(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049689
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】リーディングコンタクトを備えた電気的なプラグコネクタ接続装置
(51)【国際特許分類】
H01R 13/652 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
H01R13/652
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-503050(P2014-503050)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2014-510382(P2014-510382A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012054068
(87)【国際公開番号】WO2012136441
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2013年10月7日
【審判番号】不服2015-16711(P2015-16711/J1)
【審判請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】102011006934.8
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム ピュットナー
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
中川 隆司
【審判官】
小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−206181(JP,A)
【文献】
特開2009−59615(JP,A)
【文献】
特開平4−255678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/652
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなるプラグコネクタ(102)であって、
前記プラグコネクタ(102)は、内部チャンバー(104)を有しており、
前記内部チャンバー(104)は、側壁(108)の内壁面(106)と、底部要素(112)の底壁面(110)とによって仕切られており、
前記側壁(108)は、前記底部要素(112)に固定的に接続されており、
前記側壁(108)は、その前記底壁面(110)とは反対側が縁部(114)をなしており、
前記プラグコネクタ(102)は、その前記底壁面(110)とは反対側に、対応プラグコネクタ(128)挿入のための差込開口部(116)を有しており、
前記底部要素(112)は、前記内部チャンバー(104)内に延在する雄型コンタクト(118)を収容するように構成されている、プラグコネクタ(102)において、
導電性のプラグコネクタコンタクト形成要素(120)が、プラグコネクタコンタクト部材(122)とプラグコネクタ接続要素(124)を有しており、
前記プラグコネクタコンタクト部材(122)は、前記内部チャンバー(104)から接触接続可能であり、
前記プラグコネクタコンタクト部材(122)は、前記縁部(114)から前記底壁面(110)の方向に延在し、前記底壁面(110)から突出する前記プラグコネクタ接続要素(124)と導電接続されており、
前記プラグコネクタ接続要素(124)は、導電性の対象と導電的に接続可能であり、
前記内部チャンバー(104)内へグリップ保護要素(119)が突出しており、前記グリップ保護要素(119)は、前記対応プラグコネクタ(128)の挿入方向(E)に平行に前記底壁面(110)から前記差込開口部(116)の方向に延在し、前記プラグコネクタコンタクト部材(122)は、当該プラグコネクタコンタクト部材(122)が前記内部チャンバー(104)から接触接続可能となるように前記グリップ保護要素(119)に配設されており、かつ、前記底壁面(110)から前記差込開口部(116)へ向かう方向において前記グリップ保護要素(119)を越えないように延在しており、
前記プラグコネクタ(102)はさらに複数の列に配列された複数の前記雄型コンタクト(118)を有しており、前記グリップ保護要素(119)は前記雄型コンタクト(118)の列と列との間に配設されており、雌型コンタクト(134)内に収容されるように定められた、前記雄型コンタクト(118)の雄型コンタクト部材(126)が前記内部チャンバー(104)内で前記縁部(114)及び前記グリップ保護要素(119)の上端よりも下方で終端していることを特徴とするプラグコネクタ(102)。
【請求項2】
非導電性材料からなる対応プラグコネクタ(128)であって、
前記対応プラグコネクタ(128)は、ケーシング(130)を備えて構成されており、
前記ケーシング(130)は、雌型コンタクト(134)を収容するためのチャンバー(132)を有しており、
前記ケーシング(130)は、外壁面(136)と対応プラグコネクタ前壁面(138)とによって仕切られており、
前記対応プラグコネクタ前壁面(138)は、前記外壁面(136)に固定的に接続されており、
前記対応プラグコネクタ前壁面(138)は、雄型コンタクト(118)が対応する前記雌型コンタクト(134)と導電的に接続可能であるように構成されている、対応プラグコネクタ(128)において、
導電性の対応プラグコネクタコンタクト形成要素(142)が対応プラグコネクタコンタクト部材(144)と対応プラグコネクタ接続要素(146)とを有しており、
前記対応プラグコネクタコンタクト形成要素(142)は、前記ケーシング(130)に固定的に接続されており、
前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)は、外部から接触接続可能であり、
前記対応プラグコネクタ(128)が相補的なプラグコネクタ(102)内に挿入される際に、前記雄型コンタクト(118)と前記雌型コンタクト(134)との間で導電接続が形成される前に前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)と外部との間の導電接続が形成されるように、前記雌型コンタクト(134)と前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)との相対位置が設定されており、
前記対応プラグコネクタ接続要素(146)は、導電性の対象と導電接続可能であり、
前記対応プラグコネクタ前壁面(138)には、複数の列に配列された複数の前記雄型コンタクト(118)に対応して複数の列に配列された複数の前記雌型コンタクト(134)を収容するための前記チャンバー(132)に連通する複数の列に配列された複数のチャンバー開口部(140)が設けられており、
前記ケーシング(130)は、前記雌型コンタクト(134)の列と列との間に配設された凹部(158)を有しており、前記凹部(158)は前記対応プラグコネクタ(128)の挿入方向(E)とは逆向きに延在し、凹部壁面(160)によって仕切られており、前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)は、前記凹部壁面(160)に配設されており、かつ、前記対応プラグコネクタ前壁面(138)の近傍に配設されているが、当該対応プラグコネクタ前壁面(138)を越えて突出しないように配設されていることを特徴とする対応プラグコネクタ(128)。
【請求項3】
前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)は、弛緩位置(150)から弾性的復元力に抗して緊張位置(152)に移動可能であり、前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)は、前記対応プラグコネクタ(128)が相補的な前記プラグコネクタ(102)内に挿入された場合には前記緊張位置(152)をとり、凹部壁面(160)は壁面開口部(148)を有しており、前記対応プラグコネクタコンタクト部材(144)は、少なくとも前記弛緩位置(150)において前記壁面開口部(148)を貫通して前記凹部壁面(160)を超えて突出している、請求項2記載の対応プラグコネクタ(128)。
【請求項4】
請求項1記載のプラグコネクタ(102)と、請求項2又は3記載の対応プラグコネクタ(128)からなる電気的なプラグコネクタ接続装置であって、
前記プラグコネクタ(102)は雄型コンタクト(118)を備えており、
前記対応プラグコネクタ(128)は雌型コンタクト(134)を備えており、
前記プラグコネクタ(102)は前記対応プラグコネクタ(128)に対して相補的に構成されている、電気的なプラグコネクタ接続装置において、
前記対応プラグコネクタ(128)を前記プラグコネクタ(102)に差し込んだ際に、前記雄型コンタクト(118)と対応する前記雌型コンタクト(134)との間で導電接続が形成される前に、プラグコネクタコンタクト形成要素(120)と対応プラグコネクタコンタクト形成要素(142)との間の導電接続が形成されるように構成されていることを特徴とする電気的なプラグコネクタ接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーディングコンタクトを備えた電気的なプラグコネクタ接続装置に関している。
【背景技術】
【0002】
とりわけ自動車製造分野においては、導電性のプラグコネクタ接続装置抜きでは考えられなくなってきている。その1つの理由は、複数のアクチュエータと複数のセンサがそのようなプラグコネクタ接続装置を用いて相互に接続されているからであり、もう1つの理由は、それらのアクチュエータとセンサとがそのようなプラグコネクタ接続装置によって制御機器にも接続されているからである。さらに今日においては、この種の制御機器は、小型化への絶え間ない要求と切り替え過程時間短縮化へのさらなる要求とに基づいて、もはや敏感な電子部品なしではやっていけなくなっている。そのため今日の制御機器は、過電圧に対して非常に敏感である。なぜなら過電圧によって制御機器内の電子部品が損なわれるか支障を来すからである。この種の過電圧は例えば、所定の電位を有する人の手が制御機器の端子に触れた場合に発生しやすい。その際の制御機器は人間の手とは異なる電位を有する。この種の作用は、例えば組み立てコンベヤベルト上の自動車内部に制御機器を設置する際において、車体が制御機器とは異なる電位を有し、そのような車体と制御機器との間で電位の平衡作用が、アース接続を介してではなく互いの絶縁部材を介して行われる場合にも生じ得る。またコンタクト接続を形成する際の望ましくない順序も制御機器内の敏感な電子部品の損傷につながる恐れがある。そのため例えば既に電圧の印加された差込コンタクトを備えた対応プラグコネクタを、敏感な電子部品を備えた電子制御機器のプラグコネクタ内に差し込む際には、まずこの電圧がアース接続を介して車体に流れる前に供給されてしまう。
【0003】
ここでの救済措置を得るために、いくつかの制御機器では、電子制御機器のプラグコネクタと、通常はケーブルが接続されている対応プラグコネクタとの間の差込過程中のアース接続を事前に達成するために、延長された「アースピン」が挿入されていた。この延長された「アースピン」とは、プラグコネクタ若しくは対応プラグコネクタ内に存在する別のコンタクトを超えた差込コンタクトを指す。この種の実施態様の欠点として、特にこの種の組み合わせが複数の極数を有し、それに応じて長く構成されているときには、アースピンの最初のコンタクト形成が、相応に形成されたプラグコネクタと対応プラグコネクタとの組み合わせの全ての許容誤差を超えて確実に達成されるものではないことである。雄型コンタクトを備えた制御機器のプラグコネクタには、非常に長いコンタクトが必要であることがわかっているが、そのようなコンタクトの調達には高いコストがかかり、許容誤差内での製造も困難である。またそのような長いピンはプラグコネクタ内でのその位置付けに関しても固定的に定められるところが煩わしく感じられる。
【0004】
別の制御機器との相互接続の際には、別の箇所に長いピンを備えた新たなインターフェースが必要となり、相応に新たに定める必要性も生じ得る。
【0005】
発明の概要
そこで、迅速なアース接続が保証される、プラグコネクタと対応プラグコネクタとからなる導電性のプラグコネクタ接続を提供する必要性がある。
【0006】
そのような必要性は、独立請求項に記載されている本発明の対象によって解決される。有利な構成は従属請求項に記載されている対象から得ることができる。
【0007】
本発明による第1実施例は、非導電性材料からなるプラグコネクタからなっている。このプラグコネクタは内部空間を有し、該内部空間は、側壁の内壁面と底部要素の底面とによって仕切られており、前記側壁は底部要素に固定的に接続されている。前記底面とは反対側の側壁は縁部をなしている。前記プラグコネクタは前記底面とは反対側に、プラグコネクタの挿入のための差込開口部を有している。この底部要素は、内部空間に延在している雄型コンタクトを収容するように構成されている。ここでは導電性の第1のコンタクト要素が、第1のコンタクト部材と第1の接続要素とを有し、前記第1のコンタクト部材は側壁に固定的に接続される。第1のコンタクト部材は内部空間からコンタクト形成可能である。第1の接続要素は導電性の対象と導電的に接続可能である。
【0008】
それにより、底面を必ずしも完全に取り囲む必要のない側壁が必要になるだけである。このプラグコネクタは、対応プラグコネクタの差込方向で見た平面図において矩形、円形、若しくはその他の幾何学形態を有し得る。このプラグコネクタは雄型コンタクトがプラグコネクタと既に解離できないように接続される構成であってもよい。このことはプラグコネクタの製造において雄型コンタクト及び/又は接続要素の射出成形によって行うことも可能である。また雄型コンタクトは当該プラグコネクタ内で係止可能に配置されていてもよい。さらにまた当該プラグコネクタは雄型コンタクト及び/又は接続要素が対応プラグコネクタの差込方向で底部要素から突出し、この突出部分がプリントされた回路と接続可能に構成されていてもよい。この接続要素は例えばクリップ、ロウ付け、又は溶接のために構成されていてもよい。
【0009】
本発明のさらに別の実施例によれば、プラグコネクタの第1のコンタクト部材が実質的に側壁の内壁面に沿って縁部から底面方向に延在している。この第1の接続要素は、導電性対象との導電接続のために用いられる。
【0010】
通常は第1のコンタクト部材は側壁緑部を超えて突出しない。このコンタクト部材はプラグコネクタ内部に使用されてもよいし、プラグコネクタと一緒に製造されてもよい。例えば前記コンタクト部材は金属製であってもよい。その場合にはコンタクト部材は、プラグコネクタの射出成形過程中にプラスチックから成形された成形フォーム内に配置され、少なくとも部分的にプラスチック材によって射出成形されてもよい。接続要素の支障のないアクセスのために、前記コンタクト部材は例えば、底部要素から対応プラグコネクトの差込み方向へ延在するピンとして形成されてもよい。また第1の接続要素は、導電性の対象、例えば制御機器の金属ケーシングと、直接導電接続されるように構成されていてもよい。
【0011】
本発明の別の実施例によれば、前記側壁が導電的に構成される。このことは例えば導電性プラスチックによって実現されてもよい。また前記第1のコンタクト部材も導電性プラスチックから形成されていてもよい。この導電性プラスチックは、プラグコネクタの製造の際に射出成形され、解離不能なように側壁に接続されてもよいし、プラグコネクタの製造後に、当該プラグコネクタに固定的に接続されてもよい。なおここでの固定的な接続とは、解離不能な接続のみでなく、解離可能な接続も含まれることを理解されたい。
【0012】
本発明のさらに別の実施例によれば、プラグコネクタの内部チャンバー内へグリップ保護要素が突出している。ここでのグリップ保護要素は、対応プラグコネクタの挿入方向に実質的に並行するようにして前記底壁面から差込開口部方向に延在している。第1のコンタクト部材は、当該部材が前記内部チャンバーから接触接続可能となるように前記グリップ保護要素に配設されている。
【0013】
前記グリップ保護要素は、人間の手、あるいは指が前記コンタクトに接触する可能性を回避するためのものである。とりわけ三列以上の雄型コンタクト列を有するプラグコネクタのケースでは、プラグコネクタ内に複数のグリップ保護要素を設ける必要がある。特に平面図で見て矩形のプラグコネクタの場合は、グリップ保護要素がリブとして形成される。この種のグリップ保護要素は、"Kojiri−rib"とも称される。平面図で見て実質的に円形若しくは楕円形に見えるプラグコネクタの場合では、グリップ保護要素はとげ状の隆起部として形成されてもよい。
【0014】
本発明のさらに別の実施例によれば、前記プラグコネクタがさらに雄型コンタクトを有し、前記雄型コンタクトの雌型コンタクト内に収容されるように定められた第3のコンタクト部材は、前記内部チャンバー内で前記縁部よりも下方で終端する。
【0015】
これによって、人間の指が雄型コンタクトに接触する可能性のないことが保証される。但し極端に突き出ている雄型コンタクトは別の対象に引っ掛かったりねじ曲がったりする可能性もあるため、場合によっては対応プラグコネクタの問題のない差込がもはや保証できなくなる可能性もある。
【0016】
本発明のさらなる実施例は、非導電性材料からなる対応プラグコネクタとして構成されている。この対応プラグコネクタは、ケーシングを備えた構成である。このケーシングは雌型コンタクトを収容するためのチャンバーを有している。このケーシングは外壁面と対応プラグコネクタ前壁面によって仕切られており、この場合対応プラグコネクタ前壁面は固定的に前記外壁面に接続している。この対応プラグコネクタは次のように構成されている。すなわち、雄型コンタクトが対応する雌型コンタクトと導電的に接続可能となるように構成されている。この場合は導電性の第2のコンタクト形成要素が第2のコンタクト部材と第2の接続要素を有している。この第2のコンタクト形成要素はケーシングに固定的に接続されている。前記第2のコンタクト部材は、外部から接触接続可能である。第2の接続要素は導電性の対象と導電的に接続可能である。
【0017】
非導電性材料とは例えばプラスチックであってもよい。対応プラグコネクタはプラグコネクタに対して相補的な形態を有していてもよい。第2のコンタクト要素が外部から接触接続可能とは、対応プラグコネクタに対して相補的なプラグコネクタがケーシング内へ挿入される場合に、部分的な領域、有利には第1のコンタクト部材、第2のコンタクト部材が導電的に接触接続されることを意味するものと理解されたい。このプラグコネクタはその内壁面が対応プラグコネクタの外壁面を完全に取り囲むように構成される。対応プラグコネクタ前壁面は開口部を有しており、この開口部を通って雄型コンタクトの第3のコンタクト部材が雌型コンタクトの第4のコンタクト部材内へ挿入される。この場合プラグコネクタの方を向いた第4のコンタクト部材の端部は、対応プラグコネクタ前壁面よりもケーシング内へ後退している。しかしながら対応プラグコネクタの対応プラグコネクタ前壁面は次のように構成されていてもよい。すなわち雌型コンタクトの第4のコンタクト部材が対応プラグコネクタ前壁面と面一に終端するように構成されていてもよいし、対応プラグコネクタ前壁面を超えて対応プラグコネクタの挿入方向へ突出するように構成されていてもよい。特に雌型コンタクトが対応プラグコネクタの製造の際にプラスチックで射出成形された対応プラグコネクタの場合には、対応プラグコネクタ前壁面を超えて突出する第4のコンタクト部材が周知である。第2の接続要素は、ケーブルを取り付けることができるように構成されていてもよい。この第2の接続要素はクリッピングコンタクトとして設計されていてもよい。
【0018】
本発明の別の有利な実施例によれば、前記対応プラグコネクタ前壁面が、チャンバーまで延在している第1の開口部を有する。
【0019】
本発明の別の実施例によれば、対応プラグコネクタのケーシングが凹部を有している。この凹部は対応プラグコネクタの挿入方向に沿って延在し、凹部壁面によって仕切られている。この場合第2のコンタクト部材は凹部壁面に配設されている。
【0020】
とりわけプラグコネクタが前述したようなグリップ保護リブを備えているならば、前記凹部は溝として形成されててもよい。グリップ保護要素がプラグコネクタ内でとげ状の隆起部として形成されるならば、対応プラグコネクタ内で対応する凹部は場合によっては円筒状に形成されてもよい。
【0021】
本発明のさらに別の有利な実施例によれば、対応プラグコネクタの第2のコンタクト部材が第1の弛緩位置から弾性的復元力に抗して第2の緊張位置へ移行可能である。対応プラグコネクタが相補的プラグコネクタ内へ挿入された場合には、第2のコンタクト部材は第2の位置をとる。外壁面及び/又は凹部壁面は開口部を有しており、この場合第2のコンタクト部材は、少なくとも第1の位置において、前記開口部を貫通して前記外壁面及び/又は凹部壁面を超えて突出している。
【0022】
弾性的復元力は一方では例えばバネ力によって第2のコンタクト部材を第2の位置から第1の位置へ押し出すことによって生成され得る。また前記コンタクト部材は例えば(プリロードされた)圧縮部材であってもよい。またコンタクト部材自身の内部で弾性的復元力が得られるようにコンタクト部材を構成することも可能である。この種の復元力を年間を通して維持できるようにするために、第2のコンタクト部材は金属薄板、とりわけ冷間圧延された薄板、有利には真鍮、トムバックから製造される。この弾性的復元力はさらに付加的に、プラグコネクタと対応プラグコネクタの組み合わせ構成の振動の際にも第2のコンタクト部材を永続的に第1のコンタクト部材に応圧することを提供する。前記開口部または凹部は、第2のコンタクト部材が第1の位置から第2の位置へ移動できるように構成されており、さらに付加的に第2のコンタクト部材の所定のオーバーストロークも考慮される。このオーバーストロークは例えばプラグコネクタの製造の許容誤差も補償し得る。
【0023】
本発明の別の実施例によれば、対応プラグコネクタが2以上の第2のコンタクト部材、例えば2乃至4個の第2のコンタクト部材を備えた対応プラグコネクタとして構成される。
【0024】
本発明のさらに別の実施例によれば、対応プラグコネクタの第2のコンタクト部材が対応プラグコネクタ前壁面の近傍に配設される。但しその際には実質的に対応プラグコネクタ前壁面を超えてまでは突出しない。
【0025】
このような対応プラグコネクタ前壁面を超えない突出により、第2のコンタクト部材が他の対象に引っ掛からないことが保証される。それにより第2のコンタクト部材は、ケーシング内で対応プラグコネクタ前壁面にできるだけ近づくように配設される。そのような対応プラグコネクタ前壁面への第2のコンタクト部材の接近は、プラグコネクタ内に対応プラグコネクタを挿入した際に、雄型コンタクトの第3のコンタクト部材が雌型コンタクトの第4のコンタクト部材に接触する前に、まず第2のコンタクト部材がプラグコネクタの第1のコンタクト部材に接触することを保証する。
【0026】
本発明のさらに別の実施例によれば、プラグコネクタと対応プラグコネクタとからなる電気的なプラグコネクタ接続装置からなり、前記プラグコネクタは雄型コンタクトを備えた、前記対応プラグコネクタは雌型コンタクトを備えている。このプラグコネクタは、対応プラグコネクタに対して相補的に構成されている。この場合対応プラグコネクタをプラグコネクタに差し込んだ際に、雄型コンタクトと対応する雌型コンタクトとの間の導電接続が形成される前に、第1のコンタクト形成要素と第2のコンタクト形成要素の間の導電接続が形成される。
【0027】
第2のコンタクト形成要素の第2のコンタクト部材は、摺動コンタクトとして形成されてもよい。これにより、対応プラグコネクタをプラグコネクタに挿入した際に、第2のコンタクト部材が第1のコンタクト部材から外れることがなく、それに伴い導電接続が中断されることもない。そのため例えば第1のコンタクト部材を真っ直ぐでフラットな形状に形成し、これを、球状に形成した第2のコンタクト部材の外壁面と導電接続させてもよい。また前記外壁面のみを丸くし、その丸みを第1のコンタクト部材で支持するようにしてもよい。
【0028】
この種の電気的なプラグコネクタ接続は、自動車製造業界からの要求を満たすものでなければならない。構造的な特徴としていくつかの主要な点を挙げれば、このプラグコネクタ接続装置は埃から保護されていなければならない。さらにプラグコネクタ接続装置は、振動に起因して外れないようにしなければならず、場合によっては係止機構が設けられる。さらに電気的なプラグコネクタ接続装置を特にエンジンルームに設ける場合には、高圧洗浄水から保護されるように構成する必要がある。自動車製造メーカにおいて重要な価格競争に基づいて電気的なプラグコネクタ接続装置は割安に製造できると共に有利にはプラスチック射出成形部材として製造可能である。
【0029】
さらに前記プラグコネクタ装置はとりわけエンジンルームにおいては約120°Kの温度までの耐熱性を備えていなければならない。
【0030】
ここでは本発明に係る考察が、プラグコネクタや対応プラグコネクタのみならずこれらの2つのコンポーネントからなる電気的なプラグコネクタ装置にも関連していることを述べておく。なお当業者にとっては、以下で個別に説明する特徴が様々な方式で相互に組み合わされ、本発明のさらに別の構成を実現することが可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】3つの雄型コンタクトを備えた一列型プラグコネクタの三次元的な断面図
【
図2】
図1のプラグコネクタに対応する一列型プラグコネクタの三次元的な平面図
【
図3】一列型プラグコネクタと対応プラグコネクタの組み合わせ構成を示した横断面図
【
図4】列毎に4つの雄型コンタクトを備えた二列型プラグコネクタの三次元的な断面図
【
図5】
図4のプラグコネクタに対応する二列型対応プラグコネクタの三次元的な平面図
【
図6】二列型プラグコネクタと対応プラグコネクタの組み合わせ構成を示した横断面図
【0032】
実施例の詳細な説明
図1には内部チャンバー4の方向で見た一列型プラグコネクタ2が三次元的な断面図で示されている。このプラグコネクタは非導電性プラスチックから製造されている。内部チャンバー4は、内壁面6と、側壁8と、底部要素12の底壁面10とによって仕切られている。底部要素12も、チャンバーを仕切る壁部に係止する複数のコンタクトを収容するためのチャンバーを備えている。側壁8は底部要素12と固定的に接続されている。この側壁8は、底壁面10の対向している側は緑部14によって限定されている。
図2に示されている対応プラグコネクタ28のシフト方向は、符号Eの付された矢印によって示されている。底部要素12は内部チャンバー内へ延在するここでは3つの部材からなる雄型コンタクト18を収容するように構成されている。ここで説明する本願発明の実施例では、プラグコネクタ2が既に複数の雄型コンタクト18を具備しており、このプラグコネクタ2は一体的に形成されている。導電性の第1のコンタクト形成要素20は、第1のコンタクト部材22と、第1の接続要素24を有しており、
図3ではさらにこれらが詳細に示されている。第1のコンタクト部材22は、側壁8に固定的に接続されており、当該実施例においては真鍮板から形成されている。この場合第1のコンタクト部材22は、前記側壁8の内壁面6と面一に形成されている。このコンタクト部材22は、実質的に緑部14から側壁8の内壁面6に沿って底壁面10方向に延在している。コンタクト部材22は、内部チャンバー4内からコンタクト形成可能である。ここでは複数の雄型コンタクト18のうち、3番目のコンタクト部材26のみが示されている。
【0033】
図2には、
図1のプラグコネクタ2に対する相補型の一列型対応プラグコネクタ28を対応プラグコネクタ前壁面38の三次元的な平面図で示している。この対応プラグコネクタ28は、ケーシング30を備えて構成されており、前記ケーシング30は外壁面36と対応プラグコネクタ前壁面38とによって仕切られている。前記対応プラグコネクタ前壁面38は外壁36と固定的に接続されている。この対応プラグコネクタ前壁面38は3つの第1の開口部40を有しており、これらの開口部40を通って前記プラグコネクタ2の雄型コンタクト18の第3のコンタクト部材26が、
図3に示されている雌型コンタクト34の同様に
図3に示されている第4のコンタクト部材35に到達する。そこで明らかなことは前記雌型コンタクト34が、ケーシング30のチャンバー32内に設けられていることである。導電性の第2のコンタクト形成要素42は、その第1の端部に第2のコンタクト部材44を有しており、前記第1の端部とは反対側の第2の端部には、
図3から明らかなように第2の接続要素46を有している。この第2のコンタクト形成要素42は、ケーシング30と固定的に接続されており、この場合第2のコンタクト部材44が外部から電気的にコンタクト形成可能である。第2のコンタクト部材44は当該実施例では金属薄板で形成され、この金属薄板は第2のコンタクト部材44の成形のために可塑的にフック状に曲げられており、この金属薄板の外側湾曲面は、前記外壁36を抜けて突出する。前記第2のコンタクト部材44は、第1の弛緩位置50にあり、この場合第2のコンタクト部材44は、第2のコンタクト要素42に内在する弾性力に抗して
図3に示されている第2のプリロード位置52に移動し得る。
【0034】
図3には前記プラグコネクタ2と対応プラグコネクタ28からなる組み合わせ構成が示されている。ここで明らかなことは、第1の接続要素24が、対応プラグコネクタ28の差込み方向を表している矢印Eに沿って延在し、さらに側方では、側壁8を超えて突出していないことである。さらに雌型コンタクト34の第4のコンタクト部材35の前方端部37が対応プラグコネクタ前壁面38の後方でケーシング30内へ後退していることである。この雌型コンタクト34の、前方端部37とは反対側の後方端部53は、クリンピング端子54として構成されており、該クリンピング端子54によってケーブル56が固定的に接続される。
図3に描写されているプラグコネクタ2と対応プラグコネクタ28の組み合わせ構成は次のような状態を表している。すなわち対応プラグコネクタ28をプラグコネクタ2の差込開口部16内へ挿入中の第2のコンタクト部材44が第2のプリロード位置52へ移行し、第1のコンタクト形成要素20の第1のコンタクト部材22と導電的にコンタクト形成されている状態であって、前記雄型コンタクト18の第3のコンタクト部材26は前記雌型コンタクト34の第4のコンタクト部材35にまだ接触していない状態、つまり前記雄型コンタクト18と雌型コンタクト34の間で導電接続が行われる前の状態である。それにより例えばここには示されていない電子制御機器との間の電位差に基づき発生する過電圧が次のようにして回避される。すなわち制御機器の雄型コンタクト18が雌型コンタクト34と(このコンタクトは最終的にケーブル56を介して図示されていないセンサに接続されている)接触接続する前に、前記第1の接続要素24と、第1のコンタクト部材22とが、第2のコンタクト部材44に接続し、さらに前記第2の接続要素46を介してここには示されていない車両ボディにアースがつながるようにして回避される。さらにこの図においては、雄型コンタクト18の第3のコンタクト部材26が内部チャンバー4内で緑部14よりも下方で終端していることがよくわかる。第2のコンタクト部材44は、摺動コンタクトとして構成されており、そのため対応プラグコネクタ28がプラグコネクタ2内へ挿入されている間に、第2のコンタクト部材44は第1のコンタクト部材22から外れることができず、導電接続が中断されることはない。
【0035】
図4には内部チャンバー104において4つの雄型コンタクト118を備えた二列型プラグコネクタ102が三次元的な断面図で示されている。この内部チャンバー104は、側壁108の内壁面106と底部要素112の底壁面110によって仕切られている。プラグコネクタ102は一体型のプラスチック性射出成形部材として形成される。この場合このプラスチックは電気的に非導電性である。この場合側壁108は底部要素112と解離不能に接続されている。前記側壁108の前記底壁面110とは反対側は、縁部114をなしている。前記底壁面110とは反対側には、矢印で示された挿入方向Eに、
図5に示された対応プラグコネクタ128を挿入するための差込開口部116が示されている。底部要素112は、内部チャンバー104内に延在している複数の雄型コンタクト118を収容するように構成されており、これらの複数の雄型コンタクト118は当該実施例では前記底部要素112と解離不能に接続されている。プラグコネクタ102は、
図1に示されているプラグコネクタ2と実質的に次の点で異なっている。すなわち、それぞれ4つの雄型コンタクト118を有している2つの列が、リブとして形成されたグリップ保護要素119によって相互に分離されている点で異なっている。このグリップ保護要素119は、底部要素112と解離不能に接続されているが、その狭幅側121は内壁面106に対して離間されている。このグリップ保護要素119は、前記縁部114よりも内部チャンバー104内へ後退している雄型コンタクト118の第3のコンタクト部材126に人間の指が誤って触れることがないようにするものである。雄型コンタクト118の列に対して並行に延在するグリップ保護要素壁面123において第1のコンタクト形成要素120の第1のコンタクト部材122は固定的に面一に配置されている。ここでの第1のコンタクト部材122は、グリップ保護要素119を超えて延在していない。第1のコンタクト形成要素120の第1のコンタクト部材122においては対向側に第1の接続要素124が設けられており、この第1の接続要素124は、
図3からも明らかなように挿入方向Eにおいて底部要素112から突出している。
【0036】
図5には、
図4のプラグコネクタ2に対応する対応プラグコネクタ128が対応プラグコネクタ前壁面138から見た平面図で三次元的に示されている。この対応プラグコネクタ128も射出成形によって非導電性プラスチックから製造されている。この対応プラグコネクタ128は、ケーシング130を形成しており、ここでのケーシング130は、
図6から明らかなように雌型コンタクト134を収容するためのチャンバー132を含んでいる。このケーシング130は、外壁面136と対応プラグコネクタ前壁面138とによって仕切られており、この場合対応プラグコネクタ前壁面138は解離不能に前記外壁面136と接続している。対応プラグコネクタ前壁面138には第1の開口部140が設けられており、この第1の開口部140は前記チャンバー132に続いている。これらの第1の開口部140を通って前記プラグコネクタ102の第3のコンタクト部材126は、前記対応プラグコネクタ128の第4のコンタクト形成要素135と導電的に接続される。前記ケーシング130内には、前記グリップ保護要素119に対して相補的に形成された凹部158が前記第1の開口部140の2つの列の間で溝の形態で構成されており、当該凹部158は凹部壁面160によって仕切られている。長手側の凹部壁面160のほぼ中央には、前記対応プラグコネクタ前壁面138よりも前記凹部158内へ後退している第2の開口部148が設けられている。この第2の開口部148を通って前記第2のコンタクト形成要素142の第2のコンタクト部材144が当該凹部158内に突出している。このことは
図6においてより良好に識別できる。この第2のコンタクト部材144は第1の弛緩位置150にあり、この場合第2のコンタクト部材144は、第2のコンタクト形成要素142に内在する復元力に抗して
図6に示されている第2のプリロード位置152に移行する。
【0037】
図6には前記プラグコネクタ102と対応プラグコネクタ128の二列型組み合わせ構成が断面図で示されている。この図から見て取れることは、第1のコンタクト形成要素120の第1の接続要素124が、矢印Eによって示されている当該対応プラグコネクタ128の挿入方向で底部要素112から突出して延在していることである。さらに見て取れることは、第2のコンタクト部材144とは反対側に第2の接続要素146が形成されていることである。この第2の接続要素146は、クリンピング端子162として構成されている。前記第2の接続要素146にはケーブル164が導電的に接続され、それに伴って第2のコンタクト形成要素が接続する。さらにこの図からは、前記雌型コンタクト134の第4のコンタクト形成要素135の前方端部137が前記対応プラグコネクタ前壁面138よりもチャンバー132内に後退していることが見て取れる。この場合前記第2のコンタクト部材144は、前記対応プラグコネクタ前壁面138の近傍に配置される。
【0038】
前記対応プラグコネクタ128は、挿入方向Eに沿って、前記プラグコネクタ102の差込開口部116を通って当該プラグコネクタの内部チャンバー104内へ、前記対応プラグコネクタ128の第2のコンタクト形成要素142の第2のコンタクト部材144が前記プラグコネクタ102の第1のコンタクト形成要素120の第1のコンタクト部材122に導電的に接触接続するまで挿入される。さらに当該の位置における前記雄型コンタクト118の第3のコンタクト部材126は(この場合の第3のコンタクト部材126は前記縁部114よりも内部チャンバー104内に後退している)、導電接続が不可能となる位に前記雌型コンタクト134の第4のコンタクト形成要素135から離されている。ここでも既に
図3で説明したように、例えば自動車ボディと、敏感な電子部品を備えた制御機器の金属ケーシングとの間の電位差に基づくピーク電圧は、前記金属ケーシングと導電的に接続された第1の接続要素124と、第1のコンタクト部材122と、第2のコンタクト部材144とを用いて、自動車ボディに接続しているケーブル164にアースされる。