特許第6049511号(P6049511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049511点検支援装置、点検支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049511
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】点検支援装置、点検支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20161212BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20161212BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20161212BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G01N21/84 D
   F02C7/00 A
   F02C7/00 D
   F02C9/00 A
   F01D25/00 V
   F01D25/00 X
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-58621(P2013-58621)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182113(P2014-182113A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】野村 真澄
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達也
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−071398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0038817(US,A1)
【文献】 特開2013−002390(JP,A)
【文献】 特開2009−168582(JP,A)
【文献】 特開2001−305065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
F01D 25/00−25/36
F02C 7/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部と、
前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示部と、
前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力部と、
を具備することを特徴とする点検支援装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記形状を前記判定基準毎に分割した領域のデータを損傷の形態毎に記憶し、
前記入力部は損傷の形態の入力操作を受け、
前記表示部は、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像の表示を前記入力部に入力された損傷の形態に応じて切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の点検支援装置。
【請求項3】
前記記憶部は過去の損傷情報を記憶し、
前記表示部は、前記点検対象部品の形状と前記領域と前記過去の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の点検支援装置。
【請求項4】
前記記憶部は部品の損傷情報を記憶し、
前記表示部は、前記点検対象部品の形状と、前記領域と、前記点検対象部品に同種の部品の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の点検支援装置。
【請求項5】
点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部を具備する点検支援装置の点検支援方法であって、
前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示ステップと、
前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力ステップと、
を具備することを特徴とする点検支援方法。
【請求項6】
点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部を具備する点検支援装置としてのコンピュータに、
前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示ステップと、
前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点検支援装置、点検支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品の点検・検査において損傷情報を記録する方法として、損傷情報の入力を点検員の手作業により行う方法がある。具体的には、部品の外形図を表示している画面表示に対し、点検員がタッチペンまたはマウス等を用いて損傷情報の入力を行う。
例えば、特許文献1に記載の損傷データの管理方法では、管理対象部品の三次元モデルと管理対象部品の損傷部分の画像とを相互に寸法及び位置を合わせて重ねて表示させながら管理対象部品に発生した損傷であって画像に写されている損傷の位置や範囲を三次元モデル上にポインティングデバイスによって指示入力し、該入力に基づいて損傷の大きさを算出すると共に損傷の位置や範囲や大きさを管理対象部品の損傷データとして三次元モデルと関連付けて記憶装置に保存する。
これにより、特許文献1に記載の損傷データの管理方法では、二次元的な損傷に加えて三次元的な損傷についてもデータ化することができると共に部品の損傷を正確にデータ化することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−108849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の損傷データの管理方法など、損傷情報の入力を点検員の手作業により行う方法では、入力された損傷情報と実際の損傷との間に位置的なずれが生じるおそれがある。
点検後、点検員の入力した損傷情報と補修要否や補修方法の基準(補修基準)とを人手によって照らし合わせ、補修要否や補修方法を判断する際、損傷情報と実際の損傷との間の位置的なずれに起因して、補修要否や補修方法を正しく判断できないおそれがある。
【0005】
例えば、ガスタービンの高温部品では、部品上の位置に応じた材料強度や構造の違い等に起因して、損傷の位置により補修基準が異なる。補修基準領域の境界を越えて、損傷情報と実際の損傷とのずれが生じると、誤った基準に基づいて判断を行うことになる。その結果、判断ミスが発生し、必要な補修を実施しない、不必要な補修を実施する、あるいは、間違った補修方法を実施する等のおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、損傷情報と実際の損傷とのずれに起因する判断ミスを低減させることのできる点検支援装置、点検支援方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による点検支援装置は、点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部と、前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示部と、前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の一態様による点検支援装置は、上述の点検支援装置であって、前記記憶部は、前記形状を前記判定基準毎に分割した領域のデータを損傷の形態毎に記憶し、前記入力部は損傷の形態の入力操作を受け、前記表示部は、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像の表示を前記入力部に入力された損傷の形態に応じて切り替えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の一態様による点検支援装置は、上述の点検支援装置であって、前記記憶部は過去の損傷情報を記憶し、前記表示部は、前記点検対象部品の形状と前記領域と前記過去の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一態様による点検支援装置は、上述の点検支援装置であって、前記記憶部は部品の損傷情報を記憶し、前記表示部は、前記点検対象部品の形状と、前記領域と、前記点検対象部品に同種の部品の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の一態様による点検支援方法は、点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部を具備する点検支援装置の点検支援方法であって、前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示ステップと、前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力ステップと、を具備することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の一態様によるプログラムは、点検対象部品の形状、および、前記形状を補修要否及び補修方法の判定基準毎に分割した領域のデータを記憶する記憶部を具備する点検支援装置としてのコンピュータに、前記記憶部の記憶するデータに基づいて、前記点検対象部品の形状と前記領域とを重ね合わせた画像を表示する表示ステップと、前記点検対象部品の形状に前記領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作を受ける入力ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、損傷情報と実際の損傷とのずれに起因する判断ミスを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
図2】同実施形態における部品形状データ記憶部が記憶する部品形状データの例を示す説明図である。
図3】同実施形態における補修基準領域データ記憶部が記憶する補修基準領域データの例を示す説明図である。
図4】同実施形態における点検記録記憶部が記憶する点検記録の例を示す説明図である。
図5】同実施形態における表示部による、点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像の表示例を示す説明図である。
図6】同実施形態における入力部が受ける損傷の位置情報の入力の例を示す説明図である。
図7】補修基準領域の境界を越えて、損傷情報と実際の損傷とのずれが生じた例を示す説明図である。
図8】同実施形態において、点検支援装置が損傷情報を取得して記録する処理手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
図10】同実施形態における補修基準領域データ記憶部が記憶する補修基準領域データの、もう1つの例を示す説明図である。
図11】同実施形態における補修基準領域データ記憶部が記憶する補修基準領域データの、さらにもう1つの例を示す説明図である。
図12】本発明の第3の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
図13】本発明の第4の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、点検対象部品がガスタービン翼である場合を例に説明するが、本発明における点検対象部品はガスタービン翼に限らず、様々な部品を対象とすることができる。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、点検支援装置100は、表示部110と、入力部120と、記憶部180と、制御部190とを具備する。記憶部180は、部品形状データ記憶部181と、補修基準領域データ記憶部182と、点検記録記憶部183とを具備する。制御部190は、重ね合わせ処理部191を具備する。
【0017】
点検支援装置100は、点検記録を取得して記憶する装置であり、点検対象部品における損傷の位置情報のユーザ入力を受けて記憶する。ここでいう損傷は様々なものとすることができる。例えば、損傷が、き裂や、減肉や、打痕や、閉塞や、コーティング剥離などを含んでいてもよい。
記憶部180は、各種データを記憶する。記憶部180は、点検支援装置100の有する記憶デバイスを用いて構成される。
【0018】
部品形状データ記憶部181は、点検対象部品の形状を示すデータ(以下、「部品形状データ」と称する)を記憶する。
図2は、部品形状データ記憶部181が記憶する部品形状データの例を示す説明図である。部品形状データ記憶部181は、部品形状データとして、点検対象部品の外形図の画像データや、点検対象部品の断面図の画像データ等を記憶する。図2の例では、点検対象部品の一例であるガスタービン翼の外形図が示されている。
部品形状データ記憶部181が記憶する部品形状データは、点検対象部品における損傷の位置情報のユーザ入力を受けるために用いられる。
【0019】
補修基準領域データ記憶部182は、点検対象部品の形状を、補修要否や補修方法の判定基準毎に分割した領域を示すデータを記憶する。
以下、補修要否や補修方法の判定基準を「補修基準」と称する。また、点検対象部品の形状を補修基準毎に分割した領域を「補修基準領域」と称する。また、補修基準領域を示すデータを「補修基準領域データ」と称する。
【0020】
図3は、補修基準領域データ記憶部182が記憶する補修基準領域データの例を示す説明図である。同図の例では、点検対象部品の一例であるガスタービン翼の外形が、補修要否の判定基準および補修方法の判定基準毎に、領域A11〜A17の7つの領域に分割されている。
補修基準領域データ記憶部182が記憶する補修基準領域データは、部品形状データ記憶部181の記憶する部品形状データと重ね合わせて、点検対象部品における損傷の位置情報のユーザ入力を受けるために用いられる。
【0021】
点検記録記憶部183は、点検対象部品における損傷の位置情報など、点検記録を記憶する。
図4は、点検記録記憶部183が記憶する点検記録の例を示す説明図である。同図に示す点検記録は表形式のデータとして構成されており、1行が1つの損傷に対応している。また、各行のデータは、「No.」欄と、「領域ID」欄と、「損傷位置」欄と、「損傷形態」欄と、「補修基準に関わる値」欄とを含む。
【0022】
「No.」欄は、損傷毎の識別情報(例えば通し番号)を格納する。
「領域ID」欄は、補修基準領域毎の識別情報を格納する。例えば、欄C11や欄C12には、図2の例における領域A13の識別情報が格納されている。
「損傷位置」欄は、ユーザ入力された損傷の位置情報を格納する。図4の例では、「損傷位置」欄は、損傷位置(損傷の位置)を代表する点の座標を格納している。損傷位置を代表する点の例として、き裂を示す線の両端の点およびサンプリング点や、コーティング剥離の場合におけるコーティング剥離領域の外周のサンプリング点などが挙げられる。
【0023】
但し、点検記録記憶部183が損傷の位置情報を記憶するデータ形式はこれに限らず、損傷位置を表示可能なデータ形式であればよい。例えば、点検記録記憶部183が、損傷位置を示す画像データを記憶しておき、表示部110が、損傷の位置を示す画像データを、部品形状データ記憶部181が記憶する部品形状データに重ね合わせて表示するようにしてもよい。
【0024】
「損傷形態」欄は、き裂やコーティング剥離といった損傷の形態を格納する。この損傷の形態は、例えば、入力部120が、ユーザ入力を受ける。あるいは、制御部190が、ユーザ入力された損傷の位置情報の示す形状に対してパターンマッチングを行って判定するようにしてもよいし、点検記録記憶部183が損傷の形態を記憶しないようにしてもよい。
【0025】
「補修基準に関わる値」欄は、補修要否や補修方法の判定に用いられる値を記憶する。補修要否や補修方法の判定に用いられる値の例として、き裂の長さや、コーティング剥離の場合における剥離部分のコーティング領域全体に占める割合などが挙げられる。
この補修基準に関わる値は、例えば、制御部190が、ユーザ入力された損傷の位置情報に基づいて算出する。あるいは、入力部120が、補修基準に関わる値のユーザ入力を受けるようにしてもよいし、点検記録記憶部183が補修基準に関わる値を記憶しないようにしてもよい。
【0026】
制御部190は、点検支援装置100の各部を制御して各種機能を実行する。制御部190は、例えば、点検支援装置100の有するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が記憶部180からプログラムを読み出して実行することにより実現される。
重ね合わせ処理部191は、部品形状データ記憶部181の記憶する点検対象部品の形状を示すデータの画像と、補修基準領域データ記憶部182の記憶する補修基準領域データ(点検対象部品の形状を損傷に対する判定基準毎に分割した領域を示すデータ)の画像とを重ね合わせたデータを生成する。
【0027】
表示部110は、例えば液晶パネルまたは有機EL(Electroluminescence)パネルなどの表示画面を有し、各種画像を表示する。特に、表示部110は、損傷の位置情報の入力用画像として、記憶部180の記憶するデータに基づいて重ね合わせ処理部191が生成する、点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像を表示する。
【0028】
図5は、表示部110による、点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像の表示例を示す説明図である。同図の例において表示部110は、図2のガスタービン翼の外形図と、図3の補修基準領域とを重ね合わせた画像を表示している。
なお、表示部110が、補修基準領域毎に異なる色で表示するようにしてもよい。
【0029】
入力部120は、タッチペン、マウス、または、表示部110の表示画面に設けられてタッチパネルを構成するタッチセンサなど、表示画面に対する入力操作用の入力デバイスを有し、ユーザ操作を受け付ける。特に、入力部120は、表示部110が表示する点検対象部品の形状に判定基準毎の領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作にて、損傷の位置情報の入力を受ける。
【0030】
図6は、入力部120が受ける損傷の位置情報の入力の例を示す説明図である。同図において、線L21は、き裂の位置情報の入力例を示す。入力部120は、例えば、表示部110の表示している点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像に対してき裂の位置に線を引く、始点と終点とを指示する等のユーザ操作にて、き裂の位置情報の入力を受ける。
また、領域A21は、コーティング剥離領域の位置情報の入力例を示す。入力部120は、例えば、表示部110の表示している点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像に対して例えばコーティング剥離領域の外周をなぞるユーザ操作にて、コーティング剥離領域の位置情報の入力を受ける。
【0031】
次に、図7を参照して、損傷情報と実際の損傷とのずれに起因する判断ミスの低減について説明する。
図7は、補修基準領域の境界を越えて、損傷情報と実際の損傷とのずれが生じた例を示す説明図である。同図において、領域A1001と領域A1002とは、それぞれ、補修基準の異なる補修基準領域を示し、線L1011は、領域A1001と領域A1002との境界を示す。また、線L1001は、実際の損傷位置を示し、線L1002は、入力された損傷位置を示す。
【0032】
この場合、実際の損傷位置(線L1001参照)は領域A1001に含まれているので、領域A1001に設定されている判定基準に基づいて、補修要否や(補修を行う場合の)補修方法の判定を行う必要がある。
これに対して、入力された損傷位置(線L1002参照)は領域A1002に含まれているので、入力された損傷位置を参照して判定を行う者は、領域A1002に設定されている判定基準に基づいて判定を行う。不適切な判定基準に基づいて判定を行うことで、補修要否や補修方法の判断ミスが生じるおそれがある。
【0033】
そこで、表示部110は、線L1002を表示することで、領域A1001およびA1002を示す。点検員が、損傷の発生した判定基準領域を把握している場合、当該点検員は、表示部110の表示に従って、正しい判定基準領域にて損傷位置の入力を行うことができる。これにより、入力された損傷位置を参照して判定を行う者は、適切な判定基準に基づいて判定を行い、補修要否や補修方法の判断ミスを低減させることができる。
【0034】
次に、図8を参照して点検支援装置100の動作について説明する。
図8は、点検支援装置100が損傷情報を取得して記録する処理手順を示すフローチャートである。点検支援装置100は、損傷情報の記録を指示するユーザ情報を受けると、同図の処理を行う。
【0035】
図8の処理において、まず、まず、点検支援装置100が点検対象部品の選択操作を受け付ける(ステップS101)。
次に、制御部190は、選択された点検対象部品のデータを記憶部180から読み出す(ステップS102)。具体的には、制御部190は、部品形状データ記憶部181から部品形状データを読み出し、補修基準領域データ記憶部182から補修基準領域データを読み出す。
【0036】
そして、重ね合わせ処理部191は、ステップS102で得られた部品形状データの画像と補修基準領域データの画像とを重ね合わせる(ステップS103)。すなわち、重ね合わせ処理部191は、点検対象部品の形状に判定基準毎の領域を重ね合わせた画像を生成する。
【0037】
次に、表示部110は、ステップS103で得られた、点検対象部品の形状に判定基準毎の領域を重ね合わせた画像を、制御部190の制御に従って表示する(ステップS104)。
そして、入力部120が、点検記録の入力操作を受け、点検記録記憶部183は、入力された点検記録を記憶する(ステップS105)。点検記録の入力の際、入力部120は、表示部110が表示する点検対象部品の形状に判定基準毎の領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力操作にて、損傷の位置情報の入力を受ける。そして、点検記録記憶部183は、損傷の位置情報を点検記録に含めて記憶する。
ステップS105の後、図8の処理を終了する。
【0038】
以上のように、記憶部180は、点検対象部品の形状、および、形状を分割した領域のデータを記憶する。そして、表示部110は、記憶部180の記憶するデータに基づいて、点検対象部品の形状と領域とを重ね合わせた画像を表示する。そして、入力部120は、表示部110が表示している点検対象部品の形状に領域を重ね合わせた画像における位置情報の入力を受ける。
【0039】
このように、表示部110が、点検対象部品の形状と領域とを重ね合わせた画像を表示すことで、点検員が、損傷の発生した領域を把握している場合、当該点検員は、表示部110の表示に従って、正しい領域にて損傷位置の入力を行うことができる。これにより、入力された損傷位置を参照して判定を行う者は、適切な判定基準に基づいて判定を行い、補修要否や補修方法の判断ミスを低減させることができる。
【0040】
なお、点検対象部品の形状と領域とを重ね合わせた画像の取得方法は、重ね合わせ処理部191が部品形状データの画像と補修基準領域データの画像とを重ね合わせる方法に限らない。
例えば、補修基準領域データ記憶部182が、点検対象部品の形状と領域とを重ね合わせた画像を予め記憶しておくようにしてもよい。この場合、点検支援装置100は画像の重ね合わせを行う必要が無く(従って、重ね合わせ処理部191を具備する必要が無く)、点検支援装置100の処理負荷を軽減させることができる。
【0041】
一方、上記のように、補修基準領域データ記憶部182が補修基準領域データを記憶しておき、重ね合わせ処理部191が部品形状データの画像と補修基準領域データの画像とを重ね合わせる場合、補修基準領域データ記憶部182の記憶するデータには、点検対象部品の形状の情報が含まれていなくてよい。この点において、補修基準領域データ記憶部182が記憶するデータ量を低減させることができる。
【0042】
<第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、点検支援装置200は、表示部110と、入力部120と、記憶部180と、制御部290とを具備する。記憶部180は、部品形状データ記憶部181と、補修基準領域データ記憶部182と、点検記録記憶部183とを具備する。制御部290は、重ね合わせ処理部191と、領域データ切替部292とを具備する。
同図において、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、120、180、181、182、183、191)を付し、説明を省略する。
【0043】
本実施形態では、補修基準領域データ記憶部182は、同一の点検対象部品について異なる分割にて点検対象部品の形状を分割した、複数の補修基準領域データを記憶している。
図10は、補修基準領域データ記憶部182が記憶する補修基準領域データの、もう1つの例を示す説明図である。同図に示す補修基準領域と図3の補修基準領域とを比較すると、図3の領域A13が、図10では領域A331と、A332と、A333とに分割されている。また、図3の領域A14が、図10では、領域A32とA333とに分けて含まれている。
本実施形態では、コーティング剥離に対して図10に示す補修基準領域が用いられる。
【0044】
図11は、補修基準領域データ記憶部182が記憶する補修基準領域データの、さらにもう1つの例を示す説明図である。同図に示す補修基準領域と図3の補修基準領域とを比較すると、図3の領域A13が、図11では領域A431と、A432とに分割されている。
図11に示す補修基準領域は、点検員などユーザがカスタマイズした補修基準領域であり、本実施形態では、き裂に対して図11に示す補修基準領域が用いられる。
【0045】
また、入力部120は、点検員が入力したい損傷の形態の入力操作を受ける。そして、領域データ切替部292は、入力された損傷の形態に応じて、補修基準領域データ記憶部182から補修基準領域データを読み出すことで、補修基準領域データの切替を行う。
さらに、重ね合わせ処理部191は、点検対象部品形状データの画像と、領域データ切替部292が読み出した補修基準領域データの画像とを重ね合わせた画像を生成する。そして、表示部110は、重ね合わせ処理部191が生成した画像を表示する。これにより、表示部110は、点検対象部品の形状と領域とを重ね合わせた画像の表示を、損傷の形態に応じて切り替える。
【0046】
なお、領域データ切替部292が行う補修基準領域データの切替は、損傷の形態に応じた切替に限らない。例えば、点検支援装置200が複数のプラントを対象としており、同一の部品に対してプラント毎に補修基準が異なる場合、領域データ切替部292が、プラントに応じて、補修基準領域データを切り替えるようにしてもよい。
【0047】
以上のように、補修基準領域データ記憶部182は、異なる分割にて点検対象部品の形状を分割した補修基準領域データを記憶し、表示部110は、点検対象部品の形状と補修基準領域とを重ね合わせた画像の表示を切り替える。
これにより、点検支援装置200は、損傷の態様によって補修基準領域が異なる場合や、プラントによって補修基準領域が異なる場合にも対応することができる。
【0048】
<第3の実施形態>
図12は、本発明の第3の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、点検支援装置300は、表示部110と、入力部120と、記憶部180と、制御部390とを具備する。記憶部180は、部品形状データ記憶部181と、補修基準領域データ記憶部182と、点検記録記憶部183とを具備する。制御部390は、重ね合わせ処理部191と、損傷履歴検索部393とを具備する。
同図において、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、120、180、181、182、183、191)を付し、説明を省略する。
【0049】
本実施形態では、点検記録記憶部183は、過去の損傷情報を記憶している。具体的には、点検記録記憶部183は、損傷の位置情報を含む過去の点検記録を記憶している。そして、損傷履歴検索部393は、点検記録記憶部183が記憶している過去の点検記録の中から、点検対象部品の損傷の位置情報を検索する。
さらに、重ね合わせ処理部191は、点検対象部品の形状と補修基準領域とに加えて、損傷履歴検索部393が検索した点検対象部品の損傷の位置情報を重ね合わせた画像を生成する。そして、表示部110は、重ね合わせ処理部191が生成した画像を表示する。これにより、表示部110は、点検対象部品の形状と領域と過去の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する。
【0050】
以上のように、点検記録記憶部183は、過去の損傷情報を記憶する。そして、表示部110は、点検対象部品の形状と補修基準領域と過去の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する。
ここで、同一の部品において、過去の損傷と同じ原因で損傷が発生する場合など、過去に補修を行った場所に損傷が再度現れることがある。かかる場合、点検員は、過去の損傷の位置情報を参照することで、今回の点検における損傷の位置情報をより正確に入力し得る。
【0051】
<第4の実施形態>
図13は、本発明の第4の実施形態における点検支援装置の機能構成を示す概略ブロック図である。同図において、点検支援装置400は、表示部110と、入力部120と、記憶部180と、制御部490とを具備する。記憶部180は、部品形状データ記憶部181と、補修基準領域データ記憶部182と、点検記録記憶部183とを具備する。制御部490は、重ね合わせ処理部191と、同種部品損傷記録検索部494とを具備する。
同図において、図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(110、120、180、181、182、183、191)を付し、説明を省略する。
【0052】
同種部品損傷記録検索部494は、点検記録記憶部183が記憶している今回の点検記録の中から、点検対象部品に同種の部品の損傷の位置情報を検索する。
なお、ここでいう同種の部品とは、同じ点検において同じ機器または同じプラントから取り出された同じ種類の部品をいう。同種の部品の例として、ガスタービンに複数枚取り付けられている高温部品である一段動翼などが挙げられる。
【0053】
そして、重ね合わせ処理部191は、点検対象部品の形状と補修基準領域とに加えて、同種部品損傷記録検索部494が検索した損傷の位置情報を重ね合わせた画像を生成する。そして、表示部110は、重ね合わせ処理部191が生成した画像を表示する。これにより、表示部110は、点検対象部品の形状と、補修基準領域と、点検対象部品に同種の部品の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する。
【0054】
以上のように、点検記録記憶部183は部品の損傷情報を記憶する。そして、表示部110は、点検対象部品の形状と、補修基準領域と、点検対象部品に同種の部品の損傷情報とを重ね合わせた画像を表示する。
ここで、同一プラントに用いられている同種の部品では、運用条件が同じである等の理由から、同じ位置に損傷が現れることがある。かかる場合、点検員は、点検対象部品に同種の部品における損傷の位置情報を参照することで、点検対象部品における損傷の位置情報をより正確に入力し得る。
【0055】
また、点検対象部品において、同種の部品と同じ位置に同じ損傷が現れている場合、点検員は、例えば「類似損傷あり」と入力するなど入力を簡略化することができる。この場合、制御部490が、同種の部品の損傷情報を点検対象部品の損傷情報としてコピーするようにしてもよい。
あるいは、制御部490が、簡略化された入力をそのまま点検対象部品の損傷情報とするようにしてもよい。この場合、点検記録を参照する者は、同種の部品の記録を参照することで、点検対象部品の損傷を把握することができる。
【0056】
なお、上記の各実施形態は排他的なものではない。従って、複数の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0057】
なお、点検支援装置100、200、300または400の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
100、200、300、400 点検支援装置
110 表示部
120 入力部
180 記憶部
181 部品形状データ記憶部
182 補修基準領域データ記憶部
183 点検記録記憶部
190、290、390、490 制御部
191 重ね合わせ処理部
292 領域データ切替部
393 損傷履歴検索部
494 同種部品損傷記録検索部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13