(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049422
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】歯科インプラント用フィクスチャーおよび歯科インプラント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-258790(P2012-258790)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-104121(P2014-104121A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】504418084
【氏名又は名称】京セラメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104318
【弁理士】
【氏名又は名称】深井 敏和
(72)【発明者】
【氏名】石田 典之
(72)【発明者】
【氏名】伊倉 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 琴未
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠司
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽如
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/164560(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/065571(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/027879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の本体部と、
前記本体部の外周部のうち後方部において互いに離れて位置している複数の凹部と、を備え、
前記後方部は、
前記本体部の先端部および後端部を貫く中心軸に垂直な方向から見たとき、前記後端部に向かうにつれて径が大きくなっており、
互いに隣接している前記凹部の間に位置している凸領域を複数有し、
前記複数の凹部のそれぞれは、
前記中心軸に沿って延びているとともに、一端部が前記後端部に位置しており、
底部および前記底部に接続している一対の側壁部を有し、前記中心軸に垂直な方向から見たとき、前記底部は、前記一端部に向かうにつれて幅が狭くなっているとともに、前記一対の側壁部のそれぞれは、前記底部を基準とした高さが、前記一端部に向かうにつれて高くなっており、
前記後方部のうち前記先端部側の端部が円形状であり、前記端部を前記中心軸に沿って前記後端部まで移動させた仮想円の円周に対して外方に突出している部分と、内方に凹んでいる部分とを交互に有し、前記外方に突出している部分が前記後方部の一部であるとともに、前記内方に凹んでいる部分が前記凹部の一部であり、前記後端部に向かうにつれて凹凸の高低差が大きくなっている、歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項2】
前記中心軸に垂直な方向から見たとき、前記複数の凹部のそれぞれは、前記一端部に向かうにつれて幅が広くなっている、請求項1に記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項3】
前記複数の凹部のそれぞれは、前記後方部を基準とした深さが、前記一端部に向かうにつれて大きくなっている、請求項1または2に記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項4】
前記底部は、前記一端部に向かうにつれて前記中心軸に向かって一定の傾斜角度θ1で傾斜している、請求項1〜3のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項5】
後端視において、前記底部および前記一対の側壁部のそれぞれの交差部は、曲線状である、請求項1〜4のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項6】
複数の前記底部をそれぞれ通り中心が前記中心軸上に位置している仮想円の径が、前記一端部に向かうにつれて小さくなっている、請求項1〜5のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項7】
前記本体部は、前記後方部と前記後端部との交差部を面取りしてなる面取り部をさらに有する、請求項1〜6のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項8】
前記外周部のうち先方部が、セルフタップネジ部を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャーと、
前記歯科インプラント用フィクスチャーの前記後端部に取り付けられる構造部品と、を備える、歯科インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科インプラント用フィクスチャーおよびそれを備える歯科インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科インプラント用フィクスチャー(以下、「フィクスチャー」と言うことがある。)を顎骨に埋入することによって、喪失した歯牙の機能を補う歯科インプラント埋植手術が行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
しかし、特許文献1,2に記載されているような従来のフィクスチャーは、後端部側から見たときの後端部近傍が略円形状であることから回転し易く、それゆえ初期固定性および回旋抵抗性が低く、緩み易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−188062号公報
【特許文献2】特許第4740139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、優れた初期固定性および回旋抵抗性を備えるとともに、長期にわたって顎骨と強固に結合できる歯科インプラント用フィクスチャーおよび歯科インプラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)略円柱状の本体部と、前記本体部の外周部のうち後方部において互いに離れて位置している複数の凹部と、を備え、前記複数の凹部のそれぞれは、前記本体部の先端部および後端部を貫く中心軸に沿って延びているとともに、一端部が前記後端部に位置している、歯科インプラント用フィクスチャー。
(2)前記中心軸に垂直な方向から見たとき、前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、前記一端部に向かうにつれて幅が広くなっている、前記(1)に記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(3)前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、前記後方部を基準とした深さが、前記一端部に向かうにつれて大きくなっている、前記(1)または(2)に記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(4)前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、前記一端部に向かうにつれて前記中心軸に向かって一定の傾斜角度θ1で傾斜している底部を有する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(5)前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、前記一端部に向かうにつれて前記中心軸に向かって傾斜角度θ2で傾斜している底部を有し、前記傾斜角度θ2が、前記一端部に向かうにつれて小さくなっているとともに、前記底部のうち前記一端部側の部位が、前記中心軸に平行である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(6)前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、底部および前記底部に接続している一対の側壁部を有し、前記中心軸に垂直な方向から見たとき、前記底部は、前記一端部に向かうにつれて幅が狭くなっているとともに、前記一対の側壁部のそれぞれは、前記底部を基準とした高さが、前記一端部に向かうにつれて高くなっている、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(7)前記複数の凹部のうち少なくとも1つは、底部および前記底部に接続している一対の側壁部を有し、後端視において、前記底部および前記一対の側壁部のそれぞれの交差部は、曲線状である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(8)前記複数の凹部のそれぞれは、底部を有し、複数の前記底部をそれぞれ通り中心が前記中心軸上に位置している仮想円の径が、前記一端部に向かうにつれて小さくなっている、前記(1)または(2)に記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(9)前記中心軸に垂直な方向から見たとき、前記後方部は、前記後端部に向かうにつれて径が大きくなっている、前記(1)、(2)および(8)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(10)前記後方部のうち前記先端部側の端部が円形状であり、前記端部を前記中心軸に沿って前記後端部まで移動させた仮想円の円周に対して外方に突出している部分と、内方に凹んでいる部分とを交互に有し、前記外方に突出している部分が前記後方部の一部であるとともに、前記内方に凹んでいる部分が前記凹部の一部である、前記(1)、(2)、(8)および(9)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(11)前記本体部は、前記後方部と前記後端部との交差部を面取りしてなる面取り部をさらに有する、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(12)前記外周部のうち先方部が、セルフタップネジ部を有する、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャー。
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の歯科インプラント用フィクスチャーと、前記歯科インプラント用フィクスチャーの前記後端部に取り付けられる構造部品と、を備える、歯科インプラント。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた初期固定性および回旋抵抗性を発揮できるとともに、長期にわたって顎骨と強固に結合できるという効果がある。また、これらの効果が相まって、骨吸収または感染を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯科インプラント用フィクスチャーを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す歯科インプラント用フィクスチャーを示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のX矢視平面図(後端視図)である。
【
図3】(a)〜(c)は、
図1に示す歯科インプラント用フィクスチャーを用いて行う本発明の一実施形態に係る歯科インプラント埋植手術を示す概略説明図である。
【
図4】
図3に示す歯科インプラント埋植手術を示す図であり、(a)は
図3(b)のA−A線拡大断面図、(b)は
図3(c)のB−B線拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す歯科インプラント用フィクスチャーの凹部近傍を示す部分拡大側面図である。
【
図6】
図1に示す歯科インプラント用フィクスチャーの凹部近傍を示す部分拡大平面図(後端視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る歯科インプラント用フィクスチャーおよび歯科インプラントについて、
図1〜
図6を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1および
図2(a)に示すように、本実施形態のフィクスチャー1は、略円柱状の本体部2を備えている。本実施形態の本体部2は、その先端部21から後端部22までの長さが8〜14mmであるが、これに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態において、本体部2の先端部21は、
図3(b),(c)に示すように、フィクスチャー1を顎骨110に埋入したとき、歯槽骨111の海綿骨113側に位置する部位である。また、本実施形態において、本体部2の後端部22は、後述するヒーリングキャップ4および構造部品側に位置する部位である。
【0012】
本実施形態の本体部2は、
図1および
図2(a)に示すように、外周部23を有する。本実施形態の外周部23は、先端部21側に位置している先方部231と、後端部22側に位置している後方部232とを有する。本実施形態において、先方部231および後方部232は、互いに連続しているとともに、先方部231の面積が後方部232の面積よりも大きい。
【0013】
一方、本実施形態のフィクスチャー1は、本体部2の外周部23のうち後方部232において互いに離れて位置している複数の凹部3を備えている。本実施形態の複数の凹部3のそれぞれは、フィクスチャー1の中心軸Sに沿って延びている。フィクスチャー1の中心軸Sとは、本体部2の先端部21および後端部22を貫く軸であり、後端視において、フィクスチャー1を回転させたときに回転軸となる軸を意味するものとする。後端視とは、
図2(b)に示すように、後端部22側からフィクスチャー1を見た状態を意味するものとする。
【0014】
そして、本実施形態の複数の凹部3のそれぞれは、その一端部31が本体部2の後端部22に位置している。このような構成によれば、歯科インプラント埋植手術の過程において、優れた初期固定性および回旋抵抗性を発揮できるため、埋植手術後のフィクスチャー1が顎骨110との間でマイクロムーブメントを発生させることを抑制でき、結果としてフィクスチャー1周囲の骨再生を促進できるとともに、長期にわたって顎骨110と強固に結合できるという効果が得られる。
【0015】
具体的に説明すると、本実施形態のフィクスチャー1を用いて歯科インプラント埋植手術を行う場合には、まず、
図3(a)に示すように、歯肉101および顎骨110の歯槽骨111にドリル等によって埋入孔100を穿孔する。本実施形態の埋入孔100は、フィクスチャー1よりも若干小さな形状を有する。
【0016】
次に、
図3(b)に示すように、穿孔した埋入孔100に本実施形態のフィクスチャー1を埋入する。ここで、本実施形態のフィクスチャー1は、
図2(b)に示すように後端視において、後方部232の形状が非円形である。すなわち、本実施形態の後方部232は、互いに隣接している凹部3,3の間に位置している凸領域232aを複数有する。複数の凸領域232aは、後方部232において複数の凹部3と交互に位置している。したがって、本実施形態の後方部232は、後端視において、凹凸形状を有する。このような構成によれば、
図4(a)に示すように、フィクスチャー1を埋入孔100に埋入したとき、複数の凸領域232aのそれぞれが、歯槽骨111の皮質骨112に食い込むので、優れた初期固定性を発揮することが可能となる。
【0017】
また、本実施形態のフィクスチャー1を埋入孔100に埋入すると、複数の凹部3のそれぞれと皮質骨112との間には適度な隙間120が形成される。この隙間120は、
図4(b)に示すように、数週間から数か月程度の免荷期間を経て皮質骨112の再生によって埋まるので、結果としてフィクスチャー1の回旋固定性が向上するとともに、固定性が初期状態よりも向上し、長期にわたって顎骨110と強固に結合することが可能となる。特に、本実施形態のフィクスチャー1は、凹凸形状を有する後方部232において顎骨110と強固に結合するので、口腔からの細菌の侵入を抑制することができ、それゆえ骨吸収または感染を予防することができる。
【0018】
なお、歯肉101を保護する上で、免荷期間中は、
図3(b)に示すように、後端部22にヒーリングキャップ4を取り付けるのが好ましい。本実施形態において、ヒーリングキャップ4の取り付けは、
図1および
図2(b)に示すように、後端部22の略中央部に位置している有底の取り付け孔221を介して行う。
【0019】
また、フィクスチャー1の顎骨110への固定が完了した後は、
図3(c)に示すように、ヒーリングキャップ4を後端部22から取り外し、後端部22に図示しない構造部品を取り付けて歯科インプラントとし、治療を終了する。
【0020】
本実施形態において、構造部品の取り付けは、ヒーリングキャップ4の取り付けと同様に、取り付け孔221を介して行う。また、本実施形態の構造部品は、いわゆる人工の歯であり、これには金属製またはセラミック製の人工歯が含まれる。金属製またはセラミック製の人工歯は、通常、オーダーメイドで作られ、アバットメントを介してフィクスチャー1の後端部22に取り付けられる。金属製またはセラミック製の人工歯は、単独型であってもよいし、連結型(ブリッジ)であってもよい。また、上述した人工の歯には、人工歯の他に、義歯も含まれる。義歯としては、例えば部分入れ歯や総入れ歯等のいわゆる入れ歯等が挙げられる。入れ歯は、取り外し可能な状態でアタッチメントを介してフィクスチャー1の後端部22に取り付けられる。
【0021】
一方、複数の凹部3のそれぞれの他端部32の位置については、特に限定されないが、他端部32の位置を調節すると、凹部3の中心軸Sに平行な方向における長さを調整することができる。本実施形態では、
図1および
図2(a)に示すように、複数の凹部3のそれぞれの他端部32は、後方部232のうち先端部21側の端部232bに位置している。このような構成によれば、複数の凹部3のそれぞれの長さを大きくできることから、後方部232の凹凸形状も十分に大きくなり、結果として複数の凹部3による上述した効果を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態では、凹部3の数は3つである。したがって、本実施形態では、3つの凹部3および3つの凸領域232aが後方部232において交互に位置している。なお、凹部3の数は複数である限り、3つに限定されるものではなく、フィクスチャー1の形状等に応じて所望の数を採用することができる。凹部3の数としては、通常、2〜6つ程度が適当であるが、これに限定されるものではない。
【0023】
複数の凹部3の構成は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。複数の凹部3が互いに同じ構成を有する場合には、その構成は実質的に同じであればよい。本実施形態の3つの凹部3は、実質的に同じ構成を有する。
【0024】
複数の凹部3は、後方部232において互いに略等間隔で位置していてもよいし、異なる間隔で位置していてもよい。本実施形態の3つの凹部3は、
図2(b)に示すように、中心軸Sを中心として120°回転対称となるように、後方部232において互いに略等間隔で位置している。
【0025】
また、本実施形態では、
図5に示すように中心軸Sに垂直な方向から見たとき、3つの凹部3のそれぞれは、一端部31に向かうにつれて幅W1が広くなっている。このような構成によれば、
図1に示すように、凸領域232aの中心軸Sに垂直な方向における幅W2が、後端部22に向かうにつれて小さくなることから、凸領域232aのうち後端部22側の部位が皮質骨112に食い込み易くなる。さらに、再生する皮質骨112と凹部3との接触面積が一端部31に向かうにつれて大きくなることから、構造部品が取り付けられることによって負荷を受け易い後端部22側において、回旋固定性を向上させることができる。
【0026】
本実施形態の3つの凹部3のそれぞれは、後方部232を基準とした深さが、一端部31に向かうにつれて大きくなっている。より具体的に説明すると、本実施形態の3つの凹部3のそれぞれは、
図5に示すように、底部33を有する。本実施形態の3つの底部33のそれぞれは、一端部31に向かうにつれて中心軸Sに向かって図示しない一定の傾斜角度θ1で傾斜している。言い換えれば、本実施形態では、
図1に示すように、3つの底部33をそれぞれ通り中心が中心軸S上に位置している仮想円C1の径が、一端部31に向かうにつれて小さくなっている。このような構成によれば、底部33と皮質骨112との間の距離が一端部31に向かうにつれて大きくなることから、一端部31側において皮質骨112を多く再生させることができる。その結果、構造部品が取り付けられることによって負荷を受け易い後端部22側において、回旋固定性を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、
図5に示すように中心軸Sに垂直な方向から見たとき、後方部232は、後端部22に向かうにつれて径Dが大きくなっている。言い換えれば、本実施形態では、3つの凸領域232aをそれぞれ通り中心が中心軸S上に位置している図示しない仮想円の径が、後端部22に向かうにつれて大きくなっている。このような構成によれば、凸領域232aのうち後端部22側の部位が外方に突出することから、皮質骨112に食い込み易くなる。
【0028】
ここで、本実施形態の後方部232は、上述の通り凹凸形状を有するが、底部33および凸領域232aのそれぞれが上述した仮想円を有することから、後方部232のうち後端部22側の部位において凹凸の高低差が大きい。具体的に説明すると、本実施形態のフィクスチャー1は、
図1に示すように、後方部232のうち先端部21側の端部232bが円形状であり、端部232bを中心軸Sに沿って後端部22まで移動させた仮想円C2の円周に対して外方に突出している部分と、内方に凹んでいる部分とを交互に有する。
【0029】
そして、本実施形態では、外方に突出している部分が後方部232の一部であるとともに、内方に凹んでいる部分が凹部3の一部である。このような構成によれば、後方部232のうち後端部22側の部位において凹凸の高低差が大きくなることから、構造部品が取り付けられることによって負荷を受け易い後端部22側において、後方部232が凹凸形状を有することによる上述した効果を確実に発揮させることができる。なお、本実施形態の後方部232は、後端部22に向かうにつれて凹凸の高低差が大きくなっている。また、上述した円形状の端部232bの径は、通常、3.7〜5.2mmであるが、これに限定されるものではない。
【0030】
一方、上述した3つの凹部3のそれぞれは、
図5に示すように、底部33に接続している一対の側壁部34,34をさらに有する。そして、中心軸Sに垂直な方向から見たとき、本実施形態の底部33は、一端部31に向かうにつれて幅W2が狭くなっているとともに、本実施形態の一対の側壁部34,34のそれぞれは、底部33を基準とした高さHが、一端部31に向かうにつれて高くなっている。このような構成によれば、一対の側壁部34,34の面積を一端部31に向かうにつれて大きくできることから、皮質骨112に食い込むことによって負荷を受け易い凸領域232aの後端部22側の部位の強度を確保することができる。
【0031】
また、本実施形態では、
図6に示すように後端視において、底部33および一対の側壁部34,34のそれぞれの交差部35が曲線状である。このような構成によれば、再生する皮質骨112が交差部35に接触し易くなることから、皮質骨112の再生によって隙間120を埋める時間を短縮することができる。
【0032】
本実施形態の本体部2は、後方部232と後端部22との交差部を面取りしてなる面取り部24をさらに有する。このような構成によれば、後端部22にヒーリングキャップ4および構造部品を取り付けるときに後方部232と後端部22との交差部が欠損するのを抑制することができる。
【0033】
本実施形態では、
図1および
図2(a)に示すように、外周部23のうち先方部231がセルフタップネジ部231aを有する。本実施形態のセルフタップネジ部231aは、先方部231の全周にわたって位置しているとともに、先方部231のうち中央部近傍から先端部21に向かうにつれて小径になるテーパ状である。このような構成によれば、上述した
図3(b)に示すフィクスチャー1を埋入孔100に埋入する過程において、埋入孔100の内周面を削りつつ生成する切屑を排出しながらフィクスチャー1を埋入孔100に埋入できることから、フィクスチャー1の固定性を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0035】
例えば、上述の一実施形態では、底部33を一定の傾斜角度θ1で傾斜させているが、これに代えて、一端部31に向かうにつれて小さくなる傾斜角度θ2で底部33を傾斜させることができる。言い換えれば、3つの底部33をそれぞれ通り中心が中心軸S上に位置している仮想円C1の径が、一端部31に向かうにつれて小さくなる割合を、一端部31に向かうにつれて小さくすることができる。このような構成によれば、底部33のうち一端部31側の部位が、中心軸Sに平行になる。その結果、底部33の一端部31側の部位と、皮質骨112との間の距離が小さくなるので、皮質骨112が再生して凹部3に接触して固着するまでの時間を短縮することができる。
【0036】
また、上述の一実施形態では、凸領域232aを曲面状にしているが、これに代えて、凸領域232aを、凹凸を有する構成にすることができる。このような構成によれば、フィクスチャー1の固定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 歯科インプラント用フィクスチャー
2 本体部
21 先端部
22 後端部
221 取り付け孔
23 外周部
231 先方部
231a セルフタップネジ部
232 後方部
232a 凸領域
232b 端部
24 面取り部
3 凹部
31 一端部
32 他端部
33 底部
34 側壁部
35 交差部
4 ヒーリングキャップ
100 埋入孔
101 歯肉
110 顎骨
111 歯槽骨
112 皮質骨
113 海綿骨
120 隙間