(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
植物又は動物タンパク質及び植物又は動物タンパク質の加水分解物は、食物製品に、特に製菓工業において発泡剤として使用されることが多い。すなわち、
− タンパク質そのものが長期間安定な発泡剤として選択され、
− タンパク質加水分解物はタンパク質に関してよりもより高い起泡能力のために選択される。
【0003】
タンパク質加水分解物の起泡特性が多数の文献に記載されている。最近の文献ではタンパク質の酵素加水分解が論じられているが、初期の研究ではタンパク質のアルカリ加水分解が説明されている。
【0004】
説明されている方法では使用される操作条件の大きな違い、例えば、短い加水分解時間、又は反対に非常に長い加水分解時間、が例示されている。
【0005】
例として、英国特許第705489号明細書は、水酸化ナトリウムを使用する落花生たんぱく質の加水分解に関する。
【0006】
その処理は82℃水中で30分間実施し、続いて塩酸で中和される。従って「ホイッピング性」加水分解物が得られる。
【0007】
米国特許第2999753号明細書の一部では、pH10.7〜10.8において、37〜80℃の温度で、8〜20時間の処理の後に得られた植物タンパク質のアルカリ加水分解物が説明されている。
【0008】
米国特許第2,522,050号明細書にはさらに、十分な発泡特性を有する生成物を得るために、大豆タンパク質又は乳タンパク質を、少なくとも10のpHで、100℃を十分に下回るといわれる温度(35〜40℃)で、少なくとも2日間、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを含有する水溶液中でのアルカリ加水分解によって発泡剤を製造する方法が説明されている。
【0009】
従って、この文献は以下を推奨していることに注目すべきである。すなわち、
− 40℃以下の反応温度を選択すること、
− 最良の起泡特性を示すタンパク質加水分解物を得るためにカルシウム又はマグネシウムの水酸化物、特にカルシウムの水酸化物がより優先されること、
− 長い反応時間が優先されること。
【0010】
従って、英国特許第670,413号明細書では、少なくとも24時間の室温でのタンパク質の加水分解によって発泡剤を調製する方法が説明され、加水分解は水酸化カルシウムを使用して実施される。
【0011】
同様に、この特許においては、約100℃以上という、より高い温度においてタンパク質を加水分解することが可能であるが、このことは所望の起泡特性に損害を与えるであろうと言及されている。
【0012】
しかしながら、水酸化カルシウムを用いる加水分解が推奨されることが多いが、その加水分解物は非常に悪い食味を有し、このことは重大な不利な条件となる。事実、それらはチョークのような苦い味が一般的であり、さらに硫黄質のゴムのような味を有する。
【0013】
水酸化カルシウムを用いて加水分解中の温度を高めると反応時間を短くできるが、これらの望ましくない香味形成が増大する。
【0014】
これらすべての条件を考慮するため、欧州特許第1,327,390号明細書では従って植物タンパク質の加水分解物を発泡剤として使用する炭水化物含有の食品を通気する方法を提案しており、前記加水分解物は植物タンパク質を少なくともpH10の水溶液中で加水分解させて得られる。
【0015】
その結果このアルカリ加水分解物は、平均のペプチド鎖長が5〜20個のアミノ酸であり、遊離のアミノ酸の量はタンパク質から誘導された全物質の15重量%未満である。
【0016】
しかしながら、この結果を実現するには、欧州特許第1,327,390号明細書に述べられたアルカリ加水分解の元の方法に、アルカリ金属水酸化物とアルカリ土類水酸化物とを組み合わせることが、すなわち、例えばNaOH又はKOHなどの少なくとも1つのアルカリ金属水酸化物を、例えばCa(OH)
2又はMg(OH)
2の少なくとも1つのアルカリ土類水酸化物と組み合わせることが必要である。
【0017】
従って、前記欧州特許第1,327,390号明細書の条件に従う効率的なアルカリ加水分解は、完全に特定の方式の加水分解の実施によってのみ得ることができる。
【0018】
国際特許出願WO95/25437号パンフレットには、植物粉中に含有されるタンパク質をタンパク質の等電点pHより高いpHにおいて任意選択で吸着剤の存在下で抽出し、かつ吸着剤の存在下でこうして得られたタンパク質のアルカリ、酸、及び/又は酵素を用いた「それ自体が既知である」と記述されている方式での加水分解による、着色を改善した植物タンパク質の加水分解物の生産方法が記述される。
【0019】
こうして得られたタンパク質加水分解物は、とりわけ界面活性剤として使われ得る。
【0020】
アルカリ加水分解に推奨される方法には実際に、タンパク質単離物の水性アルカリ懸濁液を酸化カルシウム又は水酸化カルシウムで再度処理することが含まれる。
【0021】
次いで得られた溶液はろ過して残渣を取り除く必要がある。
【0022】
このようにしてペプチドを得るには、ペプチドをカルシウム塩の形で水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで更に処理する必要があり、その後に残余カルシウムを、例えば硫酸カルシウムの形で取り除く必要がある。
【0023】
低溶解度の塩の分離は最終的に、ろ過助剤の存在下でろ過器及びフィルタープレスで実施する必要がある。
【0024】
こうして得られた加水分解物は、濃縮後で、平均分子量が100〜30,000ダルトンで変わり、好ましくは100〜10,000ダルトン及びとりわけ2000〜5000ダルトンで変わり、5〜50重量%の乾物含量である。
【0025】
欧州特許第1,909,592号明細書にはマンガンを強化したタンパク質加水分解物の生産方法が記述され、これは畜産業においてマンガンの供給の制御した供給源になることを目的とし、これによって動物飼料における過量投与を回避することができ、その他の飼料成分との全ての障害現象を低減できる。
【0026】
これらのマンガン強化タンパク質加水分解物を得るために、例えば皮なめし工場で処理された皮革に由来する結合組織を、特定の圧力及び温度条件下に石灰で処理することがすでに先行技術の中に説明されている。
【0027】
欧州特許第1,909,592号明細書には、始発原料として通常の植物質有機物を使用し、とりわけそのものを石灰による処理を受けさせてマンガン強化したタンパク質加水分解物を得ることが代わりに提案されている。
【0028】
これらのタンパク質のマンガン強化は、続いて予め硫酸溶液に溶解した硫酸マンガン又はその他のマンガン塩を用いて、高温度でそのタンパク質加水分解物のカルシウム塩を処理することによって実行される。
【0029】
残余カルシウム塩を、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、又は直接的に二酸化炭素で、及び/又はその他の沈殿剤、例えばしゅう酸及びリン酸で沈殿させることが更に必要である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明によるアルカリ加水分解物を得る方法の第1のステップは、植物タンパク質を
水中で懸濁液となるようにするステップであって、濃度が15〜30乾物重量%であり、温度が70〜80℃であり、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化カリウムの添加よってpHが9.5〜10.5となるようにするステップである。
【0036】
工業的規模では植物タンパク質をこのような乾物含量で取り扱うことは困難である。
この懸濁液は、その混合物の各種成分の取り込みに12〜20時間を必要とし得る。
【0037】
以降で例示されるように、出願人である本会社はアルカリ化した水を予備加熱し、次いで植物タンパク質を前記乾物含量に到達するまで徐々にその中に取り込むことを推奨する。
【0038】
本発明によるアルカリ加水分解物を得る方法の第2のステップは、前記懸濁液を、10〜15時間、好ましくは12時間、70〜80℃で、好ましくは約75℃、かつ9.5〜10.5のpHで
インキュベートすることである。
【0039】
反応混合物を約10のpHに調節することにより、溶解度及び乳化力(以後「EC」とする)の観点から最良の性質を示す製品を得ることが可能となる。
【0040】
塩基性に関しては、アルカリ金属の水酸化物によってのみ、好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)によって提供される。
従ってアルカリ土類の水酸化物、例えば水酸化カルシウムなどは使用されない。
【0041】
55〜90℃で試験した後で、反応温度は最終的に70〜80℃、好ましくは約75℃の値に選択された。
【0042】
反応時間に関しては、10〜15時間に固定される。
【0043】
この方式で進めることによって、出願人である本会社は、以下の意味合いで先行技術の先入観に逆行する。
− 実際の反応時間を短くし、約12時間で容易に工業化可能であり、従って24〜48時間もしくはそれ以上で反応を実施することがもはや不要である、
− カルシウム又はマグネシウムの水酸化物を使用しないことを提案する、出願人である本会社は、石灰の使用は得られたタンパク質加水分解物の品質に悪影響を及ぼすことを見出した。
【0044】
本発明によるアルカリ加水分解物を得る方法の第3のステップは、鉱酸によって、好ましくは塩酸でpHを中和することである。
【0045】
例えば1Nの塩酸が、pHを7に調節するために撹拌下で混合物に添加される。
【0046】
本発明によるアルカリ加水分解物を得る方法の第4の最終ステップは、こうして得られたアルカリ加水分解物を乾燥することを含む。
【0047】
例えば、製品はタービン噴霧乾燥機(特にNIRO型)において並流処理で乾燥される。この噴霧乾燥機は微粉体循環システムを有しておらず、従って一段式乾燥である。噴霧塔に入る空気は180℃に加熱される。塔向けの空気流量は、塔出口での空気は約80〜85℃の温度であるように調節される。これらの噴霧条件は残留水分が6〜7%である粉末をもたらす。
【0048】
本発明による方法を採用して、顕著な機能的特性を示す植物タンパク質のアルカリ加水分解物を得ることが可能である。
【0049】
従って、これらの植物タンパク質のアルカリ加水分解物は、以下の項目で特徴付けられる。
− pH7.5の水への溶解度は60〜100%であり、好ましくは80〜98%である。
− 乳化力は60〜90%であり、好ましくは65〜85%である。
− ペプチド連鎖の平均鎖長は10〜20アミノ酸である。
【0050】
本発明によるアルカリ加水分解物は、試験Aによって決定されるそれらの溶解度によって特徴付けられる。
【0051】
この試験Aは、pH7.5における水溶性物質の含量が、試験サンプルを蒸留水中に分散させ、遠心分離後に得られた上澄み液を分析する方法によって決定することを含む。
【0052】
試験サンプルの正確な2gと、磁気バー(例えば、VWR社からの参照番号ECN442−4510のもの)とを400mLビ−カ−の中に入れる。全体の風袋重量を計り、蒸留水100gを20℃±2℃で添加する。
【0053】
1NのHCl又は1NのNaOHを用いてpHを7.5に調節し、蒸留水で正確に200gにする。
【0054】
それを30分撹拌し、次に3000gにて15分間遠心分離する。
【0055】
遠心分離後、上澄み液の正確に25gを予め較正された結晶皿に取り出す。重量を恒量にするために103℃のストーブ内で保持する。
【0056】
水溶性は下式から算出される:
【数1】
w1は乾燥後の結晶皿のgによる重量
w2は空の結晶皿のgによる重量
【0057】
その結果、本発明によるアルカリ加水分解物は60〜100%、好ましくは80〜98%の溶解度を有する。
【0058】
本発明によるアルカリ加水分解物は、試験Bによって決定されるそれらの乳化力によっても特徴付けられる。
【0059】
この試験は、タンパク及び油の特定濃度の関数としての、濃度遠心分離後に形成された安定なエマルション「クリーム」のパ―セントに対応する乳化力(以降は「EC」とする)を決定することを含み、
ホモジナイザー(具体的にはPOLYTRONブランドで型式PT 45−80)を、有利にはスピンドル(具体的にはEasy−cleanブランドで参照番号B99582/Bioblock社)を装備して使用する。
【0060】
より正確に言えば、この試験は以下を含む。
− 2Lの背の高いポット(すなわち、例えば高さ23.5cmで直径11.5cm)内で、250mLの脱イオン水中に2.0%のタンパク質(タンパク質N×6.25の重量/容積)に相当する、アルカリ性タンパク質加水分解物の溶液を調製する。
− 磁気バー(特にVWR社からの参照番号ECN442−4510)を導入する。
− アルカリ性タンパク質加水分解物を例えばIKA(登録商標)RCTクラシック(Classic)ブランドの磁気撹拌機上で、最大速度1100回転/分で10分間混合する。
− 250mLの食物等級菜種油を用意する。
− 磁気バーを取り出す。
− アルカリ性タンパク質加水分解物の半分の高さまでPOLYTRON(PT 45−80)のスピンドルを溶液に浸す。
− 回転速度を5.5(5と6との間)、すなわち15200〜15450rpmに設定する。
− 撹拌機のスイッチを入れて、250mLの菜種油を1分間で注ぎ入れる。
− エマルションをビーカーに移す。
− 2本の50mL目盛り付き遠心管の中に正確に35gのエマルションを2回秤量する。
− 20℃において1500gで5分間遠心分離する。
− 遠心分離後に、エマルション「クリーム」の容積を測定する。
− 遠心分離後に、全容積を測定する(ペレット+水+エマルションクリーム)。
− 2本の遠心管の間、及び2回の同一試験の間での再現性を確認する。
【0061】
以下の式を使用して算出し乳化力を決定する:
【数2】
【0062】
本発明によるアルカリ加水分解物は、60〜90%、好ましくは65〜85%のEC値を有する。
【0063】
本発明によるアルカリ加水分解物は、試験Cに従って決定される、それらの平均ペプチド鎖長によって最終的に特徴付けられる。
【0064】
この試験Cは、以下のように平均鎖長を算出することを含み、ここで
− TN=全窒素
− TAN=全アミノ窒素
− FAA=遊離アミノ酸
− F=問題のタンパク質のアミノ酸の平均窒素含量
− ALPC=平均ペプチド鎖長
− PAA=ペプチドアミノ酸数
− PC=ペプチド鎖長
である。
【0065】
次に、当業者に知られている方法であり、BUCKEE、1994,Journal of the Institute of BREWING、100,pp57−64で引用されている、Dumas A.、の方法に従ってTNを測定し、mmol/gで表す。
【0066】
TANは、同様に当業者に知られている「Sorensen」ホルモール滴定によって測定し、mmol/gで表す。
【0067】
FAAはHPLCによって測定し、mmol/gで表す。
【0068】
議論されているタンパク質に応じてF値(mol/molで表される)は、
次のようになる:
− エンドウマメタンパク質:1.29
− ジャガイモタンパク質:1.25
− トウモロコシタンパク質:1.24
【0069】
平均鎖長は、ペプチド鎖数で除算したペプチドアミノ酸数に等しく、すなわち:
【数3】
である。
【0070】
従って本発明によるアルカリ加水分解物は、10〜20アミノ酸の平均ペプチド鎖長を有し、それは部分的に加水分解されたタンパク質の特性を反映する。
【0071】
以下に例示されるように、本発明に従ったアルカリ加水分解物は、エンドウマメタンパク質、ジャガイモタンパク質、及びトウモロコシタンパク質からなる群から選択される植物タンパク質、好ましくはエンドウマメタンパク質から調製される。
【0072】
本発明によるアルカリ性タンパク質加水分解物はまた、
− それらの濃縮度(N×6.25で表される)、
− それらの官能特性、
− それらの起泡性(以降は「FC」とする)、及び
− それらの加水分解度
によって特徴付けられる。
【0073】
当業者にそれ自体がよく知られた方法によって決定される、加水分解物の濃縮度が高く、すなわち60〜95%、好ましくは80〜85%である。
【0074】
本発明によるアルカリ加水分解物の官能特性に関しては、特にエンドウマメタンパク質のアルカリ加水分解物について測定された。
【0075】
本発明によるエンドウマメタンパク質のアルカリ加水分解物は、それが調製されたエンドウマメタンパク質と比較して、事実上完全に満足できる官能特性を有する。
【0076】
起泡性に関しては、試験Dによって以下のように決定される。
【0077】
気泡は機械的撹拌によって生じる、(タンパク質又はそれらの加水分解物を含有する)液体または固体連続相中の気体(窒素、二酸化炭素、空気)の泡の分散体である。
【0078】
背高の250mLビーカー(すなわち、例えば高さ12cm及び直径6cmを有する)内で、脱ミネラル水を用いて、40mLのタンパク質加水分解物の2%(タンパク質N×6.25の重量/容積)溶液を調製する。
【0079】
磁気バー(特にVWR社からの参照番号ECN442―4510)を導入する。
【0080】
タンパク質加水分解物を、例えばIKA(登録商標)RCT クラッシック(Classic)ブランドの磁気攪拌機上で、速度1100回転/分で10分間水和させる。
【0083】
IKA(登録商標)WerkeブランドのものおよびULTRA TURRAX(登録商標)T50 basic型のものなどのホモジナイザーのスピンドル(例えば、参照番号G45M)をタンパク質加水分解物溶液の半分の高さに溶液に浸す。
【0084】
回転速度を「5」の位置に設定し、撹拌を1分間実施する。
【0085】
全容積を100mLメスシリンダーに移す。
【0087】
次に起泡力を次式から求める。
【数4】
【0088】
安定性の損失は、初期気泡容積の百分率で表される、30分後の気泡容積損失によって表される。
【0089】
その結果、本発明によるアルカリ加水分解物は、150〜250%のFC値を有する。
【0090】
さらにこれらのアルカリ加水分解物は、有利には5〜9の加水分解度(DH)を有する。加水分解度は以下の式から計算によって決定され得る。
DH=[(TAN%)×100]/[タンパク質窒素]
式中、
TANは全アミノ酸窒素であり、当業者に知られている「Sorensen」ホルモール滴定によって測定され、mmol/gで表され、
タンパク質窒素はN×6.25で表され、当業者にはよく知られている方法によって測定される。
【0091】
本発明によるアルカリ加水分解物は、有利には、ヒト用又は動物用食品産業、製薬産業、化粧品産業及び化学産業部門において、特に食品部門において、乳化剤として使用され得る。
【0092】
それらはまた、発酵、建築材料、プラスチック、テキスタイル、紙、及び厚紙産業においても使用し得る。
【0093】
最後に本発明は、組成物、好適には上述のアルカリ加水分解物を含有する食品組成物に関する。
【0094】
これらの食品組成物は、好適には前記アルカリ加水分解物で乳化されるエマルションである。
【0095】
本発明のその他の特徴及び利点は、下記の非限定的実施例を読むことにより明らかになるであろう。
【実施例】
【0096】
実施例1:エンドウマメタンパク質加水分解物の調製
本発明によるエンドウマメタンパク質のアルカリ加水分解物は次のようにして調製される。
1)t0:25m
3の水を75℃で加熱し、
2)t0+3時間:300Lの10%水酸化カリウムを添加し、
3)t0+4時間からt0+10時間まで:6.300kgのエンドウママメタンパク質及び10%水酸化カリウムを組み入れてpHを10にし、
4)t0+10時間からt0+15時間まで:700kgの残りのエンドウマメタンパク質を組み入れ、
5)t0+15時間からt0+27時間まで:実際の加水分解を実行するために水酸化カリウムを添加して75℃で
インキュベートし、
6)t0+27時間において:33%塩酸(すなわち242LのHCl)で中和し、
7)t0+28時間において噴霧塔内で乾燥する。
【0097】
生成物をNIRO型のタービン噴霧乾燥機内で並流操作を用いて乾燥する。この噴霧乾燥機は微粒子循環システムを有さず、従って一段式乾燥である。噴霧塔に入る空気を230℃に乾燥する。
【0098】
塔への供給速度は、塔出口で空気が約90℃程度の温度であるように、すなわち、ここでは2800〜3000L/hであるように制御される。
【0099】
これらの噴霧乾燥条件は、6%程度の残留水分を有する粉末の生成をもたらす。
【0100】
得られた結果を以下の表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
本発明による加水分解エンドウマメタンパク質は、平均ペプチド鎖長が
11である。
【0103】
本発明によるエンドウマメタンパク質の加水分解により、溶解度及び乳化力を大幅に増大させることが可能である。
【0104】
さらに起泡力が改善される。
【0105】
本発明によるエンドウマメタンパク質加水分解物は、加水分解前の同一タンパク質の特性より優れた、溶解度、乳化力、及び起泡力の特性を示す。
【0106】
実施例2:油を封入するための本発明による加水分解物の使用
45%のDM及びpH=8でエマルションを噴霧することによって、魚油を封入する。
【0107】
油は乾燥物質の15%に相当し、封入キャリア及び乳化剤は配合に応じて変動する。
【0108】
エマルションは以下の手順に従って生成される。
・80℃に加熱した脱ミネラル水(=封入溶液)に、封入キャリア及び乳化剤を溶解する。
・1NのNaOHでpHを8に調節する。
・20分間撹拌する。
・酸化を回避するために、この時間終了の5分前に油を量り取る。
・RT45−80型のPOLYTRONホモジナイザー(Bioblockからの参照番号B99582であるEasy−cleanスピンドルを装着)を使用して、速度9000rpmでエマルションを作製する:このために、(ステップ1及び2で調製された)封入溶液中に油を注ぎ入れ、2分間撹拌する。
・得られたエマルションを160バールの高圧ホモジナイザーに移す(第2段階は30バールであり、第1段階の160バールを補う)。
・次にエマルションを撹拌して、温度を50℃近くに保つ。
【0109】
このように調製されたエマルションを一段噴霧乾燥機(微粒子再循環なし)内で噴霧する。流入空気の温度は185℃であり;流速は出口温度=90℃になるように制御される。
【0110】
得られた粉末は、それらの含水量、水分活性(aw)、封入度、及び油の酸化状態によって特徴付けられる。
【0111】
封入度は、総脂肪と抽出可能脂肪の差(キャリアによって固定された油量)によって測定される。
【数5】
【0112】
脂質は、ヘキサンを用いたソックスレー抽出によって測定される:
− 抽出性脂質については生成物に対して、
− 総脂質については加水分解後生成物に対して、である。
【0113】
酸化安定性は、NF ISO 6886規格に従って判定される。
【0114】
誘導期間は、所与の条件下(温度、空気流速、生成物重量)で、脂肪を酸化するのに要する時間に相当する。
【0115】
次に、45%のDM及びpH=8における、
− 15%の魚油、
− 1.2又は1.8%の乳化剤:天然エンドウマメタンパク質/実施例1からのエンドウマメタンパク質加水分解物、
− それぞれ83.5%又は83.2%のキャリア:DE12のマルトデキストリン(ROQUETTEFRERES社によって市販されるGLUCIDEX(登録商標)12)、
を含有するエマルションの噴霧が実行される。
【0116】
噴霧された粉末は0.1の水分活性を有する。
【0117】
それらの含水量は1.2%の乳化剤試験では5%であり、1.8%の乳化剤試験では4%である。
【0118】
表II:DE12の、マルトデキストリンと共に噴霧したエマルションの封入度(%)及び誘導時間(h)
【0119】
【表2】
【0120】
DE12のマルトデキストリンキャリアと共に、本発明によるエンドウマメタンパク質加水分解物を1.2%の濃度で使用して、天然エンドウマメタンパク質を用いた78.3%と対比して、89%までの油を封入することが可能である。
【0121】
次に油は、6時間と対比して9時間の導入時間を有する。
【0122】
両方の乳化剤濃度に対しても、封入度は、天然エンドウマメタンパク質ではなく、本発明によるエンドウマメタンパク質加水分解物を使用した場合に、より大きい。
【0123】
同様に、誘導時間は、天然エンドウマメタンパク質ではなく、本発明によるエンドウマメタンパク質加水分解物を使用した場合に、より大きい。
【0124】
従って、油はより緩慢に酸化する。