(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各前記基地局は、前記第2の通信インターフェース部が受信した第1の信号に含まれる、前記第1の通信インターフェース部が前記信号を送信した送信時刻と、前記第2の通信インターフェース部が前記第1の信号を受信した受信時刻との差を第1の回線遅延時間として算出する第1の回線遅延時間算出部をさらに備え、
各前記基地局は、前記第1の回線遅延時間算出部にて算出された前記第1の回線遅延時間を、前記通信回線を介して前記本部装置に送信し、
前記本部装置の前記送信指定時刻算出部は、前記第1の回線遅延時間に基づいて前記送信指定時刻を算出することを特徴とする、請求項1に記載の無線通信システム。
前記送信指定時刻算出部は、各前記基地局から受信した前記第1の回線遅延時間のうちの最大の前記第1の回線遅延時間、前記通信回線における遅延変動に対する許容時間、および前記第1の通信インターフェース部が前記送信データを各前記基地局に送信する時刻に基づいて、前記送信指定時刻を算出することを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
前記送信指定時刻算出部は、各前記基地局から受信した前記第1の回線遅延時間のうちの最大の前記第1の回線遅延時間と最小の前記第1の回線遅延時間との差の時間、前記通信回線における遅延変動に対する許容時間、および前記第1の通信インターフェース部が前記送信データを各前記基地局に送信する時刻に基づいて、前記送信指定時刻を算出することを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
前記第1のタイミング調整部は、前記第2の通信インターフェース部が前記送信データを受信した時刻が、前記送信指定時刻抽出部にて抽出された前記送信指定時刻よりも後である場合は、前記外部の装置に対して前記送信データを送信しないように調整することを特徴とする、請求項3,4,8のいずれか1項に記載の無線通信システム。
前記本部装置の前記送信指定時刻算出部は、各前記基地局から受信した前記第1の回線遅延時間に基づいて前記送信指定時刻を算出することを特徴とする、請求項10に記載の無線通信システム。
前記本部装置は、前記第4の通信インターフェース部が受信した第2の信号に含まれる、各前記基地局の前記第3の通信インターフェース部が前記第2の信号を送信した送信時刻と、前記第4の通信インターフェース部が前記第2の信号を受信した受信時刻との差を第2の回線遅延時間として算出する第2の回線遅延時間算出部をさらに備え、
前記受信データ処理部は、前記第2の回線遅延時間算出部にて算出された前記第2の回線遅延時間に基づいて前記判別を行うことを特徴とする、請求項13に記載の無線通信システム。
前記受信データ処理部は、前記第2の回線遅延時間算出部にて算出された前記第2の回線遅延時間のうちの最大の前記第2の回線遅延時間と、前記通信回線における遅延変動に対する許容時間との和の時間以上、各前記基地局から受信した前記受信データを保持し、当該保持した前記受信データに基づいて前記判別を行うことを特徴とする、請求項14に記載の無線通信システム。
各前記基地局のうちの少なくとも1つの前記基地局である上位基地局が、前記本部装置と直接接続されず前記上位基地局の下位に存在する前記基地局である下位基地局と通信可能に接続されている場合において、
前記上位基地局は、
当該上位基地局が受信した前記受信データに含まれる前記受信時刻と、前記下位基地局から受信した前記受信データに含まれる前記受信時刻とに基づいて、前記上位基地局および前記下位基地局が同一のタイミングで前記外部の装置から受信した前記受信データを判別し、当該判別した前記受信データに対してダイバーシティの処理を行い、当該ダイバーシティの処理を行った後の前記受信データを前記本部装置に送信することを特徴とする、請求項13から15のいずれか1項に記載の無線通信システム。
前記受信データ処理部は、前記第4の通信インターフェース部が前記受信データを受信した時刻が、前記第2の回線遅延時間算出部にて算出された前記第2の回線遅延時間のうちの最大の前記第2の回線遅延時間と、前記通信回線における遅延変動に対する許容時間との和の時間よりも後である場合における前記受信データを受信しない処理を行うことを特徴とする、請求項14または15に記載の無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、本部装置と複数の基地局とがツリー状に接続された無線通信システムにおいて、IPネットワークなど遅延時間が変動するような通信回線に適用しても複局同時送受信を可能とする。
【0013】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0014】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1による無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態1による無線通信システムは、本部装置100と、本部装置100と通信回線500を介して通信可能に接続された基地局200,203と、基地局200〜203と無線回線600(無線通信回線)を介して通信可能に接続された無線端末300(外部の装置)とを備えている。また、基地局201,202は、通信回線500を介して基地局200と通信可能に接続されている。なお、通信回線500は、IP回線や専用線等の一定周期のフレーム単位で信号を伝送しない方式を採用する通信回線であるものとする。
【0016】
以下では、本実施の形態1による無線通信システムについて、下り方向の通信に主眼を置いて説明する。ここで、下り方向の通信とは、本部装置100から送信されたデータ(以下、送信データという)を基地局200〜203が受信し、受信した送信データを基地局200〜203から無線端末300に送信する通信のことをいう。すなわち、送信データが、本部装置100、基地局200〜203、無線端末300の順(方向)に伝送される通信のことをいう。
【0017】
本部装置100から送信された送信データは、通信回線500を介して、基地局200〜203に受信される。基地局200〜203に受信された送信データは、基地局200〜203から無線回線600に同一周波数で同時に送信され、無線端末300に受信される。
【0018】
本部装置100および基地局200〜203は、GPS(Global Positioning System)400から送信された時刻の基準となる基準信号を受信して時刻同期を行っている。従って、本部装置100と、基地局200〜203とは、時刻同期されている。
【0019】
図2は、本実施の形態1による無線通信システムの構成の一例を示すブロック図である。なお、
図2では、本部装置100および基地局200を一例として示している。基地局201〜203は、
図2に示す基地局200と同じ構成および動作であるものとする。
【0020】
図2に示すように、本部装置100は、GPS受信部110と、時刻同期部120と、タイミング調整部130と、データ処理部140と、回線インターフェース部150とを備えている。
【0021】
GPS受信部110(第1のGPS受信部)は、GPS400から送信された基準信号を受信し、当該基準信号を時刻情報として時刻同期部120に出力する。
【0022】
時刻同期部120(第1の時刻同期部)は、GPS受信部110から取得した時刻情報に基づいて、本部装置100における時刻の同期を行う。同期後の時刻情報は、タイミング調整部130に出力される。
【0023】
タイミング調整部130(送信指定時刻算出部)は、基地局200から無線端末600に同時に送信データを送信する時刻である送信指定時刻を算出する。すなわち、タイミング調整部130は、時刻同期部120にて同期された時刻に基づいて、基地局200から送信データが送信される時刻である送信指定時刻を算出する機能を有している。なお、送信指定時刻の算出については後述する。算出された送信指定時刻は、データ処理部140に出力される。
【0024】
データ処理部140(送信指定時刻付加部)は、タイミング調整部130から取得した送信指定時刻と、その他のヘッダ情報とを送信データに付加して回線インターフェース部150に送信する。すなわち、データ処理部140は、タイミング調整部130にて算出された送信指定時刻を送信データに付加する機能を有している。
【0025】
回線インターフェース部150(第1の通信インターフェース部)は、データ処理部140から取得した送信データを、通信回線500を介して基地局200に送信する。すなわち、回線インターフェース部150は、データ処理部140にて送信指定時刻が付加された送信データを、通信回線500を介して基地局200に送信する機能を有している。
【0026】
図2に示すように、基地局200は、回線インターフェース部210と、データ処理部220と、GPS受信部230と、時刻同期部240と、タイミング調整部250と、無線インターフェース部260とを備えている。
【0027】
回線インターフェース部210(第2の通信インターフェース部)は、本部装置100の回線インターフェース部150から送信された送信データを受信してデータ処理部220に出力する。すなわち、回線インターフェース部210は、回線インターフェース部150から送信された送信データを受信する機能を有している。
【0028】
データ処理部220(送信指定時刻抽出部)は、回線インターフェース部210から取得した送信データをタイミング調整部250に出力する。このとき、データ処理部220は、送信データに含まれる送信指定時刻を抽出する。すなわち、データ処理部220は、回線インターフェース部210が受信した送信データに含まれる送信指定時刻を抽出する機能を有している。
【0029】
GPS受信部230(第2のGPS受信部)は、GPS400から送信された基準信号を受信し、当該基準信号を時刻情報として時刻同期部240に出力する。
【0030】
時刻同期部240(第2の時刻同期部)は、GPS受信部230から取得した時刻情報に基づいて、基地局200における時刻の同期を行う。同期後の時刻情報は、タイミング調整部250に出力される。
【0031】
タイミング調整部250(第1のタイミング調整部)は、データ処理部220から取得した送信データを保持し、送信データに付加されている送信指定時刻になると無線インターフェース部260に送信データを出力する。すなわち、タイミング調整部250は、データ処理部220が抽出した送信指定時刻で送信データを無線端末300(外部の装置)に送信するように、時刻同期部240にて同期された時刻に基づいて送信のタイミングを調整する機能を有している。
【0032】
無線インターフェース部260(送信部)は、タイミング調整部250から取得した送信データを、無線回線600を介して無線端末300に送信する。すなわち、無線インターフェース部260は、タイミング調整部250にて調整された送信のタイミングで送信データを無線端末300に送信する機能を有している。
【0033】
次に、本部装置100のタイミング調整部130による送信指定時刻の算出について説明する。
【0034】
タイミング調整部130が送信指定時刻を算出する前に、本部装置100は、通信回線500におけるデータの伝送の遅延時間である回線遅延時間を予め把握する必要がある。
【0035】
ここで、回線遅延時間の算出について説明する。
【0036】
上述の通り、本部装置100と基地局200〜203とは時刻同期している。本部装置100は、当該本部装置100から送信する送信時刻を含む予め定められた信号(第1の信号)を基地局200〜203に送信する。
【0037】
基地局200〜203は、本部装置100から信号を受信した受信時刻と、本部装置100から受信した信号に含まれる送信時刻との差を、本部装置100から基地局200〜203への通信方向(下り方向)における回線遅延時間として算出する。すなわち基地局200〜203は、回線インターフェース部210が受信した信号に含まれる、本部装置100の回線インターフェース部150が信号を送信した送信時刻と、回線インターフェース部210が信号を受信した受信時刻との差を回線遅延時間(第1の回線遅延時間)として算出する機能(第1の回線遅延時間算出部)を有している。なお、当該機能は、データ処理部220が有してもよく、図示しない他の構成要素が有してもよい。
【0038】
基地局200〜203は、算出した回線遅延時間を、通信回線500を介して本部装置100に通知する。
【0039】
例えば、
図1において、本部装置100と基地局200との間における回線遅延時間をTA、本部装置100と基地局201との間における回線遅延時間をTB、本部装置100と基地局202との回線遅延時間をTC、本部装置100と基地局203との間における回線遅延時間をTDとすると、TD<TA<TB<TCとなる。
【0040】
本部装置100のタイミング調整部130は、本部装置100から基地局200〜203に送信データを送信する時刻に対して、基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大の回線遅延時間である最大遅延時間(例えば、
図1では回線遅延時間TC)と、回線遅延変動マージン時間(通信回線500における遅延変動に対する許容時間)とを加えた時間を送信指定時間として算出する。
【0041】
図3は、基地局200〜203が送信データを送信するタイミングの調整を説明するための図である。
【0042】
図3に示すように、本部装置100から送信された送信データは、通信回線500における遅延によって、異なるタイミングで基地局200〜203に到着する。しかし、上述の通り、送信データには送信指定時刻が含まれており、基地局200〜203は送信指定時刻に合わせて送信信号を送信しているため、送信データは基地局200〜203から同一のタイミングで送信することができる。すなわち、本部装置100は、基準信号に基づいて基地局200〜203との遅延を調整した基地局200〜203の送信のタイミングを指示し、基地局200〜203は、送信データを、基準信号に基づいて調整した同一の送信のタイミングで送信する。
【0043】
以上のことから、本実施の形態1によれば、全ての基地局200〜203は同一のタイミングで同一の送信データを送信すること(複局同時送信)ができ、無線端末300は基地局200〜203から送信された送信データを同一のタイミングで受信することが可能となる。また、複局同時送信を実現するために、本部装置100は、基地局200〜203に対して送信指定時刻のみを送信しているため、従来よりも少ないデータ容量(送信指定時刻のみ)で複局同時送信を行うことが可能となる。さらに、一定周期のフレーム単位で信号を伝送しない方式を採用する通信回線であっても複局同時送信を行うことが可能となる。
【0044】
なお、本部装置100のタイミング調整部130は、本部装置100から基地局200〜203に送信データを送信する時刻に対して、基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間と、回線遅延変動マージン時間とを加えた時間を送信指定時間として算出したが、これに限るものではない。
【0045】
例えば、上記の「基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間」に代えて、「基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間(例えば、
図1では回線遅延時間TC)−最小遅延時間(例えば、
図1では回線遅延時間TD)」としてもよい。このようにすることによって、基地局200〜203から送信データを送信する時刻(タイミング)を早めることが可能となる。
【0046】
また、基地局200〜203は、回線遅延時間を周期的(定期的)に算出し、算出した回線遅延時間を本部装置100に送信するようにしてもよい。このようにすることによって、本部装置100は、基地局200〜203から周期的に取得した回線遅延時間に基づいて送信指定時刻を算出することができるため、通信回線500の状態を考慮した適切な送信指定時刻で基地局200〜203から送信データを送信させることができる。
【0047】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2では、無線端末300と基地局200〜203の各々との距離(伝送距離)が同じでない場合について説明する。
【0048】
図4は、本実施の形態2による無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。
図4では、基地局202と無線端末300との伝送距離が短く、基地局203と無線端末300との伝送距離が長いことを示している。
【0049】
なお、本実施の形態2では、無線端末300と基地局202,203とが無線回線600を介して無線通信を行う場合を一例として説明する。
【0050】
図4に示すように、無線端末300と基地局202との伝送距離と、無線端末300と基地局203との伝送距離とが異なると、無線端末300は、基地局202,203から異なるタイミングで送信データを受信することになる。当該受信のタイミングの時間差が大きくなると、無線端末300では受信した上記送信データを正常に復調できないことがある。
【0051】
このような問題の対策として、本実施の形態2では、基地局202,203のタイミング調整部250(第1のタイミング調整部)に対して、基地局202,203から送信データが同一のタイミングで送信されるように調整した遅延補正時間(第1の遅延補正時間)を予め設定しておく。タイミング調整部250は、送信のタイミングを、予め設定された遅延補正時間に基づいて調整する。なお、基地局におけるその他の構成、および本部装置の構成は、実施の形態1(
図1参照)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
上記の構成とすることによって、基地局202,203では、タイミング調整部250で予め設定された遅延補正時間の分だけ、基地局202,203から送信データを送信するタイミング(送信時刻)を遅らせる、あるいは早めることができる。
【0053】
例えば、
図4において、基地局202と無線端末300との伝播時間と、基地局203と無線端末300との伝播時間との時間差を遅延補正時間として予め設定しておき、基地局202から送信データを送信するタイミングを設定した遅延補正時間の分だけ遅らせることによって、基地局202,203から無線端末300への送信のタイミングを同一にすることが可能となる。
【0054】
以上のことから、本実施の形態2によれば、実施の形態1による効果に加えて、無線端末300と基地局200〜203の各々との距離(伝送距離)が異なる場合であっても、基地局200〜203から送信データを送信するタイミングを同一にすることができる。
【0055】
<実施の形態3>
本発明の実施の形態3では、本部装置100から送信された送信データが、送信指定時刻よりも遅れて基地局200〜203に届いた場合について説明する。
【0056】
なお、本部装置100および基地局200〜203の構成は、実施の形態1または2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本部装置100と基地局200〜203との間における通信回線500の遅延時間が変動することによって、本部装置100から送信された送信データが送信指定時刻よりも遅れて基地局200〜203に届いた場合において、遅れた送信データを受信した基地局がそのまま送信データを無線端末300に送信すると、遅れていない送信データを受信した他の基地局が送信データを送信するタイミングよりも遅くなるため、全ての基地局200〜203から送信データを同一のタイミングで送信することができない。
【0058】
このような問題の対策として、本実施の形態3では、本部装置100から送信された送信データが、送信指定時刻よりも遅れて基地局200〜203に届いた場合は、基地局200〜203のタイミング調整部250が遅れて届いた送信データを破棄し、無線端末300に送信しないようにしている。
【0059】
図5は、本実施の形態3による無線通信システムの動作の一例を示す図である。なお、
図5では、基地局200が、本部装置100から送信された送信データを送信指定時刻よりも遅れて受信した場合を一例として説明する。
【0060】
ステップS501において、本部装置100は、送信指定時刻T1で送信データを送信するよう基地局200〜203に指示する。
【0061】
ステップS502において、基地局200は、送信指定時刻T1に送信データを受信していない(送信指定時刻T1の後に送信データを受信した)ため、当該送信データを破棄する。すなわち、基地局200のタイミング調整部250(第1のタイミング調整部)は、回線インターフェース部210が受信した時刻が、データ処理部220にて抽出された送信指定時刻よりも後である場合は、無線端末300に対して送信データを送信しないように調整する。このとき、他の基地局201〜203は、送信指定時刻T1より前に送信データを受信しているため、無線端末300に対して送信指定時刻T1に送信データを送信する。
【0062】
ステップS503において、基地局200は、送信データを破棄した旨を本部装置100に通知する。すなわち、基地局200は、タイミング調整部250が送信データを送信しないように調整した場合にその旨を本部装置100に通知する。
【0063】
ステップS504において、本部装置100は、全ての基地局200〜203に対して、回線遅延時間を算出するよう指示する。
【0064】
ステップS505において、基地局200〜203の各々は、回線遅延時間の算出結果を本部装置100に通知する。すなわち、基地局200〜203は、本部装置100からの指示に従って算出した回線遅延時間(第1の回線遅延時間)を本部装置100に送信する。
【0065】
ステップS506において、本部装置100は、回線遅延時間の情報を更新する。
【0066】
ステップS507において、本部装置100のタイミング調整部130は、更新された回線遅延時間に基づいて送信指定時刻T2を算出する。本部装置100は、送信指定時刻T2で送信データを送信するよう基地局200〜203に指示する。
【0067】
ステップS508において、基地局200〜203は、送信指定時刻T2で送信データを無線端末300に送信する。
【0068】
以上のことから、本実施の形態3によれば、実施の形態1または2による効果に加えて、本部装置100から送信された送信データが送信指定時刻よりも遅れて届いた基地局200〜203は、当該遅れて届いた送信データを破棄して送信しないようにしているため、基地局200〜203から送信データが送信されるタイミングが異なることを防ぐことができる。また、送信データが基地局200〜203に遅れて届く場合は、本部装置100にて改めて送信指定時刻を算出して基地局200〜203に送信しているため、基地局200〜203から送信データを同一のタイミングで送信することができる。
【0069】
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4では、
図1に示す無線通信システムについて、上り方向の通信に主眼を置いて説明する。ここで、上り方向の通信とは、無線端末300(外部の装置)から送信されたデータ(以下、受信データという)を基地局200〜203が受信し、受信した受信データを基地局200〜203から本部装置100に送信する通信のことをいう。すなわち、受信データが、無線端末300、基地局200〜203、本部装置100の順(方向)に伝送される通信のことをいう。
【0070】
無線端末300から送信された受信データは、無線回線600を介して、基地局200〜203に受信される。基地局200〜203から送信された受信データは、基地局200〜203から通信回線500を介して本部装置100に受信される。
【0071】
上述の通り、本部装置100および基地局200〜203は、GPS400から送信された時刻の基準となる基準信号を受信して時刻同期を行っている。従って、本部装置100と、基地局200〜203とは、時刻同期されている。
【0072】
本実施の形態4による本部装置100および基地局200〜203の構成は、実施の形態1(
図2を参照)と同様である。以下では、
図2を用いて各構成要素について説明する。なお、
図2では、本部装置100および基地局200を一例として示している。基地局201〜203は、
図2に示す基地局200と同じ構成および動作であるものとする。
【0073】
図2に示すように、基地局200は、回線インターフェース部210と、データ処理部220と、GPS受信部230と、時刻同期部240と、タイミング調整部250と、無線インターフェース部260とを備えている。
【0074】
無線インターフェース部260(受信部)は、無線端末300から送信された受信データを、無線回線600を介して受信する。受信した受信データは、タイミング調整部250に出力される。すなわち、無線インターフェース部260は、無線端末300から送信されたデータを受信データとして受信する機能を有している。
【0075】
GPS受信部230(第2のGPS受信部)は、GPS400から送信された基準信号を受信し、当該基準信号を時刻情報として時刻同期部240に出力する。
【0076】
時刻同期部240(第2の時刻同期部)は、GPS受信部230から取得した時刻情報に基づいて、基地局200における時刻の同期を行う。同期後の時刻情報は、タイミング調整部250に出力される。
【0077】
タイミング調整部250(受信時刻付加部)は、基地局200が受信データを受信した受信時刻を受信データに付加してデータ処理部220に出力する。すなわち、タイミング調整部250は、時刻同期部240にて同期された時刻に基づく、無線インターフェース部260が受信データを受信した受信時刻を、受信データに付加する機能を有している。
【0078】
データ処理部220は、受信時刻が付加された受信データにヘッダ情報をさらに付加して回線インターフェース部210に出力する。
【0079】
回線インターフェース部210(第3の通信インターフェース部)は、受信データを通信回線500を介して本部装置100に送信する。すなわち、回線インターフェース部210は、タイミング調整部250にて受信時刻が付加された受信データを、通信回線500を介して本部装置100に送信する機能を有している。
【0080】
図2に示すように、本部装置100は、GPS受信部110と、時刻同期部120と、タイミング調整部130と、データ処理部140と、回線インターフェース部150とを備えている。
【0081】
GPS受信部110(第1のGPS受信部)は、GPS400から送信された基準信号を受信し、当該基準信号を時刻情報として時刻同期部120に出力する。
【0082】
時刻同期部120(第1の時刻同期部)は、GPS受信部110から取得した時刻情報に基づいて、本部装置100における時刻の同期を行う。同期後の時刻情報は、タイミング調整部130に出力される。
【0083】
回線インターフェース部150(第4の通信インターフェース部)は、基地局200〜203から受信データを受信する。受信した受信データは、データ処理部140に出力される。すなわち、回線インターフェース部150は、基地局200の回線インターフェース部210から送信された受信データを受信する機能を有している。
【0084】
データ処理部140(受信時刻抽出部)は、受信データに含まれる受信時刻やヘッダ情報等を取り除く。すなわち、データ処理部140は、回線インターフェース部150が受信した受信データに含まれる受信時刻を抽出する機能を有している。ヘッダ情報等が取り除かれた受信データは、タイミング調整部130に出力される。
【0085】
タイミング調整部130(受信データ処理部)は、基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間と、回線遅延変動マージン時間(通信回線500における遅延変動に対する許容時間)との和となる時間以上の間、基地局200〜203から受信した受信データを保持する。なお、タイミング調整部130は、
図7に示すようなバッファを有しているものとする。
【0086】
また、タイミング調整部130は、実施の形態1と同様の方法で、予め回線遅延時間を算出しているものとする。すなわち、本部装置100は、回線インターフェース部150が受信した信号(第2の信号)に含まれる、基地局200〜203の回線インターフェース部210が信号を送信した送信時刻と、回線インターフェース部150が信号を受信した受信時刻との差を回線遅延時間(第2の回線遅延時間)として算出する機能(第2の回線遅延時間算出部)を有している。なお、当該機能は、タイミング調整部130が有してもよいが、本部装置100の他の構成要素(図示せず)が有してもよい。
【0087】
ここで、回線遅延時間の算出について説明する。
【0088】
上述の通り、本部装置100と基地局200〜203とは時刻同期している。本部装置100は、基地局200〜203から信号を受信した受信時刻と、基地局200〜203から受信した信号に含まれる送信時刻との差を、基地局200〜203への通信方向(上り方向)における回線遅延時間として算出する。
【0089】
タイミング調整部130は、保持した各受信データに付加された受信時刻に基づいて、基地局200〜203にて同一のタイミングで受信された受信データを判別する。そして、同一のタイミングで受信したと判別した受信データに対して受信ダイバーシティの処理を行う。
【0090】
以上のことから、本実施の形態4によれば、本部装置100は、基地局200〜203が無線端末300から同一のタイミングで取得した受信データを受信(複局同時受信)することが可能となる。また、本部装置100は、基地局200〜203から当該基地局200〜203が受信データを受信した受信時刻のみを取得しているため、従来よりも少ないデータ容量(送信指定時刻のみ)で複局同時受信を行うことが可能となる。さらに、一定周期のフレーム単位で信号を伝送しない方式を採用する通信回線であっても複局同時受信を行うことが可能となる。
【0091】
<実施の形態5>
本実施の形態5では、基地局200〜203のうちの少なくとも1つの基地局(上位基地局)が、本部装置100と直接接続されず上位基地局の下位(下り方向)に存在する基地局(下位基地局)と通信可能に接続されている場合について説明する。
【0092】
なお、本部装置100および基地局200〜203の構成は、実施の形態4(
図1,2)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0093】
実施の形態4では、本部装置100は、基地局200〜203から送信される全ての受信データを受信し、受信した受信データに対して受信ダイバーシティの処理を行っている。
【0094】
実施の形態4において、
図1に示すように、基地局200の下位に基地局201および基地局202の2つの基地局が存在する場合、無線端末300から送信された受信データは基地局200,201,202の3つの基地局で受信され、基地局200,201,202の各々から受信データが通信回線500を介して本部装置100に送信されることになる。このとき、本部装置100と基地局200との間における通信回線500の回線容量が、基地局200から本部装置100に送信される受信データのデータ量よりも十分に大きい場合は問題ないが、通信回線500の回線容量が小さい場合は3つの同一の受信データが通過するため通信回線500の負荷が大きくなる。
【0095】
このような問題の対策として、本実施の形態5では、例えば
図1に示すように、基地局200に下位の基地局201,202が接続されている場合は、上位である基地局200において、基地局200,201,202が受信した受信データに対して受信ダイバーシティの処理を行い、処理後の受信データを基地局200から本部装置100に送信している。
【0096】
例えば、
図1において、基地局200のタイミング調整部250は、基地局200よりも下位の通信回線500における回線遅延時間のうちの最大遅延時間と、回線遅延変動マージン時間との和となる時間以上の間、基地局200が受信した受信データと、基地局201が受信した受信データと、基地局202が受信した受信データとを保持する。
【0097】
その後、基地局200のタイミング調整部250は、保持した各受信データに付加された受信時刻に基づいて、基地局200,201,202にて同一のタイミングで受信された受信データを判別する。そして、同一のタイミングで受信したと判別した受信データに対して受信ダイバーシティの処理を行う。受信ダイバーシティの処理が行われた後の受信データは、通信回線500を介して本部装置100に送信される。
【0098】
以上のことから、本実施の形態5によれば、実施の形態4による効果に加えて、下位の基地局201,202で受信した受信データを上位の基地局200にて受信ダイバーシティの処理を行い、受信ダイバーシティの処理後の受信データを本部装置100に送信しているため、基地局200と本部装置100との間における通信回線500を通るデータ容量を削減することが可能となる。
【0099】
<実施の形態6>
本発明の実施の形態6では、無線端末300と基地局200〜203の各々との距離(伝送距離)が同じでない場合について、
図4を用いて説明する。なお、実施の形態2では下り方向の場合について説明しているが、本実施の形態6では上り方向の場合について説明する。
【0100】
図4では、基地局202と無線端末300との伝送距離が短く、基地局203と無線端末300との伝送距離が長いことを示している。
【0101】
なお、本実施の形態6では、無線端末300と基地局202,203とが無線回線600を介して無線通信を行う場合を一例として説明する。
【0102】
図4に示すように、無線端末300と基地局202との伝送距離と、無線端末300と基地局203との伝送距離とが異なると、基地局202,203は、無線端末300から異なるタイミングで受信データを受信することになる。当該受信のタイミングの時間差が大きくなると、本部装置100では受信した受信データに対して正常にダイバーシティの処理を行うことができないことがある。
【0103】
このような問題の対策として、本実施の形態6では、基地局202,203のタイミング調整部250(第2のタイミング調整部)に対して、基地局202,203から本部装置100に受信データを送信するタイミングが大きく異ならないように調整した遅延補正時間を予め設定しておく。具体的に、本部装置100のタイミング調整部130が基地局200〜203から受信した受信データを保持する時間内に、基地局202,203から本部装置100に受信データを送信することができるように調整した遅延補正時間(第2の遅延補正時間)を予め設定しておく。すなわち、タイミング調整部250は、本部装置100に受信データを送信するタイミングを調整する機能を有しており、受信データを本部装置100に送信するタイミングを、予め設定された遅延補正時間に基づいて調整する。
【0104】
なお、基地局におけるその他の構成、および本部装置の構成は、実施の形態1(
図1参照)と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
基地局202,203は、タイミング調整部250で予め設定された遅延補正時間の分だけ、基地局202,203から受信データを受信するタイミング(受信時刻)を遅らせた、あるいは早めた時刻を受信データに付加して本部装置100に送信する。
【0106】
本部装置100では、基地局202,203から受信した調整後の受信時刻に基づいて、受信ダイバーシティの処理を行う。
【0107】
以上のことから、本実施の形態6によれば、実施の形態4による効果に加えて、無線端末300と基地局200〜203の各々との距離(伝送距離)が異なる場合であっても、本部装置100は正常に受信ダイバーシティの処理を行うことができる。
【0108】
<実施の形態7>
本発明の実施の形態7では、基地局200〜203から送信された受信データが、本部装置100のタイミング調整部130が受信データを保持する時間、すなわち、基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間と、回線遅延変動マージン時間との和となる時間よりも遅れて本部装置100に届いた場合について説明する。
【0109】
なお、本部装置100および基地局200〜203の構成は、実施の形態4または5と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0110】
本部装置100のタイミング調整部130(受信データ処理部)は、基地局200〜203から送信された受信データが、基地局200〜203から取得した回線遅延時間のうちの最大遅延時間と、回線遅延変動マージン時間との和となる時間よりも遅れて本部装置100に届いた場合、届いた受信データを破棄して(受信データを受信せず)受信ダイバーシティの処理の候補としない。
【0111】
また、受信データを破棄した(受信データを受信しない)場合、本部装置100は、再度、各基地局200〜203との間における通信回線500の回線遅延時間を算出する。
【0112】
以上のことから、本実施の形態7によれば、実施の形態4または5による効果に加えて、本部装置100のタイミング調整部130は、基地局200〜203から遅れて届いた受信データを破棄して受信ダイバーシティの処理の候補としないため、正常に受信ダイバーシティの処理を行うことができる。
【0113】
なお、通信回線500は、IP回線や専用線等の一定周期のフレーム単位で信号を伝送しない方式を採用する通信回線であるものとして説明したが、これに限るものではなく、一定周期のフレーム単位でデジタル信号を伝送する方式を採用する通信回線にも適用可能である。
【0114】
実施の形態2では、基地局202と無線端末300との伝播時間と、基地局203と無線端末300との伝播時間との時間差を遅延補正時間として予め設定すると説明したが、これに限るものではなく、基地局200〜203から送信データが同一のタイミングで送信されるように調整できればいかなる方法で遅延補正時間を設定してもよい。
【0115】
実施の形態5では、上位の基地局で受信ダイバーシティの処理を行った後の受信データを、当該上位の基地局から本部装置に送信する場合について説明したが、これに限るものではなく、上記の上位の基地局よりもさらに上位の基地局が存在する場合は、当該さらに上位の基地局に受信データを送信するようにしてもよい。
【0116】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。