(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記排出条件の一つである前記減速燃料カット時が成立しなくても、前記エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に前記排気還流弁を強制開弁制御することを特徴とする請求項3に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記排気還流弁が全閉状態になってからの前記排気還流弁の上流側から下流側へ漏れる前記排気還流ガスの推定漏れ量を算出し、前記排出条件の一つである前記減速燃料カット時が成立しなくても、前記推定漏れ量が所定値より多くなり、かつ、前記エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に前記排気還流弁を強制開弁制御することを特徴とする請求項3に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに前記排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記排出条件は、前記エンジンの暖機完了前と、前記エンジンの停止実行時とを含み、 前記制御手段は、前記強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに前記排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを特徴とする請求項1に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに前記排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを特徴とする請求項9に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記強制開弁制御を開始してから前記エンジンの回転速度が所定値より高くなったときに前記排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを特徴とする請求項9に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記排気還流弁の前記強制開弁制御と前記新気導入弁の前記微開制御とを異なるタイミングで実行することを特徴とする請求項12に記載の過給機付きエンジンの排気還流装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のEGR装置では、EGR弁を全閉に閉弁したときに、EGR弁より上流のEGR通路にEGRガスが滞留することがある。このとき、EGR弁では、弁座と弁体との間に微細な隙間が生じることがあることから、EGR弁の上流側から下流側へのEGRガスの漏れを完全に無くすことは難しい。また、EGR弁の全閉時に弁座と弁体との間にデポジット等の異物が噛み込まれることがあり、その場合にもEGR弁の上流側から下流側へEGRガスが漏れることがある。このようにEGR弁の下流側へ漏れたEGRガスは、EGR通路から吸気通路へ侵入することになるが、エンジンの停止後等に低温条件下で冷やされると、EGRガス中の水分により凝縮水が発生することがある。この凝縮水がEGR通路や吸気通路にて多量に滞留すると、EGR通路や吸気通路に腐食が生じたり、滞留した多量の凝縮水がエンジンの燃焼室へ一気に流れてウォータハンマ等の不具合が起きたりするおそれがある。
【0008】
また、低圧ループ式のEGR装置では、スロットル弁より下流の吸気通路へ新気を導入するために新気導入通路が設けられることがある。この新気導入通路には、同通路を流れる新気の流量を調節するために新気導入弁が設けられる。この新気導入弁については、その全閉時に下流側から上流側へEGRガスが漏れることがある。例えば、過給機を動作させる過給時にEGR弁が開弁すると、EGRガスが吸気と共に吸気通路を介して燃焼室へ押し込まれる。このとき、新気導入弁を全閉にしていても、その弁座と弁体との間に生じた微細な隙間を通じ、新気導入弁の下流側から上流側へEGRガスが漏れるおそれがある。このように新気導入弁の上流側へ漏れたEGRガスが、低温条件下で冷やされると凝縮水を発生させることがある。この凝縮水が新気導入通路に多量に滞留すると、新気導入通路に腐食が生じたり、滞留した多量の凝縮水が新気導入弁の開弁時に燃焼室へ一気に流れてウォータハンマ等の不具合が起きたりするおそれがある。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、EGR弁の全閉時にEGR弁の下流側へ漏れたEGRガスから生じる凝縮水がEGR弁の下流側に多量に滞留することを防止できる過給機付きエンジンの排気還流装置を提供することにある。この発明の別の目的は、上記の目的に加え、新気導入弁の全閉時に新気導入弁の上流側へ漏れたEGRガスから生じる凝縮水が新気導入弁の上流側に多量に滞留することを防止できる過給機付きエンジンの排気還流装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの吸気通路と排気通路との間に設けられ、吸気通路における吸気を昇圧させるための過給機と、過給機は、吸気通路に配置されたコンプレッサと、排気通路に配置されたタービンと、コンプレッサとタービンを一体回転可能に連結する回転軸とを含むことと、
コンプレッサより下流の吸気通路に設けられる吸気量調節弁と、エンジンの燃焼室から排気通路へ排出される排気の一部を排気還流ガスとして吸気通路へ流して燃焼室へ還流させる排気還流通路と、前記排気還流通路における排気還流ガスの流れを調節するための排気還流弁と、排気還流通路は、その入口がタービンより下流の排気通路に接続され、その出口がコンプレッサより上流の吸気通路に接続されることと、エンジンの運転状態を検出するための運転状態検出手段と、検出される運転状態に基づき少なくとも排気還流弁を制御する制御手段と、制御手段は、検出される運転状態が所定の運転状態となるときに排気還流弁を全閉に閉弁制御することとを備えた過給機付きエンジンの排気還流装置において、排気還流通路の出口が入口よりも垂直方向において高い位置に配置され、排気還流弁の下流側から上流側へ凝縮水が流下可能に設けられると共に、凝縮水が排気還流通路を排気通路へ向けて流下するように設けられ、制御手段は、排気還流弁を全閉に閉弁制御すべきとき、排気還流弁の下流側から凝縮水を排出するために、所定の排出条件が成立したときは、排気還流弁を強制開弁制御することを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、排気還流弁を全閉に閉弁制御すべきときに、所定の排出条件が成立したときは、制御手段により排気還流弁が強制開弁制御されるので、排気還流弁の下流側に生じる凝縮水が、排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、排出条件は、エンジンの暖機完了前(排気還流開始条件成立前でもある。)と、エンジンの減速燃料カット時とを含むことを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、エンジンの暖機完了前(排気還流開始条件成立前でもある。)に排気還流弁の下流側に生じた凝縮水が、排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。また、減速燃料カット時は、吸気量が少なく、排気還流通路の圧力が低く、排気還流が少ないことから、排気還流弁の下流側に生じた凝縮水が吸気通路へ引かれることがない。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、排出条件は、前回の減速燃料カットから所定時間が経過した後であることを更に含むことを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、排出条件に、前回の減速燃料カットから所定時間が経過した後であることが含まれるので、排気還流弁の下流側にある程度の量の凝縮水が生じる可能性があるときに、その凝縮水が排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、制御手段は、排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に排気還流弁を強制開弁制御することを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項3に記載の発明の作用に加え、排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に排気還流弁が強制開弁制御されるので、排気還流弁の下流側から凝縮水を排出する機会が増える。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、制御手段は、排気還流弁が全閉状態になってからの排気還流弁の上流側から下流側へ漏れる排気還流ガスの推定漏れ量を算出し、排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、推定漏れ量が所定値より多くなり、かつ、エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に排気還流弁を強制開弁制御することを趣旨とする。
【0019】
上記発明の構成によれば、請求項3に記載の発明の作用に加え、排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、推定漏れ量が所定値より多くなり、かつ、エンジンが所定の軽負荷運転となるときを条件に排気還流弁が強制開弁制御されるので、排気還流弁の下流側にある程度の凝縮水が生じてから、その凝縮水が排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の発明において、制御手段は、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを趣旨とする。
【0021】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の作用に加え、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに排気還流弁が閉弁制御へ戻されるので、その後の排気還流弁の通常制御に支障がない。
【0022】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、排出条件は、エンジンの停止実行時を含み、制御手段は、エンジンに始動が要求されたときに排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを趣旨とする。
【0023】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、エンジンの停止実行時に、排気還流弁が強制開弁制御されるので、排気還流弁の下流側に生じた凝縮水は、排気還流通路から吸気通路へ引かれることなく、排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。また、エンジンに始動が要求されたときに排気還流弁が閉弁制御へ戻されるので、エンジン始動後における排気還流弁の通常制御に支障がない。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、排出条件は、エンジンの暖機完了前(排気還流開始条件成立前でもある。)と、エンジンの停止実行時とを含み、制御手段は、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを趣旨とする。
【0025】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、エンジンの暖機完了前(排気還流開始条件成立前でもある。)において排気還流弁の下流側に生じた凝縮水は、エンジンの停止実行時に、排気還流通路から吸気通路へ引かれることなく、排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。また、強制開弁制御が開始されてから所定時間が経過したときに、排気還流弁が閉弁制御へ戻されるので、次のエンジン始動時において排気還流弁の通常制御に支障がない。
【0026】
上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、排出条件は、エンジンの始動時と、凝縮水が非凍結の温度状態のときとを含むことを趣旨とする。
【0027】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、排出条件は、エンジンの始動時と、凝縮水が非凍結の温度状態のときとを含むので、排気還流弁の下流側に生じた凝縮水は、凍結することなく、排気還流通路から吸気通路へ引かれることなく、排気還流弁の下流側から上流側へ流下し、更に排気還流通路を排気通路へ向けて流下して排出される。
【0028】
上記目的を達成するために、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、制御手段は、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを趣旨とする。
【0029】
上記発明の構成によれば、請求項9に記載の発明の作用に加え、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときに排気還流弁が閉弁制御へ戻されるので、エンジンの始動時以降における排気還流弁の通常制御に支障がない。
【0030】
上記目的を達成するために、請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、制御手段は、強制開弁制御を開始してからエンジンの回転速度が所定値より高くなったときに排気還流弁を閉弁制御へ戻すことを趣旨とする。
【0031】
上記発明の構成によれば、請求項9に記載の発明の作用に加え、強制開弁制御を開始してからエンジンの回転速度が所定値より高くなったときに排気還流弁が閉弁制御へ戻されるので、エンジンの始動時以降における排気還流弁の通常制御に支障がない。
【0032】
上記目的を達成するために、請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れかに記載の発明において、エンジンには、吸気量調節弁より下流の吸気通路へ新気を導入するための新気導入通路と、新気導入通路における新気の流れを調節するための新気導入弁とが更に設けられ、制御手段は、エンジンの暖機完了前(排気還流開始条件成立前でもある。)、かつ、エンジンが軽負荷運転となるときを条件に閉弁状態の新気導入弁を微開制御することを趣旨とする。
【0033】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至11の何れかに記載の発明の作用に加え、エンジンの暖機完前、かつ、エンジンが軽負荷運転となるときを条件に閉弁状態の新気導入弁が制御手段により微開制御されるので、新気導入弁の上流側で暖機完了前に生じた凝縮水は、新気導入弁の下流側へ噴霧状態で排出され、新気導入通路と吸気通路を介して燃焼室へ吸入される。
【0034】
上記目的を達成するために、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の発明において、制御手段は、排気還流弁の強制開弁制御と新気導入弁の微開制御とを異なるタイミングで実行することを趣旨とする。
【0035】
上記発明の構成によれば、請求項12に記載の発明の作用に加え、排気還流弁が強制開弁制御されることで、排気還流ガスがわずかに吸気通路へ流れて燃焼室へ吸入されるおそれがある。また、新気導入弁が微開制御されることで、噴霧状態の凝縮水がわずかに吸気通路へ流れて燃焼室へ吸入される。そこで、排気還流弁の強制開弁制御と新気導入弁の微開制御とが制御手段により異なるタイミングで実行されるので、排気還流ガスと凝縮水とが同時に燃焼室に取り込まれることがない。
【発明の効果】
【0036】
請求項1に記載の発明によれば、排気還流弁の全閉時に排気還流弁の下流側へ漏れた排気還流ガスから生じる凝縮水が排気還流弁の下流側に多量に滞留することを防止することができる。この結果、多量の凝縮水により排気還流通路や吸気通路に腐食が生じることを防止することができ、多量の凝縮水がエンジンの燃焼室へ流れることを未然に防止することができる。
【0037】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、暖機還流前に生じる凝縮水を排気通路へ排出することができ、排気還流通路から凝縮水が不用意に燃焼室へ流れることを防止することができる。
【0038】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、排気還流弁の下流かから凝縮水を排出するために排気還流弁を強制開弁制御する回数を減らすことができ、排気還流弁の下流側に凝縮水が実質溜まるときだけその凝縮水を排気通路へ排出することができる。
【0039】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、所定の排出条件が成立しなくても、排気還流弁の下流側に凝縮水が多量に溜まる前に、その凝縮水を排気通路へ適宜に排出することができる。
【0040】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、所定の排出条件が成立しなくても、排気還流弁の下流側に凝縮水が多量に溜まる前に、その凝縮水を排気通路へ適宜に排出することができる。
【0041】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の効果に加え、排気還流弁が強制開弁制御された後に排気還流ガスが不用意に燃焼室へ取り込まれることを防止することができ、排気還流ガスによりエンジンの運転が不安定になることを防止することができる。
【0042】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、エンジンの停止実行時に排気還流弁の下流側に溜まった凝縮水を排気通路へ向けて排出することができると共に、エンジンの停止後に排気還流弁の下流側に生じた凝縮水を排気通路へ向けて排出することができ、凝縮水が排気還流通路から吸気通路を介して燃焼室へ取り込まれることを防止することができる。また、エンジンの始動後に排気還流ガスが不用意に燃焼室へ取り込まれることを防止することができ、排気還流ガスによりエンジンの運転が不安定になることを防止することができる。
【0043】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、エンジンの停止実行時に排気還流弁の下流側に溜まった凝縮水を排気通路へ排出することができる。また、次のエンジンの始動時において排気還流ガスが不用意に燃焼室へ取り込まれることを防止することができ、排気還流ガスによりエンジンの運転が不安定になることを防止することができる。
【0044】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、エンジンの始動時に排気還流弁の下流側に溜まった凝縮水を排気通路へ排出することができる。
【0045】
請求項10に記載の発明によれば、請求項9に記載の発明の効果に加え、エンジンが始動してから排気還流ガスが不用意に燃焼室へ取り込まれることを防止することができ、排気還流ガスによりエンジンの運転が不安定になることを防止することができる。
【0046】
請求項11に記載の発明によれば、請求項9に記載の発明の効果に加え、エンジンが始動してから排気還流ガスが不用意に燃焼室へ取り込まれることを防止することができ、排気還流ガスによりエンジンの運転が不安定になることを防止することができる。
【0047】
請求項12に記載の発明によれば、請求項1乃至11の何れかに記載の発明の効果に加え、新気導入弁の全閉時に新気導入弁の下流側から上流側へ漏れた排気還流ガスから生じる凝縮水が新気導入弁の上流側に多量に滞留することを防止することができる。その結果、多量の凝縮水により新気導入通路に腐食が生じることを防止することができ、多量の凝縮水がエンジンの燃焼室へ流れることを未然に防止することができる。
【0048】
請求項13に記載の発明によれば、請求項12に記載の発明の効果に加え、エンジンの運転時に、燃焼室における混合気の燃焼悪化を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
<第1実施形態>
以下、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
図1に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含むガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0052】
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0053】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0054】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、本発明の吸気量調節弁の一例に相当し、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのDCモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がDCモータ22により開閉駆動されることにより、スロットル弁21の開度が調節されるように構成される。電子スロットル装置14の構成として、例えば、特開2011−252482号公報の
図1及び
図2に記載される「スロットル装置」の基本構成を採用することができる。また、タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
【0055】
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するための、本発明の燃料供給手段の一例に相当するインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。点火プラグ29とイグナイタ30により点火装置が構成される。
【0056】
この実施形態において、大量EGRを実現するためのEGR装置は、低圧ループ式であって、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、触媒コンバータ15より下流の排気通路5と、コンプレッサ8より上流の吸気通路3との間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aは、コンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。また、EGR通路17の入口17bは、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続される。
【0057】
EGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
【0058】
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。
図1、
図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁として、かつ、電動弁として構成される。すなわち、EGR弁18は、DCモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。DCモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、DCモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。このEGR弁18の構成として、例えば、特開2010−275941号公報の
図1に記載された「EGRバルブ」の基本構成を採用することができる。
【0059】
図1及び
図2に示すように、この実施形態では、EGR通路17の出口17aが入口17bよりも垂直方向において高い位置に配置される。また、EGR弁18の下流側から上流側へ凝縮水が流下可能に設けられると共に、その凝縮水がEGR通路17を排気通路5へ向けて流下するように設けられる。より詳細には、
図1及び
図2に示すように、EGR通路17において、EGR弁18は、弁体32及び出力軸34が垂直方向においてストローク運動するように、垂直に配置される。また、EGR弁18より上流のEGR通路17は、EGR弁18の直近部分では垂直に伸び、更に上流の部分は排気通路5へ向けて下方へ傾斜するように配置される。その傾斜するEGR通路17の部分にEGRクーラ20が配置される。一方、EGR弁18より下流のEGR通路17は、EGR弁18の直近部分では下流側へ向けて上方へ傾斜しており、更に下流の部分は吸気通路3へ向けて垂直に配置される。そして、EGR弁18より下流のEGR通路17の傾斜部分が、凝縮水を捕集するためのトラップ45となっている。これにより、EGR弁18が全閉に閉弁されたときに、EGR弁18の上流側から下流側へ漏れたEGRガスにつき、その中に含まれる水分により発生した凝縮水は、このトラップ45に捕集されるようになっている。そして、トラップ45に捕集された凝縮水は、EGR弁18が開弁したときに、EGR弁18の下流側から上流側へ流下するように、EGR弁18の弁座33の形状と配置が設定される。従って、EGR弁18とEGR通路17の出口17aとの間の高低差により、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水が吸気通路3へ流れないようになっている。また、EGR弁18とEGR通路17の入口17bとの間の高低差により、EGR弁18の下流側から上流側へ流下した凝縮水がEGR通路17から排気通路5へ向けて流下するようになっている。
【0060】
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて燃料噴射制御、点火時期制御、吸気量制御及びEGR制御等をそれぞれ実行するために、インジェクタ25、イグナイタ30、電子スロットル装置14のDCモータ22及びEGR弁18のDCモータ31がそれぞれエンジン1の運転状態に応じて電子制御装置(ECU)50により制御されるようになっている。ECU50は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備える。ECU50は、本発明の制御手段の一例に相当する。外部出力回路には、イグナイタ30、インジェクタ25、DCモータ22及びDCモータ31が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段の一例に相当する各種センサ等27,51〜57が接続され、各種エンジン信号が入力されるようになっている。
【0061】
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、吸気圧センサ51、回転速度センサ52、水温センサ53、エアフローメータ54、空燃比センサ55、吸気温センサ56及びイグニションスイッチ57が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。すなわち、吸気圧センサ51は、スロットル弁21より下流のサージタンク3aにおける吸気圧PMを検出するようになっている。回転速度センサ52は、エンジン1のクランクシャフト1aの回転角(クランク角)を検出するとともに、そのクランク角の変化をエンジン1の回転速度(エンジン回転速度)NEとして検出する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出する。エアフローメータ54は、エアクリーナ6の直下流の吸気通路3を流れる吸気量Gaを検出する。空燃比センサ55は、触媒コンバータ15の直上流の排気通路5に設けられ、排気中の空燃比A/Fを検出する。エアクリーナ6に設けられた吸気温センサ56は、吸気通路3へ取り込まれる吸気の温度(吸気温)THAを検出する。運転席に設けられたイグニションスイッチ57は、エンジン1を始動又は停止させるために運転者により操作され、その操作信号を出力する。
【0062】
この実施形態で、ECU50は、エンジン1の全運転領域において、エンジン1の運転状態に応じてEGR制御を実行するためにEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU50は、通常は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時に検出される運転状態に基づきEGR弁18を開弁制御し、エンジン1の停止時、アイドル運転時又は減速運転時にEGR弁18を全閉に閉弁制御するようになっている。
【0063】
この実施形態で、ECU50は、運転者の要求に応じてエンジン1を運転するために、アクセル開度ACCに基づいて電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時にアクセル開度ACCに基づき電子スロットル装置14を開弁制御し、エンジン1の停止時又は減速運転時に電子スロットル装置14を閉弁制御するようになっている。これにより、スロットル弁21は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時には開弁され、エンジン1の停止時又は減速運転時には全閉に閉弁されるようになっている。
【0064】
ここで、この低圧ループ式のEGR装置では、EGR弁18の全閉時にEGR弁18より上流のEGR通路17に滞留するEGRガスがEGR弁18の下流側へ漏れることがある。そして、その漏れたEGRガスが、EGR通路17や吸気通路3へ侵入し、エンジン1の停止後等の低温条件下(エンジン1の非暖機時を含む)で冷やされて凝縮水が発生するおそれがある。また、この凝縮水がEGR通路17や吸気通路3に多量に滞留すると、EGR通路17や吸気通路3に腐食が生じたり、滞留した多量の凝縮水がエンジン1の燃焼室16へ一気に流れてウォータハンマ等の不具合が起きるおそれがある。そこで、この実施形態では、EGR弁18の全閉時にEGR弁18の下流側へ漏れたEGRガスから生じる凝縮水がEGR弁18の下流側に多量に滞留することを防止するために、ECU50が以下のような凝縮水排出制御を実行するようになっている。
【0065】
図3に、凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU50は、吸気温センサ56の検出値に基づき吸気温THAを取り込む。
【0066】
次に、ステップ110で、ECU50は、吸気温THAに基づき凍結判定水温THCを求める。凍結判定水温THCは、凝縮水の凍結を判定するための水温であり、EGR通路17における凝縮水の凍結を判定するための目安となる。ECU50は、例えば、
図4に示すような所定のマップを参照することにより、吸気温THAに応じた凍結判定水温THCを求めることができる。
図4に示すように、このマップは、吸気温THAが「0℃」前後の低温となる範囲で設定されたものであり、その低温の範囲内で吸気温THAが高くなるほど凍結判定水温THCが低くなるように設定される。
【0067】
次に、ステップ120で、ECU50は、水温センサ53の検出値に基づき冷却水温THWを取り込む。
【0068】
次に、ステップ130で、ECU50は、吸気圧センサ51及び回転速度センサ52の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLを取り込む。ここで、ECU50は、エンジン負荷KLを、エンジン回転速度NEと吸気圧PMとの関係から求めることができる。
【0069】
次に、ステップ140で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLとに基づきEGR弁18の目標開度Tegrを求める。ECU50は、所定のマップ(図示略)を参照することにより、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じた目標開度Tegrを求めることができる。
【0070】
次に、ステップ150で、ECU50は、今回取り込まれた冷却水温THWが所定値T1よりも低いか否かを判断する。ここで、所定値T1は、エンジン1が暖機状態にあるときの目安となる温度であり、例えば「70℃」を当てはめることができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ220へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ160へ移行する。この場合、エンジン1は暖機されておらず、ECU50は、EGR弁18を閉弁制御することになる。
【0071】
ステップ220では、エンジン1が暖機状態にあるとして、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御し、処理をステップ100へ戻す。
【0072】
ステップ160では、ECU50は、冷却水温THWが、今回求められた凍結判定水温THCより高いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ170へ移行する。
【0073】
ステップ210では、エンジン1が暖機状態になく、かつ、凝縮水が凍結し得る温度状態にあるとして、ECU50は、EGR弁18の閉弁制御を継続し、処理をステップ100へ戻す。
【0074】
ステップ170では、ECU50は、エンジン1の運転状態が減速燃料カットであるか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1が減速状態で、かつ、インジェクタ25からの燃料噴射が遮断された状態であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ180へ移行する。
【0075】
ステップ180では、エンジン1が暖機状態になく、かつ、凝縮水が凍結しない温度状態にあり、かつ、エンジン1が減速燃料カットの軽負荷運転状態にあることから、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御する。すなわち、ECU50は、EGR弁18を閉弁制御から強制的に開弁させる。これにより、EGR弁18の下流側にてトラップ45に捕集された凝縮水が、EGR弁18の上流側へ流れ、EGR通路17を流下して排気通路5へ排出されて処理される。
【0076】
次に、ステップ190で、ECU50は、所定時間の経過を待って処理をステップ200へ移行する。ここで、所定時間として、例えば「1〜2秒」を当てはめることができる。
【0077】
そして、ステップ200で、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御から閉弁制御へ戻した後、処理をステップ100へ戻す。
【0078】
上記制御によれば、ECU50は、EGR弁18を全閉に閉弁制御すべきとき、EGR弁18の下流側から凝縮水を排出するために、所定の排出条件が成立したときは、EGR弁18を強制開弁制御するようになっている。ここで、所定の排出条件は、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)と、冷却水温THWが凍結判定水温THCより高いことと、エンジン1の減速燃料カット時とを含む。また、ECU50は、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときにEGR弁18を閉弁制御へ戻すようになっている。
【0079】
以上説明したこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、EGR弁18を全閉に閉弁制御すべきときに、所定の排出条件が成立したときは、ECU50によりEGR弁18が強制開弁制御されるので、EGR弁18の下流側に生じる凝縮水が、EGR弁18の下流側から上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路
5へ向けて流下して排出される。このため、EGR弁18の全閉時にEGR弁18の下流側へ漏れたEGRガスから生じる凝縮水が、EGR弁18の下流側に多量に滞留することを防止することができる。この結果、多量の凝縮水によりEGR通路17や吸気通路3に腐食が生じることを防止することができ、多量の凝縮水がエンジン1の燃焼室16へ流れることを未然に防止することができる。
【0080】
この実施形態で、所定の排出条件は、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)と、冷却水温THWが凍結判定水温THCより高いことと、エンジン1の減速燃料カット時とを含む。従って、エンジン1の暖機完了前にEGR弁18の下流側に生じた凝縮水が、EGR弁18の下流側から上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、エンジン1の暖機完了前に生じる凝縮水をEGR弁18の下流側から排気通路5へ排出することができる。また、減速燃料カット時は、吸気量Gaが少なく、EGR通路17の圧力が低く、EGRが少ないことから、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水が吸気通路3へ吸引されることがない。このため、EGR通路17から凝縮水が不用意に燃焼室16へ流れることを防止することができる。 更に、冷却水温THWが凍結判定水温THCより低いとき、すなわち、凝縮水が凍結して流れ難くなるような冷間時には、EGR弁18の強制開弁制御が実行されない。このため、EGR弁18の無駄な強制開弁制御を無くすことができる。
【0081】
この実施形態では、EGR弁18の下流側にトラップ45が設けられるので、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水はトラップ45にて捕集される。そして、EGR弁18が強制開弁制御されたときには、そのトラップ45から捕集された凝縮水がEGR弁18の上流側へ流下し、更にEGR通路17の傾斜に沿って排気通路
5へ向けて流下して排出される。このため、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水を、重力によって自然に排気通路5へ排出することができる。
【0082】
この実施形態では、強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときにEGR弁18が閉弁制御へ戻されるされるので、その後のEGR弁18の通常制御に支障がな
い。このため、EGR弁18が強制開弁制御された後にEGRガスが不用意に燃焼室16へ取り込まれることを防止することができ、EGRガスによりエンジン1の運転が不安定になることを防止することができる。
【0083】
また、上記の排出条件が成立したときは、電子スロットル装置14(スロットル弁21)が閉弁するので、EGR弁18を強制開弁制御してから閉弁制御に戻しても、スロットル弁21より上流の吸気通路3の吸気圧に変化がなく、吸気通路3における吸気量Gaの変化も微少となる。
【0084】
<第2実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0085】
なお、以下に説明する各実施形態において前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0086】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図5に、この実施形態の凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図5のフローチャートでは、
図3のフローチャートの処理に加え、ステップ160とステップ170との間にステップ165の処理が、ステップ170とステップ180との間にステップ175の処理が、ステップ200の後にステップ205の処理が、ステップ150とステップ220との間にステップ215の処理が設けられた点で
図3のフローチャートと異なる。
【0087】
処理がこのルーチンへ移行し、ステップ100〜ステップ160の処理を実行し、ステップ160の判断結果が肯定となる場合、ステップ165で、ECU50は、減速燃料カット無し経過時間Tfcoffを取り込む。この経過時間Tfcoffは、前回の減速燃料カットが完了してから減速燃料カットが行われなかった経過時間を意味する。ECU50は、エンジン1の運転時に、前回の減速燃料カットが完了してからの経過時間をカウントすることにより、この経過時間Tfcoffを求めることができる。
【0088】
その後、ステップ170の判断結果が肯定となる場合、ステップ175で、ECU50は、この経過時間Tfcoffが所定値D1より長いか否かを判断する。すなわち、ECU50は、前回の減速燃料カットが完了してから所定時間経過後であるか否かを判断する。ここで、所定値D1は、全閉に閉弁制御されたEGR弁18の上流側から下流側へ漏れたEGRガスによりEGR弁18の下流側にある程度の凝縮水が生じ得る時間を意味する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ180へ移行し、ステップ180〜ステップ200の処理を実行する。
【0089】
そして、ステップ200から移行してステップ205では、ECU50は、経過時間Tfcoffを「0」にリセットし、処理をステップ100へ戻す。
【0090】
一方、ステップ150の判断結果が否定となる場合、すなわちエンジン1が暖機状態にある場合は、ステップ215で、ECU50は、経過時間Tfcoffを「0」にリセットし、処理をステップ220へ移行する。
【0091】
上記制御によれば、第1実施形態と異なり、所定の排出条件は、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)と、冷却水温THWが凍結判定水温THCより高いことと、エンジン1の減速燃料カット時と、前回の減速燃料カットから所定時間(所定値D1)が経過した後であることとを含む。すなわち、上記制御によれば、第1実施形態の排出条件に加え、前回の減速燃料カットから所定時間(所定値D1)が経過した後であるときに、EGR弁18を強制開弁制御するようになっている。
【0092】
以上説明したこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、第1実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、所定の排出条件に、前回の減速燃料カットから所定時間(所定値D1)が経過した後であることが含まれるので、EGR弁18の下流側、すなわちトラップ45にある程度の量の凝縮水が生じる可能性があるときに、その凝縮水がEGR弁18の下流側から上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、トラップ45から凝縮水を排出するためにEGR弁18を強制開弁制御する回数を減らすことができ、トラップ45に凝縮水が実質溜まるときだけその凝縮水を排気通路5へ排出することができる。
【0093】
<第3実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0094】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第2実施形態と構成が異なる。
図6に、この実施形態の凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図6のフローチャートでは、
図5のフローチャートの処理において、ステップ130の代わりにステップ135の処理が設けられ、ステップ250とステップ260の処理が新たに設けられた点で
図5のフローチャートと異なる。
【0095】
処理がこのルーチンへ移行し、ステップ100〜ステップ120の処理を実行した後、ステップ135では、ECU50は、吸気圧センサ51、回転速度センサ52及びエアフローメータ54の検出値に基づきエンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び吸気量Gaを取り込む。
【0096】
その後、ステップ140〜ステップ170の処理を実行し、ステップ170の判断結果が否定となる場合、ステップ250で、ECU50は、経過時間Tfcoffが所定値E1より長いか否かを判断する。この所定値E1は、前述した所定値D1よりも短い時間に相当する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ260へ移行する。
【0097】
ステップ260で、ECU50は、今回取り込まれた吸気量Gaが所定値F1よりも多いか否かを判断する。ここで、所定値F1は、エンジン1が軽負荷運転となるときの吸気量Gaの下限値に相当する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1が軽負荷運転であるとして、ECU50は処理をステップ180へ移行し、ステップ180〜ステップ205の処理を実行する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1が中負荷又は高負荷の運転状であるとして、ECU50は処理をステップ210へ移行する。
【0098】
上記制御によれば、ECU50は、第2実施形態の制御に加え、次のような制御を行うようになっている。すなわち、ECU50は、所定の排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、前回の減速燃料カットから所定時間(所定値E1(<D1))経過後であれば、吸気量Gaが所定値F1より多くないとき、すなわちエンジン1が所定の軽負荷運転となるときを条件にEGR弁18を強制開弁制御するようになっている。
【0099】
以上説明したこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、第2実施形態の作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、所定の排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、エンジン1が所定の軽負荷運転となるときを条件にEGR弁18が強制開弁制御されるので、EGR弁18の下流側のトラップ45から凝縮水を排出する機会が増える。このため、所定の排出条件が成立しなくても、トラップ45に凝縮水が多量に溜まる前に、その凝縮水を排気通路5へ適宜に排出することができる。
【0100】
ここで、前記各実施形態と同様、EGR弁18の強制開弁制御が実行されるときとは、EGR弁18を開弁してEGRガスが吸気通路3へ侵入することがなく、新気が吸気通路3へ吸入されるエンジン1の減速燃料カット時であることが望ましい。第2実施形態では、エンジン1で減速燃料カットが行われないときは、EGR弁18の強制開弁制御を実行することができず、その間はEGR弁18の下流側から凝縮水を排気通路5へ排出することができなかった。この実施形態では、エンジン1で減速燃料カットが行われない場合でも、前回の減速燃料カットから所定時間(所定値E1(<D1))経過後であれば、エンジン1が所定の軽負荷運転となるときにEGR弁18の強制開弁制御を実行することができる。エンジン1の軽負荷運転域では、エンジン1の背圧が低く、EGR弁18を開弁してもEGRガスの流量が少なく、その流速も非常に遅いので、吸気通路3にEGRガスが侵入することがほとんどなく、EGR弁18の下流側のトラップ45に溜まった凝縮水を、EGR通路17を介して排気通路5へ排出することができる。
【0101】
<第4実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0102】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第3実施形態と構成が異なる。
図7に、この実施形態の凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図7のフローチャートでは、
図6のフローチャートにおいて、ステップ135とステップ140の間にステップ136とステップ137の処理が新たに設けられ、ステップ205の後にステップ206の処理が新たに設けられ、ステップ250の代わりにステップ255の処理が設けられた点で
図6のフローチャートと異なる。
【0103】
処理がこのルーチンへ移行し、ステップ100〜ステップ135の処理を実行した後、ステップ136で、ECU50は、今回取り込まれた吸気量Gaに基づき時間当たりのEGRガス漏れカウンタ値Cegrを求める。このカウンタ値Cegrは、全閉状態のEGR弁18から漏れる単位時間当たりのEGRガス漏れ量を推定する値を意味する。ECU50は、例えば、
図8に示すような所定のマップを参照することにより、吸気量Gaに応じたEGRガス漏れカウンタ値Cegrを求めることができる。
図8に示すように、このマップは、吸気量Gaが多くなるほどカウンタ値Cegrが曲線的に大きくなるように設定されている。全閉状態のEGR弁18に漏れがある場合、EGR弁18の下流側へのEGRガスの漏れ量は、エンジン1の背圧が高くなるほど多くなる傾向がある。ここで、エンジン1の背圧は吸気量Gaにほぼ比例するので、
図8に示すような吸気量Gaに応じたEGRガス漏れカウンタ値Cegr(時間当たりのEGRガス漏れ量)のマップを参照することにより、EGR弁18の下流側へのEGRガスの漏れ量を予想することができる。
【0104】
次に、ステップ137で、ECU50は、EGRガス漏れ積算カウンタ値TCegrを求める。ECU50は、前回までの積算カウンタ値TCegrに今回求められたカウンタ値Cegrを加算することにより、今回の積算カウンタ値TCegrを求めることができる。この積算カウンタ値TCegrは、EGR弁18が全閉状態となってからEGR弁18の上流側から下流側へ漏れたEGRガスの全ての推定漏れ量を意味する。
【0105】
その後、ECU50は、ステップ140以降の処理を実行し、ステップ205から移行してステップ206で、積算カウンタ値TCegrを「0」にリセットし、処理をステップ100へ戻す。
【0106】
また、ステップ170から移行してステップ255では、ECU50は、積算カウンタ値TCegrが所定値G1よりも大きいか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ260へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行する。
【0107】
上記制御によれば、ECU50は、第3実施形態の制御に加え、次のような制御を行うようになっている。すなわち、ECU50は、EGR弁18が全閉状態になってからのEGR弁18の上流側から下流側へ漏れるEGRガスの推定漏れ量(積算カウンタ値TCegr)を算出する。そして、ECU50は、所定の排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、その推定漏れ量が所定値G1より多くなり、かつ、吸気量Gaが所定値F1より多くないとき、すなわちエンジン1が所定の軽負荷運転となるときを条件にEGR弁18を強制開弁制御するようになっている。
【0108】
以上説明したようにこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、第3実施形態の作用効果に加え、次のような作用効果を有する。すなわち、所定の排出条件の一つである減速燃料カット時が成立しなくても、EGRガスの推定漏れ量(積算カウンタ値TCegr)が所定値G1より多くなり、かつ、エンジン1が所定の軽負荷運転となるときを条件にEGR弁18が強制開弁制御される。従って、EGR弁18の下流側のトラップ45にある程度の凝縮水が生じてから、その凝縮水がトラップ45からEGR弁18の上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、所定の排出条件が成立しなくても、トラップ45に凝縮水が多量に溜まる前に、その凝縮水をEGR通路17を介して排気通路5へ適宜に排出することができる。
【0109】
<第5実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0110】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図9に、この実施形態の凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
【0111】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU50は、イグニションがオフであるか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1を停止させるためにイグニションスイッチ57がオフ操作されているか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ310へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ330へ移行する。
【0112】
ステップ310では、イグニションがオフであることから、ECU50は、エンジン1の停止を実行する。すなわち、ECU50は、インジェクタ25からの燃料噴射を停止させ、点火プラグ29による点火動作を停止させる。また、ECU50は、エンジン停止フラグXESTOPを「1」に設定する。このフラグXESTOPは、エンジン1の停止を実行したときに「1」に、エンジン1の始動を実行したときに「0」にリセットされるようになっている。
【0113】
次に、ステップ320で、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御し、処理をステップ300へ戻す。これにより、EGR弁18の下流側にてトラップ45に捕集された凝縮水が、EGR弁18の上流側へ流れ、EGR通路17を流下して排気通路
5へ排出されて処理される。
【0114】
一方、ステップ330では、ECU50は、エンジン停止フラグXESTOPが「0」であるか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1の始動を実行したか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ340へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ350へ移行する。
【0115】
ステップ340では、ECU50は、エンジン1のアイドルストップが要求されたか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ310へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ350へ移行する。
【0116】
ステップ330又はステップ340から移行してステップ350では、ECU50は、エンジン1が停止状態から始動が要求されたか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ360へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ380へ移行する。
【0117】
ステップ360では、エンジン1の始動が要求されていることから、ECU50は、EGR弁18を開弁状態から閉弁制御する。すなわち、ECU50は、エンジン1の停止前に強制的に開弁されたEGR弁18を一旦閉弁状態へ戻す。
【0118】
次に、ステップ370で、ECU50は、エンジン1の始動を実行する。すなわち、ECU50は、スタータ(図示略)を起動させると共に、インジェクタ25からの燃料噴射と点火プラグ29による点火動作を開始させる。また、ECU50は、エンジン停止フラグXESTOPを「0」にリセットする。その後、ECU50は、処理をステップ300へ戻す。
【0119】
一方、ステップ380では、ECU50は、水温センサ53の検出値に基づき冷却水温THWを取り込む。
【0120】
次に、ステップ390で、ECU50は、今回取り込まれた冷却水温THWが所定値T1よりも高いか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ400へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ430へ移行する。この場合、エンジン1が暖機状態にないことから、ECU50は、EGR弁18を閉弁制御することになる。
【0121】
そして、ステップ430では、エンジン1が暖機状態にないものとして、ECU50は、EGR弁18の閉弁制御を継続し、処理をステップ300へ戻す。
【0122】
一方、ステップ400では、ECU50は、吸気圧センサ51及び回転速度センサ52の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLを取り込む。
【0123】
次に、ステップ410で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLとに基づきEGR弁18の目標開度Tegrを求める。
【0124】
そして、ステップ420で、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御し、処理をステップ300へ戻す。
【0125】
上記制御によれば、前記各実施形態と異なり、所定の排出条件は、エンジン1の停止実行時を含む。また、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御の後、エンジン1に始動が要求されたときにEGR弁18を閉弁制御へ戻すようになっている。
【0126】
以上説明したこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、前記各実施形態と異なり次のような作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、エンジン1の停止実行時に、EGR弁18が強制開弁制御されるので、EGR弁18の下流側のトラップ45に生じた凝縮水は、EGR通路17から吸気通路3へ引かれることなく、EGR弁18の下流側から上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、エンジン1の停止実行時にトラップ45に溜まった凝縮水を排気通路5へ向けて排出することができると共に、エンジン1の停止後にトラップ45に生じた凝縮水を排気通路5へ向けて排出することができ、凝縮水がトラップ45から吸気通路3を介して燃焼室16へ取り込まれることを防止することができる。
【0127】
また、この実施形態では、エンジン1に始動が要求されたときにEGR弁18が閉弁制御へ戻されるので、エンジン1の始動後におけるEGR弁18の通常制御に支障がない。このため、エンジン1の始動後にEGRガスが不用意に燃焼室16へ取り込まれることを防止することができ、EGRガスによりエンジン1の運転が不安定になることを防止することができる。
【0128】
<第6実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0129】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第5実施形態と構成が異なる。
図10に、この実施形態の凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図10のフローチャートでは、
図9のフローチャートにおけるステップ380〜ステップ430の代わり
に、ステップ
500〜ステップ
570の処理が設けられた点で
図9のフローチャートと異なる。すなわち、
図10のフローチャートでは、ステップ300の前にステップ
500〜ステップ
530の処理が設けられ、ステップ320の後にステップ
540及びステップ
550の処理が設けられる。また、ステップ350の後にステップ
560の処理が設けられ、ステップ
530の後にステップ
570の処理が設けられる。
【0130】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ
500で、ECU50は、水温センサ53の検出値に基づき冷却水温THWを取り込む。
【0131】
次に、ステップ
510で、ECU50は、吸気圧センサ51及び回転速度センサ52の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLを取り込む。
【0132】
次に、ステップ
520で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLとに基づきEGR弁18の目標開度Tegrを求める。
【0133】
次に、ステップ
530で、ECU50は、今回取り込まれた冷却水温THWが所定値T1よりも低いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ
570へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ300へ移行し、ステップ300〜ステップ370の処理を実行する。この場合、エンジン1が暖機状態にないことから、ECU50は、EGR弁18を閉弁制御することになる。
【0134】
ステップ
570では、エンジン1が暖機状態にあることから、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ
500へ戻す。
【0135】
一方、ECU50は、ステップ320で、EGR弁18を強制開弁制御した後、ステップ
540で、所定時間が経過するのを待って処理をステップ
550へ移行する。ここで、所定時間として、例えば「1〜2秒」を当てはめることができる。
【0136】
そして、ステップ
550で、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御から閉弁制御へ戻した後、処理をステップ
500へ戻す。
【0137】
一方、ステップ350で、エンジン1が停止状態から始動が要求されていない場合は、ECU50は、処理をステップ
560へ移行し、EGR弁18の閉弁制御を継続し、処理をステップ
500へ戻す。
【0138】
上記制御によれば、第5実施形態と異なり、所定の排出条件は、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)と、エンジン1の停止実行時とを含む。また、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときにEGR弁18を閉弁制御へ戻すようになっている。
【0139】
ここで、エンジン1が暖機状態にない場合、エンジン1の停止後は、排気通路5の温度低下が大きいことから、吸気通路3から排気通路5へのガスの流れが発生する。そのため、EGR弁18を強制開弁制御することで、吸気通路3に残留していた残留EGRガスが、EGR通路17を介して排気通路5へ排出され、更に外部へと排出される。そして、エンジン1の停止後の時間経過と共に排気通路5の温度低下代が小さくなると、吸気通路3から排気通路5への残留EGRガスの流れが停止する。このとき、排気通路5には、燃焼室16から排出された排気(水分を含む)が多量に残留しているので、吸気通路3から排気通路5への残留EGRガスの流れが弱まり、
その流れが無くなった時点でEGR弁18を強制開弁制御から閉弁制御へ戻すことで、吸気通路3への残留EGRガスの侵入を防止することができる。
【0140】
以上説明したこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、第5実施形態と異なり次のような作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、所定の排出条件が、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)と、エンジン1の停止実行時とを含む。従って、エンジン1の暖機完了前において、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水は、エンジン1の停止実行時に、EGR通路17から吸気通路3へ引かれることなく、EGR弁18の下流側から上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、エンジン1の停止実行時にトラップ45に溜まった凝縮水を排気通路5へ排出することができる。
【0141】
また、この実施形態では、エンジン1の停止実行時に、EGR弁18の強制開弁制御が開始されてから所定時間が経過したときに、EGR弁18が閉弁制御へ戻されるので、次のエンジン始動時においてEGR弁18の通常制御に支障がない。このため、次のエンジン1の始動時にEGRガスが不用意に燃焼室16へ取り込まれることを防止することができ、EGRガスによりエンジン1の運転が不安定になることを防止することができる。
【0142】
<第7実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第7実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0143】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。
図11に、この実施形態におけるEGR弁18に係る凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
【0144】
処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ700で、ECU50は、イグニションがオンであるか否かを判断する。すなわち、ECU50は、エンジン1を始動させるためにイグニションスイッチ57がオン操作されているか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ710へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ700へ戻す。
【0145】
ステップ710では、ECU50は、吸気温センサ56の検出値に基づき吸気温THAを取り込む。
【0146】
次に、ステップ720で、ECU50は、吸気温THAに基づき凍結判定水温THCを求める。
【0147】
次に、ステップ730で、ECU50は、回転速度センサ52及び水温センサ53の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及び冷却水温THWを取り込む。
【0148】
次に、ステップ740で、ECU50は、冷却水温THWが「0℃」より高いか否かを判断する。すなわち、エンジン1の温度状態が凍結温度より高いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ850へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ750へ移行する。
【0149】
ステップ850では、エンジン1の温度状態が凍結温度にあることから、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御を禁止し、処理をステップ700へ戻す。ここで、例えば、エンジン1の停止後、冷間時にEGR弁18が開弁状態で放置された場合、EGR弁18の出力軸34とケーシング等との隙間に侵入した凝縮水が凍結して弁体32が開弁状態で固着することがある。この状態でエンジン1が始動されると、EGRガスが不用意に燃焼室16へ流れてエンジン1の始動性が悪化するおそれがある。そこで、この不具合を回避するために、ステップ850では、EGR弁18の強制開弁制御を禁止するようになっている。
【0150】
一方、ステップ750では、ECU50は、閉弁フラグXEGROが「
1」であるか否かを判断する。このフラグXEGROは、EGR弁18が閉弁制御された場合に「1」に、開弁制御されている場合に「0」に設定されるようになっている。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ700へ戻す。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ760へ移行する。
【0151】
ステップ760では、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御する。すなわち、ECU50は、エンジン1の始動時にEGR弁18を閉弁状態から強制的に開弁させる。
【0152】
次に、ステップ770で、ECU50は、EGR弁18が開弁したか否かを判断する。ECU50は、この判断を、例えば、EGR弁18のDCモータ31に対する指令値に基づいて判断することができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ810へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ780へ移行する。
【0153】
ステップ780では、ECU50は、EGR弁18が開弁してから所定時間が経過するのを待って処理をステップ790へ移行する。ここで、所定時間として、例えば「1秒」を当てはめることができる。
【0154】
ステップ790では、ECU50は、EGR弁18を強制開弁制御から閉弁制御へ戻す。そして、ステップ800で、ECU50は、閉弁フラグXEGROを「1」に設定し、処理をステップ700へ戻す。
【0155】
一方、ステップ810では、ECU50は、冷却水温THWが吸気温THAに応じた凍結判定水温THCより低いか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ820へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ830へ移行する。
【0156】
ステップ820では、凝縮水が凍結し得る温度状態にあるとして、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御を中断し、処理をステップ790へ移行する。
【0157】
ステップ830では、ECU50は、EGR弁18の弁体32が固着状態で異常であるとの判定をする。
【0158】
その後、ステップ840で、ECU50は、EGR異常処理を実行する。すなわち、ECU50は、例えば、EGR弁18の異常判定をメモリに記憶したり、運転者に警告したりする処理を実行する。その後、ECU50は処理をステップ700へ戻す。
【0159】
上記制御によれば、各実施形態と異なり、所定の排出条件は、エンジン1の始動時と、凝縮水が非凍結の温度状態のときとを含む。また、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御を開始してから所定時間が経過したときにEGR弁18を閉弁制御へ戻すようになっている。ここで、エンジン1が凍結温度状態のときは、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御を禁止するようになっている。また、ECU50は、エンジン1が凍結温度状態でない場合は、EGR弁18を強制開弁制御しても開弁していないときであって、冷却水温THWが凍結判定水温THCより低いときは、EGR弁18の強制開弁制御を中断し、EGR弁18を強制開弁制御しても開弁していないときであって、冷却水温THWが凍結判定水温THCより高いときは、EGR弁18が固着異常であると判定するようになっている。
【0160】
以上説明したようにこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、前記各実施形態と異なり次のような作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、所定の排出条件が、エンジン1の始動時と、凝縮水が非凍結の温度状態のときとを含むので、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水は、凍結することなく、EGR通路17から吸気通路3へ引かれることなく、トラップ45からEGR弁18の上流側へ流下し、更にEGR通路17を排気通路5へ向けて流下して排出される。このため、エンジン1の始動時にトラップ45に溜まった凝縮水を排気通路5へ排出することができる。
【0161】
この実施形態では、エンジン1の始動時に、EGR弁18の強制開弁制御の開始から所定時間が経過したときにEGR弁18が閉弁制御へ戻されるので、エンジン1の始動時以降におけるEGR弁18の通常制御に支障がない。このため、エンジン1が始動してからEGRガスが不用意に燃焼室16へ取り込まれることを防止することができ、EGRガスによりエンジン1の運転が不安定になることを防止することができる。
【0162】
この実施形態では、エンジン1が凍結温度状態のとき、すなわち、凝縮水が凍結して流れないようなときは、EGR弁18の強制開弁制御が禁止されるので、EGR弁18を無駄に強制開弁制御することがない。
【0163】
また、この実施形態では、エンジン1が凍結温度状態でないときは、EGR弁18を強制開弁制御しても開弁していないときであって、冷却水温THWが凍結判定水温THCより低いときは、EGR弁18の強制開弁制御を中断するようになっている。このため、EGR弁18の弁体32が凍結により固着するおそれがあるときであって、凝縮水が凍結して流れないようなときは、EGR弁18を無理に強制開弁制御することがない。
【0164】
更に、この実施形態では、エンジン1が凍結温度状態でない場合は、EGR弁18を強制開弁制御しても開弁していないときで、冷却水温THWが凍結判定水温THCより高いときは、EGR弁18が固着異常であると判定するようになっている。このため、EGR弁18の弁体32が固着して動かないようなときであって、凝縮水が凍結しないようなときは、EGR弁18を無理に強制開弁制御することがなく、EGR弁18の固着異常を検出することができる。
【0165】
<第8実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第8実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0166】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第7実施形態と構成が異なる。
図12に、凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図12のフローチャートでは、
図11のフローチャートにおけるステップ780に代わりステップ785の処理が設けられた点で
図11のフローチャートと異なる。
【0167】
処理がこのルーチンへ移行し、ステップ700〜ステップ770の処理を実行した後、ステップ770の判断結果が肯定になると、ステップ785で、ECU50は、エンジン回転速度NEが所定値N1より高くなるのを待って処理をステップ790へ移行する。すなわち、ECU50は、エンジン1の始動が開始され、EGR弁18を強制開弁制御してからエンジ
ン回転速度
NEが所定値
N1より高くなったときにEGR弁18を閉弁制御へ戻すようになっている。
【0168】
従って、この実施形態では第7実施形態と異なり次のような作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、EGR弁18の強制開弁制御を開始してからエンジン回転速度NEが所定値N1より高くなったときにEGR弁18が閉弁制御へ戻されるので、エンジン1の始動時以降におけるEGR弁18の通常制御に支障がない。このため、エンジン1が始動してからEGRガスが不用意に燃焼室16へ取り込まれることを防止することができ、EGRガスによりエンジン1の運転が不安定になることを防止することができる。
【0169】
<第9実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第9実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0170】
この実施形態では、エンジンシステムと凝縮水排出制御の処理内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。
図13に、この実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置を含むガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。
図13に示すように、この実施形態では、スロットル弁21より下流の吸気通路3へ新気を導入するための新気導入通路41と、新気導入通路41における新気の流れを調節するための新気導入弁42が更に設けられる点で
図1のエンジンシステムと異なる。新気導入通路41は、その入口41aがEGR通路17の出口17aより上流の吸気通路3に接続され、その出口41bがスロットル弁21より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3に接続される。新気導入弁42は、電動弁であって、ECU50により制御されるようになっている。
【0171】
この実施形態では、前記各実施形態におけるEGR弁18に係る凝縮水排出制御に加え、新気導入弁42に係る凝縮水排出制御を実行するようになっている。
図14に、この実施形態における新気導入弁42に係る凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図14のフローチャートでは、
図3のフローチャートの処理において、ステップ140の代わりにステップ
600の処理が設けられ、ステップ170〜ステップ220の代わりにステップ
610〜ステップ
650の処理が設けられる点で
図3のフローチャートと異なる。
【0172】
処理がこのルーチンへ移行し、ステップ100〜ステップ130の処理を実行した後、ステップ500で、ECU50は、今回取り込まれた冷却水温THWに基づき新気導入弁42の目標開度Tcavを求める。ECU50は、所定のマップ(図示略)を参照することにより、冷却水温THWに応じた目標開度Tcavを求めることができる。
【0173】
その後、ステップ150及びステップ160の処理を実行し、ステップ160の判断結果が肯定となる場合、ステップ
610で、ECU50は、今回取り込まれた冷却水温THWが所定値T2(<T1)よりも高いか否かを判断する。ここで、所定値T2として、例えば「50℃」を当てはめることができる。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ
640へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ
620へ移行する。
【0174】
ステップ
620では、ECU50は、今回取り込まれたエンジン負荷KLが所定値K1よりも低いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ
640へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ
630へ移行する。
【0175】
ステップ
630では、ECU50は、新気導入弁42を微開制御する。すなわち、ECU50は、閉弁状態の新気導入弁42を微少に開弁させる。その後、ECU50は処理をステップ100へ戻す。
【0176】
一方、ステップ160、ステップ
610又はステップ
620から移行してステップ
640では、ECU50は、新気導入弁42の閉弁制御を継続し、処理をステップ100へ戻す。ここで、ステップ150の判断結果が肯定となる場合、すなわち、冷却水温THWが所定値T1より低くなった場合、エンジン1が暖機状態にないことから、ECU50は、新気導入弁42を全閉に閉弁制御することになる。従って、ステップ
640では、その閉弁制御を継続することになる。
【0177】
また、ステップ150から移行してステップ
650では、エンジン1が暖機状態にあるとして、ECU50は、目標開度Tcavに基づき新気導入弁42を制御し、処理をステップ100へ戻す。
【0178】
上記制御によれば、前記各実施形態の制御に加え、ECU50は、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)、かつ、エンジン1が軽負荷運転となるときを条件に閉弁状態の新気導入弁42を微開制御するようになっている。
【0179】
ここで、全閉状態の新気導入弁42にガスの漏れがある場合、EGR弁18が開弁されるEGRオン条件下で、かつ、過給機7が作動する過給域では、新気導入弁42の下流側から上流側へEGRガスが漏れることがある。そして、エンジン1の停止時には、新気導入弁42より上流の新気導入通路41に滞留していたEGRガス等が、エンジン1のソーク中に冷えて新気導入通路41の中に凝縮水が発生することがある。そこで、この実施形態では、エンジン1の停止中に、新気導入弁42を全閉に閉弁制御し、新気導入弁42より上流の新気導入通路41に発生した凝縮水の吸気通路3への侵入を防止するようになっている。
【0180】
新気導入通路41から吸気通路3へ凝縮水が漏れると、エンジン1の低温始動に合わせてエンジン1に凝縮水が一気に吸入されて失火を招くおそれがある。そのため、新気導入通路41で発生した凝縮水は適正に処理する必要がある。そこで、この実施形態では。エンジン1の低温始動後に冷却水温THWが、所定値T2(例えば「50℃」)よりも高く、エンジン1が暖機状態となる所定値T1(例えば「70℃」)より低くなるときの非過給機条件下で、すなわち吸気圧PMが負圧となる条件下で、ECU50は、新気導入弁42を微開弁させ、新気導入弁42の上流側から
下流側へ凝縮水を噴霧状態で徐々にエンジン1の燃焼室16へ再吸入させるようになっている。ここでは、冷却水温THWが所定値T2より少し高くなると、ECU50は、新気導入弁42を微開制御させるので、
また、冷却水温THWが極低温へ低くなるほど、エンジン1にて混合気の燃焼が悪いので、冷却水温THWがEGRを開始すべき低温条件にて新気導入弁42の微開制御を実行するようになっている。一方、EGRオンからのエンジン1の減速運転時には、新気導入弁42を急開弁させる必要があることから、それまでに凝縮水を処理するようになっている。
【0181】
以上説明したようにこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、前記各実施形態の作用効果に加え次のような作用効果を有する。すなわち、エンジン1の暖機完了前(EGR開始条件成立前でもある。)、かつ、エンジン1が軽負荷運転となるときを条件に閉弁状態の新気導入弁42がECU50により微開制御されるので、新気導入弁42の上流側で暖機完了前に生じた凝縮水は、新気導入弁42の下流側へ噴霧状態で排出され、新気導入通路41と吸気通路3を介して燃焼室16へ吸入される。このため、新気導入弁42の全閉時に新気導入弁42の下流側から上流側へ漏れたEGRガスから生じる凝縮水が新気導入弁42の上流側に多量に滞留することを防止することができる。その結果、多量の凝縮水により新気導入通路41に腐食が生じることを防止することができ、多量の凝縮水がエンジン1の燃焼室16へ流れることを未然に防止することができる。
【0182】
<第10実施形態>
次に、本発明における過給機付きエンジンの排気還流装置を具体化した第10実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0183】
この実施形態では、凝縮水排出制御の処理内容の点で第9実施形態と構成が異なる。
図15に、この実施形態におけるEGR弁18に係る凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図16に、この実施形態における新気導入弁42に係る凝縮水排出制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図15のフローチャートでは、
図3のフローチャートの処理において、ステップ170とステップ180との間にステップ
900の処理が設けられた点で
図3のフローチャートと異なる。また、
図16のフローチャートでは、
図14のフローチャートの処理において、ステップ
610とステップ
620との間にステップ
910の処理が設けられた点で
図14のフローチャートと異なる。
【0184】
図15のルーチンにおいて、ステップ100〜ステップ170の処理を実行し、ステップ170から移行してステップ
900では、ECU50は、新気導入弁42は閉弁制御中であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ210へ移行し、EGR弁18の閉弁制御を継続する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ180へ移行し、EGR弁18を強制開弁制御する。その後、ECU50は、処理をステップ190へ移行する。
【0185】
一方、
図16のルーチンにおいて、ステップ100〜ステップ
610の処理を実行し、ステップ
610から移行してステップ
910では、ECU50は、EGR弁18は閉弁制御中であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は処理をステップ
640へ移行し、新気導入弁42の閉弁制御を継続する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ
620へ移行し、ステップ
620及びステップ
630の処理を実行する。すなわち、エンジン負荷KLが所定の軽負荷となるときに、新気導入弁42を微開制御する。
【0186】
上記制御によれば、前記第9実施形態の制御に加え、ECU50は、EGR弁18の強制開弁制御と新気導入弁42の微開制御とを異なるタイミングで実行するようになっている。
【0187】
ここで、ECU50は、エンジン1の低温軽負荷時に、EGR弁18を強制開弁制御することにより滞留EGRガスを排気通路5へ排出するようになっている。このとき、EGR弁18の開弁により、僅かにEGRガスが吸気通路3へ侵入するので、燃焼室16での混合気の燃焼が悪化する傾向にある。また、エンジン1の低温軽負荷時に、新気導入弁42を微開制御することにより滞留EGRガスを吸気通路3へ排出するようになっている。このとき、新気導入弁42の微開により、EGRガスが吸気通路3へ噴霧状態で侵入するので、燃焼室16での混合気の燃焼悪化を招くおそれがある。そこで、この実施形態では、EGR通路17からの滞留EGRガスの排出と、新気導入通路41からの滞留EGRガスの排出とを相互にずらすことにより、燃焼室16での混合気の燃焼悪化を極力抑制するようになっている。
【0188】
以上説明したようにこの実施形態における過給機付きエンジンの排気還流装置によれば、前記第9実施形態の作用効果に加え次のような作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、EGR弁18が強制開弁制御されることで、EGRガスがわずかに吸気通路3へ流れて燃焼室16へ吸入されるおそれがある。また、新気導入弁42が微開制御されることで、噴霧状態の凝縮水がわずかに吸気通路3へ流れて燃焼室16へ吸入される。そこで、この実施形態では、EGR弁18の強制開弁制御と新気導入弁42の微開制御とがECU50により異なるタイミングで実行されるので、EGRガスと凝縮水とが同時に燃焼室16に取り込まれることがない。このため、エンジン1の運転時に、燃焼室16における混合気の燃焼悪化を抑えることができる。
【0189】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0190】
(1)前記各実施形態では、EGR弁18をポペット弁として、かつ、電動弁として構成した。これに対し、EGR弁をバタフライ弁として、かつ、電動弁として構成することもできる。
【0191】
(2)前記第7及び第8の実施形態では、EGR弁18に係る凝縮水排出制御について説明したが、同様の趣旨で、新気導入弁に係る凝縮水排出制御として実行することもできる。この場合、EGR弁18を強制開弁制御する代わりに、新気導入弁を微開制御することになる。