(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049722
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】レシーバ/脱水機上入口を持ち、注入量のプラトーを安定できるコンデンサ
(51)【国際特許分類】
F25B 39/04 20060101AFI20161212BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20161212BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20161212BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20161212BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F25B39/04 Y
F25B39/04 S
F25B43/00 L
F25B43/00 M
F28D1/053 A
F28F9/26
B60H1/32 613E
B60H1/32 613A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-526163(P2014-526163)
(86)(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公表番号】特表2014-521924(P2014-521924A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012050919
(87)【国際公開番号】WO2013025787
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/524,148
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(72)【発明者】
【氏名】ケント,スコット・イー
【審査官】
▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第19753641(DE,A1)
【文献】
特開2001−099525(JP,A)
【文献】
特開平09−033139(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02777638(FR,A1)
【文献】
特開平11−159992(JP,A)
【文献】
特開平09−264637(JP,A)
【文献】
特開平10−122705(JP,A)
【文献】
特開2004−251488(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/014756(WO,A1)
【文献】
特開2008−281326(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0204772(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0242993(US,A1)
【文献】
特開2003−090643(JP,A)
【文献】
特開平08−219588(JP,A)
【文献】
特開2000−074527(JP,A)
【文献】
米国特許第6430945(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/04
B60H 1/32
F25B 43/00
F28D 1/053
F28F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)であって、
ヘッダ隔壁(232)を持つ第1ヘッダ(226)を備え、前記ヘッダ隔壁(232)は第1ヘッダ(226)を第1チャンバ(234)と第2チャンバに分けており、
ヘッダ隔壁(232)を持つ第2ヘッダ(228)を備え、第2ヘッダのヘッダ隔壁(232)は、該第2ヘッダ(228)を第1ヘッダチャンバ(236)と第2チャンバ(240)に分けており、
前記サブクール式コンデンサは、また、
前記第1ヘッダ(226)の前記第1チャンバ(234)と前記第2ヘッダ(228)の前記第1チャンバ(236)との間を延び且つこれらに液圧連結し、これによってコンデンサ部分(202)を形成する上流冷媒チューブ群(242)と、
前記第1ヘッダ(226)の前記第2チャンバ(238)と前記第2ヘッダ(228)の前記第2チャンバ(240)との間を延び且つこれらに液圧連結し、これによってサブクーラ部分(204)を形成する下流冷媒チューブ群(244)とを備え、
前記コンデンサ部分(202)は、重力方向に関し、前記サブクーラ部分(204)の上方に配置されており、
サブクール式コンデンサは、さらに、
前記第2ヘッダ(228)と隣接して平行に延びる細長いレシーバハウジング(213)であって、前記レシーバハウジング(213)は、前記コンデンサ部分(202)から冷媒を受け入れるため、前記コンデンサ部分(202)に液圧連結した第1流体ポート(254)と、前記サブクーラ部分(204)に冷媒を送出するため、前記サブクーラ部分(204)に液圧連結した第2流体ポート(256)とを含むレシーバハウジング(213)と、
前記レシーバハウジング(213)に配置された冷媒導管(218)とを備え、前記冷媒導管(218)は、上入口端(248)と、前記上入口端(248)から間隔が隔てられた下送出端(250)とを含み、前記上入口端(248)は前記第1流体ポート(254)と液圧連通しており、前記下送出端(250)は前記第2流体ポート(256)と液圧連通しており、
前記レシーバハウジング(213)は、前記レシーバハウジング(213)を、前記第1流体ポート(254)を持つレシーバ第1チャンバ(214)と前記第2流体ポート(256)を持つレシーバ第2チャンバ(216)とに分けるレシーバセパレータ(252)を含み、
前記冷媒導管(218)の前記上入口端(248)は前記レシーバ第1チャンバ(214)内に延び、前記冷媒導管(218)の前記下送出端(250)は前記レシーバ第2チャンバ(216)内に延び、
前記下送出端(250)は、前記第2流体ポート(256)の下方に延びている、サブクール式コンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサにおいて、
前記冷媒導管(218)の前記上入口端(248)は、冷媒が前記コンデンサ部分(202)から前記第1流体ポート(254)を通って前記冷媒導管(204)に直接流入するように、前記第1流体ポートに液圧連結されている、サブクール式コンデンサ。
【請求項3】
請求項1に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)において、
前記第1ヘッダ(226)の前記第1チャンバ(234)及び前記第2ヘッダ(228)の前記第1チャンバ(236)の各々は、前記コンデンサ部分(202)を、第1パス(206a)及び最終パス(206c)を含む多数のパスに分ける少なくとも一つのチャンバ隔壁(233)を含み、前記第1パス(206a)は前記最終パスの下方にあり、
前記第1ヘッダ(226)の前記第1チャンバ(234)は、前記コンデンサ部分(202)の前記第1パス(206a)と隣接しており且つ液圧連通した入口開口部(258)を含み、
前記レシーバ第1チャンバ(214)の前記第1流体ポート(254)は、前記コンデンサ部分の前記最終パス(206c)と隣接しており且つ液圧連通している、サブクール式コンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)において、
前記第1ヘッダ(226)の前記第2チャンバ(238)は、前記サブクーラ部分(204)と隣接しており且つ液圧連通した出口開口部(260)を含む、サブクール式コンデンサ。
【請求項5】
請求項4に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサにおいて、
前記第1流体ポート(254)は、凝縮した冷媒を前記コンデンサ部分(202)から前記レシーバハウジング(213)のレシーバタンク(212)に差し向けるため、前記第2ヘッダ(228)の前記第1チャンバ(236)を前記レシーバ第1チャンバ(214)に液圧連結する、サブクール式コンデンサ。
【請求項6】
請求項5に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)において、
前記第2流体ポート(256)は、前記凝縮した冷媒を前記レシーバタンク(212)から前記サブクーラ部分(204)に差し向けるため、前記レシーバ第2チャンバ(216)を前記第2ヘッダ(228)の前記第2チャンバ(240)に液圧連結する、サブクール式コンデンサ。
【請求項7】
請求項6に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)において、
前記レシーバ第2チャンバ(216)は、冷却サイクル内の作動条件の変化により生じる要求冷媒量の変動を吸収し、空調システムの経時的漏洩による冷媒の損失量に対する安全装置を提供し、液化冷媒の液面高さを前記第2流体ポート(256)の上方に維持するのに十分な冷媒容量を収容する大きさを備えている、サブクール式コンデンサ。
【請求項8】
空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)であって、
コンデンサ部分(202)と、
重力方向に関して前記コンデンサ部分(202)の下方に配置されたサブクーラ部分(204)と、
前記コンデンサ部分(202)と液圧連通した第1流体ポート(254)及び前記サブクーラ部分(204)と液圧連通した第2流体ポート(256)を持つ細長いレシーバハウジング(213)と、
前記レシーバハウジング(213)に配置された冷媒導管(218)とを備え、前記冷媒導管(218)は、前記第1流体ポート(254)に液圧連結された上入口端(248)と、前記第2流体ポート(256)と隣接した下送出端(250)とを含み、
前記下送出端(250)は、前記第2流体ポート(256)の下方に延びている、サブクール式コンデンサ。
【請求項9】
空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)であって、
コンデンサ部分(202)と、
重力方向に関して前記コンデンサ部分(202)の下方に配置されたサブクーラ部分(204)と、
レシーバセパレータ(252)を備えた細長いレシーバハウジング(213)であって、前記レシーバセパレータは、前記レシーバハウジング(213)を、前記コンデンサ部分(202)と液圧連通した第1流体ポート(254)を持つレシーバ第1チャンバ(214)と、前記サブクーラ部分(204)と液圧連通した第2流体ポート(256)を持つレシーバ第2チャンバ(216)に分ける、レシーバハウジングと、
前記レシーバハウジング(213)に配置された反対側の下送出端(250)と上入口端(248)を持つ冷媒導管(218)とを備え、前記上入口端(248)は、前記レシーバ第1チャンバ(214)内に延び、前記下送出端(250)は、前記レシーバ第2チャンバ(216)内に延びる、冷媒導管とを含み、
前記冷媒導管(218)の前記下送出端(250)は、前記レシーバ第2チャンバ(216)の前記第2流体ポート(256)の下方に延びている、サブクール式コンデンサ。
【請求項10】
請求項9に記載の空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサ(200)において、
前記レシーバ第2チャンバ(216)は、冷却サイクル内の作動条件の変化により生じる要求冷媒量の変動を吸収し、空調システムの経時的漏洩による冷媒の損失量に対する安全装置を提供し、液化冷媒の液面高さを前記第2流体ポート(256)の上方に維持するのに十分な冷媒容量を収容する大きさを備えている、サブクール式コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
本願は、2011年8月16日に出願された「レシーバ/脱水機上入口を持ち、注入量のプラトーを安定できるコンデンサ(CONDENSER HAVING A RECEIVER/DEHYDRATOR TOP ENTRANCE WITH COMMUNICATION CAPABLE OF STABILIZED CHARGE PALATEAU」 という表題の米国仮特許出願第61/524,148号の利益を主張するものである。出典を明示することにより、この出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
[0002]
本開示は空調システムに関し、更に詳細には空調システム用コンデンサに関し、更に特定的にはレシーバ/脱水機タンクを持つサブクール式コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]
高圧蒸気冷媒を凝縮して高圧液体冷媒にするために使用される空調システム用熱交換器が当該技術分野で既知であり、コンデンサと呼ばれる。サブクーラ部分が一体に設けられたコンデンサは、サブクール式コンデンサとして既知であり、代表的には、入口/出口ヘッダ及び戻しヘッダ等の間隔が隔てられた二つのヘッダと液圧連通した複数の冷媒チューブ(冷媒管)を含む。これらのチューブは、上流群と、下流群即ち「サブクール」群とに分けられる。入口/出口ヘッダ及び戻しヘッダを持つコンデンサについて、これらのヘッダは、代表的には、各ヘッダを第1チャンバ及び第2チャンバに分ける内部隔壁を含む。第1チャンバは、上流チューブ群と液圧連通し、コンデンサ部分を形成し、第2チャンバはサブクールチューブ群と液圧連通し、サブクーラ部分を形成する。
[0004]
高圧蒸気冷媒は、入口/出口ヘッダの第1チャンバに進入し、上流チューブ群を通って戻しヘッダの第1チャンバに流入する。冷媒は、このコンデンサ部分を通って流れるとき、凝縮し即ち液化し、その飽和温度で又はその近くで高圧液体冷媒になる。液化冷媒(液体冷媒)は、次いで、冷媒リザーバアッセンブリを通って差し向けられる。冷媒リザーバアッセンブリは、レシーバ/脱水機タンクとしても既知であり、サブクールチューブ群を通って差し向けられるべき冷媒が戻しヘッダの第2チャンバに進入する前に全ての水分を除去するため、乾燥剤が入っている。冷媒がこのサブクーラ部分を通って流れるとき、高圧液体冷媒は、その飽和温度よりも低いサブクール温度にある。サブクール状態の冷媒は、空調システムの冷却性能を全体として向上することがわかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/524,148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]
冷媒をサブクール状態にするのを改善するため、液化冷媒(液体冷媒)をコンデンサのサブクーラ部分に安定的に提供する必要がある。更に、空調システムの作動寿命に亘る冷媒の漏れを考慮に入れるため、並びに空調システムの効率を損なうことなく空調システムでの冷媒の注入量を最少にするため、レシーバタンク内に十分な量の冷媒が準備されている状態を維持する必要がある。更に、自動車への配管及び組み立てを容易にするため、大きさ及び複雑さを小さくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]
本発明の一実施例によれば、空調システムで使用するためのサブクール式コンデンサが提供される。サブクール式コンデンサは、第1及び第2のヘッダ間を延びる上流冷媒チューブ群及び下流冷媒チューブ群を含む。これらの冷媒チューブ群は、夫々、コンデンサ部分及びサブクーラ部分を形成する。コンデンサ部分は、重力方向に関してサブクーラ部分の上方に配置されている。サブクール式コンデンサは、更に、第2ヘッダと隣接してこれと平行に延びる細長いレシーバハウジングを含む。レシーバハウジングは、コンデンサ部分から冷媒を受け取るため、コンデンサ部分に液圧連結した第1流体ポートと、冷媒をサブクーラ部分に送出するため、サブクーラ部分に液圧連結した第2流体ポートと、レシーバハウジングに配置された冷媒導管とを含む。冷媒導管は、上入口端と、上入口端から間隔が隔てられた下送出端を含み、上入口端は、第1流体ポートと液圧連通しており、下送出端は、第2流体ポートは下送出端と液圧連通している。下送出端は、第2流体ポートの下方に配置されていてもよい。
[0007]
レシーバハウジングは、レシーバハウジングをレシーバ第1チャンバ及びレシーバ第2チャンバに分けるレシーバセパレータを含んでいてもよく、冷媒導管の上入口端はレシーバ第1チャンバ内に延び、冷媒導管の下送出端は、レシーバ第2チャンバ内に延びる。
[0008]
第1ヘッダの第1チャンバ及び第2ヘッダの第1チャンバは、コンデンサ部分を第1パス(第1通路)及び最終パス(最終通路)を含む多数のパス(通路)に分けるため、少なくとも一つのチャンバ隔壁を含んでいてもよい。第1パスは、最終パスよりも下方に配置されている。第1ヘッダの第1チャンバは、第1パスと隣接しており且つこれと液圧連通した入口開口部を含んでいてもよい。第1ヘッダの第2チャンバは、サブクーラ部分と隣接しており且つこれと液圧連通した出口開口部を含んでいてもよい。
[0009]
レシーバハウジングのレシーバ第2チャンバは、冷却サイクルの内部の作動条件の変化により生じる要求冷媒量の変動を吸収し、空調システムの経時的漏洩によるホース及び継手からの冷媒の損失量に対する安全対策を提供すると同時に、液体冷媒の液面高さを第2流体ポートの上方に維持するのに十分な冷媒容量を収容する大きさを備えている。
[0010]
変形例では、冷媒導管入口端は、冷媒導管がコンデンサ部分と直接的に液圧連通することにより、レシーバハウジングをレシーバ第1チャンバ及びレシーバ第2チャンバに分ける必要をなくすように、第1流体ポートに連結されていてもよい。
[0011]
上入口レシーバタンクを持つサブクール式コンデンサの実施例の利点は、液化冷媒(液体冷媒)をサブクール式コンデンサのサブクーラ部分に安定的に提供するということである。別の利点は、サブクール式コンデンサは、負荷要求の変化による冷却サイクル内の要求冷媒量の変動を吸収するということである。更に別の利点は、サブクール式コンデンサは、ホース及び継手からの冷媒の漏れに対し、一定の性能及び品質を維持するということである。更に他の利点は、サブクール式コンデンサはコンパクトであり、自動車の内部での配管が簡単であるということである。
[0012]
本発明のこの他の特徴及び利点は、単なる非限定的例として与えられた本発明の実施例の以下の詳細な説明を、添付図面を参照して読むことにより更に明らかになるであろう。
[0013]
添付図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、一体型レシーバタンクを持つ従来技術のサブクール式コンデンサの概略正面図である。
【
図2】
図2は、別体のレシーバタンクを持つ従来技術のマルチパスサブクール式コンデンサの概略正面図である。
【
図3】
図3は、一体型上入口レシーバタンクを持つ本発明のサブクール式コンデンサの一実施例の概略正面図である。
【
図4】
図4は、
図3のサブクール式コンデンサの概略正面図である。
【
図5】
図5は、空調システムでの冷媒注入量に対するサブクール温度のグラフである。
【
図6】
図6は、
図3のサブクール式コンデンサの変形例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0020]
次に、
図1乃至
図6を参照すると、これらの図では、幾つかの図に亘り、同様の即ち対応する部品に同様の参照番号が付してあり、一体型レシーバタンク16を持つ従来技術のサブクール式コンデンサ10(
図1参照)、外部レシーバタンク116を持つ従来技術のマルチパスサブクール式コンデンサ100(
図2参照)、本発明の上入口一体型レシーバタンク212を持つサブクール式コンデンサ200の一実施例(
図3及び
図4参照)、サブクール温度と空調システム内の冷媒の注入量のグラフ(
図5参照)、及びサブクール式コンデンサ200の変形例(
図6)が示してある。
[0021]
図1は、ケント等に賦与された米国特許第7,213,412号(ケント’412)に開示されたサブクール式コンデンサ10の概略正面図である。サブクール式コンデンサ10は、上サブクーラ部分12、下コンデンサ部分14、及び一体型レシーバタンク16を含む。一体型レシーバタンク16は、レシーバハウジング24内で下入口端20と上送出端22との間を延びる冷媒導管18を含む。冷媒導管18は、レシーバハウジング24をレシーバ第1チャンバ28とレシーバ第2チャンバ30に分けるレシーバセパレータ26と係合している。冷媒導管18の入口端20及び送出端22が、夫々、レシーバ第1チャンバ28及びレシーバ第2チャンバ30内に延びている。下コンデンサ部分14とレシーバ第1チャンバ28との間に第1流体ポート32が設けられており、上サブクーラ部分12とレシーバ第2チャンバ30との間に第2流体ポート34が設けられている。凝縮した冷媒は、下コンデンサ部分14から第1流体ポート32を通ってレシーバ第1チャンバ28に流入し、冷媒導管18を通って上方にレシーバ第2チャンバ30に流れ、次いで第2流体ポート34を出て上サブクーラ部分12に入る。上向流冷媒導管18を持つ米国特許第7,213,412号の一体型レシーバタンク16は、コンパクトであり且つ自動車の空調システムへの配管設置が容易なサブクール式コンデンサ10を提供する。
[0022]
図2は、ヤマザキ等に賦与された米国特許第6,494,059号(ヤマザキ’059)に開示されたサブクール式コンデンサ100の概略正面図である。サブクール式コンデンサ100は、マルチパス上コンデンサ部分102及びマルチパス下サブクーラ部分104を含む。入口/出口ヘッダ112及び戻しヘッダ114内の所定の位置で内部隔壁106を使用し、マルチパスコンデンサ部分102を形成する上流チューブ群と、マルチパスサブクーラ部分104を形成する下流チューブ群とに細分する。米国特許第6,494,059号は、マルチパスサブクーラ部分104の第1パス118から出る液化冷媒を受け入れるための外部レシーバタンク116を開示する。外部レシーバタンク116は、下冷媒入口及び出口108、110と、液化冷媒をマルチパスサブクーラ部分104の残りのパス120に安定的に提供するための内部特徴とを含む。米国特許第6,494,059号の下向流マルチパスコンデンサ部分102は、蒸気冷媒を凝縮して液体冷媒にするため、熱伝達効率が高いが、外部レシーバタンク116は、空調システムの性能を向上するため、液化冷媒をサブクーラ部分104の残りのパス120に安定的に提供する。
[0023]
米国特許第6,494,059号のサブクール式コンデンサ100及び外部レシーバタンク116は、自動車に設置する上での空間及び配管の要件に関し、米国特許第7,213,412号のコンパクトなサブクール式コンデンサと比較して複雑である。本発明のサブクール式コンデンサ200の一実施例により、液化冷媒をコンデンサのサブクーラ部分に安定的に提供し、自動車の内部への配管設置が簡単なコンパクトなパッケージを提供する。サブクール式コンデンサ200は、要求負荷の変化により生じる冷媒サイクル内部の要求冷媒量の変動を吸収すると同時に、ホース及び継手からの冷媒の漏れに対し、一定の性能及び品質を維持するという更に大きな利点を提供する特徴を備えている。
[0024]
図3には、本発明のサブクール式コンデンサ200の一実施例が示してあり、
図4には、
図3のサブクール式コンデンサ200の概略正面図が示してある。サブクール式コンデンサ200は、冷媒の上向流を形成するようになった上コンデンサ部分202、単パス下サブクーラ部分204、及び凝縮した冷媒用の上入口を持つ一体型レシーバタンク212を含む。上コンデンサ部分202は、上入口レシーバタンク212と協働し、液化冷媒をサブクーラ部分204に安定的に提供し、これによって液化冷媒のサブクール状態を改善する。膨張バルブ(図示せず)の前の液化冷媒のサブクール状態を改善することにより、空調システムの冷却性能を向上する。
[0025]
サブクール式コンデンサ200は、入口/出口ヘッダ226と、入口/出口ヘッダ226から間隔が隔てられた戻しヘッダ228と、入口/出口ヘッダ226と戻しヘッダ228との間を延び、これらのヘッダと液圧または流体連通した複数のチューブ230とを含む。入口/出口ヘッダ226及び戻しヘッダ228は、両方とも、これらのヘッダ226、228の各々を対応する第1チャンバ234、236及び第2チャンバ238、240に分けるヘッダ隔壁232を含む。複数のチューブ230は、第1チューブ群242及び第2チューブ群244を含み、第1チューブ群242は、入口/出口ヘッダの第1チャンバ234及び戻しタンクの第1チャンバ236と液圧連通しており、第2チューブ群244は、入口/出口ヘッダの第2チャンバ238及び戻しタンクの第2チャンバ240と液圧連通している。第1チューブ群242は、対応する第1チャンバ234、236とともに、コンデンサ部分202を形成する。同様に、第2チューブ群244は、対応する第2チャンバ238、240とともに、サブクーラ部分204を形成する。重力方向に関し、コンデンサ部分202は、サブクーラ部分204の上方に配置されている。
[0026]
入口/出口ヘッダの第1チャンバ234内及び戻しヘッダの第1チャンバ236内の所定の位置にチャンバ隔壁233が挿入してある。戻しヘッダの第1チャンバ236内のチャンバ隔壁233は、入口/出口ヘッダの第1チャンバ234内のチャンバ隔壁233よりも上方に配置されている。これらのチャンバ隔壁233は、入口/出口ヘッダ226、戻しヘッダ228、及びこれらのヘッダ間の第1チューブ群242と協働し、コンデンサ部分202に多数の冷媒パス206a、206b、206cを形成する。従って、
図4に示すようにマルチパスコンデンサ部分206を形成する。マルチパスコンデンサ部分202は、重力方向に関し、第1パス206a、第1パス206aの上方の第2パス206b、及び第2パス206bの上方の第3パス即ち最終パス206cを含む。三つのパス206a、206b、206cを持つマルチパス上コンデンサ部分202を示したが、本発明はこれに限定されず、第1チャンバ234、236内に追加のチャンバ隔壁233を配置することによって形成される追加のパスを含んでいてもよいということに着目されたい。コンデンサ部分202は、更に、単パス部分(図示せず)であってもよい。熱伝達効率を向上するため、チューブ230間に複数の波形フィン245が配置されている。コンデンサ部分202及びサブクーラ部分204は、これらの波形フィン245とともにコンデンサコア246を形成する。
[0027]
戻しヘッダ228と隣接して平行に且つ一体に細長いレシーバタンク212が設けられている。レシーバタンク212はレシーバハウジング213を含み、このレシーバハウジングは、レシーバハウジング内で上入口端248と下送出端250との間を延びる冷媒導管218を収容する。レシーバハウジング213又は冷媒導管218は、レシーバハウジング213をレシーバ第1チャンバ214とレシーバ第2チャンバ216に分けるレシーバセパレータ252を含んでいてもよい。冷媒導管入口端248及び冷媒導管送出端250は、夫々、レシーバ第1チャンバ214及びレシーバ第2チャンバ216内に延びる。冷媒を第3パス206cからレシーバタンク212に流すため、第3パス206cに隣接した戻しヘッダ第1チャンバ236とレシーバ第1チャンバ214との間に第1流体ポート254が設けられている。冷媒をレシーバタンク212からサブクーラ部分204に流すため、サブクーラ部分204に隣接した戻しヘッダ第2チャンバ240とレシーバ第2チャンバ216との間に第2流体ポート256が設けられている。第2流体ポート256は、冷媒導管送出端250の上方に位置決めされていてもよい。これによる利点を以下に開示する。
[0028]
図6は、本発明のサブクール式コンデンサ200の変形例を示す。冷媒導管入口端248は第1流体ポート254に連結されていてもよく、これにより、冷媒導管218がコンデンサ部分202と直接的に液圧連通(または流体連通)することにより、レシーバハウジング213をレシーバ第1チャンバ236及びレシーバ第2チャンバ216に分ける必要をなくす。
[0029]
入口/出口ヘッダ226は、第1パス206aに隣接した入口/出口ヘッダ第1チャンバ234と液圧連通(または流体連通)した入口開口部258と、サブクーラ部分204に隣接した入口/出口ヘッダ第2チャンバ238と液圧連通(または流体連通)した出口開口部260とを含む。入口開口部258及び出口開口部260は、
図3に示すように、同じ方向に延びていてもよく、互いに接近して隣接していてもよい。
[0030]
図4を参照すると、高圧蒸気冷媒が、入口開口部258を介して入口/出口ヘッダ第1チャンバ234に進入し、第1パス206aを通って戻しタンク第1チャンバ236に流入する。冷媒は、戻しタンク第1チャンバ236で方向を変え、第2パス206bを通って上方に流れ、入口/出口タンク第1チャンバ234に流入する。入口/出口ヘッダ第1チャンバ234内で冷媒は再び方向を変え、第3パス206cを通って上方に戻しタンク第1チャンバ236に向かって流れる。冷媒が、コンデンサ部分202の多数のパス(通路)206a、206b、及び206cを通って上方に流れるとき、熱が周囲空気に放出され、高圧蒸気冷媒が凝縮し、そのほぼ飽和温度の高圧液体冷媒となる。
[0031]
次いで、凝縮した即ち液化した高圧冷媒は、戻しヘッダ第1チャンバ236から第1流体ポート254を通ってレシーバ第1チャンバ214に流入する。レシーバ第1チャンバ214に流入すると、凝縮した冷媒は、冷媒導管218を通って下方にレシーバ第2チャンバ216に流入する。液化冷媒はレシーバ第2チャンバ216に溜まり、空調システムの要求に基づいてサブクーラ部分204に引き込まれる。システムは、負荷が比較的高い場合には、負荷が比較的低い場合と比較して多くの質量の冷媒を必要とする。レシーバ第2チャンバ216は、冷却サイクル中の作動条件の変化による要求冷媒量の変動を吸収し、空調システムの寿命中にホースや継手から漏れることによる冷媒量の損失に対する安全策を提供するのに十分な容積を提供する大きさを備えている。冷媒に残存する水分を除去するため、乾燥剤バッグ219がレシーバ第2チャンバ216に挿入されていてもよい。
[0032]
空調システムには、空調システムの最大負荷条件時でも、液体冷媒の表面の高さHが第2流体ポート256の高さよりも上方にあるようにするのに十分な量の冷媒が注入されている。上文中に開示したように、第2流体ポート256は、冷媒導管送出端250の上方に位置決めされていてもよい。換言すると、冷媒導管送出端250は、第2流体ポート256の下方に延びている。冷媒導管218の送出端250を浸漬することにより、液化冷媒の表面Hの下のレシーバ第2チャンバ216に液化冷媒を入れることができる。冷媒導管218の送出端250が液化冷媒の表面Hの下になく、第2流体ポート256と隣接し又はその下方にある場合には、レシーバ第2チャンバ216内に入る液化冷媒は、液化冷媒の表面Hに当たって飛び散り、これにより、レシーバハウジング213内で気相及び液相の乱流混合が生じ、サブクーラ部分204への液化冷媒の供給が中断又は阻害される。
[0033]
図5は、代表的な空調システムにおける、サブクーラ部分204を出る冷媒のサブクール温度(絶対温度)と冷媒注入量(g)との間の相関を示すグラフである。このグラフは、空調システムの冷媒注入量を既知の量だけ増大し、個々の点の結果をプロットすることによって得られ、プラトー(平坦域)として示す安定領域がわかり、理想的注入量を決定できる。
[0034]
所定のサブクール温度(°K)で定常状態で広範な冷媒注入量(グラム)に亘って作動するサブクール式コンデンサ200の一実施例を、実線の曲線で示す。実線の曲線は、システムに追加の冷媒を再び加えることによって上昇する前の、平らで広いプラトー(WP)に達するまで急な勾配の上昇曲線として示してある。広いプラトー(WP)は、サブクール式コンデンサ200が、冷媒注入量の広い範囲に亘り、効率的定常状態で作動していることを示す。サブクール式コンデンサは、システム要求による冷媒注入量の変化及び漏れによる損失、並びにシステムの初期注入量のばらつきを吸収するため、平らで広いプラトーを持つのが望ましい。破線の曲線は、所定のサブクール温度で定常状態で所定の冷媒注入量に亘って作動する従来技術のサブクール式コンデンサを示す。破線の曲線の狭いプラトー(NP)は、従来技術のサブクール式コンデンサが、狭い冷媒注入範囲でしか効率的に安定的に作動しないということを示す。換言すると、従来技術のサブクール式コンデンサでは、効率的に作動するためには、冷媒注入量を狭い範囲内に維持しなければならないが、本発明のサブクール式コンデンサ200の実施例は、比較的広い冷媒注入範囲に亘って効率的に作動する。
[0035]
ヘッダ226、228、冷媒チューブ242、244、レシーバハウジング213、及び冷媒導管218を含むサブクール式コンデンサ200は、当業者に既知の任意の材料又は方法で製造されてもよい。非限定的例として、サブクール式コンデンサ200は、アルミニウム合金から製造され、組み立てられ、鑞付けされてもよい。
[0036]
本発明をその好ましい実施例に関して説明したが、これは、本発明を以上の説明に限定しようとするものではなく、本発明は、以下の特許請求の範囲の記載のみによって限定される。
【符号の説明】
【0008】
200 サブクール式コンデンサ
202 上コンデンサ部分
204 単パス下サブクーラ部分
206 マルチパスコンデンサ部分
206a、206b、206c 冷媒パス
212 一体型レシーバタンク
226 入口/出口ヘッダ
228 戻しヘッダ
230 チューブ
232 ヘッダ隔壁
233 チャンバ隔壁
234、236 第1チャンバ
238、240 第2チャンバ
242 第1チューブ群
244 第2チューブ群
245 波形フィン
246 コンデンサコア