特許第6049534号(P6049534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6049534-合わせガラス用中間膜及び合わせガラス 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049534
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20161212BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 93/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C03C27/12 Z
   B32B27/30 Z
   C08L31/04 Z
   C08K5/10
   C08K5/52
   C08L93/04
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-97638(P2013-97638)
(22)【出願日】2013年5月7日
(62)【分割の表示】特願2013-519287(P2013-519287)の分割
【原出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-163640(P2013-163640A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-5319(P2012-5319)
(32)【優先日】2012年1月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
(72)【発明者】
【氏名】松田 匠太
(72)【発明者】
【氏名】梁 信烈
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公告第470135(GB,A)
【文献】 特開2011−207762(JP,A)
【文献】 特開平11−287797(JP,A)
【文献】 特開2006−278445(JP,A)
【文献】 特表2005−502512(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第461684(GB,A)
【文献】 特公昭37−018625(JP,B1)
【文献】 特開2007−253469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/00−29/00
B32B1/00−43/00
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、
前記第1の層の第1の表面に積層された第2の層と
前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第3の層とを備え、
前記第2の層と前記第3の層との間の前記第1の層が、ポリ酢酸ビニル樹脂と、可塑剤とを含み、
前記第1の層に含まれている前記ポリ酢酸ビニル樹脂及び前記可塑剤は、前記可塑剤100重量部に前記ポリ酢酸ビニル樹脂8重量部を溶解させた液を用いて測定される曇点が80℃以下であるポリ酢酸ビニル樹脂及び可塑剤である、合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
前記第1の層が粘着付与剤を含む、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
記粘着付与剤がロジン樹脂である、請求項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に挟み込まれた中間膜とを備え、
前記中間膜が、請求項1〜のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜である、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車及び建築物などの合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜に関し、より詳細には、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、一対のガラス板の間に中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
近年、合わせガラスを軽量化するために、合わせガラスの厚みを薄くすることが検討されている。しかし、合わせガラスの厚みを薄くすると、遮音性が低くなる。遮音性が低い合わせガラスを自動車のフロントガラス等に用いた場合には、風切り音又はワイパーの駆動音等の5000Hz程度の音域の音に対して、遮音性が充分に得られないという問題がある。
【0004】
そこで、中間膜の材料の変更により、合わせガラスの遮音性を高めることが検討されている。
【0005】
合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60〜85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001〜1.0重量部と、30重量部以上の可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として、又は他の層と積層されて多層の中間膜として用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−070200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の中間膜を用いた合わせガラスでは、遮音性をある程度高めることができるものの、遮音性の更なる向上が求められている。
【0008】
また、中間膜により防音するための音として、車の騒音又は警笛の音等の空気音と、車のエンジンの振動による音等の固体音とがある。特許文献1に記載の中間膜を用いた合わせガラスでは、特に固体音の遮音性が充分に高くならないことがある。
【0009】
また、近年、内燃機関を用いた燃料自動車から、電気モータを用いた電気自動車及び内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車等への移行が進行している。内燃機関を用いた燃料自動車に用いられる合わせガラスでは、比較的低周波域での遮音性が特に求められている。但し、内燃機関を用いた燃料自動車に用いられる合わせガラスでも、高周波域での遮音性が高いことが望ましい。これに対して、電気モータを利用した電気自動車及びハイブリッド電気自動車に用いられる合わせガラスでは、電気モータの駆動音を効果的に遮断するために高周波域における高い遮音性が特に求められる。
【0010】
上記特許文献1に記載の中間膜を用いて合わせガラスを構成した場合には、合わせガラスの高周波域における遮音性が充分ではなく、従ってコインシデンス効果による遮音性の低下が避けられないことがある。特に、この合わせガラスの20℃付近での遮音性が充分ではないことがある。
【0011】
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したとき、ガラス板の剛性と慣性とによって、ガラス面上を横波が伝播して横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。
【0012】
また、近年、合わせガラスの遮音性を高めるために、中間膜に過剰量の可塑剤を添加することも検討されている。中間膜に過剰量の可塑剤を添加することにより、合わせガラスの遮音性を改善できる。しかしながら、過剰量の可塑剤を用いた場合には、中間膜の表面に可塑剤がブリードアウトすることがある。
【0013】
本発明の目的は、合わせガラスを構成するのに用いられた場合に、得られた合わせガラスにおける遮音性を高めることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【0014】
本発明の限定的な目的は、合わせガラスを構成するのに用いられた場合に、得られた合わせガラスにおける高周波域での遮音性を高めることができる合わせガラス用中間膜、並びに該合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の広い局面によれば、第1の層と、前記第1の層の第1の表面に積層された第2の層とを備え、前記第1の層が、ポリ酢酸ビニル樹脂と、可塑剤とを含む、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0016】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層に含まれているポリ酢酸ビニル樹脂及び可塑剤は、前記可塑剤100重量部に前記ポリ酢酸ビニル樹脂8重量部を溶解させた液を用いて測定される曇点が80℃以下であるポリ酢酸ビニル樹脂及び可塑剤である。
【0017】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の他の特定の局面では、前記第1の層が粘着付与剤を含む。
【0018】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに他の特定の局面では、前記第2の層が、ポリビニルアセタール樹脂を含み、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以下、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上である。
【0019】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の別の特定の局面では、該中間膜は、前記第1の層の前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第3の層をさらに備え、前記第3の層が、ポリビニルアセタール樹脂を含み、前記第3の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以下、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上である。
【0020】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のさらに別の特定の局面では、前記第1の層が粘着付与剤を含み、前記粘着付与剤がロジン樹脂である。
【0021】
本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に挟み込まれた中間膜とを備えており、前記中間膜が、上述した合わせガラス用中間膜である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と該第1の層の第1の表面に積層された第2の層とを備えており、更に上記第1の層が、ポリ酢酸ビニル樹脂と可塑剤とを含むので、本発明に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの遮音性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す部分切欠断面図である。
図2図2は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に部分切欠断面図で示す。
【0026】
図1に示す中間膜1は、多層中間膜である。中間膜1は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜1は、合わせガラス用中間膜である。中間膜1は、第1の層2と、第1の層2の第1の表面2aに積層された第2の層3と、第1の層2の第1の表面2aとは反対の第2の表面2bに積層された第3の層4とを備える。第1の層2は、中間層であり、遮音層として主に機能する。第2,第3の層3,4は、保護層であり、本実施形態では表面層である。第1の層2は、第2,第3の層3,4の間に挟み込まれている。従って、中間膜1は、第2の層3と、第1の層2と、第3の層4とがこの順で積層された多層構造を有する。
【0027】
第2の層3と第3の層4との組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。第2,第3の層3,4にポリビニルアセタール樹脂が含まれていると、第2,第3の層3,4と合わせガラス部材との接着力が充分に高くなる。
【0028】
本実施形態の主な特徴は、中間膜1が、第1の層2と第1の層2の第1の表面2aに積層された第2の層3とを備え、更に第1の層2がポリ酢酸ビニル樹脂と可塑剤とを含むことである。これによって、中間膜1を用いた合わせガラスの遮音性を高めることができる。さらに、中間膜1を用いた合わせガラスの高周波域での遮音性を高めることもできる。特に、3kHzを超える高周波域での遮音性を効果的に高めることができる。
【0029】
中間膜1では、第1の層2の両面に第2,第3の層3,4が1層ずつ積層されている。第1の層の少なくとも一方の表面に第2の層が積層されていればよい。第1の層の第1の表面のみに第2の層が積層されており、かつ第1の層の第2の表面に第3の層が積層されていなくてもよい。但し、第1の層の第1の表面に第2の層が積層されており、かつ第1の層の第2の表面に第3の層が積層されていることが好ましい。第1の層の第2の表面に第3の層が積層されていることにより、中間膜を用いた合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0030】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリ酢酸ビニル樹脂及び可塑剤は、上記可塑剤100重量部に上記ポリ酢酸ビニル樹脂8重量部を溶解させた液を用いて測定される曇点が80℃以下であるポリ酢酸ビニル樹脂及び可塑剤であることが好ましい。上記曇点の下限は特に限定されないが、上記曇点は60℃以上であってもよく、70℃以上であってもよい。
【0031】
上記曇点は、JIS K2266「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して測定される曇点である。上記ポリ酢酸ビニル樹脂及び上記可塑剤を用いて測定される曇点は、具体的には、可塑剤3.5g(100重量部)と、ポリ酢酸ビニル樹脂0.28g(8重量部)とを用意し、試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリ酢酸ビニル樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリ酢酸ビニル樹脂を溶解させた溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させるか、又は試験管を−196℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を可塑剤の流動点温度まで降下させたときに、この溶液の一部に曇りが発生し始める温度を意味する(第1の曇点の判定方法)。曇点が低いほど、ポリ酢酸ビニル樹脂と可塑剤との相溶性が高いことを表す。なお、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させて溶液の一部に曇りが発生し始める場合には、試験管を−196℃ではなく−20℃の雰囲気に放置する。
【0032】
なお、上記溶液の温度を、上記可塑剤の流動点温度まで降下させても、上記溶液の一部に曇りが発生しないことがある。この場合には、上記曇点は、0℃よりもかなり低い温度であると判定される。さらに、この場合には、上記ポリ酢酸ビニル樹脂と上記可塑剤との相溶性はかなり高いことを意味する。
【0033】
従って、上記曇点を評価する際には、第1の層に含まれているポリ酢酸ビニル樹脂8重量部と、第1の層に含まれている可塑剤100重量部とを用意した後、該可塑剤100重量部に該ポリ酢酸ビニル樹脂8重量部を溶解させた液が用いられる。
【0034】
上記溶液の一部に曇りが発生し始める温度(曇点)の測定方法としては、例えば、溶液の外観を目視で観察する方法、溶液のヘーズをヘーズメーターで測定する方法、並びにあらかじめ曇りに関する複数段階の限度見本を作製しておき、この限度見本と対照して曇りを判定する方法等が挙げられる。なかでも、溶液の外観を目視で観察する方法が好ましい。溶液のヘーズをヘーズメーターで測定する場合には、ヘーズが10%以上となる温度を曇点とする。
【0035】
また、上記ポリ酢酸ビニル樹脂及び上記可塑剤を用いて測定される曇点は、可塑剤3.5g(100重量部)と、ポリ酢酸ビニル樹脂0.28g(8重量部)とを用意し、試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリ酢酸ビニル樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリ酢酸ビニル樹脂を溶解させた溶液を150℃に加熱し、次に所定の温度の恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した場合に、ヘーズが10%以上であるか否かによっても判断できる(第2の曇点の判定方法)。例えば、80℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定することにより、ヘーズが10%以上を示した温度を測定してもよい。80℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した際に、ヘーズが10%未満であることが好ましい。
【0036】
本発明では、上記曇点は、上記第1の曇点の判定方法で判定されてもよく、上記第2の曇点の判定方法で判定されてもよい。上記曇点は、上記第1の曇点の判定方法で判定されることが好ましいが、曇点をより一層精度良く特定することなどを目的として上記第2の曇点の判定方法も採用可能である。
【0037】
以下、本発明に係る合わせガラス用中間膜を構成する第1,第2,第3の層の詳細、並びに該第1,第2,第3の層に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0038】
(熱可塑性樹脂)
上記第1の層は、熱可塑性樹脂であるポリ酢酸ビニル樹脂を含む。上記第1の層中のポリ酢酸ビニル樹脂(以下、ポリ酢酸ビニル樹脂(1)と記載することがある)は特に限定されない。上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)は、熱可塑性樹脂である。上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)は、酢酸ビニルを含む重合性組成物を重合させることにより得られる。上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)には、ポリ酢酸ビニルの変性物が含まれる。さらに、上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)には、酢酸ビニルと酢酸ビニル以外の重合性化合物(共重合成分)との共重合体も含まれる。上記重合性組成物は、酢酸ビニル以外の重合性化合物を含んでいてもよい。上記重合性組成物は、重合性化合物として、酢酸ビニルを主成分として含むことが好ましい。上記ポリ酢酸ビニルが酢酸ビニルと酢酸ビニル以外の重合性化合物との共重合体である場合には、該共重合体(ポリ酢酸ビニル)の全骨格100モル%中、酢酸ビニルに由来する骨格の割合は好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。酢酸ビニル以外の重合性化合物としては、(メタ)アクリル化合物、スチレン化合物及びイソプレン化合物等が挙げられる。
【0040】
上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)の重合度は、好ましくは1000以上、好ましくは20000以下、より好ましくは15000以下、更に好ましくは5000以下である。上記重合度が上記下限以上であると、押出成形により中間膜がより一層容易に得られる。上記重合度が上記上限以下であると、中間膜の生産効率がより一層高くなる。生産性を高める観点からは、上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)の重合度は、より好ましくは1500以上、特に好ましくは4000以下である。
【0041】
上記第1の層は、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層がポリビニルアセタール樹脂(1)を含むと、合わせガラス用中間膜の生産効率が高くなる。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)は、アセチル化度が8モル%未満であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂A」ともいう)、又は、アセチル化度が8モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(以下、「ポリビニルアセタール樹脂B」ともいう)であることが好ましい。
【0042】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセチル化度aは8モル%未満であり、7.5モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることが好ましく、6モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上であることが好ましく、0.5モル%以上であることが好ましく、0.8モル%以上であることが好ましく、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることが好ましく、4モル%以上であることが好ましい。上記アセチル化度aが上記上限以下及び上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂Aと可塑剤との相溶性がより一層高くなり、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0043】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aのアセタール化度aの好ましい下限は68モル%、より好ましい下限は70モル%、更に好ましい下限は71モル%、特に好ましい下限は72モル%、好ましい上限は85モル%、より好ましい上限は83モル%、更に好ましい上限は81モル%、特に好ましい上限は79モル%である。上記アセタール化度aが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度aが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Aを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0044】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aの水酸基の含有率aは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、23モル%以下であることが好ましく、16モル%以上であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、19モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率aが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率aが上記下限以上であると、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0045】
上記ポリビニルアセタール樹脂Aはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0046】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは、8モル%以上であり、9モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることが好ましく、11モル%以上であることが好ましく、12モル%以上であることが好ましく、30モル%以下であることが好ましく、28モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、24モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることが好ましく、19.5モル%以下であることが好ましい。上記アセチル化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセチル化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間をより一層短縮できることから、上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセチル化度bは20モル%未満であることが好ましい。
【0047】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bのアセタール化度bの好ましい下限は50モル%、より好ましい下限は52.5モル%、更に好ましい下限は54モル%、特に好ましい下限は60モル%、好ましい上限は80モル%、より好ましい上限は77モル%、更に好ましい上限は74モル%、特に好ましい上限は71モル%である。上記アセタール化度bが上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記アセタール化度bが上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂Bを製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0048】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bの水酸基の含有率bは30モル%以下であることが好ましく、27.5モル%以下であることが好ましく、27モル%以下であることが好ましく、26モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることが好ましく、18モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることが好ましく、22モル%以上であることが好ましく、23モル%以上であることが好ましい。上記水酸基の含有率bが上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。上記水酸基の含有率bが上記下限以上であると、中間膜の接着力をより一層高くすることができる。
【0049】
上記ポリビニルアセタール樹脂Bはポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0050】
上記ポリビニルアセタール樹脂A及び上記ポリビニルアセタール樹脂Bは、平均重合度が3000を超えるポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することで得られることが好ましい。上記アルデヒドは炭素数1〜10のアルデヒドであることが好ましく、炭素数4又は5のアルデヒドであることがより好ましい。上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度の好ましい下限は3010、好ましい下限は3050、好ましい下限は3500、好ましい下限は3600、好ましい下限は4000、好ましい下限は4050、好ましい上限は7000、好ましい上限は6000、好ましい上限は5000、好ましい上限は4900、好ましい上限は4500である。上記第1の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂A,Bは、平均重合度が3000を超え、4000未満であるポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより得られていることが特に好ましい。特に、合わせガラスにおける発泡の発生及び発泡の成長をより一層抑制し、合わせガラスの遮音性を充分に高め、かつ中間膜を容易に成形できることから、上記第1の層中のポリビニルアセタール樹脂A,Bを得るために用いられる上記ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度は3010以上であることが好ましく、3020以上であることがより好ましく、4000以下であることが好ましく、4000未満であることがより好ましく、3800以下であることが更に好ましく、3600以下であることが特に好ましく、3500以下であることが最も好ましい。
【0051】
上記第1の層が、ポリ酢酸ビニル樹脂(1)とポリビニルアセタール樹脂(1)とを含む場合、ポリ酢酸ビニル樹脂(1)とポリビニルアセタール樹脂(1)との合計100重量%に占める、ポリ酢酸ビニル樹脂(1)の割合は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。上記割合が上記上限以下であると、合わせガラス用中間膜の生産効率がより一層高くなる。上記割合が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性をより一層高めることができる。
【0052】
上記第2の層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことがより好ましい。上記第2,第3の層がポリビニルアセタール樹脂(2),(3)を含むと、第2,第3の層と合わせガラス部材との接着力が充分に高くなる。上記第2,第3の層において、上記熱可塑性樹脂はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記第2,第3の層に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されない。上記第2,第3の層に用いられるポリビニルアセタール樹脂(2),(3)は特に限定されない。
【0053】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
【0054】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセチル化度はそれぞれ、好ましくは0モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、より一層好ましくは15モル%以下、更に好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下、最も好ましくは3モル%以下である。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐貫通性が高くなる。さらに、アセチル化度が上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0055】
また、上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)におけるポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が3モル%以下であると、中間膜の機械物性がより一層向上する。この結果、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0056】
上記アセチル化度は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記アセタール基又は水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0057】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
【0058】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)を得るための上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0059】
なお、上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0060】
上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれているアセタール基の炭素数は特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する際に用いるアルデヒドは特に限定されない。上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3〜5であることが好ましく、生産性を高める観点から、3又は4であることがより好ましい。
【0061】
上記アルデヒドは特に限定されない。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)はそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。本発明に係る合わせガラス用中間膜は、上記第2,第3の層に含まれている上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)としてそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の合成は容易である。さらに、ポリビニルブチラール樹脂の使用により、合わせガラス部材に対する中間膜の接着力がより一層適度に発現する。さらに、耐光性及び耐候性等がより一層高くなる。
【0063】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の水酸基の含有率(水酸基量)はそれぞれ、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、特に好ましくは35モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、可塑剤のブリードアウトが生じ難くなる。さらに、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0064】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0065】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合はブチラール化度)はそれぞれ、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは63モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂(2),(3)と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0066】
上記アセタール化度は、アセタール基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0067】
なお、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)の上記アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」又はASTM D1396−92に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。ASTM D1396−92に準拠した方法により測定することが好ましい。
【0068】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以下、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上であることが好ましい。合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度が15モル%以下、かつ、水酸基の含有率が20モル%以上であることが好ましい。
【0069】
(可塑剤)
上記第1の層は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含む。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記可塑剤(1),(2),(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
上記可塑剤(1),(2),(3)としては、例えば、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などのリン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤(1),(2),(3)は液状可塑剤であることが好ましい。
【0071】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル、並びにトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールと一塩基性有機酸とのエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、n−ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0072】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0073】
上記有機エステル可塑剤としては、特に限定されず、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ−n−オクタノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,3−プロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、1,4−ブチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。
【0074】
上記有機リン酸可塑剤としては、特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0075】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、第1の層中の可塑剤(1)は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、第2,第3の層中の可塑剤(2),(3)はそれぞれ、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0076】
【化1】
【0077】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数5〜10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn−プロピレン基を表し、pは3〜10の整数を表す。
【0078】
上記可塑剤(1)は、アジピン酸ジブチル、トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、アジピン酸ジブチル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが更に好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を含むことが特に好ましい。
【0079】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層に含まれているポリ酢酸ビニル樹脂及び上記可塑剤(1)は、上記可塑剤(1)100重量部に上記ポリ酢酸ビニル樹脂8重量部を溶解させた液を用いて測定される曇点が80℃以下であるように組み合わせて使用することが好ましい。
【0080】
上記可塑剤(2),(3)はそれぞれ、アジピン酸ジブチル、トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)、トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが好ましく、アジピン酸ジブチル、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)及びトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)の内の少なくとも1種を含むことが更に好ましく、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートを含むことが特に好ましい。
【0081】
上記第1の層において、上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対して、上記可塑剤(1)の含有量は、好ましくは25重量部以上、好ましくは80重量部以下である。合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記第1の層において、上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対して、上記可塑剤(1)の含有量は、より好ましくは30重量部以上、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは60重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。また、上記可塑剤(1)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になり、更に合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤(1)の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。中間膜の生産効率をより一層高める観点からは、上記第1の層において、上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対して、上記可塑剤(1)の含有量は、好ましくは30重量部以上、好ましくは70重量部以下である。
【0082】
また、上記第1の層が上記ポリ酢酸ビニル(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(1)とを含む場合に、上記ポリ酢酸ビニル(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(1)との合計100重量部に対して、上記可塑剤(1)の含有量は、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは80重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは60重量部以下、特に好ましくは50重量部以下である。上記可塑剤(1)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になり、更に合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記可塑剤(1)の含有量が上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層高くなる。
【0083】
上記第2の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部に対して、上記可塑剤(2)の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは40重量部以下である。上記第3の層において、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部に対して、上記可塑剤(3)の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、更に好ましくは40重量部以下である。上記可塑剤(2),(3)の含有量が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記可塑剤(2),(3)の含有量が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0084】
上記第2の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部に対する上記第2の層中の上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)は、上記第1の層中の上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対する上記第1の層中の上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)よりも少ないことが好ましい。また、上記第3の層中の上記ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部に対する上記第3の層中の上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)は、上記第1の層中の上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対する上記第1の層中の上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)よりも少ないことが好ましい。上記含有量(2),(3)が上記含有量(1)よりも少ないことにより、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0085】
上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値及び上記含有量(1)と上記含有量(3)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは15重量部以上、特に好ましくは20重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは30重量部以下である。上記含有量(1)と上記含有量(2),(3)との差の絶対値が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0086】
(粘着付与剤)
上記第1の層は粘着付与剤を含むことが好ましい。上記第1の層が粘着付与剤を含むことにより、上記第1の層の第2,第3の層に対する接着性がより一層良好になり、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。さらに、本発明者らは、上記第1の層が粘着付与剤を含むことにより、合わせガラスの遮音性をも高めることができることを見出した。さらに、上記第1の層が粘着付与剤を含むことにより、合わせガラスの高周波域での遮音性も高めることができる。
【0087】
上記粘着付与剤としては、ロジン樹脂、テルペン樹脂及び石油樹脂等が挙げられる。上記粘着付与剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記第2,第3の層はそれぞれ、上記粘着付与剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0088】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記粘着付与剤は、ロジン樹脂であることが好ましい。
【0089】
上記ロジン樹脂は、ロジン又はロジン誘導体をベースとする樹脂である。上記ロジン樹脂としては、ロジン、酸変性ロジン、ロジン含有ジオール、ロジンエステル、水添ロジンエステル及びマレイン酸変性ロジンエステル等が挙げられる。上記酸変性ロジンとしては、例えば、アクリル酸変性ロジンが挙げられる。
【0090】
上記第1の層中の上記ポリ酢酸ビニル樹脂(1)100重量部に対して、上記粘着付与剤の含有量は好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは25重量部以上、特に好ましくは30重量部以上、最も好ましくは50重量部以上、好ましくは500重量部以下、より好ましくは300重量部以下、更に好ましくは100重量部以下、特に好ましくは90重量部以下である。上記粘着付与剤の含有量が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記粘着付与剤の含有量が上記上限を超えると、遮音性を高めるのに粘着付与剤が過剰となることがある。
【0091】
(他の成分)
上記第1,第2,第3の層はそれぞれ、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
(合わせガラス用中間膜)
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、本発明に係る合わせガラス用中間膜の周波数1Hzで測定した最も低温側に現れるtanδのピーク温度は、好ましくは0℃以下である。
【0093】
合わせガラスの低温での遮音性をより一層高める観点からは、周波数1Hzで測定した最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値は、好ましくは1.15以上、より好ましくは1.25以上である。
【0094】
合わせガラスの高温での遮音性をより一層高める観点からは、周波数1Hzで測定した最も高温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値は、好ましくは0.50以上である。
【0095】
なお、上記最も低温側に現れるtanδのピーク温度、最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値、及び、最も高温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値を測定する際には、合わせガラス用中間膜を23℃の環境下にて、1ヶ月保管した後に測定することが好ましい。
【0096】
上記第1の層の厚みは、好ましくは0.02mm以上、より好ましくは0.05mm以上、好ましくは1.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。上記第1の層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0097】
上記第2,第3の層の厚みはそれぞれ、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。上記第2,第3の層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜の厚みが厚くなりすぎず、かつ合わせガラスの遮音性がより一層高くなり、更に可塑剤のブリードアウトを抑制できる。
【0098】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が充分に高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0099】
本発明に係る合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されない。該中間膜の製造方法として、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂と可塑剤と必要に応じて配合される他の成分とを混練し、中間膜を成形する製造方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0100】
上記混練の方法は特に限定されない。この方法として、例えば、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー又はカレンダーロール等を用いる方法が挙げられる。なかでも、連続的な生産に適しているため、押出機を用いる方法が好適であり、二軸押出機を用いる方法がより好適である。なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、第1の層と第2,第3の層とを別々に作製した後、第1の層と第2,第3の層とを積層して多層中間膜を得てもよく、第1の層と第2,第3の層とを共押出により積層して中間膜を得てもよい。
【0101】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第2,第3の層に、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第2,第3の層が同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。
【0102】
(合わせガラス)
図2に、本発明の一実施形態に係る合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を断面図で示す。
【0103】
図2に示す合わせガラス11は、中間膜1と、第1,第2の合わせガラス部材21,22とを備える。中間膜1は、第1,第2の合わせガラス部材21,22の間に挟み込まれている。中間膜1の第1の表面1aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜1の第1の表面1aとは反対の第2の表面1bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第2の層3の外側の表面3aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層4の外側の表面4aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0104】
このように、本発明に係る合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、該第1,第2の合わせガラス部材の間に挟み込まれた中間膜とを備えており、該中間膜として、本発明の合わせガラス用中間膜が用いられている。
【0105】
上記第1,第2の合わせガラス部材(合わせガラス構成部材)としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。上記合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。
【0106】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス及びグリーンガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0107】
上記第1,第2の合わせガラス部材の厚みは特に限定されないが、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、1〜5mmの範囲内であることが好ましい。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、0.03〜0.5mmの範囲内であることが好ましい。
【0108】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1,第2の合わせガラス部材の間に、上記中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバックに入れて減圧吸引したりして、第1,第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70〜110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120〜150℃及び1〜1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。
【0109】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜は、建築用又は車両用の中間膜であることが好ましく、車両用の中間膜であることがより好ましい。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましく、車両用の合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、電気モータを用いた電気自動車及び内燃機関と電気モータとを用いたハイブリッド電気自動車に好適に用いられる。合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【0110】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0111】
実施例及び比較例では、下記のポリ酢酸ビニル樹脂a,b,c,dとポリビニルアセタール樹脂a,b,c,d,eとを用いた。ポリビニルブチラール樹脂であるポリビニルアセタール樹脂a,b,c,d,eのブチラール化度(アセタール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はASTM D1396−92に準拠した方法により測定した。なお、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」により測定した場合も、ASTM D1396−92に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0112】
ポリ酢酸ビニル樹脂a(PVAc(a)):重合度1700
ポリ酢酸ビニル樹脂b(PVAc(b)):重合度5000
ポリ酢酸ビニル樹脂c(PVAc(c)):重合度10000
ポリ酢酸ビニル樹脂d(PVAc(d)):重合度15000
【0113】
ポリビニルアセタール樹脂a(PVB(a)):アセチル化度12.8モル%、ブチラール化度63.5モル%、水酸基の含有率23.7モル%、アセタール化にn−ブチルアルデヒドを使用
ポリビニルアセタール樹脂b(PVB(b)):アセチル化度1モル%、ブチラール化度65.5モル%、水酸基の含有率33.5モル%、アセタール化にn−ブチルアルデヒドを使用
ポリビニルアセタール樹脂c(PVB(c)):アセチル化度1モル%、ブチラール化度68.5モル%、水酸基の含有率30.5モル%、アセタール化にn−ブチルアルデヒドを使用
ポリビニルアセタール樹脂d(PVB(d)):アセチル化度1モル%、ブチラール化度70.3モル%、水酸基の含有率28.7モル%、アセタール化にn−ブチルアルデヒドを使用
ポリビニルアセタール樹脂e(PVB(e)):アセチル化度1.5モル%、ブチラール化度69モル%、水酸基の含有率29.5モル%、アセタール化にn−ブチルアルデヒドを使用
【0114】
また、実施例及び比較例では、下記の可塑剤を用いた。
【0115】
アジピン酸ジブチル(DBA)
トリエチレングリコールジ−n−ブタノエート(3GB)
トリエチレングリコールジ−n−プロパノエート(3GE)
トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)
【0116】
また、実施例及び比較例では、下記の粘着付与剤を用いた。
【0117】
ロジン樹脂(KE−311、荒川化学社製「パインクリスタルKE−311」)
アクリル酸変性ロジン(KE−604、荒川化学社製「パインクリスタルKE−604」)
ロジン含有ジオール(D−6011、荒川化学社製「パインクリスタルD−6011」)
【0118】
(実施例1)
ポリ酢酸ビニル樹脂a100重量部と、可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)50重量部とをミキシングロールで充分に混練し、中間層用組成物を得た。
【0119】
ポリビニルブチラール樹脂b100重量部と、可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)34重量部とを充分に混練し、保護層用組成物を得た。
【0120】
得られた中間層用組成物及び保護層用組成物を、共押出機を用いて成形し、保護層B(厚み0.35mm)/中間層A(厚み0.1mm)/保護層B(厚み0.35mm)の積層構造を有する中間膜(厚み0.8mm)を作製した。
【0121】
得られた中間膜(多層)を、縦30mm×横320mmに切り出した。次に、2枚の透明なフロートガラス(縦25mm×横305mm×厚み2.0mm)の間に中間膜を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラスからはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを得た。
【0122】
(実施例2)
ポリ酢酸ビニル樹脂100重量部と、可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)50重量部と、粘着付与剤であるロジン樹脂(KE−311、荒川化学社製「パインクリスタルKE−311」)30重量部とをミキシングロールで充分に混練し、中間層用組成物を得た。
【0123】
得られた中間層用組成物を用いて中間層Aを作製したこと、並びに保護層Bに用いたポリビニルブチラール樹脂の種類及び含有量、可塑剤の含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。
【0124】
(実施例3〜12)
中間層に用いたポリ酢酸ビニル樹脂の種類及び含有量、可塑剤の種類及び含有量並びに保護層Bに用いたポリビニルブチラール樹脂の種類及び含有量、可塑剤の種類及び含有量を下記の表1,2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。実施例3〜12では粘着付与剤を用いなかった。
【0125】
(実施例13,14)
中間層に用いた粘着付与剤の種類及び含有量を下記の表2に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。
【0126】
(比較例1)
中間層A及び保護層Bに用いたポリビニルブチラール樹脂の種類及び含有量、可塑剤の種類及び含有量を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜及び合わせガラスを得た。なお、比較例1では可塑剤として、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)を用いた。比較例1では粘着付与剤を用いなかった。
【0127】
(評価)
(1)中間層に含まれているポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを用いて測定された曇点
(1−1)第1の曇点の判定方法による曇点
中間層で用いた各可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層で用いた各ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱した後、試験管を−20℃の雰囲気下に放置して溶液の温度を−15℃まで降下させた。このときに、溶液の一部に曇りが発生し始める温度を目視で観察し、該温度を曇点とした。
【0128】
また、曇点が−15℃になっても現れない上記溶液に関しては、液体窒素を用い、−196℃の雰囲気下で可塑剤の流動点まで、上記溶液を冷却し、温度を降下させた。このときに、溶液の一部に曇りが発生し始める温度を目視で観察し、該温度を曇点とした。なお、下記の表1,2では、第1の曇点の判定方法による曇点を示した。
【0129】
(1−2)第2の曇点の判定方法による曇点
中間層で用いた各可塑剤3.5g(100重量部)と、中間層で用いた各ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを用意した。試験管(直径2cm)内で、該可塑剤3.5g(100重量部)と、該ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂0.28g(8重量部)とを混合し、該可塑剤に該ポリ酢酸ビニル樹脂又はポリビニルアセタール樹脂を溶解させた溶液を得た。この試験管内の溶液を150℃に加熱し、5℃、0℃及び−5℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後、該恒温室の温度を保持して試験管内の溶液のヘーズをヘーズメーターで測定した。ヘーズが10%以上を示した最大温度を曇点とした。なお、ヘーズは、ヘーズメーター(東京電色社製「TC−HIIIDPK」)を用いて、JIS K6714に準拠して測定した。
【0130】
この結果、実施例1〜14及び比較例1では、80℃の恒温室内に試験管を1時間放置した後も、ヘーズが10%以上を示すことはなかった。
【0131】
(2)低温側のtanδのピーク温度、低温側のtanδのピーク最大値、高温側のtanδのピーク最大値
得られた中間膜を23℃の環境下にて1ヶ月保管した後に、中間膜を直径8mmの円形に切り抜き、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件で、昇温速度5℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を行うことにより、最も低温側に現れるtanδのピーク温度、最も低温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値、及び、最も高温側に現れるtanδのピーク温度におけるtanδの最大値を測定した。
【0132】
(3)損失係数
得られた合わせガラスを20℃の環境下にて1ヶ月保管した。20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、20℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の4次モード(3150Hz付近)での損失係数(20℃損失係数)を評価した。
【0133】
また、20℃の環境下にて1ヶ月保管した合わせガラスについて、測定装置「SA−01」(リオン社製)を用いて、30℃の条件で中央加振法により損失係数を測定した。得られた損失係数の共振周波数の6次モード(6300Hz付近)での損失係数(30℃損失係数)を評価した。
【0134】
結果を下記の表1,2に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【符号の説明】
【0137】
1…中間膜
1a…第1の表面
1b…第2の表面
2…第1の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第2の層
3a…外側の表面
4…第3の層
4a…外側の表面
11…合わせガラス
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
図1
図2