特許第6049561号(P6049561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049561
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】燃焼プレート
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/02 20060101AFI20161212BHJP
   F23D 14/14 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F23D14/02 C
   F23D14/14 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-145576(P2013-145576)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17759(P2015-17759A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−042616(JP,A)
【文献】 実開平01−129531(JP,U)
【文献】 実開昭63−134221(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/02
F23D 14/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスを噴出する多数の炎孔をプレート本体に形成した燃焼プレートであって、
前記プレート本体には炎孔が存在しない無炎孔部が設けられ、
前記無炎孔部で囲われる前記プレート本体の各領域に複数の炎孔からなる炎孔群が配置され、
前記炎孔群間では前記炎孔の孔径は相違するが、前記各炎孔群は同じ孔径の炎孔からなり、
前記各炎孔群をなす前記炎孔の孔径が大きいほど、前記炎孔群における前記炎孔間の間隔が大きくなるように配置され
最大燃焼時において前記燃焼ガスが前記炎孔群を構成する各炎孔を通過する際の合計抵抗が、各前記炎孔群において同一であることを特徴とする燃焼プレート。
【請求項2】
前記無炎孔部は格子状に設けられ、前記格子状の辺を構成する前記無炎孔部を隔てて隣り合う前記炎孔群間において、前記炎孔群をなす前記炎孔の孔径が異なることを特徴とする請求項1に記載の燃焼プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼プレート、特に、プレート本体に多数の炎孔が形成された燃焼プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、給湯用や暖房用などの熱源機に設けられる全一次燃焼式バーナには、セラミック製のプレート本体に多数の炎孔が形成された燃焼プレートが用いられている。
【0003】
この種の燃焼プレートでは、火炎の共振を抑制して騒音を低減するために、様々な工夫がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、1つの大炎孔を隣り合う4つの小炎孔の中心に位置させ、且つ、それぞれの小炎孔を4つの中炎孔の中心に位置させるようにして、多数の大中小の炎孔を配置させた燃焼プレートが記載されている。このものでは、振動エネルギーの大きな大炎孔の火炎が、振動数及び振動エネルギーが中程度の中炎孔の火炎による干渉によって減衰される。また、同様に、中炎孔の火炎の振動エネルギーは、小炎孔の火炎による干渉によって減衰される。
【0005】
また、特許文献2には、多数の小炎孔を、主火炎を形成する主炎グループ、主火炎の周囲に小さな袖火群を形成する第1袖火グループ、及び、各主火炎並びに第1袖火グループを取り囲む袖火列を形成する第2袖火グループに区画した燃焼プレートが記載されている。このものでは、各炎孔のグループ毎の炎孔数が相違するので、各炎孔のグループ毎の火炎の共振周波数が相違し、燃焼共鳴の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−147434号公報
【特許文献2】特開平6−147435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された燃焼プレートでは、大炎孔に熱量が集まりやすく、逆火が発生しやすい。
【0008】
特許文献2に記載された燃焼プレートでは、グループ毎の集合火炎ではなく個々の炎孔で火炎が形成される状態では、火炎が共振しやすい。
【0009】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、火炎の共振と逆火を防止することが可能な燃焼プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明は、燃焼ガスを噴出する多数の炎孔をプレート本体に形成した燃焼プレートであって、前記プレート本体には炎孔が存在しない無炎孔部が設けられ、前記無炎孔部で囲われる前記プレート本体の各領域に複数の炎孔からなる炎孔群が配置され、前記炎孔群間では前記炎孔の孔径は相違するが、前記各炎孔群は同じ孔径の炎孔からなり、前記各炎孔群をなす前記炎孔の孔径が大きいほど、前記炎孔群における前記炎孔間の間隔が大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、孔径が相違する炎孔からなる複数の炎孔群を有するので、各々の炎孔群の燃焼による火炎の固有振動数が異なるため、火炎の干渉による共振を防止することができる。また、逆火が発生しやすい孔径の大きい炎孔ほど、その間隔が大きいので、炎孔間の燃焼プレート表面の過熱を防止でき、逆火の発生を防止することができる。
【0012】
本発明において、前記無炎孔部は格子状に設けられ、前記格子状の辺を構成する前記無炎孔部を隔てて隣り合う前記炎孔群間において、前記炎孔群をなす前記炎孔の孔径が異なることが好ましい。
【0013】
この場合、火炎の干渉による共振をより効果的に防止することができる。
【0014】
本発明において、最大燃焼時において前記燃焼ガスが前記炎孔群を構成する各炎孔を通過する際の合計抵抗が、各前記炎孔群において同一である。
【0015】
これにより、最大燃焼時において各炎孔群の燃焼ガスの合計通過抵抗が同一であるので、各炎孔群の集合炎孔として燃焼ガスの噴出量を同一にすることが可能となる。これにより、各炎孔群の火炎の高さが同一となって、燃焼器をコンパクト化しても、長い火炎のみが熱交換器等に触れるなどによる燃焼不良の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る燃焼プレートを備えた燃焼装置の断面図。
図2】燃焼プレートの一部を示す上面図。
図3】(a)は小炎孔群、(b)は中炎孔群、(c)は大炎孔群をそれぞれ示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る燃焼プレート10を備えた燃焼装置20について説明する。
【0018】
図1を参照して、燃焼装置20は、上方に給湯用熱交換器等の被加熱物(図示せず)が配置される燃焼筐21と、燃焼筐21内に配置された全一次燃焼式のバーナ22とを備えている。
【0019】
燃焼筐21の前板21aには、図示しないが、点火プラグ、及びフレームロッド等の火炎検知素子が取り付けられている。また、燃焼筐21内には、バーナ22の配置部に対し仕切り板23で仕切られた下部の給気室24が設けられている。
【0020】
仕切り板23は、バーナ22を支持する下板部23aと、バーナ22の下部前面に取り付けられ、給気室24の前部から立上る一次空気室25を画成するダンパ兼用の前板部23bとから構成されている。そして、前板部23bの上端には、一次空気室25の天面となる前方に屈曲する庇部23cと、庇部23cの前端から上方に屈曲して前板21aの後面下部に接合するフランジ部23dとが形成されている。
【0021】
そして、燃焼筐21の底板21bには、燃焼ファン26の送風ダクトを接続する接続口21cが開設されており、給気室24に燃焼ファン26からの空気が送風されるように構成されている。
【0022】
バーナ22は、仕切り板23の下板部23aに着座する下面の脚部22aと燃焼筐21の後板21dに当接する後面のスペーサ部22bとを突設した箱形のバーナ本体27を備えている。バーナ本体27の上面には、多数の炎孔12(図2参照)を有するセラミックス製の燃焼プレート10が装着されている。このように、バーナ22はプレート型バーナとして構成されている。
【0023】
ここで、燃焼プレート10は、その上面周縁部に上方から当接する押え枠28によりバーナ本体27に対し抜け止めされる。そして、バーナ本体27の外側面に、燃焼プレート10より下方に位置させて、全周に亘るフランジ部27aを突設し、押え枠28をこのフランジ部27aに固定している。
【0024】
また、バーナ本体27の前面下部には、これに取り付けられる仕切り板23の前板部23bに形成した開口21eを通して、一次空気室25に連通する流入口27bが開設されている。
【0025】
そして、バーナ本体27内に、流入口27bから後方にのびる下部の混合室29と、混合室29の上面板29aの後部に形成した開口29bを介して混合室29に連通する上部の分布室31とが設けられている。分布室31内には、これを上下2室に区画する分布板31aが設けられており、分布板31aに多数の分布孔を形成して、燃焼プレート10と分布板31aとの間の分布室31の部分の圧力分布が均一化されるようにしている。
【0026】
一次空気室25の前面はガスマニホールド32で閉塞されており、このガスマニホールド32に流入口27bに臨むガスノズル32aを設けている。このようにして、バーナ22の混合室29にガスノズル32aからの燃料ガスと共に一次空気室25から一次空気が流入し、混合室29内で燃料ガスと一次空気とが混合されて理論空燃比より燃料ガス濃度が希薄な混合気が生成され、この混合気が分布室31を介して燃焼プレート10の炎孔から噴出して全一次燃焼される。
【0027】
以下、燃焼プレート10について説明する。
【0028】
図2を参照して、燃焼プレート10は、セラミック製のプレート本体11に多数の炎孔12を形成して成るものであり、燃焼ガス(予混合ガス)がこれら炎孔12から噴出して全一次燃焼する。なお、簡略化のため、図1では、炎孔12は省略されている。
【0029】
プレート本体11には、炎孔12が存在せず、格子状に設けられた無炎孔部13と、無炎孔部13で囲われ、複数の炎孔12からなる炎孔群14が配置される領域15とから構成されている。ここでは、無炎孔部13は菱形の格子状であり、各領域15は菱形となっている。
【0030】
各領域15には、同じ孔径Dの複数の炎孔12からなる炎孔群14が配置されている。そして、格子状の辺を構成する無炎孔部13を隔てて隣り合う炎孔群14間において、炎孔群14をなす炎孔12の孔径Dは異なっている。
【0031】
ここでは、炎孔群14は、3種類の炎孔群14a,14b,14cに区別される。そして、図3を参照して、小炎孔群14aに属する小炎孔12aの孔径Da、中炎孔群14bに属する中炎孔12bの孔径Db、大炎孔群14cに属する大炎孔12cの孔径Dcは、Da<Db<Dcの関係となっている。そして、小炎孔群14aに属する小炎孔12a間の間隔Ta、中炎孔群14bに属する中炎孔12b間の間隔Tb、大炎孔群14cに属する大炎孔12c間の間隔Tcは、Ta<Tb<Tcの関係となっている。
【0032】
これに応じて、小炎孔群14aに属する小炎孔12aの個数Na、中炎孔群14bに属する中炎孔12bの個数Nb、大炎孔群14cに属する大炎孔12cの個数Ncは、Na>Nb>Ncの関係となっている。なお、間隔Tとは、炎孔12の間に存在する炎孔12が形成されていない領域の最小距離を意味する。
【0033】
一例として、小炎孔12aの孔径Daは1.00mm、小炎孔12a間の間隔Taは1.00mm、小炎孔群14aに属する小炎孔12aの個数Naは25個、中炎孔12bの孔径Dbは1.25mm、中炎孔12b間の間隔Tbは1.25mm、中炎孔群14bに属する中炎孔12bの個数Nbは16個、大炎孔12cの孔径Dcは1.67mm、大炎孔12c間の間隔Tcは1.67mm、大炎孔群14cに属する大炎孔12cの個数Ncは9個である。そして、無炎孔部13の幅は2mmである。
【0034】
なお、同じ炎孔群14に属する炎孔12間の間隔Tが全て同じである場合を例に挙げたが、これに限定されない。小炎孔群14aに属する小炎孔12a間の最大間隔が中炎孔群14bに属する中炎孔12b間の最小間隔よりも狭く、中炎孔群14bに属する中炎孔12b間の最大間隔が大炎孔群14cに属する大炎孔12c間の最小間隔よりも狭ければよい。
【0035】
本実施形態によれば、燃焼プレート10は孔径Dが相違する炎孔12からなる3種類の炎孔群14(14a,14b,14c)を有する。よって、各炎孔群14からなる集合炎孔で形成される火炎の固有振動数が異なるため、その干渉による共振を防止することができると共に、各炎孔群14の個々の炎孔12で火炎が形成される状態での火炎の干渉による共振を防止することができる。
【0036】
さらに、逆火が発生しやすい孔径Dの大きい炎孔12ほど、炎孔12間の間隔Tが広いので、逆火の発生を防止することができる。詳細に説明すると、間隔Taが狭い小炎孔12aが先に赤熱して、小炎孔12aの通過抵抗が増大する。これにより、大炎孔12cを通過する燃焼ガスが増加するので、噴出速度が大きくなり、それにより燃焼プレート10の表面温度が低下し大炎孔12cは赤熱し難くなるため、逆火が発生しやすい大炎孔12cでの逆火の発生を防止することができる。
【0037】
さらに、最大燃焼時において燃焼ガスが炎孔群14を構成する各炎孔12を通過する際の合計抵抗が、各炎孔群14において同一であるように、各炎孔12の孔径D、炎孔群14を構成する炎孔12の個数Nを定めることが好ましい。これにより、各炎孔群14で形成される集合火炎の高さが同一となって、長い火炎のみが熱交換器等に触れるなどによる燃焼不良の不具合を防止することができる。
【0038】
なお、各炎孔群14における前記合計抵抗は、厳密に同一でなくてもよく、実験やシミュレーション等で燃焼不良が生じない限度に当業者が設定可能な範囲内であればよい。また、前記合計抵抗を同一とするために、燃焼プレート10の裏面を切削して、炎孔12の長さを調整してもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上述した実施形態では、無炎孔部13は菱形の格子状であり、各領域15は菱形となっている。しかし、無炎孔部13の格子形状は、菱形に限定されず、三角形、矩形、六角形等の形状であってもよい。
【0040】
また、実施形態では、炎孔群14が3種類に区別されている。しかし、炎孔群14は、格子状の辺を構成する無炎孔部13を隔てて隣り合う炎孔群14間で相違していればよく、2種類又は4種類以上に区別されていてもよい。なお、炎孔群14を区別する種類の数は、上述した無炎孔部13は格子の形状に応じて変化する。例えば、無炎孔部13の格子形状が六角形である場合には、最低3種類に区別される必要がある。
【0041】
さらに、本発明は、炎孔群14は、格子状の辺を構成する無炎孔部13を隔てて隣り合う炎孔群14間で相違する場合に限定されず、同一であってもよい。ただし、同一である場合には、火炎の干渉による共振を防止する効果が小さくなる。
【符号の説明】
【0042】
10…燃焼プレート、 11…プレート本体、 12…炎孔、 12a…小炎孔、 12b…中炎孔、 12c…大炎孔、 13…無炎孔部、 14…炎孔群、 14a…小炎孔群、 14b…中炎孔群、 14c…大炎孔群、 15…領域、 20…燃焼装置、 21…燃焼筐、 22…バーナ、 23…仕切り板、 24…給気室、 25…一次空気室、 26…燃焼ファン、 27…バーナ本体、 29…混合室、 31…分布室、 32…ガスマニホールド。
図1
図2
図3