特許第6049538号(P6049538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6049538エレベータシステムおよびエレベータ結露防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049538
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびエレベータ結露防止方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20161212BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B66B5/02 Z
   B66B5/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-105969(P2013-105969)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-227235(P2014-227235A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】志賀 諭
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−029269(JP,A)
【文献】 特開2006−159662(JP,A)
【文献】 実開平04−053773(JP,U)
【文献】 特開2013−043757(JP,A)
【文献】 特開平09−240943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータと、
外部から前記エレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した前記温度情報および前記相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した前記露点温度情報と前記温度情報とを用いて、前記エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置と
結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と前記結露防止運転時間だけ前記エレベータが結露防止運転を行うことによる前記エレベータの上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶する結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置と
を備え、
前記結露防止運転要否判定装置は、前記エレベータの結露防止運転が必要であると判定する場合に、前記露点温度情報と前記温度情報とを用いて、必要な前記エレベータの上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、
前記結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置は、複数の前記温度情報のそれぞれについて、前記結露防止運転時間情報と前記上昇温度情報とを対応させて記憶し、
前記エレベータは、前記結露防止運転要否判定装置の判定結果に基づいて、結露防止運転を行い、
前記エレベータは、前記結露防止運転要否判定装置によって算出された前記必要上昇温度情報に対応する前記結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけ結露防止運転を行うことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
複数の前記エレベータを備えたエレベータシステムであって、
それぞれの前記エレベータが設置されている地域を特定する地域特定情報とそれぞれの前記エレベータを特定するエレベータ特定情報とを対応させて記憶する地域特定情報エレベータ特定情報記憶装置をさらに備え、
前記結露防止運転要否判定装置は、前記地域特定情報によって特定される地域ごとに、前記温度情報および前記相対湿度情報を取得して前記エレベータの結露防止運転の要否を判定し、
それぞれの前記エレベータは、その前記エレベータを特定する前記エレベータ特定情報に対応する前記地域特定情報によって特定される地域についての前記結露防止運転要否判定装置の判定結果に基づいて、結露防止運転を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータは、巻上機を有しており、
前記エレベータの結露防止運転は、前記巻上機の低速運転によって行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
エレベータと、前記エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置と、結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と前記結露防止運転時間だけ前記エレベータが結露防止運転を行うことによる前記エレベータの上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶する結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置とを備えたエレベータシステムを用いたエレベータ結露防止方法であって、
前記結露防止運転要否判定装置が、外部から前記エレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した前記温度情報および前記相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した前記露点温度情報と前記温度情報とを用いて、前記エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定工程と、
前記結露防止運転要否判定工程で前記エレベータの結露防止運転が必要であると前記結露防止運転要否判定装置が判定する場合に、前記結露防止運転要否判定装置が、前記露点温度情報と前記温度情報とを用いて必要な前記エレベータの上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、算出した前記必要上昇温度情報に対応する前記結露防止運転時間情報を前記結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置から取得する結露防止運転時間情報取得工程と、
前記結露防止運転要否判定工程で前記エレベータの結露防止運転が必要であると前記結露防止運転要否判定装置が判定する場合に、前記結露防止運転時間情報取得工程で取得した前記結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけ前記エレベータが結露防止運転を行う結露防止運転工程と
を備え
前記結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置は、複数の前記温度情報のそれぞれについて、前記結露防止運転時間情報と前記上昇温度情報とを対応させて記憶していることを特徴とするエレベータ結露防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベータを備えたエレベータシステムおよびエレベータシステムを用いたエレベータ結露防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻上機シーブと、巻上機シーブに巻き掛けられたメインロープと、メインロープの移動によって昇降するかごと、巻上機シーブを制動する巻上機ブレーキとを備えたエレベータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−212450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、巻上機ブレーキに結露が発生した場合、巻上機ブレーキのブレーキ性能が低下してしまうおそれがあるという問題点があった。
【0005】
この発明は、エレベータに結露が発生することを抑制することができるエレベータシステムおよびエレベータ結露防止方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータシステムは、エレベータと、外部からエレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置と、結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と結露防止運転時間だけエレベータが結露防止運転を行うことによるエレベータの上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶する結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置とを備え、結露防止運転要否判定装置は、エレベータの結露防止運転が必要であると判定する場合に、露点温度情報と温度情報とを用いて、必要なエレベータの上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置は、複数の温度情報のそれぞれについて、結露防止運転時間情報と上昇温度情報とを対応させて記憶し、エレベータは、結露防止運転要否判定装置の判定結果に基づいて、結露防止運転を行い、エレベータは、結露防止運転要否判定装置によって算出された必要上昇温度情報に対応する結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけ結露防止運転を行う。
【0007】
この発明に係るエレベータ結露防止方法は、エレベータと、エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置と、結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と結露防止運転時間だけエレベータが結露防止運転を行うことによるエレベータの上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶する結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置とを備えたエレベータシステムを用いたエレベータ結露防止方法であって、結露防止運転要否判定装置が、外部からエレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定工程と、結露防止運転要否判定工程でエレベータの結露防止運転が必要であると結露防止運転要否判定装置が判定する場合に、結露防止運転要否判定装置が、露点温度情報と温度情報とを用いて必要なエレベータの上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、算出した必要上昇温度情報に対応する結露防止運転時間情報を結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置から取得する結露防止運転時間情報取得工程と、結露防止運転要否判定工程でエレベータの結露防止運転が必要であると結露防止運転要否判定装置が判定する場合に、結露防止運転時間情報取得工程で取得した結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけエレベータが結露防止運転を行う結露防止運転工程とを備え、結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置は、複数の温度情報のそれぞれについて、結露防止運転時間情報と上昇温度情報とを対応させて記憶している。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエレベータシステムによれば、エレベータと、外部からエレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置とを備え、エレベータは、結露防止運転要否判定装置の判定結果に基づいて、結露防止運転を行うので、エレベータの温度が露点温度に近づいた場合に、結露防止運転要否判定装置は、エレベータの結露防止運転が必要であると判定し、エレベータが結露防止運転を行う。その結果、エレベータに結露が発生することを抑制することができる。
【0009】
この発明に係るエレベータ結露防止方法によれば、結露防止運転要否判定装置が、外部からエレベータが設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータの結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定工程と、結露防止運転要否判定工程でエレベータの結露防止運転が必要であると結露防止運転要否判定装置が判定する場合に、エレベータが結露防止運転を行う結露防止運転工程とを備えているので、エレベータの温度が露点温度に近づいた場合に、結露防止運転要否判定装置は、エレベータの結露防止運転が必要であると判定し、エレベータが結露防止運転を行う。その結果、エレベータに結露が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータシステムを示す構成図である。
図2図1の結露防止運転制御システムの動作を示すフローチャートである。
図3図1のエレベータおよびエレベータ監視装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るエレベータシステムを示す構成図である。図において、エレベータシステムは、複数のエレベータ1と、それぞれのエレベータ1に1つずつ設けられ、エレベータ1を監視する複数のエレベータ監視装置2と、それぞれのエレベータ監視装置2との間で通信を行う結露防止運転要否判定装置3と、ビルデータベース(地域特定情報エレベータ特定情報記憶装置)4と、温度上昇指標データベース(結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置)5とを備えている。
【0012】
結露防止運転要否判定装置3は、天気情報サービスセンタ(外部)6から、それぞれのエレベータ1が設置されている地域における温度を示す温度情報および相対湿度を示す相対湿度情報を取得する。結露防止運転要否判定装置3による温度情報および相対湿度情報の取得は、予め設定されたタイミング、この例では、10分ごとに行われる。
【0013】
それぞれのエレベータ1は、かごを昇降させる巻上機11と、巻上機11の駆動を制御するエレベータ制御盤12とを有している。巻上機11およびエレベータ制御盤12は、機械室(図示せず)に設けられている。エレベータ監視装置2は、エレベータ制御盤12に接続されている。それぞれのエレベータ1は、通常運転と結露防止運転とを切り換えて行うようになっている。エレベータ1の結露防止運転は、巻上機11が低速運転を行い、さらに、巻上機11が巻上機ブレーキ(図示せず)によって制動されることによって行われる。巻上機11の低速運転とは、通常運転よりも遅い速度での運転であり、この例では、手動速度(15m/mim)による運転である。巻上機11が低速運転を行うことによって、巻上機11のモータにかかる負荷量が通常運転の場合よりも増大するので、巻上機11の発熱量が通常運転の場合よりも大きくなる。また、巻上機ブレーキによって巻上機11が制動されることによって、巻上機11の発熱量が通常運転の場合よりも大きくなる。したがって、エレベータ1が結露防止運転を行うことによって、巻上機11の温度が上昇し、これにより、機械室の温度が上昇して、機械室に設置されている機器の温度が上昇する。言い換えれば、エレベータ1が結露防止運転を行うことによって、エレベータ1の温度が上昇する。
【0014】
ビルデータベース4は、複数のエレベータ1のそれぞれが設置されている地域を特定する地域特定情報と、それぞれのエレベータ1を特定するエレベータ特定情報とを対応させて記憶している。
【0015】
温度上昇指標データベース5は、エレベータ1が行う結露防止運転の時間である結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と、結露防止運転時間だけエレベータ1が結露防止運転を行うことによる巻上機11の上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶している。
【0016】
エレベータ1の温度の違いによって、結露防止運転時間とエレベータ1の上昇温度との関係が異なる。したがって、温度上昇指標データベース5は、複数の温度情報のそれぞれについて、結露防止運転時間情報と上昇温度情報とを対応して記憶している。
【0017】
複数のエレベータ1のそれぞれは、機種、巻上機型およびかご重量の違いによって、結露防止運転時間とエレベータ1の上昇温度との関係が異なる。したがって、温度上昇指標データベース5は、複数のエレベータ1のそれぞれについて、結露防止運転時間情報と上昇温度情報とを対応して記憶している。
【0018】
また、結露防止運転要否判定装置3は、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出する。また、結露防止運転要否判定装置3は、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する。
【0019】
具体的には、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1が設置されている地域における温度と露点温度との差が予め設定された値、この例では、3℃以下である場合に、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定し、エレベータ1が設置されている地域における温度と露点温度との差が予め設定された値、この例では、3℃よりも大きい場合に、エレベータ1の結露防止運転の必要がないと判定する。結露防止運転要否判定装置3によるエレベータ1の結露防止運転の要否の判定は、結露防止運転要否判定装置3が温度情報および相対湿度情報を取得するたびに行われる。
【0020】
また、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定する場合に、結露防止運転が必要であると判定されたエレベータ1が設置されている地域を特定する地域特定情報に対応するエレベータ特定情報をビルデータベース4から取得する。また、結露防止運転要否判定装置3は、ビルデータベース4からエレベータ特定情報を取得する場合に、エレベータ特定情報によって特定されるエレベータ1を監視するエレベータ監視装置2に対して、結露防止運転指令を送信する。
【0021】
また、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定する場合に、露点温度情報と温度情報とを用いて、必要なエレベータ1の上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出する。また、結露防止運転要否判定装置3は、算出した必要上昇温度情報に対応する結露防止運転時間情報を温度上昇指標データベース5から取得する。また、結露防止運転要否判定装置3は、温度上昇指標データベース5から結露防止運転時間情報を取得する場合に、エレベータ特定情報によって特定されるエレベータ1を監視するエレベータ監視装置2に対して、結露防止運転時間情報を送信する。
【0022】
また、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定する場合であっても、現在から予め設定された時間だけ遡った間、この例では、過去1時間以内に、結露防止運転要否判定装置3が結露防止運転指令および結露防止運転時間情報を送信している場合には、さらなる結露防止運転指令および結露防止運転時間情報の送信を停止する。過剰な結露防止運転を防止するためである。
【0023】
エレベータ監視装置2は、結露防止運転要否判定装置3から結露防止運転指令および結露防止運転時間情報を受信する場合であって、エレベータ1が待機状態である場合に、エレベータ監視装置2が監視するエレベータ1に結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけ結露防止運転を行わせる。また、エレベータ監視装置2は、結露防止運転が完了した場合に、結露防止運転要否判定装置3に対して、結露防止運転が完了した旨を示す結露防止運転完了通知を送信する。
【0024】
また、エレベータ監視装置2は、結露防止運転要否判定装置3から結露防止運転指令および結露防止運転時間情報を受信する場合であって、エレベータ1が運転状態である場合に、エレベータ1の運転状態が予め設定された時間、この例では、30分間を経過したか否かを判定する。エレベータ監視装置2は、エレベータ1の運転状態が30分間を経過したとエレベータ監視装置2が判定する場合に、結露防止運転要否判定装置3に対して、結露防止運転が完了した旨を示す結露防止運転完了通知を送信する。
【0025】
また、エレベータ1は、エレベータ1が結露防止運転を行っている時に、乗場呼びまたはかご呼びが登録された場合には、結露防止運転から通常運転に切り換わる。
【0026】
結露防止運転要否判定装置3、ビルデータベース4および温度上昇指標データベース5から結露防止運転制御システム7が構成されている。
【0027】
次に、結露防止運転制御システム7の動作について説明する。図2図1の結露防止運転制御システム7の動作を示すフローチャートである。まず、結露防止運転要否判定装置3は、天気情報サービスセンタ6からそれぞれのエレベータ1が設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出する(露点温度情報算出工程)(ステップS101)。
【0028】
その後、結露防止運転要否判定装置3は、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータ1が設置されている地域における温度と露点温度との差が3℃以下であるか否か、つまり、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する(結露防止運転要否判定工程)(ステップS102)。ステップS102で、エレベータ1が設置されている地域における温度と露点温度との差が3℃よりも大きいと結露防止運転要否判定装置3が判定すると、エレベータ1が結露防止運転を行う必要がないので、そのまま、結露防止運転制御システム7の動作が終了する。
【0029】
一方、ステップS102で、エレベータ1が設置されている地域における温度と露点温度との差が3℃以下であると結露防止運転要否判定装置3が判定すると、結露防止運転要否判定装置3は、結露防止運転が必要であると判定されたエレベータ1に対して、過去1時間以内に結露防止運転指令を送信したか否かを判定する(結露防止運転指令送信済判定工程)(ステップS103)。ステップS103で、過去1時間以内に結露防止運転指令を送信したと結露防止運転要否判定装置3が判定すると、結露防止運転が必要であると判定されたエレベータ1に対して結露防止運転指令を既に送信しているので、そのまま、結露防止運転制御システム7の動作が終了する。
【0030】
一方、ステップS103で、過去1時間以内に結露防止運転指令を送信していないと結露防止運転要否判定装置3が判定すると、結露防止運転要否判定装置3は、結露防止運転が必要であると判定されたエレベータ1について、必要なエレベータ1の上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、算出した必要上昇温度情報に対応する結露防止運転時間情報を温度上昇指標データベース5から取得する(結露防止運転時間情報取得工程)(ステップS104)。
【0031】
その後、結露防止運転要否判定装置3は、結露防止運転が必要であると判定されたエレベータ1を監視するエレベータ監視装置2に対して、結露防止運転指令および結露防止運転時間情報を送信する(結露防止運転指令送信工程、結露防止運転時間情報送信工程)(ステップS105)。
【0032】
その後、結露防止運転要否判定装置3は、結露防止運転指令を送信したエレベータ監視装置2から送信された結露防止運転完了通知を受信したか否かを判定する(結露防止運転完了判定工程)(ステップS106)。ステップS106で、結露防止運転指令を送信したエレベータ監視装置2から送信された結露防止運転完了通知をまだ受信していないと結露防止運転要否判定装置3が判定すると、まだ、結露防止運転が完了していないので、ステップS106を繰り返す。一方、ステップS106で、結露防止運転指令を送信したエレベータ監視装置2から送信された結露防止運転完了通知を受信したと結露防止運転要否判定装置3が判定すると、結露防止運転が完了しているので、結露防止運転制御システム7の動作が終了する。
【0033】
次に、エレベータ1およびエレベータ監視装置2における結露防止運転を行う場合の動作について説明する。図3図1のエレベータ1およびエレベータ監視装置2の動作を示すフローチャートである。まず、エレベータ1が停止中で、乗場呼びおよびかご呼びの何れも登録されていない状態、つまり、エレベータ1の待機状態が2分以上経過した否かについてエレベータ監視装置2が判定する(待機状態判定工程)(ステップS201)。
【0034】
ステップS201で、待機状態が2分以上経過したとエレベータ監視装置2が判定すると、エレベータ1は、さらに10秒間だけ待機した後、20秒間だけ結露防止運転を行う(結露防止運転工程)(ステップS202)。
【0035】
その後、エレベータ監視装置2は、エレベータ1が結露防止運転を行う時間が結露防止運転時間を経過したか否か、つまり、結露防止運転が完了したか否かを判定する(結露防止運転完了判定工程)(ステップS203)。ステップS203で、エレベータ1が結露防止運転を行う時間が結露防止運転時間を経過していないとエレベータ監視装置2が判定すると、まだ、結露防止運転が完了していないので、ステップS201に戻る。
【0036】
一方、ステップS203で、エレベータ1が結露防止運転を行う時間が結露防止運転時間を経過したとエレベータ監視装置2が判定すると、エレベータ1は結露防止運転から通常運転に切り換わり(切換工程)(ステップS204)、エレベータ監視装置2は、結露防止運転要否判定装置3に対して結露防止運転完了通知を送信し、(結露防止運転完了情報送信工程)(ステップS205)、エレベータ1およびエレベータ監視装置2における結露防止運転の動作が終了する。
【0037】
一方、ステップS201で、待機状態が2分以上経過していないとエレベータ監視装置2が判定すると、エレベータ監視装置2は、運転状態が30分以上経過したか否か、つまり、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する(結露防止運転要否判定工程)(ステップS206)。ステップS206で、運転状態が30分以上経過していないとエレベータ監視装置2が判定すると、ステップS201に戻る。一方、ステップS206で、運転状態が30分以上経過したとエレベータ監視装置2が判定すると、エレベータ1が通常運転によって発熱し、エレベータ1の結露防止運転が必要ではなくなるので、ステップS204に進む。
【0038】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るエレベータシステムによれば、エレベータ1と、天気情報サービスセンタ6からエレベータ1が設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置3とを備え、エレベータ1は、結露防止運転要否判定装置3の判定結果に基づいて、結露防止運転を行うので、エレベータ1の温度が露点温度に近づいた場合に、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定し、エレベータ1が結露防止運転を行う。その結果、エレベータ1に結露が発生することを抑制することができる。
【0039】
また、このエレベータシステムは、複数のエレベータ1のそれぞれが設置されている地域を特定する地域特定情報とそれぞれのエレベータ1を特定するエレベータ特定情報とを対応させて記憶するビルデータベース4を備え、結露防止運転要否判定装置3は、地域特定情報によって特定される地域ごとに、温度情報および相対湿度情報を取得してエレベータ1の結露防止運転の要否を判定し、それぞれのエレベータ1は、そのエレベータ1を特定するエレベータ特定情報に対応する地域特定情報によって特定される地域についての結露防止運転要否判定装置3の判定結果に基づいて、結露防止運転を行うので、複数のエレベータ1について、それぞれのエレベータ1が設置されている地域ごとに、結露防止運転を行わせることができる。
【0040】
また、このエレベータシステムは、結露防止運転時間を示す結露防止運転時間情報と結露防止運転時間だけエレベータ1が結露防止運転を行うことによるエレベータ1の上昇温度を示す上昇温度情報とを対応させて記憶する温度上昇指標データベース5を備え、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定する場合に、露点温度情報と温度情報とを用いて、必要なエレベータ1の上昇温度を示す必要上昇温度情報を算出し、エレベータ1は、結露防止運転要否判定装置3によって算出された必要上昇温度情報に対応する結露防止運転時間情報が示す結露防止運転時間だけ結露防止運転を行うので、エレベータ1は、必要な時間だけ結露防止運転を行うことができる。
【0041】
また、温度上昇指標データベース5は、複数の温度情報のそれぞれについて、結露防止運転時間情報と上昇温度情報とを対応して記憶するので、エレベータ1が設置されている地域の温度に対応して、エレベータ1は、必要な時間だけ結露防止運転を行うことができる。
【0042】
エレベータ1の結露防止運転は、巻上機11の低速運転によって行われるので、新たな機器をエレベータ1に追加することなく、巻上機11に結露が発生することを抑制することができる。
【0043】
また、この発明の実施の形態1に係るエレベータ結露防止方法によれば、結露防止運転要否判定装置3が、天気情報サービスセンタ6からエレベータ1が設置されている地域における温度情報および相対湿度情報を取得し、取得した温度情報および相対湿度情報を用いて露点温度情報を算出し、算出した露点温度情報と温度情報とを用いて、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定工程と、結露防止運転要否判定工程でエレベータ1の結露防止運転が必要であると結露防止運転要否判定装置3が判定する場合に、エレベータ1が結露防止運転を行う結露防止運転工程とを備えているので、エレベータ1の温度が露点温度に近づいた場合に、結露防止運転要否判定装置3は、エレベータ1の結露防止運転が必要であると判定し、エレベータ1が結露防止運転を行う。その結果、エレベータ1に結露が発生することを抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態1では、温度と露点温度との差が予め設定された値以下である場合にエレベータ1の結露防止運転が必要であると判定し、温度と露点温度との差が予め設定された値よりも大きい場合にエレベータ1の結露防止運転の必要がないと判定する結露防止運転要否判定装置3の構成について説明したが、これに限らず、例えば、現在の温度と露点湿度との差と、所定時間前の温度と露点湿度との差との間の変化率を用いて、エレベータ1の結露防止運転の要否を判定する結露防止運転要否判定装置3であってもよい。具体的には、現在の温度と露点湿度との差と、所定時間前の温度と露点湿度との差との間の変化率が予め設定された値よりも小さい場合には、温度と露点温度との差に変化がないので、エレベータ1の結露防止運転の必要がないと結露防止運転要否判定装置3が判定し、所定時間前の温度と露点湿度との差との間の変化率が予め設定された値以上である場合には、温度と露点温度との差の変化が大きく、温度が露点温度に近づいているので、エレベータ1の結露防止運転が必要であると結露防止運転要否判定装置3が判定する。
【符号の説明】
【0045】
1 エレベータ、2 エレベータ監視装置、3 結露防止運転要否判定装置、4 ビルデータベース(地域特定情報エレベータ特定情報記憶装置)、5 温度上昇指標データベース(結露防止運転時間情報上昇温度情報記憶装置)、6 天気情報サービスセンタ(外部)、7 結露防止運転制御システム、11 巻上機、12 エレベータ制御盤。
図1
図2
図3