特許第6049467号(P6049467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6049467-クライストロン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049467
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】クライストロン
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/06 20060101AFI20161212BHJP
   H01J 23/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01J23/06
   H01J23/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-8288(P2013-8288)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-139886(P2014-139886A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】阪本 尚己
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−234524(JP,A)
【文献】 実開昭60−035458(JP,U)
【文献】 実開昭58−036550(JP,U)
【文献】 実開昭59−082947(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 23/00−25/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃部、高周波相互作用部およびコレクタ部を有するクライストロン本体と、
前記高周波相互作用部の周囲に配置された集束コイルと、
前記電子銃部を収容して前記クライストロン本体に取り付けられるオイルタンクと
を具備していることを特徴とするクライストロン。
【請求項2】
前記オイルタンクに前記電子銃部の端子が配設されている
ことを特徴とする請求項1記載のクライストロン。
【請求項3】
前記集束コイルの上方に前記オイルタンクへのアクセスポートが設けられ、前記クライストロン本体と前記集束コイルとの間に前記アクセスポートと前記オイルタンクとを接続する配管が配設されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のクライストロン。
【請求項4】
前記クライストロン本体を冷却する冷却装置を具備し、この冷却装置により前記オイルタンク内を冷却する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のクライストロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波電力を増幅するクライストロンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クライストロンは、電子ビームを発生する電子銃部、電子ビームと高周波電界との相互作用により高周波電力を増幅する高周波相互作用部、および用済みの電子ビームを捕捉するコレクタ部を有するクライストロン本体と、高周波相互作用部の周囲に配置されて電子ビームを集束する集束コイルとを備えている。
【0003】
また、電子銃部をオイルタンクのオイル内に配置し、電子銃部を絶縁および冷却するようにしている。オイルタンクは大形に形成され、このオイルタンクにクライストロンが設置されている。あるいは、オイルタンクは集束コイルの枠体に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−3097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のクライストロンでは、オイルタンクにクライストロンを設置する構造であるため、あるいはオイルタンクを集束コイル側に取り付ける構造であるため、オイルタンクが大形になっていた。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、オイルタンクを小形化できるクライストロンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態のクライストロンは、電子銃部、高周波相互作用部およびコレクタ部を有するクライストロン本体と、前記高周波相互作用部の周囲に配置された集束コイルと、前記電子銃部を収容して前記クライストロン本体に取り付けられるオイルタンクとを具備しているものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態を示すクライストロンの一部を切り欠いた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0010】
クライストロン10は、クライストロン本体11、集束コイル12、オイルタンク13、および冷却装置14を備えている。
【0011】
クライストロン本体11は、電子ビームを発生する電子銃部18、電子ビームと高周波電界との相互作用により高周波電力を増幅する高周波相互作用部19、および用済みの電子ビームを捕捉するコレクタ部20を備えている。電子銃部18は、電子ビームを放出するカソードやカソードを加熱するヒータに電気的に接続される複数の端子21を備えている。また、高周波相互作用部19は、電子銃部18から放出された電子ビームが通過するドリフト管、電子ビームの進行方向に沿ってそれぞれドリフト管に接続された入力空胴、複数の中間空胴および出力空胴を有し、入力空胴に高周波電力を入力する入力部が接続され、出力空胴に増幅された高周波電力を出力する出力部が接続されている。また、電子銃部18と高周波相互作用部19との間に電子銃側ポールピース22が配設され、コレクタ部20と高周波相互作用部19との間にコレクタ側ポールピース23が配設されている。
【0012】
また、集束コイル12は、磁極として構成される枠体26に保持され、高周波相互作用部19の周囲に間隔をあけて配置されている。枠体26の両端部は電子銃側ポールピース22およびコレクタ側ポールピース23にそれぞれ接続されている。
【0013】
また、オイルタンク13は、例えば樹脂などの絶縁材で、上面が開口する有底円筒状に形成され、上面開口から電子銃部18を収容し、クライストロン本体11に取り付けられている。オイルタンク13の上端部にはクライストロン本体11の電子銃側ポールピース22の下面にOリングなどを介してボルトにより締付固定して密閉状態に取り付けられる取付部29が設けられている。オイルタンク13の下面には、電子銃部18の各端子21が密閉状態で挿通配置され、各端子21が突出されている。そして、オイルタンク13内には絶縁性を有するオイルが満たされる。
【0014】
クライストロン本体11には、コレクタ側ポールピース23および集束コイル12より上方位置に、オイルタンク13へのアクセスポート31が設けられている。このアクセスポート31とオイルタンク13とを連通接続する配管32が、クライストロン本体11と集束コイル12との間を通じてクライストロン本体11に沿って配設されている。アクセスポート31には、オイルを注入するためのオイル注入口およびエア抜き用のエアブリーザなどのアクセス部33が連通接続されている。
【0015】
また、冷却装置14は、冷却水を冷却管36によってクライストロン本体11の冷却箇所に導き、クライストロン本体11を冷却する。冷却管36の一部は電子銃側ポールピース22を貫通してオイルタンク13内に配置され、オイルタンク13内のオイルを冷却する。
【0016】
このように構成されたクライストロン10では、電子銃部18から放出された電子ビームが、集束コイル12の磁場により集束されて、高周波相互作用部19のドリフト管に入り、管軸に沿って進行する。電子ビームは、入力空胴に入力された高周波電力により速度変調され、ドリフト管および中間空胴を通過中に密度変調される。その後、電子ビームが出力空胴を通過するとき、増幅された高周波電力が外部に出力される。ドリフト管を出た電子ビームは、コレクタ部20に捕捉される。
【0017】
そして、オイルタンク13を絶縁材で形成しているため、クライストロン本体11に取り付けることができる。オイルタンク13を金属材で形成した場合、絶縁性に問題が生じるとともに、集束コイル12の磁場に悪影響が生じる。このようにオイルタンク13をクライストロン本体11に取り付けることができるため、電子銃部18を収容するだけの容積でよいため、オイルタンク13を小形化できる。これにより、オイルの使用量も削減できる。
【0018】
オイルタンク13には電子銃部18の端子21を配設するため、オイルタンク13をより小形化できる。
【0019】
また、集束コイル12の上方にオイルタンク13へのアクセスポート31を設け、クライストロン本体11と集束コイル12との間にアクセスポート31とオイルタンク13とを接続する配管32を配設しているため、クライストロン本体11を集束コイル12に収納した状態で、アクセス部33からオイルタンク13へオイルを注入することができる。さらに、アクセス部33からは、クライストロン10の動作中にオイルが噴き出すことで温度の異常などを把握することもできる。
【0020】
また、クライストロン本体11を冷却する冷却装置14を利用し、この冷却装置14によりオイルタンク13内も冷却することができ、冷却装置14を共用できる。
【0021】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
10 クライストロン
11 クライストロン本体
12 集束コイル
13 オイルタンク
14 冷却装置
18 電子銃部
19 高周波相互作用部
20 コレクタ部
21 端子
31 アクセスポート
32 配管
図1