(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049498
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/08 20060101AFI20161212BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20161212BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20161212BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
B01D61/08
B01D65/02
B01D61/58
C02F1/44 A
C02F1/44 D
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-35023(P2013-35023)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-161797(P2014-161797A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 貴一
(72)【発明者】
【氏名】安永 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕太
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−130840(JP,A)
【文献】
特開2011−120996(JP,A)
【文献】
実開昭63−197603(JP,U)
【文献】
特開2001−170458(JP,A)
【文献】
特開2001−029756(JP,A)
【文献】
特開2008−207158(JP,A)
【文献】
特開平07−144120(JP,A)
【文献】
特開2005−238135(JP,A)
【文献】
特開昭63−059312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の逆浸透膜エレメントが直列又は並列に配置され、原水を前処理して生成した被処理水を1段目の逆浸透膜エレメントから順々に濃縮水と透過水へ膜分離し、前記透過水を得るようにした逆浸透膜装置において、
前記被処理水の導入路に対して並列に配置され、前記複数の逆浸透膜エレメントのうち、前記被処理水の上流側である前段又は前記被処理水の下流側である後段にある第1の逆浸透膜エレメントを夫々内蔵した複数の第1の高圧容器群と、
前記複数の逆浸透膜エレメントのうち、前記第1の高圧容器群に対して直列に配置され、前記第1の逆浸透膜エレメント以外の第2の逆浸透膜エレメントが直列配置で内蔵された第2の高圧容器と、
前記複数の逆浸透膜エレメントのうち各々の前記第1の逆浸透膜エレメントについて選択的に、該第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に堆積したファウリング物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、
前記第1の逆浸透膜エレメントに堆積したファウリング物質が閾値を超えたとき、前記第1の逆浸透膜エレメントを内蔵した前記第1の高圧容器への被処理水の導入を停止し、被処理水を前記第1の逆浸透膜エレメントと並列に配置された他の第1の逆浸透膜エレメントに流入させる流路切換手段とを備え、
前記流路切換手段は、
前記閾値を超えた前記第1の逆浸透膜エレメントのみに洗浄液を供給し、
前記他の第1の逆浸透膜エレメントおよび前記第2の逆浸透膜エレメントによる運転を継続する
ように構成されたことを特徴とする逆浸透膜装置。
【請求項2】
前記第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜を洗浄した後の洗浄液を排出する洗浄液排出路とをさらに備え、
前記洗浄液が前記逆浸透膜に作用する剥離力によって、前記逆浸透膜に付着したファウリング物質を剥離するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置。
【請求項3】
前記堆積量検出手段が、
前記第1の逆浸透膜エレメントの入口側の被処理水導入路を流れる被処理水の圧力と、前記第1の逆浸透膜エレメントの濃縮水流出路を流れる濃縮水の圧力との差圧を検出する差圧検出手段と、
前記差圧検出手段の検出値からファウリング物質の堆積量を算出する堆積量算出手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置。
【請求項4】
前記堆積量検出手段で検出されたファウリング物質の堆積量が閾値を超えた時、アラームを発信するアラーム発信機をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の逆浸透膜装置。
【請求項5】
前記第2の高圧容器が、前記第1の高圧容器に設けられた濃縮水流出路に対して複数個並列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置。
【請求項6】
前記堆積量検出手段は、前記第1の高圧容器群の各々の高圧容器の入口側と濃縮水出口側との圧力差を検出するための差圧計を含み、該差圧計の検出結果に基づいて前記第1の逆浸透膜エレメントについて前記堆積量を検出するように構成されたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の逆浸透膜装置。
【請求項7】
前記第1の高圧容器群の各々の高圧容器には、1個の前記第1の逆浸透膜エレメントが内蔵されたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の逆浸透膜装置。
【請求項8】
複数の逆浸透膜エレメントが直列又は並列に配置され、原水を前処理して生成した被処理水を1段目の逆浸透膜エレメントから順々に濃縮水と透過水へ膜分離し、前記透過水を得るようにした逆浸透膜装置において、
前記被処理水の導入路に対して並列に配置され、前記複数の逆浸透膜エレメントのうち、前記被処理水の下流側である後段にある第1の逆浸透膜エレメントを夫々内蔵した複数の第1の高圧容器群と、
前記複数の逆浸透膜エレメントのうち、前記第1の高圧容器群に対して直列に配置され、前記第1の逆浸透膜エレメント以外の第2の逆浸透膜エレメントが直列配置で内蔵された第2の高圧容器と、
前記第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に堆積したファウリング物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、
前記第1の逆浸透膜エレメントに堆積したファウリング物質が閾値を超えたとき、前記第1の逆浸透膜エレメントを内蔵した前記第1の高圧容器への被処理水の導入を停止し、被処理水を前記第1の逆浸透膜エレメントと並列に配置された他の第1の逆浸透膜エレメントに流入させる流路切換手段とを備え、
前記第1の高圧容器群の各々の高圧容器には、1個の前記第1の逆浸透膜エレメントが内蔵されたことを特徴とする逆浸透膜装置。
【請求項9】
請求項4に記載された逆浸透膜装置の運転方法において、
前記アラーム発信機がアラームを発信したとき、ファウリング物質が閾値を超えた前記第1の逆浸透膜エレメントに対して被処理水の導入を停止させ、前記流路切換手段により、被処理水(sw)を他の第1の逆浸透膜エレメントに導入する流路切換工程と、
前記洗浄液の流れによって、前記第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に付着したファウリング物質を剥離させた後、該洗浄液を排出する洗浄工程とからなることを特徴とする逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項10】
前記洗浄工程において、
前記洗浄液として被処理水を、透過水路を介し前記第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に発生する浸透圧より低圧で前記第1の逆浸透膜エレメントに供給し、
前記被処理水の浸透圧と浸透圧をもたない透過水との間の圧力差によって、前記透過水を前記透過水路側から前記逆浸透膜を透過させることを特徴とする請求項9に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜の洗浄や交換に要する手間及び時間を短縮して安定的に連続運転を可能にした逆浸透膜装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水からの淡水の生成や、河川、湖沼水からの上水の生成には、例えば、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜装置が用いられる。逆浸透膜装置は、通常、前処理として、原水となる海水、河川、湖沼水等を取水後、殺菌剤を投入し殺菌を行う処理や、砂ろ過器等により不純物の除去を行う処理等を行って生成された被処理水(清澄水)を用いる。この被処理水を高圧ポンプで例えば6.0MPa程度の高圧にして逆浸透膜モジュールに供給し、逆浸透膜モジュールにより逆浸透作用で逆浸透膜を透過させ、製造水となる透過水を得るようにしている。
【0003】
逆浸透膜モジュールは、通常複数の逆浸透膜エレメントで構成されている。逆浸透膜エレメントには、特許文献1に開示されているように、透過水が集められるセンターパイプの周囲に、流路材を内包した袋状の逆浸透膜をメッシュスペーサを介してスパイラル状に巻回し、一端にブラインシールを設けた構造を有したスパイラル型がある。また、平坦なシート状の逆浸透膜を複数重ね合せた平膜型のものがある。
【0004】
逆浸透膜モジュールは、1個の高圧容器の中に、通常複数の逆浸透膜エレメントが直列に配置され、被処理水(清澄水)を上流側の逆浸透膜エレメントから順々に透過水と塩分や不純物を含んだ濃縮水に膜分離し、各逆浸透膜エレメントで透過水を得ている。各逆浸透膜エレメントで透過水と分離された濃縮水は、下流側の逆浸透膜エレメントでさらに透過水と濃縮水に膜分離される。よって、下流側ほど濃縮水の塩分濃度や不純物濃度が大きくなる。特許文献2には、被処理水の導入路に対してスパイラル型逆浸透膜エレメントを内蔵した複数の高圧容器を並列に配置した構成が開示されている。
【0005】
図6は、1個の高圧容器の内部に複数のスパイラル型逆浸透膜エレメントを直列に配置した従来の逆浸透膜装置の構成例を示している。
図6において、この逆浸透膜装置100は、1個の高圧容器102に、4〜6本の逆浸透膜エレメント104が直列に配置されている。被処理水twは、被処理水導入路114から高圧容器102の入口開口102aに高圧で供給される。直列に配置された複数の逆浸透膜エレメントのうち被処理水twの上流側を前段とし、下流側を後段とした場合、被処理水twは最前段の逆浸透膜エレメント104の入口端から入り、逆浸透膜エレメント104aの内部で逆浸透膜により透過水pwと濃縮水csとに膜分離される。
【0006】
透過水pwはセンターパイプ106に流入し、濃縮水csは最前段の逆浸透膜エレメントの出口端から流出する。最前段の逆浸透膜エレメント104aのセンターパイプ106の入口端はエンドキャップ108で閉塞されている。各逆浸透膜エレメント104のセンターパイプ106は、コネクタ110で接続されている。そのため、各逆浸透膜エレメントの透過水pwは、センターパイプ106で合流し、高圧容器102の出口開口102bから透過水流出路116に排出される。
【0007】
高圧容器102の内部は、各逆浸透膜エレメント104の外周面に設けられたブラインシール112で仕切られているので、前段の逆浸透膜エレメントから流出した濃縮水cwは、後段の逆浸透膜エレメントを素通りすることなく、後段の逆浸透膜エレメントに被処理水として流入する。こうして濃縮水cwは、各逆浸透膜エレメントで順々に透過される。最終段に配置された逆浸透膜エレメント104から排出された濃縮水cwは、高圧容器102の出口端に形成された出口開口102cから濃縮水排出路118に排出される。
【0008】
被処理水導入路114を流れる被処理水twの圧力と、濃縮水排出路118を流れる濃縮水cwの圧力との差圧を検出する差圧計120を設けられている。
逆浸透膜エレメント100の洗浄方法は、差圧計120の検出値が閾値を超えたら、逆浸透膜に堆積した、例えば難溶性成分や高分子の溶質、コロイド、微小固形物などのファウリング物質の堆積量が限界値を超えたと判断し、逆浸透膜装置100の運転を止め、洗浄作業を行っていた。被処理水導入路114を流れる被処理水twと透過水排出路116を流れる透過水pwとの間でも同様のことが言える。従って、被処理水導入路114を流れる被処理水twと透過水排出路116を流れる透過水pwとの圧力差を検出するようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−300264号公報
【特許文献2】特開2001−191071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
逆浸透膜へのファウリング物質の堆積は、直列に配置された逆浸透膜エレメントのうち、前段に配置された逆浸透膜エレメントに集中する。一方、被処理水が塩分を含んだ海水の場合、後段の逆浸透膜エレメントほど、濃縮海水中のCaやMgなどの金属イオンの濃度が高まる。これらの金属イオンが海水中に溶融しているCO
2などと反応し、スケールを生成するため、後段の逆浸透膜エレメントで、逆浸透膜に堆積するスケールの堆積量が増加する。なお、このスケールをクエン酸やHCl等の化学薬品を投入して除去する方法もあるが、化学薬品の使用量が増加し、高コストとなるという問題がある。
【0011】
前述のように、従来の洗浄方法は、1個の高圧容器に直列に配置された複数の逆浸透膜エレメントを同時に洗浄するので、ファウリング(目詰まり)の少ない中間部位の逆浸透膜エレメントまで必要以上に洗浄することになり、洗浄時間と洗浄薬剤の無駄が多いという問題がある。また、洗浄により不可避的に発生する逆浸透膜へのダメージを必要以上に逆浸透膜に与えてしまう。さらに、差圧計による監視は、複数の逆浸透膜エレメントの累積した差圧を監視しているので、差圧を検出する感度が鈍く、そのため、洗浄タイミングを逸してしまう場合がある。
【0012】
また、逆浸透膜に堆積したファウリング物質を完全に除去できない場合、逆浸透膜エレメントの交換が必要となるが、複数の逆浸透膜エレメントを内蔵した高圧容器を開放し、交換作業をするため、多くの手間と時間を要するという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、高圧容器の内部に複数の逆浸透膜エレメントが直列に配置され、原水を前処理して生成した被処理水(清澄水)を1段目の逆浸透膜エレメントから順々に濃縮水と透過水とに膜分離し、透過水を得るようにした逆浸透膜装置において、逆浸透膜装置の洗浄に要する手間と時間を短縮し、逆浸透膜装置の稼動率を高め、安定運転を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、本発明の逆浸透膜装置は、被処理水の導入路に対して並列に配置され、直列に配置された複数の逆浸透膜エレメントのうち、ファウリングが激しい前段(被処理水に対して上流側)又は後段(被処理水に対して下流側)にある第1の逆浸透膜エレメントを夫々内蔵した複数の第1の高圧容器群と、複数の逆浸透膜エレメントのうち、第1の高圧容器群に対して直列に配置され、第1の逆浸透膜エレメント以外の第2の逆浸透膜エレメントが直列配置で内蔵された第2の高圧容器と、第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に堆積したファウリング物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、第1の逆浸透膜エレメントに堆積したファウリング物質が閾値を超えたとき、第1の逆浸透膜エレメントへの被処理水の導入を停止し、被処理水を第1の逆浸透膜エレメントと並列に配置された別な第1の逆浸透膜エレメントに流入させる流路切換手段とを備えている。
【0015】
本発明では、直列に配置された複数の逆浸透膜エレメントのうち、ファウリングが激しい前段又は後段にある第1の逆浸透膜エレメントを他の逆浸透膜エレメントとは別の高圧容器に収容する。そして、第1の逆浸透膜エレメントのみのファウリング物質の堆積量を検出し、この堆積量が閾値を超えたら、第1の逆浸透膜エレメントのみ洗浄作業又は交換作業を行う。第2の逆浸透膜エレメントは、洗浄又は交換の頻度が少ないので、必要に応じ別途洗浄作業又は交換作業を行えばよい。
【0016】
本発明によれば、ファウリングが激しい前段又は後段の逆浸透膜エレメントのみを夫々内蔵した第1の高圧容器群を並列に配置したことで、一つの逆浸透膜エレメントが洗浄又は交換等の保守点検で運転を停止しても、被処理水を他の第1の高圧容器に内蔵された逆浸透膜エレメントに供給することで、運転を継続できる。また、前段又は後段の逆浸透膜エレメントに対し、第2の逆浸透膜エレメントと独立して洗浄又は交換のタイミングを設定することで、洗浄薬剤投入の無駄を省き、低コスト化できる。さらに、ファウリングが激しい逆浸透膜エレメントの洗浄又は交換が必要であるとき、第1の逆浸透膜エレメントのみを内蔵した高圧容器を開放すればよいので、洗浄作業又は交換作業の手間を省くことができると共に、これらに要する時間を短縮できる。
【0017】
本発明の一態様において、第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に洗浄液を供給する洗浄液供給部と、第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜を洗浄した後の洗浄液を排出する洗浄液排出路とをさらに備えることができる。これによって、洗浄液を逆浸透膜に供給し、洗浄液流が逆浸透膜に作用する剥離力で、逆浸透膜に付着したファウリング物質を剥離できる。そのため、酸やアルカリなど、強力な洗浄効果を有する化学薬品の洗浄能力に頼る必要がなくなり、環境負荷の小さい洗浄が可能となる。
【0018】
この場合、逆浸透膜に沿い逆浸透膜に接触する洗浄液流を形成してもよく、又は洗浄液流によって逆浸透膜を透過する流れを形成してもよい。逆浸透膜に沿う洗浄液の流れは、被処理水導入路と濃縮水排出路との間を流れる洗浄液流によって形成でき、逆浸透膜を透過する洗浄液の流れは、例えば、透過水路から逆浸透膜に導入される洗浄液流によって形成できる。
【0019】
堆積量検出手段の一態様として、第1の逆浸透膜エレメントの被処理水導入路を流れる被処理水の圧力と、濃縮水排出路を流れる濃縮水の圧力との差圧を検出する差圧検出手段と、差圧検出手段の検出値からファウリング物質の堆積量を算出する堆積量算出手段とを備えることができる。この構成によって、ファウリングが激しい第1の逆浸透膜エレメントのファウリング物質の堆積量を正確に検出できるので、第1の逆浸透膜エレメントの洗浄又は交換のタイミングを正確に検出できる。
【0020】
本発明の一態様において、堆積量検出手段で検出されたファウリング物質の堆積量が閾値を超えた時、アラームを発信するアラーム発信機をさらに備えてもよい。これによって、第1の逆浸透膜エレメントの洗浄又は交換が必要なタイミングを遅滞なく知ることができる。
【0021】
本発明の一態様として、第2の高圧容器を、第1の高圧容器群の出口に設けられた濃縮水流出路に対して複数個並列に配置することができる。これによって、透過水の製造能力を増大又は可変にできると共に、逆浸透膜装置の運転を停止させることなく、第2の高圧容器のひとつに内蔵された逆浸透膜エレメントの洗浄又は交換が可能になる。
【0022】
本発明の逆浸透膜装置の運転方法は、アラーム発信機がアラームを発信したとき、ファウリング物質が閾値を超えた第1の逆浸透膜エレメントに対して被処理水の導入を停止させ、流路切換手段により、被処理水を他の第1の逆浸透膜エレメントに導入する流路切換工程と、洗浄水供給部から洗浄液を供給し、洗浄液の流れによって、第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に付着したファウリング物質を剥離させた後、洗浄液を洗浄水排出路から排出する洗浄工程とからなる。本発明方法によれば、本発明装置が得られる前記作用効果に加えて、アラーム信号により第1の逆浸透膜エレメントの洗浄が必要なタイミングを遅滞なく知ることができる。
【0023】
本発明方法の一態様として、洗浄工程において、洗浄液として被処理水を、透過水路を介し第1の逆浸透膜エレメントの逆浸透膜に発生する浸透圧より低圧で第1の逆浸透膜エレメントに供給し、透過水と被処理水の塩濃度の差を利用して、被処理水の浸透圧と浸透圧をもたない透過水との間の圧力差によって透過水を透過水路側から逆浸透膜エレメントを通して被処理水側に逆流させることができる。これによって、低動力で、かつ洗浄液として強力な洗浄効果を有する化学薬品を使用することなく、洗浄が可能になり、省エネで環境負荷が小さい洗浄を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ファウリングが激しい第1の逆浸透膜エレメントのみを1個の高圧容器に内蔵させ、かつこの高圧容器を被処理水の導入路に対して複数並列に配置したことで、逆浸透膜装置の洗浄に要する手間と時間を短縮し、かつ逆浸透膜装置の稼動率を高め、安定運転を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る逆浸透膜装置の系統図である。
【
図2】前記第1実施形態に係る逆浸透膜装置の制御系を示すブロック線図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る逆浸透膜装置の系統図である。
【
図4】本発明の第3実施形態に係る逆浸透膜装置の系統図である。
【
図5】本発明の第4実施形態に係る逆浸透膜装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0027】
(実施形態1)
本発明の第1実施形態を
図1に基づいて説明する。本実施形態は、海水淡水化プラントに適用された逆浸透膜装置の例である。
図1において、本実施形態では、被処理水として、導入した原海水を殺菌し、かつゴミ類や微生物等の比較的大きな夾雑物を除去する前処理を行う。前処理後の清澄海水swを被処理水として用いる。逆浸透膜装置10Aは、清澄海水swの導入路18に対して、2個の高圧容器12a及び12bが導入分岐路18a及び18bを介して接続されている。高圧容器12a及び12bの内部には、夫々1個の逆浸透膜エレメント14a及び14bが内蔵されている。
【0028】
清澄海水swは、導入分岐路18a又は18bを介して、高圧容器12a又は12bの入口開口22に、清澄海水導入路18に設けられたポンプ20によって高圧で供給される。清澄海水swは、逆浸透膜エレメント14a又は14bの入口端から逆浸透膜エレメント14a又は14bの内部に入り、逆浸透膜により、透過水pwと濃縮海水csとに分離される。また、高圧容器12aと12bは同時に運転してもよく、高圧容器12a又は12bのいずれか片方のみを運転してもよい。
【0029】
透過水pwは、センターパイプ28に流入し、濃縮海水csは逆浸透膜エレメント14a又は14bの出口端から流出する。逆浸透膜エレメント14a又は14bのセンターパイプ28の入口は、エンドキャップ30で閉塞されている。センターパイプ28は、高圧容器12a又は12bの出口開口24にコネクタ32で接続されており、透過水pwは、センターパイプ28から出口開口24を経て透過水流出路34a又は34bに流出する。透過水流出路34a及び34bは1本の透過水集合路36に接続されている。高圧容器12a又は12bの内部は、逆浸透膜エレメント14a又は14bの外周面に設けられたブラインシール31で仕切られている。
【0030】
濃縮海水csは、逆浸透膜エレメント14a又は14bの出口端から流出する。高圧容器12a又は12bの出口端には、出口開口26が形成され、出口開口26は濃縮海水流出路38a又は38bに接続されている。濃縮海水流出路38a及び38bは1本の濃縮海水集合路40に合流し、濃縮海水集合路40は、高圧容器16に形成された入口開口16aに接続されている。高圧容器16及びその内部の構成は、基本的に
図6に示す高圧容器102及びその内部の構成と同一である。
【0031】
即ち、高圧容器16の内部に、多数の逆浸透膜エレメント42が直列に配置されている。各逆浸透膜エレメントの透過水pwが流出するセンターパイプ44は、互いにコネクタ46で接続され、各逆浸透膜エレメントの透過水pwは、センターパイプ44で合流する。センターパイプ44は、高圧容器16の出口開口16bとコネクタ46で接続されている。各逆浸透膜エレメントの透過水pwは、出口開口16bから透過水流出路52に流出する。透過水集合路36は透過水流出路52に接続されている。最前段の逆浸透膜エレメント42のセンターパイプ44の前端はエンドキャップ48で閉塞され、高圧容器16の内部は各逆浸透膜エレメントの外周面に設けられたブラインシール50で仕切られている。
【0032】
逆浸透膜エレメント14a又は14bで濃縮された濃縮海水csは、濃縮海水集合路40から高圧容器16の内部に流入する。高圧容器16に流入した濃縮海水csは、まず、最前段の逆浸透膜エレメント42で濃縮海水csと透過水pwに膜分離される。この透過水pwはセンターパイプ46に流出し、濃縮海水csは最前段の逆浸透膜エレメント42の出口端から流出し、その後、各逆浸透膜エレメントで順々に濃縮される。高圧容器16の出口端に出口開口16cが形成され、出口開口16cに濃縮海水流出路54が接続されている。最終段の逆浸透膜エレメント42で膜分離された後の濃縮海水csは、出口開口16cから濃縮海水流出路54に流出する。
【0033】
高圧容器12aには、導入分岐路18aを流れる清澄海水swと、濃縮海水流出路34aを流れる濃縮海水csとの圧力差を検出する差圧計56aが設けられ、高圧容器12bには、導入分岐路18bを流れる清澄海水swと、濃縮海水流出路38bを流れる濃縮海水csとの圧力差を検出する差圧計56bが設けられている。また、導入分岐路18a、18b及び濃縮海水流出路38a、38bには、夫々流路を切り替えるための仕切弁58a、58b、60a及び60bが設けられている。
【0034】
濃縮海水流出路38a、38bには、夫々洗浄液注入路62a及び62bが接続され、導入分岐路18a、18bには、夫々洗浄液排出路64a及び64bが接続されている。また、高圧容器16では、濃縮海水流出路40を流れる濃縮海水csと、濃縮海水流出路54を流れる濃縮海水csとの差圧を検出する差圧計66が設けられている。
【0035】
図2は、逆浸透膜10Aの制御系を示す。差圧計56a、56b及び66の検出値は、演算部67に送られる。演算器67では、入力した検出値からファウリング物質の堆積量を算出する。そして、算出した堆積量が閾値を超えていたら、アラーム発信機68にアラーム発信信号を送る。アラーム発信機68では、アラーム発信信号を受けて、アラームを発信する。
【0036】
かかる構成において、逆浸透膜装置10Aの運転時において、仕切弁58a、58b、60a及び60bを操作することで、清澄海水swは、高圧容器12a又は12bの一方又は両方に導入され、一方が保守点検を行うときは一方のみに清澄海水swを導入する。高圧容器12a又は12bに内蔵された逆浸透膜エレメント14a又は14bで膜分離された透過水pwは、透過水流出路34a又は34b、透過水集合路36を介して透過水流出路52に流出する。濃縮海水csは、濃縮海水流出路38a又は38b及び濃縮海水流出路40を介して、高圧容器16に流入し、高圧容器16に内蔵された逆浸透膜エレメント42で上流側から順々に濃縮海水csと透過水pwに膜分離される。
【0037】
最終段に配置された逆浸透膜エレメント42で膜分離された透過水pwは、透過水流出路52に流出し、濃縮海水csは濃縮海水流出路54から流出する。運転中、差圧計56a、56b及び66を監視し、これら差圧計の検出値に基づいて演算器67で算出したファウリング物質の堆積量が閾値を超えたら、仕切弁58a、58b、60a及び60bを操作し、閾値を超えた逆浸透膜エレメントへの清澄海水swの通水を停止し、この逆浸透膜エレメントの洗浄工程を開始する。
【0038】
例えば、逆浸透膜エレメント14aを洗浄する洗浄工程では、洗浄液注入路62aから洗浄液aを注入し、逆浸透膜エレメント14aの逆浸透膜の表面に接する洗浄液流を形成する。該逆浸透膜を洗浄した後の洗浄液aは洗浄水排出路64aから排出する。逆浸透膜エレメント14bを洗浄する場合も同様の操作をする。高圧容器16に内蔵された逆浸透膜エレメント42の堆積量は少なく、洗浄を要する頻度は少ないが、堆積量が閾値を超えたら、同様に洗浄工程を行う。
なお、洗浄してもファウリング物質を完全に除去できないときは、逆浸透膜エレメントを交換してもよい。
【0039】
本実施形態によれば、ファウリングが激しい前段の逆浸透膜エレメント14aと14bのみを洗浄するので、洗浄薬剤投入の無駄を省き、低コスト化できる。また、洗浄頻度が高い逆浸透膜エレメント14a及び14bを夫々内蔵した高圧容器12a及び12bを清澄海水導入路18に対して並列に配置したので、一方の洗浄工程を行う場合、他方の運転を継続できる。よって、逆浸透膜装置10Aの稼動率を高く維持でき、安定運転を可能にする。さらに、逆浸透膜エレメント14a又は14bのみを内蔵した高圧容器12a又は12bを開放すればよいので、洗浄作業の手間を省くことができると共に、洗浄に要する時間を短縮できる。
【0040】
また、洗浄液の流れが逆浸透膜に作用することで、逆浸透膜に付着したファウリング物質を剥離することができるので、酸やアルカリなどの強力な洗浄力を有する化学薬品の洗浄能力に頼る必要がなく、環境負荷の小さい洗浄が可能となる。なお、本実施形態では、高圧容器12a及び12bは、夫々1個の逆浸透膜エレメントを内蔵しているが、本発明では、必ずしも1個の逆浸透膜エレメントに限定されず、複数の逆浸透膜エレメントを内蔵させてもよい。
【0041】
(実施形態2)
次に、本発明の第2実施形態を
図3に基づいて説明する。本実施形態の逆浸透膜装置10Bは、前記第1実施形態と比べて、直列に配置された複数個の逆浸透膜エレメント42を内蔵した高圧容器16を濃縮海水流出路40に対して複数個並列に配置したものである。個々の高圧容器16及びその内部構造は、前記第1実施形態の高圧容器16及びその内部構造と同一である。各高圧容器16の出口開口16bに接続された透過水流出路70は1本の透過水集合路71に合流している。高圧容器16の出口開口16cに接続された濃縮海水流出路72は、濃縮海水集合路73に合流している。
【0042】
また、高圧容器12a及び12bから透過水pwが流出する透過水流出路34a及び34bに、夫々仕切弁74a及び74bが設けられている。そして、仕切弁58aの上流で導入分岐路18aから分岐し、仕切弁74aの上流で透過水流出路34aに接続するバイパス路76aが設けられている。また、仕切弁58bの上流で導入分岐路18bから分岐し、仕切弁74bの上流で透過水流出路34bに接続するバイパス路76bが設けられている。バイパス路76a及び76bには、夫々仕切弁77a及び77bが設けられている。また、透過水流出路34a及び34bには、洗浄工程時に、洗浄液として供給された清澄海水swを排出する清澄海水排出路78a及び78bが設けられている。その他の構成は、基本的に第1実施形態と同一である。
【0043】
本実施形態では、高圧容器12a及び12bの濃縮海水流出路38a及び38bに対して、複数の高圧容器16を並列に設けているので、透過水pwの製造能力を増大できる。また、洗浄工程において、例えば、高圧容器12aに内蔵された逆浸透膜エレメント14aを洗浄する場合、仕切弁58a、74a及び60aを閉とし、仕切弁77aを開とする。その後、ポンプ20で逆浸透膜エレメント14aの逆浸透膜で発生する浸透圧より低い圧力で、清澄海水swをバイパス路76aから透過水流出路34aに供給する。
【0044】
これによって、透過水pwと清澄海水swとが混じった混合流が逆浸透膜エレメント14aの逆浸透膜に到達し、この混合流のうち透過水pwのみが逆浸透膜を通過する。このとき発生する清澄海水swの浸透圧と浸透圧をもたない透過水pwとの間の圧力差によって、透過水pwを透過水流出路34aから逆浸透膜を透過させる。透過水pwの透過によって逆浸透膜に堆積しているファウリング物質を剥離除去する。
逆浸透膜を正浸透現象により通過した透過水pwは、洗浄水排出路64aから排出され、逆浸透膜エレメント14aに供給にした清澄海水swは、清澄海水排出路78aから排出される。高圧容器12bに内蔵された逆浸透膜エレメント14bを洗浄する場合も同様の操作を行う。なお、逆浸透膜エレメントを洗浄しても、ファウリング物質を除去できないときは、逆浸透膜エレメントを交換してもよい。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態で得られる作用効果に加えて、清澄海水swの浸透圧を利用して逆浸透膜エレメントの洗浄を行っているので、ポンプ20を低動力で作動できる。また、洗浄液として強力な洗浄効果を有する化学薬品を使用することなく洗浄が可能になり、省エネで環境負荷が小さい洗浄を実現できる。
【0046】
(実施形態3)
次に、本発明の第3実施形態を
図4により説明する。本実施形態の逆浸透膜装置10Cは、
図1又は
図3に示す高圧容器16及びその内部構造と同一の構成を有し、複数の逆浸透膜エレメント42が直列に配置された高圧容器16を有する。高圧容器16の入口端に清澄海水導入路18が接続され、高圧容器16の出口開口16cに接続された濃縮海水流出路54は、分岐流出路80a及び80bに分岐し、分岐流出路80aは高圧容器81aの入口開口82に接続され、分岐流出路80bは高圧容器81bの入口開口に接続されている。高圧容器81a、81b及びその内部構造は、前記第1実施形態及び前記第2実施形態の高圧容器12a、12bの内部構造と同一である。
【0047】
高圧容器81aには1個の逆浸透膜エレメント85aが内蔵され、高圧容器81bには、1個の逆浸透膜エレメント85bが内蔵されている。逆浸透膜エレメント85a及び85bで膜分離された透過水pwは、夫々透過水流出路86a及び86bから透過水集合路88に流出する。濃縮海水csは、出口開口84から濃縮海水流出路90a及び90bに流出し、濃縮海水集合路91に合流する。また、分岐流出路80aを流れる濃縮海水csと、濃縮海水流出路90aを流れる濃縮海水csとの差圧を検出する差圧計92aが設けられ、分岐流出路80bを流れる濃縮海水csと、濃縮海水流出路90bを流れる濃縮海水csとの差圧を検出する差圧計92bが設けられている。
【0048】
さらに、濃縮海水流出路90a及び90bには、夫々洗浄液注入路94a及び94bが接続されている。分岐流出路80a及び80bには、夫々仕切弁98a及び98bが設けられ、かつ夫々洗浄液排出路96a及び96bが接続されている。また、濃縮海水流出路90a及び90bには、夫々仕切弁99a及び99bが設けられている。
【0049】
かかる構成において、高圧容器16に内蔵された複数の逆浸透膜エレメント42で順々に濃縮された濃縮海水csは、高圧容器81a又は81bの一方又は両方に導入され、一方が保守点検を行うときは他方のみに濃縮海水csが導入される。
前述のように、最終段の逆浸透膜エレメント85a又は85bに導入される濃縮海水csには、CaやMgなどの高濃度の金属イオンが含まれている。これらの金属イオンが海水中に溶融しているCO
2などと反応し、スケールを生成するため、逆浸透膜エレメント85a及び85bの逆浸透膜に堆積するスケールの堆積量が急激に増加する。
【0050】
逆浸透膜装置10Cの運転中、差圧計66、92a又は92bの検出値が閾値を超えたら、閾値を超えた差圧計に対応した高圧容器への濃縮海水csの導入を停止し、洗浄工程を行う。この洗浄工程は前記第1実施形態と同様の方法を行う。例えば、差圧計92aの検出値が閾値を超えたとき、仕切弁98a、98b、99a及び99bを操作し、逆浸透膜エレメント85aへの清澄海水swの通水を停止し、洗浄工程に移行する。
洗浄工程では、まず、洗浄液注入路94aから洗浄液を注入し、逆浸透膜エレメント85aの表面に接するように洗浄液流を形成させた後、洗浄水排出路96aから洗浄液を排出する。高圧容器81bに内蔵された逆浸透膜エレメント85bを洗浄する場合も同様の操作をする。
【0051】
本実施形態によれば、ファウリングが激しい最終段の逆浸透膜エレメント85a、85bを内蔵した高圧容器81a及び81bを濃縮海水流出路54に対して並列に配置し、一方の洗浄作業を行う時でも、他方の運転を継続できるので、逆浸透膜装置10Cの稼動率を高く維持でき、安定運転を可能にする。また、高圧容器16に内蔵された逆浸透膜エレメント42とは別に、洗浄頻度が頻繁な逆浸透膜エレメント85a又は85bのみを洗浄するので、洗浄薬剤投入の無駄を省き、低コスト化できる。
さらに、逆浸透膜エレメント85a又は85bのみを内蔵した高圧容器81a又は81bを開放すればよいので、洗浄作業の手間を省くことができると共に、洗浄に要する時間を短縮できる。
【0052】
また、洗浄液の流れが逆浸透膜に作用することで、逆浸透膜に付着したファウリング物質を除去するようにしているので、酸やアルカリなどの強力な洗浄力を有する化学薬品の洗浄能力に頼る必要がなく、環境負荷の小さい洗浄が可能となる。
【0053】
(実施形態4)
次に、本発明の第4実施形態を
図5に基づいて説明する。本実施形態の逆浸透膜装置10Dにおいて、ポンプ20によって清澄海水導入路18から供給された清澄海水swは、導入分岐路18a及び18bを介して高圧容器12a又は12bに流入する。高圧容器12a又は12bには夫々1段目の逆浸透膜エレメント14a又は14bが内蔵されている。清澄海水swは高圧容器12a又は12bで膜分離され、透過水流出路34a又は34bに流出した透過水pwは、透過水集合路36から透過水集合路88に流出する。
【0054】
高圧容器12a又は12bから濃縮海水流出分岐路38a又は38bに流出した濃縮海水csは、濃縮海水集合路40に流出する。濃縮海水集合路40に対して、複数の高圧容器16が並列に配置され、高圧容器16には、2段目から最終段の前段までの複数の逆浸透膜エレメント42が直列に配置されている。濃縮海水流出路40に流出した濃縮海水csは、いずれかの高圧容器16に流入し膜分離される。高圧容器16から透過水流出路70に流出した透過水pwは、透過水集合路71を介して透過水集合路88に合流する。
【0055】
いずれかの高圧容器16から濃縮海水流出路72に流出した濃縮海水csは、濃縮海水集合路73に合流する。濃縮海水集合路73に対して、高圧容器81a及び81bが並列に配置されている。高圧容器81a及び81bには、夫々最終段の逆浸透膜エレメント85a及び85bが内蔵されている。濃縮海水csは、濃縮海水集合路73から高圧容器81a又は81bに流入し膜分離される。高圧容器81a及び81bから透過水流出路86a又は86bに流出した透過水pwは、透過水集合路88に流出する。高圧容器81a及び81bから濃縮海水流出路90a又は90bに流出した濃縮海水csは、濃縮海水集合路91に合流し排出される。
【0056】
高圧容器12a、12b、16及びその内部構造は、第1実施形態及び第2実施形態で用いられる高圧容器12a、12b、16及びその内部構造と同一である。また、高圧容器81a及び81b及びその内部構造は、前記第3実施形態で用いられる高圧容器81a及び81b及びその内部構造と同一である。
【0057】
高圧容器12aには、導入分岐路18aを流れる清澄海水swの圧力と、濃縮海水流出路38aを流れる濃縮海水csの圧力との差圧を検出する差圧計56aが設けられ、高圧容器12bには、導入分岐路18bを流れる清澄海水swの圧力と、濃縮海水流出路38bを流れる濃縮海水csの圧力との差圧を検出する差圧計56bが設けられている。
また、複数の高圧容器16には夫々濃縮海水集合路40を流れる濃縮海水csの圧力と、濃縮海水排出路70を流れる濃縮海水csの圧力との差圧を検出する差圧計66が設けられている。
【0058】
さらに、高圧容器81aには、濃縮海水集合路73を流れる濃縮海水csの圧力と、濃縮海水流出路90aを流れる濃縮海水csの圧力との差を検出する差圧計92aが設けられ、高圧容器81bには、濃縮海水集合路73を流れる濃縮海水csの圧力と、濃縮海水流出路90bを流れる濃縮海水csの圧力との差を検出する差圧計92bが設けられている。
【0059】
また、高圧容器12a及び12bから透過水pwが流出する透過水流出路34a及び34bに、夫々仕切弁74a及び74bが設けられている。そして、仕切弁58aの上流で導入分岐路18aから分岐し、仕切弁74aの上流で透過水流出路34aに接続するバイパス路76aが設けられている。また、仕切弁58bの上流で導入分岐路18bから分岐し、仕切弁74bの上流で透過水流出路34bに接続するバイパス路76bが設けられている。バイパス路76a及び76bには、夫々仕切弁77a及び77bが設けられ、透過水流出路34a及び34bには、洗浄工程時に、洗浄液として供給される清澄海水swを排出する清澄海水排出路78a及び78bが設けられている。
【0060】
濃縮海水流出路90a及び90bには、夫々洗浄液注入路94a及び94bが接続されると共に、夫々仕切弁99a及び99bが設けられている。分岐流出路80a及び80bには、夫々洗浄液排出路96a及び96bが分岐されると共に、夫々仕切弁98a及び98bが設けられている。
【0061】
前記いずれかの差圧計の検出値が閾値を超えると、閾値を超えた高圧容器への被処理水の導入を止め、洗浄作業が開始される。高圧容器12a又は12bの洗浄作業は、例えば、高圧容器12aの場合、第2実施形態で説明したように、仕切弁58a、74a及び60aを閉とし、仕切弁77aを開とする。その後、ポンプ20で逆浸透膜エレメント14aの逆浸透膜で発生する浸透圧より低い圧力で、清澄海水swをバイパス路76aから透過水流出路34aに供給する。
【0062】
これによって、透過水pwと清澄海水swとが混じった混合流が逆浸透膜エレメント14aの逆浸透膜に到達し、この混合流のうち透過水pwのみが逆浸透膜を通過する。このとき発生する清澄海水swの浸透圧と浸透圧をもたない透過水pwとの間の圧力差によって、透過水pwを透過水流出路34aから逆浸透膜を透過させる。透過水pwの透過によって逆浸透膜に堆積しているファウリング物質を剥離除去する。
逆浸透膜を正浸透現象により通過した透過水pwは、洗浄液排出路64aから排出され、逆浸透膜エレメント14aに供給にした清澄海水swは、清澄海水排出路78aから排出される。高圧容器12bに内蔵された逆浸透膜エレメント14bを洗浄する場合も同様の操作を行う。
【0063】
高圧容器81a又は81bの洗浄作業は、例えば、高圧容器81aの場合、第3実施形態で説明したように、仕切弁98a、98b、99a及び99bを操作し、逆浸透膜エレメント81aへの清澄海水swの通水を停止し、洗浄工程に移行する。
洗浄工程では、まず、洗浄液注入路94aから洗浄液aを注入し、逆浸透膜エレメント85aの表面に接するように洗浄液流を形成させた後、洗浄水排出路96aから洗浄液を排出する。高圧容器81bに内蔵された逆浸透膜エレメント85bを洗浄する場合も同様の操作をする。洗浄の頻度が少なくて済む高圧容器16の場合も、高圧容器12a、12b又は高圧容器81a、81bに準じて洗浄作業を行う。
【0064】
本実施形態によれば、ファウリングが激しい1段目の逆浸透膜エレメント14a、14bを内蔵した高圧容器12a、12bを清澄海水導入路18に対して並列に配置すると共に、最終段の逆浸透膜エレメント85a、85bを内蔵した高圧容器81a、81bを濃縮海水集合路73に対して並列に配置したので、一方の洗浄作業を行う時でも、他方の運転を継続できる。そのため、逆浸透膜装置10Dの稼動率を高く維持でき、安定運転を可能にする。また、高圧容器16に内蔵された逆浸透膜エレメント42とは別に、洗浄頻度が頻繁な逆浸透膜エレメント14a、14b又は逆浸透膜エレメント85a、85bのみを洗浄するので、洗浄薬剤投入の無駄を省き、低コスト化できる。
【0065】
さらに、高圧容器12a、12b及び81a、81bの洗浄作業時、逆浸透膜エレメント14a又は14bのみを内蔵した高圧容器12a又は12b、あるいは逆浸透膜エレメント85a又は85bのみを内蔵した高圧容器81a又は81bを開放すればよいので、洗浄作業の手間を省くことができると共に、洗浄に要する時間を短縮できる。
【0066】
また、高圧容器12a又は12bでは、清澄海水swの浸透圧を利用して逆浸透膜エレメントの洗浄を行っているので、ポンプ20を低動力で作動できる。また、洗浄液として強力な洗浄効果を有する化学薬品を使用することなく洗浄が可能になり、省エネで環境負荷が小さい洗浄を実現できる。
また、高圧容器81a又は81bでは、洗浄液の流れが逆浸透膜に作用することで、逆浸透膜に付着したファウリング物質を除去するようにしているので、酸やアルカリなどの強力な洗浄力を有する化学薬品の洗浄能力に頼る必要がなく、環境負荷の小さい洗浄が可能となる。
【0067】
なお、前記実施形態はいずれもスパイラル型逆浸透膜エレメントを用いているが、本発明では、代わりに、平膜型逆浸透膜エレメントを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、海水淡水化プラントなどに適応される逆浸透膜装置の洗浄に要する手間と時間を短縮し、逆浸透膜装置の稼動率を高め、安定運転を可能にする。
【符号の説明】
【0069】
10A、10B,10C,10D,100 逆浸透膜装置
12a、12b、81a、81b 高圧容器(第1の高圧容器)
22、82 入口開口
24、26,83,84 出口開口
14a、14b、85a、85b 逆浸透膜エレメント(第1の逆浸透膜エレメント)
42 逆浸透膜エレメント(第2の逆浸透膜エレメント)
16 高圧容器(第2の高圧容器)
16a 入口開口
16b、16c 出口開口
18 清澄海水導入路
18a、18b 導入分岐路
20 ポンプ
28、44 センターパイプ
30、48 エンドキャップ
31、50 ブラインシール
32、46 コネクタ
34a、34b、52、70、86a、86b 透過水流出路
36、71、88 透過水集合路
38a、38b、54、72,90a、90b 濃縮海水流出路
40、73、91 濃縮海水集合路
56a、56b、66、92a、92b 差圧計
58a、58b、60a、60b、74a、74b、77a、77b、98a、98b、99a、99b 仕切弁
62a、62b、94a、94b 洗浄液注入路
64a、64b、96a、96b 洗浄液排出路
67 演算器
68 アラーム発信機
76a、76b バイパス路
78a、78b 清澄海水排出路
80a、80b 分岐流出路
a 洗浄液
cs 濃縮海水
cw 濃縮水
pw 透過水
sw 清澄海水
tw 被処理水