(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、前記ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備し、前記動翼列と静翼列とを交互に対向配置してなる、地熱タービンであって、
前記複数の静翼列のうち、初段静翼列を冷熱媒体との熱交換により冷却する冷却部と、
前記初段静翼よりも後段側の静翼列を前記冷熱媒体との熱交換により加熱する加熱部と、
前記冷却部と前記加熱部との間を冷熱媒体が循環する冷熱媒体循環部と、
を備えたことを特徴とする地熱タービン。
前記初段静翼列を冷却する冷却部は、前記初段静翼列におけるそれぞれの静翼内に前記冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路からなる、ことを特徴とする請求項1記載の地熱タービン。
前記後段側の静翼列を加熱する加熱部は、前記静翼列におけるそれぞれの静翼内に前記冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路からなる、ことを特徴とする請求項1記載の地熱タービン。
前記冷熱媒体循環部における前記冷却部から前記加熱部に至る冷熱媒体往路に減圧膨張部が介在され、前記冷却部からの冷熱媒体を減圧して減圧後の冷熱媒体の気相分を前記加熱部に供給して凝縮させる一方、減圧後の冷熱媒体の液相分を、前記加熱部から前記冷却部に至る冷熱媒体復路に合流させるようにした、ことを特徴とする請求項1記載の地熱タービン。
【背景技術】
【0002】
近年、地熱エネルギーの利用として、例えば
図10に示す地熱発電システム1があり、かかる地熱発電システム1は、地下深部の熱源により熱水を発生する生産井2と、生産井2から地上まで導いて沸騰した熱水を、蒸気と分離させるセパレータ3を具備する。
また地熱発電システム1は、セパレータ3で分離された熱水を戻す還元井4と、分離された蒸気により回転する地熱タービン5と、地熱タービン5に接続の発電機6とを具備する。
さらに、地熱発電システム1は、地熱タービン5を通過した蒸気を温水化する復水器7と、温水を冷却する冷却塔8とを具備する。
【0003】
また、
図11に地熱発電システム1に用いられる地熱タービン5としての蒸気タービンの一例を示す。
この蒸気タービン5は、例えば、周知の軸流式蒸気タービンであり、ロータシャフト5a側に動翼5bとケーシング5c側に固定された静翼(ノズル)5dとが、多段的に交互に対向するように列設されている。ロータシャフト5aには、発電機6のロータが連結されている。セパレータ3からの蒸気は、蒸気入口から初段静翼5dを通じて導入され、多段の動翼5b、静翼5d間を膨張しながら通過して蒸気排出口から放出され、運動エネルギーにより動翼5bが回転してロータシャフト5aを回し、発電機6のロータを回転駆動させ、電力を取り出すようになっている。
【0004】
ところで、生産井から噴出する高温の熱水は、井戸水や河川水よりもカルシウムや溶存シリカを多く含むため、炭酸カルシウムや非晶質シリカなどのスケールを析出しやすい。特に地上部や還元井では、熱水が地上部で温度降下することにより発生するシリカスケールを抑制することが課題である。
【0005】
これまで、地熱発電用蒸気タービンのノズル(特に、初段静翼)に付着堆積したスケールを除去するものとしては、たとえば、特許文献1において開示されているものがある。
ここでは、円環状に必要な枚数だけ所定の角度に並べたノズル板のプロファイル内部に貫通した冷却水通路をもち、ノズル板を複数個並べて、全体を数個のブロックを構成させることとし、各ブロックにおいて、冷却水通路を冷却水接続管で接続して連通せしめ、冷却水供給管から冷却水を流し、冷部に、水排水管に戻すような構成としている。
【0006】
また、上述の蒸気タービン5では、蒸気が初段静翼から蒸気排出口寄りの後段側の静翼に膨張しながら流れるにつれ、湿り蒸気として通過するので、後段側の静翼には、湿り蒸気中の水滴により潰食(エロージョン)が生じ、静翼が損傷する。
このようなエロージョンによる損傷を回避するために、本出願人は、例えば特許文献2において開示しているように、動翼および静翼で構成されるタービン段の終段側動翼に湿り蒸気の衝突による腐食を防止するために、渇き蒸気導入管から乾き蒸気を最終段静翼の翼環の環状ポケットに導入するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、いずれも蒸気タービンにおける初段静翼の冷却機能および最終段の静翼に対する腐食現象を防止するための機能を兼ね備えたものは、開発されていない。
本発明は、上記背景から提案されたものであって、地熱タービンにおける初段静翼を冷熱媒体との熱交換作用により冷却し、さらに、この初段静翼の冷却に供した冷熱媒体を後段の静翼の加熱用として用いて、初段静翼へのスケール付着防止と共に、後段側の静翼の潰食防止を図った、地熱タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる本発明では、ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備し、動翼列と静翼列とを交互に対向配置してなる、地熱タービンであって、複数の静翼列のうち、初段静翼列を冷熱媒体との熱交換により冷却する冷却部と、初段静翼よりも後段側の静翼列を冷熱媒体との熱交換により加熱する加熱部と、冷却部と加熱部との間を冷熱媒体が循環する冷熱媒体循環部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、初段静翼では冷熱媒体との熱交換により、初段静翼が冷却され、次いで、冷熱媒体との熱交換により温度が上昇した冷熱媒体が後段側の静翼との熱交換により、後段側の静翼は加熱される。
これにより、初段静翼はタービン入口の高温熱が静翼に伝わりにくくしたことでスケールの付着は抑制され、後段側の静翼は加熱されて、湿り蒸気により静翼表面についた水滴を蒸発させて、後段側の動翼にエロージョンの発生が抑制される。
【0011】
また、請求項2にかかる本発明では、初段静翼列を冷却する冷却部は、初段静翼列におけるそれぞれの静翼内に冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路からなる、ことを特徴とする。
【0012】
これにより、初段静翼列におけるそれぞれの静翼内の冷熱媒体流路に、冷熱媒体を流すことで、冷熱媒体が静翼と直接接触し、タービン入口の高温熱を静翼に伝わりにくくすることができる。
【0013】
また、請求項3にかかる本発明では、初段静翼列を冷却する冷却部は、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に設けられた冷熱媒体流路からなる、ことを特徴とする。
【0014】
これにより、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に設けられた冷熱媒体流路に、冷熱媒体を流すことで静翼が間接的に熱交換により冷却される。
【0015】
また、請求項4記載の本発明では、後段側の静翼列を加熱する加熱部は、静翼列におけるそれぞれの静翼内に冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路からなる、ことを特徴とする。
【0016】
これにより、後段側の静翼内の冷熱媒体流路に冷熱媒体を流すことで、冷熱媒体流路を介して、冷熱媒体と静翼との熱交換作用により、静翼が加熱され、後段側の静翼表面に生じる湿り蒸気による水滴を蒸発させることができ、後段側の動翼にエロージョンが生じるのを阻止することができる。
【0017】
さらに、請求項5記載の本発明では、冷熱媒体循環部における冷却部から加熱部に至る冷熱媒体往路に減圧膨張部が介在され、冷却部からの冷熱媒体を減圧して減圧後の冷熱媒体の気相分を加熱部に供給して凝縮させる一方、減圧後の冷熱媒体の液相分を、加熱部から冷却部に至る冷熱媒体復路に合流させるようにした、ことを特徴とする。
【0018】
これにより、初段静翼において熱交換により初段静翼を冷却後、冷熱媒体は、減圧膨張部において減圧膨張される。すると、冷熱媒体は一部が蒸発して気相化する一方、一部は液相状態で加熱部から冷却部に至る冷熱媒体復路に戻される。
加熱部に送り込まれた気相状態の冷熱媒体は凝縮して液相に戻る。加熱部は冷熱媒体の凝縮により熱交換量を増加させることができ、後段側の静翼の加熱を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、初段静翼において熱交換により初段静翼が冷却されることで、冷熱媒体の熱エネルギーが失われて高温化しても、後段側の静翼との熱交換で静翼を加熱することで、冷熱媒体は再び温度が低下し、この冷熱媒体を初段静翼との熱交換により、初段静翼の冷却に供することができる。
このように、静翼冷却で失われるエネルギーを静翼加熱で還元することができるため、静翼冷却のみを行う手法に比較して、冷却効果の低下を抑制することができる。
さらに静翼加熱のみを行う場合、気相の凝縮により蒸気の低下は避けられないが、初段静翼と後段静翼との冷熱媒体の循環系統としたことで、熱損失が少ないため加熱蒸気を導入する必要がなく、効率に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0022】
図1に、本発明にかかる地熱タービンが用いられる地熱発電システム10の一実施形態を挙げ、添付の図面に基づいて説明する。
この地熱発電システム10は、地下深部の熱源により高温高圧の熱水を発生する生産井11と、高温高圧の熱水を地上まで導いて沸騰した熱水を、蒸気と分離させるセパレータ12と、セパレータ12で分離された熱水を戻す還元井13と、分離された蒸気により作動する地熱タービン14と、地熱タービン14に接続された発電機15と、地熱タービン14を通過した蒸気を温水化する復水器16と、温水を冷却する冷却塔17とを具備する。
【0023】
生産井11からセパレータ12へは、熱水取出し流路18を通じて熱水が取り出される。熱水取出し流路18には流量調節弁19が介在される。
【0024】
セパレータ12は例えばサイクロン型気水分離器であり、セパレータ容器上部側に蒸気、容器下部側に熱水を集めることで熱水から蒸気を分離するようにしている。セパレータ12で分離された蒸気は蒸気流路20を通じて地熱タービン14に送り込まれるようになっている。
なお、セパレータ12の容器下部側に集められた熱水は、還流路21を通じて還元井13に戻されるようになっている。
【0025】
地熱タービン14は、詳細は後述するが、例えば周知の軸流式蒸気タービン14が可能である。
【0026】
復水器16は、地熱タービン14を通過した蒸気を凝縮して温水化するもので、ここでは復水器16は、蒸気を凝縮するために冷却塔17で冷却された水を用いるようにしている。
【0027】
冷却塔17には、復水器16からの温水が、復水流路22を通じて介在されるポンプ23により導入されるようになっている。
冷却塔17は、復水器16からの温水を、冷却塔17内で送風機24により強制的に送り込んだ外気と接触させて冷却するようにしている。このとき、復水は一部が蒸発することで、蒸発潜熱で温水は、さらに効果的に冷却される。
【0028】
次に、地熱タービン14について、
図2に要部を示し、以下、説明する。
地熱タービン14は、ロータシャフト25側に突設された動翼26とケーシング27側に、翼取付部27bを介して固定された静翼28とが、多段的に交互に対向するように列設される構成としている。なお、動翼26は、ロータシャフト25の周方向に複数列設されて動翼列を構成し、また静翼28はケーシング27の内周側に翼取付部27bを介して周方向に複数列設されて静翼列を構成している。そして
図2では、動翼26及び静翼28は、それぞれ動翼列、静翼例の一部として示している。そこで、以下、動翼列、静翼例をそれぞれ動翼26及び静翼28として説明する。
かかる地熱タービン14において、蒸気は、蒸気入口29から、静翼28のうち、蒸気入口29寄りの初段静翼28aを通じて導入され、多段の動翼26、静翼28間を通過して蒸気排出口(図示省略)から放出される構成としている。
【0029】
(第1実施形態)
以上のような地熱タービン14は、
図3に示すように、初段静翼28aと、初段静翼28aよりも後段側の静翼28e(以下、後段静翼28e)との間で冷熱媒体を循環させる冷熱媒体循環部30を備える。
すなわち、地熱タービン14は、初段静翼28aに冷熱媒体との熱交換により冷却する冷却部31を備える。
また、初段静翼28aよりも後段静翼28eを冷熱媒体との熱交換により加熱する加熱部32を備える。
さらに、冷熱媒体循環部30は、初段静翼28aにおける冷却部31から後段静翼28eにおける加熱部32まで冷熱媒体を流す冷熱媒体往路30aと、後段静翼28eにおける加熱部32から初段静翼28aにおける冷却部31まで戻す、冷熱媒体復路30bとを有し、冷熱媒体復路30bには、冷熱媒体を強制的に循環させるポンプ33が介在されている。
【0030】
初段静翼28aを冷却する冷却部31は、初段静翼28aを支持する翼取付部27bの内部に設けられた冷熱媒体流路として、例えば連続的に周回する環状冷却部40が設けられる(
図2、
図3、
図4参照)。
ここでは、翼取付部27bはケーシング27の内周に固定された、ケーシング27とは別部材で構成される環状の外輪27bからなる。外輪27bの内部には環状冷却部40が設けられている。
また、外輪27bに支持される初段静翼列28aの内周側には内輪27iが設けられている。
そして、環状冷却部40は外輪27bに同心円状に、一回り周回する外輪環状冷却部40pとして構成されている。また、かかる外輪環状冷却部40pは、所定の位置に互いに近接配置した入口40pin、出口40poutを介して冷却水を冷熱媒体循環部30と循環させるようにしている。
【0031】
以上のような初段静翼28aを冷却する冷却部31において、蒸気入口29からの蒸気(例えば200℃以上)が接触通過することで加熱される初段静翼28aを、翼取付部27bにおける環状冷却部40に冷却水を流すことで熱交換により間接的に冷却するようにしている。
すなわち初段静翼28aでは、タービン入口の高温熱によって高温化して乾湿が繰り返されることでスケールが生成されるので、初段静翼28aを冷却することで、初段静翼28aの乾湿繰返しを阻止して、初段静翼28aにスケールが生成されるのを防止するようにしている。
【0032】
次に、後段静翼28eにおける加熱部32について説明する。
後段静翼28eにおける加熱部32は、後段静翼28e内が穿孔され、冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路34が設けられている。この冷熱媒体流路34は、後段静翼28e内を図中、上下方向に貫通する一対の貫通路34d、34uとなっている。後段静翼28e内を上下方向に、冷熱媒体が出入りすることで、直接、後段静翼28eとの熱交換性を高めている。
【0033】
第1実施形態にかかる地熱タービン14は以上のとおりであり、次にその動作、作用を説明する。
図1に示す地熱発電システム10において、セパレータ12からの蒸気は、地熱タービン14の蒸気入口29から初段静翼28aを通じて導入され、多段の動翼26、静翼28間を膨張しながら通過して蒸気排出口から放出され、運動エネルギーにより動翼26が回転してロータシャフト25を回し、発電機15のロータを回転駆動させ、電力を取り出すことができる。
【0034】
セパレータ12からの蒸気が、地熱タービン14の蒸気入口から初段静翼28aを通じて導入される際、蒸気は、略200℃程の高温高圧となっている。
かかる蒸気が初段静翼28aおよび動翼26間から、順次後方の静翼28、動翼26間を進行するうちに膨張して熱エネルギーが運動エネルギーに変換され、蒸気は、蒸気排出口近傍の後段静翼28eに至るときは、略70℃前後の低温蒸気となる。係る低温蒸気は、膨張した結果、低圧化するため、湿度が上昇し(略16%)、後段静翼28eを通過することで、後段静翼28e表面に結露する。
【0035】
初段静翼28aにおける冷却部31には、冷熱媒体循環部30の冷熱媒体復路30bを通じて、冷熱媒体がポンプ33の作用下に送り込まれ、最も温度が高い、地熱タービン14の蒸気入口29に近接した位置に配置した入口40pinを介して外輪27bの外輪環状冷却部40pに流入する。
この場合、外輪環状冷却部40pは、外輪27bの周方向に、一回り周回する冷却水管30pとして構成されているため、間接的ではあるが、外輪27bの内側に支持された初段静翼28aとの間で満遍なく熱交換がなされ、初段静翼28aが乾かないように、蒸気入口の高温熱が初段静翼28aに伝わりにくいように初段静翼28aを冷却して、乾湿繰返しを防止することができる。
【0036】
初段静翼28aにおける冷却部31において、熱交換がなされ、冷却部31から流出した冷熱媒体は、初段静翼28aから奪った熱で、温度が上昇し、冷熱媒体循環部30の冷熱媒体往路30aを通じて後段静翼28eの加熱部32にまでもたらされる。
後段静翼28eの加熱部32に冷熱媒体がもたらされると、冷熱媒体は貫通路34d、34uを通じて上下方向に出入りすることで、直接、後段静翼28eと熱交換を行うことができる。
ここで、後段静翼28eの表面には、低温蒸気により水滴が付いているが、直接、冷熱媒体と熱交換を行うことで冷熱媒体からの熱を受け、加熱される。これにより、後段静翼28eの表面から水滴を蒸発させることができ、湿り気による、動翼エロージョン等が生じることを回避することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、また、初段静翼28aにおいて熱交換により初段静翼28aが冷却されることで、冷熱媒体の熱エネルギーが失われて高温化しても、後段側の静翼28eとの熱交換で静翼28eを加熱することで、冷熱媒体は再び温度が低下し、この冷熱媒体を初段静翼28aとの熱交換により、初段静翼28aの冷却に供することができる。
このように、静翼冷却で失われるエネルギーを静翼加熱で還元することができるため、静翼冷却のみを行う手法に比較して、冷却効果の低下を抑制することができる。
さらに静翼加熱のみを行う場合、気相の凝縮により蒸気の低下は避けられないが、初段静翼28aと後段静翼28eとの冷熱媒体の循環系統としたことで、熱損失が少ないため加熱蒸気を導入する必要がなく、高効率を確保することができる。
【0038】
(第2実施形態)
本発明は、以下の第2実施形態によっても実施することができる。
第2実施形態では、
図5に示すように、初段静翼28aにおける冷却部31は、後段静翼28eの加熱部32同様、初段静翼28a内に冷熱媒体が流れる冷熱媒体流路35からなる。
この冷熱媒体流路35は、初段静翼28a内を図中、上下方向に貫通する一対の貫通路35d、35uとなっている。初段静翼28a内を上下方向に、冷熱媒体が出入りすることで、直接、初段静翼28aとの熱交換を行っている。
なお、この他、冷熱媒体循環部30としては、第1実施形態と実質的に変わらず、同様の効果を奏することができる。
【0039】
これにより、初段静翼28aにおけるそれぞれの静翼28a内の冷熱媒体流路35に、冷熱媒体を流すことで、冷熱媒体が静翼28aと直接接触し、タービン入口の高温熱を静翼28aに伝わりにくくすることができる。
【0040】
(第3実施形態)
本発明は、
図6に示すように実施することもできる。
この場合の地熱タービン14では、初段静翼28aにおける冷却部31から後段静翼28eにおける加熱部32に至る、冷熱媒体循環部30の冷熱媒体往路30aに減圧膨張部50(フラッシャー50)が介在されている。
フラッシャー50は、詳細な構造は省略するが、初段静翼28aにおける冷却部31において、初段静翼28aとの熱交換に供され、温度が上昇した高圧の冷却水を、減圧膨張させ、一部を蒸気化させる機能のものである。そしてこの蒸気化された冷却水は、後段静翼28eにおける加熱部32に送られ、加熱部32に送り込まれた気相状態の冷熱媒体と後段静翼28eとで直接熱交換を行うようにしている。
【0041】
また、フラッシャー50は、減圧後の冷熱媒体の液相分を、加熱部32から冷却部31に至る冷熱媒体復路30bに戻すように、冷熱媒体復路30bに連結されている。
【0042】
以上のような第3実施形態によれば、初段静翼28aにおいて熱交換により初段静翼28aを冷却後、冷熱媒体は、フラッシャー50において減圧膨張される。すると、冷熱媒体は一部が蒸発して気相化する一方、一部は液相状態で加熱部32から冷却部31に至る冷熱媒体復路30bに戻される。
加熱部32に送り込まれた気相状態の冷熱媒体は、後段静翼28eの貫通路34d、34uを通じて上下方向に後段静翼28eに出入りすることで、直接、後段静翼28eと熱交換を行うことができ、蒸発潜熱により凝縮することで、凝縮熱を放出し、後段静翼28eを加熱することができる。
加熱部32における熱交換後は、冷熱媒体は液相に戻り、フラッシャー50から戻された液相状態の冷熱媒体と冷熱媒体復路30bにおいて合流し、ポンプ33により、初段静翼28aにおける冷却部31に戻すことができ、再び、初段静翼28aとの熱交換に供される。
【0043】
このように、第3実施形態では、フラッシャー50において減圧膨張によって一部が蒸発して気相化した冷熱媒体を、加熱部32との熱交換に供することで、冷熱媒体を蒸発潜熱を利用して凝縮させることで、熱交換量を増加させることができ、後段側静翼28eの効率的な加熱を行うことができる。
以上のように構成することで、タービン内圧力が高い初段静翼28aと、圧力が低下している後段静翼28e、最終段付近に対応して、閉サイクルの圧力を調整することができるため、漏れや吸込み等のリスクを低減することができ、信頼性が向上する。
【0044】
(第4実施形態)
本発明は、
図7に示すように実施することもできる。
この第4実施形態では、第3実施形態におけるフラッシャー50を省いても、熱交換により、冷却と加熱を可能とするために、冷熱媒体循環部30の冷熱媒体往路30aに流す冷熱媒体が気液二相流(飽和蒸気)となるように冷熱媒体を選定している。冷熱媒体は、使用される地熱タービン14の規格、その他種々の配管、仕様に対応して温度、圧力を調整するとよい。
また、冷熱媒体が気液二相流となるようにするためには、運転状態(出力)を加減することでも実現可能である。すなわち、設計点(100%の負荷運転)において、冷熱媒体が単相であっても、部分負荷運転(例えば出力50%)とすることで二相流となる可能性がある。
【0045】
冷熱媒体が気液二相流となるように用いれば、潜熱加熱による高速且つ均一な加熱が期待できる。ただし、乾き度の高い状態で使用しなければ加熱効率が低下すること、配管抵抗等の圧力損失で圧力が低下した場合に、温度も下がってしまうことから注意を要する。
【0046】
以上、本発明にかかる地熱タービンについて、第1〜第4実施形態を挙げ、それぞれ詳細に作用効果を説明した。
本発明にかかる地熱タービンは、第1〜第4実施形態に限られるものではない。
例えば、
図8に示すように、冷熱媒体として気相、すなわち空気等の気体も可能である。この場合、冷熱媒体循環部30の冷熱媒体復路30bに、ファンFが介在される。ただし、冷熱媒体に気体を用いることは熱交換効率が他の冷熱場合に比較して低い。
また、
図9に示すように、冷熱媒体として水などの液体や低沸点媒体も考えられる。低沸点媒体とは、例えばイソブタン,フロン,又はアンモニア+水の混合がある。
低沸点媒体を用いることにより、冷熱媒体循環部30の密封構造さえ確保できれば、冷熱媒体は、水に比べて低温であっても沸騰して蒸気化するため、より効率的な熱交換が期待できる。