特許第6049747号(P6049747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 関西ペイント株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049747
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20161212BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20161212BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20161212BHJP
   C09D 167/07 20060101ALI20161212BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B05D1/36 B
   B05D7/24 302T
   B05D7/24 302V
   B05D7/24 302P
   C09D175/04
   C09D167/07
   C09D133/14
【請求項の数】9
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2014-539738(P2014-539738)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2013076586
(87)【国際公開番号】WO2014054593
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-219561(P2012-219561)
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 稔
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−025046(JP,A)
【文献】 特開2004−043524(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/151143(WO,A1)
【文献】 特表2011−530393(JP,A)
【文献】 特表2001−521956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00〜B05D7/26
C09D1/00〜C09D201/10
B32B1/00〜B32B43/00
C08G18/00〜C08G18/87
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)アクリル変性ポリエステル樹脂、ならびに(B)下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【化1】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【化2】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【化3】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記一般式(I)において、Rがイソプロピル基である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記一般式(III)において、Rがイソプロピル基である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV)
【化4】
〔式(IV)中、Rは前記と同じであり、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【化5】
〔式(VI)中、R、R、R及びRは前記と同じである。〕
を反応させて得られる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V)
【化6】
〔式(V)中、Rは前記と同じであり、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び前記2級アルコール(b4)を反応させて得られる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
水性第1着色塗料(X)がさらに水酸基含有アクリル樹脂(C)を含有する請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び水酸基含有アクリル樹脂(C)の配合量が、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、(A)が10〜60質量部、(B)が5〜40質量部、(C)が0〜50質量部である請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年10月1日に出願された、日本国特許出願第2012−219561号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、水性塗料を塗り重ねることによって、優れた外観と塗膜性能を有する複層塗膜を形成せしめる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗装を施し、加熱硬化せしめた後、中塗り塗料の塗装→加熱硬化→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→加熱硬化を順次行なう3コート2ベーク方式、及び中塗り塗料の塗装→加熱硬化→上塗り塗料の塗装→加熱硬化を順次行なう2コート2ベーク方式により複層塗膜を形成せしめる方法が広く採用されている。
【0004】
一般に、上記3コート2ベーク方式は、光輝性顔料を含有するベースコート塗料を使用して、所謂メタリック色の塗膜を形成せしめる場合に採用され、上記2コート2ベーク方式は、着色顔料を含有する上塗り塗料を使用して、白色や黒色等の所謂ソリッド色の塗膜を形成せしめる場合に採用される。
【0005】
これに対し、近年、省エネルギーの観点から、中塗り塗料の塗装後の加熱硬化工程を省略し、中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤー塗料の塗装→加熱硬化を順次行なう3コート1ベーク方式、及び中塗り塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→上塗り塗料の塗装→加熱硬化を順次行なう2コート1ベーク方式が検討されている。なかでも、有機溶剤の揮散による環境汚染を抑制する観点から、上記中塗り塗料、ベースコート塗料及び上塗り塗料として水性塗料を用いた3コート1ベーク方式及び2コート1ベーク方式が特に求められている。
【0006】
しかしながら、上記水性中塗り塗料及び水性ベースコート塗料を用いた3コート1ベーク方式ならびに水性中塗り塗料及び水性上塗り塗料を用いた2コート1ベーク方式においては、塗料中に水溶性又は水分散性の樹脂を使用することによる形成塗膜の耐水性の低下や、水性中塗り塗料と水性ベースコート塗料との層間又は水性中塗り塗料と水性上塗り塗料との層間における混層による形成塗膜の平滑性及び鮮映性の低下が生じる場合があり、課題とされている。
【0007】
また、一般に、上記加熱硬化型塗料は、加熱硬化過程において急激に温度が上昇した場合、形成される硬化塗膜にワキと呼ばれる現象が発生することが知られている。ワキとは、塗膜表面の泡状の塗膜欠陥であり、塗膜内部に残留している溶媒が、加熱硬化中に急激に蒸発して塗膜内に気泡を生じ、これと同時に塗膜中の樹脂成分が固形化することにより、気泡が生じた部分が泡状欠陥となって現れるものである。上記ワキはピンホールと呼ばれる場合もある。
【0008】
ワキは、塗膜中の溶媒が、加熱硬化中に急激に蒸発することにより発生するため、一般に、塗料中の溶媒として、沸点が比較的高い有機溶剤を使用し、溶媒の蒸発速度を遅くすることによって改善する。しかしながら、前記水性塗料は、溶媒の主成分が水であり、沸点が比較的高い有機溶剤の使用量が制限されるため、溶剤型塗料に比べ、ワキが発生しやすい。
【0009】
特に、前記水性中塗り塗料及び水性ベースコート塗料を用いた3コート1ベーク方式ならびに水性中塗り塗料及び水性上塗り塗料を用いた2コート1ベーク方式は、中塗り塗料の塗装後の加熱硬化工程が省略され、比較的厚く塗装された塗膜が一度に加熱硬化されるため、ワキが発生しやすく、この点も課題とされている。
【0010】
例えば、特許文献1には、基材上に、中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を、順次ウエットオンウエットで形成する塗膜形成方法において、中塗り塗膜を形成する中塗り塗料及びベース塗膜を形成するベース塗料が、アミド基含有アクリル樹脂及び硬化剤を含有するものであり、かつ中塗り塗料中に含まれる硬化剤が、脂肪族イソシアナート系の活性メチレンブロックイソシアナートからなるものであり、かつ該脂肪族イソシアナート系の活性メチレンブロックイソシアナートが、平均官能基数が3よりも大きいものである場合に、アミド基含有アクリル樹脂によって、粘性制御効果が発揮され、3コート1ベーク法で塗装した場合における各塗膜層間の界面でのなじみや反転を制御され、更に、硬化剤として、優れた低温硬化性を有する脂肪族イソシアネート系の活性メチレンブロックイソシアナートからなるものを使用することによって、中塗り塗膜の硬化がベース塗膜及びクリヤー塗膜よりも先に開始し、かつ、充分なフロー性を確保することとなり、電着塗膜の肌荒れに対する下地隠蔽性を優れたものとなるため、仕上がり外観に優れ、かつ、塗膜物性、特に耐チッピング性に優れた複層塗膜が得られることが記載されている。
【0011】
一方、一般に塗膜形成用樹脂として低分子量のポリエステル樹脂を使用すると、塗料が流動しやすくなるため、水平面では優れた平滑性を有する塗膜が得られるが、その一方で、垂直面ではタレが発生しやすく、平滑性が低下しやすい。特に、未硬化塗膜を3層塗り重ねる3コート1ベーク方式において、最下層の水性中塗り塗料に低分子量のポリエステル樹脂を使用する場合は、上層の未硬化塗膜の重みによってタレが生じ、結果として得られる塗膜の平滑性が低下することが多かった。さらに、塗膜形成用樹脂として上記低分子量のポリエステル樹脂を使用すると、形成される塗膜の耐水密着性、耐チッピング性といった塗膜性能は低下することが多かった。
これに対し、特許文献2には、水性中塗り塗料、水性ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式の塗膜形成方法において、水性中塗り塗料が、樹脂成分として、特定の水酸基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂、特定のメラミン樹脂、ならびに(C)ポリカルボジイミド化合物を含有する場合に、架橋密度が高く、かつ架橋点が比較的均一に存在する網目構造が形成されるため、タレが発生しにくく、平滑性、耐水密着性及び耐チッピング性に優れた塗膜が形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−153806号公報
【特許文献2】WO2010/047352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載の塗膜形成方法は、中塗り塗料及びベースコート塗料として水性塗料を使用する場合に、水性中塗り塗料と水性ベースコート塗料との層間における混層による形成塗膜の平滑性及び鮮映性の低下が生じたり、形成される複層塗膜の耐水性の低下が生じたりする場合があった。また、形成される複層塗膜において、ワキが発生する場合があった。
【0014】
一方、特許文献2に記載の複層塗膜形成方法では、架橋密度を高めることができるが、その反面、硬化時の体積収縮による歪みが増大し、被塗物への付着性や塗膜の仕上がり外観に問題がある場合があった。また、特許文献2に記載の塗料は、一定期間貯蔵した後に複層塗膜を形成した場合の付着性に劣る場合があった。
【0015】
したがって、本発明は、水性塗料組成物を塗り重ねることによって複層塗膜を形成せしめる場合に、平滑性、鮮映性、耐ワキ性、耐水性及び付着性に優れ、さらに、一定期間貯蔵した塗料を塗装しても優れた耐水性及び付着性を有する複層塗膜を形成することができる方法ならびに該複層塗膜形成方法により塗装された物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、水性塗料組成物を塗り重ねる際に、最初に塗装し、下層に位置する水性塗料組成物として、アクリル変性ポリエステル樹脂及び特定の構造を有するブロックポリイソシアネート化合物を含有する水性塗料組成物を使用することにより、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
かくして、本発明の複層塗膜形成方法は、下記項1に示す複層塗膜形成方法:
項1.下記の工程(1)〜(4)、
工程(1):被塗物上に、水性第1着色塗料(X)を塗装して第1着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(2):工程(1)で形成される未硬化の第1着色塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して第2着色塗膜を形成せしめる工程、
工程(3):工程(2)で形成される未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、及び
工程(4):工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を順次行う複層塗膜形成方法であって、
水性第1着色塗料(X)が、(A)アクリル変性ポリエステル樹脂、ならびに(B)下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0018】
【化1】
【0019】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0020】
【化2】
【0021】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0022】
【化3】
【0023】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法。
【0024】
また、本発明は、下記の項を提供する:
項2.前記一般式(I)において、Rがイソプロピル基である項1に記載の複層塗膜形成方法。
【0025】
項3.前記一般式(III)において、Rがイソプロピル基である項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【0026】
項4.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(IV)
【0027】
【化4】
【0028】
〔式(IV)中、Rは前記と同じであり、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【0029】
【化5】
【0030】
〔式(VI)中、R、R、R及びRは前記と同じである。〕
を反応させて得られる項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【0031】
項5.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、下記一般式(V)
【0032】
【化6】
【0033】
〔式(V)中、Rは前記と同じであり、Rは炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び前記2級アルコール(b4)を反応させて得られる項1又は3に記載の複層塗膜形成方法。
【0034】
項6.ブロックポリイソシアネート化合物(B)が、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)である項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0035】
項7.水性第1着色塗料(X)がさらに水酸基含有アクリル樹脂(C)を含有する項1〜6のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0036】
項8.アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び水酸基含有アクリル樹脂(C)の配合量が、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、(A)が10〜60質量部、(B)が5〜40質量部、(C)が0〜50質量部である項1〜7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【0037】
項9.項1〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を含む物品。
【発明の効果】
【0038】
本発明の複層塗膜形成方法は、水性第1着色塗料(X)として、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)及び特定の構造を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物を使用することにより、平滑性、鮮映性、耐ワキ性、耐水性及び付着性に優れ、さらに、一定期間貯蔵した塗料を塗装しても優れた耐水性及び付着性を有する複層塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の複層塗膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
【0040】
工程(1)
本発明の複層塗膜形成方法(以下、「本方法」と略記することがある)によれば、まず、被塗物上に、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、ならびに下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0041】
【化7】
【0042】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0043】
【化8】
【0044】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0045】
【化9】
【0046】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも一種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性第1着色塗料(X)が塗装される。
【0047】
被塗物
本方法において使用することができる被塗物は、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0048】
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
【0049】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。
【0050】
塗膜が形成された被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。なかでも、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0051】
上記被塗物は、前記プラスチック材料やそれから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、必要に応じて、表面処理、プライマー塗装等を行ったものであってもよい。また、該プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0052】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)としては、特に限定されることのない既知の方法で得られたアクリル変性ポリエステル樹脂を用いることができる。該既知の方法としては、例えばラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させる方法、あるいはポリエステル樹脂とアクリル樹脂の樹脂同士のエステル化反応による方法等を挙げることができる。
【0053】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させることによって得る方法とは、ポリエステル樹脂中のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として、重合性不飽和モノマーを重合して行くことで、該ポリエステル樹脂をアクリル変性させる方法である。上記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る方法は特に限定されないが、例えば、既知の方法でポリエステル樹脂を得た後に末端の水酸基と酸無水物含有不飽和モノマーを反応させることによって、ポリエステル樹脂の末端にグラフト点をもたせることもできるし、あるいはまた、重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応することによって製造することもできる。得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点からは後者の方法すなわち重合性不飽和基を有する多塩基酸を含む酸成分と、アルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応することによって製造する方が好ましい。そのなかでも特に、重合性不飽和基を有する多塩基酸として酸無水物基含有不飽和単量体を含む酸成分を使用することが得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から好ましい。
【0054】
本発明において、不飽和単量体とは、1個以上(例えば、1〜4個、例えば、1個)の重合性不飽和基を有するモノマーを示す。重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等の一価の基、
【0055】
【化10】
【0056】
等の二価の基が挙げられる。但し、芳香族環を構成する二重結合は、重合性不飽和基に含まれない。
【0057】
ここで、重合性不飽和基を有する多塩基酸としては、1分子中に酸基を2個以上(好ましくは2個)有し、かつ1個のラジカル重合性不飽和基を有する化合物が挙げられる。重合性不飽和基を有する多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、テトラヒドロフタル酸、2−ペンテン二酸、メチレンコハク酸、アリルマロン酸、イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸、アセチレンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などの不飽和ジカルボン酸、及びこれらの酸の無水物が挙げられる。
【0058】
また、該酸無水物基含有不飽和単量体とは、1分子中に酸無水物基とラジカル重合性不飽和基をそれぞれ1個ずつ有する化合物である。具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水2−ペンテン二酸、無水メチレンコハク酸、無水アリルマロン酸、無水イソプロピリデンコハク酸、2,4−ヘキサジエン二酸無水物、無水アセチレンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。なかでも平滑性、鮮映性、付着性及び耐水性の観点から無水マレイン酸が好ましい。
【0059】
酸無水物基含有不飽和単量体以外の酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0060】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0061】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0062】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0064】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、を使用することが好ましい。
【0066】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0067】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0068】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0069】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を得る他の方法としては、酸成分の一部としてオレイン酸及びミリスチン酸のような不飽和脂肪酸を使用する方法も挙げられる。かかる方法では不飽和脂肪酸のラジカル重合性不飽和基をグラフト点として使用する。
【0070】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)としては、得られる塗膜の平滑性及び耐水性に優れる観点から、ポリエステル部分の原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20〜100モル%であるものが好ましく、25〜95モル%であるものがより好ましく、30〜90モル%であるものがさらに好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性に優れる観点から、好ましい。
【0071】
ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0072】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて又は連続的に添加してもよい。また、まず、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られたラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂を反応させてハーフエステル化させてラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、ラジカル重合性不飽和基及びカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させてラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0073】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0074】
また、前記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、油脂、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0075】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられる。油脂としては、これらの脂肪酸の脂肪酸油を挙げることができる。上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0076】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0077】
上記のごとくして得られたラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂と混合して重合させる重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)〜(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独で又は2種以上で組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルコール又は炭素数3〜12のシクロアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)水酸基含有重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等。
(xii)含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xiii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:エチレングリコールジメタクリレート、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiv)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xvi)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvii)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xviii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等。
(xix)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(xx)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
【0078】
これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、本発明においては、(xviii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記(xi)水酸基含有重合性不飽和モノマーとは別に規定されるべきものであり、水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。
【0079】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0080】
上記重合性不飽和モノマーとしては、少なくともその一部に、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーの少なくとも一方(例えば、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー)、より好ましくは、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーの両方を使用することがポリエステル樹脂とのグラフトのしやすさや、得られたアクリル酸変性ポリエステル樹脂の水分散体(A)の安定性の点から好ましい。
【0081】
このとき、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、及び(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーの使用割合は、重合性不飽和モノマー合計質量を基準として、
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%、特に好ましくは15〜40質量%、
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマーを10〜60質量%、好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは20〜50質量%、
であることが好ましい。
【0082】
また、さらに(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを使用する場合、その使用割合は、重合性不飽和モノマー合計質量を基準として、5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、特に好ましくは15〜50質量%であることが好ましい。
【0083】
アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えば、前記ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び前記重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法で共重合することによって得ることができる。
【0084】
具体的には、例えば、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂、重合性不飽和モノマー、ラジカル開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤を添加し、90〜160℃で1〜5時間加熱することにより得ることができる。また、発熱が大きく温度が制御しにくい場合には、反応容器中にラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂だけを先に仕込み、他の原料を時間をかけながら添加してもよい。
【0085】
上記重合開始剤としては、有機過酸化物系、アゾ系等のものが使用できる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、アゾ系重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。また、上記連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類等が挙げられる。
【0086】
重合性不飽和モノマーの添加量としては、グラフト重合の製造安定性の観点からラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーの合計100重量部を基準として5〜80重量部であるのが好ましく、10〜70重量部であるのがより好ましく、10〜50重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0087】
一方、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)を、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の樹脂同士のエステル化反応によって得る方法とは、ポリエステルの一部をエステル交換反応によりアクリル樹脂にグラフト化させる方法である。
【0088】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、水酸基価が40〜200mgKOH/gであるのが好ましく、50〜180mgKOH/gであるのがより好ましく、60〜150mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0089】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)が、更にカルボキシル基を有する場合は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、その酸価が55mgKOH/g以下であるのが好ましく、10〜50mgKOH/gであるのがより好ましく、15〜40mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0090】
また、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量は、得られる塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性、付着性の観点から、1,000〜10,000であるのが好ましく、1,200〜7,000であるのがより好ましく、1,500〜5,000であるのがさらに好ましい。
【0091】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0092】
上記により合成されたアクリル変性ポリエステル樹脂は、中和、水分散することにより水性樹脂分散液を得ることができる。中和に用いる中和剤としては、アミン類やアンモニアが好適に使用される。上記アミン類の代表例として、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。中でも特にトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミンが好適である。アクリル変性ポリエステル樹脂の中和の程度は、特に限定されるものではないが、樹脂中のカルボキシル基に対して通常0.3〜1.0当量中和の範囲であることが望ましい。
【0093】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性等の観点から、アクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体であることが好ましい。
【0094】
アクリル変性ポリエステル樹脂が分散せしめられる水性媒体は、水のみであってもよいし、水と有機溶剤との混合物であってもよい。この有機溶剤としては、アクリル変性ポリエステル樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来さない有機溶剤である限り、従来公知のものをいずれも使用できる。
【0095】
上記有機溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤などが好ましい。具体的には、例えば、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル系溶剤などを挙げることができる。また、有機溶剤としては、上記以外の水と混合しない不活性有機溶剤もアクリル変性ポリエステル樹脂の水性媒体中での安定性に支障を来たさない範囲で使用可能であり、この有機溶剤として、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤などを挙げることができる。本発明の水性樹脂分散液における有機溶剤の量は、環境保護の観点から水性媒体中の50重量%以下の範囲であることが望ましい。
【0096】
アクリル変性ポリエステル樹脂を水性媒体中に中和、分散するには、常法によれば良く、例えば中和剤を含有する水性媒体中に撹拌下にアクリル変性ポリエステル樹脂を徐々に添加する方法、アクリル変性ポリエステル樹脂を中和剤によって中和した後、撹拌下にて、この中和物に水性媒体を添加するか又はこの中和物を水性媒体中に添加する方法等を挙げることができる。
【0097】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0098】
【化11】
【0099】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕、
下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0100】
【化12】
【0101】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
及び下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0102】
【化13】
【0103】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
から選ばれる少なくとも1種のブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0104】
上記式(I)〜(III)において、R、R、R、R及びRで示される炭素数1〜12の炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル、ベンジル等のアリール基などが挙げられる。
【0105】
の好ましい例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ベンジルが挙げられる。中でも、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、エチル、イソプロピルが特に好ましい。
【0106】
、R及びRは、それぞれ、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチルである。
【0107】
としては、−C2p−(pは、1〜12の整数を示す。)で示される直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキレン基が例示され、特に好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基(メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン)である。
【0108】
の好ましい例としては、メチル、エチル、イソプロピルなどの炭素数1〜3のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル、イソプロピルが挙げられる。
【0109】
本発明においては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)としては、ブロックイソシアネート基が実質的に、上記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基及び上記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基の少なくとも一方からなるものがより好ましい。
【0110】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基に、活性メチレン化合物(b2)を反応させてブロックポリイソシアネート化合物(b3)を得た後、得られたブロックポリイソシアネート化合物(b3)と2級アルコール(b4)とを反応させることによって、得ることができる。
【0111】
ポリイソシアネート化合物(b1)
ポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
【0112】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6−ジイソシアナトヘキサン酸2−イソシアナトエチル、1,6−ジイソシアナト−3−イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8−トリイソシアナトオクタン、1,6,11−トリイソシアナトウンデカン、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、1,3,6−トリイソシアナトヘキサン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナト−5−イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0113】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2−メチル−1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1−シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2−(3−イソシアナトプロピル)−2,6−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3−(3−イソシアナトプロピル)−2,5−ジ(イソシアナトメチル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−3−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)−ヘプタン、6−(2−イソシアナトエチル)−2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0114】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1−フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5−トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0115】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4−TDI)もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6−TDI)もしくはその混合物、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4'−ジフェニルメタン−2,2',5,5'−テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0116】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができ、好ましい例としては、前記ポリイソシアネートの環化重合体(例えば、イソシアヌレート)等を挙げることができる。
【0117】
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の加熱時の黄変が発生しにくいことから、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。なかでも形成される塗膜の柔軟性向上の観点から、脂肪族ジイソシアネート及びその誘導体がさらに好ましい。
【0118】
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、該ポリイソシアネートと反応し得る化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーを使用してもよい。該ポリイソシアネートと反応し得る化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等を使用することができる。
【0119】
また、前記ポリイソシアネート化合物(b1)としては、イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーの重合体、又は該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマーと該イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーとの共重合体を使用してもよい。
【0120】
上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、数平均分子量が300〜20,000の範囲内であることが好ましく、400〜8,000の範囲内であることがより好ましく、500〜2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0121】
また、上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、1分子中の平均イソシアネート官能基数が2〜100の範囲内であることが好ましい。下限としては、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性を高める観点から3がより好ましい。上限としては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造時にゲル化を防ぐ観点から20がより好ましい。
【0122】
活性メチレン化合物(b2)
上記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基をブロック化する活性メチレン化合物(b2)としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)、マロン酸メチルイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルイソブチル、マロン酸エチルイソブチル、マロン酸メチルsec−ブチル、マロン酸エチルsec−ブチル、マロン酸ジフェニル及びマロン酸ジベンジル等のマロン酸ジエステル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル及びアセト酢酸ベンジル等のアセト酢酸エステル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル及びイソブチリル酢酸ベンジル等のイソブチリル酢酸エステル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0123】
なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、活性メチレン化合物(b2)が、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、マロン酸ジイソプロピル、イソブチリル酢酸メチル及びイソブチリル酢酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることがより好ましい。なかでも、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性ならびに得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性及び水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性の観点から、マロン酸ジイソプロピルであることがさらに好ましい。
【0124】
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、必要に応じて反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、例えば金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等の塩基性化合物が良い。これらのうち、オニウム塩としてはアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩が好適である。該反応触媒の使用量は、通常、ポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)の合計固形分質量を基準として、10〜10,000ppmの範囲内であることが好ましく、20〜5,000ppmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0125】
また、上記活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応は、0〜150℃で行うことができ、溶媒を用いても良い。この場合、溶媒としては非プロトン性溶剤が好ましく、特に、エステル、エーテル、N−アルキルアミド、ケトン等が好ましい。反応が目的どおり進行したならば酸成分を添加することで、触媒である塩基性化合物を中和し、反応を停止させてもよい。
【0126】
活性メチレン化合物(b2)によるイソシアネート基のブロック化反応において、活性メチレン化合物(b2)の使用量は、特には限定されないが、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルに対して0.1〜3モル、好ましくは0.2〜2モル用いることが好適である。また、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基と反応しなかった活性メチレン化合物は、ブロック化反応終了後に除去することができる。
【0127】
また、上記活性メチレン化合物(b2)以外に、例えば、アルコール系、フェノール系、オキシム系、アミン系、酸アミド系、イミダゾール系、ピリジン系、メルカプタン系等のブロック剤を併用してもよい。
【0128】
また、上記ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基は、活性水素含有化合物と反応させても良い。該ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と活性水素含有化合物とを反応させることにより、例えば、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の貯蔵安定性の向上、該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の調整及び形成される塗膜の柔軟性向上等を図ることができる。
【0129】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物とを反応させる場合、該ポリイソシアネート化合物(b1)、前記活性メチレン化合物(b2)及び該活性水素含有化合物の反応の順序は、特に限定されない。具体的には、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部を活性メチレン化合物(b2)でブロックした後、残りのイソシアネート基に活性水素含有化合物を反応させる方法、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部に活性水素含有化合物を反応させた後、残りのイソシアネート基を活性メチレン化合物(b2)でブロックする方法ならびにポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基に活性メチレン化合物(b2)及び活性水素含有化合物を同時に反応させる方法等が挙げられる。
【0130】
上記活性水素含有化合物としては、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物等が挙げられる。
【0131】
上記水酸基含有化合物としては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。なお、本明細書において、「ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体を意味し、ブロック共重合体とランダム共重合体のいずれも含むものとする。
【0132】
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記水酸基含有化合物は、1価のアルコールであることが好ましい。該1価のアルコールとしては、例えば、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、トリデカノール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0133】
また、前記アミノ基含有化合物としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリオキシプロピレン−α,ω−ジアミン(市販品としては、例えば、ハンツマン社製の「ジェファーミンD−400」等が挙げられる)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0134】
なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の高粘度化を抑制する観点から、上記アミノ基含有化合物は、1価のアミンであることが好ましい。該1価のアミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジラウリルアミン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0135】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記活性水素含有化合物を反応させる場合、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐ワキ性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が、0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性第1着色塗料(X)の硬化性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐ワキ性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
【0136】
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性及び硬化性ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐ワキ性の観点から、親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)であることが好ましい。
【0137】
上記親水基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B’)は、例えば、前記活性水素含有化合物として、親水基を有する活性水素含有化合物を使用することによって、得ることができる。
【0138】
上記親水基を有する活性水素含有化合物としては、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物、カチオン性の親水基を有する活性水素含有化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を前記活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくいため、ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物を使用することが好ましい。
【0139】
上記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。上記ポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性の観点から、ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物が好ましい。
【0140】
上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐水性等の観点から、3個以上、好ましくは5〜100個、より好ましくは8〜45個の連続したオキシエチレン基を有することが好適である。
【0141】
また、上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物は、連続したオキシエチレン基以外に、オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基を含有してもよい。該オキシエチレン基以外のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。上記ポリオキシエチレン基を有する活性水素含有化合物における、オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性の観点から、20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、50〜100モル%の範囲内であることが好ましい。オキシアルキレン基中のオキシエチレン基のモル比率が20モル%未満になると、親水性の付与が十分でなくなり、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0142】
また、前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、数平均分子量が200〜2,000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量の下限としては、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性の観点から、300がより好ましく、400がさらに好ましい。上限としては、形成される複層塗膜の耐水性の観点から、1,500がより好ましく、1,200がさらに好ましい。
【0143】
前記ノニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシエチレン)、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(別名:ω−アルコキシポリオキシプロピレン)、ω−メトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ω−エトキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)などのω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノエチルエーテル等のポリエチレングリコール(プロピレングリコール)モノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(プロピレングリコール)、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシプロピレン、α−(アミノアルキル)−ω−アルコキシポリオキシエチレン(オキシプロピレン)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルがさらに好ましい。
【0144】
また、上記ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「ユニオックスM−400」、「ユニオックスM−550」、「ユニオックスM−1000」、「ユニオックスM−2000」等が挙げられる。また、前記ポリエチレングリコールの市販品としては、例えば、日油株式会社製の「PEG#200」、「PEG#300」、「PEG#400」、「PEG#600」、「PEG#1000」、「PEG#1500」、「PEG#1540」、「PEG#2000」等が挙げられる。
【0145】
前記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物、スルホン酸基を有する活性水素含有化合物、リン酸基を有する活性水素含有化合物及びこれらの中和塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性の観点から、カルボキシル基を有する活性水素含有化合物を好適に使用することができる。
【0146】
上記アニオン性の親水基を有する活性水素含有化合物中の酸基の一部または全部は、前記ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基を前記活性メチレン化合物(b2)によってブロック化する反応が阻害されにくくなるため、塩基性化合物で中和されていることが好ましい。
【0147】
上記アニオン性基を有する活性水素含有化合物中の酸基の中和は、該アニオン性基を有する活性水素含有化合物と上記ポリイソシアネート化合物(b1)との反応前に行ってもよく、反応後に行ってもよい。
【0148】
前記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;金属アルコキシド;アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、2,2−ジメチル−3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノプロパノール等の第1級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−イソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等の第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等の第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性基を有する活性水素含有化合物中のアニオン性基に対して通常0.1〜1.5当量、好ましくは0.2〜1.2当量の範囲内とすることができる。
【0149】
前記カルボキシル基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシピバリン酸、リンゴ酸及びクエン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロール酪酸及び2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシカルボン酸、グリシン、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、リジン、アルギニン等を挙げることができる。
【0150】
前記スルホン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2−アミノ−1−エタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、2−(シクロヘキシルアミノ)−エタンスルホン酸、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0151】
前記リン酸基を有する活性水素含有化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロキシプロピルフェニルホスフェート、ヒドロキシアルキルホスホン酸、アミノアルキルホスホン酸等を挙げることができる。
【0152】
ポリイソシアネート化合物(b1)中の一部のイソシアネート基と、上記親水基を有する活性水素含有化合物を反応させる場合、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性及び硬化性、ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐ワキ性の観点から、ポリイソシアネート化合物(b1)と親水基を有する活性水素含有化合物との反応割合は、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基1モルを基準として、活性水素含有化合物中の活性水素のモル数が0.03〜0.6モルの範囲内であることが好ましい。上限としては、水性第1着色塗料(X)の硬化性及び形成される複層塗膜の耐水性の観点から、0.4がより好ましく、0.3がさらに好ましい。下限としては、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性ならびに形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び耐ワキ性の観点から、0.04がより好ましく、0.05がさらに好ましい。
【0153】
また、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、界面活性剤と予め混合することにより水分散性を付与することもできる。この場合、塗料の安定性の観点から、該界面活性剤が、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0154】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、前記1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)及び活性メチレン化合物(b2)を反応させることにより、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部又は全部が、活性メチレン化合物(b2)でブロック化された化合物である。
【0155】
なかでも、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)が、下記一般式(IV)
【0156】
【化14】
【0157】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び下記一般式(V)
【0158】
【化15】
【0159】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)の少なくとも一方であることが好ましい。
【0160】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、前記一般式(IV)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0161】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、Rが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性、形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0162】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、炭素数1〜12の炭化水素基を有するマロン酸ジアルキルとを反応させることによって得ることができる。
【0163】
上記マロン酸ジアルキルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジn−ペンチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジsec−ブチル、マロン酸ジt−ブチルが好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピルがより好ましく、マロン酸ジイソプロピルがさらに好ましい。
【0164】
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)
ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、前記一般式(V)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物である。
【0165】
なかでも、該ブロックポリイソシアネート化合物の原料の一つである前記活性メチレン化合物(b2)として、比較的容易に製造できる活性メチレン化合物を使用できる点から、R及びRが、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)と他の塗料成分との相溶性向上の観点から、炭素数2又は3のアルキル基であることが好ましく、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性、複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点からイソプロピル基であることがさらに好ましい。
【0166】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)は、例えば、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と炭素数1〜12の炭化水素基を有するアセト酢酸エステルとを反応させたり、ポリイソシアネート化合物(b1)と炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させたりすることによって得ることができる。なかでも、前記ポリイソシアネート化合物(b1)と、炭素数1〜12の炭化水素基を有するイソブチリル酢酸エステルとを反応させて得ることが好ましい。
【0167】
上記イソブチリル酢酸エステルとしては、例えば、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸n−プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸n−ブチル、イソブチリル酢酸イソブチル、イソブチリル酢酸sec−ブチル、イソブチリル酢酸t−ブチル、イソブチリル酢酸n−ペンチル、イソブチリル酢酸n−ヘキシル、イソブチリル酢酸2−エチルヘキシル、イソブチリル酢酸フェニル、イソブチリル酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル及びイソブチリル酢酸イソプロピルが好ましい。
【0168】
また、前記アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸n−ペンチル、アセト酢酸n−ヘキシル、アセト酢酸2−エチルヘキシル、アセト酢酸フェニル、アセト酢酸ベンジル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びアセト酢酸イソプロピルが好ましい。
【0169】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(b1)、活性メチレン化合物(b2)及び前記活性水素含有化合物を反応させることによって得られる化合物であってもよい。具体的には、例えば、上記活性水素含有化合物として、前記ポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物を使用することにより、ポリイソシアネート化合物(b1)中のイソシアネート基の一部が活性メチレン化合物(b2)によってブロックされ、他のイソシアネート基の一部又は全部がポリオキシアルキレン基を有する活性水素含有化合物と反応したブロックポリイソシアネート化合物とすることができる。
【0170】
本発明において、前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、例えば、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と、下記一般式(VI)で示される2級アルコール(b4)
【0171】
【化16】
【0172】
〔式(VI)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
とを反応させることによって、得ることができる。
【0173】
2級アルコール(b4)
2級アルコール(b4)は、前記一般式(VI)で示される化合物である。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)と上記2級アルコール(b4)との反応性を高める観点から、Rはメチル基であることが好ましい。また、R、R及びRは、それぞれ炭素数が多いと、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の極性が低下し、他の塗料成分との相溶性が低下する場合があるため、Rは炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、R及びRはメチル基であることが好ましい。
【0174】
上記2級アルコール(b4)としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、7−メチル−2−オクタノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び上記2級アルコール(b4)の反応後に、未反応の2級アルコール(b4)の一部又は全部を蒸留除去する際に、該2級アルコール(b4)の除去が比較的容易であることから、比較的低い沸点を有する4−メチル−2−ペンタノールがより好ましい。
【0175】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、具体的には、例えば、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(IV)
【0176】
【化17】
【0177】
〔式(IV)中、Rは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、互いに同一でも、異なっていてもよい。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び上記2級アルコール(b4)を反応させることによって得ることができる。
【0178】
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方が、下記一般式(VII)
【0179】
【化18】
【0180】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0181】
また、この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(I)で示されるブロックイソシアネート基
【0182】
【化19】
【0183】
〔式(I)中、R、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
又は下記一般式(II)で示されるブロックイソシアネート基
【0184】
【化20】
【0185】
〔式(II)中、R、R、R及びRは前記と同じ。〕
を有する。
【0186】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のブロックイソシアネート基におけるRの少なくとも一方を、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のRの少なくとも一方に由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(I)又は(II)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
【0187】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎるとブロックポリイソシアネート化合物(b3−1)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり、硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0188】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)は、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の説明において記載した下記一般式(V)
【0189】
【化21】
【0190】
〔式(V)中、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)と、前記2級アルコール(b4)とを反応させることによって得ることができる。
【0191】
この場合、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるRは、下記一般式(VII)
【0192】
【化22】
【0193】
〔式(VII)中、R、R及びRは、独立して、炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rは、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。〕
で示される基に置換される。
【0194】
この場合、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)は、下記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基
【0195】
【化23】
【0196】
〔式(III)中、R、R、R及びRは前記と同じであり、Rは、炭素数1〜12の炭化水素基を表す。〕
を有する。
【0197】
前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)及び2級アルコール(b4)の反応は、例えば、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のブロックイソシアネート基におけるRを、前記一般式(VII)で示される基に置換できる手法であれば特に限定されない。なかでも、加熱及び減圧等により、ブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のRに由来するアルコールの一部あるいは全部を系外に蒸留除去し、反応を促進させて、前記一般式(III)で示されるブロックイソシアネート基を有するブロックポリイソシアネート化合物(B)を得る方法が好ましい。
【0198】
上記製造方法としては、具体的には、20〜150℃、好ましくは75〜95℃の温度で、必要に応じて減圧し、5分間〜20時間、好ましくは10分間〜10時間をかけて上記アルコールの一部あるいは全部を除去するのが適当である。上記温度が低すぎるとブロックポリイソシアネート化合物(b3−2)中のアルコキシ基の交換反応が遅くなって製造効率が低下し、一方、高すぎると得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の分解劣化が激しくなり硬化性が低下する場合があるので望ましくない。
【0199】
また、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造における、前記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の配合割合は、得られるブロックポリイソシアネート化合物(B)の反応性および製造効率の観点から、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)の固形分100質量部を基準として、2級アルコール(b4)が5〜500質量部の範囲内であることが好ましく、10〜200質量部の範囲内であることがさらに好ましい。5質量部未満では、ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応速度が遅すぎる場合がある。また、500質量部を超えると生成するブロックポリイソシアネート化合物(B)の濃度が低くなりすぎ製造効率が低下する場合がある。
【0200】
また、上記ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)の反応においては、ブロックポリイソシアネート化合物(B)の分子量を調整するために、該ブロックポリイソシアネート化合物(b3)及び2級アルコール(b4)に、前記多官能水酸基含有化合物を加えてから前記除去操作を行ってもよい。
【0201】
上記ブロックポリイソシアネート化合物(B)の数平均分子量は、他の塗料成分との相溶性、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び耐チッピング性等の観点から、600〜30,000の範囲内であることが好ましい。上記数平均分子量の上限は、他の塗料成分との相溶性ならびに形成される複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、10,000がより好ましく、5,000がさらに好ましい。また、下限は、形成される複層塗膜の耐水性及び耐チッピング性の観点から、900がより好ましく、1,000がさらに好ましい。
【0202】
水性第1着色塗料(X)
本方法において使用される水性第1着色塗料(X)は、以上に述べたアクリル変性ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)を含有する水性塗料組成物である。水性第1着色塗料(X)は、例えばアクリル変性ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)を定法に従い混合し、適宜水性媒体、例えば脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
【0203】
水性第1着色塗料(X)におけるアクリル変性ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)の配合割合は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性等の観点から、固形分質量比で(A)/(B)=95/5〜10/90の範囲内であることが好ましく、90/10〜30/70の範囲内であることがより好ましく、85/15〜50/50の範囲内であることがさらに好ましい。
【0204】
水性第1着色塗料(X)は、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性等の観点から、さらに水酸基含有アクリル樹脂(C)を含むことが好ましい。
【0205】
水酸基含有アクリル樹脂(C)
水酸基含有アクリル樹脂としては、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)及び水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)を挙げることができる。これらは単独で又は併用して用いることができる。
【0206】
水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)
水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)は、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を通常の条件で(共)重合せしめることによって製造することができ、得られる塗膜の平滑性の観点から、酸価が10〜100mgKOH/g、好ましくは15〜80mgKOH/g、更に好ましくは15〜70mgKOH/gであり、重量平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは3,000〜80,000、更に好ましくは5,000〜60,000の範囲内であることが好適である。また、硬化性の観点から、水酸基価が20〜200mgKOH/g、好ましくは30〜180mgKOH/gであり、さらに好ましくは40〜165mgKOH/gの範囲内であることが好適である。
【0207】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)は、N−置換(メタ)アクリルアミド、ポリオキシアルキレン鎖含有(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、及び/又は酸基含有(メタ)アクリレートなどの親水性官能基を有する重合性不飽和モノマーを含有し、水性媒体中で溶解状態(透明)であるため、水性媒体中で分散状態である前記水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)とは明確に区別される。
【0208】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、アリルアルコール、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。但し、本発明においては、後述する紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして規定されるべきものであり、水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。
【0209】
また、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ−ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩やアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2' −ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン類とグリシジル(メタ)アクリレートとの付加反応生成物、或いは2−(2' −ヒドロキシ−5' −メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定化性能を有する重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等の重合性不飽和モノマーが挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0210】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)としては、原料モノマーの一部としてアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートを用いるものが好ましい。上記アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレートの使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、40〜90質量%程度が好ましく、45〜85質量%程度がより好ましく、50〜80質量%程度がさらに好ましい。
【0211】
上記水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)が酸価を持つ場合、酸価の調整は、例えば、重合性不飽和モノマー成分として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又はその他の酸基含有重合性不飽和モノマーを使用し、それらの配合量を調節することにより行なうことができる。上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー及び/又はその他の酸基含有重合性不飽和モノマーを用いる場合、その使用割合は、モノマー成分の合計量を基準として、2〜30質量%程度が好ましく、3〜25質量%程度がより好ましく、4〜20質量%程度がさらに好ましい。
【0212】
また、必要に応じて上記酸基を中和剤により中和することができる。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0213】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(A1)としては、例えば、重合性不飽和モノマー(m)を、それ自体既知の方法、例えば、水中でのエマルション重合法などの方法により、共重合せしめることによって製造することができる。
【0214】
上記水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)を構成する重合性不飽和モノマー(m)としては、特に制限されるものではなく、例えば、以下に記載する(m−1)〜(m−5)の重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。
【0215】
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)の具体例としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0216】
また、互いに反応する官能基を有する重合性不飽和モノマーを2種以上配合して、アクリル樹脂エマルションの共重合前、共重合時及び/又は共重合後に互いに反応せしめることで実質的に重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)と同等のモノマーとして使用できる。官能基の組み合わせとしては、互いに反応する官能
基の組み合わせであればいずれも好適に使用できるが、酸基とグリシジル基、アミノ基とグリシジル基、水酸基とイソシアネート基の組み合わせがより好ましい。具体的な重合性不飽和モノマーの組み合わせとしては、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとグリシジル(メタ)アクリレート、(ジ)アルキルアミノエチル(メタ)アクリレートとグリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートなどが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0217】
さらに、反応性官能基を有する重合性不飽和モノマーと該反応性官能基と反応し得る官能基を2種以上有する化合物との反応生成物を合成し、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)として好適に使用する事ができる。例えば、グリシジル基含有重合性不飽和モノマーと多塩基酸成分、水酸基含有重合性不飽和モノマーと多官能のイソシアネート化合物との反応生成物などが挙げられる。具体的には、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートとアジピン酸の反応生成物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの反応生成物などが挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0218】
水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物、該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコ−ル、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0219】
炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(m−3)は、炭素数が4以上の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであり、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有するモノマーは除外される。該モノマーの具体例としては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートなどのイソボルニル基を有する重合性不飽和化合物;アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンチル基を有する重合性不飽和化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香環含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0220】
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(m−4)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0221】
(m−1)〜(m−4)以外の重合性不飽和モノマー(m−5)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数3以下のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等のウレタン結合を含まない含窒素重合性不飽和モノマー;ウレタン結合を有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4−スチレンスルホン酸等、これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー等が挙げられる。
【0222】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)としては、樹脂粒子の構造を制御して耐水性、付着性及び仕上り外観に優れた塗膜を得る観点から、コア/シェル型複層構造を有する水酸基含有アクリル樹脂水分散体(以下「コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)」と称する)であることが好ましい。ここで、「シェル」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型複層構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型複層構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、コア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
【0223】
コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)としては、水性媒体中での2段重合によって製造されるコアシェル構造を有し、コア部を構成する共重合体(I)とシェル部を構成する共重合体(II)の割合が、固形分質量比で10/90〜90/10程度の範囲内であることが好ましい。
【0224】
コア部共重合体(I);
コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)のコア部共重合体(I)は、構成モノマー成分として、前記(m−1)〜(m−5)の重合性不飽和基を有する化合物を任意に使用することができるが、平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性に優れる複層塗膜を得る観点から、構成モノマー成分の一部として
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー及び水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する共重合体であることが好ましい。
【0225】
該重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に架橋構造を付与する機能を有する。前記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)として例示した重合性不飽和モノマーの中から、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて好適に使用できるが、得られる塗料の粘性及び塗膜性能から、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。
【0226】
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)の使用割合は、コア部共重合体(I)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、通常、コア部共重合体(I)を構成するモノマーの合計質量を基準として、0.1〜10質量%程度であるのが好ましく、0.5〜8質量%程度であるのがより好ましく、1〜6質量%程度であるのが更に好ましい。
【0227】
また、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、コア部共重合体(I)に後述する硬化剤成分のうち水酸基と反応性を有する硬化剤成分と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐チッピング性及び耐水性を向上せしめる機能を有する。前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)として例示した重合性不飽和モノマーの中から、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて好適に使用できるが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いるのが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いるのが更に好ましい。
【0228】
上記コア部共重合体(I)の水酸基価は、アクリル樹脂エマルションの水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、0〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、25〜150mgKOH/g程度であるのがより好ましく、50〜100mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0229】
上記コア部共重合体(I)は、上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)及び上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)以外に、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性を向上させる観点から、必要に応じて炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーを好適に使用できる。該モノマーは、炭素数が4以上の直鎖状、分岐状又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーであって、水酸基含有重合性不飽和モノマー等の親水性基を有する重合性不飽和モノマーは除外される。該モノマーは、前記炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(m−3)の中から、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて好適に使用できるが、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレンを用いるのが好ましい。
【0230】
上記炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(m−3)を共重合したアクリル樹脂エマルションを水性第1着色塗料に配合することで、より低極性の第1着色塗膜が得られ、未硬化の第1着色塗膜の上に水性第2着色塗料を塗装した時、混層が抑えられ、平滑性及び鮮映性の良好な複層塗膜が得られる。
上記炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(m−3)の使用割合は、得られる複層塗膜の平滑性及び鮮映性の観点から、コア部共重合体(I)を構成するモノマーの合計質量を基準として、30〜90質量%であるのが好ましく、35〜85質量%程度であるのがより好ましく、40〜80質量%程度であるのが更に好ましい。
【0231】
コア部共重合体(I)用モノマーとして用いる重合性不飽和モノマーは、重合性不飽和モノマー(m−1)及び(m−2)が必須成分であること以外は、特に制限されるものではなく、例えば、前記水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)を構成する重合性不飽和モノマー(m)で例示した中から必要に応じて好適に用いることができる。上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)、上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)、及び上記炭素数4以上の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(m−3)以外では、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0232】
シェル部共重合体(II);
コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)のシェル部共重合体(II)は、構成モノマー成分として、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する共重合体であることが好適である。
【0233】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られる水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)に、後述する硬化剤成分のうち水酸基と反応性を有する硬化剤成分と架橋反応する水酸基を導入せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該アクリル樹脂エマルションの水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。前記水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)に例示した重合性不飽和モノマーの中から、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて好適に使用できるが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いるのが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを用いるのがより好ましい。
【0234】
上記シェル部共重合体(II)の水酸基価は、アクリル樹脂の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、50〜200mgKOH/g程度であるのが好ましく、50〜150mgKOH/g程度であるのがより好ましく、50〜100mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0235】
また、上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーは、得られるアクリル樹脂エマルションの水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。前記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(m−4)に例示した重合性不飽和モノマーの中から、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて好適に使用できるが、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
【0236】
上記シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いる重合性不飽和モノマーとしては、得られる塗膜の平滑性、鮮映性の観点から、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(m−1)を使用せず、該共重合体(II)を未架橋型とすることが好ましい。
【0237】
シェル部共重合体(II)用モノマーとして用いる水酸基含有重合性不飽和モノマー及びカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマーは、特に制限されるものではなく、例えば、前記水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)を構成する重合性不飽和モノマー(m)で例示した中から必要に応じて好適に用いることができる。上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(m−2)及び上記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(m−4)以外では、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0238】
上記コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)におけるコア部共重合体(I)/シェル部共重合体(II)の割合は、塗膜の光輝性向上の観点から、固形分質量比で10/90〜90/10程度であるのが好ましく、50/50〜85/15程度であるのがより好ましく、65/35〜80/20程度であるのが更に好ましい。
【0239】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)は、水性第1着色塗料(X)の貯蔵安定性並びに得られる塗膜の平滑性、鮮映性、及び耐水性等の観点から、酸価が5〜25mgKOH/g程度であるのが好ましく、8〜20mgKOH/g程度であるのがより好ましく、10〜15mgKOH/g程度であるのが更に好ましい。
【0240】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)は、複層塗膜の平滑性、鮮映性から、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上であるのが好ましく、21〜100℃程度であるのがより好ましく、22〜60℃程度であるのが更に好ましい。
ここで、ガラス転移温度(Tg)はJIS K 7121(プラスチックの転移温度測定方法)に準じて、示差走査熱量測定方法(DSC)により求められる。
【0241】
コア部共重合体(I)のエマルションを調製する乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用してモノマー混合物を乳化重合することにより、行うことができる。
【0242】
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
【0243】
また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤;1分子中にアニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用することもできる。これらの内、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好ましい。
【0244】
上記反応性アニオン性乳化剤としては、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩、該スルホン酸化合物のアンモニウム塩等を挙げることができる。これらの内、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が、得られる塗膜の耐水性に優れるため、好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「ラテムルS−180A」(商品名、花王(株)製)等を挙げることができる。
【0245】
また、上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がより好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬(株)製)、「SR−1025A」(商品名、ADEKA(株)製)等を挙げることができる。
上記乳化剤の使用量は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1〜15質量%程度が好ましく、0.5〜10質量%程度がより好ましく、1〜5質量%程度が更に好ましい。
【0246】
前記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記重合開始剤に、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
【0247】
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、0.1〜5質量%程度が好ましく、0.2〜3質量%程度がより好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
【0248】
コアシェル型水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2−1)は、上記で得られるコア部共重合体(I)のエマルションに、シェル部の重合性不飽和モノマー混合物を添加し、さらに重合させてシェル部共重合体(II)を形成することによって、得ることができる。
【0249】
上記シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
【0250】
シェル部共重合体(II)を形成するモノマー混合物の重合方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに、添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法が挙げられる。
【0251】
かくして得られる水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)は、コアシェル型の複層構造の水分散体で、一般に10〜1,000nm程度、好ましくは40〜500nm程度、特に好ましくは70〜200nm程度の範囲内の平均粒子径を有することができる。
【0252】
本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)の平均粒子径は、サブミクロン粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。サブミクロン粒度分布測定装置としては、例えば、「COULTER N4型」(商品名、ベックマン・コールター社製)を用いることができる。
【0253】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該アクリル樹脂エマルションが有するカルボキシル基等の酸基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらの中和剤は、中和後の該アクリル樹脂エマルションの水分散液のpHが6.5〜9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
【0254】
水性第1着色塗料(X)が水酸基含有アクリル樹脂(C)を含有する場合、水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)及び水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)の配合割合は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性等の観点から、固形分質量比で(C−1)/(C−2)=0/100〜40/60の範囲内であることが好ましく、0/100〜30/70の範囲内であることがより好ましく、0/100〜25/75の範囲内であることがさらに好ましい。
【0255】
水性第1着色塗料(X)において、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性等の観点から、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び水酸基含有アクリル樹脂(C)の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、
(A)成分が10〜60質量部、好ましくは15〜57質量部、更に好ましくは15〜50質量部、
(B)成分が5〜40質量部、好ましくは5〜38質量部、更に好ましくは5〜35質量部、
(C)成分が0〜50質量部、好ましくは5〜40質量部、更に好ましくは10〜30質量部、
である。
【0256】
また、水性第1着色塗料(X)は、上記水酸基含有アクリル樹脂(C)以外の樹脂を含有することができる。
【0257】
上記樹脂の種類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂等が挙げられ、なかでも特に形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性等の観点からポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0258】
ポリエステル樹脂(D)
ポリエステル樹脂(D)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。上記ポリエステル樹脂(D)は、水酸基含有ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0259】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0260】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0261】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが特に好ましい。
【0262】
前記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4〜6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0263】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0264】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1〜4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0265】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0266】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10−フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシ−4−エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0267】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0268】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することも出来る。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0269】
ポリエステル樹脂(D)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150〜250℃で、5〜10時間加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、ポリエステル樹脂(D)を製造することができる。
【0270】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0271】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0272】
また、前記ポリエステル樹脂(D)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
【0273】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10」(商品名、HEXION Specialty Chemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0274】
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネート等の3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0275】
また、ポリエステル樹脂(D)としては、得られる塗膜の平滑性及び耐水性に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として40〜100モル%であるものが好ましく、60〜100モル%であるものがより好ましく、75〜100モル%であるものがさらに好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、得られる塗膜の平滑性に優れる観点から、好ましい。
【0276】
ポリエステル樹脂(D)は、水酸基価が10〜200mgKOH/gであるのが好ましく、50〜180mgKOH/gであるのがより好ましく、70〜170mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0277】
また、ポリエステル樹脂(D)が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5〜100mgKOH/gであるのが好ましく、10〜80mgKOH/gであるのがより好ましく、10〜60mgKOH/gであるのがさらに好ましい。
【0278】
また、ポリエステル樹脂(D)の数平均分子量は、500〜50,000であるのが好ましく、1,000〜30,000であるのがより好ましく、1,200〜10,000であるのがさらに好ましい。
【0279】
なお、上記数平均分子量の測定方法は、前記アクリル変性ポリエステル(A)の説明において記載した方法に準ずる。
【0280】
水性第1着色塗料(X)が上記ポリエステル樹脂(D)を含有する場合、該ポリエステル樹脂(D)の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1〜50質量%が好ましく、2〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。
【0281】
ポリウレタン樹脂
前記ポリウレタン樹脂としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環族ジイソシアネート化合物及び芳香族ジイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールから選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物とを反応させてなるものを挙げることができる。
【0282】
具体的には、例えば、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール及びポリカーボネートジオールから選ばれる少なくとも1種のジオール、低分子量ポリヒドロキシ化合物ならびにジメチロールアルカン酸を反応させてウレタンプレポリマーを作製し、これを3級アミンで中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じてポリアミン等の鎖伸長剤、架橋剤、停止剤等を含む水性媒体と混合して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させてなるものを挙げることができる。上記方法により、通常、平均粒径が0.001〜3μmの自己乳化型のポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0283】
水性第1着色塗料(X)が上記ポリウレタン樹脂を含有する場合、該ポリウレタン樹脂の配合量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、2〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは8〜30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0284】
水性第1着色塗料(X)は、得られる塗膜の耐水性、付着性及び硬度等の観点から、さらに前記ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(E)を含有することが好ましい。
【0285】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(E)
ブロックポリイソシアネート化合物(B)以外の硬化剤(E)(以下、「硬化剤(E)」と略記することがある)は、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)ならびに必要に応じて使用される水酸基含有アクリル樹脂(C)及び該水酸基含有アクリル樹脂(C)以外の水酸基含有樹脂中の水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等の架橋性官能基と反応して、水性第1着色塗料(X)を硬化し得る化合物である。上記硬化剤(E)としては、公知の硬化剤が使用でき、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物などが挙げられる。なかでも、得られる塗膜の耐水性の観点から、水酸基と反応し得るアミノ樹脂及び前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート、カルボキシル基と反応し得るカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アミノ樹脂が更に好ましい。
【0286】
前記硬化剤(E)は、1種単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0287】
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。
【0288】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0289】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。また、イミノ基含有メラミン樹脂であってもよい。
【0290】
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400〜6,000であるのが好ましく、500〜4,000であるのがより好ましく、600〜3,000であるのがさらに好ましい。
【0291】
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル204」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル250」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28−60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0292】
また、前記硬化剤として、メラミン樹脂を使用する場合は、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸;これらのスルホン酸とアミン化合物との塩;等を触媒として使用することができる。
【0293】
前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物であって、前記(B)成分以外のブロックポリイソシアネート化合物である。
【0294】
1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエート、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(通称、トリアミノノナントリイソシアネート)などの3価以上の有機ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体(ビウレット、イソシアヌレートなど);これらのポリイソシアネート化合物と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーなどが挙げられる。
【0295】
また、前記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチルなどのフェノール系;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコールなどの脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノールなどのエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミドなどのイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N−フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミンなどアミン系;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素などの尿素系;N−フェニルカルバミン酸フェニルなどのカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリなどの亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾールまたはイミダゾール誘導体;2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0296】
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、前記(B)成分以外の活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0297】
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸なども使用できる。特に、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロックポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
【0298】
前記カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめたものを使用することができる。該カルボジイミド基含有化合物としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」(いずれも日清紡社製、商品名)等を挙げることができる。
【0299】
水性第1着色塗料(X)が硬化剤(E)を含有する場合、該硬化剤(E)の配合割合は、塗膜の耐水性、付着性及び仕上り外観の向上の観点から、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、1〜40質量部であることが好ましく、3〜35質量部であることがより好ましく、5〜30質量部であることが更に好ましい。以下、ブロックポリイソシアネート化合物(B)及び硬化剤(E)をあわせて「硬化剤成分」と称することがある。
【0300】
顔料
水性第1着色塗料(X)は、さらに、顔料を含有することが好ましい。該顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0301】
水性第1着色塗料(X)が、顔料を含有する場合、該顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜500質量部、好ましくは3〜400質量部、さらに好ましくは5〜300質量部の範囲内であることができる。なかでも、水性第1着色塗料(X)が着色顔料及び/又は体質顔料を含有し、該着色顔料及び体質顔料の合計含有量が、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に1〜500質量部、特に3〜400質量部、さらに特に5〜300質量部の範囲内であることが好適である。
【0302】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
【0303】
水性第1着色塗料(X)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは3〜250質量部、さらに好ましくは5〜200質量部の範囲内であることができる。
【0304】
また、前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、なかでも、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましい。なかでも、平滑性に優れた外観を有する複層塗膜を得るため、上記体質顔料として、平均一次粒子径が1μm以下の硫酸バリウム、特に平均一次粒子径が0.01〜0.8μmの範囲内である硫酸バリウムを含有することが好適である。
【0305】
なお、本発明における硫酸バリウムの平均一次粒子径は、硫酸バリウムを走査型電子顕微鏡で観察し、電子顕微鏡写真上に無作為に引いた直線上にある硫酸バリウム粒子20個の最大径を平均した値である。
【0306】
水性第1着色塗料(X)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜300質量部、好ましくは5〜250質量部、さらに好ましくは10〜200質量部の範囲内であることができる。
【0307】
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができ、これらの光輝性顔料は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウムとリーフィング型アルミニウムがあるが、いずれも使用できる。
【0308】
水性第1着色塗料(X)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜20質量部の範囲内であることができる。
【0309】
水性第1着色塗料(X)は、形成塗膜の平滑性及び鮮映性向上の観点から、さらに、疎水性溶媒を含有することが好ましい。
【0310】
該疎水性溶媒としては、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶媒であるのが望ましい。
【0311】
疎水性溶媒としては、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒が好ましく、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0312】
水性第1着色塗料(X)が、疎水性溶媒を含有する場合、その含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、一般に2〜100質量部、特に5〜80質量部、さらに特に8〜60質量部の範囲内であることが好ましい。
【0313】
また、水性第1着色塗料(X)は、必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、上記疎水性溶媒以外の有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の塗料用添加剤を含有することができる。
【0314】
水性第1着色塗料(X)が、上記増粘剤を含有する場合、該増粘剤の含有量は、水性第1着色塗料(X)中の合計樹脂固形分100質量部を基準として、通常0.01〜15質量部、特に0.05〜10質量部、さらに特に0.1〜5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0315】
水性第1着色塗料(X)は、アクリル変性ポリエステル樹脂(A)及びブロックポリイソシアネート化合物(B)、ならびに、必要に応じて、他の樹脂成分、顔料、疎水性溶媒及びその他の塗料用添加剤を、それ自体既知の方法により、水性媒体中で、混合、分散することによって調製することができる。また、水性媒体としては、脱イオン水又は脱イオン水と親水性有機溶媒の混合物を使用することができる。親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。
【0316】
水性第1着色塗料(X)は、一般に30〜80質量%、好ましくは35〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%の範囲内の固形分濃度を有することができる。
【0317】
本明細書において、塗料、樹脂等の「固形分」は110℃で1時間乾燥させた後に残存する不揮発性成分を意味する。例えば、塗料の固形分は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、塗料に含有される基体樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、塗料の固形分濃度は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に未硬化の塗料を量り取り、容器底面に該塗料を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する塗料成分の質量を秤量して、乾燥前の塗料の全質量に対する乾燥後に残存する塗料成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
【0318】
水性第1着色塗料(X)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物上に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が好ましい。
【0319】
本発明の複層塗膜形成方法において、上記水性第1着色塗料(X)を使用することにより、平滑性及び鮮映性、耐ワキ性、耐水性及び付着性に優れ、さらに、一定期間貯蔵した塗料を塗装しても優れた耐水性及び付着性を有する複層塗膜を形成できる理由としては、水性第1着色塗料(X)中のブロックポリイソシアネート化合物(B)が、分岐構造を有する炭化水素基を有するため、該第1着色塗膜上に水性第2着色塗料を塗装した際の両塗膜間の混層が抑制されて平滑性、鮮映性、耐水性及び付着性が向上し、さらに該ブロックポリイソシアネート化合物(B)と、水性第1着色塗料(X)の溶媒である水との親和性が低くなり、塗膜を加熱する際に水性第1着色塗料(X)中の水が蒸発しやすくなるため、ワキの発生が抑制されることが推察される。
【0320】
また水性第1着色塗料(X)中のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)によって塗料の貯蔵安定性が優れているため、貯蔵後の耐水性及び付着性が向上すると推察される。
【0321】
工程(2)
以上に述べた工程(1)で形成される水性第1着色塗料(X)の塗膜(以下、「第1着色塗膜」という場合がある)上には、次いで、水性第2着色塗料(Y)が塗装される。
【0322】
上記第1着色塗膜は、水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことができる。なお、本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600−1−1に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
【0323】
上記プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0324】
なお、本発明では、特に、水性第1着色塗料(X)の塗装後にプレヒートすることなく、次工程の上塗り塗装を行なうことも可能である。かかる場合、水性第1着色塗料(X)の塗装後に室温(約20〜約35℃)で30秒〜10分間程度セッティングするのが好適である。これによって、水性第1着色塗料(X)の塗装後の塗着塗料の固形分を早く高めることができ、プレヒートしなくとも上層塗膜との混層を防止することができる。塗装後の塗着塗料の固形分は、例えば、塗装1分後の塗着塗料の固形分を45質量%以上、好ましくは50質量%以上とすることが好ましい。
【0325】
ここで、塗膜の固形分含有率は以下の方法により測定することができる:
まず、被塗物上に水性第1着色塗料(X)を塗装すると同時に、予め質量(W)を測定しておいたアルミホイル上にも水性第1着色塗料(X)を塗装する。続いて、塗装後、プレヒート等がされた該アルミホイルを水性第2着色塗料(Y)が塗装される直前に回収し、その質量(W)を測定する。次に、回収したアルミホイルを110℃で60分間乾燥し、デシケーター内で室温まで放冷した後、該アルミホイルの質量(W)を測定し、以下の式に従って固形分含有率を求める。
固形分含有率(質量%)={(W−W)/(W−W)}×100
第1着色塗膜上に塗装される水性第2着色塗料(Y)は、一般に、被塗物に優れた外観を付与することを目的とするものであって、例えば、カルボキシル基、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の基体樹脂と、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂等の硬化剤からなる樹脂成分を、顔料、その他の添加剤と共に水に溶解ないし分散させて塗料化したものを使用することができる。なかでも、基体樹脂として、前記のアクリル変性ポリエステル樹脂(A)を使用し、硬化剤としてメラミン樹脂を使用する熱硬化型水性塗料を好適に用いることができる。
【0326】
また、上記顔料としては、前記着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を使用することができる。なかでも、水性第2着色塗料(Y)が、上記着色顔料及び光輝性顔料の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0327】
上記着色顔料としては、例えば、水性第1着色塗料(X)の説明において例示した、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0328】
水性第2着色塗料(Y)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜150質量部、特に3〜130質量部、さらに特に5〜110質量部の範囲内であることが好適である。
【0329】
上記光輝性顔料としては、例えば、前記水性第1着色塗料(X)の説明において例示した、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等を挙げることができる。なかでも、アルミニウム、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母を用いることが好ましく、アルミニウムを用いることが特に好ましい。上記光輝性顔料はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0330】
また、上記光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が通常1〜100μm、特に5〜40μmの範囲内、そして厚さが通常0.001〜5μm、特に0.01〜2μmの範囲内にあるものが適している。
【0331】
水性第2着色塗料(Y)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常1〜50質量部、特に2〜30質量部、さらに特に3〜20質量部の範囲内であることが好適である。
【0332】
また、水性第2着色塗料(Y)は、水性第1着色塗料(X)の説明において記載した、疎水性溶媒を含有することが好ましい。該疎水性溶媒としては、形成塗膜の光輝感に優れる観点から、アルコール系疎水性溶媒を用いることが好ましい。なかでも、炭素数7〜14のアルコール系疎水性溶媒、例えば、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール系疎水性溶媒がさらに好ましい。
【0333】
水性第2着色塗料(Y)が、疎水性溶媒を含有する場合、その含有量は、得られる塗膜の光輝感に優れる観点から、水性第2着色塗料(Y)中の樹脂固形分100質量部を基準として、通常2〜70質量部、特に11〜60質量部、さらに特に16〜50質量部の範囲内であることが好適である。
【0334】
また、水性第2着色塗料(Y)は、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等の通常の塗料用添加剤をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0335】
水性第2着色塗料(Y)は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
【0336】
工程(3)
本発明の第一の複層塗膜形成方法においては、上記工程(2)で形成される水性第2着色塗料(Y)の塗膜(以下、「第2着色塗膜」という場合がある)上に、クリヤー塗料(Z)が塗装される。
【0337】
ワキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、第2着色塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、塗膜が実質的に硬化しない加熱条件でプレヒート(予備加熱)、エアブロー等を行うことが好ましい。プレヒートの温度は、40〜100℃が好ましく、50〜90℃がより好ましく、60〜80℃が更に好ましい。プレヒートの時間は、30秒間〜15分間が好ましく、1〜10分間がより好ましく、2〜5分間が更に好ましい。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に、常温又は25〜80℃の温度に加熱された空気を、30秒間〜15分間吹き付けることにより行うことができる。
【0338】
第2着色塗膜は、クリヤー塗料(Z)を塗装する前に、必要に応じて、上記プレヒート、エアブロー等を行うことにより、塗膜の固形分含有率が通常70〜100質量%、特に80〜100質量%、さらに特に90〜100質量%の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0339】
クリヤー塗料(Z)としては、自動車車体等の塗装用としてそれ自体既知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用することができる。例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。
【0340】
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等を挙げることができる。
【0341】
クリヤー塗料(Z)における基体樹脂/架橋剤の組み合わせとしては、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/ブロックポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましい。
【0342】
また、上記クリヤー塗料(Z)は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
【0343】
また、上記クリヤー塗料(Z)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに、体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
【0344】
クリヤー塗料(Z)は、水性第2着色塗料(Y)の塗膜面に、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法によって塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。クリヤー塗料(Z)は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、好ましくは15〜60μm、より好ましくは20〜50μmの範囲内になるように塗装することができる。
【0345】
また、クリヤー塗料(Z)の塗装後は、必要に応じて、室温で1〜60分間程度のインターバルをおいたり、40〜80℃の温度で1〜60分間プレヒートしたりすることができる。
【0346】
工程(4)
本発明の第一の複層塗膜形成方法においては、以上に述べた工程(1)〜(3)で形成される未硬化の第1着色塗膜、未硬化の第2着色塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜が同時に加熱硬化せしめられる。
【0347】
上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、行うことができる。
【0348】
加熱温度は、80〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120〜160℃がさらに好ましい。
【0349】
また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜の3層からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
【0350】
上記工程(1)〜(4)からなる本発明の第一の複層塗膜形成方法は、具体的には、自動車車体等の被塗物に、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤー塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。この場合の複層塗膜の形成は、下記方法Iに従って行うことができる。
【0351】
方法I
下記の工程(1)〜(4):
(1)被塗物に、水性第1着色塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成せしめる工程、
(2)上記の未硬化の中塗り塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装してベースコート塗膜を形成せしめる工程、
(3)上記の未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤー塗料(Z)を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる工程、ならびに
(4)上記の未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0352】
上記方法Iにおける被塗物としては、カチオン電着塗料により下塗り塗膜が形成された自動車車体等が好ましい。
【0353】
方法Iにおいて、水性第1着色塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常5〜40μm、特に5〜35μm、さらに特に7〜35μmの範囲内が好ましい。また、水性第2着色塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、通常2〜25μm、特に3〜22μm、さらに特に5〜20μmの範囲内が好ましい。また、クリヤー塗料(Z)の塗装膜厚は、硬化膜厚で、通常10〜80μm、特に5〜60μm、さらに特に20〜50μmの範囲内が好ましい。
【0354】
また、上記方法Iでは、工程2)において水性第2着色塗料(Y)を塗装する前に、工程1)で得られた中塗り塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で前記プレヒート及び/またはエアブローすることができる。なお、本発明では、特に、上記第1着色塗膜をプレヒートすることなく、工程2)を行なうことも可能である。かかる場合、水性第1着色塗料(X)の塗装後に室温(約20〜約35℃)で30秒〜10分間程度セッティングするのが好適である。これによって、水性第1着色塗料(X)の塗装後の塗着塗料の固形分を早く高めることができ、プレヒートしなくとも上層塗膜との混層を防止することができる。塗装後の塗着塗料の固形分は、例えば、塗装1分後の塗着塗料の固形分を45質量%以上、好ましくは50質量%以上とすることが好ましい。
また、上記方法Iの工程3)において、工程2)で得られた第2着色塗膜が実質的に硬化しない加熱条件で、上記プレヒート、エアブロー等を行うことができる。
【0355】
工程(5)
本発明の第二の複層塗膜形成方法は、上記第一の複層塗膜形成方法における工程(3)及び(4)を省略し、前記工程(1)及び(2)に続いて、工程(5)を行なう複層塗膜形成方法である。
【0356】
上記工程(5)は、前記工程(1)及び(2)で形成される第1着色塗膜及び第2着色塗膜を同時に加熱硬化させる工程である。
【0357】
上記第1着色塗膜及び第2着色塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付け手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により、行うことができる。
【0358】
加熱温度は、80〜180℃が好ましく、100〜170℃がより好ましく、120〜160℃がさらに好ましい。
【0359】
また加熱時間は、10〜60分間が好ましく、15〜40分間がより好ましい。この加熱により、第1着色塗膜及び第2着色塗膜からなる複層塗膜を同時に硬化させることできる。
【0360】
上記工程(1)、(2)及び(5)からなる本発明の第二の複層塗膜形成方法は、具体的には、自動車車体等の被塗物に、中塗り塗膜及び上塗り塗膜からなる複層塗膜を2コート1ベーク方式で形成せしめる場合に、好適に用いることができる。この場合の複層塗膜の形成は、下記方法IIに従って行うことができる。
【0361】
方法II
下記の工程1)〜3):
1)被塗物に、水性第1着色塗料(X)を塗装して中塗り塗膜を形成せしめる工程、
2)上記の未硬化の中塗り塗膜上に、水性第2着色塗料(Y)を塗装して上塗り塗膜を形成せしめる工程、ならびに
3)上記の未硬化の中塗り塗膜及び未硬化の上塗り塗膜を同時に加熱硬化させる工程
を含む複層塗膜形成方法。
【0362】
上記方法IIにおける被塗物は、カチオン電着塗料により下塗り塗膜が形成された自動車車体等であることが好ましい。
【0363】
上記方法IIにおいて、第1着色塗料(X)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、2〜40μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜25μmの範囲内であることが好適である。また、第2着色塗料(Y)の塗装膜厚は、硬化膜厚として、2〜40μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmの範囲内であることが好適である。
【0364】
また、上記方法IIの工程2)においては、工程1)で得られた中塗り塗膜に、前記プレヒート、エアブロー等を行うことができる。また、上記方法IIの工程3)においては、工程2)で得られた上塗り塗膜に、上記プレヒート、エアブロー等を行うことができる。
【実施例】
【0365】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0366】
アクリル変性ポリエステル樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応装置に、ヘキサヒドロ無水フタル酸85部、アジピン酸51.6部、1,6−ヘキサンジオール39.1部、ネオペンチルグリコール34.8部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール35.3部、無水マレイン酸2.16部、トリメチロールプロパン30.1部を仕込み、攪拌しながら160℃まで昇温した。次いで、内容物を160℃から240℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。240℃で90分間反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、内容物にトルエン約15部を加え、水とトルエンを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から酸価の測定を開始し、酸価が3.5未満になったことを確認して加熱を停止し、トルエンを減圧除去した後、冷却し、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル58部を加えた。
130℃まで冷却し、スチレン9部、アクリル酸12.6部、アクリル酸−2−エチルヘキシル23.4部及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2.2部の混合物を2時間で滴下した。その後、30分間130℃を保った後、追加触媒として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.44部を加え1時間熟成した。
その後、85℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンで中和し、脱イオン水を加え、水分散を行い、固形分35%のアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)を得た。得られたアクリル変性ポリエステル樹脂は、酸価35mgKOH/g、水酸基価110mgKOH/g、数平均分子量2300であった。
【0367】
製造例2〜10
下記表1に示す配合とする以外、製造例6と同様にして合成しアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−2)〜(A−10)を得た。
【0368】
【表1】
【0369】
ブロックポリイソシアネート化合物(B)の製造
製造例11
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」360部、「ユニオックスM−550」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約550)60部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール683部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−1)の固形分濃度は約60%であった。
【0370】
製造例12
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」360部、「ユニオックスM−400」(日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量 約400)50部、「PEG#600」(日油社製、ポリエチレングリコール、平均分子量 約600)5部及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル247部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.11モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール670部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが92部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−2)の固形分濃度は約60%であった。
【0371】
製造例13
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分約100%、イソシアネート基含有率21.8%)480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル365部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが183部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−3)の固形分濃度は約60%であった。
【0372】
製造例14
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジイソプロピル330部及びアセト酢酸イソプロピル27部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)1390部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが173部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−4)の固形分濃度は約60%であった。
【0373】
製造例15
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部、マロン酸ジエチル280部及びイソブチリル酢酸エチル30部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.08モル/Kgであった。これに4−メチルー2−ペンタノール870部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、4−メチルー2−ペンタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)1350部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが133部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−5)の固形分濃度は約60%であった。
【0374】
製造例16
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに5−メチル−2−ヘキサノール990部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、5−メチル−2−ヘキサノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)1400部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが180部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−6)の固形分濃度は約60%であった。
【0375】
製造例17
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「デュラネートTPA−100」450部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジイソプロピル360部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.07モル/Kgであった。これに6−メチルー2−ヘプタノール1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、6−メチル−2−ヘプタノール120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)1430部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが170部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−7)の固形分濃度は約60%であった。
【0376】
製造例18
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにn−ブタノールを630部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、n−ブタノールを90部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)1270部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが100部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−8)の固形分濃度は約60%であった。
【0377】
製造例19
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これに2−エチルヘキサノールを1110部を加え、系の温度を80〜85℃に保ちながら減圧条件下で6時間かけて溶剤を留去し、さらに、2−エチルヘキサノールを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)1410部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが130部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−9)の固形分濃度は約60%であった。
【0378】
製造例20
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN−3300」480部、酢酸エチル150部及びマロン酸ジエチル310部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液4部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.06モル/Kgであった。これにプロピレングリコールモノプロピルエーテルを1000部を加え、系の温度を90〜95℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、さらに、プロピレングリコールモノプロピルエーテルを120部を加えて、ブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)1380部を得た。除去溶媒簡易トラップには、エタノールが125部含まれていた。得られたブロックポリイソシアネート化合物溶液(B−10)の固形分濃度は約60%であった。
【0379】
水酸基含有アクリル樹脂(C)の製造
水酸基含有水溶性アクリル樹脂(C−1)の製造
製造例21
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、n−ブチルアクリレート29部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部を加え、固形分55%の水酸基含有水溶性アクリル樹脂溶液(C−1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
【0380】
水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)の製造
製造例22
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水130部、「アクアロンKH−10」(商品名、第一工業製薬社製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。
その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。
その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2−(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径118nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した。)、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂水分散体液(C−2)を得た。得られたアクリル樹脂エマルションは、水酸基価が65mgKOH/g(コア共重合体の水酸基価65mgKOH/g、シェル共重合体の水酸基価65mgKOH/g)、酸価が13mgKOH/g、ガラス転移温度が37℃であった。
【0381】
モノマー乳化物(1):脱イオン水46.2部、「アクアロンKH−10」0.79部、スチレン7.7部、メチルメタクリレート16.94部、n−ブチルアクリレート7.7部、n−ブチルメタクリレート30.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート11.55部及びエチレングリコールジメタクリレート2.31部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。(コア共重合体のモノマー合計量:77部)
モノマー乳化物(2):脱イオン水13.8部、「アクアロンKH−10」0.24部、過硫酸アンモニウム0.03部、スチレン2.3部、メチルメタクリレート6.9部、エチルアクリレート4.6部、n−ブチルアクリレート3.68部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.45部及びメタクリル酸2.07部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。(シェル共重合体のモノマー合計量:23部)
【0382】
ポリエステル樹脂(D)の製造
製造例23
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、精留塔及び水分離器を備えた反応容器に、無水フタル酸48.9部、ヘキサヒドロ無水フタル酸46.2部、アジピン酸29.2部、ネオペンチルグリコール78.8部、トリメチロールプロパン34.1部、を仕込み、160℃まで昇温させた。160℃から230℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。90分間230℃で反応を続けた後、内容物にトルエンを加えて水とトルエンを共沸させ、縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間縮合反応し、トルエンを減圧除去した。次いで、得られた縮合反応生成物に無水トリメリット酸を加え、170℃で30分間反応させた後、ジメチルエタノールアミンで中和を行い、脱イオン水を攪拌しながら添加して、固形分濃度45%であるポリエステル樹脂溶液(D−1)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が23mgKOH/g、水酸基価が140mgKOH/g、数平均分子量が1,300であった。
【0383】
製造例24
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、精留塔及び水分離器を備えた反応容器に、ヘキサヒドロ無水フタル酸77.0部、アジピン酸46.7部、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール64.0部,トリメチロールプロパン47.8部、ネオペンチルグリコール21部、ジメチロールプロピオン酸6.7部を仕込み、160℃まで昇温させた。160℃から230℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。90分間230℃で反応を続けた後、内容物にトルエンを加えて水とトルエンを共沸させ、縮合水を水分離器により留去させながら230℃で4時間縮合反応し、トルエンを減圧除去した。次いで、得られた縮合反応生成物に無水トリメリット酸を加え、170℃で30分間反応させた後、ジメチルエタノールアミンで中和を行い、脱イオン水を攪拌しながら添加して、固形分濃度45%であるポリエステル樹脂溶液(D−2)を得た。得られたポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が140mgKOH/g、数平均分子量が1,500であった。
【0384】
顔料分散液の製造
製造例25
撹拌混合容器に、製造例1で得たアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)を固形分質量で10部、製造例23で得たポリエステル樹脂溶液(D−1)を固形分質量で10部、「JR−806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)60部、「BLANC FIXE micro」(商品名、Sachtleben chemie社製、硫酸バリウム、粒径0.7μm)30部、「三菱カーボンブラックMA−100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)0.6部及び脱イオン水30部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P−1)を得た。
【0385】
製造例26
撹拌混合容器に、製造例1で得たアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)を固形分質量で20部、「JR−806」60部、「BLANC FIXE micro」(30部、「三菱カーボンブラックMA−100」0.6部及び脱イオン水30部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P−2)を得た。
【0386】
製造例27
撹拌混合容器に、製造例21で得た水酸基含有水溶性アクリル樹脂溶液(C−1)を固形分質量で10部、製造例23で得たポリエステル樹脂溶液(D−1)を固形分質量で10部、「JR−806」60部、「BLANC FIXE micro」30部、「三菱カーボンブラックMA−100」0.6部及び脱イオン水30部を入れ、均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P−3)を得た。
【0387】
水性第1着色塗料(X)の製造
製造例28
製造例25で得た顔料分散ペースト(P−1)を固形分で110.6部、製造例1で得たアクリル変性ポリエステル樹脂の水分散体(A−1)を固形分で10部、製造例22で得た水酸基含有アクリル樹脂水分散体(C−2)を固形分で15部、「ユーコートUX−310」(商品名、三洋化成工業社製、ポリカーボネート系水性ポリウレタン樹脂)を固形分で20部、製造例11で得たブロックポリイソシアネート化合物(B−1)を固形分で10部、「サイメル325」(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、メラミン樹脂、固形分80%)を固形分で25部、を均一に混合し、更に、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、固形分濃度45%、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度40秒の水性着色塗料(X−1)を得た。
【0388】
製造例29〜57
配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例28と同様にして、水性第1着色塗料(X−2)〜(X−30)を得た。
【0389】
【表2】
【0390】
【0391】
(注1)「カルボジライトV−02」(日清紡社製、水溶性ポリカルボジイミド化合物、固形分40%)
試験板の作製
製造例28〜57で得た水性第1着色塗料(X−1)〜(X−30)を用いて、以下のようにしてそれぞれ試験板を作製し、評価試験を行なった。
【0392】
(試験用被塗物の作製)
縦300mm×横450mm×厚さ0.8mmのリン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
【0393】
実施例1
上記試験用被塗物に、製造例28で得た水性第1着色塗料(X−1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚20μmとなるように静電塗装し、第1着色塗膜を形成した。6分間放置後、該未硬化の第1着色塗膜上に「WBC−713シルバーメタリックベース」(関西ペイント社製、商品名、アクリル・メラミン樹脂系水性シルバーメタリック色ベースコート塗料、以下「水性第2着色塗料塗料(Y−1)」ということがある)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、第2着色塗膜を形成した。3分間放置後、80℃で5分間プレヒートを行なった後、該未硬化のベースコート塗膜上に、「マジクロンKINO−1210」(商品名、関西ペイント社製、酸エポキシ架橋系有機溶剤型上塗りクリヤー塗料、以下「クリヤー塗料(Z−1)」ということがある)を硬化膜厚が35μmとなるように静電塗装し、クリヤー塗膜を形成した。7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、上記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化させ、試験板を作製した。
【0394】
実施例2〜25、比較例1〜5
実施例1において、水性第1着色塗料(X−1)を、下記表3に示す水性第1着色塗料(X−2)〜(X−30)のいずれかに変更する以外は、実施例1と同様にして試験板を作製した。
【0395】
評価試験
上記実施例1〜25及び比較例1〜5で得られた各試験板を用いて、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を下記表3に示す。
【0396】
(試験方法)
平滑性:試験板について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWc値を用いて評価した。Wc値が小さいほど塗面の平滑性が高いことを示す。Wc値は小さいほどよいが、少なくとも、20未満という条件を満たす必要がある。
【0397】
鮮映性:試験板について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるWa値を用いて評価した。Wa値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。Wa値は小さいほどよいが、少なくとも、20未満という条件を満たす必要がある。
【0398】
耐ワキ性:試験板を肉眼で観察し、縦300mm×横450mmの試験板上に発生しているワキの個数を数えた。ワキの個数は小さいほどよく、1個でもワキが発生すると不合格である。
【0399】
耐水付着性:試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない。
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている。
B:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下である。
【0400】
貯蔵後耐水付着性:水性第1着色塗料(X)を40℃の温度で1ヶ月貯蔵し、該水性着色塗料を用いて、複層塗膜を形成した試験板を作製した。試験板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、試験板の複層塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作る。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べた。
S:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じていない。
A:ゴバン目塗膜が100個残存するが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さなフチカケが生じている。
B:ゴバン目塗膜の残存数が99個以下である。
【0401】
本発明が属する塗装分野においては、平滑性、鮮映性、耐ワキ性、耐水付着性及び貯蔵後耐水付着性の全ての性能が優れていることが重要である。
【0402】
【表3】