(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)と、容器(C)と、を含み、前記容器(C)に膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)とを少なくとも入れた閉塞材を用いて前記閉塞材に含まれる膨張成分(A)を膨張させることにより、
膨張後の膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)と、容器(C)と、を含む膨張後の閉塞材が、構造部材の隙間に設置されており、
前記容器(C)が、下記(C−1)〜(C−3)からなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする耐火補強構造。
(C−1)前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持する袋類
(C−2)開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する袋類
(C−3)開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する器類
前記袋類(C−1)が、前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との少なくとも一方を、前記袋類(C−1)の外部から開封することのできる開封手段を備えている、請求項5に記載の耐火補強構造。
前記袋類(C−2)が、前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との少なくとも一方を、前記袋類(C−2)の外部から開封することのできる開封手段を備えている、請求項6に記載の耐火補強構造。
膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)と、容器(C)と、を含み、前記容器(C)に膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)とを少なくとも入れた閉塞材を用いて前記閉塞材に含まれる膨張成分(A)を膨張させる工程と、
前記閉塞材を構造部材の隙間に設置して、膨張成分(A)の膨張により前記構造部材の隙間を閉塞させる工程と、
を少なくとも有し、
前記閉塞材が、膨張成分(A)と、熱膨張性成分(B)と、を含む袋類を有し、
前記袋類が、膨張成分(A)の第一の成分を収納する第一の成分収納部(a−1)と、膨張成分(A)の第二の成分を収納する第二の成分収納部(a−2)と、を少なくとも内部に備え、
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とが隣接するものであって、
前記閉塞材に含まれる膨張成分(A)を膨張させる工程が、
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との少なくとも一方に外力を加えることにより、
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との隣接部分の内部をつなげて、
膨張成分(A)の第一の成分と膨張成分(A)の第二の成分とを接触させることにより、
前記閉塞材を膨張させる工程を含み、
前記構造部材の隙間を閉塞させる工程が、
膨張した閉塞材により前記構造部材の隙間を閉塞させる工程を含む、耐火補強構造の施工方法。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の耐火補強構造は、膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)と、容器(C)とを含む閉塞材を使用するものであるが、最初に本発明に使用する膨張成分(A)について説明する。
本発明に使用する膨張成分(A)は、前記閉塞材により構造部材の隙間を閉塞できるものであれば特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、反応硬化性合成樹脂、発泡剤等を含むもの、吸水膨張高分子樹脂、水等を含むもの、揮発性炭化水素含有樹脂カプセル、加温材等を含むもの、セメント、水、発泡剤等を含むもの等を挙げることができる。
【0038】
(1)反応硬化性合成樹脂および発泡剤について
前記膨張成分(A)の具体例としては、例えば、反応硬化性合成樹脂、発泡剤等を含むものが挙げられる。
前記反応硬化性合成樹脂としては、例えば、時間の経過と共に前記反応硬化性合成樹脂に含まれる構成成分の反応が進むことにより粘度が増大し、当初は流動性があるが時間の経過と共に流動性を失うもの等が挙げられる。
前記反応硬化性合成樹脂としては、具体例を挙げるとするなら、例えば、ウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0039】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、主剤としてのポリイソシアネート化合物、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含むものが挙げられる。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0041】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート等であれば好ましい。
【0042】
前記ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0044】
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。
また前記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0045】
前記ポリマーポリオールとしては、例えば、前記芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、または、これらの水素添加物等が挙げられる
【0046】
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリオール化合物とを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.2〜15となる様に混合することが好ましい。より好ましくは1.2〜12の範囲である。
前記当量比が1.2以上ではウレタン樹脂の粘度が高くなりすぎることを防ぐことができ、15以下では良好な接着強度を保つことができる。
【0047】
前記ウレタン樹脂の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル,N´−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等のアミノ系触媒等が挙げられる。
【0048】
次にイソシアヌレート樹脂としては、例えば、先に説明したポリウレタン樹脂を用いて、ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進したもの等を挙げることができる。
【0049】
イソシアヌレート環の生成を促進するためには、例えば、触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩等を使用すればよい。
イソシアヌレート樹脂の主剤と硬化剤については先のポリウレタン樹脂の場合と同様である。
【0050】
次に前記エポキシ樹脂としては例えば、主剤としてのエポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0051】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0052】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0053】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0054】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0055】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0056】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分を混合したものを使用することができる。
【0057】
次に前記フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂組成物等が挙げられる。
前記レゾール型フェノール樹脂組成物は、例えば、主剤としてのレゾール型フェノール樹脂、硬化剤等を含むものである。
【0058】
前記フェノール樹脂の主剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類およびその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの存在下に反応させて得られるものがあげられるが、これに限定されるものではない。
フェノール類等とアルデヒド類の混合割合は特に限定はないが、モル比で通常1.0:1.5〜1.0:3.0の範囲である。前記混合割合は、1.0:1.8〜1.0:2.5の範囲であれば好ましい。
【0059】
前記フェノール樹脂の硬化剤としては、例えば、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0060】
次に尿素樹脂としては、例えば、主剤としての尿素、硬化剤としてのホルムアルデヒド、触媒としての塩基性化合物、酸性化合物を含む組成物等が挙げられる。
前記尿素とホルムアルデヒド等は重合反応により尿素樹脂を形成する。
【0061】
次に不飽和ポリエステル樹脂としては、主剤としての不飽和多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含む組成物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0062】
前記不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて無水フタル酸、イソフタル酸等の飽和多塩基酸を併用することもできる。
【0063】
さらに前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤と重合するスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート等の架橋用ビニルモノマーを添加することができる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の触媒としては、具体的には、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0064】
次にアルキド樹脂としては、例えば、主剤としての多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、油脂等を含む組成物等が挙げられる。
前記アルキド樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0065】
前記アルキド樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油等を挙げることができる。
【0066】
次にメラミン樹脂としては、例えば、主剤としてのメラミン、硬化剤としてのホルムアルデヒド等を含む組成物等が挙げられる。
必要に応じて、前記組成物にベンゾグアナミン等を添加することもできる。
【0067】
次にジアリルフタレート樹脂としては、例えば、主剤としての無水フタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。
前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0068】
次にシリコーン樹脂としては、例えば、主剤としてジアルキルシリルジクロリド、ジアルキルシリルジオール等、反応抑制剤としてトリアルキルシリルクロリド、トリアルキルシリルジオール等、硬化剤として塩化白金酸等の白金化合物を含む組成物等を挙げることができる。
【0069】
前記ジアルキルシリルジクロリドとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジクロリド、ジエチルシリルジクロリド、ジプロピルシリルジクロリド等が挙げられる。
前記ジアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジオール、ジエチルシリルジオール、ジプロピルシリルジオール等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルクロリドとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリプロピルシリルクロリド等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルオール、トリエチルシリルオール、トリプロピルシリルオール等が挙げられる。
前記反応抑制剤は、ポリシロキサン主鎖の末端に結合し、反応を制御してポリシロキサン主鎖の重合度を制御する役割を果たす。
【0070】
本発明に使用する反応硬化性合成樹脂は、火災等の熱にさらされた場合でも容易に溶融することを防止するために、熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
本発明に使用する反応硬化性合成樹脂は、取り扱い性の面からエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等であることがより好ましい。
【0071】
本発明に使用する反応硬化性合成樹脂は、主剤と硬化剤等とを予備的に反応させて使用することもできる。
【0072】
本発明に使用する前記反応硬化性合成樹脂の主剤、硬化剤、触媒等はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0073】
本発明に使用する前記反応硬化性合成樹脂に対し、発泡剤、整泡剤を併用することにより、前記閉塞材を膨張した状態で硬化させることができる。
【0074】
前記発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル、あるいはこれらの化合物の混合物などの有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系物理発泡剤、水等が挙げられる。
【0075】
前記反応硬化性合成樹脂に対する発泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性合成樹脂により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記反応硬化性合成樹脂100重量部に対して、通常1〜20重量部の範囲であり、5〜10重量部の範囲であれば好ましい。
【0076】
前記整泡剤としては、例えば、有機ケイ素系界面活性剤等が挙げられる。
前記反応硬化性合成樹脂に対する整泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性合成樹脂により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲であれば好ましい。
【0077】
前記発泡剤、整泡剤はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0078】
本発明に使用する前記反応硬化性合成樹脂は、前記閉塞材を発泡した状態で硬化させるため、発泡する機能を有することが好ましく、具体的には、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォーム等の一種もしくは二種以上を使用することが好ましい。
【0079】
前記閉塞材を膨張した状態で硬化させることにより、硬化した前記閉塞材に気泡の断熱効果を付与することができ、構造部材の隙間の断熱性を高めることができる。
【0080】
(2)吸水膨張高分子樹脂および水について
前記膨張成分(A)としては、例えば、吸水膨張高分子樹脂、水等を含むものが挙げられる。
前記吸水膨張高分子樹脂としては、具体例を挙げるとするなら、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸金属塩等が挙げられる。
前記吸水膨張高分子樹脂の一種もしくは二種以上と、水とを接触させることにより前記吸水膨張高分子樹脂を膨張させることができる。
【0081】
(3)揮発性炭化水素含有樹脂カプセルおよび加温材について
前記膨張成分(A)としては、例えば、揮発性炭化水素含有樹脂カプセル、加温材等を含むものが挙げられる。
前記揮発性炭化水素含有樹脂カプセルとしては、具体例を挙げるとするなら、例えば、低沸点炭化水素類を内包する熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メクタリル酸エステル、マレイン酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸、メクタリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸アミド、メクタリル酸アミド、スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等の単独重合体または共重合体等が挙げられる。
膨張性に優れることから塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メクタリル酸エステル、酢酸ビニル等が好ましい。
【0082】
前記低沸点炭化水素類としては、例えば、例えばブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、neo−ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数4〜8の炭化水素、トリクロロフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素、石油エーテル等が挙げられる。
【0083】
前記揮発性炭化水素含有樹脂カプセルの大きさに限定はないが、粒径2〜5000μmの範囲の球状であれば好ましい。
なお前記粒径はレーザー光を使った光散乱を利用する測定器等を用いて調べることができる。
【0084】
また前記加温材としては、例えば、鉄の酸化熱を利用するもの、塩化カルシウム、酸化カルシウム等の水和熱を利用するもの等を挙げることができる。前記加温材の具体例としては、例えば市販のいわゆる使い捨てカイロ等を利用することができる。
前記加温材の熱により揮発性炭化水素含有樹脂カプセル内部の前記低沸点炭化水素類を蒸発させることにより、前記揮発性炭化水素含有樹脂カプセルを膨張させることができる。
【0085】
(4)セメント、水および発泡剤について
前記膨張成分(A)としては、例えば、セメント、水、発泡剤等を含むものが挙げられる。
前記発泡剤としては、例えば、カルシウムサルフォアルミネート、酸化カルシウム等が挙げられる。
前記発泡剤を使用することにより、セメントが固化する際に膨張させることができる。
【0086】
本発明に使用する前記膨張成分(A)は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0087】
次に本発明に使用する熱膨張性成分(B)について説明する。
前記熱膨張性成分(B)は火災等の熱により膨張するものであるが、かかる熱膨張性成分(B)として具体例を挙げるとすれは、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の無機膨張成分、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品等を挙げることができる。
【0088】
前記熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0089】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0090】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0091】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0092】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0093】
粒度が20メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が200メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0094】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製
の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0095】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品としては、例えば、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕したもの等を挙げることができる。
かかる成形体粉砕品に使用する熱膨張性耐火シート等の具体例としては、例えば、積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂、ゴム樹脂等の樹脂成分、熱膨張性黒鉛等の熱膨張成分、リン化合物、無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形体)、住友スリーエム社のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0096】
市販の熱膨張性耐火シート等を裁断機等により細かく切断する等の方法、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕ロールに通して粉砕する等の方法により、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品を得ることができる。
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品は、5〜20メッシュの範囲のものが好ましい。
【0097】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の粒度が5メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が20メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0098】
本発明に使用する前記熱膨張性成分(B)は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0099】
次に本発明に使用する閉塞材は、膨張成分(A)および熱膨張性成分(B)に加えて、充填材を含むものであってもよい。
前記充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、バーミキュライト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0100】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0101】
前記充填材は骨材的役割を果たして、火災等の熱にさらされた後に生成する熱膨張残渣強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0102】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0103】
また前記充填材に対し、難燃剤としてリン化合物を添加することもできる。
前記リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0104】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩、
ポリリン酸アンモニウム類、
下記化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0105】
これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0106】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポリリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0107】
【化1】
上記化学式中、R
1及びR
3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0108】
R
2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0109】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0110】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0111】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0112】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」
及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0113】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0114】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0115】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0116】
本発明に使用する充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0117】
充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防ぐことができ、分散性が良好となる。
【0118】
また、充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0119】
なお、粒径が200μm以下の場合には、閉塞材の表面性、閉塞材の力学的物性が低下することを抑制することができる。
【0120】
前記充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0121】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0122】
前記充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0123】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0124】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0125】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0126】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0127】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0128】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0129】
次に本発明に使用する閉塞材に含まれる各成分の配合について説明する。
【0130】
前記閉塞材は、膨張成分(A)100重量部に対し、前記熱膨張性成分(B)を10〜150重量部および前記充填材を50〜300重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0131】
また、前記熱膨張性成分(B)および前記充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0132】
かかる閉塞材は膨張成分(A)によって膨張し、さらに火災等の熱にさらされた場合に膨張し熱膨張残渣を形成する。
この配合によれば、膨張成分(A)の膨張後に得られる閉塞材は火災等の熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する熱膨張残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
【0133】
前記熱膨張性成分(B)の量が10重量部以上であると、必要な膨張倍率が得られることから、十分な耐火、防火性能が得らる。
一方、前記熱膨張性成分(B)の量が150重量部以下であると、前記膨張成分(A)による膨張が円滑となり、前記構造部材の隙間を円滑に閉塞することができる。
【0134】
また前記充填材の量が50重量部以上であると、燃焼後の熱膨張残渣の体積減少が少なく、耐火断熱のための熱膨張残渣が得られる。
さらに可燃物の比率が増加するため、難燃性が低下することがある。
【0135】
一方、充填材の量が300重量部以下であると、前記構造部材の隙間を円滑に閉塞することができる。
【0136】
前記閉塞材における熱膨張性成分(B)および充填材の合計量は、200重量部以上では燃焼後の熱膨張残渣量が不足せず十分な耐火性能が得られやすく、600重量部以下では機械的物性の低下が小さく、実際の使用に適する。
【0137】
さらに本発明に使用する前記閉塞材は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0138】
次に前記閉塞材の製造方法について説明する。
先に説明した膨張成分(A)、熱膨張性成分(B)、充填剤等の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0139】
本発明においては、膨張成分(A)、熱膨張性成分(B)、充填剤等の各成分のうち、膨張成分(A)に含まれる主剤、硬化剤、触媒、発泡剤等を分割して混練しておき、使用直前に全体をスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して膨張成分(A)を膨張させることができる。
前記閉塞材を前記構造部材の隙間に設置する前は、前記膨張成分(A)が膨張せず、前記閉塞材を前記構造部材の隙間に設置する直前に前記膨張成分(A)が膨張する様に、膨張成分(A)、熱膨張性成分(B)、充填剤等の各成分のうち、膨張成分(A)に含まれる主剤、硬化剤、触媒、発泡剤等を分割しておけばよい。
【0140】
前記閉塞材は、火災時などの高温にさらされた際に熱膨張性成分(B)により生成した熱膨張残渣により断熱し、かつその熱膨張残渣の強度があるものであれば特に限定されないが、600℃に設定した電気炉で30分間加熱した後の体積膨張率が1.1〜6倍のものであれば好ましい。
前記体積膨張率が1.1倍を下回ると、膨張体積が前記膨張成分(A)の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また6倍を超えると、膨張層の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が1.2〜5倍の範囲であり、さらに好ましくは1.3〜4倍の範囲である。
【0141】
前記熱膨張残渣が自立するためには、前記熱膨張残渣は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cm
2の圧子を用いて、前記熱膨張残渣のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm
2以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cm
2を下回ると、断熱膨張残渣が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm
2以上である。
【0142】
本発明の耐火補強構造は、膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)と、容器(C)とを含む閉塞材を使用するものであるが、次に本発明に使用する容器(C)について説明する。
前記容器(C)は、前記膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)とを少なくとも入れることができるものであれば特に限定はない。
【0143】
本発明に使用する前記容器(C)としては、例えば、
前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持する袋類(C−1)、
開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する袋類(C−2)、
開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する器類(C−3)等を挙げることができる。
【0144】
前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持する袋類(C−1)の具体例としては、例えば、柔軟性のある周囲を全て貼着した密閉袋等の袋類等を挙げることができる。
前記開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する袋類(C−2)の具体例としては、例えば、周囲のうち一端等を開放した開口袋等の袋類等を挙げることができる。
前記開口部を備え、前記膨張成分(A)の膨張に伴い、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する器類(C−3)の具体例としては、例えば、有底円筒、有底多角筒、有底楕円筒等の有底筒等、皿等の曲面容器等、瓶等の先細容器等の器類等を挙げることができる。
【0145】
また本発明に使用する容器(C)は開口部を有することが好ましい。
開口部を有する容器(C)を使用することにより、前記膨張成分(A)が膨張する際に発生するガス等を前記容器(C)の外部に放出させることができる。また急速に膨張する前記膨張成分(A)により前記容器(C)内部が常圧よりも低い圧力となり、前記膨張成分(A)の円滑な膨張が妨げられることを防止することができる。
【0146】
前記容器(C)に使用する素材についても特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、有機材料、金属材料、無機材料等の一種もしくは二種以上を含むものを挙げることができる。
前記有機材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
また金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
また無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック、ロックウール、セラミックウール、セラミックブランケット等を挙げることができる。
【0147】
また前記袋類は、例えば、有機フィルム、有機繊維、金属繊維、無機繊維等を使用した織布、不織布等を用いて形成することができる。
前記有機フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等を挙げることができる。
前記有機繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリアミド繊維等を挙げることができる。
前記金属繊維としては、例えば、鉄線、鋼線、ステンレス線、銅線等を挙げることができる。
前記無機繊維としては、例えば、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等を挙げることができる。
前記不織布は、有機材料シート、金属シート等を積層したものを使用することができる。
【0148】
前記器類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機材料、ガラス等の無機材料、アルミニウム等の金属材料を成形した物等を挙げることができる。
【0149】
次に本発明に使用する前記構造部材について説明する。
前記構造部材としては、例えば、梁、デッキプレート等の基礎構造部材、建築物の仕切り部に設けられる区画、前記区画に設けられた貫通孔、前記貫通孔を挿通する配管類等が挙げられる。
前記区画としては、例えば、建築物の壁、間仕切り壁、床、天井等、船舶の防火区画、船室に設けられた鋼板等が挙げられる。
【0150】
本発明に使用する前記区画の具体例としては、例えば、コンクリートスラブ、RC壁、ALC壁、RW壁、レンガ、中空壁等を挙げることができる。
本発明に使用する中空壁はその内部に空間を有するものであればよく、特に限定はないが、例えば柱部材と耐熱パネル等を含むものが挙げられる。
具体的には、例えば、木桟、金属フレーム、鉄筋コンクリート製の柱、鋼材からなる鉄骨等の少なくとも一つのスタッドに対して一又は二以上の耐熱パネル等を両側から固定した構造のもの等を挙げることができる。
【0151】
前記耐熱パネルとしては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が挙げられる。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ミネラルウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0152】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライト等の軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成形したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JISA6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠
:GB−F)、吸音石膏ボード(JISA6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0153】
前記耐熱パネルは一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0154】
本発明に使用される配管類としては、例えば、冷媒管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管等の気体移送用管類、電線ケーブル、光ファイバーケーブル、船舶用ケーブル等のケーブル類等、またこれらの液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類等を内部に挿通させるためのスリーブ等が挙げられる。
これらの中でも施工性の観点から冷媒管、熱媒管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類が好ましく、冷媒管、熱媒管であればさらに好ましい。
【0155】
前記配管類は、液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類、スリーブ等の一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0156】
前記配管類の形状については特に限定はないが、例えば、前記配管類の長軸方向に対し垂直方向の断面形状が三角形、四角形等の多角形、長方形等の互いの辺の長さが異なる形状、平行四辺形等の互いの内角が異なる形状、楕円形、円形等の形状が挙げられる。これらの中でも、断面形状が円形、四角形等であるものが施工性に優れることから好ましい。
【0157】
前記配管類の断面形状の大きさは、この断面形状の重心からこの断面形状の外郭線までの距離が最も大きい辺の長さを基準として、通常、1〜1000mmの範囲であり、好ましくは5〜750mmの範囲である。
【0158】
前記配管類が液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類等の場合には、通常0.5mm〜10cmの範囲であり、好ましくは1mm〜5cmの範囲である。
また前記配管類がスリーブの場合には、通常10〜1000mmの範囲であり、好ましくは50〜750mmの範囲である。
【0159】
前記配管類の素材については、合成樹脂部材を含むものであれば特に限定はないが、例えば、金属材料、無機材料、有機材料等の一種もしくは二種以上からなるものを挙げることができる。
前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
【0160】
また無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等を挙げることができる。
また有機材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0161】
本発明に使用する配管類は、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の一種以上であるが、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の二種以上を内筒や外筒に使用した積層管として使用することもできる。
前記配管類に使用する配管本体は金属材料管、有機材料管等が取扱い性の面から好ましく、具体的には鋼管、銅管、合成樹脂管等を含むものであればさらに好ましい。
【0162】
次に本発明について図面に基づき実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0163】
実施例1は梁とデッキプレートとの隙間に、膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類100を設置した耐火補強構造500に関するものである。
実施例1では容器(C)として袋類100が使用されている。
図1は鉄骨梁とデッキプレートとの関係を説明するための模式斜視図である。
図1に示される様に、鉄骨梁1の上にデッキプレート2が設置されている。前記デッキプレート2はスタッド等による固定手段により前記鉄骨梁1に固定されている。また前記デッキプレート2の上には溶接金網3が設置されている。
前記デッキプレート2の上面に軽量コンクリート4が流し込まれていて、前記軽量コンクリート4が前記溶接金網3を内部に含み固化している。
【0164】
図2は鉄骨梁とデッキプレートとの関係を説明するための模式断面図である。
図2に示される様に、鉄骨梁1とデッキプレート2との間に小口と呼ばれる隙間5が存在する。
前記小口は、前記鉄骨梁1が前記デッキプレート2と接する場所に存在するためその数が非常に多いことが特徴である。
【0165】
図3は、実施例1に使用した膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類の構造を説明するための模式平面図であり、
図4は実施例1に使用した膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類の構造を説明するための模式断面図である。
実施例1では閉塞材として袋類100を使用した。
前記袋類100は、前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持することができる。
前記袋類100は、アルミニウム箔10と不織布11とが積層されたアルミニウムラミネート不織布12により形成されている。二枚の同じ形状のアルミニウムラミネート不織布12,12を、アルミニウム箔10を互いに内側に向けて重ねあわせ、周囲の端部13〜16ならびに中央部17が熱融着されている。
なお、本発明に使用したアルミニウム箔10は熱可塑性樹脂が積層されているため、熱金型により挟む等の加熱手段により互いに熱融着することが可能である。
【0166】
前記二枚の同じ形状のアルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17が熱融着されることにより、前記袋類100の内部は第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに分かれている。
なお前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とは
図3においてそれぞれ参照符号101および102により示されている。
【0167】
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とには、それぞれ表1に記載した配合割合のA液とB液とが収納されている。
【0168】
ここで前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とにそれぞれ表1に記載したA液とB液とを収納する方法について説明する。
最初にアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜15ならびに中央部17を予め熱融着しておく。
次に前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに表1に記載したA液とB液とをそれぞれアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部16から入れる。
次にアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部16を熱融着する。
この様にして前記袋類100を得ることができる。
【0169】
なお本発明においてはアルミニウムラミネート不織布12等の周囲の端部を貼り合わせる方法に限定はなく、例えば熱金型等を用いた熱融着、接着剤等を用いた接着、難燃糸による縫合等の一種もしくは二種以上を組み合わせて実施することができる。
【0170】
実施例1に使用した袋類100は、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16に比較して、アルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17が弱く貼着されている。
前記アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16に比較して、アルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17を弱く貼着するためには、前記アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16の貼着幅よりもアルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17の貼着幅を小さくすればよい。
【0171】
このため前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えると、アルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17のみの貼着部が簡単に剥がれて互いに隣接する前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との内部がつながる。
この際、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16は、手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力では開封しない密着力により互いに熱融着されている。
【0172】
前記袋類100に対して外力を加える操作を続けることにより、膨張成分(A)のうち前記第一の成分収納部(a−1)に含まれるポリエーテルポリオールと、第二の成分収納部(a−2)に含まれるイソシアネート化合物とが混合して反応し、前記ポリエーテルポリオールに含まれる微量の水分が発泡剤となって、前記袋類100の内部でポリウレタン樹脂フォームが形成される。
このポリウレタン樹脂フォームの膨張により、ほぼ平面形状であった前記袋類100は大きく立体的形状に膨らむ。
このポリウレタン樹脂フォームには、熱膨張性成分(B)としての熱膨張性黒鉛、充填剤としての炭酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウムが含まれる。
【0173】
前記袋類100に最初に投入される膨張成分(A)の量は、前記袋類100の最も大きく膨らんだときの体積を基準に設定され、前記膨張成分(A)の膨張により前記袋類100が破裂しない量に事前に設定しておく。
【0174】
なお図示してないが、前記袋類100の表面には開口部を設けておくことが好ましい。前記開口部は通常は3〜8mmの範囲の直径を有する円形である。
なお開口部の形状、大きさ、個数に限定はなく、前記袋類100の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
この開口部は、前記袋類100を使用する前は、粘着シートからなる蓋材により閉塞されている。
この蓋材により、前記袋類100の内部の成分が、前記袋類100の外部へ漏れ出ることを防止することができる。
前記袋類100の膨張を確認した後、前記蓋材を剥がして除去する。なお、前記蓋材の密着力は、前記袋類100の内圧が上昇した場合、前記袋類100が破裂する前の圧力により剥がれる力に調節することができる。
【0175】
図5は、梁とデッキプレートとの隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張前の前記袋類100を設置した状態を例示した模式断面図であり、
図6は梁とデッキプレートとの隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張後の前記袋類100を設置した状態を例示した模式断面図である。
前記袋類100に対して外力を加えて前袋類100が膨張を開始することを確認したら、膨張を開始した前記袋類100を梁1とデッキプレート2との隙間に設置する。
梁1とデッキプレート2との隙間は、膨張した前袋類100により閉塞される。
【0176】
図6に示される様に、実施例1に使用する袋類100を用いて簡単に梁1とデッキプレート2との隙間を閉塞することができ、実施例1に係る耐火補強構造500を得ることができる。
前記耐火補強構造500が火災等の熱にさらされた場合には、前記耐火補強構造500に使用した袋類100に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣により、火災等による炎、煙等が梁1とデッキプレート2の隙間を通過することを防止することができる。
【0177】
【表1】
【実施例2】
【0178】
実施例2は梁とデッキプレートとの隙間に、膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類110を設置した耐火補強構造510を示すものである。
実施例2では容器(C)として袋類110が使用されている。
前記袋類110も、実施例1に使用した前記袋類100の場合と同様に前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持することができる。
実施例1に使用した袋類100はアルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17を熱融着することにより内部を二つの部分に分けたものであった。
これに対し実施例2に使用した袋類110は、アルミニウムラミネート不織布12,12により形成された袋類の内部に、さらに二つの袋部分を有する点が異なる。
【0179】
図7は、実施例2に使用した膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類の構造を説明するための模式平面図であり、
図8は実施例2に使用した膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類の構造を説明するための模式断面図である。
なお
図8は、
図7に示した袋類110を一点破線A−A部により切断した断面を示したものである。
実施例2に使用した前記袋類110は、内部に袋部分として第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とを有する。
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とは
図7においてそれぞれ参照符号111および112により示されている。
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とはそれぞれアルミニウム箔20とポリプロピレン21とが積層されたアルミニウムラミネートポリプロピレン22により形成されている。
二枚の同じ形状のアルミニウムラミネートポリプロピレン22,22を、アルミニウム箔10を互いに内側に向けて重ねあわせ、周囲の端部23〜28ならびに前記アルミニウムラミネートポリプロピレン22の中央部29が熱融着されている。
【0180】
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とには、それぞれ表1に記載したA液とB液とが収納されている。
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とにそれぞれ表1に記載したA液とB液とを収納するためには、最初にアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部14〜16ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)の周囲の端部24〜27および29を予め熱融着しておく。
次に前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とにそれぞれ表1に記載したA液とB液とをそれぞれ入れる。
次にアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23および28をそれぞれ熱融着すればよい。
この様にして前記袋類110を得ることができる。
【0181】
前記袋類110は、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23〜28に比較して、アルミニウムラミネートポリプロピレン22,22の中央部29が弱く貼着されている。
このため前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えると、アルミニウムラミネートポリプロピレン22,22の中央部29のみの貼着部が剥がれて互いに隣接する前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との内部がつながる。
この際、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23〜28は、手により揉んだり、足により踏んだりする程度の外力では開封しない密着力により互いに熱融着されている。
【0182】
次に前記袋類110の内部で膨張成分(A)の膨張が一定以上進むと、前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部25および26のうち少なくとも一方の貼着部が剥がれて前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)と前記袋類110との内部が互いにつながる。
【0183】
上記の機能を達成するためには、例えば、
(アルミニウムラミネートポリプロピレン22,22の中央部29の貼着幅)
<(第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部25および26の貼着幅)
<(第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23,24,27および28の貼着幅ならびにアルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16の貼着幅)
の関係式が成り立つ様に、それぞれの貼着幅を調整する等の方法により、それぞれの対応する部分が順番に剥がれる構造等を採用すればよい。
前記袋類110の内部に圧力が加わると、貼着幅が狭い順番に貼着部が剥がれる。この関係を利用して任意の順番に前記袋類110の内部に設けた貼着部を順番に剥がすことができる。
【0184】
前記袋類100に対して外力を加えることにより、膨張成分(A)のうち前記第一の成分収納部(a−1)に含まれるポリエーテルポリオールと、第二の成分収納部(a−2)に含まれるイソシアネート化合物とが混合して反応し、前記ポリエーテルポリオールに含まれる微量の水分が発泡剤となって、前記袋類110の内部でポリウレタン樹脂フォームが形成される。このポリウレタン樹脂フォームの膨張により、ほぼ平面形状であった前記袋類110は大きく立体的形状に膨らむ。
このポリウレタン樹脂フォームには、熱膨張性成分(B)としての熱膨張性黒鉛、充填剤としての炭酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウムが含まれる。
なお実施例2の場合も、実施例1の場合と同様、前記袋類110の外面に開口部を設けておくことが好ましい。
【0185】
実施例1の場合と同様に、実施例2に使用する袋類110を用いて簡単に梁1とデッキプレート2との隙間を閉塞することができ、実施例2に係る耐火補強構造510を得ることができる。
【実施例3】
【0186】
実施例3は実施例2の変形例である。
実施例3は、実施例2に使用した前記袋類110の内部に、前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との少なくとも一方を外部から開封することのできる開封手段を設けた点が異なる。それ以外は実施例2の場合と同様である。
実施例3に使用した袋類120も、実施例2に使用した前記袋類100の場合と同様に前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持することができる。
【0187】
図9は、実施例3に使用した膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)等を含む袋類の構造を説明するための模式平面図である。
前記袋類120は、内部にL字型の鋼線30が設置されている。
前記L字型の鋼線30の折れ曲がり部分31は、第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部25および26の内側に貼着されている。
またL字型の鋼線30の端部32は、前記袋類120の孔33を通って外部に出ている。
【0188】
実施例2の場合と同様、前記袋類120の前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えて前記袋類120が膨張を開始したことを確認した後に、前記L字型の鋼線30を前記袋類120の孔33から引き抜く。
すると前記L字型の鋼線30の折れ曲がり部分31に貼着されていた第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部25および26が破れて、第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との内容物を前記袋類120の内部へ放出させることができる。
この様に前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との少なくとも一方を外部から開封することのできる開封手段を設けることにより、より円滑に前記袋類120を膨張させることができる。
なお実施例3の場合も、実施例1の場合と同様、前記袋類120の外面に開口部を設けておくことが好ましい。
実施例1および2の場合と同様に、実施例3に使用する袋類120を用いて簡単に梁1とデッキプレート2との隙間を閉塞することができ、実施例3に係る耐火補強構造520を得ることができる。
【実施例4】
【0189】
実施例4は実施例2の変形例である。
実施例4は、実施例2に使用した前記袋類110の外部に直径3mmの円形の開口部を複数設け、それぞれの開口部を粘着シートからなる蓋材により塞いだ袋類130を使用した点が異なる。それ以外は実施例2の場合と同様である。
実施例4に使用した袋類120も、実施例2に使用した前記袋類100の場合と同様に前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持することができる。
前記開口部の大きさ、形状に特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、前記開口部の大きさは最大1〜10mmの範囲であることが好ましい。また前記開口部の形状は、円形、楕円形、多角形等の形状が挙げられる。
【0190】
前記粘着シートは着脱可能に前記袋類130に貼着されている。
本発明に使用する前記粘着シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等に粘着成分を塗布して得られるもの等が挙げられる。
前記袋類130に含まれるポリウレタン樹脂フォームの膨張により前記袋類130が破裂する前に前記粘着シートが前記袋類110の外部に設けられた開口部から剥がれる様に、前記粘着シートの粘着力を事前に調整しておく。
この様にしておけばポリウレタン樹脂フォームの膨張により前記袋類130が破裂することを防止することができるため、本発明に使用する前記袋類130を安全に使用することができる。
【0191】
実施例1〜3の場合と同様に、実施例3に使用する袋類130を用いて簡単に梁1とデッキプレート2との隙間を閉塞することができ、実施例4に係る耐火補強構造530を得ることができる。
【実施例5】
【0192】
実施例5は、構造物の仕切り部に設けられた区画と前記区画の貫通孔に挿通された配管類とを少なくとも含み、前記区画の貫通孔の内面と前記配管類の外面との隙間に膨張成分(A)と熱膨張性成分(B)とを含む閉塞材が設置された耐火補強構造540に関するものである。
【0193】
図10は実施例5に使用する区画と配管類との関係を示した模式断面図である。
実施例5では構造物の仕切り部に設けられた区画40として、建築物のコンクリート壁41が使用されている。
前記コンクリート壁41には円形の貫通孔42が設置されている。前記貫通孔42の形状は円形に限定されることはなく、適宜選択することができる。
図10に示される様に、前記貫通孔42を配管類43が挿通している。前記配管類43はポリ塩化ビニル等の合成樹脂の円筒管により形成されている。
【0194】
次に
図3に示される実施例1に使用した袋類100を使用して、実施例5に係る耐火補強構造の施工を行った。
実施例5に使用した袋類100の場合も前記膨張成分(A)の膨張に伴い内部の体積が増加し、かつ体積が増加した形状を維持することができる。
図11は、貫通孔と配管類との隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張前の前記袋類100を設置した状態を例示した模式断面図であり、
図12貫通孔と配管類との隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張後の前記袋類100を設置した状態を例示した模式断面図である。
前記袋類100の第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えると、アルミニウムラミネート不織布12,12の中央部17のみの貼着部が簡単に剥がれて互いに隣接する前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との内部がつながる。
これにより表1に記載したポリウレタン樹脂フォームの膨張が始まる。
外力を加えて前袋類100が膨張を開始することを確認したら、膨張を開始した前記袋類100を貫通孔42と配管類43との隙間に設置する。
貫通孔42と配管類43との隙間は、膨張した前袋類100により閉塞される。
【0195】
図12に示される様に、袋類100を用いて簡単に貫通孔42と配管類43との隙間を閉塞することができ、実施例5に係る耐火補強構造540を得ることができる。
前記耐火補強構造540が火災等の熱にさらされた場合には、前記耐火補強構造540に使用した袋類100に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣により、火災等による炎、煙等貫通孔42と配管類43との隙間を通過することを防止することができる。
【実施例6】
【0196】
実施例6は実施例5の変形例である。
実施例5の場合は前記貫通孔42に配管類43が挿通していた。これに対し実施例6の場合は前記貫通孔42に複数の配管類43a,43b,43cが挿通している点が異なる。
また実施例5に使用した袋類100に代えて、袋類140を使用した点が異なる。それ以外は実施例5の場合と同様である。
実施例6に使用した袋類140は開口部を有する。実施例6に使用した袋類140は先の実施例2に使用した前記袋類100の場合とは異なり、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する。
【0197】
図13は実施例6に使用する区画と配管類との関係を示した模式断面図である。
図13に示される様に、コンクリート壁41に円形の貫通孔42が設置されている。また前記貫通孔42を複数の配管類43a,43b,43cが挿通している。前記配管類43a,43b,43cはそれぞれポリ塩化ビニル等の合成樹脂の円筒管により形成されている。
【0198】
図14は実施例6に使用する袋類140を説明するための模式平面図である。
実施例6に使用した袋類140は、実施例2に使用した袋類110の一方の表面に、前記袋類110の内部から外部へ通じる複数の開口部50が設けられている。
前記開口部50は直径3mmの円形形状である。
また前記開口部50の上には粘着層を備えたポリエチレンシート51が貼付されている。
【0199】
次に
図14に示される袋類140を使用して、実施例5に係る耐火補強構造の施工を行った。
図15は、貫通孔と配管類との隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張前の前記袋類140を設置した状態を例示した模式断面図であり、
図16は貫通孔と配管類との隙間に実施例1に使用した膨張成分(A)による膨張後の前記袋類140を設置した状態を例示した模式断面図である。また
図17は袋類140から排出された内容物が、前記袋類と配管類との隙間を閉塞した状態を例示した模式断面図である。
【0200】
前記袋類140の第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えると、実施例2の場合と同様に前記袋類140は膨張を開始する。
外力を加えて前袋類140が膨張を開始することを確認したら、前記袋類140の表面に貼付されているポリエチレンシート51を剥がす。
次に前記袋類140の表面の複数の開口部50を、複数の配管類43a,43b,43c側に向けて、前記袋類140を貫通孔42と配管類43a,43b,43cとの隙間に挿入する。
前記貫通孔42と配管類43a,43b,43cとの隙間は、膨張した前袋類140により閉塞される。
この一方、前記袋類140の表面の開口部50から、袋類140の内容物であるポリウレタン樹脂フォーム53が、複数の配管類43a,43b,43c側に排出される。
前記袋類140の表面の開口部50から排出された袋類140の内容物であるポリウレタン樹脂フォーム53は、袋類140と複数の配管類43a,43b,43cとの狭い隙間52を確実に閉塞する。
【0201】
図17に示される様に、袋類140を用いて簡単に貫通孔42と複数の配管類43a,43b,43cとの隙間を閉塞することができ、実施例6に係る耐火補強構造550を得ることができる。
貫通孔と配管類との隙間が複雑な形状の場合には、従来のブロック状の防火処理用充填材を使用しても前記複雑な形状の隙間を閉塞することが困難である。
これに対し、本発明に使用する袋類140を用いれば、前記複雑な形状の隙間を簡単に閉塞することができる。
【0202】
また前記耐火補強構造550が火災等の熱にさらされた場合には、前記耐火補強構造550に使用した袋類140に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣により、火災等による炎、煙等貫通孔42と配管類43a,43b,43cとの隙間を通過することを防止することができる。
【実施例7】
【0203】
実施例7は実施例5の変形例である。
実施例5の場合は前記貫通孔42に、比較的余裕を持って配管類43が挿通していた。これに対し実施例7の場合は前記貫通孔42に配管類43dが挿通している点が異なる。
また実施例5に使用した袋類100に代えて、袋類150を使用した点が異なる。
実施例7に使用した袋類150は開口部を有する。実施例7に使用した袋類170は先の実施例5に使用した前記袋類100の場合とは異なり、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する。
以下に実施例7について説明する。
【0204】
図18は実施例7に使用する区画と配管類との関係を示した模式断面図である。
図18に示される様に、実施例5の場合と比較して区画40を挿通する配管類43dの直径が大きく、前記区画40に設けられた貫通孔42と、前記配管類43dとの隙間が狭い。
【0205】
前記配管類43dが前記貫通孔42の中心を通っていない場合には、前記貫通孔42と、前記配管類43dとの隙間は前記区画40の表面方向にそって場所により変化する。このため、前記貫通孔42と、前記配管類43dとの隙間を閉塞することは一般には容易ではない。
特に前記配管類43dの外面が前記貫通孔42の内面と接触している場合には、前記貫通孔42内部において前記配管類43dの周囲に熱膨張性耐火シート等を配置することが困難である。
実施例7に係る耐火補強構造560は
図18に示す区画40と配管類43dの場合等の様に、前記区画40に設けられた貫通孔42と、前記配管類43dとの隙間が狭い場合でも容易に施工することができる。
【0206】
図19は実施例7に使用する袋類150を説明するための模式平面図である。前記袋類150は実施例2に使用した袋類110と同様の構成となっている。
図20は
図19に示した袋類150を一点破線A−A部により切断した断面を示したものである。
【0207】
実施例7に使用した前記袋類150は、内部に袋部分として第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とを有する。
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とは
図19においてそれぞれ参照符号111および112により示されている。
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とはそれぞれアルミニウム箔20とポリプロピレン21とが積層されたアルミニウムラミネートポリプロピレン22により形成されている。
二枚の同じ形状のアルミニウムラミネートポリプロピレン22,22を、アルミニウム箔10を互いに内側に向けて重ねあわせ、周囲の端部23〜28ならびに前記アルミニウムラミネートポリプロピレン22の中央部29が熱融着されている。
【0208】
前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とには、それぞれ表1に記載したA液とB液とが収納されている。
【0209】
前記袋類150は、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23〜28に比較して、アルミニウムラミネートポリプロピレン22,22の中央部29が弱く貼着されている。
このため前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)とに対して手により揉んだり、足により踏んだりする等の外力を加えると、アルミニウムラミネートポリプロピレン22,22の中央部29のみの貼着部が剥がれて互いに隣接する前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との内部がつながる。
この際、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部13〜16ならびに前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部23〜28は、手により揉んだり、足により踏んだりする程度の外力では開封しない密着力により互いに熱融着されている。
【0210】
次に前記袋類150の内部で膨張成分(A)の膨張が一定以上進むと、前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)との周囲の端部25および26のうち少なくとも一方の貼着部が剥がれて前記第一の成分収納部(a−1)と第二の成分収納部(a−2)と前記袋類150との内部が互いにつながる。
【0211】
前記袋類150の内部に圧力が加わると、貼着幅が狭い順番に貼着部が剥がれる。この関係を利用して任意の順番に前記袋類150の内部に設けた貼着部を順番に剥がすことができる。
【0212】
前記袋類150に対して外力を加えることにより、膨張成分(A)のうち前記第一の成分収納部(a−1)に含まれるポリエーテルポリオールと、第二の成分収納部(a−2)に含まれるイソシアネート化合物とが混合して反応し、前記ポリエーテルポリオールに含まれる微量の水分が発泡剤となって、前記袋類150の内部でポリウレタン樹脂フォームが形成される。
このポリウレタン樹脂フォームには、熱膨張性成分(B)としての熱膨張性黒鉛、充填剤としての炭酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウムが含まれる。
【0213】
また前記袋類150は、前記袋類150の内部と外部とを挿通する筒部材70が設置されている。実施例7の場合には前記筒部材70はポリプロピレン等の合成樹脂からなる円筒形状により形成されている。
また前記筒部材70には固定部71,72が設置されていて、前記袋類150に前記筒部材70を固定することができる。
また前記筒部材70には蓋材73が設置されている。前記筒部材70の外周には螺子山が形成されている。また前記蓋材73は内部に螺子溝が形成されていて、前記蓋材73を前記筒部材70に密閉して固定できる構造となっている。
前記筒部材70の開口部を閉塞する蓋材73の構造は、前記筒部材70の開口部を閉塞できるものであれば特に限定はない。
【0214】
図21は実施例7に使用する袋類150の内部からポリウレタン樹脂フォームが放出される状態を説明するための模式斜視図である。
まず前記袋類150の蓋材73を外す。
次に手で揉む等の手段により、前記袋類150に対して外力を加えると、先に説明した通り前記袋類150の内部でポリウレタン樹脂フォームが形成される。
形成されたポリウレタン樹脂フォームは、前記袋類150の前記筒部材70の先端から外部へ放出される。
【0215】
図22は実施例7に係る耐火補強構造の施工工程を説明するための模式断面図である。
蓋材73を外した前記袋類150を手で揉む等の手段により、前記袋類150の膨張を開始させる。
次に、前記袋類150の筒部材70の開口部を前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に向けて、前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に前記袋類150を挿入する。
【0216】
図23は実施例7に係る耐火補強構造を説明するための模式断面図である。
前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に挿入された前記袋類150は、前記筒部材70の先端から熱膨張性黒鉛等を含むポリウレタン樹脂フォームを前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に放出する。
【0217】
放出されたポリウレタン樹脂フォーム53は前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間を閉塞する。
上記の工程により、実施例7に係る耐火補強構造560が得られる。
【実施例8】
【0218】
実施例8は実施例7の変形例である。
実施例7に使用した袋類150は筒部材70を備えるものであった。これに対し実施例8に使用した袋類160は外部に突き出た突出部18を有する。
実施例8に使用した袋類160は開口部を有し、実施例7に使用した袋類150の場合と同様に、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する。
【0219】
図24および
図25は実施例7に使用する袋類160を説明するための模式斜視図である。
前記突出部18の周囲は、アルミニウムラミネート不織布12,12の周囲の端部16と同じ幅により熱融着されている。
また前記突出部18の先端部18aは狭い幅により熱融着されている。このため前記袋類160の内部でポリウレタン樹脂フォーム53が膨張して、前記袋類160の内圧が一定以上になった場合に、前記袋類160の外周の中で熱融着されている先端部18aの貼着部が最初に剥がれる。この結果、前記袋類160の突出部18の先端部18aからポリウレタン樹脂フォーム53を外部に放出させることができる。
【0220】
なおこのポリウレタン樹脂フォームには、熱膨張性成分(B)としての熱膨張性黒鉛、充填剤としての炭酸カルシウム、ポリリン酸アンモニウムが含まれる。
実施例7の場合に使用した袋類150に代えて袋類160を前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に挿入することにより、実施例7の場合と同様に実施例8に係る耐火補強構造570が得られる。
なお、袋類160の突出部18を一点破線B−Bに沿って切断してから袋類160を使用することもできる。
【0221】
まず袋類160の突出部18を一点破線B−Bに沿って切断する。
前記突出部18を切断した前記袋類160を手で揉む等の手段により、前記袋類160の膨張を開始させる。
次に、前記袋類160の切断した前記突出部18の開口部を前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に向けて、前記区画40の貫通孔42に挿通された配管類43dと前記貫通孔42との隙間に前記袋類150を挿入する。
上記の工程によっても、実施例8に係る耐火補強構造570が得られる。
【実施例9】
【0222】
実施例9は実施例5の変形例である。
実施例5の場合は容器(C)として袋類100が使用された。これに対し実施例9の場合は袋類100に代えて、有底四角筒200が容器(C)として使用されている。それ以外は実施例5の場合と同様である。
実施例9に使用した器類は有底四角筒200であり、開口部を有する。前記有底四角筒200は、前記膨張成分(A)および前記熱膨張性成分(B)を前記開口部から外部に放出する。
【0223】
図26は実施例9に使用した有底四角筒200を説明するための模式斜視図である。また
図27は貫通孔と配管類との隙間に実施例9に使用した膨張成分(A)による膨張前の前記有底四角筒200を設置した状態を例示した模式断面図であり、
図28は貫通孔と配管類との隙間に実施例9に使用した膨張成分(A)による膨張後の前記有底四角筒200を設置した状態を例示した模式断面図である。
【0224】
前記有底四角筒200の内部に表1に示したA液とB液とを入れて、ポリプロピレン製のスパチュラを攪拌手段として用いて、前記有底四角筒200の内部のA液とB液とを混合した。
【0225】
ポリウレタン樹脂フォームの膨張が開始した後、前記有底四角筒200を前記貫通孔42の内部に設置する。
前記有底四角筒200を前記貫通孔42の内部に設置する方法としては、例えば、前記有底四角筒200を前記貫通孔42の開口端に置く。次に前記有底四角筒200を、木製棒等を用いて前記貫通孔42の内部へ押し込む方法等が挙げられる。
前記有底四角筒200からポリウレタン樹脂フォームが溢れ出すことにより、前記貫通孔42と配管類43との隙間を閉塞することができる。
【0226】
なお、上記の工程により前記貫通孔42の上部と配管類43との隙間が完全に閉塞されない場合がある。
この場合にはポリウレタン樹脂フォームの膨張が開始した後の有底四角筒200を追加して前記貫通孔42の上部と配管類43との隙間に設置することにより、前記貫通孔42の上部と配管類43との隙間を閉塞させることができる。
【0227】
実施例9に使用したポリウレタン樹脂フォームは前記コンクリート壁41に形成された貫通孔42の上下方向だけではなく、前記コンクリート壁41に対して垂直方向、すなわち前記貫通孔42の左右方向にも膨張する。
このため、前記コンクリート壁41に形成された貫通孔42を幅広く閉塞することができる。
【0228】
前記耐火補強構造580が火災等の熱にさらされた場合には、前記耐火補強構造580に使用した袋類140に含まれる熱膨張性黒鉛が膨張して熱膨張残渣を形成する。
この熱膨張残渣により、火災等による炎、煙等貫通孔42と配管類43との隙間を通過することを防止することができる。