反応性有機官能基を有するシランカップリング剤としては、エポキシ基、チオール基、水酸基、アミノ基、ウレイド基、ビニル基、アクリロイル基等を有するシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0152】
以上のように、本発明のカラーフィルター用レジスト組成物は、着色剤として本発明の顔料分散体を含有して構成されるので、顔料分散性が良好に保たれ、色特性に優れたカラーフィルター用レジスト組成物を提供することができる。
【実施例】
【0153】
以下の記載で「部」、「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0154】
以下に本実施例で用いられる測定方法を示す。
【0155】
(1)分子量測定
ポリエステル樹脂(ポリエステル部位)、及びビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すように行った。
【0156】
サンプル濃度が1.0%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 :高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム :LF−804の2連
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.025ml
又、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500]により作成した分子量校正曲線を使用した。
【0157】
(2)酸価測定
ポリエステル樹脂(ポリエステル部位)、及び上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの酸価は以下の方法により求められる。
【0158】
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をW(g)とする。
2)50mlのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン/エタノール(2/1)の混合液25mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う[例えば、平沼産業(株)製自動滴定測定装置「COM−2500」等が利用できる。]。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOH溶液のファクターである。
【0159】
【数1】
【0160】
(3)組成分析
上記ポリエステル樹脂、及び上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの構造決定は以下の装置を用いて行った。
H NMR
日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤 重クロロホルム)
下記方法で、上記Pで表されるポリエステル樹脂を得た。
【0161】
<ポリエステル樹脂の合成例1>
四口フラスコ中、ビスフェノールAエチレンオキサイド1.0モル付加物31.6部、テレフタル酸14.8部、架橋剤としてグリセリン5.5部、触媒として酸化ジ−n−ブチルスズ0.0005部を、不活性ガスとして窒素ガスを導入しながら200℃で加熱溶融し撹拌した。副生する水の流出が終了した後、約1時間かけて230℃まで昇温し、2時間加熱撹拌し、溶融状態で樹脂を取り出した。常温で冷却し、水洗することにより樹脂(A)を得た。得られた樹脂(A)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0162】
[樹脂(A)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=10508、数平均分子量(Mn)=3543
[2]酸価測定の結果:
11.6mgKOH/g
[3]H NMR(400MHz、CDCl、室温)の結果:δ[ppm]=8.06(3.7H、s)、7.15(4H、d)、6.89(4H、d)、5.48−5.32(0.6H、m)、4.72−3.63(2.4、m)、1,68(6H、s)、1.47(4H、d)、1.42−1.22(4H、m)
【0163】
<ポリエステル樹脂の合成例2>
四口フラスコに、12−ヒドロキシステアリン酸200部、ヒドロキシル基末端封止用のステアリン酸8.24部、キシレン56.8部を加え、140℃で加熱溶解した。混合液中に、触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.485部を添加し、180℃まで液温を上昇させた。液温を保持し、反応で副生する水を除去しながら、42時間撹拌した。反応終了後、キシレンを留去し、減圧乾燥することで樹脂(B)を得た。得られた樹脂(B)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0164】
[樹脂(B)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=5069、数平均分子量(Mn)=2636
[2]酸価測定の結果:
31.9mgKOH/g
[3]H NMR(400MHz、CDCl、室温)の結果:δ[ppm]=4.99(1H、m)、2,19(2H、t)、2.10(0.5H、t)、1,61−1.42(7H、m)、1.28−1.15(28H、m)、0.88(4H、t)
【0165】
<ポリエステル樹脂の合成例3>
四口フラスコに、ε−カプロラクトン50.0部、2−エチルヘキサノール0.57部を撹拌混合し、液温を120℃に昇温し加熱溶融した。混合液中に、触媒としてチタンテトライソプロポキシド0.04部を添加し、5時間撹拌した。反応終了後、THFで希釈し、メタノールで再沈させ、析出した沈殿を濾別することで樹脂(C)を得た。得られた樹脂(C)は上記装置により物性確認を行った。以下に分析結果を示した。
【0166】
[樹脂(C)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=7198、数平均分子量(Mn)=9722
[2]酸価測定の結果:
1.13mgKOH/g
[3]H NMR(400MHz、CDCl、室温)の結果:δ[ppm]=4.06(78H、t)、3.65(2H、t)、2.63(0.5H、t)2.31(78H、t)、1.67−1.22(243H、m)、0.89(2.5H、m)
上記樹脂(A)乃至(C)に準じた方法で、下記表1に記載する樹脂(D)乃至樹脂(J)を得た。結果を以下に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
下記方法で、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを得た。
【0169】
<アゾ色素中間体(74)の合成例1>
下記構造で表されるアゾ色素中間体(74)を下記スキームに従い製造した。
【0170】
【化18】
【0171】
【化19】
【0172】
クロロホルム30部にp−ニトロアニリン(68)3.11部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(69)1.89部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(70)4.80部を得た(収率96.0%)。
【0173】
2−アミノテレフタル酸ジメチル(71)4.25部に、メタノール40.0部、濃塩酸5.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10部を水6.00部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.990部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、上記化合物(70)4.51部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム5.83部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(72)8.65部を得た(収率96.1%)。
【0174】
N,N−ジメチルホルムアミド150部に上記化合物(72)8.58部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.40部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(73)7.00部を得た(収率87.5%)。
【0175】
クロロホルム30.0部に化合物(73)6.50部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(69)0.95部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮してアゾ色素中間体(74)6.92部を得た(収率93.0%)。
【0176】
<ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの合成例1>
得られたアゾ色素中間体(74)から、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を下記スキームに従い製造した。
【0177】
【化20】
【0178】
【化21】
【0179】
[「*」はポリエステル樹脂との連結部位を表す]
実施例1で合成したポリエステル樹脂(A)10.0部をピリジン50.0部に溶解させ、10℃以下に氷冷した。この溶液に、化合物(75)2.00部を加え、室温で12時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し有機相を水洗した後、溶液を濃縮し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(76)9.5部を得た(収率95.0%)。
【0180】
脱水テトラヒドロフラン20.0部に上記化合物(76)9.50部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.66部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.01乃至0.1MPa)、室温で48時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(77)8.7部を得た(収率91.6%)。
【0181】
化合物(77)8.0部に、テトラヒドロフラン40.0部、濃塩酸0.50部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.18部を水0.60部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた(ジアゾニウム塩溶液)。N,N−ジメチルホルムアミド50.0部に、化合物(74)0.70部を加えて80℃に加熱して溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、炭酸カリウム0.89部を水1.8部に溶解させたものを加えて10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加え、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、溶液を濃縮し、クロロホルムで抽出し有機相を水洗した後、溶液を濃縮し、メタノールでの再沈殿による精製で、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)7.50部を得た。(収率93.8%)。
【0182】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0183】
[ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=18065、数平均分子量(Mn)=9523
[2]酸価測定の結果:
0.3439mgKOH/g
[3]H NMR(400MHz、CDCl、室温)の結果(図1参照)δ[ppm]=15.64(s、1H)、14.77(s、1H)、11.43(s、1H)、8.61(s、1H)、8.04(m、68H)、7.13(m、74H)、6.81(m、73H)、5.49−5.29(m、32H)、4.71(m、3H)、4.44(m、8H)、3.91(m、94H)、2.68(s、3H)、2.17(s、1H)、1.85−1.22(m、283H)
【0184】
<ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(38)の合成例2>
上記アゾ色素中間体(74)から、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(38)を下記スキームに従い製造した。
【0185】
【化22】
【0186】
【化23】
【0187】
[「*」はポリエステル樹脂との連結部位を表す]
【0188】
実施例1で合成したポリエステル樹脂(D)20.0部を脱水テトラヒドロフラン50.0部に溶解し、パラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.53部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.05乃至0.1MPa)、室温で24時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(78)18.3部を得た(収率91.5%)。
【0189】
化合物(78)15.0部に、テトラヒドロフラン50.0部、濃塩酸0.69部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.29部を水0.87部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた(ジアゾニウム塩溶液)。N,N−ジメチルホルムアミド75.0部に、化合物(74)1.17部を加えて80℃に加熱して溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、炭酸カリウム1.41部を水2.80部に溶解させたものを加えて10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加え、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、溶液を濃縮し、クロロホルムで抽出し有機相を水洗した後、溶液を濃縮し、メタノールでの再沈殿による精製で、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(38)11.0部を得た。(収率73.3%)。
【0190】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0191】
[ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(38)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=12242、数平均分子量(Mn)=10636
[2]酸価測定の結果:
1.449mgKOH/g
[3]H NMR(400MHz、CDCl、室温)の結果(図2参照)
δ [ppm]=15.64(s、1H)、14.77(s、1H)、11.50(s、1H)、11.41(s、1H)、8.62(s、1H)、8.16(d、1H)、7.79(d、1H)、7.74(d、2H)、7.64(d、2H)、7.52(s、2H)、7.36(d、2H)、4.30(t、2H)、4.06(t、157H)、3.65(t、2H)、2.95(t、2H)、2.69(s、3H)、2.59(s、3H)、2.31(t、152H)、1.69−1.22(m、715H)
上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)及び(38)の製造例と同様の操作を行い、式(1)もしくは式(2)で表されるビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(36)、(37)、(39)乃至(67)を製造した。下記表2に上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを示す。
【0192】
【表2-1】
【0193】
【表2-2】
【0194】
[表2中、「−位」は式(79)、(80)、(81)又は(82)中のヒドラゾ基における置換位置を表す。水素原子以外の置換基が付いている箇所が、−L―の置換位置である(例えば、ビスアゾ骨格を有するポリエステル(35)では4位に−L−が置換している)。Phは無置換のフェニル基を表し、(n)、(i)はそれぞれアルキル基が直鎖状、分岐状であることを表す。「*」はポリエステル樹脂との連結部位を表す。一般式欄中の式(79)乃至(82)は、下記構造を表す。]
【0195】
【化24】
【0196】
【化25】
【0197】
【化26】
【0198】
【化27】
【0199】
下記式(83)及び(84)で表されるアゾ色素骨格を有する化合物を上記製造方法に従い製造した後、上記化合物中のアミノ基と樹脂(A)のカルボキシル基をアミド化することで比較用化合物(83)及び(84)を得た。
【0200】
【化28】
【0201】
【化29】
【0202】
顔料分散体を下記の方法で調製した。
【0203】
<顔料分散体の調製例1>
アゾ顔料として式(8)で表される顔料18.0部、顔料分散剤として上記ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)3.6部、非水溶性溶剤としてスチレン180部、ガラスビーズ(直径φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散体(a)を得た。
【0204】
<顔料分散体の調製例2>
顔料分散体の調製例1においてビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を、(36)乃至(67)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散体(b)乃至(ag)を得た。
【0205】
<顔料分散体の調製例3>
上記顔料分散体の調製例1において、スチレンをトルエン又はアクリル酸ブチルに変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(ah)、(ai)を得た。
【0206】
<顔料分散体の調製例4>
上記顔料分散体の調製例1において、式(8)で表される顔料を下記式(85)又は式(86)で表される顔料に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散体(aj)及び(ak)を得た。
【0207】
【化30】
【0208】
評価の基準値となる顔料分散体、比較用の顔料分散体を下記方法により調製した。
【0209】
<基準用顔料分散体の調製例1>
顔料分散体の調製例1において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用顔料分散体(al)を得た。
【0210】
<基準用顔料分散体の調製例2>
顔料分散体の調製例3において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用顔料分散体(am)及び(an)を得た。
【0211】
<基準用顔料分散体の調製例3>
顔料分散体の調製例4において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用顔料分散体(ao)及び(ap)を得た。
【0212】
<比較用顔料分散体の調製例1>
顔料分散体の調製例1において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を、特許文献1に記載のポリマー分散剤Solsperse 24000SC(登録商標)[Lubrizol社製]、比較用化合物(83)又は(84)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ比較用顔料分散体(aq)乃至(as)を得た。
【0213】
ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを使用した顔料分散体(a)乃至(ak)を下記の方法で評価した。
【0214】
<顔料分散性評価>
ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルの顔料分散性を、上記顔料分散体の塗工膜の光沢試験を行うことで評価した。顔料分散体をスポイトですくい取り、スーパーアート紙[SA金藤 180kg 80×160、王子製紙(株)製]上部に直線上に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗工し、乾燥後の光沢度(反射角:60°)を光沢計Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定した。顔料がより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し光沢が向上する。また、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを加えていない基準用顔料分散体についても、同様に光沢度を測定し、基準用顔料分散体の光沢度を基準とした、光沢向上率によって上記顔料分散体を評価した。なお、顔料分散体(a)乃至(ag)の光沢向上率は、基準用顔料分散体(al)を基準とした。顔料分散体(ah)の光沢向上率は、基準用顔料分散体(am)を基準とした。顔料分散体(ai)の光沢向上率は、基準用顔料分散体(an)を基準とした。顔料分散体(aj)の光沢向上率は、基準用顔料分散体(ao)を基準とした。顔料分散体(ak)の光沢向上率は、基準用顔料分散体(ap)を基準とした。
A:光沢向上率が20%以上である。
B:光沢向上率が10%以上、20%未満である。
C:光沢向上率が1%以上、10%未満である。
D:光沢向上率が1%未満であるか、又は光沢度が低下する。
【0215】
光沢向上率が10%以上であれば良好な顔料分散性であると判断した。
【0216】
顔料分散体(a)乃至(ak)の評価結果を表3に示す。
【0217】
比較用顔料分散体(aq)乃至(as)の光沢向上率についても同様に評価した。評価結果を表3に示す。
【0218】
【表3】
【0219】
表3より、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルは分散性良好なアゾ顔料分散体を与えることから、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルがアゾ顔料分散剤として有用であることが確認された。
【0220】
<顔料分散体の調製例5>
アゾ顔料として前記式(8)で表される顔料42.0部、顔料分散剤として前記アゾ化合物(35)8.4部をハイブリダイゼーションシステム NHS−0[(株)奈良機械製作所製]によって、乾式混合し、顔料組成物を調製した。得られた顔料組成物の18.0部を、スチレン180部およびガラスビーズ(直径1mm)130部と混合し、ペイントシェーカー[(株)東洋精機製作所製]で1時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に対して、上記の顔料分散性の評価を行ったところ、同様に良好な顔料分散性が得られることが確認された。
【0221】
次に、インクを下記の方法で調製した。
【0222】
<インクの調製例1>
下記組成物とガラスビーズ(直径φ1mm)90.00部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過してインク(1)を得た。
・C.I.ピグメントグリーン36:6.00部
・式(8)で表される顔料:4.00部
・ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35):2.00部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:70.00部
<インクの調製例2>
上記インクの調製例1においてビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を、(38)、(45)、(46)、(50)、(52)、(53)、(64)、(66)及び(67)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれインク(2)乃至(10)を得た。
【0223】
<インクの調製例3>
上記インクの調製例1において、上記式(8)で表される顔料を式(85)、(86)で表される顔料に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれインク(11)及び(12)を得た。
【0224】
評価の基準値となるインク、比較用のインクを下記方法により調製した。
【0225】
<基準用インクの調製例1>
インクの調製例1において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用インク(13)を得た。
【0226】
<基準用インクの調製例2>
インクの調製例3において、ビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用インク(14)及び(15)を得た。
【0227】
<比較用インクの調製例1>
インクの調製例1においてビスアゾ色素骨格を有するポリエステル(35)を、特許文献1に記載のポリマー分散剤Solsperse 24000SC(登録商標)[Lubrizol社製]、比較用化合物(83)又は(84)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ比較用インク(16)乃至(18)を得た。
カラーフィルター用レジスト組成物を下記の方法で調製した。
【0228】
<カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1>
・メチル化ベンゾグアナミン樹脂:15.00部
[(株)三和ケミカル製](バインダー樹脂)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:40.00部
インク(1)に上記成分の溶液をゆっくり加え、室温で3時間攪拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することで、カラーフィルター用レジスト組成物(a)を得た。
【0229】
<カラーフィルター用レジスト組成物の調製例2>
カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1においてインク(1)を、インク(2)乃至(10)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれカラーフィルター用レジスト組成物(b)乃至(j)を得た。
【0230】
<カラーフィルター用レジスト組成物の調製例3>
カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1においてインク(1)を、インク(11)及び(12)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれカラーフィルター用レジスト組成物(k)及び(l)を得た。
【0231】
評価の基準値となるカラーフィルター用レジスト組成物、比較用のカラーフィルター用レジスト組成物を下記方法により調製した。
【0232】
<基準用カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1>
カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1においてインク(1)を、インク(13)に変更した以外は同様の操作を行って、基準用カラーフィルター用レジスト組成物(m)を得た。
【0233】
<基準用カラーフィルター用レジスト組成物の調製例2>
カラーフィルター用レジスト組成物の調製例1においてインク(1)を、インク(14)、(15)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ基準用カラーフィルター用レジスト組成物(n)及び(o)を得た。
【0234】
<比較用カラーフィルター用レジストの調製例1>
カラーフィルター用レジストの調製例1においてにおいてインク(1)を、インク(16)乃至(18)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ比較用カラーフィルター用レジスト(p)乃至(r)を得た。
【0235】
ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを使用したカラーフィルター用レジスト組成物及び比較用カラーフィルター用レジストを下記の方法で評価した。
【0236】
<色特性評価>
ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを使用したカラーフィルター用レジスト組成物(a)乃至(l)の色特性を、上記レジスト組成物をガラス基盤にインクジェット式塗布実験装置で吐出し、明度試験を行うことで評価した。カラーフィルター用レジスト組成物をカートリッジに装填し、ブラックマトリックスで画素形成されたガラス基板へ吐出させ、180℃で2時間乾燥を行った。緑フィルターをy=0.6となるよう膜厚を調整し、色特性(x,y,Y)を顕微分光光度計で測定した。顔料がより微細に分散するほど、緑の色度での明度Yが向上する。ビスアゾ色素骨格を有するポリエステルを加えていない上記カラーフィルター用レジスト組成物(m)乃至(o)の緑フィルターの明度Yを基準値として、上記カラーフィルター用レジスト組成物(a)乃至(l)の緑フィルターの明度Yの向上率を下記のように評価した。なお、カラーフィルター用レジスト組成物(a)乃至(j)の明度向上率は、基準用カラーフィルター用レジスト組成物(m)を基準とし、カラーフィルター用レジスト組成物(k)の明度向上率は、基準用カラーフィルター用レジスト組成物(n)を基準とし、カラーフィルター用レジスト組成物(l)の明度向上率は、基準用カラーフィルター用レジスト組成物(o)を基準とした。明度向上率が10%以上であれば良好な色特性を有すると判断した。
A:明度向上率が20%以上である。
B:明度向上率が10%以上、20%未満である。
C:明度向上率が1%以上、10%未満である。
D:明度向上率が1%未満であるか、又は明度が低下する。
【0237】
カラーフィルター用レジスト組成物(a)〜(l)の評価結果を表4に示す。
比較用カラーフィルター用レジスト組成物(p)乃至(r)の明度向上率についても同様に評価した。評価結果を表4に示す。
【0238】
【表4】
【0239】
表4より、カラーフィルター用レジスト組成物(a)乃至(l)は、顔料分散状態が良好で色特性に優れていることから、本発明の顔料分散体はインク及びカラーフィルター用レジスト組成物の着色剤として有用であることが確認された。
図1
図2