(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049594
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】可撓性ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/10 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
F16L11/10 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-244185(P2013-244185)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-102195(P2015-102195A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221502
【氏名又は名称】東拓工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】波谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平尾 昇司
(72)【発明者】
【氏名】松下 史和
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−536302(JP,A)
【文献】
特開2001−070236(JP,A)
【文献】
特開2002−139180(JP,A)
【文献】
実公昭39−010128(JP,Y1)
【文献】
特開2008−101634(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第1209474(GB,A)
【文献】
実開昭63−173586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に成形した内芯(10)上にチューブ本体(11)を被覆し、さらに当該チューブ本体(11)上に螺旋状に成形した外芯(15、25)を前記内芯(10)と二重螺旋構造をなすように巻き付けることにより、前記チューブ本体(11)に螺旋状の凹凸面が賦形された可撓性ホース(1)であって、
前記内芯(10)は樹脂材により断面が方形に成形され、
前記チューブ本体(11)は樹脂材によりシームレスに成形され、
前記外芯(15、25)は樹脂材により成形され、
さらに前記外芯(15、25)の外側には、当該外芯(15、25)の外周面を内側に圧接するように覆うと共に当該外芯(15、25)の外周面に融着され、前記外芯(15、25)および内芯(10)の径方向への膨らみを抑制すると共に外芯(15、25)の移動幅を制限する拘束層(16、17、18)が形成されていることを特徴とする可撓性ホース。
【請求項2】
前記拘束層は、織糸層と、当該織糸層を表裏から挟持すると共に弾性を与えるエラストマー層とにより形成される請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
前記外芯の断面が方形に成形される請求項1または請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項4】
前記外芯の断面が円形または楕円形に成形される請求項1または請求項2に記載の可撓性ホース。
【請求項5】
互いに隣接する前記外芯と前記内芯との間には湾曲を可能にするための間隙が設けられると共に、前記間隙は最も湾曲した状態で前記チューブ本体を挟んで当接するように設定されている請求項1〜4のいずれかに記載の可撓性ホース。
【請求項6】
前記拘束層の外側に、前記外芯の外側領域および前記内芯の外側領域を全体に締め付ける配糸層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の可撓性ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として薬品、化学品、溶剤等のケミカル用途に適した可撓性ホースに関し、さらに詳細にはホースの管壁をなすチューブ本体が樹脂製の内側螺旋芯(内芯ともいう)および外側螺旋芯(外芯ともいう)によって挟持された構造の可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
螺旋状の凹凸を有するチューブ本体の内面と外面に対し、螺旋芯で補強した構造を有する可撓性ホースは、例えば露線式ホース等と称されて種々の用途に用いられている(例えば特許文献1〜3参照)。
【0003】
このような構造の可撓性ホースでは、内側および外側の螺旋芯は、それぞれ互いにチューブ本体に固着(融着)されることなくフリーな状態でチューブ本体の凹面に接するようにしてあり、これにより捩じったり湾曲したりしてもホースが破断することなく可撓性を有するようにしてある。
【0004】
しかしながらチューブ本体と螺旋芯とが固着されていないことに起因して、ホースを大きく湾曲させると螺旋芯が隣接する凸面を乗り越えて隣の凹面に移動してしまう「螺旋芯の位置ずれ」の不具合が発生するおそれがある。
そのため従来の可撓性ホースでは、内側螺旋芯に弾性力を有する材料(例えば金属ワイヤ)を用いるようにし、内側螺旋芯がチューブ本体を付勢する力が常に加わるようにして螺旋芯の位置ずれが簡単には発生しないようにしている。
すなわち、ホース製造時に、予め、内側螺旋芯にテンションを与えてフリーな状態よりも螺旋の径を縮めた状態にしておき、この状態でチューブ本体を内側螺旋芯に被覆するようにし、さらにチューブの外側に外側螺旋芯を巻き付けるようにする。その後、内側螺旋芯をフリーな状態に戻すことで内側螺旋芯が径方向に拡がるようになり、チューブ本体を付勢するようにしてある。この場合、内側螺旋芯にテンションを与えておくには所望の(有限)長さの内側螺旋芯を予め加工し、両側から引張っておかなければならない。そのため、内側螺旋芯の成形工程、チューブ本体の成形工程、外側螺旋芯の成形工程までを続けて流れ作業で行う連続生産方式ではなく、有限長さごとに生産を行うバッチ生産方式で生産するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2546519号公報
【特許文献2】特許第3556278号公報
【特許文献3】特開平11−257553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、内側螺旋芯に弾性力を有する金属ワイヤ等の材料を使用する場合には付勢力を与えることができるので湾曲時の螺旋芯の位置ずれの問題を解消することができる。
しかしながら、ホース内に金属を腐食させる腐食性流体を流す場合のように、ホースの用途によっては十分な弾性力を与えうる金属ワイヤを使用できない場合がある。そこで金属ワイヤに代えて、樹脂製の螺旋芯を用いてホース全体をオール樹脂製にした構造のものも使用されている。オール樹脂製のホースは腐食性だけでなく、軽量化を図ることができる点でも優れており、さらに樹脂製螺旋芯を用いた場合は専用の切断工具を必要とせず、簡単な工具(例えばニッパー等)で容易に切断できる点でも優れている。
【0007】
しかしながら、すべての構成素材を樹脂製として連続生産しようとしても、半溶融状態で連続的に押し出されて螺旋状に巻き付けられる樹脂製の内側螺旋芯では、破断する等の問題から金属ワイヤのように十分に大きな弾性力を得ることは困難である。それゆえ上述した金属ワイヤと同じ製造工程(先に内側螺旋芯にテンションを与えて径を縮めた状態でチューブ本体を被覆するバッチ生産方式)で弾性力を与えるようにして製造した場合であっても、大きな付勢力を与えることができず、螺旋芯の位置ずれの問題が生じやすくなっていた。
【0008】
また、オール樹脂製の可撓性ホースを製造する場合、内側螺旋芯の成形工程から、チューブ本体の成形工程を経て、外側螺旋芯の成形工程までを、続けて流れ作業で行う連続生産方式を採用することが望ましい。すなわち、押出成形を採用することによって、内側螺旋芯を成形しながら、続けてチューブ本体を成形しつつ内側螺旋芯の表面に被覆し、さらに続けて外側螺旋芯を成形しながらチューブ本体の外側に巻き付けることにより、バッチ生産ではなく連続生産が可能になる。そしてこのような連続生産によれば長さに制限のないシームレスチューブの製造も可能になる。
【0009】
しかしながら連続生産方式では、内側螺旋芯の成形工程とチューブ本体の成形工程とが流れ作業で連続して行われるので、内側螺旋芯を両端から引張ってテンションを与えた状態でチューブ本体を被覆することができない。そのため、内側螺旋芯にチューブ本体を付勢する力を付与することができなかった。よって、螺旋芯の位置ずれが生じにくいオール樹脂製の可撓性ホースを連続生産方式で製造することは困難であった。
【0010】
そこで本発明は、内側螺旋芯および外側螺旋芯が樹脂材料で形成されたオール樹脂製の可撓性ホースであっても、チューブ本体に対する螺旋芯の位置ずれの問題が生じにくい構造の可撓性ホースを提供することを目的とする。
【0011】
特に、内側螺旋芯とチューブ本体とを流れ作業で同時並行して成形する連続生産による可撓性ホースのように、内側螺旋芯にチューブ本体に付勢する力を与えることができない構造のホースであっても、湾曲時の螺旋芯の位置ずれの問題が生じない構造の可撓性ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の可撓性ホースは、螺旋状に成形した内芯10上にチューブ本体11を被覆し、さらに当該チューブ本体11上に螺旋状に成形した外芯15、25を前記内芯10と二重螺旋構造をなすように巻き付けることにより、前記チューブ本体11に螺旋状の凹凸面が賦形された可撓性ホース1であって、前記内芯10は樹脂材により断面が方形に成形され、前記チューブ本体11は樹脂材によりシームレスに成形され、前記外芯15、25は樹脂材により成形され、さらに前記外芯15、25の外側には、当該外芯15、25の外周面を内側に圧接するように覆うと共に当該外芯15、25の外周面に融着され、前記外芯15、25および内芯10の径方向への膨らみを抑制すると共に外芯15、25の移動幅を制限する拘束層16、17、18が形成されるようにしてある。
【0013】
本発明によれば、内芯は樹脂材を用いて、チューブ本体を径方向へ押圧する弾性力を与えることなく成形してある。そして内芯とチューブ本体とは固着せずにフリーな状態で被覆させてある。チューブ本体と外芯とについても固着せずにフリーな状態でチューブ本体の上から内芯と二重螺旋構造を形成するように巻き付けてある。
そして、外芯およびチューブ本体を覆うように外芯の外側に拘束層を設けて、拘束層が外芯の外周面を内側に向けて圧接させる。これにより、拘束層が外芯を介してチューブ本体を内側に押圧するようになるので、内芯自体にはチューブ本体を付勢する弾性力が働いていなくても内芯はチューブ本体によって押圧されており、チューブ本体の凹凸面を乗り越えて位置ずれする不具合が生じない。
外芯についても拘束層が外芯の外周面に融着してあり1つの外芯だけが単独で位置ずれできない構造にしてあるので、やはり位置ずれの不具合は生じない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、拘束層によって外側から外芯を介してチューブ本体を押圧するようにしたので、弾性力が十分ではない樹脂製の内芯を用いても、螺旋芯の位置ずれの不具合の発生を抑えることができるようになる。樹脂製の外芯についても外芯の外周面に拘束層が融着してあるので、外芯全体を一挙に移動させなければ位置ずれが起こらないので、位置ずれの不具合を抑えることができる。また、内芯の断面形状を方形にしてあることによっても、ホースを湾曲させた際に、たとえ内芯とチューブ本体とが付勢されておらずフリーな状態にしてあっても位置ずれが生じにくい。
【0015】
上記発明において、前記拘束層は、織糸層と、当該織糸層を表裏から挟持すると共に弾性を与えるエラストマー層とにより形成されるようにしてもよい。
ここで、織糸層は延伸させた糸で格子状に織り込んだ層とするのが好ましい。具体的には好適な糸材としてポリエステル糸を織り込んだものが好ましい。なお、織糸層には布状に織り込んだ層(織り目を細かくした織糸層)も含まれる。また延伸させた糸材で織り込んだ層にすることにより、糸自体は伸びにくいが、織糸にすることで層自体としては簡単に湾曲や捩じりに追随して変形可能な層にしてある。
そして、織糸層の表裏を、弾性を有するエラストマー層で挟持させたことにより、織糸層と共に外芯に融着させることができ、エラストマー層により付勢する力を増やすことができるだけでなく、織糸層が直接、チューブ本体の外周面(内芯の直上の位置)と擦れる状態が繰り返されることによる織糸層の劣化を防ぐことができる。
【0016】
上記発明において、互いに隣接する前記外芯と前記内芯との間には湾曲を可能にするための間隙が設けられると共に、前記間隙は最も湾曲した状態で前記チューブ本体を挟んで当接するように設定されてもよい。
湾曲状態で内芯と外芯とがチューブ本体を挟んで当接させることにより、螺旋芯の位置ずれのきっかけとなる内芯、外芯の捩じれ、回転を抑制することができ、さらに螺旋芯の位置ずれを抑えることができる。
【0017】
上記発明において、さらに前記拘束層の外側に、前記外芯の外側領域および前記内芯の外側領域を全体に締め付ける配糸層が形成されるようにしてもよい。
湾曲状態で拘束層に加わる力は、外芯の外側領域と内芯の外側領域とでは変化するが、これにより力の均一化を図ることができる。なお、配糸層も伸びにくい糸であることが好ましく、具体的には織糸層と同じくポリエステル糸が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態を示す可撓性ホースの外観図である。
【
図2】
図1の可撓性ホースの断面を分解して示した斜視図である。
【
図3】
図1のホースを湾曲させた状態を示す模式図である。
【
図4】変形実施例である可撓性ホースの断面を分解して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態である可撓性ホースの外観を示す図であり、
図2はその一部断面を分解して示した斜視図である。
この可撓性ホース1は、内芯10、チューブ本体11、外芯15、拘束層16を基本構成として備え、さらに外側に配糸層20、外巻層21、保護層22が設けられている。
【0020】
内芯10は硬質の樹脂材(例えばPP(ポリプロピレン樹脂))を成形したものであり、押出成形時に、型となるマンドレルに巻き付けて螺旋状に成形するようにして連続的に形成していくようにしてある。内芯10の断面は方形、より具体的には撓ませるときの撓み角度を拡げるためにホースの内面(下辺)側が外面(上辺)側よりも長い台形にしてある。
【0021】
チューブ本体11は樹脂製フィルム層12、13、14の積層体として成形されるようにしてある。積層体の厚さは、内芯10(および外芯15)の厚さに比べてはるかに薄くしてある。なお、ホースの使用用途に応じてフィルム層の材質や層数を変更するようにしている。例えばフッ素樹脂、PP、フッ素樹脂の3層構造とすることにより、耐薬品性やガスバリア性を備えたホースとすることができる。
このチューブ本体11は、例えば回転ダイを用いた押出成形を採用することにより、先に成形される内芯10の後を追うようにして、その外側を被覆するように各層が順次成形される。このとき成形された積層体はまだ円筒状であり、螺旋形状にはなっていない。
【0022】
外芯15は硬質樹脂材(例えばPE(ポリエチレン樹脂))を成形したものであり、上記積層体が被覆された内芯10に対して二重螺旋構造をなすように押出成形で螺旋状に巻き付けていくことにより形成される。
これにより内芯10と外芯15とにより挟まれた積層体(樹脂製フィルム層12、13、14)は、内芯10、外芯15に沿った凹凸面が賦形され、その結果、螺旋状の凹凸を有するチューブ本体11が形成される。そして内芯10の上にチューブ本体11、さらにチューブ本体11の上に外芯15を流れ作業で連続加工することができ、所望の長さのシームレスなホースとして生産することができる。
【0023】
内芯10、チューブ本体11、外芯15は互いに固着されていないが、内芯10の断面は方形にしてあり、しかも、チューブ本体11(積層体)は薄く、内芯10と外芯15の径方向の長さ(高さ)は同じか、内芯10が外芯15よりわずかに短くしてある。よって湾曲したときに内芯10が隣の外芯15を乗り越えて位置ずれするためには、内芯10の高さと同程度の高さを乗り越えなければならない構造となっているため、非常に抵抗が大きく位置ずれが生じにくい形状にしてある。
【0024】
また、外芯15と内芯10の高さが同程度であってチューブ本体11は薄いので、フリーな状態で外芯15の外周面側が拘束層16と接触するようになる。外芯15の断面は本実施形態では楕円形(円形)にしてある。
外芯15の横幅および内芯10の横幅は、チューブ本体11の凹凸のピッチ(すなわち内芯10のピッチ)との関係で定められる。具体的には、湾曲状態となるために必要な間隙(遊び)が内芯10とチューブ本体11との間、および、チューブ本体11と外芯15との間に確保されると共に、最も撓んだ状態で左右の内芯10(外芯15)がその間にある外芯15(内芯10)により挟まれて固定されるようにして、内芯10(外芯15)の上下左右方向への位置ずれが起きなくなる程度の間隙となるようにしてある(
図3(a)、(b)参照)。
【0025】
外芯15の外側には、外芯15およびチューブ本体11を覆うにように拘束層16が被覆してある。拘束層16は延伸されたポリエステル糸を格子状に織り込んで伸縮性を与えるようにした織糸層18と、伸縮可能な材料で織糸層18を表裏両面から挟み込んだエラストマー層17、19(例えばオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)等)とからなる。拘束層16は外芯15の外周面を外側から圧接するようにテンションを与えた状態で被覆してあり、これにより外芯15がチューブ本体11を内側に押圧し、チューブ本体11が内芯10を押圧するようにしてある。
そして外芯15と接する外周面の部分Pで、テンションが与えられた状態で拘束層16に融着してある。これにより、外芯15どうしの間隔が拡がるためには拘束層16のテンションに抗して拡がる必要があり、よって外芯15どうしの間隔はわずかしか拡がることができないようにしてある。すなわち、外芯15は、螺旋軸方向(横方向)に移動できる長さが拘束層16の伸縮可能な幅に制限されるようになり、チューブ本体11の隣接する凸面を乗り越えて1つの外芯15だけが位置ずれすることがないようにしてある。
【0026】
拘束層16の外側には、ホース1の耐圧性能を向上させるために、拘束層16全体を覆うようにポリエステル糸で織り込まれた配糸層20と、その外側に外巻層21が形成してある。湾曲状態では拘束層16に加わる力が外芯15の外側領域と内芯10の外側領域とでは変化するが、これら配糸層20、外巻層21の存在により力の均一化を図ることができる。また、大きな内圧が加わったときに、これらの存在によってチューブ本体11が膨張して破損しないようにすることができる。
さらに外巻層21の外側には、螺旋状の突部が形成された保護層22が形成されている。この保護層22は外部衝撃をこの突部で受けるためのものであり、これにより外巻層21およびその内側の各部が外部衝撃から保護されるようにしてある。
【0027】
次に、上述した可撓性ホース1を湾曲させた状態について説明する。一般に、内芯10および外芯15が固着されていない可撓性ホース1では、湾曲させた状態で螺旋芯の位置ずれが生じやすい。
図3はホース1を湾曲させたときの状態を示した模式図である。
図3(a)は、隣接する内芯10どうし(外芯15どうし)が離れる方向に湾曲された部分の模式図である(湾曲部分の外側)。
拘束層16は可撓性ホース1がフリーな状態(湾曲していない状態)よりもテンションが強くなり、外芯15を内側方向に強く押圧する。上述したように外芯15の外周面側は拘束層16と融着されている。そのためテンションがかかった拘束層16に逆らって外芯15どうしの外周面側の間隔が拡がることができないため、この部分の間隔がフリーな状態よりも拡がるような変形によっては湾曲することはできない。したがって、ホース1がこの部分で湾曲するには、外芯15の内周面側付近において、外芯15と内芯10との間隔(遊び)が縮まるように変形することになる。そして撓みが増していくと、内芯10は(チューブ本体11を介して)左右の外芯15に挟まれるようになり、内芯10は位置ずれのきっかけとなる螺旋軸方向の捩じれや回転が生じにくくなる。さらに内芯10の断面形状を方形にしたことによっても捩じれや回転が生じにくくなっている。このようにして、内芯10および外芯15は互いに隣の芯と接近、接触することにより、凸面を乗り越えることはない。
【0028】
図3(b)は、隣接する内芯10どうし(外芯15どうし)が接近する方向に湾曲された部分の模式図である(湾曲部分の内側)。
拘束層16は可撓性ホース1がフリーな状態よりもテンションは弱くなり、撓みが増していくとやがてテンションが加わらない状態になるが、外芯15どうしが接近し、内芯10どうしも接近するようになり、外芯15と内芯10とが互いに(左右のチューブ本体11を介して)挟み付けた状態になる。したがって内芯10および外芯15はそれ以上の変形(捩じり、回転)が制限されて位置ずれが生じない。外芯15についても両側から挟まれた状態になるので位置ずれが生じにくくなる。
【0029】
以上は外芯15についてであるが、内芯10についても外芯15がチューブ本体11を押圧し、内芯10がチューブ本体11によって押圧されているので位置ずれが生じにくい。さらに内芯10を方形にし、凸面を乗り越えるための抵抗を高くしてあるのでこのことによっても位置ずれが生じにくい。また、
図3(b)に示した状態で撓む角度が大きくなると、内芯10についても隣接する外芯15で挟まれて上下左右に動けなくなるので、外芯15と同様に位置ずれが生じなくなる。
【0030】
(他の実施形態)
図4は本発明の他の一実施形態である可撓性ホース2について、その一部断面を分解して示した斜視図である。
図2と同じ構成部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
この実施形態では外芯25の断面形状を内芯10と同様の方形にしてある。
図2の実施形態のものは可撓性で優れており、これに比べて
図4の実施形態では多少可撓性は劣るようになるが、内芯10と外芯25とを方形にしたことにより、座屈しにくい構造になる。それゆえ
図4のものはホースの口径が大きく、耐圧性、保形性が求められる用途に向いている。
また、
図4のものではアース線としての金属ワイヤの導線23が保護層22に埋め込まれるようにしてあり、これにより静電気に対する安全を確保するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明はオール樹脂製の可撓性を有する耐圧ホースとして利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1、2 可撓性ホース
10 内芯(PP)
11 チューブ本体
12 フィルム層(フッ素樹脂)
13 フィルム層(PP)
14 フィルム層(フッ素樹脂)
15 外芯(PE)
16 拘束層
17 エラストマー層
18 織糸層(ポリエステル糸)
19 エラストマー層
20 配糸層(ポリエステル糸)
21 外巻層
22 保護層
23 アース線