【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ノリボガイン含有組成物、具体的には、高純度のノリボガインを2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)エナンチオマーとして含む組成物を指向する。しかしながら、本発明を詳細に説明する前に、以下の用語を最初に定義する。
【0015】
本発明は、記載した特定の態様に限定されるものではなく、変化しうると理解すべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で用いている用語は、特定の態様のみを説明するためであり、限定を意図するものではないと理解すべきである。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲で用いている単数形「a」、「an」、および「the」は、特記しない限り複数への参照を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「a(一つの)医薬的に許容される賦形剤」への参照は複数の該賦形剤を含む。
(定義)
【0017】
特記しない限り、本明細書で用いているすべての技術および科学用語は、当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書で用いている下記用語は以下の意味を有する。
【0018】
本明細書で用いている用語「含む(comprisingまたはcomprises)」は、該組成物および方法が記載した要素を含むが他を排除しないことを意味するものとする。「本質的に〜からなる」は、組成物および方法を定義するのに用いる場合、記載した目的の組み合わせの他のいかなる本質的な意義のある要素を排除することを意味する。したがって、本質的に本明細書に記載の要素からなる組成物は、本発明の基本的および新規特性に実質的に影響を及ぼさない他の物質または工程を排除しない。「〜からなる」は、微小要素を超える他の成分および実質的な方法工程を排除することを意味する。これらのトランジション用語のそれぞれによって定義される態様は本発明の範囲内である。
【0019】
本明細書で用いている用語「ノリボガイン」は、そのすべてのエナンチオマーを含むアルカロイドノリボガインを表し、そのそれぞれの医薬的に許容される塩も含む。2、4、5、6、および18原子の立体配置が2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)である式:
で示されるエナンチオマーが特に意義深い。
【0020】
用語「固体支持体」は、開裂可能なリンカーを介してその表面にノリボガインを共有結合する反応的官能性を含むかまたは含むように誘導体化することができる固定または半固定表面を有する物質を表す。そのような物質は、当該分野でよく知られており、例として、シリカ、合成ケイ酸塩、生体ケイ酸塩、多孔ガラス、ハイドロゲル、ケイ酸塩含有物質、合成ポリマー、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、およびそのコポリマー(ポリスチレン/ポリエチレングリコールおよびポリアクリルアミド/ポリエチレングリコールのコポリマーを含む)などが含まれる。固相支持体の他の非限定的例には陰イオン交換樹脂が含まれる。そのような樹脂は、結合した正荷電基を含み、陰イオンを交換する。陰イオン交換樹脂の非限定的例には、AMBERLITE(登録商標)Type I、AMBERLITE(登録商標)Type II、 DOWEX(登録商標)Type I、and DOWEX(登録商標)Type II陰イオン交換樹脂が含まれる。
【0021】
本明細書で用いている用語「開裂可能な連結基」は、固体支持体の1末端とノリボガインの他の末端を共有結合する共有結合、または化学基である連結基を表す。ノリボガインと固体支持体を結合する開裂可能な連結基の共有結合の少なくとも1つは特異的化学もしくは酵素反応により容易に破壊され、固体支持体を含まないノリボガインを提供することができる。連結アームの共有結合を破壊するのに用いる化学または酵素反応は、結合を破壊するのに特異的であり、該化合物の他の箇所に意図しない反応が生じるのを抑制するように選ばれる。開裂可能な連結基は、固体支持体からのノリボガインの早期開裂を抑制し、該支持体上での合成時に用いるあらゆる手順と干渉しないように、固体支持体上で形成されるノリボガインに応じて選択される。適切な開裂可能な連結基は、当該分野でよく知られており、カルボネート基、カルバメート基、アミド基などの基が含まれうる。好ましい態様において、開裂可能な連結基は10個未満の原子を含む。より好ましくは、開裂可能なリンカーは、1〜4個の炭素原子、2〜4個の酸素、窒素、硫黄から選ばれる異種原子、S(O)、およびS(O)
2を含む。
【0022】
本明細書で用いている用語「反応条件」は、化学反応が進行する詳細を表す。反応条件の例には、限定されるものではないが、反応温度、溶媒、pH、圧、反応時間、反応物のモル比、塩基または酸の存在、または触媒などの1またはそれ以上が含まれる。既知の反応の反応条件は、一般的には当業者に知られている。
【0023】
本明細書で用いている用語「還元剤」は、酸化還元反応において電子を提供し、水素を分子に加えるのを可能にする試薬を表す。適切な還元剤には、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどが含まれる。
【0024】
本明細書で用いている用語「還元的アミノ化条件」は、イミンを形成し、次いで還元剤を用いてアミンに還元するアミンとカルボニル化合物間の反応を表す。中間体のイミンは、還元工程の前に単離し精製するか、または予め単離または精製することなく還元工程に用いることができる。
【0025】
本明細書で用いている用語「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される、無毒性の、当該分野でよく知られた種々の有機および無機対イオンから誘導される塩を表し、例として、分子が酸性官能基を含む場合は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどの対イオンを、分子が塩基性官能基を含む場合は、クロリド、ブロミド、タートレート、メシレート、アセテート、マレエート、オキサレートなどが含まれる。
【0026】
本明細書で用いている用語「保護基」または「Pg」は、官能基と結合すると、保護された官能基を、化合物の他の部分上で行う反応条件に対して不活性にし、適切な時に「脱保護条件」下で反応させて元の官能性を再生することができるよく知られた官能基を表す。保護基の同一性は重要ではなく、分子の残りの部分と適合性であるように選ばれる。ある態様において、保護基は、本明細書に記載の反応中のイボガインまたはノリボガインのアミノ官能性を保護する「アミノ保護基」である。常套的なアミノ保護基の例には、例えばベンジル、アセチル、オキシアセチル、カルボニルオキシベンジル(Cbz)などが含まれる。別の態様において、保護基は、ノリボガインのヒドロキシル官能性を保護する「ヒドロキシ保護基」である。ヒドロキシル保護基の例には、例えば、ベンジル、p-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル、アリル、トリチル、ジアルキルシリルエーテル、例えば、ジメチルシリルエーテル、およびトリアルキルシリルエーテル、例えば、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、およびt-ブチルジメチルシリルエーテル;エステル、例えば、ベンゾイル、アセチル、フェニルアセチル、ホルミル、モノ-、ジ-、およびトリハロアセチル、例えば、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル;およびカーボネート、例えば、メチル、エチル、2,2,2-トリクロロエチル、アリル、ベンジル、およびp-ニトロフェニルが含まれる。ヒドロキシ保護基のさらなる例は、標準参考研究、例えば、Greene and Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis.、第2版、1991、John Wiley & Sons、およびMcOmie Protective Groups in Organic Chemistry、1975、Plenum Pressに記載されている。本明細書に記載の化合物のフェノールヒドロキシル基の保護および脱保護法は、従来技術、特にGreene and Wuts、上記、およびその中に記載の引用文献にみることができる。
実質的にイボガインを含まないノリボガインの製造
【0027】
本発明のノリボガイン組成物は、イボガインから製造することができる。0.5%ppm以下のイボガインを含むノリボガインは下記固体支持体合成法を用いて製造することができる。本化合物は天然産物のイボガインから製造され、下記反応はいかなる立体化学中心も含まないので、そのように製造したノリボガインは2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)エナンチオマーが少なくとも95%であり、該エナンチオマーが100%でありうる。
【0028】
ノリボガインの固相支持体合成法では、本発明のノリボガイン組成物は容易に利用可能な出発物質から下記一般的方法および手順を用いて製造することができる。典型的または好ましい処理条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧など)が示されている場合は、特記しない限り他の処理条件も用いることができると理解される。最適反応条件は、用いる特定の反応物や溶媒によって変化しうるが、そのような条件は、常套的最適化方法により当業者が決定することができる。
【0029】
さらに、当業者に明らかなように、ある種の官能基が望ましくない反応を受けるのを防ぐために常套的保護基が必要なことがある。種々の官能基の適切な保護基および特定の官能基を保護および脱保護するのに適した条件は当該分野でよく知られている。例えば、多くの保護基が、T. W. Greene and G. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第4版、Wiley、N.Y.、2007、およびその中の参考文献に記載されている。
【0030】
ノリボガインは、イボガインから、下記反応式[式中、PGはアミノ保護基を表し、LGは脱離基(例えば、ハロ、またはメシレート、トシレート、またはそのような他の基)を表し、Lは開裂可能な連結基(例えばカルボニル化合物、例えばカーボネートまたはカルバメート)を表し、●は固体支持体を表す。]に示す固体支持体を用いることにより製造および/または精製することができると予期される。
【0031】
下記反応式において、アリールメトキシ基のO-脱メチル化による対応するフェノールの製造は、当該分野で知られたあらゆる適切な方法を用いて達成することができる。適切な試薬には、Lewis酸(例えば、BBr
3、AlCl
3)、求核試薬(例えば、RS-、N
3-、SCN-)、高pH(例えばpH12)のNaCNなどが含まれる。ある態様において、該O-脱メチル化は、固体支持体との結合に影響しないか、または分子の立体化学中心の立体化学を変化させないように行うべきである。適切な試薬は、当業者が容易に確定することができ、例えば、T. W. Greene and G. M. Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第4版、Wiley、N.Y.、2007 (例えば、1006〜1008頁および1022〜1032頁の反応性チャート参照)およびその中の参考文献に記載されている。
【0032】
【0033】
ノリボガイン5は、反応式1に示すいずれかの経路でイボガイン10から製造および精製することができる。ノリボガイン、化合物5は、イボガインのメトキシ基がノリボガインではヒドロキシ基に変換されるのでイボガインと区別される。ある態様において、イボガインのインドールアミンをアミン保護基で保護して化合物1を得、次いで、タンデムO-脱メチル化および例えばL-SELECTRIDE(登録商標)を用いる保護基の除去、例えば、逐次O-脱メチル化および保護基の除去によりノリボガイン5を得ることができる。さらに、ある態様において、ノリボガインを当該分野で知られた方法を用いてイボガインのO-脱メチル化から直接製造および精製し、次いで固体支持体にノリボガインを付加し、混入物を洗浄し、連結基Lを開裂し、ノリボガイン5を回収することにより精製することができる。上記合成法において、1またはそれ以上の上記ノリボガインまたは中間体を当該分野で知られた標準的精製技術(例えばカラムクロマトグラフィ、HPLCなど)を用いて精製することができる。式11の化合物は、市販されているか、または市販されている出発物質(例えば、Sigma-Aldrich(登録商標)から市販されている樹脂参照)から1または2工程で合成することができる。
【0034】
別の態様において、ノリボガインは下記反応式2に記載のごとくイボガインから製造し精製することができる。
【0035】
[式中、Pgは水素またはアミノ保護基である、●は固体支持体を表す。]
【0036】
具体的には、反応式2において、アミノ保護イボガイン、化合物1を、当該分野でよく知られた条件を用いて、例えば塩化メチレン中で三臭化ホウ素または他の常套的脱メチル化剤と接触させて、アミノ保護ノリボガイン、化合物2を得る。
【0037】
反応式2において、アミノ保護ノリボガイン、化合物2と固体支持体との結合を、常套的条件下でクロロホルメート/固体支持体、化合物3を用いて達成し、化合物4(ここで、カーボネート基が、例示のみのために開裂可能な連結基として示されている。)を得る。他の開裂可能な連結基を同様に反応式2で用いることができる。アミノ保護イボガインは、化合物3と反応性の官能基を含まないので、アミノ保護ノリボガイン、化合物2のみが固体支持体と反応し、化合物4が得られる。化合物4の反復的洗浄は、アミノ保護ノリボガインの試料に夾雑するこの反応に用いたアミノ保護イボガインの部分を除去する。さらに、いつでも固体支持体の小部分を除去し、ノリボガインの試料(開裂および脱保護後)を得ることができる。次に、該試料を、常套的方法、例えば、GC/MS、NMR、C
13-NMRなどにより存在するあらゆるイボガインに対する純度を分析することができる。
【0038】
あらゆる夾雑しているイボガインに対するノリボガインの望む純度レベルを達成したら、ノリボガインを、開裂可能なリンカーを開裂し、次いでアミノ基を脱保護して支持体から回収することができる。開裂および脱保護は当該分野でよく知られている。
【0039】
所望により、きわめて純粋なノリボガイン、化合物5は、アミノ保護イボガイン、化合物2を形成する方法を反復し、化合物2と固体支持体をアミノ保護イボガインのヒドロキシル基を介して結合させ、固体支持体から夾雑しているイボガインの部分を洗浄することにより得ることができる。必要なだけ頻繁に(好ましくは5回未満)この方法を反復することにより、組成物中に存在するノリボガインの量に対して0.5wt%以下、0.3wt%以下、または0.1wt%以下のイボガインを有するノリボガイン組成物を製造することができると予期される。
【0040】
別の態様において、固体支持体は、ノリボガインがイオン的に結合する陰イオン交換樹脂である。そのような樹脂は、単純に溶出するだけで非荷電イボガインを通過させることができる。陰イオン交換樹脂の非限定的例には、固体支持体、好ましくは、第4級アンモニウム含有部分、例えば、トリアルキルベンジルアンモニウム含有部分で誘導体化された固体支持体が含まれる。適切なトリアルキルベンジルアンモニウム基には、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチル-2-ヒドロキシエチルベンジルアンモニウムなどが含まれる。市販の陰イオン交換樹脂の非限定的例には、AMBERLITE(登録商標)Type I、AMBERLITE(登録商標)Type II、DOWEX(登録商標)Type I、およびDOWEX(登録商標)Type II陰イオン交換樹脂が含まれる。pH調整によるノリボガインの回収は当業者に知られている。
【0041】
あるいはまた、塩酸ノリボガインを、塩酸イボガインから、最初にそれを遊離塩基、イボガインに変換し、メタノールで処理し、次いで、塩化メチレンなどの溶媒中で塩基、例えば炭酸カリウムで処理することにより製造した。次に、臭化水素酸イボガインを、塩化メチレンなどの溶媒中、三臭化ホウ素または他の常套的脱メチル化剤で処理することにより臭化水素酸ノリボガインに変換し、次いでメタノールで減衰させて臭化水素酸ノリボガインを得た。次に、下記反応式3に示すように、臭化水素酸ノリボガインを塩化メチレンなどの溶媒中、塩基、例えば炭酸カリウムで処理して遊離塩基に変換し、次いでシリカにて精製し、次いでイソプロパノールなどの溶媒中、HClを用いて塩酸塩に変換した。
【0042】
【0043】
下記反応式4に示す別の脱メチル化方法も予期される。
メチルエーテルを除去するためにBBr
3に代わりBCl
3を使用することは種々の利点があると予期される。この方法では、例えば、BBr
3を用いる場合に得られる臭化水素酸ノリボガインを塩酸塩に変換することなく一工程で塩酸ノリボガインを得ることができる。さらに、BCl
3を用いると、BBr
3を用いた時に得られる芳香族環のハロゲン化を実質的に減少させると予期される。
【0044】
ある態様において、ノリボガイン組成物中のイボガインの量は、イボガイン上の
14C豊富化メトキシ基で出発することにより決定することができる。最終組成物中のバックグラウンドを超える
14Cの量は、ノリボガイン組成物中のイボガインの量と相関し、次いでこれを用いて、使用した合成プロトコールがノリボガイン組成物において許容されるイボガインの最大量またはそれ以下であることを立証することができる。イボガイン上の
14C豊富化メトキシ基は、ノリボガインの12-ヒドロキシル基を豊富化
14Cメチル化剤でメチル化することにより容易に製造することができる。組成物中の
14C量の測定技術は、当該分野でよく知られており、検出限界は1ppt以下である。
【0045】
材料と方法に対する上記の例示した方法の多くの修飾を本発明の範囲から逸脱することなく行うことができることは当業者に明らかであろう。
【0046】
以下の合成的および生物学的実施例は本発明の例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。特記しない限り、すべての温度は摂氏温度である。
ノリボガイン組成物
【0047】
本発明は、エナンチオマー的に豊富化された実質的にイボガインを含まないノリボガイン組成物を提供する。
【0048】
ある態様において、本発明は、少なくとも95%のノリボガインが2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)エナンチオマーとして存在し、ノリボガインの総量に対して0.5wt%以下のイボガインを含む、ノリボガイン含有組成物を提供する。別の態様において、該組成物は、ノリボガインの総量に対して0.3wt%以下のイボガインを含む。別の態様において、該組成物は、ノリボガインの総量に対して0.1wt%以下のイボガインを含む。
【0049】
別の態様において、本発明は、少なくとも98%のノリボガインが2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)エナンチオマーとして存在し、ノリボガインの総量に対して0.5wt%以下のイボガインを含む、ノリボガイン含有組成物を提供する。別の態様において、本発明は、少なくとも98%のノリボガインが2(R)、4(S)、5(S)、6(S)、および18(R)エナンチオマーとして存在し、ノリボガインの総量に対して0.3wt%以下のイボガインを含む、ノリボガイン含有組成物を提供する。別の態様において、該組成物は、ノリボガインの総量に対して0.1wt%以下のイボガインを含む。