(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
廃棄物を燃焼させる燃焼室および当該燃焼室で発生した排ガスを外部に導く煙道が設けられた焼却炉およびこの焼却炉から排出される排ガスを大気側に導くとともに途中に排ガス処理機器が設けられた排ガス処理経路部を具備する焼却設備における上記排ガス中の窒素酸化物の発生を抑制するための還元剤の供給方法であって、
排ガス処理経路部より排出される排ガス量から当該排ガス処理経路部に供給された水・空気量などの流体流量を減算して焼却炉出口側での排ガス量(FGAS)を求め、
予め焼却炉で実測された還元剤供給手前位置での排ガス量と焼却炉出口側での窒素酸化物濃度との関係を用いて、上記求められた排ガス量(FGAS)から還元剤の供給手前位置での窒素酸化物濃度(CNOx−in)(ppm)を求め、
上記求められた窒素酸化物濃度(CNOx−in)および目標値としての窒素酸化物濃度(CNOx−out)(ppm)を下記(U1)式に代入して脱硝率xを求め、
x=1−[CNOx−out/{CNOx−in×(21−12)/(21−CO2)}] ・・・(U1)
(但し、CO2は焼却炉出口側での酸素濃度(%))
予め求められている脱硝率xと当該脱硝率xを達成するための還元剤の当量比(還元剤/窒素酸化物)λとの関係を示すデータに基づき、上記(U1)式にて求められた脱硝率xに対応する当量比λを求め、
上記当量比λを下記(U2)式に代入して、排ガス量に基づく還元剤の供給量(FRED)を求め、
FRED=10−6×FGAS×(1−CH2O)×CNOx−in×λ ・・・(U2)
(但し、CH2Oは焼却炉出口側での水分(体積比))
当該焼却設備から排出される排ガス中の還元剤濃度の規制値に対応する還元剤の供給濃度(CRED)(ppm)を下記(U3)式に代入して、当該規制値に基づくアンモニアの供給量(F´RED)を求め、
F´RED=10−6×CRED×FGAS×(1−CH2O) ・・・(U3)
且つ上記排ガス量に基づき求められた還元剤供給量(FRED)でもって還元剤の供給を行う際に、排ガス量に基づく還元剤供給量(FRED)が規制値に基づく還元剤供給量(F´RED)を超えた場合には、当該規制値に基づく還元剤供給量(F´RED)でもって還元剤を供給することを特徴とする焼却設備における還元剤供給方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した無脱硝触媒技術を用いたごみ焼却設備においても、脱硝率の向上が望まれており、無脱硝触媒技術の向上を図るために、還元剤であるアンモニアの供給量を増やすと、排ガス中のリークアンモニア濃度が上昇し、例えば10ppmを超えると、アンモニア由来の白煙が発生してしまう。
【0006】
焼却炉での燃焼状態が変化すると、発生する窒素酸化物の量も変化し、このため、還元剤であるアンモニアの供給量も変化する。
したがって、排ガス中における窒素酸化物の量を把握してアンモニアの供給量を適正にする必要があるが、焼却炉内で窒素酸化物の量を正確に計測するのが難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、排ガス量から窒素酸化物を予測することで、供給する還元剤の量を適正にし得る還元剤供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る焼却設備における還元剤供給方法は、廃棄物を燃焼させる燃焼室および当該燃焼室で発生した排ガスを外部に導く煙道が設けられた焼却炉およびこの焼却炉から排出される排ガスを大気側に導くとともに途中に排ガス処理機器が設けられた排ガス処理経路部を具備する焼却設備における上記排ガス中の窒素酸化物の発生を抑制するための還元剤の供給方法であって、
排ガス処理経路部より排出される排ガス量から当該排ガス処理経路部に供給された水・空気量などの流体流量を減算して焼却炉出口側での排ガス量(F
GAS)を求め、
予め焼却炉で実測された還元剤供給手前位置での排ガス量と焼却炉出口側での窒素酸化物濃度との関係を用いて、上記求められた排ガス量(F
GAS)から還元剤の供給手前位置での窒素酸化物濃度(C
NOx−in)(ppm)を求め、
上記求められた窒素酸化物濃度(CNOx−in)および目標値としての窒素酸化物濃度(C
NOx−out)(ppm)を下記(U1)式に代入して脱硝率xを求め、
x=1−[C
NOx−out/{C
NOx−in×(21−12)/(21−C
O2)}] ・・・(U1)
(但し、C
O2は焼却炉出口側での酸素濃度(%))
予め求められている脱硝率xと当該脱硝率xを達成するための還元剤の当量比(還元剤/窒素酸化物)λとの関係を示すデータに基づき、上記(U1)式にて求められた脱硝率xに対応する当量比λを求め、
上記当量比λを下記(U2)式に代入して、排ガス量に基づく還元剤の供給量(F
RED)を求め、
F
RED=10
−6×F
GAS×(1−C
H2O)×C
NOx−in×λ ・・・(U2)
(但し、C
H2Oは焼却炉出口側での水分(体積比))
当該焼却設備から排出される排ガス中の還元剤濃度の規制値に対応する還元剤の供給濃度(CRED)(ppm)を下記(U3)式に代入して、当該規制値に基づくアンモニアの供給量(F´RED)を求め、
F´RED=10−6×CRED×FGAS×(1−CH2O) ・・・(U3)
且つ上記排ガス量に基づき求められた還元剤供給量(FRED)でもって還元剤の供給を行う際に、排ガス量に基づく還元剤供給量(FRED)が規制値に基づく還元剤供給量(F´RED)を超えた場合には、当該規制値に基づく還元剤供給量(F´RED)でもって還元剤を供給する方法である。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る焼却設備における還元剤供給方法は、請求項1に記載の還元剤供給方法において、
還元剤の供給手前位置での窒素酸化物濃度(C
NOx−in)を求める関係として下記(U)式を用いる方法である。
【0010】
C
NOx−in=A1×F
GAS+A2 ・・・(U)
(但し、A1およびA2は定数)
また、本発明の請求項3に係る焼却設備における還元剤供給方法は、請求項1に記載の還元剤供給方法において、
還元剤の供給手前位置での窒素酸化物濃度を求める関係として下記(V)式を用いる方法である。
【0011】
C
NOx−in=B1×F
GAS+B2×C
O2+B3 ・・・(V)
(但し、B1,B2およびB3は定数、C
O2は焼却炉出口側での酸素濃度)
さらに、本発明の請求項4に係る焼却設備における還元剤供給方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の還元剤供給方法において、
排ガス処理経路部出口側の排ガス中の窒素酸化物濃度(C
NOx−s)を計測し、当該計測された窒素酸化物濃度(C
NOx−s)を下記(W)式に代入することにより供給手前位置の窒素酸化物濃度(C
NOx−in)を補正して補正窒素酸化物濃度(C
NOx−in−M)を求めるとともに、この求められた補正窒素酸化物濃度(C
NOx−in−M)を用いて脱硝率xを補正する方法である。
【0012】
C
NOx−in−M=(C
NOx−s/C
NOx−out)×C
NOx−in ・・・(W)
【発明の効果】
【0013】
上記還元剤供給方法によると、排ガス中への還元剤の供給量をその供給手前位置における焼却炉内での窒素酸化物濃度を用いて求める際に、焼却炉内での窒素酸化物濃度を焼却炉から排出される排ガス量に基づき求めるようにしたので、還元剤の供給量を適正に、すなわち正確に求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例に係る焼却設備における還元剤供給方法およびこの還元剤供給方法を実施するための還元剤供給装置を、
図1〜
図4に基づき説明する。
まず、還元剤供給装置が具備される焼却設備の概略全体構成について説明する。
【0016】
この焼却設備は、
図1に示すように、大きく分けて、廃棄物を焼却する焼却炉1と、この焼却炉1から排出される排ガスを導いて当該排ガスの温度を低下させるとともに排ガス中に含まれている飛灰などの粉塵を除去するための排ガス処理機器2を有する排ガス処理経路部3と、この排ガス処理経路部3で粉塵などが除去された排ガスを大気に放出するための煙突4とから構成されるとともに、焼却炉1にて発生した排ガス中に還元剤であるアンモニア(NH
3)を供給(「吹き込み」とも言える)して脱硝を行い有害物質である窒素酸化物(NOx)の濃度を低減させるための還元剤供給装置5とが具備されている。なお、以下の説明において、窒素酸化物を含む語句が長くなる場合、およびNOxと表した方が分かり易いと思われる場合には、窒素酸化物をNOxで表す。また、還元剤としては、アンモニアの他に、アンモニア希釈水または尿素希釈水を用いることができるが、以下の説明では、アンモニアとして説明する。なお、特許請求の範囲の請求項に記載した式中の英字の添え字については、還元剤を表す「RED」を用いたが、アンモニアを表す「NH3」を用いて説明する。
【0017】
上記焼却炉1は、炉本体11内の下部に設けられて廃棄物を燃焼させる燃焼室12と、この燃焼室12の上方に配置されて当該燃焼室12で発生した排ガスを外部に導くための鉛直方向の第1煙道13、第2煙道14および第3煙道15とから構成されている。なお、燃焼室12の上方に配置される第1煙道13および第2煙道14は鉛直方向の通路で且つ逆U字形状にされており、またこれらの煙道にはボイラ部がそれぞれ設けられている。すなわち、第1煙道13の下端は燃焼室12の上面に開口されるとともに、第1煙道13の上端と第2煙道14の上部とは半円状でもって互いに接続され、さらに第2煙道14の下端は同じく鉛直方向で設けられた第3煙道15の下端入口側に接続されている。
【0018】
上記排ガス処理経路部3には、排ガス処理機器2として、例えば焼却炉1の第3煙道15から排出される排ガスを導くとともに水を供給して排ガス温度を低下させるための減温塔(設けない場合もある)21と、この減温塔21で温度が低下された排ガスを導いて粉塵を除去するバグフィルタ22とが設けられており、また焼却炉1からの排ガスをこれら減温塔21およびバグフィルタ22を介して煙突4に導く排ガス管路23が設けられている。
【0019】
次に、還元剤供給装置5について説明するが、まず、NOxの還元剤であるアンモニアの供給部分について説明する。
炉本体11の第1煙道13および第2煙道14の上方半円状の接続部近傍が800〜1000℃の高い温度範囲、すなわち無触媒脱硝において、高い脱硝性能が得られる800〜900℃の温度域の排ガス中に還元剤であるアンモニアを供給するようにしている。例えば、
図1に示すように、3箇所で(3箇所に限定されるものではなく、焼却するごみ質に応じて増減される)且つ煙道の横断面内でアンモニアを供給し得るように供給用ノズル(噴射用ノズルともいえる)31がそれぞれ配置されている。なお、アンモニアを煙道の横断面(a,b,c)に均一に供給し得るように、その横断面(a,b,c)に沿って且つその左右両側に、複数の供給用ノズル31が配置されることになるが、1つの横断面に対応する左右両側の供給用ノズル31をそれぞれ代表して第1供給用ノズル(31A)、第2供給用ノズル(31B)、第3供給用ノズル(31C)と称して説明する。
【0020】
すなわち、両煙道13,14を形成する中央の仕切壁11aの上部位置で水平方向の横断面aに沿って第1供給用ノズル31Aが配置され、仕切壁11aの上端部で前側傾斜方向の横断面bに沿って第2供給用ノズル31Bが配置され、仕切壁11aの上端部で後側傾斜方向の横断面cに沿って第3供給用ノズル31Cが配置されている。
【0021】
具体的には、供給用ノズル31の同一設置断面においては、その左右側壁部では、0.2〜2mの範囲の距離でもって複数箇所に配置されるとともに、排ガスの流れ方向においては、1〜3mの範囲の距離でもって複数箇所(複数段)(本実施例では3箇所であるが、上述したように、3箇所に限定されるものではない)にて配置される。また、これら各供給用ノズル31は、その噴射方向が水平方向ないし排ガス流れの上流に向かって60度の角度範囲となるように設けられる。これは、アンモニアを排ガス流れの上流に供給することで、還元剤であるアンモニアを排ガス中に均一に拡散させるためである。
【0022】
そして、後述するが、これら各供給用ノズル31からのアンモニア供給量を制御する際に、その供給位置での排ガス温度に基づくようにされているため、各供給部分の温度を計測し得る第1〜第3温度計(温度計として、例えば熱電対が用いられる)36(36A,36B,36C)が設けられている。なお、温度計の設置箇所を1箇所だけにして、他の箇所については、その計測温度から計算などにより推定するようにしてもよい。
【0023】
上記各供給用ノズル31には、アンモニアおよび蒸気を供給し得る流体供給用配管32が接続されており、その途中に設けられた流量制御弁33の開度を制御する還元剤制御部34が具備されている。
【0024】
なお、以下においては、還元剤であるアンモニアの供給手前位置を脱硝部入口側と称し、アンモニアを供給した後の位置を脱硝部出口側とも称して説明する。また、脱硝部出口側については、第3煙道出口側(ボイラ部出口側でもある)または焼却炉出口側と呼ぶこともできる。
【0025】
次に、還元剤であるアンモニアを適正な量でもって供給するために必要な計測器について説明する。
すなわち、排ガス処理経路部3の出口側、具体的には、バグフィルタ22の出口側の排ガス管路23に、排ガス量を計測し得る排ガス量計測器41が設けられている。また、排ガス処理経路部3の減温塔21においては、水が噴霧されており、供給される水量および噴霧用の空気量も計測されている。さらに、バグフィルタ22の手前側にも、排ガス処理用薬剤を吹き込むための空気が供給されており、この空気量についても計測されている。
【0026】
このように、排ガス処理経路部3においては、水、空気などの流体がそれぞれ複数箇所で供給されているが、説明を簡単にするために、当該排ガス処理経路部3に接続される水供給管42および空気供給管43をそれぞれ1本で図示(
図1参照)するとともに、水供給管42および空気供給管43に水量計測器44および空気量計測器45がそれぞれ設けられているものとして説明する。
【0027】
また、排ガス処理経路部3から排出される排ガス中のNOx濃度および酸素濃度を計測するNOx濃度計(窒素酸化物濃度計)46および酸素濃度計47がそれぞれ設けられている。
【0028】
さらに、第3煙道15の出口側には焼却炉出口における排ガス中の水分を計測する水分計48が設けられている。なお、設置された水分計の計測値を用いる代わりに、予め排ガス中の水分を計測しておいた計測値(採取した排ガス中の水分の計測値)を用いるようにしてもよい。
【0029】
ところで、還元剤供給装置5には、上述したように、燃焼状態に応じて還元剤を供給するための還元剤制御部34が具備されているが、この構成については、還元剤の供給方法を説明した後に説明する。
【0030】
以下、還元剤の供給方法について説明する。
まず、排ガス量計測器41で計測された排ガス量から、水量計測器44および空気量計測器45で計測された水量および空気量(纏めて、流体流量とも言うことができ、また水については蒸気量つまりガス量としての値が用いられる)を減算することにより、焼却炉出口側における排ガス量(F
GAS)(m
3N/h・wet)を求める。
【0031】
次に、この排ガス量(F
GAS)を下記(1)式に代入することにより、還元剤の供給手前位置である脱硝部入口側でのNOx濃度(C
NOx−in)(ppm・dry)を求める。
【0032】
C
NOx−in=A1×F
GAS+A2 ・・・(1)
上記式中、A1およびA2は定数である。
なお、この(1)式は、焼却炉を実際に稼動させて、焼却炉出口側(脱硝部出口側)の排ガス量と脱硝部入口側でのNOx濃度とを実測し、多くの計測データに基づき両者の関係を表す一次式を例えば最小二乗法などを用いて求めたものである。例えば、或る焼却炉の場合では、A1が0.00311、A2は90.1であった。
【0033】
また、このとき、第3煙道出口側(ボイラ部出口側)言い換えれば焼却炉出口側での酸素濃度が求められている。すなわち、排ガス量計測器41で計測された排ガス量と酸素濃度計47で計測された酸素濃度とから排ガス処理経路部3からの排ガス中の総酸素量が求められるとともに、水量計測器44で計測された水量、空気量計測器45で計測された空気量および水分計48により計測された水分値に基づきこれら流体に含まれている追加酸素量が求められ、そして上記総酸素量から追加酸素量が減算されることにより、焼却炉出口側での酸素濃度が求められる。
【0034】
次に、上記NOx濃度(C
NOx−in)および焼却炉出口における目標値としてのNOx濃度(C
NOx−out)(ppm・dry)を、下記(2)式に代入することにより、脱硝率xを計算する。なお、脱硝率とは、脱硝部入口側でのNOx濃度(C
NOx−in)から焼却炉出口側(脱硝部出口側)の目標値であるNOx濃度(C
NOx−out)を差し引いたものを、脱硝部入口側のNOx濃度(C
NOx−in)で除算したもので、下記(2)式は、酸素12%換算を考慮したものである。
【0035】
x=1−[C
NOx−out/{C
NOx−in×(21−12)/(21−C
O2)}] ・・・(2)
但し、(2)式中、C
O2は焼却炉出口側での酸素濃度(dry値が用いられる)(%)である。
【0036】
次に、上記求められた脱硝率xを用いて、予め求められているNOxの目標値に対するアンモニアの当量比(アンモニア/NOx)λと脱硝率xとの関係を示すグラフ(数値データであってもよい)から、当該脱硝率xに対応する当量比λを求める。なお、NOx濃度に対するアンモニアの当量比(アンモニア/NOx)λと脱硝率xとの関係は、例えば
図3のグラフに示すように、アンモニア供給位置での排ガス温度に応じて、予め、計算により求められている。勿論、アンモニア供給位置での温度は、温度計36により、所定時間毎に計測されている。なお、
図3に示すグラフは、例えば第2供給用ノズル(31B)位置で且つ温度に応じて求められたものであり、勿論、アンモニア供給位置に応じて異なるものである。
【0037】
次に、上記求められた当量比λを下記(3)式に代入して、アンモニアの供給量(F
NH3)(m
3N/h)を算出する。
F
NH3=10
−6×F
GAS×(1−C
H2O)×C
NOx−in×λ ・・・(3)
但し、(3)式中、C
H2Oは焼却炉出口側での水分(体積比)であり、第3煙道15の出口側に配置された水分計48により計測されている。なお、水分計48の計測値を用いる代わりに、予め、排ガス中の水分を計測しておいた水分値を用いるようにしてもよい。
【0038】
このように、排ガス中への還元剤の供給量をその供給手前位置における焼却炉内での窒素酸化物濃度を用いて求める際に、焼却炉内での窒素酸化物濃度を焼却炉から排出される排ガス量に基づき求めるようにしたので、還元剤の供給量を正確に求めることができる。
【0039】
さらに、白煙化防止用として、以下の手順が行われる。
すなわち、上記アンモニアの供給量の算出と並行して、白煙化防止のための規制値(例えば10ppm)に対応する脱硝部入口側でのアンモニアの供給濃度(C
NH3;200〜300ppm・dry)が得られるアンモニアの供給量(F′
NH3)を、下記(4)式により算出する。
【0040】
F′
NH3=10
−6×C
NH3×F
GAS×(1−C
H2O) ・・・(4)
次に、上記求められた両アンモニア供給量(F
NH3,F′
NH3)を比較し、通常は、排ガス量に基づくアンモニア供給量(F
NH3)を選択するが、排ガス量に基づくアンモニア供給量(F
NH3)が規制値に基づくアンモニア供給量(F′
NH3)を超えた場合には、当該規制値に基づくアンモニア供給量(F′
NH3)を選択する。
【0041】
すなわち、上記選択されたアンモニア供給量でもってアンモニアが供給用ノズル31から焼却炉1内に供給される。
なお、上記(1)式で用いられるNOx濃度(C
NOx−in)は計算値であるため、実際に計測された(所定時間毎に計測されている)NOx濃度(C
NOx−s)を下記(5)式に代入して補正し、この補正濃度(C
NOx−in−M)(ppm・dry)を上記(2)式に代入して脱硝率xを補正する。
【0042】
C
NOx−in−M=(C
NOx−s/C
NOx−out)×C
NOx−in ・・・(5)
ところで、焼却炉1内に配置された供給用ノズル31は、燃焼負荷に応じて、用いられるノズルが選択される。
【0043】
具体的に言うと、燃焼負荷が小さい場合には、排ガス流路の上流側が850℃程度になるため第1供給用ノズル31Aからアンモニアが供給され、燃焼負荷が中程度の場合には、その下流側が850℃程度になるため第2供給用ノズル31Bからアンモニアが供給され、燃焼負荷が大きい場合には、さらにその下流側が850℃程度になるため第3供給用ノズル31Cからアンモニアが供給される(例えば、蒸気を用いて供給される)。すなわち、燃焼負荷に応じて、使用する供給用ノズル31を、排ガスの流れ方向において、上流側から下流側に順次変更される。
【0044】
また、焼却炉1内で供給されるアンモニアについては、アンモニアが100%の液体でもって供給されるか、または蒸気若しくは空気により同伴されて供給される。同伴媒体として、過熱蒸気または飽和蒸気を使用する場合、その供給速度つまり噴射速度は、音速の1/2〜音速の範囲内とされる。また、ノズルから供給(噴射)されるアンモニア液体の平均粒子径が10〜500μmの範囲内とされるとともに、この場合におけるノズル先端の口径は、2〜20mmの範囲内であることが好ましい。さらに、アンモニアが供給されるノズルは、800〜1000℃の範囲内、好ましくは、800〜950℃の範囲内のものが使用される。
【0045】
上記供給方法を踏まえて、還元剤制御部34の構成を説明すると以下のようになる。
すなわち、上記還元剤制御部34には、
図2に示すように、排ガス量計測器41で計測された排ガス量から水量計測器44および空気量計測器45で計測された水、空気などの流体流量を減算して焼却炉出口側での排ガス量(F
GAS)を求める出口側排ガス量算出部51と、
この出口側排ガス量算出部51で求められた排ガス量(F
GAS)を下記(6)式に代入することにより、脱硝部入口側でのNOx濃度(C
NOx−in)を算出する入口側NOx濃度算出部52と、
C
NOx−in=A1×F
GAS+A2 ・・・(6)
[但し、(6)式中、A1およびA2は定数]
上記排ガス量計測器41で計測された排ガス量、酸素濃度計47で計測された酸素濃度、水量計測器44で計測された水量、空気量計測器45で計測された空気量、および水分計48により計測された水分値(予め計測しておいた水分値を用いてもよい)を入力して、焼却炉出口側での酸素濃度を算出する酸素濃度算出部53と、
上記NOx濃度(C
NOx−in)および焼却炉出口側での目標値としてのNOx濃度(C
NOx−out)を、下記(7)式に代入することにより、脱硝率xを求める脱硝率算出部54と、
x=1−[C
NOx−out/{C
NOx−in×(21−12)/(21−C
O2)}] ・・・(7)
[但し、(7)式中、C
O2は焼却炉出口側での酸素濃度]
上記求められた脱硝率xを用いて、予め求められているNOxに対するアンモニアの当量比(アンモニア/NOx)λと脱硝率xとの関係を示すグラフ(例えば、
図3に示す)(数値データであってもよい)から、当該脱硝率xに対応する当量比λを求める当量比算出部55と、
上記求められた当量比λを下記(8)式に代入して、排ガスに基づくアンモニアの供給量(F
NH3)を求める第1還元剤供給量算出部56とが具備され、
F
NH3=10
−6×F
GAS×(1−C
H2O)×C
NOx−in×λ ・・・(8)
[但し、(8)式中、C
H2Oは焼却炉出口側での水分(体積比)(水分計48による計測値;なお予め計測しておいた水分値を用いてもよい)]
さらに上記アンモニアの供給量の算出と並行して、煙突4から排出されるリークアンモニア濃度の規制値(例えば10ppmなどの規制値、または上乗せ規制値である)に対応する脱硝部入口側でのアンモニア供給濃度(C
NH3)を下記(9)式に代入して規制値に基づくアンモニア供給量(F′
NH3)を求める第2還元剤供給量算出部57と、
F′
NH3=10
−6×C
NH3×F
GAS×(1−C
H2O) ・・・(9)
上記求められた両アンモニア供給量(F
NH3,F′
NH3)を比較し、通常は、排ガス量に基づくアンモニア供給量(F
NH3)を選択するが、当該排ガスに基づくアンモニア供給量(F
NH3)が規制値に基づくアンモニア供給量(F′
NH3)を超えた場合に、規制値に基づくアンモニア供給量(F′
NH3)を選択する還元剤供給量選択部58と、
処理経路部出口側に設けられたNOx濃度計46で計測された排ガス中のNOx濃度(C
NOx−s)を下記(10)式に代入して計算によるNOx濃度(C
NOx−in)を補正する補正濃度(C
NOx−in−M)に基づき脱硝率xを補正する脱硝率補正部59とが具備されている。なお、C
NOx−sとして、10秒〜1時間の移動平均値を採用することもできる。
【0046】
C
NOx−in−M=(C
NOx−s/C
NOx−out)×C
NOx−in ・・・(10)
勿論、上記還元剤制御部34には、各計測機器で計測された温度、NOx濃度、排ガス量、水量、空気量、酸素濃度、水分などの各計測値が入力されるとともに、ここで求められたアンモニア供給量がアンモニアの供給量を制御する流量制御弁33に出力されている。
【0047】
上記還元剤供給方法によると、焼却炉から排出される排ガス中に、還元剤を供給して窒素酸化物の濃度を低減させる際に、供給する還元剤の量を、焼却炉から排出される排ガス量に基づき求めるようにしたので、すなわち計測器を用いることなく焼却炉内での窒素酸化物濃度を求めることができるので、適正な還元剤の供給量が得られる。さらに、還元剤の供給量を求める際に、供給量がその規制値を超えるような場合には、この規制値に基づく還元剤の供給量を優先するようにしたので、還元剤の供給量が規制値を超える場合に生じる弊害、例えば還元剤がアンモニアである場合の白煙の発生を確実に防止することができる。具体的な数値データを示すと、
図4のようになる。すなわち、
図4から、リークアンモニア濃度(NH
3リーク量)が規制値である10ppm以下を保った状態で、焼却炉出口側における窒素酸化物濃度(例えば、1h移動平均値)が安定的に40ppm以下に維持されていることが分かる。
【0048】
ところで、上記実施例では、還元剤の供給手前位置である脱硝部入口側でのNOx濃度を求める際に、(1)式を用いたが、焼却炉出口側の酸素濃度を考慮した場合、特に、
図1の破線にて示すように、第3煙道15の出口側(または第2煙道14内や第3煙道15内)に設けたレーザ式酸素濃度計49(49′)により、直接、酸素濃度(wet値)(C
O2)を計測している場合には、下記(11)式を用いてもよい。
【0049】
C
NOx−in=B1×F
GAS+B2×C
O2+B3 ・・・(11)
[但し、(11)式中、B1,B2およびB3は定数]