特許第6049420号(P6049420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049420
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】光コネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   G02B6/36
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-257756(P2012-257756)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-106296(P2014-106296A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年8月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八若 正義
(72)【発明者】
【氏名】藤本 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−124908(JP,A)
【文献】 特表平11−501735(JP,A)
【文献】 特開2010−286548(JP,A)
【文献】 特開平08−243930(JP,A)
【文献】 米国特許第06137930(US,A)
【文献】 米国特許第06253007(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02− 6/036
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36− 6/40
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、
軸方向に前記光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端部において前記貫通孔に収納された前記光ファイバの先端面が露出しているフェルールと
を備え、
前記貫通孔は、前記先端部に向かって径が小さくなるとともに前記先端部まで連続しているテーパ形状を有しており、
前記光ファイバは、前記フェルールの貫通孔内に存する部分において、前記先端部に向かって先細となるテーパ形状を有しており、
前記貫通孔のテーパ角は前記光ファイバのテーパ角以上であり、両テーパ角の差は1°以内であり、
前記光ファイバの先端面の周囲は前記貫通孔に密着している、光コネクタ。
【請求項2】
前記光ファイバの横断面と、前記貫通孔の横断面とが同じ形状を有している、請求項1に記載されている光コネクタ。
【請求項3】
前記光ファイバの横断面と前記貫通孔の横断面とは、円、正多角形及び1本の弦と弧との組み合わせのいずれか一つである、請求項に記載されている光コネクタ。
【請求項4】
前記光ファイバの最大径をA、前記フェルールの先端部の孔径をB、前記フェルールの後端部の孔径をCとしたときに、B<A<Cである、請求項1からのいずれか一つに記載されている光コネクタ。
【請求項5】
前記光ファイバは複数のコアを有するマルチコアファイバである、請求項1からのいずれか一つに記載されている光コネクタ。
【請求項6】
軸方向に光ファイバを収納するための貫通孔を有しているフェルールの、当該貫通孔に接着剤を挿入する工程と、
前記貫通孔に光ファイバを挿入する工程と、
前記接着剤を硬化させる工程と、
前記フェルールの先端に露出した前記光ファイバの端面を研磨する工程と
を含み、
前記光ファイバは、少なくとも一方の先端部分が、先端に向かって先細となるテーパ形状を有しており、
前記フェルールは、前記貫通孔が、先端部に向かって径が小さくなるとともに前記先端部まで連続しているテーパ形状を有しており、
前記貫通孔のテーパ角は前記光ファイバのテーパ角以上であり、両テーパ角の差は1°以内であり、
前記光ファイバの先端面の周囲は前記貫通孔に密着しており、
前記光ファイバの前記テーパ形状を有した先端部分を前記貫通孔に挿入する、光コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光コネクタは、2本の光ファイバの端面を正確に突き合わせ、両光ファイバ間において光信号が良好に伝達されるように、2本の光ファイバを接続するのに用いられる部材であって、一例としてセラミック製のフェルール内に光ファイバが固定され、フェルール先端に光ファイバ端面が露出した構造のものを挙げることができる。
【0003】
このような光コネクタについて、特許文献1にはフェルール内部の光ファイバを収納する貫通孔を、光ファイバの挿入部に続く部分と、微少段差を介してこの部分に連続する内径研磨された部分とを有する形状とすることにより、境界部にエッジの生じないフェルールとすることができて光ファイバに傷を付けない技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−329846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、光ファイバを収納保持する内径研磨された貫通孔の部分は光ファイバを確実に挿入できるように、内径が光ファイバ径よりも大きく設定されている。このような径の設定により光ファイバを、貫通孔の途中に引っかかることなく貫通孔先端出口まで通すことができる。
【0006】
しかしながら上述のように貫通孔内径が光ファイバ径よりも大きいと、ファイバ中心軸に直交する面内において、光ファイバ中心の位置が貫通孔内で定まらない、という問題があった。
【0007】
光ファイバとフェルールとは貫通孔内に入れられた接着剤によって固定されるのであるが、径の大きさの違いから光ファイバの中心軸と貫通孔の中心軸とは一致せず、貫通孔の中心に対して光ファイバの中心がどこに存しているのかが不明確になり、光コネクタ端面においては、フェルールの中心軸と光ファイバのコアとがずれた状態となっていた。このような状態であると、2つの光コネクタ同士を突き合わせたときに、フェルールの中心軸=貫通孔の中心軸を一致させることはできても光ファイバの中心軸=コアの位置を一致させることができなくて、接続損失が生じてしまっていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コア同士の位置合わせが容易で接続損失の小さい光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の光コネクタは、光ファイバと、軸方向に前記光ファイバを収納するための貫通孔を有し、先端部において前記貫通孔に収納された前記光ファイバの先端面が露出しているフェルールとを備え、前記貫通孔は、前記先端部に向かって径が小さくなるテーパ形状を有しており、前記光ファイバは、前記フェルールの貫通孔内に存する部分において、前記先端部に向かって先細となるテーパ形状を有している構成を有している。
【0010】
ある好適な実施形態において、前記貫通孔のテーパ角は前記光ファイバのテーパ角以上であり、両テーパ角の差は1°以内である。
【0011】
前記光ファイバの先端面の周囲は前記貫通孔に密着していることが好ましい。
【0012】
前記光ファイバの横断面と、前記貫通孔の横断面とが同じ形状を有していてもよい。前記光ファイバの横断面と前記貫通孔の横断面とは、円、正多角形及び1本の弦と弧との組み合わせのいずれか一つであることが好ましい。
【0013】
前記光ファイバの最大径をA、前記フェルールの先端部の孔径をB、前記フェルールの後端部の孔径をCとしたときに、B<A<Cとすることが好ましい。
【0014】
前記光ファイバは複数のコアを有するマルチコアファイバであることが好ましい。
【0015】
本発明の光コネクタの製造方法は、軸方向に光ファイバを収納するための貫通孔を有しているフェルールの、当該貫通孔に接着剤を挿入する工程と、前記貫通孔に光ファイバを挿入する工程と、前記接着剤を硬化させる工程と、前記フェルールの先端に露出した前記光ファイバの端面を研磨する工程とを含み、前記光ファイバは、少なくとも一方の先端部分が、先端に向かって先細となるテーパ形状を有しており、前記フェルールは、前記貫通孔が、先端部に向かって径が小さくなるテーパ形状を有しており、前記光ファイバの前記テーパ形状を有した先端部分を前記貫通孔に挿入する構成を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光コネクタは、光ファイバのコアの位置をフェルールの中心軸と容易に一致させることができ、光コネクタ同士を突き合わせて接続させるときにコアの位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は実施形態1に係る光コネクタの先端部分の端面を示す模式的な図であり、(b)は実施形態1に係る光コネクタの断面を示す模式的な図である。
図2】実施形態2に係る光コネクタに用いられる光ファイバの端面を示す模式的な図である。
図3】実施形態3に係る光コネクタに用いられる光ファイバの端面を示す模式的な図である。
図4】実施形態4に係る光コネクタに用いられる光ファイバの端面を示す模式的な図である。
図5】(a)は比較の形態に係る光コネクタの先端部分の端面を示す模式的な図であり、(b)は比較の形態に係る光コネクタの断面を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0019】
(実施形態1)
実施形態1に係る光コネクタを図1に示す。光コネクタ100は、光ファイバ20内を伝達してきた光信号を別の光ファイバに受け渡すために用いられるものであり、略円筒形のフェルール10の中心軸方向に延びる貫通孔12に光ファイバ20を挿入し、フェルール10先端に光ファイバ20の端面が露出した構成を有している。このような光コネクタ100を2つ用意して円筒形のスリーブに差し込み、先端同士を突き合わせて固定を行うことにより光ファイバの接続を行う。フェルール10の先端面と光ファイバ20の先端面は面一となっている。
【0020】
本実施形態の光ファイバ20は中心軸部分にのみコア22が存しているシングルコアの光ファイバであり、ファイバ横断面の形状は円形である。またフェルール10の貫通孔12の横断面形状も円形である。
【0021】
本実施形態では、フェルール10の貫通孔12は先端側に行くに従って径が徐々に小さくなっていくテーパ形状を有している。なお図1(b)において左端が光コネクタ100及びフェルール10の先端である。そして光ファイバ20も少なくとも貫通孔12内において先端部に行くに連れて径が徐々に小さくなっているテーパ形状を有している。
【0022】
貫通孔12のテーパ角は光ファイバ20のテーパ角以上の大きさであり、この関係により光コネクタ100の先端部分において、光ファイバ20の先端面の周囲は全周に渡って貫通孔12に密着している。そして光コネクタ100の後端部に行くに従って光ファイバ20と貫通孔12との間に隙間ができるので、そこに接着剤30をいれてフェルール10と光ファイバ20とを接着させて固定している。なおテーパ角とは、中心軸と貫通孔12内壁とがなす角、及び中心軸と光ファイバ20外壁とのなす角のことである。
【0023】
次に光コネクタ同士の接続について説明する。
【0024】
2つの光コネクタ100の接続においては、光ファイバ20のコア22同士を位置ずれなく突き合わせることが重要である。すなわち、光信号が通過するコア22同士が光ファイバ20端面において露出している面同士をほぼ全面に渡って接触させる必要があり、コア22同士の接触面積が小さくなると、接続損失が大きくなってしまう。
【0025】
たとえば図5に示す比較の形態に係る光コネクタ200では、軸方向においてフェルール210の貫通孔212の内径が一定であり、光ファイバ220の径も一定である。光コネクタ200は、フェルール210の貫通孔212に光ファイバ220を挿入して作成するので、貫通孔212の径は光ファイバ220の径よりも大きく設定されている。従って、比較の形態に係る光コネクタ200ではフェルール210内で軸方向の全域にわたって貫通孔212と光ファイバ220との間に隙間ができてしまう。この隙間には接着剤230が入れられてフェルール210と光ファイバ220とを固定している。
【0026】
図5(a)に示すように、比較の形態に係る光コネクタ200はその端面においてフェルール210の中心軸と光ファイバ220の中心軸(コア222が存している)とが一致せず、ずれてしまう。上述の通り、光コネクタによる光ファイバの接続は、スリーブに差し込んだ2つの光コネクタの端面同士を突き合わせることによってなされるので、2つの光コネクタはその中心軸同士が略一致するように接続される。光コネクタの中心軸は、フェルールの中心軸であるので、比較の形態に係る光コネクタ200を2つ用いて2本の光ファイバ220を接続すると、コア222同士のずれは最大で光ファイバ220と貫通孔212との径の差異の分となる。光ファイバ220として径が124μmのシングルモードファイバであってモードフィールド径が9.2μm(λ=1.31μm)の光ファイバを用い、フェルール210の貫通孔212の径を127μmとすると、コア222同士のずれが最大で3μmとなり、計算上で0.46dBの接続損失が生じる。
【0027】
一方本実施形態に係る光コネクタ100では、図1(a)に示すように、先端面において光ファイバ20の外周がフェルール10の貫通孔12に全周密着しており、光ファイバ20の中心軸とフェルール10の中心軸とが一致している。従って2つの光コネクタ100同士を接続するときには、光ファイバ20の中心軸部分にあるコア22同士がほぼずれることなく全面的に接続される。このようにコア22同士のずれが0であるときは、計算上の接続損失は発生しない。
【0028】
このように本実施形態では、フェルール10の貫通孔12及び光ファイバ20の両方がテーパ形状を有しているので、フェルール10の先端面において光ファイバ20の外周がフェルール10の貫通孔12に全周密着してフェルール10の中心軸上に光ファイバ20のコア22が位置するため、光コネクタ100同士をスリーブに差し込んで先端を突き合わせるだけで双方のコア22を位置ずれなく突き合わせて全面的に接触させることができる。このため単に2つの光コネクタ100をスリーブに差し込んで突き合わせるだけで、接続損失が小さく抑えられた接続を行うことができる。
【0029】
次に本実施形態の光コネクタ100の製法について説明する。
【0030】
貫通孔12がテーパ形状を有しているフェルール10は、射出成形等により作成することができる。この場合、貫通孔を形成する型をテーパ形状としておいてもよいし、径が一定の貫通孔を有したフェルールを作成した後に、貫通孔をテーパ加工してもよい。
【0031】
先端部分がテーパ形状を有する光ファイバ20は、径が一定の光ファイバの先端をテーパ加工して作成する。テーパ加工は熱加工、切削研磨加工、溶解加工など種々あるが、フッ酸を用いた溶解加工が簡便でテーパ角を正確に調節できるため、好ましい。フッ酸を用いた溶解加工では、たとえば、フッ酸中に光ファイバの所定長さの先端部分を浸漬し、等速で光ファイバを引き上げた後にフッ酸を除去する加工を行う。なお、光ファイバ20は貫通孔12内に存している部分がテーパ形状を有しているように加工を行えばよい。
【0032】
テーパ加工されたフェルール10及び光ファイバ20を準備したら、フェルール10の貫通孔12内に接着剤を挿入する。接着剤の種類は特に限定されないが、後工程が簡単になるよう熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。
【0033】
それからフェルール10後端から光ファイバ20を貫通孔12に挿入する。フェルール10の貫通孔12は、後端の径が光ファイバ20のテーパ加工されていない部分の径よりも大きく、先端の径がテーパ加工された光ファイバ20の先端径よりも大きく設定されていることが好ましく、このような設定であると光ファイバ20の先端が貫通孔12の先端から突き出して、光ファイバ20の径と貫通孔12先端径とが一致するところで挿入が終了し、貫通孔12先端において光ファイバ20が全周に渡って貫通孔12に密着する。
【0034】
次に接着剤を硬化させて光ファイバ20とフェルール10とを固定させる。熱硬化性の接着剤であれば高温状態とすればよい。
【0035】
それから光ファイバ20の先端を研磨してフェルール10先端と面一となるようにする。このようにして本実施形態の光コネクタ100ができあがる。
【0036】
なお、上記製法は一つの例であって、別の製法により製造してもかまわない。たとえば貫通孔12に光ファイバ20を挿入してから接着剤を挿入してもよい。
【0037】
本実施形態の光コネクタ100は、特別な位置合わせをしなくても、スリーブに差し込むといった従来の公知の方法で簡単に光ファイバ20のコア22同士を位置ずれなく突き合わせることができ、接続損失を低く抑えることができる。また、本実施形態の光コネクタ100はテーパ形状の貫通孔12を有するフェルール10と、先端部分がテーパ形状の光ファイバ20とを用意するだけで容易に作製することができる。また、テーパ形状の貫通孔12を有するフェルール10と、先端部分がテーパ形状の光ファイバ20も容易に作製することができる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態2では、用いる光ファイバがマルチコアファイバである点が実施形態1と異なっており、それ以外の点は実施形態1と同じであるので、実施形態1と異なっている点を以下に説明する。
【0039】
本実施形態に用いる光ファイバの端面を図2に示す。この光ファイバ23は横断面の形状が円形であり、円形のクラッド41の中心に1本、周囲に正六角形の配置で6本、計7本のコア24を有しているマルチコアファイバである。すなわち、コア24の配置はファイバ横断面において正六角形の各頂点に1つずつ、および正六角形の中心に1つであり、正六角形の中心は光ファイバ23の中心軸上に位置する。
【0040】
本実施形態においても実施形態1と同様に、先細のテーパ形状を有する貫通孔を備えたフェルールに、先細のテーパ形状を有した光ファイバ23が差し込まれて光コネクタが形成され、光ファイバ23の先端面は全周が貫通孔に密着している。
【0041】
本実施形態のようにマルチコアファイバ同士を接続する場合は、接続損失を抑えるためには複数のコア同士をずれなく突き合わせる必要がある。そのためには2本の光ファイバの中心軸同士を一致させるのと同時に、中心軸周りの回転角も一致させる必要がある。
【0042】
本実施形態の光コネクタでは、フェルールの中心軸と光ファイバの中心軸が一致しているので、スリーブに光コネクタを差し込んで先端面を突き合わせるだけで2つの光ファイバの中心軸を一致させることができる。さらに光コネクタにおいて、たとえばコア24の正六角形配置の一つの頂点と光ファイバ中心とを結ぶ線とフェルール外面との交点部分にマークを記しておけば、2つの光コネクタをスリーブに入れるときにそのマーク同士が一致するようにするだけで、回転角も一致させることができる。このように本実施形態では、2本のマルチコアファイバの接続を、すべてのコアにおいて接続損失を小さく抑えつつ簡単に行うことができる。
【0043】
(実施形態3)
実施形態3では、用いる光ファイバの横断面形状がいわゆるD型である点が実施形態2と異なっており、それ以外の点は実施形態2と同じであるので、実施形態2と異なっている点を以下に説明する。
【0044】
本実施形態に用いる光ファイバの端面を図3に示す。この光ファイバ25は横断面の形状が円の一部を切り欠いた、いわゆるD型であり、D型のクラッド42の中心(切り欠きが無い円の中心のことである)に1本、周囲に正六角形の配置で6本、計7本のコア26を有しているマルチコアファイバである。D型というのは1本の弦と弧との組み合わせからなる図形で、弧の中心角は180°よりも大きい。
【0045】
本実施形態におけるフェルールの貫通孔は、横断面形状が光ファイバ25の外形と同じD型の形状を有しており、先端部に向かうに従って径が小さくなるテーパ形状を有している。なお、横断面がD型の光ファイバを収納するフェルールにおいて、貫通孔が先端部に向かって径が小さくなるテーパ形状を有しているというのは、貫通孔横断面の形状が光ファイバ横断面の形状と相似形のD型であって且つ弧の曲率半径が先端部に向かって小さくなっていることである。
【0046】
本実施形態の光コネクタも実施形態2と同様の効果を奏する。本実施形態では、D型の弦の部分が回転角を合わせるマークを兼ねることが可能である。
【0047】
(実施形態4)
実施形態4では、用いる光ファイバの横断面形状が正六角形である点が実施形態2と異なっており、それ以外の点は実施形態2と同じであるので、実施形態2と異なっている点を以下に説明する。
【0048】
本実施形態に用いる光ファイバの端面を図4に示す。この光ファイバ27は横断面の形状が正六角形であり、正六角形のクラッド43の中心に1本、その周囲であってクラッド43の各頂点に対応する位置に正六角形の配置で6本、計7本のコア28を有しているマルチコアファイバである。
【0049】
本実施形態におけるフェルールの貫通孔は、横断面形状が光ファイバ27の外形と同じ正六角形の形状を有しており、先端部に向かうに従って径が小さくなるテーパ形状を有している。
【0050】
本実施形態の光コネクタも実施形態2と同様の効果を奏する。本実施形態では、貫通孔の六角形の形状自体や六角形の頂点が回転角を合わせるマークを兼ねることが可能である。
【0051】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。たとえばフェルールの外形の形状は円筒形以外に先端外周を斜めに切り欠いた形状であってもよいし、フェルール後端部にフランジと呼ばれる部品を取り付けてもよい。
【0052】
フェルール貫通孔のテーパ角は特に限定されないが、0.2°以上1°以下が好ましい。同様に、光ファイバ先端部分のテーパ角も貫通孔のテーパ角にあわせて、0.2°以上1°以下が好ましい。
【0053】
マルチコアファイバを用いる場合は、コアの数やコアの配置は特に限定されず、公知のコア数やコア配置のマルチコアファイバを用いることができる。光ファイバの外形も横断面円形、D型、正六角形に限定されず、正方形や正五角形、正八角形などでもよい。なお、多角形の場合は、光ファイバの製造上の制約により角が落とされた形状となる場合もあり、そのような角が落とされた形状も本願の多角形に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明に係る光コネクタは、低接続損失の光ファイバ同士の接続を容易に行うことができ、光通信用光ファイバの接続部品等として有用である。
【符号の説明】
【0055】
10 フェルール
12 貫通孔
20 光ファイバ
22 コア
23 光ファイバ(マルチコアファイバ)
24 コア
25 光ファイバ(マルチコアファイバ)
26 コア
27 光ファイバ(マルチコアファイバ)
28 コア
30 接着剤
41 クラッド
42 クラッド
43 クラッド
100 光コネクタ
200 光コネクタ
210 フェルール
212 貫通孔
220 光ファイバ
222 コア
230 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5