(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
周知のように、遠心圧縮機は、回転するインペラの半径方向にガスを通り抜けさせ、その際に発生する遠心力を利用してそれら気体を圧縮するものであり、例えば、石油化学や天然ガスや空気分離のプラントに用いられている。
【0003】
遠心圧縮機としては、ガスを圧縮するインペラを一本の軸に取り付ける構造の一軸多段型遠心圧縮機と、複数のピニオン軸の軸端にインペラを取り付ける構造の増速機内蔵型遠心圧縮機(以下、ギアド圧縮機と称する)が知られている。ギアド圧縮機は、複数の従動軸の軸端に設けれ、インペラを備えた複数の圧縮部によって作動流体を圧縮する形態のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図5は、従来のギアド圧縮機101の模式的平面断面図である。
図5に示すように、ギアド圧縮機101は、駆動源19と、駆動源19によって回転駆動される駆動軸2と、駆動軸2の駆動力が伝達される増速機110と、増速機110を構成する第一従動歯車112の両側へと延びる第一従動軸5と、増速機110を構成する第二従動歯車113の両側へと延びる第二従動軸6と、第一従動軸5の両側にそれぞれ設けられた第一段圧縮部107及び第二段圧縮部108と、と、第二従動軸6の両側に設けられた第三段圧縮部109及び釣合錘116とを有している。
【0005】
増速機110は、駆動軸2に設けられた駆動歯車111と第一従動軸5に設けられた第一従動歯車112と、第二従動軸6に設けられた第二従動歯車113とを有している。この歯車構成により、駆動軸2の回転が増速され従動軸5,6に伝達される。
【0006】
第一段圧縮部107と第二段圧縮部108とは、第一段熱交換器27を介して配管で接続されているとともに、第二段圧縮部108と第三段圧縮部109とは、第二段熱交換器28を介して配管で接続されている。
上述したような構成により、ギアド圧縮機101に導入された作動流体は、三段の圧縮部107,108,109により圧縮される。また、この構成においては、作動流体が圧縮部間に設けられている熱交換器27,28によって中間冷却されることによって圧縮効率の向上が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ギアド圧縮機を大容量化する場合、インペラを大型化する手法が一般的である。しかしながら、インペラの大型化は製造上の限界があり、大容量化を実現するためには、複数のギアド圧縮機を用いるか、軸流圧縮機など、他の方式の圧縮機を適用する必要があった。
【0009】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、増速機を内蔵した遠心圧縮機において、インペラの径を最小限に抑えつつ、大容量化を図ることができる遠心圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の遠心圧縮機は、駆動歯車と、前記駆動歯車から、中心軸方向一方側へと延びる駆動軸と、前記駆動歯車の回転が伝達される第一従動歯車と、前記第一従動歯車の中心軸方向両側へと延びる第一従動軸と、前記第一従動軸の中心軸方向両側にそれぞれ設けられ、前記第一従動軸の回転によって流体を圧縮する同一構成の二つの第一段圧縮部と
、前記第一従動歯車と前記駆動歯車との間に設けられた第一中間歯車と、前記駆動歯車の回転が伝達される第二従動歯車と、前記第二従動歯車の中心軸方向に沿って延びる第二従動軸と、前記第二従動軸に設けられた第二段圧縮部と、前記第二従動歯車と前記駆動歯車との間に設けられた第二中間歯車と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第一段圧縮部が二つ設けられ、これら二つの第一段圧縮部が第一従動軸の両側に配置された構成とされているため、圧縮部の径を最小限に抑えつつ、遠心圧縮機の大容量化を図ることができる。
【0013】
この構成によれば、第一中間歯車を設け、第一従動軸と駆動軸との軸間距離を大きくすることによって、駆動軸が支障となることなく第一圧縮機を更に大型化でき、さらに遠心圧縮機の大容量化を図ることができる。その一方で、駆動歯車及び第一従動歯車の大きさを最小限のものとすることができる。
【0015】
この構成によれば、遠心圧縮機を構成する圧縮部を二段以上として圧縮比を高める場合において、第一段を二つの第一段圧縮部からなる構成とし、かつ、従動歯車と駆動歯車との間に中間歯車を設ける構成とすることで、駆動軸と第一段圧縮部側との干渉を受けることなく、二段以上として圧縮比を高めつつ、かつ効果的に大容量化を図ることができる。
【0016】
また、前記第一中間歯車及び前記第二中間歯車の回転軸は、前記駆動歯車の回転軸よりも上下方向一方側に設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第一中間歯車と第二中間歯車の回転中心を、駆動歯車の回転中心に対して上下方向において同一高さに設けた場合と比較して、駆動軸を支持する軸受により荷重がかかるようになるため、駆動軸の運転状況を安定化させることができる。
【0018】
また、本発明の遠心圧縮機は、前記第二従動軸に、前記第二従動歯車に対して中心軸方向に沿って前記第二段圧縮部と反対側に設けられた第三段圧縮部と、前記駆動歯車の回転が伝達される第三従動歯車と、前記第三従動歯車の中心軸方向に沿って延びる第三従動軸と、前記第三従動軸に設けられた第四段圧縮部と、前記第三従動歯車と前記駆動歯車との間に設けられた第三中間歯車とを備え、前記第一中間歯車、前記第二中間歯車、及び前記第三中間歯車のうち二つの中間歯車の回転軸は、前記駆動歯車の回転軸よりも上下一方側に設けられ、他の一つ中間歯車の回転軸は、上下他方側に設けられている構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、遠心圧縮機を構成する圧縮部を四段以上として圧縮比を高める場合において、駆動軸を支持する軸受により荷重がかかるようになるため、駆動軸の運転状況を安定化させることができる。また、二つの中間歯車の回転中心と他の一つの中間歯車の回転中心とを上下方向に振り分けることによって、中間歯車同士の干渉を回避することができる。
【0020】
また、前記二つの第一段圧縮部と前記第二段圧縮部とを接続する配管上に設けられ、前記二つの第一段圧縮部から吐出される流体の熱交換を行う熱交換器を備え、該熱交換器は、前記二つの第一段圧縮部がそれぞれ接続される二つの導入口と、前記第二段圧縮部が接続される一つの排出口が設けられていることが好ましい。
【0021】
さらに、前記二つの第一段圧縮部の上流側にそれぞれ設けられ、流体の流量を制御する入口案内翼と、前記二つの第一段圧縮部の上流側にそれぞれ設けられた第一圧力計及び流量計と、前記二つの第一段圧縮部の下流側にそれぞれ設けられた第二圧力計と、前記第一圧力計、前記流量計、及び前記第二圧力計で検出された測定結果に基づいて前記入口案内翼を制御する制御部とを備えることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、異常時、即ち製作誤差、経年的運転による性能変化などの要因により、二つの第一段圧縮部を構成する2つのインペラに性能差が生じた場合においても、その性能差に応じた制御が可能となる。
【0023】
また、前記第一段圧縮部は、それぞれに独立して流体が流入するガス導入部を有しよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、同一構成の第一段圧縮部が二つ設けられ、これら二つの第一段圧縮部が第一従動軸の両側に配置された構成とされているため、圧縮部の径を最小限に抑えつつ、遠心圧縮機の大容量化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る遠心圧縮機1は、動力を発生させる駆動源19と、駆動源19によって回転駆動される駆動軸2と、駆動軸2の回転駆動を変速、伝達させる増速機10と、増速機10によって伝達された動力が出力される従動軸3と、従動軸3に伝達された動力により駆動する圧縮部4とを備える。
【0027】
増速機10は、駆動軸2が中心軸方向一方側へと延びる駆動歯車11と、駆動歯車11の回転がそれぞれ増速されて伝達される第一従動歯車12および第二従動歯車13と、第一従動歯車12及び第二従動歯車13と駆動歯車11との間にそれぞれ設けられ噛合した第一中間歯車14および第二中間歯車15とを有する。
【0028】
また、従動軸3としては、第一従動歯車12の中心軸方向両側に延びる第一従動軸5と、第二従動歯車13の中心軸方向両側に延びる第二従動軸6とを有する。
また、圧縮部4としては、第一従動軸5の中心軸方向両側の端部にそれぞれ設けられた二つの第一段圧縮部7a,7bと、第二従動軸6において駆動源19が設けられた側と反対側となる中心軸方向他方側の端部に設けられた第二段圧縮部8と、第二従動軸6において駆動源19が設けられた側となる一方側に設けられた第三段圧縮部9とを有する。
【0029】
なお、増速機10を構成する歯車群は、ケーシング20の内部に収められており、各軸は、ケーシング20に図示しない軸受を介して支持されている。
【0030】
第一段圧縮部7a,7b、第二段圧縮部8、及び第三段圧縮部9は、それぞれインペラ25,37,38を有している。そして、第一段圧縮部7a,7b、第二段圧縮部8、及び第三段圧縮部9は、それぞれインペラ25,37,38を用いて作動流体を圧縮している。インペラ25,37,38は、導入口より吸入された作動流体を、その内部に形成された流路を介して径方向外周側に向かって放出するものである。
【0031】
なお、本実施形態においては、三種類のインペラ25,37,38のうち、第二段圧縮部8に使用されるインペラ37の外径は、第一段圧縮部7a,7bを構成する二つのインペラ25a,25bから排出された作動流体が導入されることから、第一段圧縮部7a,7bのインペラ25と略同一の外径としている。
【0032】
第一中間歯車14と第二中間歯車15は、所謂アイドル歯車であり、第一中間歯車14は第一中間軸17によって回転可能に支持されている。また、第二中間歯車15は、第一中間軸18によって回転可能に支持されている。
【0033】
この歯車構成により、駆動軸2が回転することによって、駆動歯車11が回転し、駆動歯車11の回転に伴い第一中間歯車14及び第二中間歯車15が回転する。そして第一中間歯車14及び第二中間歯車15の回転に伴い、第一従動歯車12及び第二従動歯車13が回転する。そして第一従動歯車12の回転に伴い第一従動軸5が回転し、第二従動歯車13の回転に伴い第二従動軸6が回転する。
即ち、駆動軸2が駆動することによって、第一従動軸5及び第二従動軸6が回転する。
【0034】
図2(a)は、増速機10を構成する歯車群の位置構成を示す概略斜視図である。
図2(a)に示すように、駆動歯車11の中心レベル、即ち、所定の基準面からの高さは、第一従動歯車12及び第二従動歯車13の中心レベルと略同じ高さとされている。即ち、駆動歯車11、第一従動歯車12、及び第二従動歯車13の中心は、全て中心線L上に配置される。
一方、第一中間歯車14及び第二中間歯車15の中心は、中心線Lよりやや下方にオフセットして配置されている。即ち、中間歯車14,15を支持する中間軸17,18と駆動軸2とは同一平面上に配置されていない。
【0035】
次に、圧縮部同士の接続構成について説明する。
二つの第一段圧縮部7a,7bは、第一段配管30を介して第二段圧縮部8と接続されている。第一段配管30は、2つの第一段圧縮部吐出配管31a,31bと第二段圧縮部吸込配管32とから構成されており、第一段圧縮部吐出配管31a,31bと第二段圧縮部吸込配管32との間には、第一段熱交換器27が介設されている。
【0036】
第一段熱交換器27は、2つの入口ノズル27aと1つの出口ノズル27bを備えており、2つの入口ノズル27aにそれぞれ第一段圧縮部吐出配管31a,31bが接続され、出口ノズル27bに第二段圧縮部吸込配管32が接続されている。即ち、第一段熱交換器27は、第一段圧縮部7a,7bを構成する二つの第一段圧縮部7a,7bから吐出される二系統の作動流体を冷却するとともに、二系統の作動流体を合流させ、一系統の作動流体とする機能を有している。
【0037】
第二段圧縮部8は、第二段配管33を介して第三段圧縮部9と接続されている。第二段配管33は、第二段圧縮部吐出配管34と第三段圧縮部吸込配管35とから構成されており、第二段圧縮部吐出配管34と第三段圧縮部吸込配管35との間には第二段熱交換器28が介設されている。
【0038】
第一段熱交換器27及び第二段熱交換器28は、作動流体の中間冷却を行うためのクーラである。このように圧縮過程での作動流体を中間的に冷却することによって、遠心圧縮機1の駆動に必要とされる動力が低減される。
【0039】
次に、第一段圧縮部7a,7b、第二段圧縮部8、第三段圧縮部9のそれぞれの構成について説明する。
第一段圧縮部7a,7bは、本実施形態の遠心圧縮機1において、作動流体が最初に流入する圧縮部である。二つの第一段圧縮部7a,7bは、同一の構成を有しており、それぞれ、圧縮する流体を供給するガス導入部23と、ガス導入部23から供給された流体を案内するとともに、角度が可変とされた入口案内翼24(IGV,Inlet Guide Vane)と、第一従動軸5に取り付けられたインペラ25を有している。即ち、本実施形態の遠心圧縮機1は、2つのガス導入部23より、ガスを導入するように構成されている。第一段圧縮部7a,7bを構成する2つのインペラ25のガス排出口は、それぞれ第一段圧縮部吐出配管31a,31bと接続されている。
【0040】
入口案内翼24は、ガス導入部23に設けられており、その開度を調節することによって圧縮機を通過する作動流体の流量を制御するものであり、アクチュエータ26によりインペラ25の軸方向に直交する軸線まわりに回動可能とされている。
【0041】
第二段圧縮部8は第二従動軸6の一端に設けられたインペラ37を有している。インペラ37のガス導入口には、第一段配管30を構成する第二段圧縮部吸込配管32が接続されているとともに、インペラ37のガス排出口には、第二段配管33を構成する第二段圧縮部吐出配管34が接続されている。
第三段圧縮部9は第二従動軸6の他端に設けられたインペラ38を有している。インペラ38のガス導入口には、第二段配管33を構成する第三段圧縮部吸込配管35が接続されているとともに、インペラ38のガス排出口には、第三段圧縮部吐出配管36が接続されている。
【0042】
以上より、本実施形態の遠心圧縮機1の作用を説明する。
圧縮すべき作動流体は、第一段圧縮部7a,7bを構成する二つのガス導入部23a,23bより導入され、二つの第一段圧縮部7a,7bにおいて圧縮される。次いで、作動流体は、第一段熱交換器27に導入されつつ、この第一段熱交換器27内で合流され、中間冷却された後、第二段圧縮部8に導入される。第二段圧縮部8において圧縮され第二段圧縮部8より排出された作動流体は、第二段熱交換器28において中間冷却され、第三段圧縮部9に導入される。そして、作動流体は第三段圧縮部9において圧縮された後、圧縮された作動流体の需要先である所定のプラントPに供給される。
【0043】
次に、遠心圧縮機1の制御システム、特に遠心圧縮機1に導入される作動流体の吸込圧力を調整する入口案内翼24の制御方法について説明する。
図3に示すように、遠心圧縮機1の制御システムは、制御装置50を備えている。制御装置50は、各計測器の入力に基づき、入口案内翼24を駆動するアクチュエータ26、及び後述するガス放出弁56を制御する。
【0044】
第一段圧縮部7a,7bを構成する2つの第一段圧縮部7a,7bの上流側には、第一段圧縮部7a,7bに導入される作動流体の圧力を計測する第一圧力計51a,51bと、作動流体の流量を計測する流量計52a,52bが設けられている。また、第一段圧縮部7a,7bの下流側であって、第一段圧縮部7a,7bに接続された第一段圧縮部吐出配管31a,31bにはそれぞれ第二圧力計53a,53bが設けられている。
【0045】
また、第三段圧縮部9と所定のプラントPとの間の第三段圧縮部吐出配管36には、第三圧力計54が設けられている。また、第三段圧縮部吐出配管36における第三圧力計54の下流には、ガス放出配管55が分岐されており、このガス放出配管55には、ガス放出弁56が設けられている。
第一圧力計51a,51b、第二圧力計53a,53b、第三圧力計54、および流量計52a,52bは、制御装置50と接続され、制御装置50に計測結果を入力するように構成されている。
【0046】
上記制御システムによる制御方法について説明する。
通常時、第一段圧縮部7a,7bの2つのインペラ25a,25bの上流に設けられている入口案内翼24a,24bは、制御装置50によって、同一の制御方法によって制御される。例えば、入口案内翼24a,24bは、遠心圧縮機1の始動時には微開状態とされ、始動時の遠心圧縮機1の駆動力を軽減する。
【0047】
一方、制御装置50は、二つの第一段圧縮部7a,7bのそれぞれについて、入口流量の計測を行い、さらに、入口及び出口の圧力計測を行うことにより、第一段圧縮部7a,7bのインペラ25a,25bの運転監視を行う。さらに、入口流量と共に、第二段圧縮部8、及び第三段圧縮部9についても、第三段圧縮部9の下流、即ち遠心圧縮機1の出口圧力の計測を行うことにより運転監視を行う。
【0048】
異常時、即ち製作誤差、経年的運転による性能変化などの要因により、二つのインペラ25a,25bに性能差が生じた場合においては、その性能差に応じて入口案内翼24a,24bの制御を行う。
また、制御装置50は、第三圧力計54の圧力と流量計52a,52bの流量に応じて、適宜ガス放出弁56を制御することによって、低流量運転時の吐出圧力を一定制御し、また、サージング防止制御も行う。
【0049】
上記実施形態によれば、二つの第一段圧縮部7a,7bが第一従動軸5の両側に配置された構成とされているため、第一段圧縮部7a,7bの径を最小限に抑えつつ圧縮能力を向上させることができる。これにより、遠心圧縮機1の大容量化を図ることができる。
【0050】
また、第一中間歯車14を設け、第一従動軸5と駆動軸2との軸間距離を大きくしたことによって、第一段圧縮部7a,7bを更に大型化でき、さらに遠心圧縮機1の大容量化を図ることができる。その一方で、第一従動歯車12及び駆動歯車11の小型化を図ることができる。
【0051】
また、第二中間歯車15を設け、第二従動軸6と駆動軸2との軸間距離を大きくしたことによって、第二従動軸6の両端に設けられた第二段圧縮部8及び第三段圧縮部9と、駆動軸2との干渉、及び第一段圧縮部7a,7bとの干渉を回避することができる。即ち、中間歯車の設置及び第一段圧縮の複数化とともに、圧縮部を三段とすることにより、高圧縮比かつ効果的に大容量化を図ることができる。
【0052】
また、
図2に(b)に示すように、駆動歯車11Bの回転数(即ち駆動源19の回転数)が変化した場合においても、中間歯車14B,15Bの歯数を調整することによって、歯車系全体の大きさを変更することなく増速機10Bを設計することができる。即ち、第一従動軸5と第二従動軸6の軸間距離を変更することなく、増速機10Bを設計することができる。
これは、駆動源19(蒸気タービン、モータ、等)が効率がよい最適な回転数に駆動軸2の回転数を合致することができるということであり、遠心圧縮機1と駆動源19を含めた「コンプレッサトレイン」として最適なシステムを実現できる。
【0053】
また、第一中間歯車14及び第二中間歯車15の中心が駆動歯車11の中心レベルより、やや下方にオフセットして配置されていることによって、第一中間歯車14と第二中間歯車15の回転中心を、駆動歯車11の回転中心に対して上下方向において同一高さに設けた場合と比較して、駆動軸2を支持する軸受により荷重がかかるようになるため、駆動軸2の運転状況を安定化させることができる。
【0054】
即ち、増速機10の中心付近に位置する駆動軸2は、その両側に位置する第一中間歯車14及び第二中間歯車15により歯車の反力を受ける。それぞれの中間歯車14,15の歯車反力は、上下方向逆に作用するため、駆動歯車11と中間歯車14,15の回転中心を水平一直線に配置すると、歯車反力がキャンセル(相反)された場合、駆動軸2を支持する軸受にかかる荷重が極めて小さくなり、軸系として不安定となる。
これに対し、駆動歯車11と中間歯車14,15の回転中心をオフセットすることによって、駆動軸2を支持する軸受に一定の荷重がかかるようになる。
【0055】
また、大容量化を図ったにもかかわらず、熱交換器の数量は従来の遠心圧縮機と同数でよいため、遠心圧縮機1のコンパクト化が可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る遠心圧縮機1の制御システムによれば、二つの第一段圧縮部7a,7bのそれぞれの上流側に第一圧力計51及び流量計52を、下流側に第二圧力計53を設け、制御装置50によって全体の運転監視を行う構成とした。これにより、異常時、即ち製作誤差、経年的運転による性能変化などの要因により、二つの第一段圧縮部7a,7bを構成する2つのインペラ25a,25bに性能差が生じた場合においても、その性能差に応じた制御が可能となる。
【0057】
(第二の実施形態)
以下、本発明の第二の実施形態について説明する。
第二の実施形態に係る遠心圧縮機は、第一の実施形態に係る遠心圧縮機1の第三段圧縮部9に相当する第三段圧縮部9Bの後段に、更に第四段圧縮部41、及び第五段圧縮部42を設けたものである。
【0058】
図4は、本実施形態の遠心圧縮機1Bの増速機10Cを構成する歯車群の位置構成を示す概略斜視図である。
図4に示すように、駆動軸2に設けられた駆動歯車11の上方には、第三従動歯車43が配置されており、第三従動歯車43の両側には、第三従動軸44が延在している。また、第三従動歯車43と駆動歯車11との間には第三中間歯車45が設けられている。
【0059】
第三従動軸44の両端には、第四段圧縮部41及び第五段圧縮部42が設けられている。第四段圧縮部41及び第五段圧縮部42は、第二段圧縮部8及び第三段圧縮部9と同様の構成であり、インペラによって作動流体を圧縮する圧縮部である。
第四段圧縮部41は、第三段圧縮部9の後段に設けられた圧縮部であり、第五段圧縮部42は、第四段圧縮部41の後段に設けられた圧縮部である。第五段圧縮部42より吐出された圧縮された作動流体は、図示しない所定のプラントに供給される。また、第一の実施形態と同様に、第三段圧縮部9と第四段圧縮部41とを接続する配管、及び第四段圧縮部41と第五段圧縮部42とを接続する配管には、熱交換器が設けられている。
【0060】
第一の実施形態に係る遠心圧縮機1と同様に、駆動歯車11、第一従動歯車12、及び第二従動歯車13の中心レベルは略同一とされている。また、第一中間歯車14及び第二中間歯車15の中心は、中心線Lよりやや下方にオフセットして配置されている。
本実施形態に係る遠心圧縮機1Bの第三中間歯車45及び第三従動歯車43は、駆動歯車11の略直上(中心線L2上)に配置されている。即ち、第一中間歯車14、第二中間歯車15、及び第三中間歯車45のうち第一中間歯車14と第二中間歯車15の回転中心は、駆動歯車11の回転中心よりも下方側に設けられ、第三中間歯車の回転中心は、上方側に設けられている。
【0061】
なお、中間歯車の配置は、上述したような配置に限ることはなく、三つの中間歯車のうち二つの中間歯車の回転中心が、駆動歯車11の回転中心よりも上下一方側に設けられ、他の一つ中間歯車の回転中心が、上下他方側に設けられていればよい。
【0062】
上記実施形態によれば、遠心圧縮機を構成する圧縮部を五段以上としたことによって、さらに遠心圧縮機の圧縮比を高めることができる。
また、第一の実施形態に係る遠心圧縮機1と同様に、駆動軸2を支持する軸受により荷重がかかるようになるため、駆動軸2の運転状況を安定化させることができる。
さらに、第一中間歯車14及び第二中間歯車15の回転中心と、第三中間歯車45の回転中心とを上下方向に振り分けることによって、中間歯車同士の干渉を回避することができる。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態においては、従動歯車と駆動歯車との間に中間歯車を設ける構成にしたが、駆動軸と従動軸との間の軸間距離が十分確保できていれば、中間歯車は必ずしも設ける必要はない。
【0064】
また、圧縮部の段数も三段、又は五段に限ることはなく、遠心圧縮機に要求される圧縮性能に応じて適宜変更可能である。