特許第6049509号(P6049509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6049509セラミックヒーター、ヒーター電極及びセラミックヒーターの製法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049509
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】セラミックヒーター、ヒーター電極及びセラミックヒーターの製法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20161212BHJP
   H05B 3/03 20060101ALI20161212BHJP
   H05B 3/18 20060101ALI20161212BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H05B3/14 D
   H05B3/03
   H05B3/18
   H05B3/20 393
   H01L21/02 Z
   H01L21/68 N
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-58387(P2013-58387)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2013-229310(P2013-229310A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73871(P2012-73871)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲のぼり▼ 和宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 玲雄
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3336272(JP,B2)
【文献】 特開2006−225185(JP,A)
【文献】 特開2005−343733(JP,A)
【文献】 特開平04−325462(JP,A)
【文献】 特開2006−207930(JP,A)
【文献】 特開2011−168472(JP,A)
【文献】 特開2008−071573(JP,A)
【文献】 特開2004−185929(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297132(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/14
H05B 3/03
H05B 3/18
H05B 3/20
H01L 21/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセラミック基材と、
前記アルミナセラミック基材に埋設され、少なくともチタン成分を含有するモリブデンで構成されたヒーター電極と、
を備え
前記ヒーター電極は、モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものである、
セラミックヒーター。
【請求項2】
アルミナセラミック製のセラミックヒーターに埋設され、少なくともチタン成分を含有するモリブデンで構成されたヒータ電極であって、
モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものである、
ヒーター電極。
【請求項3】
(a)第1及び第2のセラミック成形体を、それぞれ、成形型にアルミナ粉体、焼結助剤としてのフッ化マグネシウム、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記スラリーをゲル化させたあと離型することにより作製する工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に、モリブデン粉末にチタン粉末を添加したペーストを印刷する工程と、
(d)前記印刷されたペーストを挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態で1120〜1300℃でホットプレス焼成する工程と、
を含むセラミックヒーターの製法。
【請求項4】
(a)第1及び第2のセラミック成形体を、それぞれ、成形型にアルミナ粉体、焼結助剤としてのフッ化マグネシウム、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記スラリーをゲル化させたあと離型することにより作製する工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の表面に、モリブデン粉末にチタン粉末を添加したペーストを印刷する工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(d)前記ペーストが印刷されていた部分を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態で1120〜1300℃でホットプレス焼成する工程と、
を含むセラミックヒーターの製法。
【請求項5】
前記ペーストを印刷する工程では、前記ペーストとして、モリブデン粉末とチタン粉末とアルミニウム粉末とをアクリル系バインダーと共に混合したものを用いる、
請求項又はに記載のセラミックヒーターの製法。
【請求項6】
前記チタン粉末として、粉砕品を用いる、
請求項のいずれか1項に記載のセラミックヒーターの製法。
【請求項7】
前記チタン粉末として、平均粒径が1.0〜4.0μmのものを用いる、
請求項のいずれか1項に記載のセラミックヒーターの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒーター、ヒーター電極及びセラミックヒーターの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハーの加熱に使用されるセラミックヒーターとしては、ヒーター電極を埋設した円盤状のアルミナ焼結体が知られている。例えば、特許文献1には、アルミナとフッ化マグネシウムとの混合粉末を所定形状に成形した成形体を2つ用意し、一方の成形体の上にヒーター電極となるペーストを配置したあと、他方の成形体を積層し、1120〜1300℃という低い焼成温度で焼成することにより、セラミックヒーターを得る方法が開示されている。セラミックヒーターの製造工程において、1700℃の高温焼成を行う場合には、ペーストとしてWCを用いるとWCが十分焼結してヒーター電極として適切な電気特性が得られるが、1120〜1300℃という低温焼成を行う場合には、ペーストとしてWCを用いると脱粒が激しく電気抵抗の測定ができず、ペーストとしてWCとアルミナの混合粉末を用いると電極の緻密化が不足していて十分な電気特性が得られないという問題があった(特許文献1の比較例21,22)。こうしたことから、特許文献1では、ペーストとして、WCとNiとアルミナの混合粉末などを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−168472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、セラミックヒーターを低温焼成で製造する場合には、ヒーター電極となるペーストとして、特許文献1のようにWCとNiとアルミナの混合粉末を用いることも考えられるが、WCに固執せず、WCに代わる材料の開発も望まれている。本発明者らは、WCに代わる材料として、プラズマの制御性に悪影響を及ぼさず、電気抵抗率がWCと同等のものを探索した。こうした材料として、モリブデンを一つの候補として考えたが、モリブデンペーストを使用した場合には、設定温度とセラミックヒーターの中心からの距離と電気抵抗率との関係において好ましくない問題があった。すなわち、20℃において電気抵抗率が小から大になるように電気抵抗率の測定位置における中心からの距離を並べたときの並び順と、60℃において電気抵抗率が小から大になるようにその距離を並べたときの並び順とが異なってしまうという問題があった。以下、この問題を抵抗率温度依存性の逆転現象と称する。こうした逆転現象が起きると、セラミックヒーターの温度を制御することが非常に煩雑となるため好ましくない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、アルミナセラミック基材にヒーター電極を埋設したセラミックヒーターにおいて、抵抗率温度依存性の逆転現象を改善することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックヒーターは、アルミナセラミック基材と、前記アルミナセラミック基材に埋設され、少なくともチタン成分を含有するモリブデンで構成されたヒーター電極と、を備えたものである。
【0007】
このセラミックヒーターでは、ヒーター電極が少なくともチタン成分を含有するモリブデンで構成されているため、抵抗率温度依存性の逆転現象が改善される。その理由は、定かではないが、チタン成分がないとヒーター電極内で炭化モリブデンが不均一に分布して生成し、その炭化モリブデンの影響で逆転現象が起きると考えられるのに対し、チタン成分があると炭化モリブデンの生成が抑制され、その結果逆転現象が抑制されると考えられる。なお、炭素源は、ヒーター電極に含まれる有機成分(バインダー等)だと考えられる。
【0008】
本発明のセラミックヒーターにおいて、前記ヒーター電極は、モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものとしてもよい。
【0009】
本発明のセラミックヒーターにおいて、前記アルミナセラミック基材は、アルミナ粒子に焼結助剤としてフッ化マグネシウムを添加して焼成したものであり、前記ヒーター電極は、モリブデン粉末とチタン粉末とアルミナ粉末とをアクリル系バインダーと共に混合した電極材料を用いて作製したものであってもよい。アルミナ粒子に焼結助剤としてフッ化マグネシウムを添加した成形体は、低温(1120〜1300℃)で十分焼結する。また、モリブデン粉末とチタン粉末とアルミナ粉末とをアクリル系バインダーと共に混合した電極材料は、低温で焼成しても十分電極として機能する。また、焼成してもヒーター電極に炭化モリブデンが生成しにくいため、抵抗率温度依存性の逆転現象を抑制することができる。
【0010】
本発明のセラミックヒーターの製法は、
(a)第1及び第2のセラミック成形体を、それぞれ、成形型にアルミナ粉体、焼結助剤としてのフッ化マグネシウム、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記スラリーをゲル化させたあと離型することにより作製する工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に、モリブデン粉末にチタン粉末を添加したペーストを印刷する工程と、
(d)前記印刷されたペーストを挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態で1120〜1300℃でホットプレス焼成する工程と、
を含むものであるか、
あるいは、
(a)第1及び第2のセラミック成形体を、それぞれ、成形型にアルミナ粉体、焼結助剤としてのフッ化マグネシウム、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記スラリーをゲル化させたあと離型することにより作製する工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の表面に、モリブデン粉末にチタン粉末を添加したペーストを印刷する工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(d)前記ペーストが印刷されていた部分を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態で1120〜1300℃でホットプレス焼成する工程と、
を含むものである。
【0011】
このセラミックヒーターの製法によれば、上述した本発明のセラミックヒーターを容易に製造することができる。また、セラミック仮焼体同士を積層してホットプレス焼成しているため焼成回数はどちらも同じであることから、密度が一様になりやすく、ヒーター電極に反りが発生しにくい。更に、工程(a)では、いわゆるゲルキャスト法を採用し、アルミナ造粒粉に比べて粒径が小さいアルミナ粉末を分散・混合したスラリーをゲル化したセラミック成形体を用いるため、密度が一様になりやすく、ヒーター電極に反りが発生しにくい。
【0012】
本発明のセラミックヒーターの製法において、前記ペーストを印刷する工程では、前記ペーストとして、モリブデン粉末とチタン粉末とアルミニウム粉末とをアクリル系バインダーと共に混合したものを用いてもよい。バインダー由来の炭素とモリブデンとが反応して炭化モリブデンが生成すると、ヒーター電極内にはモリブデン中に電気抵抗率の異なる炭化モリブデンが点在している状態になり、抵抗率温度依存性の逆転現象が発生しやすい。しかし、ここでは、バインダーとして炭素を発生しにくいアクリル系バインダーを使用しているため、炭化モリブデンの生成を抑制することができ、ひいては抵抗率温度依存性の逆転現象を抑制することができる。
【0013】
本発明のセラミックヒーターの製法において、前記チタン粉末として、粉砕品を用いること、あるいは、平均粒径が1.0〜4.0μmのものを用いることが好ましい。こうすれば、チタン粉末がペースト中により均一に分布するため、ホットプレス焼成後の複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)がヒーター電極中でより均一に分布する。その結果、抵抗率の面内バラツキを一層抑制することができる。なお、平均粒径の測定法は、レーザー回折、散乱式である(以下同じ)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】半導体製造装置用部材1の断面図である。
図2】静電チャック10の第1の製造手順を示す工程図である。
図3】静電チャック10の第2の製造手順を示す工程図である。
図4】テストピースのヒーター電極の形状を示す説明図である。
図5】距離Dと設定温度と電気抵抗率との関係を示す、実施例1のグラフである。
図6】距離Dと設定温度と電気抵抗率との関係を示す、実施例2のグラフである。
図7】距離Dと設定温度と電気抵抗率との関係を示す、比較例1のグラフである。
図8】距離Dと設定温度と電気抵抗率との関係を示す、比較例2のグラフである。
図9】実施例1のヒーター電極付近のSEM画像であり、(a)は低倍率での断面、(b)は(a)の四角枠を拡大したときの断面を表す。
図10図9(b)におけるA矢印の部分をEDXで分析した結果を表すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を図面を参照して以下に説明する。図1は、半導体製造装置用部材1の断面図である。
【0016】
半導体製造装置用部材1は、プラズマ処理を施すシリコン製のウエハーWを吸着可能な静電チャック10と、この静電チャック10の裏面に配置された支持台としての冷却板18とを備えている。
【0017】
静電チャック10は、円盤状のアルミナセラミック基材12と、このアルミナセラミック基材12に埋設されたヒーター電極14及び静電電極16とを備えている。アルミナセラミック基材12の上面は、ウエハー載置面12aとなっている。ヒーター電極14は、アルミナセラミック基材12の全面にわたって配線されるように例えば一筆書きの要領でパターン形成され、電圧を印加すると発熱してウエハ−Wを加熱する。このヒーター電極14は、モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものである。ヒーター電極14には、冷却板18の裏面からヒーター電極14の一端及び他端にそれぞれ到達する棒状端子(図示せず)によって電圧を印加可能である。静電電極16は、図示しない外部電源により直流電圧を印加可能な平面状の電極である。この静電電極16に直流電圧が印加されると、ウエハーWはクーロン力又はジョンソン・ラーベック力によりウエハー載置面12aに吸着固定され、直流電圧の印加を解除すると、ウエハーWのウエハー載置面12aへの吸着固定が解除される。
【0018】
冷却板18は、金属製(例えばアルミニウム製)の円盤部材であり、静電チャック10のウエハー載置面12aとは反対側の面と図示しない接合層を介して接合されている。この冷却板18は、図示しない外部冷却装置で冷却された冷媒(例えば水)が循環する冷媒通路20を有している。この冷媒通路20は、冷却板18の全面にわたって冷媒が通過するように例えば一筆書きの要領で形成されている。
【0019】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材1の使用例について説明する。半導体製造装置用部材1は、図示しないチャンバー内に配置され、このチャンバー内で発生させたプラズマによってウエハーWの表面をエッチングするのに用いられる。このとき、ヒーター電極14に供給する電力量を調節したり、冷却板18の冷媒通路20に循環させる冷媒の流量を調節したりすることにより、ウエハーWの温度が一定になるように制御する。
【0020】
次に、半導体製造装置用部材1を構成する静電チャック10の製造手順について説明する。ここでは、第1の製造手順と第2の製造手順の2通りについて説明する。図2は、第1の製造手順を示す説明図、図3は第2の製造手順を示す説明図である。
【0021】
1.第1の製造手順(図2参照)
(a)成形体の作製(図2(a)参照)
第1〜第3の成形体51〜53を作製する。各成形体51〜53は、まず、成形型にアルミナ粉体、焼結助剤としてのフッ化マグネシウム、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むスラリーを投入し、成形型内でゲル化剤を化学反応させてスラリーをゲル化させたあと離型することにより、作製する。
【0022】
溶媒としては、分散剤及びゲル化剤を溶解するものであれば、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等)、エーテル系溶媒(エチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等)、アルコール系溶媒(イソプロパノール、1−ブタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶媒(酢酸ブチル、グルタル酸ジメチル、トリアセチン等)、多塩基酸系溶媒(グルタル酸等)が挙げられる。特に、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の、2以上のエステル結合を有する溶媒を使用することが好ましい。
【0023】
分散剤としては、アルミナ粉体を溶媒中に均一に分散するものであれば、特に限定されない。例えば、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リン酸エステル塩系共重合体、スルホン酸塩系共重合体、3級アミンを有するポリウレタンポリエステル系共重合体等が挙げられる。特に、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩等を使用することが好ましい。この分散剤を添加することで、成形前のスラリーを、低粘度とし、且つ高い流動性を有するものとすることができる。
【0024】
ゲル化剤としては、例えば、イソシアネート類、ポリオール類及び触媒を含むものとしてもよい。このうち、イソシアネート類としては、イソシアネート基を官能基として有する物質であれば特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はこれらの変性体等が挙げられる。なお、分子内おいて、イソシアネート基以外の反応性官能基が含有されていてもよく、更には、ポリイソシアネートのように、反応官能基が多数含有されていてもよい。ポリオール類としては、イソシアネート基と反応し得る水酸基を2以上有する物質であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール(EG)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレングリコール(PHMG)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。触媒としては、イソシアネート類とポリオール類とのウレタン反応を促進させる物質であれば特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン、ヘキサンジアミン、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0025】
この工程(a)では、まず、アルミナ粉体とフッ化マグネシウム粉体に溶媒及び分散剤を所定の割合で添加し、所定時間に亘ってこれらを混合することによりスラリー前駆体を調製し、その後、このスラリー前駆体に、ゲル化剤を添加して混合・真空脱泡してスラリーとするのが好ましい。スラリー前駆体やスラリーを調製するときの混合方法は、特に限定されるものではなく、例えばボールミル、自公転式撹拌、振動式撹拌、プロペラ式撹拌等を使用可能である。なお、スラリー前駆体にゲル化剤を添加したスラリーは、時間経過に伴いゲル化剤の化学反応(ウレタン反応)が進行し始めるため、速やかに成形型内に流し込むのが好ましい。成形型に流し込まれたスラリーは、スラリーに含まれるゲル化剤が化学反応することによりゲル化する。ゲル化剤の化学反応とは、イソシアネート類とポリオール類とがウレタン反応を起こしてウレタン樹脂(ポリウレタン)になる反応である。ゲル化剤の反応によりスラリーがゲル化し、ウレタン樹脂は有機バインダーとして機能する。
【0026】
(b)仮焼体の作製(図2(b)参照)
第1〜第3の成形体51〜53を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1〜第3の仮焼体61〜63を得る。成形体51〜53の乾燥は、成形体51〜53に含まれる溶媒を蒸発させるために行う。乾燥温度や乾燥時間は、使用する溶媒に応じて適宜設定すればよい。但し、乾燥温度は、乾燥中の成形体51〜53にクラックが入らないように注意して設定する。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。乾燥後の成形体51〜53の脱脂は、分散剤や触媒やバインダーなどの有機物を分解・除去するために行う。脱脂温度は、含まれる有機物の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば400〜600℃に設定してもよい。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。脱脂後の成形体51〜53の仮焼は、強度を高くしハンドリングしやすくするために行う。仮焼温度は、特に限定するものではないが、例えば750〜900℃に設定してもよい。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。
【0027】
(c)電極用ペーストの印刷(図2(c)参照)
第1の仮焼体61の片面にヒーター電極用ペースト71を印刷し、第3の仮焼体63の片面に静電電極用ペースト72を印刷する。両ペースト71,72は、いずれも、アルミナセラミック粉末とモリブデン粉末とチタン粉末とバインダーと溶媒とを含むものである。バインダーとしては、例えば、セルロース系バインダー(エチルセルロースなど)やアクリル系バインダー(ポリメタクリル酸メチルなど)やビニル系バインダー(ポリビニルブチラールなど)が挙げられる。溶媒としては、例えば、テルピネオールなどが挙げられる。印刷方法は、例えば、スクリーン印刷法などが挙げられる。アルミナセラミック粉末の平均粒径は、0.40〜0.60μmが好ましく、0.45〜0.55μmがより好ましい。モリブデン粉末の平均粒径は、1.0〜2.0μmが好ましく、1.3〜1.6μmがより好ましい。チタン粉末の平均粒径は、1.0〜4.0μmが好ましく、1.5〜3.5μmがより好ましい。
【0028】
(d)ホットプレス焼成(図2(d)参照)
印刷されたヒーター電極用ペースト71を挟むようにして第1の仮焼体61と第2の仮焼体62とを重ね合わせると共に、印刷された静電電極用ペースト72を挟むようにして第2の仮焼体62と第3の仮焼体63とを重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。これにより、ヒーター電極用ペースト71が焼成されてヒーター電極14となり、静電電極用ペースト72が焼成されて静電電極16となり、各仮焼体61〜63が焼結し一体化してアルミナセラミック基材12となり、静電チャック10が得られる。ホットプレス焼成では、少なくとも最高温度(焼成温度)において、プレス圧力を30〜300kgf/cm2とすることが好ましく、50〜250kgf/cm2とすることがより好ましい。また、最高温度は、アルミナ粉体にフッ化マグネシウムが添加されているため、フッ化マグネシウムが添加されていない場合に比べて低温(1120〜1300℃)に設定すればよい。雰囲気は、大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気の中から、適宜選択すればよい。
【0029】
このように低温で焼成するため、電極用ペーストとして、例えば通常よく用いられる炭化タングステンを含むものを用いた場合には、炭化タングステンが焼成されず、目的とする導電性能が得られない。このため、電極用ペーストとしてモリブデン粉末を含むものを用いるのであるが、その場合にはモリブデンと炭素(ペースト内の有機物に由来すると考えられる)とが反応して炭化モリブデンが電極内で不均一に分布して生成し、抵抗率温度依存性の逆転現象が見られた。この逆転現象を改善すべく、種々の添加物を試したところ、チタン粉末を添加したときにそのような逆転現象が改善された。このことから、チタンはモリブデンの炭化を抑制する効果があると考えられる。こうして得られたヒーター電極14は、モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものとなっていた。モリブデンやチタンは電極用ペーストに由来する成分であり、アルミニウムは電極用ペースト71,72及び仮焼体61,62に由来する成分であり、マグネシウムは仮焼体61,62に由来する成分である。なお、バインダーとしてアクリル系バインダーを用いた場合には、他のバインダーと比べてモリブデンの炭化を抑制する効果が向上する。
【0030】
2.第2の製造手順(図3参照)
(a)成形体の作製(図3(a)参照)
第1〜第3の成形体51〜53を作製する。この工程は、「1.第1の製造手順」の「(a)成形体の作製」と同じである。
【0031】
(b)電極用ペーストの印刷(図3(b)参照)
第1の成形体51の片面にヒーター電極用ペースト71を印刷し、第3の成形体53の片面に静電電極用ペースト72を印刷する。両ペースト71,72は、「1.第1の製造手順」の「(c)電極用ペーストの印刷」で用いたペーストと同じである。
【0032】
(c)仮焼体の作製(図3(c)参照)
第1〜第3の成形体51〜53(第1及び第3の成形体51,53は印刷が施されたもの)を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1〜第3の仮焼体61〜63を得る。このとき、印刷されていたペースト71,72は、仮焼ペースト81,82となる。この工程は、「1.第1の製造手順」の「(b)仮焼体の作製」と同じである。
【0033】
(d)ホットプレス焼成(図3(d)参照)
仮焼ペースト81を挟むようにして第1の仮焼体61と第2の仮焼体62とを重ね合わせると共に、仮焼ペースト82を挟むようにして第2の仮焼体62と第3の仮焼体63とを重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。これにより、仮焼ペースト81が焼成されてヒーター電極14となり、仮焼ペースト82が焼成されて静電電極16となり、各仮焼体61〜63が焼結し一体化してアルミナセラミック基材12となり、静電チャック10が得られる。ホットプレス焼成の条件は、「1.第1の製造手順」の「(d)ホットプレス焼成」で述べたとおりである。
【0034】
ところで、第2の製造手順では、成形体に電極用ペーストを印刷したあとその成形体を仮焼するため、仮焼時に電極用ペーストが酸化されたり炭化されたりするおそれがある。これに対して、第1の製造手順では、成形体を仮焼したあとその仮焼体に電極を形成するため、そのようなおそれがない。この点で、第1の製造手順の方が、第2の製造手順に比べて目的の電極特性を得ることができ、また、電極特性のばらつきの小さいものが得られる。
【0035】
以上詳述した本実施形態の静電チャック10によれば、ヒーター電極14が、少なくともチタン成分を含むモリブデンで構成されているため、抵抗率温度依存性の逆転現象を改善することができる。この点は、後述する実施例において実証済みである。
【0036】
特に、アルミナセラミック基材12は、アルミナ粒子に焼結助剤としてフッ化マグネシウムを添加して焼成したものであり、ヒーター電極14は、モリブデン粉末とチタン粉末とアルミナ粉末とをアクリル系バインダーと共に混合した電極用ペーストを用いて作製したものである。このため、焼成温度が低温(1120〜1300℃)でもアルミナは十分焼結する。また、そのような低温焼成においてヒーター電極14はモリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものになるため、抵抗率温度依存性の逆転現象が発生するのをより確実に抑制することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0038】
例えば、上述した実施形態では、ヒーター電極14と静電電極16をアルミナセラミック基材12に埋設した静電チャック10を例示したが、ヒーター電極14のみをアルミナセラミック基材12に埋設したセラミックヒーターとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、静電チャック10の製法として第1又は第2の製造手順を示したが、特にこれに限定されるものではなく、静電チャック10を製造可能な方法であればどのような方法を採用しても構わない。例えば、工程(a)ではゲルキャスト法を採用したが、ゲルキャスト法を採用することなく成形体を作製してもよい。また、2つのアルミナ焼結体を用意し、各アルミナ焼結体の片面に電極用ペーストを印刷し、一方のアルミナ焼結体を印刷面が上になるように成形型に配置し、その上にアルミナ粉末とフッ化マグネシウムとを含む原料粉を載せ、その上に印刷面が下になるようにもう一方のアルミナ焼結体を載せ、ホットプレス焼成してもよい。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
上述した第1の製造手順により静電チャック10を作製した(図2参照)。
(a)成形体の作製
アルミナ粉末(平均粒径0.5μm,純度99.99%)100重量部、マグネシア0.2重量部、フッ化マグネシウム0.3重量部、分散剤としてポリカルボン酸系共重合体3重量部、溶媒として多塩基酸エステル20重量部を秤量し、これらをボールミル(トロンメル)で14時間混合し、スラリー前駆体とした。このスラリー前駆体に対して、ゲル化剤、すなわちイソシアネート類として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.3重量部、ポリオール類としてエチレングリコール0.3重量部、触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.1重量部を加え、自公転式撹拌機で12分間混合し、スラリーを得た。得られたスラリーを、1.第1の製造手順(a)で用いた第1〜第3成形型にそれぞれ流し込んだ。その後、22℃で2時間放置することにより、各成形型内でゲル化剤を化学反応させてスラリーをゲル化させたあと離型した。これにより、第1〜第3成形型からそれぞれ第1〜第3の成形体51〜53(図2(a)参照)を得た。
【0041】
(b)仮焼体の作製
第1〜第3の成形体51〜53を100℃で10時間乾燥した後、最高温度500℃で1時間脱脂し、更に最高温度820℃、大気雰囲気で1時間仮焼することにより、第1〜第3の仮焼体61〜63(図2(b)参照)を得た。
【0042】
(c)電極用ペーストの印刷
モリブデン粉末とチタン粉末とアルミナ粉末を、チタン含有量が5重量%、アルミナ含有量が10重量%となるようにし、バインダーとしてポリメタクリル酸メチルと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより電極用ペーストを調製した。この電極用ペーストは、静電電極用、ヒーター電極用の両方に用いることとした。そして、第1の仮焼体61の片面にヒーター電極用ペースト71をスクリーン印刷し、第3の仮焼体63の片面に静電電極用ペースト72をスクリーン印刷した(図2(c)参照)。なお、各粉末の平均粒径は、モリブデン粉末が1.5μm、チタン粉末が30μm、アルミナ粉末が0.5μmであった。
【0043】
(d)ホットプレス焼成
ヒーター電極用ペースト71を挟むようにして第1及び第2の仮焼体61,62を重ね合わせると共に、静電電極用ペースト72を挟むようにして第2及び第3の仮焼体62,63を重ね合わせた。そして、その状態でホットプレス焼成を行った。これにより、ヒーター電極用ペースト71が焼成されてヒーター電極14となり、静電電極用ペースト72が焼成されて静電電極16となり、各仮焼体61〜63が焼結し一体化してアルミナセラミックス基材12となった(図2(d)参照)。ホットプレス焼成は、真空雰囲気下、圧力250kgf/cm2、最高温度1170℃で2時間保持することにより行った。その後、セラミック焼結体表面をダイヤモンド砥石にて平面研削加工を行い、静電電極16からウエハー載置面12aまでの厚みを350μmとし、ヒーター電極14からもう一方の表面までの厚みを750μmとした。その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行いヒーター電極14及び静電電極16を内蔵した直径300mmの静電チャック10を得た。得られた静電チャック10は、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であった。
【0044】
なお、静電電極16とウエハー載置面12aとの間の部分を誘電層と称するが、その誘電層の厚みのバラツキ(誘電層の厚みの最大値と最小値との差のバラツキ)を測定したところ、20μmであった。一方、成形体を作製する際にゲルキャスト法を採用しなかった場合には、誘電層の厚みのバラツキは30μmであった。
【0045】
[実施例2]
上述した実施例1の工程(c)において、チタン粉末として粉砕品を使用した以外は、実施例1と同様にして静電チャック10を作製した。粉砕品は、平均粒径30μmのチタン粉末を、ビーズミルにて粉砕したものとした。粉砕品の平均粒径は3μmであった。得られた静電チャック10は、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であった。また、誘電層の厚みのバラツキは20μmであった。
【0046】
[比較例1]
上述した実施例1において電極用ペーストを変更した以外は、実施例1と同様にして静電チャック10を作製した。電極用ペーストは、次のようにして調製した。すなわち、モリブデン粉末とアルミナ粉末をアルミナ含有量が10重量%となるようにし、バインダーとしてポリメタクリル酸メチルと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより電極用ペーストを調製した。
【0047】
[比較例2]
上述した実施例1において電極用ペーストを変更した以外は、実施例1と同様にして静電チャック10を作製した。電極用ペーストは、次のようにして調製した。すなわち、モリブデン粉末とタングステン粉末とアルミナ粉末を、タングステン含有量が5重量%、アルミナ含有量が10重量%となるようにし、バインダーとしてポリメタクリル酸メチルと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより電極用ペーストを調製した。
【0048】
[評価]
・電気抵抗率の温度依存特性
電気抵抗率ρ(Ω・cm)の測定は、実施例1,2及び比較例1,2に対応するテストピースを用いて測定した。テストピースのヒーター電極は、図4に示す形状に形成した。具体的には、円盤状のアルミナセラミック基材を4つの扇形領域(中心角90°)に分割し、扇形領域ごとに7つのヒーター線a〜gと2つのダミー線とを形成した。各ヒーター線a〜gは、円弧に沿ってジグザグになるように形成し、両端には端子を設けた。各ヒーター線a〜gの端子は、アルミナセラミック基材12を焼成する前に予め埋めておき、焼成後にセラミックを削って露出させた。ダミー線は、それそれ所定半径の円弧に沿うように形成し、端子は設けなかった。ヒーター線a〜gの中心からの距離D、電極幅w(mm)、電極長さL(mm)を表1に示す。各ヒーター線a〜gの電極厚みt(mm)は、表1に示さなかったが、焼成後のアルミナセラミック基材12を切断した断面を用いて測定した。
【0049】
【表1】
【0050】
各テストピースを恒温槽にセットした。そして、テストピースの温度が予め定めた設定温度になるようにした。設定温度は20℃,40℃,60℃とした。また、設定温度ごとに、各ヒーター線a〜gの電気抵抗率ρ(Ω・cm)を求めた。各ヒーター線a〜gの電気抵抗率ρ(Ω・cm)は、焼成後、両端に設けた端子にプローブを当てて抵抗値R(Ω)を測定し、下記式により求めた。右辺で係数10を乗じたのは、単位をΩ・mmからΩ・cmに換算したためである。実施例1,2及び比較例1,2について、基材中心からヒーター線中央までの距離Dと設定温度と電気抵抗率との関係を図5〜8のグラフに示す。グラフの縦軸に用いた電気抵抗率ρは、4つの扇形領域の電気抵抗率ρの平均値を用いた。
【0051】
ρ=10×(R×W×t)/L
【0052】
実施例1の場合(図5参照)、各設定温度において電気抵抗率が小から大になるように距離Dを並べると、その順序は設定温度にかかわらず同じになっている。つまり、距離D=38.5mmにおける電気抵抗率が最も小さく、99.75mm、67.25mm、132.75mm、119.5mm、87mmの順に電気抵抗率が大きくなり、145mmにおける電気抵抗率が最も大きい、という順序はどの温度でも変わらない。したがって、ウエハーWの温度を制御しやすい。
【0053】
これに対して、比較例1の場合(図7参照)、各設定温度において電気抵抗率が小から大になるように距離Dを並べると、その順序は設定温度によって変わってしまう(抵抗率温度依存性の逆転現象)。例えば、20℃では、距離D=132.75mmにおける電気抵抗率が最も小さく、38.5mm、67.25mm、99.75mm、87mm、119.5mmの順に電気抵抗率が大きくなり、145mmにおける電気抵抗率が最も大きい。しかし、60℃では、距離D=38.5mmにおける電気抵抗率が最も小さく、87mm、67.25mm、99.75mm、132.75mm、119.5mmの順に電気抵抗率が大きくなり、145mmにおける電気抵抗率が最も大きい。このような逆転現象が起きると、ウエハーWの温度を制御することが非常に煩雑となる。比較例2の場合も(図8参照)、抵抗率温度依存性の逆転現象がみられた。
【0054】
・SEM−EDXによる元素分析
図9は実施例1のヒーター電極付近のSEM画像であり、(a)は低倍率での断面、(b)は(a)の四角枠内を拡大したときの断面を表す。図10図9(b)における矢印Aの部分をEDXで分析した結果を表すチャートである。図9(a)では、白っぽい帯状の部分がモリブデンであり、モリブデン内の黒い点がアルミナ、グレーの部分がマグネシウム、アルミニウム、チタンの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)である。図9及び図10から、実施例1のヒーター電極は、少なくともTi成分を含有するMoで構成されていること、詳しくは、モリブデン中にチタン、アルミニウム及びマグネシウムの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)が分散したものであることがわかる。また、炭素成分は微量しか含まれていないこともわかる。
【0055】
比較例1では、ホットプレス焼成時にモリブデンと炭素とが反応して炭化モリブデンがヒーター電極内に不均一に分布して生成し、その結果、電気抵抗率の温度依存性の逆転現象がみられた。比較例2でも、同様の逆転現象がみられた。これに対して、実施例1,2では、電極用ペーストにチタン粉末を添加することにより、チタンがアルミニウム、マグネシウム及び酸素と反応し、これらの複合酸化物(Ti−Al−Mg−O)を形成し、モリブデンと炭素との反応を抑制することで電気抵抗率の温度依存性の逆転現象が改善された。特に、実施例2ではチタン粉砕品を用いたため、電気抵抗率の面内バラツキを一層抑制することができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、半導体製造装置用部材として利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体製造装置用部材、10 静電チャック、12 アルミナセラミック基材、12a ウエハー載置面、14 ヒーター電極、16 静電電極、18 冷却板、20 冷媒通路、51〜53 第1〜第3の成形体、61〜63 第1〜第3の仮焼体、71 ヒーター電極用ペースト、72 静電電極用ペースト、81 仮焼ペースト、82 仮焼ペースト、W ウエハー
図1
図2
図3
図5
図4
図6
図7
図8
図9
図10