特許第6049633号(P6049633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049633
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ガス拡散電極
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/03 20060101AFI20161212BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20161212BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20161212BHJP
   H01M 8/08 20160101ALI20161212BHJP
   C25B 9/00 20060101ALI20161212BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20161212BHJP
【FI】
   C25B11/03
   H01M4/86 B
   H01M4/88 Z
   H01M8/08
   C25B9/00 E
   !H01M8/10
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-546683(P2013-546683)
(86)(22)【出願日】2011年12月23日
(65)【公表番号】特表2014-502673(P2014-502673A)
(43)【公表日】2014年2月3日
(86)【国際出願番号】EP2011073937
(87)【国際公開番号】WO2012089658
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年12月19日
(31)【優先権主張番号】10197276.8
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/427,868
(32)【優先日】2010年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513159413
【氏名又は名称】パルマスカンド アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】島宗 孝之
(72)【発明者】
【氏名】シュロス, ヨハネス
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−028216(JP,A)
【文献】 特開昭59−043888(JP,A)
【文献】 特開2008−127631(JP,A)
【文献】 特開昭62−232861(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101106198(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B11/00
H01M 4/86
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに付着された多孔性拡散層と多孔性反応層とを備えるガス拡散電極を調製する方法であって、
前記拡散層は、
i)a)犠牲材料、b)フッ素重合体、およびc)金属系材料を混合するステップであって、前記犠牲材料が275℃より低い放出温度を有し、混合された成分a)〜c)の総重量に基づく1〜25重量%までの量で加えられる、混合するステップと、
ii)ステップi)の前記混合物から拡散層を形成するステップと、
iii)前記拡散層から前記犠牲材料の少なくとも一部を放出するように275℃よりも低い温度に前記形成拡散層を加熱するステップであって、前記犠牲材料の放出後、前記拡散層の多孔率が60〜95%となるようにする、加熱するステップと
によって調製される、方法。
【請求項2】
前記拡散層および前記反応層は、相互に押圧されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス拡散電極が、基板を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップiii)において、前記拡散層が、少なくとも100℃の温度に加熱される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップiii)において、前記拡散層が、少なくとも150℃の温度に加熱される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
互いに付着された多孔性拡散層と多孔性反応層とを備えるガス拡散電極であって、前記拡散層が60〜95%の範囲にある多孔率を有し、ポリマー対金属の重量比が5:100〜40:100の範囲にある、ガス拡散電極。
【請求項7】
前記拡散層の多孔率が、65〜85%の範囲にある、請求項6に記載のガス拡散電極。
【請求項8】
前記電極が基板をさらに備える、請求項6または7に記載のガス拡散電極。
【請求項9】
前記拡散層が、10〜400μmの範囲にある直径を有する細孔を有する、請求項6から8のいずれか一項に記載のガス拡散電極。
【請求項10】
前記電極が親水性層を備える、請求項6から9のいずれか一項に記載のガス拡散電極。
【請求項11】
前記電極に集電体が配置される、請求項6から10のいずれか一項に記載のガス拡散電極。
【請求項12】
槽を陽極区画および陰極区画に分割するセパレータを備える電解槽であって、請求項6から11のいずれか一項に記載の電極が前記陰極区画に配置される、電解槽。
【請求項13】
請求項6から11のいずれか一項に記載のガス拡散電極を備える、燃料電池。
【請求項14】
請求項6から11のいずれか一項に記載のガス拡散電極を備える、金属−空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散電極、およびこの種のガス拡散電極を製造する方法に関する。本発明はまた、この種のガス拡散電極が配置される電解槽に関する。本発明はまた、たとえば塩素、アルカリ金属水酸化物、および塩素酸アルカリ金属塩を製造するためのこの種の電解槽の使用法に関する。本発明はまた、この種の電極が、燃料電池、または金属−空気二次電池の正極として組み込まれる配置に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素およびアルカリ金属水酸化物を製造するための塩素酸アルカリ金属塩の電気分解が、以前からずっと知られている。従来、水素発生用陰極が、この目的のために使用されている。従来の電解槽で起こる主な化学反応は、次のスキームで表され得る。すなわち、

2NaCl+2HO → Cl+2NaOH+H
【0003】
この電解反応は、2.24Vの理論槽電圧を有し、かなりの量のエネルギーを必要とする。
【0004】
また、以前より、酸素消費ガス拡散電極が、たとえば米国特許第4,578,159号明細書でさらに記載されているように、塩素およびアルカリ金属水酸化物の製造のために使用されている。本明細書で使用されるように、「ガス拡散電極」という用語は、少なくとも拡散層および反応層を備える電極に関するものであり、ガス拡散電極酸素含有反応物質ガスが、電気分解を受けるように供給される。電解質は、反応物質ガスが供給される側と反対にある電極の片側に供給される。電極の反応層で起こる主な全電池反応は、次のスキーム、すなわち、

2NaCl+HO+1/2O → Cl+2NaOH

で表され得る。理論槽電圧は、0.96V、すなわち水素発生用電極を有する槽の槽電圧の約40%だけである。陰極酸素還元 1/2O+HO+2e → 2OHは、+0.401Vの平衡電位を有し、1.23Vの水素発生用電極に対して全体の理論的差異を生じさせる。したがって、ガス拡散電極は、電解槽の運転のためのエネルギー・コストをかなり低減する。しかし、拡散の制御は、問題を伴う場合がある。
【0005】
本発明の目的は、拡散の制御を改善した改良されたガス拡散電極を提供することである。また、本発明の目的は、疎水性および電気伝導率の制御を含む電極の効率を改善することである。本発明のさらなる目的は、低下された電位、改善された安定性および/または電流分布を与える電極を提供することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、拡散層と、互いに配置される反応層とを備えるガス拡散電極を調製する方法であって、拡散層は、i)a)犠牲材料、b)ポリマー、c)金属系材料、およびd)随意によるさらなる成分であって、犠牲材料が約275℃より低い放出温度を有し、混合される成分a)〜d)の総重量に基づいて約1〜約25重量%までの量が加えられる成分を混合するステップと、ii)ステップi)の混合物から拡散層を形成するステップと、iii)拡散層から前記犠牲材料の少なくとも一部を放出するように約275℃よりも低い温度に形成拡散層を加熱するステップとによって調製される、方法に関する。
【0007】
一実施形態によれば、拡散層および反応層および可能なさらなる層(複数の層)の配置という面においては、「配置される(arranged)」という用語によって、層が互いに「取り付けられる(attached)」、たとえば接合されまたは固定されることが意味される。一実施形態によれば、層を配置する1つの方法は、ある層を別の層に被覆することによってである。
【0008】
一実施形態によれば、拡散層および反応層は、インキおよび/またはペーストから作られる。一実施形態によれば、インキおよび/またはペーストは、溶液中に懸濁される。一実施形態によれば、拡散層および反応層は、一緒に被覆され、圧延され、かつ/または圧縮される。一実施形態によれば、拡散層および反応層は、別個にまたは一緒に焼結される。
【0009】
一実施形態によれば、拡散層の焼結は、拡散層がステップ(i)、すなわち犠牲材料を放出するように約275℃よりも低い温度に加熱されるのと同時に、随意により反応層と共に行われる。
【0010】
一実施形態によれば、少なくとも50重量%、たとえば少なくとも約75重量%または少なくとも90重量%の犠牲材料が、拡散層から放出される。これは、たとえば、犠牲材料が放出される温度および時間によって制御され得る。
【0011】
「放出温度」という用語によって、犠牲材料が放出され得る温度、たとえば、犠牲材料が分解され、または蒸発され、または気化され、または沸騰させて蒸発され、または溶解、除去され、浸漬され、または他の何らかの方法でこれが混合されているさらなる成分から引き抜かれ、または放出される温度が意味される。犠牲材料が拡散層から放出されるとき、細孔が、拡散層に形成される。
【0012】
一実施形態によれば、ステップii)の後の拡散層は、少なくとも約100℃、たとえば少なくとも125℃、または少なくとも約150℃、または少なくとも175℃の温度に加熱される。一実施形態によれば、拡散層は、約275℃よりも低い、たとえば約250℃よりも低い、たとえば約225℃よりも低い、または約200℃よりも低い温度に加熱される。
【0013】
「犠牲材料」という用語は、ガス拡散電極を構成する成分b)〜d)と混合することができるが、層(複数の層)が犠牲材料の放出温度に加熱された後に、調製された拡散層および、随意により他の層(複数の層)から放出される材料を意味する。放出され、さらなる成分と混合されることができ、約275℃よりも低い「放出温度」を有する任意の適切な材料が、使用され得る。
【0014】
一実施形態によれば、犠牲材料は、水性媒質および/または有機媒質中に拡散され得る。一実施形態によれば、犠牲材料は、水性媒質および/または有機媒質中に懸濁され得る。
【0015】
一実施形態によれば、使用される犠牲材料は、有機および/または無機塩、ならびに/あるいは酸またはそれらの混合物、たとえば酢酸アンモニウムなどの酢酸塩、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、および/またはクエン酸アンモニウムなどのクエン酸塩;無機塩、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウムなどの塩化物塩から選択される。一実施形態によれば、犠牲材料が放出される放出温度は、約100〜約275℃、たとえば約125〜約250℃、たとえば約150〜約225℃、または約175〜約225℃の範囲にわたる。したがって、犠牲材料は、上記の温度範囲のいずれかの範囲内の放出温度を有する。
【0016】
一実施形態によれば、犠牲材料、たとえば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどのアルカリ金属塩は、水などの溶媒で形成しまたは形成される拡散層を浸漬することによって放出される。
【0017】
一実施形態によれば、金属系材料は、少なくとも80重量%、たとえば少なくとも95重量%の量の金属を含むが、また、導電性ポリマーなどの他の金属、および/または非金属材料を含むこともできる。
【0018】
一実施形態によれば、金属系材料は、金属、たとえば銀、または銀めっきの金属、たとえば銀めっきのニッケル、または銀めっきの銅などの貴金属、または、ニッケル、銅などの高導電性の他の遷移金属、あるいは、導電性のポリマーまたはカーボン、たとえば繊維、フェルトおよび/または布の形の、チタン基またはシリコン基セラミック材料、たとえばTiO、SiC、および/またはSiなどのセラミックである。一実施形態によれば、拡散層は、ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの炭化水素ポリマーなどのポリマー;塩素および/またはフッ素を含有するハロカーボンポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロフルオロエチレン、またはそれらの混合物、たとえばPTFEなどのフッ素重合体を含む。一実施形態によれば、ポリマーは、10,000g/モル以上の分子量を有する。一実施形態によれば、金属は、たとえば約0.01〜約100μm、たとえば約0.01〜約50μmの範囲にわたるサイズの粉末形態になっている。
【0019】
一実施形態によれば、集電体が電極に配置される。一実施形態によれば、拡散層の電気伝導率は、約1S/m〜約1×10S/m、たとえば約1〜約1×10S/mの範囲にある。一実施形態によれば、拡散層は、このように集電体の機能を有することができる。
【0020】
一実施形態によれば、拡散層を調製するように、犠牲材料は、金属系材料、たとえば金属、およびポリマー、ならびに混合された前記成分a)〜d)の総重量に基づく約1〜約20重量%、たとえば約5〜約15重量%、たとえば約5〜約10重量%の範囲にわたる量の上記で規定したような随意によるさらなる成分と混合される。
【0021】
一実施形態によれば、熱処理前の形成された拡散層は、金属、ポリマー、および犠牲材料、ならびに随意によるさらなる成分から成る。拡散層は、約275℃よりも低い温度に加熱することによって焼結され得る。一実施形態によれば、焼結は、約325℃よりも低い、たとえば約300℃よりも低い、または約275℃よりも低い温度で、あるいは犠牲材料の焼結および放出が同時に行われ得るそのような温度で行われる。また、焼結は、犠牲材料が放出される他の何らかの適切な温度で行われ得る。一実施形態によれば、焼結の時間は、約1分〜約2時間、たとえば約0.5時間〜約2時間、または約0.5時間〜約1.5時間の範囲にわたる。また、これらの時間の範囲は、犠牲材料の十分な量の放出に適切であり得る。
【0022】
一実施形態によれば、触媒材料およびポリマーを含む反応層前駆体材料の混合物は、たとえば塗装、ペースティング、コーティング、または圧延によって拡散層に被覆される。その後は、被覆された拡散層は、加熱され、ガス拡散電極を形成するように同時に焼結され得る。
【0023】
一実施形態によれば、拡散層および反応層は、相互に押圧される。そのような方法で、ガス拡散電極の多孔率が、完全のまま維持され得る。一実施形態によれば、反応層および拡散層は、約100〜約600kg/cm、たとえば約100〜約300kg/cmの範囲にわたる圧力で圧縮される。
【0024】
一実施形態によれば、反応層および拡散層は、たとえば厚さが約300〜約1000μm、たとえば約300〜約800μm、または約300〜約600μmの範囲にわたり、一緒に圧延される。一実施形態によれば、圧延された反応層および拡散層の厚さは、約500〜約1000μmの範囲にわたる。
【0025】
一実施形態によれば、拡散層を調製するプロセスでは、ポリマー、たとえばドライPTFE;および金属、たとえば銀または銀被覆金属が、ポリマー対金属の重量比で約5:100〜約40:100、たとえば約15:100〜約40:100、またはたとえば約15:100〜約25:100、または約20:100〜約25:100の範囲にわたり混合される。こうして、この種の重量比を有する調製された拡散層が得られる。
【0026】
一実施形態によれば、いかなるバッキング・ポリマー・シート、たとえばバッキングPTFEシートも、陰極液がガス区画に入るのを防止するために拡散層に含まれない。
【0027】
一実施形態によれば、水および/または炭化水素溶媒が、拡散層を調製するように混合された成分a)〜d)に加えられる。この種の溶媒、たとえばメタノール、エタノール、ヘキサン、またはShellsol D−70などの脂肪族または芳香族炭化水素が、拡散層を構成するさらなる成分a)〜d)と共にコロイドミルで混合され得る。一実施形態によれば、いかなるさらなる成分d)も、成分a)〜c)と混合されない。
【0028】
一実施形態によれば、反応層は、たとえば、遷移金属;銀、金、ルテニウム、パラジウム、白金または白金族金属;白金の合金または2元もしくは3元の組み合せ、パラジウム、鉄、ニッケル、コバルト、クロミウムの合金、あるいはそれらの混合物および/または酸化物、たとえば白金、銀、あるいはそれらの混合物または酸化物から成る触媒材料を含む。一実施形態によれば、反応層は、ABOタイプの灰チタン石を含み、ここに、Aは、周期表IIA、IIIA、および/またはランタニドからの元素であり、Bは、1つまたはいくつかの遷移金属、および/またはそれらの混合物である。一実施形態によれば、反応層は、約0.01μm〜約100μm、たとえば約0.01μm〜約50μm、たとえば約0.01μm〜約1μmの範囲の粒子を含むことができる。一実施形態によれば、粒子は、拡散層上の被覆として配置され得る。一例を挙げれば、銀反応層が被覆され得る。
【0029】
一実施形態によれば、少なくとも約50%、たとえば少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%の犠牲材料が、反応層から放出される。
【0030】
一実施形態によれば、反応層は、別個にまたは拡散層と共に、少なくとも約100℃、たとえば少なくとも約125℃、または少なくとも約150℃または少なくとも約175℃の温度で加熱される。一実施形態によれば、反応層は、約275℃よりも低い、たとえば約250℃よりも低い、たとえば約225℃よりも低い、または約200℃よりも低い温度に加熱される。犠牲材料が成分b)〜d)と混合されている場合、反応層は、この種の熱処理後に多孔質化される。
【0031】
一実施形態によれば、反応層のために使用される犠牲材料は、たとえば有機塩および/または有機酸、たとえば酢酸アンモニウムなどの酢酸塩、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、クエン酸アンモニウムなどのクエン酸塩;塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、および塩化カリウムなどの塩化物塩から選択される。
【0032】
一実施形態によれば、犠牲材料は、反応層を構成するさらなる成分、たとえば、混合された成分の総重量に基づく約1〜約25重量%、たとえば約5〜約15重量%、たとえば約5〜約10重量%の範囲にわたる量で、上記で規定したような金属およびポリマーと混合される。
【0033】
一実施形態によれば、反応層は、約5〜約95%、たとえば約5〜約50%、たとえば約10〜約40%、または約20〜約40%の範囲にわたる多孔率を有する。
【0034】
一実施形態によれば、反応層の多孔率、すなわち犠牲材料の放出後に形成される反応層の多孔率は、約30〜約80%、または約30〜約75%、または約40〜約70%の範囲にわたる。一実施形態によれば、反応層の多孔率は、約60〜約95%、たとえば約60〜約90%、または約65〜約85%の範囲にわたる。
【0035】
「多孔率」という用語は、見掛け密度/理論密度の比によって定義される。見掛け密度は、測定重量、および(それらの寸法から算定される)見掛け体積から測定され、算定され得る。理論密度は、当業者にはよく知られており、たとえば周知の参考文献で見つけ出すことができる。多孔率は、拡散層を構成するさらなる成分、および随意により反応層を構成する成分に、犠牲材料を加えることによって本発明によってもたらされる。その後、犠牲材料が放出されることにより、多孔率の増加が生じる。
【0036】
一実施形態によれば、拡散層および/または反応層に形成される細孔は、約0.1〜約400μm、約10〜約400μm、たとえば約25〜約300μm、または約50〜約150μmの範囲にわたる直径を有する。
【0037】
一実施形態によれば、反応層の密度は、約2〜約7g/cm、たとえば約2.5〜約6.5g/cm、または約2.5〜約4.5g/cmの範囲にある。
【0038】
一実施形態によれば、バインダーとして機能するポリマー、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、ナフィオン(Nafion)(登録商標)(パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂)などのフルオロポリマー、およびそれらの誘導体、あるいは、ポリクロロフルオロエチレンまたはそれらの混合物、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン(Nafion)(登録商標))またはそれらの混合物または誘導体などの他のハロカーボンポリマーが、反応層に含まれ得る。一実施形態によれば、ポリマー、たとえばPTFEは、たとえば、約0.1〜約100μm、たとえば約1〜約10μmの範囲にわたるサイズを有する、微粉末の形で使用され得る。
【0039】
一実施形態によれば、ポリマー、たとえばPTFEは、表面活性剤有りまたは無しで使用され得る。いかなる表面活性剤も使用されない場合、たとえば約275℃よりも低い、より低い焼結温度が、ガス拡散電極の拡散層および/または反応層を形成するために使用され得る。温度がこの限界よりも低い場合、実質的に、触媒材料に対するいかなる有害な影響も生じない。
【0040】
反応層の一実施形態によれば、ポリマー対触媒材料の重量比は、約3:100〜約30:100、たとえば約3:100〜約25:100、たとえば約4:100〜約15:100の範囲にわたる。一実施形態によれば、ポリマー対触媒の重量比は、約10:100〜約25:100の範囲にわたる。
【0041】
一実施形態によれば、反応層の厚さは、約10〜約1000μm、たとえば約20〜約600μm、または約50〜約100μmの範囲にわたる。
【0042】
一実施形態によれば、反応層は、それの熱処理の前に、たとえば触媒材料およびポリマー、ならびに随意により犠牲材料をプレス成形によって、反応層を構成する成分を混合し、押圧することによって調製される。一実施形態によれば、約0.01〜約100μm、たとえば約0.01〜約1.0μmの範囲にわたるサイズを有する触媒粉末が、それと共に約0.01〜約20μm、たとえば約0.1〜約10μmの範囲にわたるサイズを有する触媒粉末を混合する前に、ポリマーと混合され得る。一例を挙げれば、このテクスチャを有する銀触媒材料が、PTFEと混合され得る。
【0043】
一実施形態によれば、触媒、たとえば触媒粉末は、熱処理ステップより先行するプレス成形または圧延より前に、ポリマー、たとえばPTFEと混合される。
【0044】
一実施形態によれば、反応層の熱処理は、約100〜約275℃、たとえば約110〜約220℃、たとえば約110〜約150℃の範囲にわたる温度で行われる。一実施形態によれば、熱処理は、約175〜約275℃の温度で行われる。この手順は、反応層を拡散層などのガス拡散電極の他の何らかの隣接層に付着するのに使用され得る。
【0045】
一実施形態によれば、基板は、拡散層の反対側の反応層に配置される。
【0046】
一実施形態によれば、集電体は、反応層の反対側の拡散層に配置される。
【0047】
一実施形態によれば、集電体は、反応層と拡散層との間に配置される。一実施形態によれば、集電体は、拡散層の反対側の反応層に配置される。
【0048】
一実施形態によれば、集電体は、銀、または銀めっきのニッケル、鉄、銅などの銀めっきの金属などの金属、カーボンまたはカーボン・ファブリックから成る。一実施形態によれば、集電体は、織られているか、またはエキスパンド・メッシュである。一実施形態によれば、集電体のサイズは、約25〜約100メッシュの範囲にわたる。
【0049】
一実施形態によれば、集電体は、ネット、メッシュ、延伸金属、または他の構造であることができ、ガス拡散電極にさらなる機械的支持を提供することができる。
【0050】
一実施形態によれば、ガス拡散電極は、親水性層を含む。親水性層は、たとえば拡散層の反対側の、反応層に配置され得る。親水性層は、陰極区画に存在する電解質、たとえば苛性ソーダなどのアルカリ性溶液に耐える多孔性材料を含む。適切に、親水性層は、カーボン布、多孔性カーボン、焼結カーボンなどのカーボン、またはそれらの混合物を含む。
【0051】
一実施形態によれば、バリア層が、ガス拡散電極の反応層に配置される。バリア層は、たとえば欧州特許第1337690号明細書に記載される通りであり得る。
【0052】
一実施形態によれば、親水性層は、反応層と反対側のバリア層に配置される。親水性層は、電解槽をガス拡散電極が配置される陰極区画と陽極区画とに仕切る、イオン選択性膜などのセパレータ、またはその近くに配置されることができる。一実施形態によれば、それによって、陰極液は、2つの区画配置において膜と親水性層との間に、すなわち陰極区画において別個のガス区画なしで維持され得る。
【0053】
一実施形態によれば、ガス拡散電極は、電極基板、たとえばメッシュを備える。基板は、ガス拡散電極の任意の層に配置され得る。
【0054】
一実施形態によれば、基板は、反応層に配置される。一実施形態によれば、基板は、拡散層に配置される。
【0055】
一実施形態によれば、電極基板は、銀、または銀めっきのステンレス鋼、銀めっきのニッケル、銀めっきの銅などの銀めっきの金属、金、金めっきのニッケル、または金めっきの銅などの金めっきの金属;ニッケル、コバルト、コバルトめっきの銅などのコバルトめっきの金属、またはそれらの混合物、たとえば銀または銀めっきの金属から作られ得る。また、ハロカーボンポリマーなどのポリマーは、非常に微細に分割された粒子状固体、たとえばミクロンサイズの粒子として電極基板に組み込まれ得る。
【0056】
一実施形態によれば、電極基板は、拡散層、または拡散層の内側に配置される。一実施形態によれば、電極基板は、反応層、または反応層の内側に配置される。一実施形態によれば、電極基板は、拡散層および反応層の両方に、またはその両方の内側に、たとえば拡散層にも反応層にも配置される。
【0057】
一実施形態によれば、基板は、拡散層の内側に配置される。一実施形態によれば、基板対拡散層の厚さの比は、約1:1〜約1:10、たとえば約1:1〜約1:5、または約1:4〜約1:8の範囲にわたる。一実施形態によれば、基板は、部分的に拡散層の内側に、および部分的にその外側に配置される。
【0058】
一実施形態によれば、基板は、拡散層の内側にも反応層の内側にも配置される。
【0059】
一実施形態によれば、基板は、部分的に反応層の内側に、かつ部分的に反応層の外側に配置される。
【0060】
一実施形態によれば、1つまたはいくつかの基板が、ガス拡散電極に配置される。一実施形態によれば、2つ以上の基板が、ガス拡散電極構造、たとえば拡散層にも反応層にも配置される。
【0061】
一実施形態によれば、ガス拡散電極の層は、被覆によって互いに配置される。
【0062】
一実施形態によれば、拡散層および反応層は、被覆によって電極基板に配置される。
【0063】
一実施形態によれば、電極は、次のステップのうちの1つまたは数個によって調製される。すなわち、
1)随意により、ネットまたはメッシュの上に粉末ペーストを適切に塗布することによって、基板を用意し、その後、その粉末ペーストが約150〜約500℃、たとえば約200〜約275℃の温度でネットに焼結されるステップと、
2)反応層、およびその反対側にガス拡散層を形成するように、電極基板の片側に電気触媒粉末ペーストおよび/または溶液を塗布し、あるいは基板のないところで反応層または拡散層のどちらかに電気触媒粉末ペーストおよび/または溶液を直接塗布し、電気触媒粉末ペーストおよび/または溶液、ならびに随意によるバインダー溶液が、約70〜150℃の温度で適切に焼成されるステップと、
3)随意によりバリア層を反応層に付着するステップと、
4)随意により親水性層をバリア層に配置するステップとである。
【0064】
一実施形態によれば、ステップ1の粉末ペーストは、銀粉末ペースト、金粉末ペースト、またはそれらの混合物、好ましくは銀ペーストである。粉末ペーストが焼結されるネットまたはメッシュは、銀、または銀めっきのステンレス鋼、銀めっきのニッケル、銀めっきの銅などの銀めっきの金属、金、金めっきのニッケルなどの金めっきの金属、銅、金めっきの銅;ニッケル、コバルト、コバルトめっきの銅などのコバルトめっきの金属、またはそれらの混合物、好ましくは銀または銀めっきの金属から適切に作られる。ステップ2の随意により塗布されるバインダー溶液は、適切に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン(Nafion)(登録商標))などのフルオロポリマー、またはそれらの誘導体であり、これは、パーフルオロカーボンスルホン酸型樹脂、フッ素化エチレンプロピレン共重合体(FEP)、または、ポリクロロフルオロエチレンまたはそれらの混合物などの他のハロカーボンポリマー、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン(Nafion)(登録商標))を適切に含む。また、電気触媒粉末ペーストおよび/または溶液を塗布するステップは、ステップ1またはステップ3と同時に行われ得る。反応層と疎水性層との間の直接接触を回避する良好な親和性を与えるために、反応層には、たとえばZrOのバリア層が設けられる。
【0065】
一実施形態によれば、ガス拡散電極は、銀メッシュ基板、銀粉末および基板に焼結されるPTFEの銀ペースト混合物を含む拡散層を含み、それの片側に配置される反応層は、銀および/または白金層、および/または金属酸化物の触媒を含み、反応層の上に、30重量%PTFEで混合される70重量%ZrO粉末、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン(Nafion)(登録商標))、またはそれらの混合物から成るバリア層が配置され、そのバリア層に、疎水性層が配置される。
【0066】
また、本発明は、本明細書で規定されるような方法によって取得可能なガス拡散電極に関する。
【0067】
また、本発明は、拡散層と、互いに配置される反応層とを備えるガス拡散電極に関し、拡散層は、約60〜約95%の範囲にわたる多孔率を有する。本明細書で規定されるようなガス拡散電極によって得られる1つの利点は、反応層と拡散層との間の粘着性が高められることである。拡散層が本明細書で規定されるような放出温度に加熱されるにつれて犠牲材料が放出されるとき、拡散層が多孔質化される。
【0068】
一実施形態によれば、拡散層は、約60〜約90%、たとえば約60〜約85%、または約65〜約85%の範囲にわたる多孔率を有する。
【0069】
一実施形態によれば、拡散層に形成される細孔は、約0.1〜約400μm、たとえば約10〜約400μm、たとえば約25〜約300μm、または約50〜約150μmの範囲にわたる直径を有する。
【0070】
一実施形態によれば、拡散層の密度は、約2〜約7g/cm、たとえば約2.5〜約6.5g/cm、たとえば約2.5〜約4.5g/cmの範囲にある。
【0071】
一実施形態によれば、拡散層および、随意による集電体の厚さは、約200〜約1000μm、たとえば約300〜約900μm、たとえば約500〜約600μmの範囲にある。拡散層、反応層、集電体、親水性層、およびバリア層のさらなる特性、ならびにガス拡散電極の他の何らかの特徴は、本方法の説明で規定されるように本明細書で述べられている。
【0072】
本発明は、さらに、槽を陽極区画および陰極区画に分割するセパレータを備える電解槽に関し、陰極区画は、上記で説明したガス拡散電極を備える。任意の適切な陽極を陽極区画に使用することができる。ガス拡散電極は、米国特許第5,938,901号明細書でさらに説明されるように、複数の帯状の電極部材として、または電極パッチワーク構成で電解槽に配置され得る。
【0073】
一実施形態によれば、複数のガス拡散電極部材は、空間が各電極部材の間にあるように電解槽の垂直方向に配置される。
【0074】
一実施形態によれば、槽は、改修された従来の槽、すなわち水素発生用陰極を有する槽である。
【0075】
一実施形態によれば、ガス拡散電極は、3つの区画槽に配置される。一実施形態によれば、ガス拡散電極は、2つの区画槽に配置される。
【0076】
一実施形態によれば、セパレータは、主鎖に結合される固定したイオン交換基によるイオン電荷を転送する固体ポリマー電解質から作られる、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(ナフィオン(Nafion)(登録商標))などの、カチオン交換膜などの市販されているイオン交換膜である。一実施形態によれば、使用される膜は、電解質と、槽に生成されるガス生成物の通路との流体力学的な流れに対して実質的に不浸透性の、不活性な可撓性膜である。イオン交換膜は、スルホン基またはカルボキシル基など、結合され固定されたイオン基で被覆されるパーフルオロ化骨格を含むことができる。「スルホン基(sulfonic)」および「カルボキシル基(carboxylic)」という用語は、加水分解などのプロセスによって酸基に、または酸基から適切に変換されるスルホン酸およびカルボン酸の塩を含むことが意味される。また、ポリマー支持体に第4級アミンを含む非パーフルオロ化イオン交換膜または陰イオン交換膜を使用することもできる。
【0077】
一実施形態によれば、また、空間が各電極部材の間に水平方向に設けられる。それによって、電極部材は、槽の全水平方向にわたって続いているとは限らないが、水平方向に複数の部分に分割され得る。電極部材が水平方向に分割される一実施形態では、電解質は、水平分割によって形成される各空間から流下することができる。したがって、電解質は、電極部材から容易に放出され得る。空間を間にして水平方向にも垂直方向にも配置される複数の電極部材の構造は、パッチワークと記述され得る。
【0078】
さらに、本発明は、本明細書で説明されるようにガス拡散電極を備える金属−空気電池に関する。
【0079】
さらに、本発明は、たとえば塩素、アルカリ金属水酸化物、および塩素酸アルカリ金属塩を製造するための、電解槽でのガス拡散電極の使用法に関する。ガス拡散電極は、新たに構成された電解槽にも改修されまたは改造された電解槽にも使用され得る。一実施形態によれば、ガス拡散電極は、塩酸電解のため、またはガス拡散電極が陽極として使用される金属電解採取のために使用され得る。また、本発明のガス拡散電極は、燃料電池、たとえばアルカリ燃料電池(AFC)、直接メタノール燃料電池(DMFC)、直接ヒドラジン燃料電池(DHFC)、直接ボロハイドライド燃料電池(DBHFC)、ならびにアルミニウム−空気、亜鉛−空気、鉄−空気、金属水素化物−空気、およびリチウム−空気などの金属−空気二次電池の正極に使用され得る。
【0080】
本発明がこのように説明されているので、同一のものを様々に変更できることが明らかであろう。この種の変更は、本発明の要旨および範囲からの逸脱と考えられるべきではなく、当業者に明らかとなるようなこの種の改変はすべて、特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。次の諸実施例は、説明された本発明が、その範囲を限定することなくいかに実施され得るかをさらに示す。特記されない限り、本明細書で与えられる百分率はすべて、重量パーセントに関係するものである。
【実施例1】
【0081】
0.1〜10μmの粒径を有する銀粉末が、20〜30重量%の微細なPTFE粉末、と共に混合され、炭酸アンモニウムの犠牲材料がD70溶剤と共に混合された。その後、溶媒は、膜フィルタ(1μmカットオフ)で濾過によって除去された。このように得られた銀ペーストは、厚さ0.6mmの層を調製するように圧延された。この層は、拡散層のための前駆体として使用された。同じ手順が、基準を得るように、犠牲材料なしで繰り返された。
【0082】
次いで、反応層の前駆体が、0.01〜1μmのサイズの粉末の黒色銀、およびの5重量%のPTFE、および15重量%の炭酸アンモニウムを用いることによって、同様なプロセス条件の下で調製された。銀粉末および炭酸アンモニウムは、混合され、D70中に懸濁された。拡散層、反応層、および直径0.1mmの銀ワイヤを有する銀織メッシュの、このように調製された前駆体が、積み重ねられ、次の順序、すなわち反応層(上端)、拡散層(中間)、メッシュ(底部)の順で配置された。こうして得られた積み重ねられたシートは、150℃、および750kg/cmの圧力でホットプレスされ、その結果、1枚の平坦なプレートが得られた。その後、このように得られたプレートは、200℃で30分間熱処理された。
【0083】
このように得られた試料は、電気化学的に測定され、これらの陰極電位は、反応ガスとして酸素を加えることによって10 M NaOHで読み取った。電位は、基準電極としてHg/HgOに対して測定された。表1は、次の結果を示している。
【表1】
【0084】
表1から見ることができるように、犠牲材料を少なくとも拡散層の中に組み込むことによって、基準と比較してはるかに低い過電圧を、本発明について得ることができた。
【実施例2】
【0085】
実施例1の電極1から開始して、白金塗料が、その反応層に塗布され、空気雰囲気中において180℃で1時間、熱処理された。このように得られた試料電極は、実施例1の場合と同じ条件の下で電位測定に提示された。結果は、表2に列挙されている。
【表2】
【0086】
このように得られた電極試料は、かなり低い電位になり、非常に安定な疎水性/親水性特性を有していた。
【実施例3】
【0087】
拡散層を有する電極試料が、電極1と同じ条件の下で調製された。AgおよびPd、あるいはAgおよび灰チタン石の電極材料を含むペーストが、メッシュ(集電体)の反対側の拡散層の表面に塗布された。電極材料のローディング量を変化させた。
【0088】
Ag/Pt(電極番号11)およびAg/Pd(電極番号12)の調製は、上記の前記拡散層表面にペーストを塗布し、続いて150℃で乾燥させ、N流れ中300℃で加熱することによって行われた。このように得られた電極は、実施例1の場合と同じ条件の下で電位測定に提示され、これらは表3に列挙されている。
【表3】
【実施例4】
【0089】
拡散層および反応層が、電極1の場合と同じ条件の下で調製された。拡散層の組成は、粒径1〜50μmを有する75重量%の白銀粉末と、犠牲材料として15重量%の酢酸アンモニウムと、10重量%のPTFE微粉末とから成っていた。拡散層前駆体は、実施例1の場合と同じプロセスの下で調製された(前駆体シートの厚さは1mmであった)。銀エキスパンド・メッシュは、厚さ0.2mmのAg箔から調製された。Lw×Sw×Stのメッシュ・サイズは、4×2×0.4mmであった。見掛けの厚さは、0.4mmであった。このAgメッシュは、上記の調製された拡散層前駆体シートと積み重ねられ、110℃、および500kg/cmの圧力で30分間ホットプレスされた。厚さ0.9mmの拡散層が得られた。その後、サイズ0.01〜0.5μmの80重量%のAg粒子、および20重量%のクエン酸アンモニウム(犠牲材料)、および5重量%のPTFEを含有するAgペーストが、拡散層の表面に塗布された。続いて、乾燥後に、塗装拡散層は、200℃で15分間熱処理された。
【0090】
こうして、2種類の電極が得られ、電極番号20は、エキスパンド・メッシュの反対側に反応層を有し、番号21は、このメッシュと同じ側に反応層を有した。電位測定は、実施例1の場合と同じ条件の下で行われた。6kA/mにおける測定された電位は、それぞれ−238mV(番号20)、および−229mV(番号21)であった。基本的に、これらの2つの電極の間の差異は、全く見い出されなかった。
【実施例5】
【0091】
実施例4で得られたサイズ100×100mmの電極試料が、カチオン交換膜(ナフィオン961(Nafion 961))によって分離される2つの区画を有する小さな実験用電解槽に提示された。陽極側に、膜表面と密接に接触したIr/Ru/Ti−酸化物被膜(DSA)を有する金属メッシュ電極が配置された。電極番号20および21は、厚さ0.2mmのカーボン布を介して膜と密接に接触した陰極として取り付けられた。NaOHドレイニングが、陰極区画の底部に取り付けられ、また、Oガス供給部および出口が陰極区画に配置された。NaCl溶液が、陽極区画で循環され、発生したClガスが、陽極区画の外側で除去された。こうして得られた電解槽の構成は、2室型ガス拡散電極槽、または、現存する電解槽の改修のモデルである。電解テストが、下記による運転条件で行われた。すなわち、
陽極液:200g/L NaCl、pH=2.0
陰極液:350g/L NaOH
温度:85℃
電流密度:4kA/m、および6kA/m
槽電圧:
電極番号20 1.98V(4kA/m)、2.22V(6kA/m
電極番号21 1.99V(4kA/m)、2.22V(6kA/m
【0092】
得られた結果は、2つの試料の間にいかなる差異も示さず、槽電圧の節約は、従来のH発生用電解槽と比較してほとんど1Vであった。
【実施例6】
【0093】
電極試料は、実施例1の場合と同じ条件の下で調製された。拡散層の組成は、70重量%の銀、10重量%の(NHCO(炭酸アンモニウム)、および20重量%のPTFEから成っていた。銀シート前駆体は、実施例と同じ条件の下で圧延によって形成された。反応層の前駆体は、粒径が0.0005〜0.5μmまたは0.005〜0.5μmの、80重量%の銀粉末、15重量%の(NHCO(炭酸アンモニウム)、および5重量%のPTFE微粉末から形成された。粉末は、D70溶剤中に懸濁された。コロイドの・ミキサによって十分に混合した後、粉末は、次いで0.5μmの膜フィルタで濾過された。銀含有ゴムを調製した後、これは、0.2mmの薄いシートに圧延された。このシートを拡散層前駆体(厚さ0.6mm)と共に積み重ねた後、これは、1枚のシートを作るように加圧ロールで再び圧延された。こうして形成されたシートは、180℃で30分間加熱された。こうして形成されたガス拡散電極試料が得られ、その結果合計厚さが0.7mmとなった。この電極はいかなる集電体も有さなかったが、電気抵抗が小さく、集電体として十分に作用した。電極は、実施例5の場合と同じ電解槽に提示された。また、電解条件も実施例5の場合と同じであった。槽電圧は、4kA/mで1.89V、および6kA/mで2.06Vであった。電極に集電体のない場合でさえ、良好な電解効果を得ることができた。
【実施例7】
【0094】
拡散層および反応層が、実施例1の場合と同じ条件の下で調製され、拡散層組成が粒径1〜50μmを有する70重量%の白銀粉末と、犠牲材料として10重量%の酢酸アンモニウムと、20重量%のPTFE微粉末とから成っていた。拡散層前駆体は、実施例1の場合のように調製された(前駆体シートの厚さは1mmであった)。80重量%のサイズ0.01〜0.5μmのAg粒子、および15重量%のクエン酸アンモニウム(犠牲材料)、および反応層として5重量%のPTFEを含有するAgペーストが、拡散層の表面に塗布された。シートは、積み重ねられ、110℃、および500kg/cmの圧力で30分間ホットプレスされた。その後、ホットプレスされた層は、200℃で15分間熱処理され、これによって電極が得られた。
【0095】
多孔率は、開口細孔と非開口細孔の両方を含む。反応層に粒径1〜50μmを有する80重量%の銀粉末、および拡散層に20重量%のPTFE、ならびに95重量%のサイズ0.01〜0.5μmのAg粒子を含有する基準試料が、犠牲材料なしで同じ方法で調製された。多孔率(見掛け密度/理論密度)は、見掛け体積および見掛け重量を測定することによって、および見掛け密度を密度の基準値(理論密度)と比較することによって算定された。電位測定は、実施例1の場合のように行われた。本発明による電極の多孔率は75〜80%であった。基準試料の多孔率は50〜55%であった。差異は、犠牲材料の除去によってもたらされた。得られた電位は、本発明による電極については6kA/mで−290mV、および基準電極については6kA/mで−400mVであった。これらの電気化学的測定は、1.2atmの酸素ガス圧力で行われた。圧力が1.05atmであった場合、−295mVの同じ結果が、6kA/mにおいて本発明による電極について得られ、基準電極がなかったなら、電位は、多分拡散層の余りにも高い圧力降下により測定され得なかった。上記から、本発明の電極が適切な細孔サイズを有し、適切な数の開口細孔により、電位の低下が生じると結論づけることができる。