【実施例】
【0029】
実施例
ガラス粒状材料の合成
一般に、分析等級試薬の適切な量を適宜秤量し、プラスチック容器内で振盪することにより十分に混合する(30分間)。各バッチの粉末を白金るつぼ中、適切な温度(最初は1520℃で1時間)で加熱する。次いで、ガラス溶融物を水中で急冷する。得られたガラスフリットを乾燥器内で乾燥し(120℃、1日)、粉砕し、ふるいにかけて、その後の分析用のガラス粉末を回収する。表1および2は粒状材料のための組成の例を示す。表2は本明細書の最後に添付。
【0030】
(表1)実験計画法を用いて配合した13のガラス組成物(モル分率)。網目改変(NM)成分(Ca;Mg;SrおよびNa)は0.035モル分率で一定に保つ。
【0031】
任意の圧縮可能な外殻/基材を改変乳化法によって加える。様々な分子量のPLGAに、様々な重量%のガラス粒子を補充する。PLGAを塩化メチレンに溶解し、次いでガラスを好ましいレベルで溶液に加える。次いで、混合物を撹拌中のPVA溶液中に滴加する。ミクロスフェアをろ過により分離し、脱イオン水で洗浄し、風乾し、次いで真空乾燥する。表3は、ポリマーコーティングを有する粒状材料の例の構成を提供する。
【0032】
(表3)実験計画法を用いて配合した9つの複合材料変種(重量%)。ガラスをPLGAベースの重量%で表す。
【0033】
実施例1−粒子組成物
粒子組成物(モル分率)(0.52〜0.57)SiO
2-0.035CaO-(0.00〜0.29)-ZnO-0.035MgO-(0.00〜0.188)La
2O
3-0.035SrO-(0.00〜0.05)TiO
2-0.035Na
2Oをこの実験のために合成した。分析等級試薬:二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ランタン(III)、炭酸ストロンチウム、二酸化チタンおよび炭酸ナトリウム(Sigma Aldrich、カナダ)を秤量し、プラスチック容器(Nalgene(商標)、Sigma Aldrich、カナダ)中で1時間均質に混合した。各バッチの粉末を白金るつぼ(50mL)中に入れ、次いでBench-Top High Temperature Muffle Furnace(EQ-KSL、MTI Corporation. USA)を用いて加熱(1480℃、1時間)し、水中で急冷した。得られたフリットを乾燥器内で乾燥し(120℃、1日)、めのう遊星ミル(Pulverisette 7;Laval Labs Inc.、カナダ)中で粉砕し、様々な孔径を通してふるいにかけて、以下のサイズ範囲の粉末微粒子を生成した:<45μm;45〜212μm;212〜300μm;355〜500μm;>500μm。この実験で生成したすべてのバッチの粒子を、この後さらなる評価のために乾燥デシケーター中で保存した。
【0034】
粒状材料の特徴付け
示差走査熱量測定(DSC)
一般に、DSCを用いて各ガラスのガラス転移温度(T
g)の開始を、示差走査熱量計(DSC)を用いて判定する。258.15℃(最大725℃まで)の温度間隔を、空気中で、対応させた白金るつぼ中のアルミナ(または他の適切な参照)と共に用いる。用いたDSCの耐用性はおよそ2%である。
【0035】
実施例2
実施例1で作成した粒子のDSC分析を実施して、ガラス転移温度(T
g)の値を得た。試料(約80mg)を窒素雰囲気下、白金るつぼ中で、空の参照るつぼと一緒に加熱した。標準参照材料は所与の温度範囲のためにすでに事前選択している。T
gを示差走査熱量計(DSC:TA Instruments-DQ200)で、25℃から725℃の間を、258.15℃の温度間隔で測定した。8つの粒子(ORP1〜3、ORP5〜7、ORP9およびORP11)のDSCトレースを
図2に示す。表4は、T
g低下線形混合多項式モデルの要約したANOVA表である。L-Pseudo成分コーディングに関して作成した回帰モデルに基づき、各材料組成物のT
g挙動の観察値と計算値との間の比較を表にして表5に示す。L-Pseudo成分に関する最終数学的モデルを以下のとおり式1で示す:
T
g(℃)=+634.82ZnO+833.28La
2O
3+677.19SiO
2+699.01TiO
2 式1。
【0036】
(表4)
【0037】
(表5)T
g試験の残差
【0038】
X線回折(XRD)
一般に、XRDを用いてガラスのアモルファス特性を確認する。各ガラスの粉末試料を圧迫してディスク(Φ32mm×3mm)を形成する。回折パターンを、X線回折装置を用い、40KVおよび35mAの単色化CuKα(λ=1.54060A)照射により収集する。走査角範囲(2θ)を10°から70°まで、ステップサイズ0.033423°およびステップ時間59.69秒で実施する。
【0039】
実施例3
粒子のX線回折(XRD)測定を、X線発生装置(40kV;35mA)に接続し、Cu標的X線管を備えた、彎曲位置敏感検出器によるINEL CPS-120回折計を用いて実施した。試料を、選択した微量粒子(45〜212μm)を中空角形スチールウェーハ中に圧迫することにより調製した。入射ビーム経路における単色計は、試料をCu Kα1,α2に衝突させる波長を制限する。X線ビームは試料上に約6°で入射し、彎曲位置敏感検出器は走査角範囲10°<2θ<110°のすべての散乱したX線を収集する。XRDスペクトルの収集時間は1800秒である。粉末試料を、測定および移動操作を逐次プログラムすることを可能にする、INELのx-yトランスレーションステージ上に設置した。
【0040】
図3は、合成した各材料のXRDパターンを示す(A)ガラスORP 2、3、5、7、9、11および(B)ORP 1および6。x軸は2θの角度で測定した散乱角を示し、y軸は任意の単位である。表6は、相識別のための記号を提供する。
【0041】
(表6)
【0042】
驚くことに、これらの複合多成分系のT
gは、4つの組成変種のいずれを増やしても上昇し、組成変種についてのその統計学的有意性レベルは以下の順となる:La
2O
3>TiO
2>SiO
2>ZnO。SiO
2含有量を増やすだけでT
gの上昇を引き起こすと期待されたかもしれない。興味深いことに、より弱いガラス網目の形成が原因とされるT
gの低下に伴い、本明細書における一連のガラスで最も強い網目から最も弱い網目までが形成され、以下の順となる:ORP5>ORP3>ORP7>ORP2>ORP11>ORP9。
【0043】
網目連結度
実施例4
各組成物の網目連結度(NC)を、式2およびガラスのモル組成を用いて計算した
1,2。結果を表1に示す。
式中、NC=網目連結度;BO=架橋酸素およびNBO=非架橋酸素
【0044】
実験計画法(DoE)アプローチを用いての数学的モデルの作成と適用
二次標準シェッフェ多項式の係数を推定するために
3,4、定義ドメイン(デザインスペース)内の異なる組成変種(デザインポイント)を表す13の実験による二次ユーザー定義計画を、Design-Expert 8.0.4ソフトウェア(Stat-Ease, Inc.)を用いて作成した。これらのデザインポイントは、各組成物の制約された範囲に基づいて決定し:6つの実験は頂点先端に設定し;さらなる6つはアキシャルチェックブレンドを調べ、1つは定義デザインスペース内の全体の重心であった。これらの点は、ドメインの興味が持たれる点はそのトップ、サイドの真ん中、フェースの真ん中、およびその重心である、シェッフェの提案と明らかに一致する(表1参照)。混合計画法により、等式を得る。この式はYを、4つの組成因子(ZnO、La
2O
3、SiO
2およびTiO
2、それぞれX
1、X
2、X
3およびX
4と示す)と連結する。
【0045】
マジック角回転-核磁気共鳴(MAS-NMR)分光法およびDSC反応に適合させた通常の二次シェッフェ(線形)多項式(化学シフトおよび線幅)は下記である:
Y
A=β
1X
1+β
2X
2+β
3X
3+β
4X
4+e 式3
式中、X
1〜X
4は組成因子であり、β
1〜4係数は個々の組成因子X
1〜4の効果である。eは残差と呼び、この値は選択した各ガラスの計算値と実験値との間の差である。保持するガラスの数が式中の係数の数と同じである場合、これは0となる。選択したガラスの数が係数の数よりも多い場合、残差は各実験で異なる値を有する。
【0046】
密度および細胞生存度反応に適合させた標準のシェッフェ二次多項式は下記である:
Y=β
1X
1+β
2X
2+β
3X
3+β
4X
4+β
12X
1X
2+β
13X
1X
3+β
14X
1X
4+β
23X
2X
3+β
24X
2X
4+β
123X
1X
2X
3+β
124X
1X
2X
4+β
134X
1X
3X
4+β
234X
2X
3X
4+e 式4
式中、X
1〜X
4は組成因子であり、β
1〜4係数は個々の組成因子X
1〜4の効果であり;β
12〜24は組成因子間の二方向相互作用の効果を表す回帰の係数であり;β
123〜234は組成因子間の三方向相互作用の効果を表す回帰の係数であり、eは残差である。
【0047】
偽および実の値で示した二次モデルの推定係数から、各成分の効果を誘導することができる。反応変数を偽成分の比率に関連づけるすべての混合実験モデルを作成した。偽成分の比率(z
i)を以下のとおりに計算する:
z
i=(x
i−L
i)/(1−ΣL) 式5
式中、x
iは元の成分比率を表し、L
iはi番目の成分の下限(限界)を表し、Lはデザインにおけるすべての成分のすべての下限(限界)の合計を表し、1は混合物合計を表す。
【0048】
偽成分は元の(実の)成分の組み合わせであり、これは各偽成分の最小許容可能比率がゼロであるように、制約組成物領域を修正する。この変換により、実成分系を用いる場合に比べて、モデル係数がより正確に推定され、したがって以下の議論の文脈では偽成分スケーリングに基づいて誘導した係数を指す。しかし、実験対計算データ点およびグラフ表示(等高線プロット)に関して、モデルの有効性を実成分コーディングによって示す。
【0049】
いくつかの反応特性y
1、y
2、...、y
nがq成分の同じ組の比率でモデリングされている場合、組成物スペースにおいて最良の総括的特性組は望ましさ機能アプローチを実行することによって得られる。反応特性に基づくモデルを用いて、特定の目的のために望ましい特性を有する特定の材料のための組成物を決定することができる。
【0050】
真の密度
実施例5
真の密度を、本明細書において合成したすべての粒子についてと、市販の対照材料:Contour(商標)(PVA微粒子)についても、ヘリウム比重びん(AccuPyc 1340、Micromeritics)を用いて測定した。結果は5つの測定記録の平均の代表である。
図4Aおよび4Bは得られた等高線プロットで、実成分コーディングにおける4つの様々なTi添加(0.017、0.033、0.042および0.05モル)での実験的粒子密度(g/cc)に対する組成-相互作用効果を示す。(A)はTi:0.017モル分率であり;(B)はTi:0.033モル分率であり;(C)はTi:0.042モル分率であり;かつ(D)はTi:0.050モル分率である。
【0051】
表7は、L_Pseudo(1);実成分(2)に関する最終回帰式ならびにR
2値;および密度についてのANOVAの概要を示す。ANOVAデータは、モデルが粒状材料の特徴を十分に予測することを示している。
【0052】
(表7)
【0053】
表8は、有意な(正および負)主となる相互作用および二次組成因子(最高から最低まで順位付け)ならびに密度増大に対するその効果のまとめであり;↑は増大を示し、↓は低減を示す。実成分コーディングに基づく。
【0054】
(表8)
【0055】
示したとおり、密度はLa
2O
3>ZnO>TiO
2>SiO
2の順で4つの組成変種のいずれを増やすことによっても増大しうる。興味深いことに、ZnOおよびLa
2O
3の相互作用(5番目の影響因子)を増やすと、予測されていなかったが、開示したモデルは開示した組成について予測している特徴の、材料密度の増大を引き起こしうる。試験した計画マトリックスにおいて達成された最低レベルの密度(3.2g/cc(ORP2)および3.3(ORP11))は、ORP2からORP11への組成変種におけるわずかな変動(ZnO含有量増加(0.05モル分率)およびTiO
2含有量減少(0.5モル分率))が、得られる最終細胞生存度にいかに有害に作用しうるかを示しており;それぞれ84%から61%に低減する。興味深いことに、3.5g/cc(±0.3)の範囲の密度(ORP2、3および5)は、得られる細胞生存度(86%(±5)に関して、上位3つの組成変種の代表でもあった。
【0056】
比表面積決定
N
2吸収/脱着を、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて調べ、調製したガラス粉末の比表面積(SSA)および多孔度を求める。ガラス試料(約0.15g±0.05g)を窒素雰囲気下、77.35Kに、平衡間隔10秒で置く。
【0057】
実施例6
微量微粒子およびContour(商標)の理論外部比表面積を、球状微粒子形態の仮定のもと、以下の式
5によって計算した
【0058】
表9は、比表面積測定値を提供する(45ミクロン(より低いレベル、LL)および212ミクロン(より高いレベル、UL)。
【0059】
(表9)
【0060】
走査電子顕微鏡法
実施例7
走査電子顕微鏡(SEM)観察のために、粉末試料(粒径範囲:355〜500μm)を直径10mm×高さ3mmのAlスタブに固定し、約27nmの白金で金スパッターコーター(SC7640、Fisons Instruments)を用いてコーティングした。続いて、形態学的および化学的分析のために、試料を、Oxford Incaエネルギー分散性x線分光法(EDS)装置を備えたHitachi S-4700 FEG-SEMのチャンバーに移した。下方二次電子(SE)検出器で、加速電圧5.0kVおよび作動距離11〜12mmを用いた。
【0061】
図5は、1つの実験組成物(ORP5)から誘導した形態学的データ(SEM)を示し;その形態は試験した多成分系のすべての組の代表であり、市販の合法的に市販された装置(predicate device)、Contourと比較している。
図5Aは、粒径範囲355〜510μmのContour(商標)の対照試料である。
図5Bは、粒径範囲355〜510μmを有するORP5の実験試料である。
【0062】
ORP5の化学的(EDX)データを
図6に示し、合成した組成物が表1に報告するとおりであることを示している。
【0063】
非架橋酸素の判定のためのマジック角回転-核磁気共鳴(MAS-NMR)分光法
一般に、ガラスの
29Si MAS-NMRスペクトルを、ケイ素に対する1.5μsの高電力パルス(P1)取得を用い、回転周波数5kHzで記録する。
29Si MAS-NMR試料を、リサイクル/遅延時間(recycle/delay time)を約2秒に設定して回転させる。
29Si NMR化学シフトをppmで報告し、周囲のプローブ温度で、2,2-ジメチル-2シラペンタン-5-スルホン酸ナトリウム(DSS)または他の適切な参照品に対して外部参照した
29Siにより記録する。固体状態のNMRについて、MASを用いて記録したシフトは試料の等方性バルク磁化率とは無関係である。理想的材料では、データの化学シフトの推定誤差は約0.1ppmで;この値を超える小さい変動が観察されることもある。
【0064】
実施例8
29Siマジック角回転(MAS)NMR試験を、9.4T磁石のBruker Avance NMR分光計(79.51MHz
29Si ラーモア回転数)で、回転子直径7mmのプローブヘッドを用いて実施した。標品(<45μm)を5.00kHzで回転させた。rf磁場強度28kHzで、80°のパルス長を用い、シングルパルス励起で200スキャンを蓄積した。待ち時間を、インバージョンリカバリシーケンスにより求めたスピン格子緩和時間の3倍となるよう選択した。スピン格子緩和時間は15秒から26秒の範囲である。化学シフトスケールを、-91.34ppmの二次化学シフト標準としてカオリンに対して外部参照した。ピーク最大点およびピーク幅上の誤差バーは±1ppmである。
【0065】
図7は、線幅の低減により分類した(a:ORP11、b:ORP2、c:ORP9、d:ORP7、e:ORP6、f:ORP5、g:ORP3、h:ORP1)、各実験的塞栓材料の
29Si MAS-NMRスペクトルを示す(それぞれのピーク最大点およびピーク幅をそれぞれ表10に示す)。速すぎるパルシング(50秒)により結晶シグナルを落としていないことを確認するために、ORP6のさらなる
29Si MAS NMRスペクトルを、より長い反復時間(90秒)で取得した。
図8は、反復時間(a)90秒および(b)50秒での実験的塞栓材料ORP6の
29Si MAS-NMRスペクトル、ならびに(c)それらの調整した差を示し;シリカがXRDによって検出された結晶の一部ではないことを検証している。両方のスペクトルにおいて、結晶性成分は認められなかった。ORP1およびORP6のXRDディフラクトグラムは、表6において識別したいくつかの結晶種の存在を示している。
【0066】
図9は、実成分コーディングにおける4つの様々なTi添加((
図9A)0.017、(
図9B)0.033、(
図9C)0.042および(
図9D)0.05モル)での実験的塞栓材料
29Si MAS-NMR化学シフト(ppm)に対する組成-相互作用効果を示す、等高線プロットを示す。
【0067】
図10は、実成分コーディングにおける4つの様々なTi添加((
図10A)0.017、(
図10B)0.033、(
図10C)0.042および(
図10D)0.05モル)での実験的塞栓材料
29Si MAS-NMRスペクトル線幅(ppm)に対する組成-相互作用効果を示す、等高線プロットを示す。
【0068】
表10は、表1(ここで、SiO
2、TiO
2、ZnOおよびLa
2O
3は変動し、CaO、Na
2O MgOおよびSrOは等モル濃度)に概要を示す組成式からの正電荷の総数ならびに関連するNMR最大点の位置および線幅を示す。
【0069】
(表10)
【0070】
表11は、L_Pseudo(1);実成分(2)に関する回帰式ならびにR
2値;および各反応についてのANOVAの概要を示す。ANOVAデータは、モデルが反応AおよびBに対する粒状材料の特徴を十分に予測することを示している。
【0071】
(表11)
【0072】
表12は、有意な(正および負)主となる相互作用および二次組成因子(最高から最低まで順位付け)ならびに負の方向への化学シフト/ピーク位置生成および線幅増大に対するその効果のまとめを示し;↑は増大を示し、↓は低減を示す。データは実成分コーディングに基づく。
【0073】
(表12)
【0074】
表13は、合成したすべての材料組成物についての
29Si MAS-NMR化学シフト(a)および線幅(b)の残差を示す。
【0075】
(表13)
【0076】
NMRスペクトルに示すとおり、両方のNMRピークシフトはSiO
2>TiO
2>ZnO>La
2O
3の順で4つの組成変種のいずれを減らすことによっても増大し得、線幅はLa
2O
3を除いて同じ順に従う。ORP2、9および11について得たNMRスペクトル(
図7)は、すべての他の組成物について得た他のスペクトルよりも有意に広いようである。対応する標品の間の差は、ORP2、9および11はランタンを含まないが、他は含むことである。
【0077】
標品ORP2は、ORP11に比べて、ZnOを犠牲にしてより多くのTiO
2からなり、したがってより高い電荷対シリカ比を有するが、Q
n(nSi, 4-nTi)種はQ
n(nSi, 4-nZn)種よりも低いppm値で共鳴する。電荷対シリカ比に基づき、かつ大まかに二元Q種分布を仮定して、ORP11および2はQ
3/Q
2範囲で共鳴すべきであり、かつ実験的に共鳴し、標品ORP9、7、5、3、および1はQ
2/Q
1範囲で(逆重畳積分はQ
1部位の存在を示し)、かつ標品ORP6および以下はQ
1/Q
0範囲で共鳴するが、標品ORP10はQ
0および別の金属酸化物種だけからなるべきである。興味深いことに、標品ORP1および6について、(すなわち、電荷対シリカ比がQ
0寄与の範囲に入る場合)、ガラス状および結晶成分への分離はより高い電荷比ですでに起こっており、フリットにすることはまったくできない。標品ORP6におけるこの相分離は、なぜそのNMR特性がORP7およびORP5のスペクトルのものの間に入るかの理由であり、これはカチオン-酸化物吸引性の結晶、およびNMRによって試験する異なる組成物のガラスにおける結果による。La
2O
3は、あまり高くない濃度でも、ガラスの分解を引き起こす。これは、粒状材料の分解の調整可能性の一助となるため、有用である。
【0078】
ガラスおよび複合材料からの分解生成物の定量
それぞれpH7.4±0.1およびpH3.0±0.2のトリス-HCl緩衝液およびクエン酸緩衝溶液を調製して、正常および極度の生理的条件(ISO10993-14による)を模擬する。いずれの緩衝溶液もガラスからの分解生成物の定量のために用いる。各粒状材料100mgを、振盪水浴中で37℃に維持したポリプロピレンチューブ中、各溶液(n=3)10mlに浸漬し、2Hzで撹拌する。標品を様々な期間−例えば、1、3、7、または30日間保存する。各期間の後、標品を取り出し、等級5のWhatmanろ紙を通してろ過し、ろ液をイオン含有量分析のために保持する。がラスからの分解生成物を同定し、誘導結合プラズマ−質量分析計を用いて定量する。各抽出物の分析を三つ組で実施する(n=3(条件ごとの抽出物)、各抽出物に対して3回の分析を実施)。
【0079】
イオン放出特性の分析
塞栓剤からのイオン放出特性を、インキュベーション時間(X)に対するイオン放出濃度(Y)に関して記載する。インキュベーション時間は相間関数の入力ではないため、時間依存性関数を非線形回帰多項、ガウス、正弦波および指数モデルに、Prism 5.0ソフトウェア(GraphPad software Inc.)を用いてあてはめた。各塞栓剤に関する4つの要素の最適モデルは1フェーズ減衰結合モデルである:
Y=Y
0+(プラトー−Y
0)
*(1−exp(-K
*X)) 式7
式中:
「Y」および「X」はそれぞれイオン放出濃度(ppm)およびインキュベーション時間(時間)であり;
「Y
0」は初期イオン放出時のイオン放出濃度(ppm)であり;ここでY値はX
0=1における値であり;
「プラトー」は無限時間におけるイオン放出濃度(ppm)であり、ここでY値はX=120時間における値であり;
「K」は「t
au」インキュベーション時間の逆数で表した速度定数であり、単位は日の逆数であり;
「t
au」はイオン放出が推定「y
max」(ppm)の63%に達するのに必要な時間を意味し;
「t
1/2」は最終「y
max」値の50%に達するための半減期(時間)を意味し、「t
1/2=t
au*LN(2)」:
「t
s」はY
0とプラトーとの間の差を意味し;
「R
2」は、Prism 5.0(GraphPad Inc.)ソフトウェアで求めた、指数非線形回帰の最適からの点の距離の二乗の合計である。R
2の値は0.0から1.0の間の有理数であり、最適線はR
2=1.0のものである。
【0080】
マウス線維芽細胞株L929による細胞培養試験
樹立マウス線維芽細胞株L929(American Type Culture Collection CCL 1線維芽細胞、NCTCクローン929)を、10%ウシ胎仔血清および1%(2mM)L-グルタミンを補足したM199培地中で培養する。細胞を、5%CO
2インキュベーター内、37℃の、T-75フラスコ中で成長させる。細胞がコンフルエンシーに達すれば、これらを0.25%トリプシンを用いて化学的に取り出し、遠心分離し、新鮮培地に再懸濁して、さらなる接種のための新しい単細胞懸濁液を作成する。
【0081】
細胞生存度検定
3T3細胞を24穴プレート(Sarstedt、アイルランド)中1×10
4/mlの密度で播種する。M199培地を陰性対照として用い、培地プラス細胞を陽性対照として用いる。次いで、プレートを37℃の細胞培養インキュベーター(5%CO
2/95%空気雰囲気)内で24時間インキュベートする。24時間後、滅菌組織培養水100μlを対照ウェルに加える。関連する実験抽出物(粒子を含む)100μlを試験のために適切なウェルに加える。次いで、プレートを37℃の細胞培養インキュベーター(5%CO
2/95%空気雰囲気)内で24時間インキュベートする。24時間のインキュベーション後、各ウェルを培地量の10%に等しい量(100μl)のMTT(Sigma Aldrich、アイルランド)に曝露する。プレートをインキュベーターに3時間戻す。インキュベーション後、MTT可溶化溶液を各ウェルに元の培地量と等しい量(1ml)で加える。結晶の溶解を増強するために、各ウェルをピペットを用いて滴定し、その後、各ウェルの吸光度を570nmの波長で分光測光法により測定する。細胞陽性対照ウェルは100%の代謝活性を有すると仮定し、実験抽出物に曝露した細胞の代謝活性パーセンテージをこれに対して計算した。
【0082】
実施例9
分解試験のための粒子抽出物の調製
粒子およびContour(商標)(市販の対照)(Lot No.:13473927および13599201)0.1gを、2Hzで回転振動させた振盪水浴(Stuart Sb40、Techne Inc.、USA)中、37℃で、滅菌組織培養水(Sigma-Aldrich、カナダ)10ml
6に12、24、48、96および120時間浸漬した。それぞれの保存期間の後、試料を滅菌0.20μmフィルター(Sarstedt、カナダ)を用いてろ過し、ろ液をインビトロ評価まで7℃で保存した。
【0083】
各抽出物についてSi
4+、Na
+、Ca
2+、Zn
2+、Ti
4+、La
3+、Sr
2+、およびMg
2+濃度を、誘導結合プラズマ原子発光分析(ICP-AES、Perkin Elmer Optima 3000、MA、USA)を用いて分析した。各元素の定量に用いた吸収波長を表14に報告する。各測定サイクルの前に、Ti
4+、La
3+、Sr
2+、およびMg
2+を含む標準溶液およびSi
4+、Na
+、Ca
2+およびZn
2+を含む別の標準溶液の組(JVA Analytical Ltd、アイルランドから入手)を、表15および16に報告する濃度で調製することにより較正曲線を得た。標準試料濃度を定期的に測定して、較正曲線の精度を確保した。各抽出物(インキュベートした各塞栓剤から)の三つ組を各元素について測定し、元の抽出物の希釈度を釣り合わせるために出力における適切な調節を行った。結果は、複合多成分系は分解性の速度調節を提供することを示している。
【0084】
(表14)
【0085】
表15は、ICP測定(JVA Analytical、アイルランド)のために用いた標準濃度を示す。
【0086】
(表15)
【0087】
表16は、ICP測定のために用いた実験室標準濃度を示す。
【0088】
(表16)
【0089】
図11は、8つの塞栓微粒子のSi(
図11A)およびNa(
図11B)放出のイオン放出特性を、12、24、48、96および120時間にわたる時間依存性と共に示す。線は視覚ガイドとして引いている。
図12は、8つの塞栓微粒子のCa(
図12A)およびSr(
図12B)放出のイオン放出特性を、12、24、48、96および120時間にわたる時間依存性と共に示す。線は視覚ガイドとして引いている。
図13は、8つの塞栓微粒子のTi(
図13A)およびLa(
図13B)放出のイオン放出特性を、12、24、48、96および120時間にわたる時間依存性と共に示す。線は視覚ガイドとして引いている。線は視覚ガイドとして引いている(R
2<0.6のあいまいなデータは除外)。
図14は、8つの塞栓微粒子のMgのイオン放出特性(
図14A)およびZnの平均(±SD)放出レベル(
図14B)を、12、24、48、96および120時間にわたる時間依存性と共に(Zn(
図14B)についてのみ)示す。線は視覚ガイドとして引いている。線は視覚ガイドとして引いている(R
2<0.6のあいまいなデータは除外)。
図15は、120時間のインキュベーション期間後のSi(
図15A)およびNa(
図15B)の放出レベルに対する塞栓材料組成の効果を示す。
図16は、120時間のインキュベーション期間後のCa(
図16A)およびSr(
図16B)の放出レベルに対する塞栓材料組成の効果を示す。
図17は、120時間のインキュベーション期間後のTi(
図17A);La(
図17B)およびMg(
図17C)の放出レベルに対する塞栓材料組成の効果を示す。
【0090】
表16は、5つの時点(12、24、48、96、120時間)でSi
4+およびNa
+放出から生成した非線形1フェーズ結合モデルに対する適合度(R
2値に関して)を示す。
【0091】
(表16)
【0092】
表17は、5つの時点(12、24、48、96、120時間)でCa
2+放出から生成した非線形1フェーズ結合モデルに対する最適パラメーターを示す。
【0093】
(表17)
【0094】
表18は、5つの時点(12、24、48、96、120時間)でSr
2+放出から生成した非線形1フェーズ結合モデルに対する最適パラメーターを示す。
【0095】
(表18)
【0096】
表19は、5つの時点(12、24、48、96、120時間)でTi
4+放出から生成した非線形1フェーズ結合モデルに対する最適パラメーターを示す。アステリスク(
*)はあいまいとされたモデルを表す。
【0097】
(表19)
【0098】
表20は、5つの時点(12、24、48、96、120時間)でMg
2+放出から生成した非線形1フェーズ結合モデルに対する最適パラメーターを示す。アステリスク(
*)はあいまいとされたモデルを表す。
【0099】
(表20)
【0100】
驚くことに、Zn
2+は120時間後に初めて放出されることが見られただけであった。すべての他のイオンはすべての期間で持続的に放出されることが判明した。これは、Zn
2+が溶液へのその浸漬の即時開始と共にイオンを放出するであろうとの予想に反するものである。
【0101】
Si
4+およびNa
2+両方のイオン放出特性は、120時間までのイオン放出における安定な時間依存的増大(Si
4+についてはそれぞれ0.72および0.78のR
2値を示すORP3および9を除く0.81から0.87の範囲のR
2値、ならびにNa
2+についてはそれぞれ0.63、0.54および0.67のR
2値を示すORP6、9および11を除く0.71から0.90の範囲のR
2値によって表される最適値によって示す)を示し、これは、各成分の制御可能な性質を示している可能性がある。イオン放出の完全な安定化は、120時間後にも両方のイオンについて明らかではない。
【0102】
ORP9について溶液中での最初の2〜3時間に放出されたCa
2+の初期バーストが認められ、急激に終わって、試験の残りは安定な放出レベルを維持した。ORP1もCa
2+放出の初期バーストを示し、24時間を超えて安定な速度でCa
2+を徐々に放出した。しかし、残りの組成物は24時間までより漸進的な初期Ca
2+放出を示し、その後完全な安定化に達した。これは、インキュベーション媒質中のH
3O
+と引き替えに、初期Ca
2+放出(微粒子からの)の結果としてガラス微粒子の全表面領域にヒドロゲル様の層が形成され、微粒子の全表面上に沈澱し;さらに微粒子からのイオン放出の速度に影響をおよぼしたことによる可能性がある。興味深いことに、同じ放出特性がSr
2+およびTi
4+でも観察された。
【0103】
重要なことに、Mg
2+の溶液中への非常に遅い放出レベルが認められ、これはケイ酸塩網目によって強力にキレート化されていることを示唆している。同じことが、ORP1を除くLa
2+について報告されている(おそらくは結晶種における増大による)。
【0104】
MTT/LDHの放出検定のための粒子抽出物の調製
このプロトコルのために、すべての粒子をインキュベーション前に121°/25barで、20分間の高圧滅菌(AMSCO Medallist)によって滅菌した。Contour(商標)の事前滅菌バッチ(Lot No.:13473927および13599201)を対照として用いた。続いて、等量(0.1g)の各滅菌ガラス(ORP1-3、ORP5-7、ORP9、ORP11)およびContour(商標)を10mLの滅菌組織培養水(Sigma-Aldrich、カナダ)に24時間浸漬し、37℃のインキュベーター内部に設置したローラー(約2Hzで回転)上に置いた。各保存期間の後、試料を滅菌0.20μmフィルター(Sarstedt、カナダ)を用いてろ過し、ろ液をインビトロ評価まで7℃で保存した。
【0105】
線維芽細胞培養
15〜20継代の不死化ラット線維芽細胞(NIH-3T3;American Type Tissue Collection、Manassas、VA)を、実験のために用いた。細胞を75-cm
2組織培養フラスコ内の5%ウシ胎仔血清(FCS;56℃で60分間熱不活化)を補足したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で成長させた。細胞を剥離するために2mLの0.25%トリプシン-EDTAを用いて、70%コンフルエンスで1週間に2回細胞を継代し、8mLのDMEMに再懸濁した。フラスコを37℃、10%CO
2の加湿雰囲気下で維持した。細胞代謝の変化を避けるために、日常的細分化の間、または細胞培養実験のために、抗生物質は用いなかった。実験で用いるための線維芽細胞を70%コンフルエンスで回収し、トリプシン-EDTAを用いて剥離し、1×10
4細胞/mLの濃度で懸濁し、コールターカウンターを用いて検証した。
【0106】
細胞生存度の評価(MTT検定)
NIH-3T3細胞(200μL)を96-非組織培養処理ポリスチレンプレート(CoStar、Corning、カナダ)中、1×10
4細胞/mLの密度で播種した。DMEM+5%FCS培地プラス滅菌組織培養水だけを陰性対照として用い、培地プラス細胞プラス滅菌組織培養水を陽性対照として用いた。すべての試料で連続希釈を行い(25、50、75および100%)、三つ組で行った。したがって、4プレート(各希釈度に対応)を37℃の細胞培養インキュベーター(10%CO
2/95%空気雰囲気)内で24時間インキュベートした。24時間後、5、10および15μLの滅菌組織培養水を、それぞれのプレート(75、50および25%希釈に対応)の各ウェルに加えた。次いで、試験のために、20μLの関連する実験抽出物を適切なウェルに加えた。プレートを37℃の細胞培養インキュベーター(10%CO
2/95%空気雰囲気)内で再度24時間インキュベートした
7。MTT試薬(M2128、Sigma Aldrich Canada)の5mg/mL溶液をリン酸緩衝化食塩水中で調製し、ボルテックス処理し、滅菌ろ過(0.20μm)した。プレートを24時間インキュベートした後、各ウェルを培地量の10%に等しい量の調製したMTTに曝露した。次いで、各希釈セットの4プレートをインキュベーターに3時間戻した。インキュベーション後、MTT可溶化溶液(カタログコード:M8910)を各ウェルに元の培地量と等しい量で加えた。各ウェルを回転テーブル上で緩やかに撹拌して、ホルマザン結晶の溶解を増強した。その後、各ウェルの吸光度を、多検出マイクロプレート読み取り器(Synergy HT、BIO-TEK)上、570nmの波長で分光測光法により測定した。細胞陽性対照ウェルは100%の細胞生存度に対応する100%の代謝活性を有すると仮定し、実験抽出物に曝露した細胞の細胞生存度パーセンテージをこれに対して計算した。
【0107】
細胞毒性の評価(LDHの放出検定)
乳酸脱水素酵素(LDH)検定を、比色乳酸脱水素酵素(LDH)検定(TOX-7(製品コード:050M6079)、Sigma Aldrich、カナダ)により、供給会社からの説明に従って測定した。培地中のLDHの量は存在する溶解/死滅細胞の数に比例し;したがって、この検定を用いて細胞死を推定することができる。この検定は、培地中に放出された細胞質LDHの量の関数としての膜の完全性を測定する。簡単に言うと、等量のLDH検定基質(カタログ番号:L2402)、補助因子(カタログ番号:L2527)および色素溶液(カタログ番号:L2277)を混合することにより、検定混合物を調製した。すべての培養物(70μL)に対し、4×96-非組織培養処理ポリスチレンプレート(CoStar、Corning、カナダ)中、検定混合物を培地に2対1の割合で加えた。各プレートはそれぞれ25、50、75および100%の培地希釈度に対応する。室温、暗所(各プレートをAlフォイルで覆った)で、ローラー上で緩やかに回転させてインキュベートした後、呈色反応を1N HClで停止した。MTT検定と同様、DMEM+5%FCS培地プラス滅菌組織培養水だけを陰性対照として用い、培地プラス細胞プラス滅菌組織培養水を陽性対照として用いた。吸光度を、多検出マイクロプレート読み取り器(Synergy HT、BIO-TEK)を用い、650nmで背景補正を行って、490nmで測定した。
【0108】
統計学的解析
各実験を三つ組で実施し、Prism 5.0ソフトウェア(GraphPad software, Inc.)を用いて解析した。結果を三つ組の測定の平均±標準偏差で表す。群間の比較のために、一元配置分散分析(ANOVA)と、続いてチューキーの事後検定を行った。有意性のレベルをp<0.05に設定した。
図18Aは、25、50および100%連続希釈度での、24時間塞栓微粒子抽出物のORP1〜3、ORP5〜7、ORP9およびORP11ならびにContour(商標)存在下での、細胞生存度を示す。結果は平均±SDを表す(有意な統計学的差(p<0.05)は試験した抽物のいずれの間でも観察されなかった)。
図18Bは、25、50、75および100%連続希釈度での、24時間塞栓微粒子抽出物のORP1〜3、ORP5〜7、ORP9およびORP11ならびにContour(商標)存在下での、細胞毒性を示す。結果は平均±SDを表す(有意な統計学的差(p<0.05)は試験した抽出物のいずれの間でも観察されなかった)。
図19は、実成分コーディングにおける4つの様々なTi添加(0.017(
図19A)、0.033(
図19B)、0.042(
図19C)および0.05モル(
図19D))における実験的塞栓材料細胞生存度(%)に対する組成-相互作用効果を示す等高線プロットを示す。
【0109】
表21は、L_Pseudo(1);実成分(2)に関する最終回帰式ならびにR
2値;および細胞生存度についてのANOVAの概要を示す。ANOVAデータは、モデルが粒状材料の細胞生存度反応を十分に予測することを示している。
【0110】
(表21)
【0111】
表22は、合成したすべての材料組成についての細胞生存度試験の残差を示す。
【0112】
(表22)
【0113】
表23は、有意な(正および負)主となる相互作用および二次組成因子(最高から最低まで順位付け)ならびに細胞適合性増大に対するその効果のまとめを示し;↑は増大を示し、↓は低減を示す。データは実成分コーディングに基づく。
【0114】
(表23)
【0115】
データは、75%の細胞生存度に影響をおよぼす、最も有意な「主となる」組成変種はTiO
2>SiO
2の順であることを示している。興味深い特徴は、予想されるものとは反対に、ZnOはそれ自体では細胞生存度の低減に寄与しないことである。それよりも、ZnOは細胞生存度を低減するためにTiO
2との相互作用に依存し(表23G;ZnO
*TiO
2はMTT検定に関して最も有意な因子である);それによりTiO
2の増大のためのZnOの低減は細胞生存度を増強しうる。同様に、ZnOとSiO
2との間の相互作用は、ZnO:SiO
2の比の低下が細胞適合性の増強を可能にすることを示している。データに示された他の驚くべき関係を以下に記載する。
【0116】
ZnO:La
2O
3の比の増大が細胞生存度のレベル増大を提供することも、予想されていなかったであろう。この相互作用効果により、La
2O
3はZnOよりも細胞毒性が高いと考えられる。これに対し、本明細書に記載のZn含有材料が要求に反する細胞毒性を示すことは予想されていたであろう。しかし、複合多成分系が通常の塞栓材料(Contour)に対して調整された(等価またはすぐれた)細胞適合性を提供することが明らかに示されている。
【0117】
放射線不透過性の評価
OccluRad対PVA(Contour)の放射線不透過性を、各製品を充填したGammex Tissue Characterizationファントムインサートのコンピューター断層撮影スキャンを用いて評価した。
図20は、食塩水/造影剤の様々な希釈度でのORP対PVAの放射線不透過性の比較である。結果を材料のハウンスフィールド単位(HU)値で示す。
【0118】
開示した多成分系(組成物)の複雑さゆえに、その固有の放射線不透過性に関して、それぞれに対する反応を予想することはできなかった。開示した組成物のすべての組の代表である、ORP5のHU値は、いかなる造影剤も非存在下で、Contourよりもはるかにすぐれたレベルを示すことに注目される。
【0119】
安全性および有効性のインビボ評価
子宮動脈内の埋め込み後の局所効果を予備的に試験するために、動物ユニット(ニュージーランドホワイトウサギ)を用いた。材料(ORP5)を関連する血管系に、25G蝶型カニューレを用い、食塩水の懸濁液(8mg/mL)で送達した。動物8匹を用いた;4匹はORP5で処置し、4匹はContourで処置した。動物を21日後にイソフルランおよびKCl(後者はIVにより2mg/kgで投与)を用いて安楽死させた。開腹術を行い、両方の卵巣を含む子宮を摘出した。左右の子宮角を切除し、10%ホルムアルデヒド溶液中に固定し、組織学的評価のために適宜切断した。組織学的試料を子宮角に沿って4〜6の異なるレベル(サイズに応じて)で採取し;その後、日常的なヘマトキシリンおよびエオシン染色を行った。
【0120】
図21は、Contour (
図21A)、ORP5(
図21B)および対照(
図21C)の性能に関する、各群1匹の動物からの組織学的データを示す。
【0121】
ORP5がContourと同様にはたらき、幾分優れた性能を示すことは、予想することができなかった。8匹のウサギすべてからの病理学的標品の肉眼検査により、塞栓部位に壊死性子宮が見られ、未処置の子宮角のいずれでも明白な変化はなかった。検査したH&E染色組織のいずれについても(実験群および市販品群の両方で)有害反応は観察されず、未処置(正常)子宮組織と匹敵するデータが得られた。皮内刺激試験において、塞栓性の合法的に市販された(predicate)Contourに対するORP5の等価性を示すために、極性(生理食塩水)および非極性(ゴマ油)媒体のいずれにおいても刺激の証拠は見られなかった(平均スコアの差はすべての観察で1未満)。
【0122】
皮内刺激試験
この試験は、ISO 10993-10に従って行った。試験品(粒子ORP5の抽出物)の刺激を生じる可能性を、試験品の皮下注射後に評価した。3匹のニュージーランドホワイトウサギをこの試験で用いた。各ウサギに0.2mLの試験品または媒体を皮内注射した。極性媒体は生理食塩水で、非極性媒体はゴマ油であった。各動物の処置計画を
図22に示す。表24は、実験のドレーズ等級付けシステムを示す。
【0123】
(表24)
【0124】
各注射部位の外観を注射直後に注目し、記録した。注射後0時間(注射直後)、24時間、48時間、および72時間の組織反応の所見を等級付けた。注射部位の任意の反応を適宜に記録した。
図23は、24、48および72時間観察後の3匹のNZWウサギの皮内注射部位の画像を示す。
【0125】
分解生成物を含む塞栓抽出物中のフィブリノゲンの立体配座
遠紫外線(UV)円偏光二色性(CD)スペクトルを、温度制御能力を備えたJasco J-810分光偏光計(Easton、MD)を用いて記録した。NaOHおよびH
2SO
4を用いてpH7.4±0.05に調節した25mMリン酸ナトリウム緩衝液中のヒト血漿由来フィブリノゲン(F4883、無プラスミノゲン、58%タンパク質、96%凝固性タンパク質含有;Sigma Aldrich、ON)の6.4mg/mL溶液を、塞栓抽出物の溶液(各抽出物についてn=3で実施例9で調製した、イオン分解生成物含有) で0.2mg/mLに希釈した。フィブリノゲン保存溶液の濃度を、280nmのUV分光法で、製造者のモル吸光係数を用いて定量した。すべてのスペクトルを0.5mmパス長石英キュベット(Hellma、Mullheim、ドイツ)中、37℃(NESLAB RTE-111浴、Thermo Scientific、Newington、NHで制御)で3回繰り返して収集した(260〜190nm、1nmステップ、50nm/分)。各イオン分解溶液の三つ組のスペクトルを平均し、リン酸緩衝液(25mM;pH7.4±0.05)によるブランクを差し引き、平均残差楕円率([θ])に変換した。試料間の相対的フィブリノゲン立体配座を、約208および222nmでα-らせん帯に対応する最小限で[θ]を比較することによりモニターした。
図24は、時間に対するイオン溶解生成物の関数として、遠紫外線円偏光二色性(CD)分光法によりモニターしたFg配座における変化を示す。
図24Aは、ORP5の経時的なCDスペクトルの例である。
図24BおよびCは、各イオン溶解生成物のFg CDスペクトルの約208および222nmで最小限での強度(3回繰り返しの平均、ブランク減算;平均偏差を示す)である。すべてのデータは平均残差楕円率[θ]で報告する。示す凡例は3つの図すべてに適用される。
【0126】
そのような複合多成分系からの分解副生成物のフィブリノゲン、Fg(凝血塊形成に必須の前駆タンパク質)の二次構造に対する影響は、予測することができなかった。興味深いことに、以前の文献がこの可能性を報告しているにもかかわらず、Fg構造への有意な配座変化はCDによって観察されなかった(
図24)。LDH検定を用いて、ORP5およびContourに接触している血小板の反応は予想することができなかった。
【0127】
血小板乳酸脱水素酵素(LDH)検定試験
全血および血小板の使用に関するすべてのプロトコルは、Capital Health Research Ethics Boardによって承認された。血液(31.5mL)を、Victoria General HospitalのLaboratory Blood Collection施設で、健康な無アスピリンヒト志願者から、クエン酸デキストロース(ACD)抗凝結剤を含む7つの4.5mLガラスBD Vacutainerチューブ(カタログ番号364606、Becton-Dickinson、Franklin Lakes、NJ)中に静脈穿刺により採取した。血液の最初のチューブ(4.5mL)は凝固因子を多く含むため、これを廃棄し、次いで残りの27mLを回収したことに留意することが重要である。血小板を多く含む血漿(PRP)を、Eppendorf 5702遠心機を用いてACD-凝固阻止血液を遠心分離(1500rpm、8分、25℃)することにより生成した。滅菌プラスチックパスツールピペットを用いて、PRPの個々の遠沈管への注意深い移動を完了した。
【0128】
血小板濃度をLH 785 CBC分析機を用いて測定した。血小板濃度を各患者について記録したが、調節はしなかった。次いで、血小板懸濁液を好ましい粒子(ORP5およびContour(商標))に、血小板懸濁液1mLあたり0.1ccの最終濃度で加え(塞栓剤ごとに2.5mlのPRPを加えるのに十分なPRPしか有していなかった患者1006を除き、各塞栓剤について3mLの患者PRP)、静止条件下、37℃で1時間接着させた。
【0129】
この段階の最後に、懸濁液を各ウェルから吸引し、2.5mLのPBSで10回ウェルを充填および吸引することにより、非接着血小板を洗浄した。血液採取からこの段階の終結までの全期間は4時間未満であった。接着した血小板をトリトン-PSB緩衝液で溶解した時に放出される乳酸脱水素酵素(LDH)を測定することにより、血小板LDHを定量した。較正曲線を、公知の数の血小板を用いて作成し、塞栓剤上の血小板接着をこの較正曲線から求めた。
図25は、アウトライアーを含む(
図25A)および含まない(
図25B)血小板LDH検定(ORP5対PVA)の結果を示す。
【0130】
開示した組成物の複雑さを考慮すると、LDH検定を用いて血小板の材料に対する反応を予想することはできなかった。この検定における多成分系の性能は、Contourへの等価の適合性を示すことが注目される。
【0131】
本明細書において引用するすべての出版物および特許出願は、それぞれ個々の出版物および特許出願が具体的かつ個別に参照により組み入れられると示されているかのごとく、参照により本明細書に組み入れられる。
【0132】
前述の発明を、理解を明確にするために例示および実施例によっていくらか詳細に記載してきたが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲に規定する本発明の精神または範囲から逸脱することなく、それに対して特定の変更および改変を行いうることが容易に明らかになるであろう。
【0133】
参照文献
【0134】
(表2)実験計画法を用いて配合した177のガラス組成物(モル分率)。NM成分は0〜0.140モル分率の間で変動する。