(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した加熱調理機器では、加熱調理を始める前に鉄板などの調理面を高温の状態に保温しておく使用実態がある。特に、飲食店などの厨房で業務用に使用される場合には、料理のオーダーが入ってから調理面を加熱し始めるのではオーダーから料理の提供までに時間がかかり過ぎることから、料理のオーダーが入った際にすぐに調理を開始できるように、営業時間は常時調理面を高温状態に保温しておくことがなされている。
【0005】
このため、比較的長時間調理面が高温に保たれている場合が多く、調理面から放射される輻射熱によって調理人の作業環境が悪化することが問題になっている。また、このような作業環境を改善するために空調によって厨房内の室温を下げることがなされており、大きな空調負荷によるエネルギー使用量の増大が問題になっている。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、調理時の使用性を悪化させること無く、調理面から放射される輻射熱の拡散を抑止すること、これによって、調理人の作業環境の快適性を向上させ、空調負荷の低減によってエネルギー使用量の削減を図ること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明による加熱調理機器は、以下の構成を少なくとも具備するものである。なお、以下の説明で、「前」又は「前方」とは、加熱調理機器に対して調理人が立って調理を行う側を指し、「後」又は「後方」とは、加熱調理機器に対して調理人が立って調理を行う側に対向する側を指す。また、「左右」とは、加熱調理機器の前側に立つ調理人からみた左右を指している。
【0008】
一様な調理面を有する加熱調理部を上部に備え、該加熱調理部の下方に該加熱調理部を加熱する熱源部を備え、前記加熱調理部の前方側に天板部を備える機器本体と、前記機器本体における前記加熱調理部の前方側に配備され、
前記調理面を常時開放した状態で、上下に折り畳み・展開自在に配置される遮熱体と、前記機器本体における前記加熱調理部の前方に配備され、前記遮熱体を展開状態にて支持する支柱部とを備えることを特徴とする加熱調理機器。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する加熱調理機器によると、加熱調理部を使用する調理時には遮熱体を折り畳み状態にし、加熱調理部を保温する際には、遮熱体を展開状態にすることができるので、調理時の使用性を悪化させること無く、加熱調理部の調理面からの輻射熱が機器本体の前方に拡散するのを抑止することができる。これによって、調理人の作業環境の快適性を向上させ、空調負荷の低減によってエネルギー使用量の削減を図ることができる。
【0010】
また、遮熱体は、加熱調理部の前方側で上下に折り畳み・展開自在に配置されているので、天板部に調味料などの物を置いた状態であってもそれに影響なく遮熱体の折り畳み・展開を行うことができる。これによって、天板部を物置スペースとして有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加熱調理機器を示した説明図である。加熱調理機器1は、機器本体10を備えている。機器本体10は、鉄板や網などによって形成される一様な調理面11Aを有する加熱調理部11を備え、その下方には加熱調理部11を加熱する図示省略した熱源部を備えている。熱源部は、ガスバーナー,ヒーター,炭などの固形燃料の載置部などで構成される。また、機器本体10には、加熱調理部11の前方側に天板部12が設けられ、加熱調理部11の後方側に排気部13が設けられている。排気部13は、機器本体10内に配置される熱源部の燃焼排気や加熱された空気を外部に排気するために必要に応じて設けられるものである。
【0013】
また、加熱調理機器1は、機器本体10における加熱調理部11の前方側に配備され、上下に折り畳み・展開自在に配置される遮熱体20と、機器本体10における加熱調理部11の前方に配備され、遮熱体20を展開状態にて支持する支柱部30とを備える。
図1(a)は遮熱体の展開状態を示しており、
図1(b)は遮熱体の折り畳み状態を示している。
【0014】
遮熱体20は、加熱調理部11の前方を遮熱する遮熱位置に設けられ、左右横方向に延びる線状の屈折部分を複数備えた板状部材によって構成することができる。この遮熱体20は、折り畳み・展開自在な一体の板状部材によって構成することもできるが、剛性の横長状部材を縦に屈折自在に連結することによって構成することもできる。遮熱体20の材質は遮熱機能を有するものであれば特に限定されない。また、
図1に示した例では、遮熱体20は、上部支持部材21と下部支持部材22とを備えており、上部支持部材21と下部支持部材22とを近接させることで、
図1(b)に示すように遮熱体20を折り畳み状態にし、上部支持部材21と下部支持部材22とを離間状態にすることで、
図1(a)に示すように、遮熱体20を展開状態にする。上部支持部材21には、遮熱体20を展開又は折り畳み状態にするための取っ手23が設けられている。
【0015】
図示の例では、遮熱体20は機器本体10の上面に対して略垂直に立てているが、遮熱体20を機器本体10の上面に対して斜めに傾けて配置することもできる。遮熱体20を調理面11A側に傾けることで、遮熱効果を高めることができる。
【0016】
支柱部30は、遮熱体20を展開状態で支持するものであり、
図1に示した例では、遮熱体20の左右端部をそれぞれ支持するように一対設けられている。支柱部30は、機器本体10の左右両側であり且つ加熱調理部11の前方側にそれぞれ立設されている。また、
図1に示した例では、支柱部30は上下に延びるガイドレール31を備えている。ガイドレール31は、遮熱体20の上部(上部支持部材21)を遮熱体20の展開位置と折り畳み位置でそれぞれ支持するものであり、遮熱体20の下部(下部支持部材22)を下端位置で保持するものである。ガイドレール31は上端が開放されており、この開放された上端から遮熱体20を脱着できるようになっている。このように遮熱体20を脱着できるようにすることで、ガイドレール31や遮熱体20を簡易に清掃することができるので、清掃性の向上を図ることができる。
【0017】
図2は、ガイドレールを備えた支柱部の形態例を示した説明図である。
図2に示した例では、ガイドレール31は、遮熱体20の高さを調整する係止部31A1,31A2,31A3,…を複数備えている。また、ガイドレール31は、遮熱体20の下部(下部支持部材22)を保持する係止部31Bを備えている。遮熱体20の高さを調整する係止部31A1,31A2,31A3,…は図示の例では3箇所設けているが、4箇所以上設けてもよい。
図2(a)に示すように、係止部31A1に上部支持部材21を係止することで、遮熱体20は最も高い展開状態に支持されることになり、
図2(b)に示すように、係止部31A2に上部支持部材21を係止することで、遮熱体20は中間的な高さで支持されることになる。
図2(c)に示すように、係止部31A3に上部支持部材21を係止することで、遮熱体20は折り畳み状態に支持されることになる。また、ガイドレール31は上端が開放されているので、
図2(d)に示すように、上部支持部材21及び下部支持部材22をガイドレール31から外すことで、遮熱体20を支柱部30から取り外すことができる。
【0018】
図3は、本発明の他の実施形態に係る加熱調理機器を示した説明図である。前述した実施形態と共通の部位には同一符号を付して重複説明を省略する。
図3(a)は遮熱体の展開状態を示しており、
図3(b)は遮熱体の折り畳み状態を示している。
【0019】
この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する支柱部30Aを備える。この支柱部30Aは、遮熱体20を折り畳むために傾倒自在に配備されている。すなわち、この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する際には支柱部30Aは機器本体10の上面に対して直立した状態で保持されており、遮熱体20を折り畳み状態にする際には、機器本体10の上面に形成されたスライドガイド24に沿って支柱部30Aの下端を後方にスライドさせて支柱部30Aを傾倒させることで、遮熱体20を折り畳む。図示の例では、遮熱体20の上部は前述した実施形態と同様に上部支持部材21によって支持されており、この上部支持部材21の左右両端部が支柱部30Aの上端部に軸支されている。
【0020】
図4は、本発明の他の実施形態に係る加熱調理機器を示した説明図である。前述した実施形態と共通の部位には同一符号を付して重複説明を省略する。
図4(a)は遮熱体の展開状態を示した正面図であり、
図4(b)は遮熱体の折り畳み状態を示した正面図である。また、
図4(c)は遮熱体の下部の着脱構造を示している。
【0021】
この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する支柱部30Bを備える。この支柱部30Bは、遮熱体20の中央部を支持し、遮熱体20を折り畳むために傾倒自在に配備されている。すなわち、この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する際には支柱部30Bは機器本体10の上面に対して直立した状態で保持されており、遮熱体20を折り畳み状態にする際には、機器本体10の上面に形成されたスライドガイド24Bに沿って支柱部30Bの下端を左右一方の方向にスライドさせて支柱部30Bを傾倒させることで、遮熱体20を折り畳む。図示の例では、遮熱体20の上部は前述した実施形態と同様に上部支持部材21によって支持されており、この上部支持部材21の中央部が支柱部30Bの上端部に軸支されている。
【0022】
図4(c)に示すように、遮熱体20の下部を支持する下部支持部材22は、機器本体10の上面に設けられる支持部25に支持されている。支持部25は、上端が開放されたL字状の係止部25Aを備えており、この係止部25Aに下部支持部材22が係止されることで、遮熱体20が機器本体10に保持されている。そして、
図4(c)に示すように下部支持部材22を係止部25Aから取り外すことで、機器本体10から遮熱体20を取り外すことができるようになっている。
【0023】
図5は、本発明の他の実施形態に係る加熱調理機器を示した説明図である。前述した実施形態と共通の部位には同一符号を付して重複説明を省略する。
図5(a)は遮熱体の展開状態を示した正面図であり、
図5(b)は遮熱体の折り畳み状態を示した正面図である。
【0024】
この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する支柱部30Cを備える。この支柱部30Cは、遮熱体20を折り畳むために機器本体10に対して収納自在に配備されている。すなわち、この実施形態に係る加熱調理機器1は、遮熱体20を展開状態で支持する際には支柱部30Cは機器本体10の上面に対して直立した状態で保持されており、遮熱体20を折り畳み状態にする際には、機器本体10内部の収納スペースに支柱部30Cを沈み込ませることで、遮熱体20を折り畳む。機器本体10の内部には支柱部30Cの大半部分を垂直に降下させるだけの深さを有する収納スペースが確保されているが、この収納スペースは平面的には支柱部30Cの断面相当のスペースであるため比較的小さなスペースでよい。図示の例では、遮熱体20の上部は前述した実施形態と同様に上部支持部材21によって支持されており、この上部支持部材21の左右両端が一対の支柱部30Cの上部に固定されている。
【0025】
図6及び
図7は、支柱部を機器本体に対して収納するための機構例を示した説明図である。
図6(a),(b)に示した例では、支柱部30Cは、その側面に出没自在な係止突起30C1を備えている。この係止突起30C1は、バネ30C2で外側に付勢されており、また下向きのテーパ面30C3を備えている。支柱部30Cが遮熱体20を展開状態で支持する際には、
図6(a)に示すように、機器本体10の係止凹部10Pに係止突起30C1を嵌め込むことで支柱部30Cは機器本体10に対して立設した状態で保持される。そして、支柱部30Cが下方に押し込まれると、
図6(b)に示すように、係止突起30C1のテーパ面30C3が支柱部30Cの収納スペース10Sの側面で押されることで、バネ30C2の付勢に抗して係止突起30C1が支柱部30C内に押し込まれ、支柱部30Cは収納スペース10S内に収納される。
【0026】
図7(a),(b)に示した例では、支柱部30Cの側方に固定した突起部30C4が設けられており、また、支柱部30Cの収納スペース10Sにはこの突起部30C4が嵌合する凹部10S1が設けられている。支柱部30Cが遮熱体20を展開状態で支持する際には、
図7(a)に示すように、突起部30C4を機器本体10の上面より上に上げて凹部10S1に嵌まらない位置にすることで、支柱部30Cは機器本体10に対して立設した状態で保持される。そして、
図7(b)に示すように、支柱部30Cを回転させて突起部30C4を凹部10S1に嵌合させることで、支柱部30Cを収納スペース10S内に収納させる。
【0027】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る加熱調理機器1は、加熱調理部11を高温で保温する際には、遮熱体20を展開状態に支持して、加熱調理部11からの輻射熱が前方に拡散するのを抑止することができる。これによって、加熱調理部11の輻射熱に直接調理人が曝されて調理人の作業環境が悪化するのを抑止することができる。また、このような作業環境の改善によって、厨房内の空調を過剰に行うことを避けることができるので、空調に使われる消費エネルギーを削減することができる。
【0028】
また、加熱調理機器1は、加熱調理部11を使って調理する場合には、遮熱体20を折り畳み状態にして遮熱体20の高さを調理面11Aの使用の邪魔にならない高さに下げることができるので、加熱調理部11の使用性を良好に確保することができる。また、遮熱体20は平面的には位置を変えること無く展開状態又は折り畳み状態に切り換えられるので、加熱調理部11の前方にある天板部12を調味料などの物置スペースとして使用する場合にも、天板部12上に置いた物に影響なく遮熱体20の展開と折り畳みを行うことができる。これによって、天板部12の上を調味料などの物置スペースとして広く有効活用することができる。
【0029】
加熱調理機器1の遮熱体20は、
図1に示した例のように、支柱部30に対して着脱自在に配備されている。これによって、調理面11Aを使用する際に遮熱体20を完全に取り除いて障害無く調理を行うことができる。また、支柱部30に対して遮熱体20を取り除いて、支柱部30のガイドレール31を開放することで、ガイドレール31内を簡易に清掃することが可能になる。
【0030】
加熱調理機器1の支柱部30,30A,30B,30Cは、機器本体10に対して着脱自在に配備することができる。これによると、遮熱体20を支柱部30,30A,30B,30Cごと機器本体10から取り外すことができるので、調理面11Aを広く開放して使用することが可能になる。支柱部30,30A,30B,30Cを機器本体10から取り外すことで、加熱調理部11が形成される機器本体10の上部をフラットにすることができ、加熱調理部11周辺の清掃を簡易に行うことが可能になる。
【0031】
図2に示した例だけでなく、その他の実施形態においても加熱調理機器1の遮熱体20の高さは最大高さ以下であれば任意の高さに調整することができる。これによって、調理面11Aを保温する温度に応じて遮熱体20の高さを調整することができ、調理面11Aの使用時に速やかに遮熱体20を折り畳んで調理面11Aを開放状態にすることができる。
【0032】
図1〜
図4に示した例では、遮熱体20の折り畳みは、機器本体10の上でなされており、機器本体10の内部スペースは、遮熱体20の展開・折り畳みに何ら関与しない。これによって、機器本体10内に配置される熱源部などを所望のレイアウトで配置することができ、また、機器本体10内や機器本体10より下のスペースを各種の収納スペースなどとして効果的に利用することができる。
【0033】
図5に示した例は、遮熱体20を折り畳む際に機器本体10の内部に支柱部30Cを収納させる。しかしながら、機器本体10内部におけるこの収納スペースは平面的には支柱部30Cの断面相当のスペースであるため比較的小さなスペースでよい。これによって、機器本体10内に配置される熱源部などを所望のレイアウトで配置することができ、また、機器本体10内や機器本体10より下のスペースを各種の収納スペースなどとして効果的に利用することができる。
【0034】
なお、前述した各実施形態においては、遮熱体20を加熱調理部11の前方のみに配置しているが、これに限らず、加熱調理部11の側方を囲むように遮熱体20を配置することもできる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。