【実施例1】
【0028】
図1は、本実施例に係る磁気質判別装置1による磁気質判別方法を説明するための模式図である。
図1(b)は磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)は保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示している。
【0029】
図1(b)に示すように、磁気質判別装置1は、装置上方を搬送される紙葉類100に含まれる磁性体を着磁するための着磁ユニット3と、紙葉類100に含まれる磁性体の磁気を検知するための磁気検知ユニット2とを有している。
【0030】
紙葉類100は、図示しない搬送機構によって、搬送路を
図1(b)に示す矢印400の方向へ搬送される。磁気質判別装置1は搬送路の下方に設置され、磁気質判別装置1内では、着磁ユニット3が磁気検知ユニット2より搬送方向上流側に配置されている。紙葉類100に含まれる磁性体は着磁ユニット3の上方を通過する際に着磁される。そして、その後、紙葉類100がさらに搬送されて、磁気検知ユニット2の上方を通過する際に磁性体を検知する信号が取得され、得られた検知信号から磁性体の種類が判別される。
【0031】
着磁ユニット3は着磁磁石20を含み、磁界の方向が
図1(b)に破線矢印で示す方向となるように着磁磁界を発生させる。着磁磁界は、判別対象とする磁性体の全てを飽和磁化状態に着磁する磁界強度を有している。具体的には、判別対象とする磁性体のうち最大の保磁力を有する高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁するため、着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体の保磁力の1.5倍以上とする。ただし、完全に飽和磁化状態とするためには、着磁磁界の磁界強度は、高保磁力磁性体の保磁力の3倍以上とすることが好ましい。
【0032】
なお、磁性体検知時に、保磁力の異なる各磁性体の磁化方向を異なる方向とすることができれば、高保磁力磁性体を完全な飽和磁化状態に着磁する必要はなく、飽和磁化状態に近い状態に着磁できればよい。詳細については後述する。
【0033】
磁気検知ユニット2は、バイアス磁界を発生させるためのバイアス磁石30と、バイアス磁界内を通過する磁性体を検知して信号を出力する磁気センサ10とを有している。バイアス磁石30は、その周囲に
図1(b)に破線矢印で示すようにバイアス磁界を発生させる。磁気検知ユニット2では、磁気センサ10が、紙葉類100が搬送される搬送面(XY平面)と角度を成すように傾いた状態で配置されることを特徴としている。このような構成を有することにより、磁気センサ10からは、磁性体の磁気量に応じた検知信号が出力される。なお、本実施例では、磁気センサ10が1つの磁気検出素子を含む場合を示すが、磁気センサ10が2つの磁気検出素子を含む態様であっても構わない。磁気センサ10は、磁性体が通過することにより、
図1(b)で上下方向に揺らぐバイアス磁界の変化量を検出するように設置されている。例えば、磁気検出素子として磁気抵抗素子を利用して、この磁気抵抗素子の抵抗値の変化を電圧値の変化として出力し、この電圧値を磁性体の検出信号として利用する。このような磁気量検知型の磁気検知ユニット2の構成、機能及び動作については、例えば、日本特許第4894040号公報に開示されているので詳細な説明は省略する。
【0034】
磁気検知ユニット2で発生させるバイアス磁界の磁界強度についても、着磁磁界の磁界強度と同様に、判別対象とする磁性体の保磁力に応じて設定される。
図2は、磁気質判別装置1が判別対象とする低保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び高保磁力磁性体の3種類の磁性体の
飽和磁化曲線を模式的に示したものである。バイアス磁界の磁界強度は、中保磁力磁性体の保磁力602と高保磁力磁性体の保磁力603との間で、低保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁しながら中保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁することのないように設定される。例えば、中保磁力磁性体の保磁力602の1.5倍となるように設定する。なお、上述した着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度は、
図2の点601に対応する。
【0035】
次に、
図1(b)に示す磁気質判別装置1によって、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、及び低保磁力磁性体の各磁性体を判別する方法について説明する。なお、以下では、磁界の方向を図中矢印と角度によって説明する。角度については、
図1(a)右図に示すように、搬送方向400と一致するY軸正方向を0度として、搬送路上方となるZ軸正方向を90度、搬送方向400の逆方向となるY軸負方向を180度として表す。また、同じくY軸正方向を0度として、搬送路下方となるZ軸負方向を−90度、Y軸負方向を−180度として表すこととする。
【0036】
着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度は、例えば、
図1(b)に示す着磁磁石20のS極側かつ搬送方向側のエッジに対応する搬送路上の位置P1で、高保磁力磁性体の保磁力(3000Oe)の1.5倍の強度(4500G)であるものとする。また、例えば、磁気検知ユニット2におけるバイアス磁界の磁界強度は、磁気センサ10により各磁性体の磁気を検知する搬送路上の位置P4で、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)の1.5倍(450G)であるものとする。
【0037】
磁気センサ10により磁性体の磁気を検知する位置P4では、バイアス磁界の磁界方向302が30〜60度の間に設定される。位置P1の着磁磁界の磁界方向201は判別対象とする磁性体の保磁力に基づいて設定されるが、例えば、高保磁力磁性体を判別対象とする場合には−100〜−170度の範囲内となるように設定される。以下では、位置P1の磁界方向が−160度であるものとして説明する。
【0038】
紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体(3000Oe)である場合には、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、着磁磁界の磁界強度(4500G)が強力であるため、
図1(b)に示す位置P1を通過する際に、飽和磁化状態又は飽和磁化状態に近い状態に着磁される。このとき、
図1(a)に示すように、高保磁力磁性体の磁化方向501aは、位置P1における着磁磁界の磁界方向201と同じ方向(−160度付近)となる。高保磁力磁性体は、その磁化方向が−150〜−170度の間で飽和磁化状態となる。
【0039】
紙葉類100は、
図1(b)に示す位置P1を通過して、さらに搬送方向400へ搬送されるが、着磁磁界の磁界強度は徐々に弱まるため、この影響を受けることはない。このため、高保磁力磁性体の磁化状態は変化せず、位置P2を通過する際の高保磁力磁性体の磁化方向502aは、着磁位置P1での磁化方向501aを保った方向となる。
【0040】
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入しても、バイアス磁界の磁界強度(450G)が高保磁力磁性体の保磁力(3000Oe)の1/6以下と弱いため影響を受けることはない。このため、位置P3を通過する際の磁化方向503a及び位置P4を通過する際の磁化方向504aについても、着磁時と同じ磁化方向501a(−160度付近)を保った方向となる。
【0041】
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、
図1(b)に示すように、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、高保磁力磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁される。このときの中保磁力磁性体の磁化方向501bは、高保磁力磁性体の場合と同様に、位置P1での着磁磁界の磁界方向201と同じ方向となる。ところが、中保磁力磁性体では、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続け、磁化方向は着磁磁界の方向に応じて変化する。そして、位置P2を通過するときには、中保磁力磁性体の磁化方向502bは着磁磁界の磁界方向202と同じ方向(180度付近)となる。更に、搬送されると着磁磁界の磁界方向が180度から170度の方向に変化しながら磁界強度は減衰し、中保磁力磁性体の磁化への作用は無くなる。
【0042】
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入すると、ここでもバイアス磁界による影響を受ける。位置P3では、位置P3のバイアス磁界の磁界方向301と一致する方向へ向けて、位置P2での磁化方向502bから僅かに回転した磁化方向503bとなる。そして、位置P4でも該位置でのバイアス磁界の方向302と一致する方向へ向けて、位置P3の磁化方向503bから僅かに回転した磁化方向504bとなる。ただし、バイアス磁界の磁界強度(450G)は、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)を飽和磁化状態にする磁界強度より小さいために、中保磁力磁性体の最終的な磁化方向は、着磁磁界を抜けるときの磁化方向502b(180度付近)と位置P4でのバイアス磁界の磁界方向302(30〜60度)との間の磁化方向504bとなる。例えば、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504bは120度付近となる。
【0043】
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、
図1(b)に示すように、着磁ユニット3の上方を搬送方向400へ搬送されると、他の磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁される。このときの低保磁力磁性体の磁化方向501cは、他の磁性体と同様に、位置P1での着磁磁界の磁界方向201と同じ方向となる。ところが、低保磁力磁性体は保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続け、磁化方向は着磁磁界の磁界方向に応じて変化する。このため、中保磁力磁性体と同様に、位置P2を通過するときの磁化方向502cは、着磁磁界の磁界方向202と同じ方向(180度付近)となる。
【0044】
紙葉類100がさらに搬送されて、バイアス磁界に進入すると、ここでもバイアス磁界による影響を受ける。位置P3では、低保磁力磁性体の磁化方向502cは該位置でのバイアス磁界の磁界方向301と同じ磁化方向503cとなり、位置P4でもバイアス磁界の磁界方向302と同じ磁化方向504cとなる。バイアス磁界の磁界強度(450G)が低保磁力磁性体の保磁力(50Oe)より十分に大きく、低保磁力磁性体が各位置で飽和磁化状態となるために、各位置での低保磁力磁性体の磁化方向は、各位置でのバイアス磁界の方向と一致する方向となる。
【0045】
磁性体を飽和磁化状態とするためには、保磁力の3倍の磁界強度が必要とされている。このため、磁気質判別装置1では、磁気センサ10による磁気を検知する位置P4でのバイアス磁界の磁界強度を、判別対象とする低保磁力磁性体の保磁力の3倍以上かつ中保磁力磁性体の保磁力の2倍以下としている。ただし、中保磁力磁性体の保磁力に相当する磁界の近傍を除く。このバイアス磁界では中保磁力の磁性体の出力が0となる為である。例えば、保磁力50Oeの低保磁力磁性体を飽和磁化状態としながら、保磁力300Oeの中保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁することがないように、磁界強度を450Oeに設定する。これにより、低保磁力磁性体の位置P4での磁化方向504cを、位置P4でのバイアス磁界方向302と同じ方向とすることができる。これに対して、中保磁力磁性体の磁化方向はバイアス磁界内で変化するが、変化後もバイアス磁界の磁化方向302と一致しない方向となるように着磁磁界が設定されている。このため、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504bと低保磁力磁性体の磁化方向504cとを異なる方向とすることができる。
【0046】
また、高保磁力磁性体では、バイアス磁界による影響を受けることなく着磁磁界の磁界方向201と同じ磁化方向501aを維持するが、着磁磁界の磁界方向201が、位置P4での中保磁力磁性体の磁化方向504b及び低保磁力磁性体の磁化方向504cと異なる方向となるように設定されているので、位置P4での高保磁力磁性体の磁化方向504aを、他の磁性体の磁化方向504b及び504cと異なる方向とすることができる。なお、高保磁力磁性体の磁化方向504aを、中保磁力磁性体及び低保磁力磁性体の磁化方向504b、504cと異なる方向とすることができれば、高保磁力磁性体を飽和着磁磁化状態に着磁する必要はなく、飽和着磁状態に近い状態に着磁する態様であっても構わない。
【0047】
このように、磁気質判別装置1では、磁気検知ユニット2によって磁気を検知する搬送路上の位置P4で、高保磁力磁性体の磁化方向504a、中保磁力磁性体の磁化方向504b及び低保磁力磁性体の磁化方向504cが全て異なる方向となる点を1つの特徴としている。
【0048】
図1に示す磁気質判別装置1では、着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁可能な磁界強度として、バイアス磁界の磁界強度を高保磁力磁性体の磁化状態に影響しない磁界強度としている。また、高保磁力磁性体を飽和磁化状態に着磁する位置P1の着磁磁界の磁界方向201と、磁性体を検知する位置P4でのバイアス磁界の磁界方向302とを、これらの方向が原点に対して対向する象限内にある様に設定している。さらに、位置P4でのバイアス磁界の磁界強度を、低保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化する強度かつ中保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化しない強度としている。以上の通り設定することにより、位置P4において、高保磁力磁性体の磁化方向504aを着磁磁界の磁界方向201と同じ方向として、低保磁力磁性体の磁化方向504cをバイアス磁界の磁界方向302として、中保磁力磁性体の磁化方向504bを高保磁力磁性体の磁化方向504aと低保磁力磁性体の磁化方向504cとの間の方向とすることができる。なお、上述した着磁磁界の磁界方向及び磁界強度を実現することができれば、着磁ユニット3に含まれる磁石20の種類、数及び形状等は特に限定されない。
【0049】
次に、このように、それぞれ異なる磁化方向に磁化された高保磁力磁性体、中保磁力磁性体及び
低保磁力磁性体を磁気検知ユニット2の磁気センサ10で検知した際に得られる検知信号について説明する。
【0050】
図3は、磁化方向507〜510に磁化された磁性体の直下近傍(約0.5mm位置)におけるZ軸方向の磁界分布を示している。磁化方向が上向き507のときにはZ軸方向の磁界分布は
図3(a)の様になり、磁化方向が左向き508のときにはZ軸方向の磁界分布は
図3(b)の様になり、磁化方向が斜め方向509、510の場合には
図3(c)、(d)の様になる。バイアス磁石30によって発生するバイアス磁界中を、
図3に示すように磁化された磁性体が通過するとバイアス磁界の方向及び密度に変化が生ずる。磁気センサ10は、このバイアス磁界の変化を検知信号として出力する。なお、
図3の左方向が
図1の180度方向、
図3の上方向が
図1の90度方向に対応している。
【0051】
図4は、バイアス磁界の変化と磁気センサ10による検知信号との関係を説明する図である。
図4では、通過する磁性体の磁化方向を上部に示し、バイアス磁界の磁力線の変化を下部に示している。
図4(a)に示すように、磁気センサ10が磁性体を検知する位置P4を磁化方向505の磁性体が通過すると、磁力線は破線で示した初期状態から実線で示すように上方向に変化する。このとき、磁気センサ10からはバイアス磁界の磁界方向の変化及び磁束密度の変化に応じた正出力の検知信号が得られるように設定されている。これに対して、
図4(b)に示すように、磁気センサ10が磁性体を検知する位置P4を磁化方向506の磁性体が通過すると、磁力線は破線で示した初期状態から実線で示したように下方向に変化する。このとき、磁気センサ10からはバイアス磁界の磁界方向の変化及び磁束密度の変化に応じた負出力の検知信号が得られるように設定されている。
【0052】
図5は、
図1(b)に示す磁気質判別装置1で、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103及び積層磁性体104、105を磁気検知ユニット2で検知した際の検知信号の波形を示している。縦軸が磁気センサ10からの出力、横軸が時間を示しており、各磁性体を含む紙葉類100が位置P4を通過した際に磁気センサ10から出力される検知信号が
図5に示す波形となる。
図5では、各図の上部に各検知信号に対応する各磁性体101〜105を示している。
【0053】
図5(c)に示す低保磁力磁性体103では、略全域で正の出力を示し、波形はピーク位置に対して略左右対称な波形となる。低保磁力磁性体103については、バイアス磁界により飽和磁化される状態にあるため、磁気センサ10による検知信号の波形は、低保磁力磁性体が発する磁界によるものとはならない。低保磁力磁性体は透磁率が高く磁力線を集めるように作用することから、低保磁力磁性体が位置P4に近づくほど磁気センサ10から出力される検知信号の振幅が大きくなる。このため、低保磁力磁性体を検知して得られる検知信号は、位置P4近傍を通過する際に最大値を示して、その前後で略対称な波形を示す。なお、中保磁力磁性体及び高保磁力磁性体に関しては、着磁方向が上向き方向(80〜100度)以外であれば発生磁界が非対称であるため、検知信号は必ず最大値の前後にて非対称となる。
【0054】
図5(b)は、中保磁力磁性体102の検知信号を示している。
図1(b)に示す磁気質判別装置1の位置P4では、中保磁力磁性体の磁化方向は左斜め上方を向いている。このときの中保磁力磁性体の直下近傍でのZ軸方向の磁界分布は
図3(d)のようになっており、この磁界分布の形を右からたどるように磁気信号が検知される。その結果、
図5(b)に示すように、正の出力を示した後に負の出力を示す検知信号となる。このように、中保磁力磁性体102の検知信号では正の出力の割合が大きくなる。低保磁力磁性体103と同様に略全域で正の出力となるが、正の出力の波形はピーク位置に対して左右非対称な波形となることから、中保磁力磁性体102の検知信号と低保磁力磁性体103の検知信号とを区別することができる。
【0055】
図5(a)は、高保磁力磁性体101の検知信号を示している。
図1(b)に示す磁気質判別装置1の位置P4では、高保磁力磁性体の磁化方向は左斜め下方を向いている。このときの高保磁力磁性体の直下近傍でのZ軸方向の磁界分布は
図3(c)のようになっており、この磁界分布の形を右からたどるように磁気信号が検知される。その結果、
図5(a)に示すように、正の出力を示した後に負の出力を示す検知信号となる。中保磁力磁性体102と同様に正の出力で左右非対称の波形を示すが、高保磁力磁性体101の検知信号では
図5(b)に示す中保磁力磁性体102の検知信号に比べて負の出力の割合が大きくなることから、高保磁力磁性体101の検知信号と、低保磁力磁性体103及び中保磁力磁性体102の検知信号とを区別することができる。
【0056】
図5(d)に示す高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104では、正の出力を示した後に負の出力を示す。積層磁性体104では、高保磁力磁性体101の検知信号と中保磁力磁性体102の検知信号を加算した波形となる。積層磁性体104の検知信号は、
図5(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方に振れる出力を示す。しかし、積層磁性体104の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり、正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体104の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。判別対象に含まれる積層磁性体が1種類のみで、高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104である場合は、この判別方法により当該積層磁性体104が紙葉類100上の所定の場所に存在していることを認識できる。
【0057】
図5(e)に示す高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105では、正の出力を示した後に負の出力を示す。積層磁性体105では、高保磁力磁性体101の検知信号と低保磁力磁性体103の検知信号を加算した波形となる。積層磁性体105の検知信号は、
図5(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方に振れる出力を示す。しかし、積層磁性体105の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり、正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体105の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。判別対象に含まれる積層磁性体が1種類のみで、高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105である場合は、この判別方法により当該積層磁性体105が紙葉類100上の所定の場所に存在していることを認識できる。
【0058】
この積層磁性体の判別方法において、判別すべき積層磁性体が、高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102との組合せ、又は高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103との組合せのうち、
1枚の紙葉類100の上に両組合せが共存する場合を除き、検知された積層磁性体の信号は、積層磁性体が高保磁力磁性体101と中保磁力磁性体102からなる積層磁性体104、又は高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103からなる積層磁性体105であると判断できる。
【0059】
図5の(d)および(e)での積層磁性体の検知信号の説明では、共に高保磁力磁性体101が上層にある場合について説明したが、高保磁力磁性体101が下層にある積層磁性体の検知信号もそれぞれ同様となり、積層の位置関係には影響されない。
【0060】
なお、
図5に示すように、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で区別可能な波形を有する検知信号を得るためには、例えば、
図1に示すように、着磁磁石20のエッジ部分で着磁磁界の方向201を−160度付近として、磁気センサ10に対応する位置P4のバイアス磁界の方向302を30〜60度とする。
【0061】
ただし、着磁位置P1における着磁磁界の方向201、磁気を検知する検知位置P4におけるバイアス磁界方向302及び搬送方向400の関係については、
図1に示す関係に限定されるものではない。
図6は、着磁磁界の磁界方向、バイアス磁界の磁界方向及び搬送方向が異なる磁気質判別装置1について説明する図である。
図6(a)及び(c)は紙葉類100を順方向搬送する場合の関係を示し、同図(b)及び(d)は紙葉類100を逆方向搬送する場合の関係を示している。ここで、順方向搬送とは搬送方向400とバイアス磁界の磁界方向301、305との間の角度が90度以下となる場合を言い、逆方向搬送とは搬送方向400とバイアス磁界の磁界方向303、306との間の角度が90度以上となる場合を言う。
【0062】
図6(a)に示す順方向搬送は、
図1に対応するもので、搬送方向400を0度方向、検知位置P4のバイアス磁界の方向301を30〜60度とする場合である。順方向搬送では、
図6(a)左図に示すように、着磁磁界の方向201を−100〜−170度の間に設定する。
【0063】
図6(b)に示す逆方向搬送の磁気検知ユニット2は、同図(a)に示す順方向搬送の磁気検知ユニット2をZ軸周りに180度反転して設置した状態にある。
図6(b)に示す逆方向搬送の場合には、検知位置P4のバイアス磁界の磁界方向303が、順方向搬送の場合の磁界方向301をZ軸に対して反転した方向、すなわち120〜150度の方向となる。そして、着磁位置P1での着磁磁界の磁界方向203についても、同様に、順方向搬送の場合の磁界方向201をZ軸に対して反転した方向、すなわち−10〜−80度となる。このような着磁磁界の磁界方向203を実現するため、着磁ユニット3に含まれる着磁磁石20を搬送路の上方に設置している。
【0064】
図6(c)に示す順方向搬送の磁気検知ユニット2では、着磁磁界の磁界方向201は同図(a)に示す磁気検知ユニット2
の着磁磁界の方向と同じ方向(−100〜−170度)であるが、バイアス磁界の磁界方向305が、同図(a)に示す磁気検知ユニット2のバイアス磁界の磁界方向301をY軸に対して反転した方向、すなわち−30〜−60度となっている。また、
図6(d)に示す逆方向搬送の磁気検知ユニット2では、着磁磁界の磁界方向203は同図(b)に示す磁気検知ユニット2と同じ方向(−10〜−80度)であるが、バイアス磁界の磁界方向306が、同図(b)に示す磁気検知ユニット2のバイアス磁界の磁界方向303をY軸に対して反転した方向、すなわち−120〜−150度となっている。
【0065】
このように、搬送方向400を0度として、バイアス磁界の磁界方向と着磁磁界の磁界方向の組み合わせを、
図6(a)に示す30〜60度と−100〜−170度、同図(b)に示す120〜150度と−10〜−80度、同図(c)に示す−30〜−60度と−100〜−170度、又は同図(d)に示す−120〜−150度と−10〜−80度に設定すれば、
図5に示すように、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で区別可能な波形を有する検知信号を得ることができる。
【0066】
また、
図6では、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102及び低保磁力磁性体103をそれぞれ判別する場合を示したが、例えば、低保磁力磁性体103と、その他の磁性体とを判別できればよい場合には、着磁磁界の磁界方向として設定可能な角度範囲が緩和される。
図7は、
図6に示す磁気質判別装置1で、低保磁力磁性体103と、その他の磁性体、すなわち高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102及び積層磁性体104とを判別する場合の着磁磁界の磁界方向とバイアス磁界の磁界方向との関係を説明する図である。
図7(a)〜(d)が、それぞれ
図6(a)〜(d)に対応している。
【0067】
具体的には、
図6(a)に示す順方向搬送の磁気質判別装置1で、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別する場合には、
図7(a)に示すように、着磁磁界の磁界方向を80〜100度以外の方向に設定すればよい。同様に、
図6(b)〜(d)に示す磁気質判別装置1でも、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別する場合には、
図7(b)〜(d)に示すように、着磁磁界の磁界方向を80〜100度以外の方向に設定すればよい。このように設定することで、
図5に示すように、低保磁力磁性体103では正出力のみを示し、その他の磁性体では一部又は全部が負出力となるので、これらを判別することが可能となる。
【0068】
すなわち、搬送方向400を0度として、バイアス磁界の磁界方向を30〜60度(
図7(a))又は120〜150度(
図7(b))に設定して、着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定するか、又はバイアス磁界の磁界方向を−30〜−60度(
図7(c))又は−120〜−150度(
図7(d))に設定して着磁磁界の磁界方向を80〜100度を除く角度範囲に設定すれば、低保磁力磁性体103とその他の磁性体とを判別することができる。
【0069】
図8は、
図6(b)に示す逆方向搬送の場合の磁気質判別方法を説明するための模式図である。
図8(b)は、磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)には、保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示している。装置構成としては、着磁磁石20を含む着磁ユニット3が搬送路の上方に配置される点と、磁気センサ10及びバイアス磁石30を含む磁気検知ユニット2がZ軸周りに反転した形で配置される点とが、
図1に示す磁気質判別装置1と異なっている。
図8(b)に示す磁気質判別装置1では、着磁磁界の磁界方向203及びバイアス磁界の磁界方向303が、
図1(b)に示す方向201及び302をZ軸に対して反転した方向となる。
【0070】
紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体である場合には、着磁ユニット3の下方を搬送方向400へ搬送されると、着磁磁界の磁界強度(4500G)が強力であるため、
図8(b)に示す位置P1を通過する際に、飽和磁化状態又は飽和磁化状態に近い磁化状態に着磁される。このとき、
図8(a)に示すように、高保磁力磁性体の磁化方向511aは、位置P1における着磁磁界の方向203と同じ方向(−20度付近)となる。紙葉類100が搬送方向400へ搬送されても、これ以降は、高保磁力磁性体の磁化状態を変えるほどの磁界が存在しないため、その後の磁化方向512a、513a及び514aは、着磁時の磁化方向511a、すなわち着磁磁界の磁界方向203と同じ方向のままとなる。
【0071】
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、位置P1で飽和磁化状態に着磁される。ところが、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間に、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続けて、位置P2での磁化方向512b、位置P3での磁化方向513bが変化する。具体的には、位置P2での磁化方向512bは位置P2の磁界方向204となり、位置P3での磁化方向513bは位置P2の磁界方向204と位置P3のバイアス磁界の磁界方向304との間の方向となる。そして、最終的な磁化方向514bは、位置P3での磁化方向513bと、その後の位置P4のバイアス磁界の磁界方向303との間の方向となる。なお、
図8では磁化の強度は示さず方向のみを示しているが、位置P4の磁界方向303と位置P3での磁化方向513bとが逆向きであるために中保磁力磁性体の保磁力が弱められ、
図9(b)に示すように中保磁力磁性体の検知波形は振幅が小さくなる。
【0072】
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続け、各位置P1〜P4での磁化方向511c〜514cは、その位置での磁界方向203、204、304及び303と同じ方向となる。
【0073】
このように、逆方向搬送の場合も、
図1に示す順方向搬送の場合と同様に、磁性体を検知する検知位置P4で、高保磁力磁性体の磁化方向514a、中保磁力磁性体の磁化方向514b及び低保磁力磁性体の磁化方向514cを全て異なる方向とすることができる。これにより、
図5に示す順方向搬送の検知信号と同様に、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)間で異なる波形の検知信号を得ることができる。
【0074】
図9は、
図8(b)に示す逆方向搬送の磁気質判別装置1で、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103及び積層磁性体104、105を磁気検知ユニット2で検知した際の検知信号の波形を示している。縦軸が磁気センサ10の出力、横軸が時間を示しており、各磁性体を含む紙葉類100が位置P4を通過した際に磁気センサ10から出力される検知信号が
図9に示す波形となる。なお、
図9でも、
図5と同様に、各図の上部に検知信号に対応する各磁性体101〜105を示している。
【0075】
図9(c)に示す低保磁力磁性体103の検知信号の波形は、逆方向搬送の場合でも、順方向搬送の場合と同様に、略全域で正の出力を示し、波形はピーク位置に対して略左右対称な波形となる。
【0076】
図9(b)に示す中保磁力磁性体102の検知信号では、略全域で正の出力を示す。この検知信号は、低保磁力磁性体103と同様に正の出力を示すが、ピーク位置に対して左右非対称な波形となることから、低保磁力磁性体103の検知信号と区別することができる。
【0077】
図9(a)に示す高保磁力磁性体101の検知信号では、負の出力を示した後に正の出力を示す。この検知信号は、検知信号の大半で負の出力を示すことから、低保磁力磁性体103及び中保磁力磁性体102の検知信号と区別することができる。
【0078】
図9(d)及び(e)に示す積層磁性体104、105では、負の出力を示した後に正の出力を示す。
図9(d)の積層磁性体104では、高保磁力磁性体101の出力と中保磁力磁性体102の波形を加算した波形となり、同図(e)の積層磁性体105では、高保磁力磁性体101と低保磁力磁性体103の波形を加算した波形となる。積層磁性体104、105の検知信号は、
図9(a)に示す高保磁力磁性体101と同様に正負両方の出力を示す。しかし、積層磁性体104、105の検知信号では高保磁力磁性体101の検知信号と異なり正負の振幅が略同じ大きさとなることから、積層磁性体104、105の検知信号と高保磁力磁性体101の検知信号とを区別することができる。
【0079】
順方向搬送ではバイアス磁界内に進入してすぐに磁気を検知する位置P4に到達するが、逆方向搬送では、位置P4に至るまでの間に中保磁力磁性体102に対するバイアス磁界の影響が大きくなる。具体的には、バイアス磁界の影響を受けて中保磁力磁性体102の磁化量が減少し、
図5(b)及び
図9(b)の検知信号の比較から分かるように、逆方向搬送の検知信号は順方向搬送の検知信号より振幅が小さい波形となる。なお、高保磁力磁性体101については、保磁力に比べてバイアス磁界の磁界強度が小さいために、バイアス磁界の影響を受けることはない。
【0080】
このように、順方向搬送と逆方向搬送とで磁性体の検知信号波形が異なるが、いずれの場合でも、高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103、積層磁性体(104又は105)で異なる検知信号を示すため、検知信号に基づいて、各磁性体101〜103のそれぞれ及び、104又は105を判別することができる。
【0081】
検知信号に基づく高保磁力磁性体101、中保磁力磁性体102、低保磁力磁性体103のそれぞれ及び、積層磁性体(104又は、105)の判別は、検知信号の振幅とピーク位置に対する信号波形の対称性とに基づいて判定する。例えば、負側のピーク位置の振幅が所定値より大きい場合は、負の出力が得られた時間と正の出力が得られた時間との割合から、検知信号の大半が負の出力であれば高保磁力磁性体101と判定し、そうでなければ積層磁性体104と判定する。また、負側のピーク位置の振幅が所定値より小さい場合は、正側の波形がピーク位置に対して略対称な波形であれば低保磁力磁性体103と判定し、非対称な波形であれば中保磁力磁性体102と判定する。なお、信号波形の対称性を判定する方法は特に限定されないが、例えば、ピーク位置から、両方向で振幅が0(ゼロ)となる位置までの横軸方向の距離を比較して対称性を判定してもよいし、元波形とピーク位置を軸として左右反転した波形との相関性から対称性を判定しても構わない。
【0082】
本実施例に係る磁気質判別装置1によれば、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体及び積層磁性体を判別できるので、紙葉類100の種類によって、含まれる磁性体が異なる場合でも、各紙葉類100に含まれる磁性体の種類を判別して、紙葉類100の真偽判定を行うことができる。また、紙葉類100に、各磁性体によりパターンが描かれている場合でもこれを認識することができる。また、各磁性体の組み合わせによりコードが形成されている場合でも、各磁性体を正確に判別してコードを認識することができる。
【0083】
上述してきたように、本実施例によれば、着磁ユニット3による着磁磁界の磁界強度及び磁界方向と、磁気検知ユニット2によるバイアス磁界の磁界強度及び磁界方向とを適切に設定することにより、磁気検知ユニット2により磁気を検知する位置で、各磁性体の磁化方向を異なる方向とすることができるので、磁気を検知した検知信号の特徴から各磁性体を判別することができる。
【0084】
例えば、着磁磁界の磁界強度を、高保磁力磁性体を飽和磁化状態にする磁界強度として、バイアス磁界の磁界強度を、低保磁力磁性体を飽和磁化状態としてかつ中保磁力磁性体を飽和磁化状態に磁化することのない磁界強度にすると共に、磁気検知ユニット2によって磁性体を検知する位置のバイアス磁界の方向を、各磁性体を着磁する磁界の方向と異なる方向に設定することにより、検知信号の振幅及び波形から高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体及び積層磁性体を判別することができる。
【0085】
また、例えば、1つの着磁磁石20のみで上述した着磁磁界を実現して、1つの磁気センサ10により検知信号を得て各磁性体を判別することができるので、磁気質判別装置1を小型かつ安価な装置とすることができる。
【実施例2】
【0086】
次に、実施例1と同様の原理で保磁力の異なる磁性体を検出する磁気質判別装置1の他の例について説明する。
図10は、本実施例に係る磁気質判別装置1による磁気質判別方法を説明するための模式図である。
図10(b)は磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)は保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示し、同図(c)は着磁ユニット3における着磁磁界の磁界強度及び磁界の向きを示している。
【0087】
このように、本実施例では、着磁ユニット3が磁石20及び導磁体(ヨーク)21を含む点が実施例1と異なっている。例えば鉄板等、透磁率の高い材料を導磁体21として利用する。なお、以下では、実施例1と重複する説明は省略して、本実施例に係る特徴について説明する。
【0088】
図10(b)に示すように、磁気質判別装置1は、装置上方を搬送される紙葉類100に含まれる磁性体を着磁するための着磁ユニット3と、紙葉類100に含まれる磁性体の磁気を検知するための磁気検知ユニット2とを有している。
【0089】
着磁ユニット3は着磁磁石20と導磁体21とを含む。着磁磁石20は、紙葉類100の搬送方向400に垂直な側方(X軸方向)から見た側面形状に特徴を有している。具体的には、
図1に示す矩形側面の着磁磁石20の上面側で搬送方向下流側(図面右上隅部)の一部を切り欠いた側面形状を有し、搬送面(XY平面)と平行な搬送方向上流側の第1磁極面と、搬送面と平行な搬送方向下流側の第2磁極面とが、斜面で接続された形状となっている。上流側の第1磁極面よりも下流側の第2磁極面の方が搬送面から離れた位置にあり、搬送方向に向けて搬送面からの距離が徐々に拡大するように設けられた斜面が、上流側の第1磁極面と下流側の第2磁極面とを接続している。
【0090】
導磁体21は、着磁磁石20から搬送方向下流側に離れた位置に配置されており、縦方向(Z軸方向)に長い矩形の側面形状を有している。導磁体21は、搬送面と平行な上面と搬送面との間の距離が、着磁磁石20の搬送方向上流側の第1磁極面よりも離れた位置となりかつ搬送方向下流側の第2磁極面よりも近い位置となるように配置されている。導磁体21の底面は着磁磁石20の底面と同じ高さにある。
【0091】
着磁ユニット3は、位置P1、すなわち第1磁極面の搬送方向下流側端部に対応する位置で着磁磁界の磁界強度が最大となるように構成されている。具体的には、着磁磁石20及び導磁体21により、搬送路上の位置P1の磁界強度が高保磁力磁性体の保磁力(3000Oe)の1.5倍以上(4500G以上)となるように設定されている。また、着磁ユニット3は、位置P1よりも搬送方向下流側の位置P2の磁界強度が、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)の1.5倍以上かつ高保磁力磁性体の保磁力の1倍以下(450〜3000G)となるように設定されている。すなわち、搬送路上の位置P1を含む第1磁界領域の磁界強度と、位置P1よりも搬送方向下流側にある位置P2を含む第2磁界領域の磁界強度とが所定の磁界強度となるように着磁ユニット3が構成されている。
【0092】
また、着磁ユニット3では、着磁磁石20及び導磁体21により、
図10(b)に破線の曲線矢印で示した方向に着磁磁界を発生させる。具体的には、位置P1での着磁磁界の磁界方向1201が−100〜−170度、位置P2での着磁磁界の磁界方向1202が100〜180度の間となるように着磁磁界を発生させる。 すなわち、搬送路上の位置P1を含む第1磁界領域の磁界方向と、位置P1よりも搬送方向下流側にある位置P2を含む第2磁界領域の磁界方向とが所定の磁界方向となるように着磁ユニット3が構成されている。例えば、位置P1での磁界方向1201が−120度近傍、位置P2での磁界方向1202が120度近傍であることが好ましい。以下では、位置P1での磁界方向1201を−120度、位置P2での磁界方向1202を120度であるものとして説明を続ける。
【0093】
図10(c)では、着磁ユニット3による着磁磁界の大きさを破線矢印の長さで示し、着磁磁界の向きを破線矢印の向きで示している。このように、着磁ユニット3では、着磁磁石20の搬送方向上流側にある第1磁極面から搬送方向下流側へ向かうにつれて着磁磁界の磁界強度が徐々に弱くなる。また、位置P1の磁界方向1201を−120度として、この位置から搬送方向下流側へ向かうにつれて、着磁磁界の磁界方向が−120度から−180度方向へ向けて図面上時計回りに徐々に回転する。そして、さらに搬送方向下流側へ向かうにつれて、着磁磁界の磁界方向が−180度(180度)から位置P2の磁界方向1202である120度方向へ向けて図面上時計回りに徐々に回転する。
【0094】
このように、本実施例では、着磁ユニット3によって発生させた着磁磁界が、搬送路上の位置P1を含む第1磁界領域と、位置P1よりも搬送方向下流側の搬送路上の位置P2を含む第2磁界領域とを含み、第1磁界領域及び第2磁界領域で磁界強度及び磁界方向が異なる点を1つの特徴としている。着磁ユニット3を構成する着磁磁石20及び導磁体21によって発生する着磁磁界は、搬送路上の位置P1から位置P2へ向かうにつれて、磁界強度が徐々に弱まると共に磁界方向が徐々に回転する。例えば、位置P1の磁界方向1201が−120度、位置P1の磁界強度が高保磁力磁性体の1.5倍以上、位置P2の磁界方向1202が120度、位置P2の磁界強度が中保磁力磁性体の保磁力の1.5倍以上かつ高保磁力磁性体の保磁力の1倍以下に設定される。
【0095】
この結果、
図10(a)に示すように、紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体である場合には、位置P1での高保磁力磁性体の磁化方向1501aが、位置P1における第1磁界領域の磁界方向1201と同じ方向(−120度付近)となる。紙葉類100はさらに搬送方向400へ搬送されるが、着磁磁界の磁界強度は徐々に弱まるため、高保磁力磁性体の磁化状態は変化せず、位置P2〜P4でも、高保磁力磁性体の磁化方向1502a、1503a、1504aは、位置P1での磁化方向1501aと同じ方向となる。
【0096】
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、高保磁力磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁されるため、磁化方向1501bは、第1磁界領域の磁界方向1201と同じ方向(−120度付近)となる。ところが、中保磁力磁性体は、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続ける。このため、位置P2を通過するときには、中保磁力磁性体の磁化方向1502bは第2磁界領域の磁界方向1202と同じ方向(120度付近)となる。紙葉類100がさらに搬送されるとバイアス磁界による影響を受けて、位置P3では、位置P3のバイアス磁界の磁界方向301の方向へ向けて、位置P2での磁化方向1502bから僅かに回転した磁化方向1503bとなる。そして、位置P4でも該位置でのバイアス磁界の磁界方向302へ向けて、位置P3の磁化方向1503bから僅かに回転した磁化方向1504bとなる。ただし、バイアス磁界の磁界強度(450G)は、中保磁力磁性体の保磁力(300Oe)を飽和磁化状態にする磁界強度より小さいために、中保磁力磁性体の最終的な磁化方向は、第2磁界領域の位置P2での磁化方向1502b(120度付近)と位置P4でのバイアス磁界の磁界方向302(30〜60度)との間の磁化方向1504bとなる。
【0097】
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、他の磁性体の場合と同様に位置P1で飽和磁化状態に着磁され、磁化方向1501cは、第1磁界領域の磁界方向1201と同じ方向(−120度付近)となる。ところが、低保磁力磁性体は保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界による影響を受け続ける。このため、中保磁力磁性体と同様に、位置P2を通過するときの磁化方向1502cは、第2磁界領域流域の磁界方向1202と同じ方向(120度付近)となる。紙葉類100がさらに搬送されるとバイアス磁界による影響を受けて、位置P3では、バイアス磁界の磁界方向301と同じ磁化方向1503cとなる。そして、位置P4でもバイアス磁界の磁界方向302と同じ磁化方向1504cとなる。バイアス磁界の磁界強度(450G)が低保磁力磁性体の保磁力(50Oe)より十分に大きく、低保磁力磁性体が各位置で飽和磁化状態となるために、各位置での低保磁力磁性体の磁化方向は、各位置でのバイアス磁界の方向と一致する方向となる。
【0098】
このように、本実施例でも、実施例1の場合と同様に磁気検知ユニット2による磁性体の検知位置P4で、各磁性体をそれぞれの保磁力に応じた磁化方向とすることができる。そして、実施例1で説明したように、搬送路を通過する磁性体を検知する信号から磁性体の種類を判別することができる。
【0099】
次に、位置P1での着磁磁界の磁界方向1201が−120度近傍、磁界方向1202が120度近傍であることが好ましいことの理由について説明する。
図10(a)に示したように、磁気検知ユニット2によって紙葉類100に含まれる磁性体を検知する位置P4では、高保磁力磁性体の磁化方向1504aは位置P1での第1磁界領域の磁界方向1201と同じ方向となり、中保磁力磁性体の磁化方向1504bは位置P2での第2磁界領域の磁界方向1202から僅かにバイアス磁界の磁界方向302の方向へ回転した方向となる。
【0100】
図11は、(a)〜(d)が高保磁力磁性体をそれぞれ磁化方向1507〜1510に磁化した際の磁性体の直下近傍(約0.5mm位置)におけるZ軸方向の磁界分布を示し、(e)〜(h)は中保磁力磁性体をそれぞれ磁化方向1511〜1514に磁化した際の磁性体の直下近傍(約0.5mm位置)におけるZ軸方向の磁界分布を示している。具体的には、
図11(a)の磁化方向1507が−180度、同図(b)の磁化方向1508が−160度、同図(c)の磁化方向1509が−120度、同図(d)の磁化方向1510が−90度である。また、
図11(e)の磁化方向1511が180度、同図(f)の磁化方向1512が160度、同図(g)の磁化方向1513が120度、同図(h)の磁化方向1514が90度である。位置P1での磁界方向1201を−180度、−160度、−120度、−90度とした場合に、位置P4で高保磁力磁性体の磁界分布が
図11(a)〜(d)に示す分布となり、位置P2での磁界方向1202を180度、160度、120度、90度とした場合に、位置P4での中保磁力磁性体の磁界分布が同図(e)〜(h)に示す分布と略同じ分布となる。そして、この磁界分布が磁気検知ユニット2によって検知されることになる。
【0101】
磁気検知ユニット2では、
図11(a)〜(d)に示す磁界分布の分布形状を左から右へたどるように、磁気信号が検知される。
図11(b)に示すように−160度の磁化方向1508に磁化された高保磁力磁性体では、負側の磁界分布に対応する磁気信号が検知された後に、正側の磁界分布に対応するオーバーシュートの磁気信号が検知される。このオーバーシュート分の磁気信号は、−160度の磁化方向1508に磁化した
図11(b)に示す磁界分布よりも、−120度の磁化方向1509に磁化した同図(c)に示す磁界分布の方が小さくなるので、磁化方向は−160度よりも−120度とする方が好ましい。
【0102】
同様に、磁気検知ユニット2では、
図11(e)〜(h)に示す磁界分布の分布形状を右から左へたどるように、磁気信号が検知される。
図11(f)に示すように160度の磁化方向1512に磁化された中保磁力磁性体では、正側の磁界分布に対応する磁気信号が検知された後に、負側の磁界分布に対応するオーバーシュートの磁気信号が検知される。このオーバーシュート分の磁気信号は、160度の磁化方向1512に磁化した
図11(f)に示す磁界分布よりも、120度の磁化方向1513に磁化した同図(g)に示す磁界分布の方が小さくなるので、磁化方向は160度よりも120度付近とする方が好ましい。
【0103】
なお、オーバーシュートのみを考慮した場合には、高保磁力磁性体では、磁化方向1509が−120度の
図11(c)よりも、磁化方向1510が−90度の同図(d)の方が好ましい。同様に、中保磁力磁性体では、磁化方向1513が120度の同図(g)よりも、磁化方向1514が90度の同図(h)の方が好ましい。しかし、第1磁界領域の磁界方向1201を−90度、第2磁界領域の磁界方向1202を90度に設定すると、高保磁力磁性体と中保磁力磁性体とを積層した積層磁性体を検知しようとした場合に、
図11(d)と同図(h)に示す磁界分布を加算した検知波形となるため、磁界分布が相殺され、積層磁性体を検知できなくなる。このため、本実施例では、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、高保磁力磁性体と中保磁力磁性体の積層磁性体のそれぞれを位置P4の検知信号に基づいて判別するために、位置P1での磁界方向1201を−120度付近、位置P2での磁界方向1202を120度付近としている。
【0104】
実施例1で
図6を参照しながら説明したように、本実施例においても、着磁磁界の磁界方向及びバイアス磁界の磁界方向が、
図10に示した例に限定されるものではない。
図12は、
図10に示した構成を
図6(a)と同様に示したものである。
図6(a)と同図(b)〜(d)との関係から明らかである通り、
図12に示す着磁ユニット3及び磁気検知ユニット2の配置位置や向きを
図6(b)〜(d)と対応するように変更した場合にも、
図10と同様に、保磁力に応じて磁性体を異なる方向に磁化することにより各磁性体の種類を判別することができる。
【0105】
実施例1で
図1及び
図8を参照しながら説明したように、本実施例に係る着磁磁界の磁界方向1201、1202、磁気を検知する検知位置P4におけるバイアス磁界の磁界方向302及び搬送方向400の関係についても、
図10に示す順方向搬送に限定されるものではなく、逆方向搬送の関係であっても構わない。
【0106】
図13は、逆搬送方向の場合の磁気質判別方法を説明するための模式図である。
図13(b)は磁気質判別装置1の概要を示し、同図(a)は保磁力が異なる3種類の磁性体の磁化状態を示している。装置構成としては、着磁ユニット3が搬送路の上方で、Y軸周りに反転した形で配置される点と、磁気検知ユニット2がZ軸周りに反転した形で配置される点とが、
図10に示す磁気質判別装置1と異なっている。
図13(b)に示す磁気質判別装置1では、着磁磁界の磁界方向1203、1204及びバイアス磁界の磁界方向303が、
図10(b)に示す着磁磁界の磁界方向1201、1202及びバイアス磁界の磁界方向302をそれぞれZ軸に対して反転した方向となる。
【0107】
紙葉類100に含まれる磁性体が高保磁力磁性体である場合には、紙葉類100が搬送方向400へ搬送されると、着磁磁界の磁界強度(4500G)が強力であるため、
図13(b)に示す位置P1を通過する際に、飽和磁化状態又は飽和磁化状態に近い磁化状態に着磁される。このとき、
図13(a)に示すように、高保磁力磁性体の磁化方向1511aは、位置P1における着磁磁界の磁界方向1203と同じ方向(−60度付近)となる。紙葉類100が搬送方向400へ搬送されても、これ以降は、高保磁力磁性体の磁化状態を変えるほどの磁界が存在しないため、その後の磁化方向1512a、1513a及び1514aは、着磁時の磁化方向1511a、すなわち着磁磁界の磁界方向1203と同じ方向のままとなる。
【0108】
紙葉類100に含まれる磁性体が中保磁力磁性体である場合には、位置P1で飽和磁化状態に着磁される。ところが、高保磁力磁性体に比べて保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間に、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続けて、位置P2での磁化方向1512b、位置P3での磁化方向1513bが変化する。具体的には、位置P2での磁化方向1512bは位置P2の磁界方向1204(60度付近)となり、位置P3での磁化方向1513bは位置P2の磁界方向1204と位置P3のバイアス磁界の磁界方向304との間の方向となる。そして、最終的な磁化方向1514bは、位置P3での磁化方向1513bと、その後の位置P4のバイアス磁界の磁界方向303との間の方向となる。なお、位置P4の磁界方向303と位置P3での磁化方向1513bとが逆向きであるために中保磁力磁性体の保磁力が弱められ、中保磁力磁性体の検知波形は順方向搬送の場合に比べて振幅が小さくなる。
【0109】
紙葉類100に含まれる磁性体が低保磁力磁性体である場合には、保磁力が小さいために、搬送方向400へ搬送される間、着磁磁界及びバイアス磁界による影響を受け続け、各位置P1〜P4での磁化方向1511c〜1514cは、その位置での磁界方向1203、1204、304及び303と同じ方向となる。
【0110】
このように、逆方向搬送の場合も、
図10に示す順方向搬送の場合と同様に、磁性体を検知する検知位置P4で、高保磁力磁性体の磁化方向1514a、中保磁力磁性体の磁化方向1514b及び低保磁力磁性体の磁化方向1514cを全て異なる方向とすることができる。これにより、高保磁力磁性体、中保磁力磁性体、低保磁力磁性体、積層磁性体の間で異なる波形の検知信号を得ることができる。
【0111】
図10、
図12及び
図13に示したように、搬送路の一方側に着磁ユニット3を配置した場合には、磁性体を含む紙葉類100が搬送路から浮き上がって、着磁ユニット3から離れた位置を通過することがないように、紙葉類100が通過する位置を規制することが好ましい。
図14は、搬送路での紙葉類100の通過位置を規制するための構成例を示す図である。このように、搬送路を挟んで着磁磁石20と反対側の位置に、回転可能に軸支されたブラシローラ50を配置する。ブラシローラ50によって、紙葉類100は、着磁磁石20の方向へ押し付けられた状態で搬送方向400へ搬送される。これにより、搬送方向上流側で搬送面と平行な着磁磁石20の第1磁極面から紙葉類100が離れ過ぎないように、紙葉類100の通過位置を規制することができる。
【0112】
また、
図10で示した位置P1での磁界方向1201及び位置P2での磁界方向1202を実現できれば、着磁磁石20及び導磁体21の形状が、
図10に示した形状に限定されるものではない。
図15は、着磁磁石20及び導磁体21の側面形状の例を示す図である。
図15では、紙葉類100の搬送方向400が図面水平方向右側となるように着磁磁石20及び導磁体21の側面形状を示している。
【0113】
図15(a)に示す第1磁界領域の磁界方向の角度αを−120度近傍とするため、搬送面と平行な搬送方向上流側の第1磁極面と、搬送面と平行な搬送方向下流側の第2磁極面とを接続する斜面は、搬送面との間の角度θが15度〜85度となるように形成されればよい。また、搬送面と着磁磁石20の第2磁極面との間の距離d1は1mm程度あればよく、搬送面と導磁体21の上面との間の距離d2は0.5〜1mm程度あればよい。
【0114】
また、導磁体21の側面形状は、
図15(b)に示すようにL字を回転した形状であってもよいし、同図(c)に示すようにL字を反転した形状で着磁磁石20の底面と接するように配置された形状であってもよいし、同図(d)に示すようにS字形で着磁磁石20の底面と接するように配置された形状であっても構わない。
【0115】
図16は、着磁磁石20の側面形状の別の例を示す図である。
図16でも紙葉類100の搬送方向400が図面水平方向右側となるように着磁磁石20の側面形状の上側一部を示している。
図10(c)に示したように、位置P1に対応する着磁磁石20の上面側の一点で磁界強度が最大値を示し、この位置から導磁体21に対応する位置P2へ向かうにつれて着磁磁界の磁界強度を弱めながら磁界方向を徐々に変化させることができれば、着磁磁石20の上面側の側面形状が、
図16(a)〜(d)に示すような面取形状であっても構わない。具体的には、
図16(a)に示すように、
図15(a)の角度θ及び距離d1と対応するように着磁磁石20上面側の搬送方向下流側(図面右上隅部)の一部を切り欠いた側面形状であってもよいし、同図(b)に示すように切欠部分が折れ曲がった側面形状、同図(c)に示すように切欠部分が曲面となる側面形状、同図(d)に示すように切欠部分が階段状の側面形状等であっても構わない。
【0116】
また、矩形の側面形状を有する着磁磁石20を利用して
図10に示す着磁磁界の磁界方向1201、1202を実現する態様であっても構わない。
図17は、着磁磁石20の配置角度又は着磁磁石20の磁化角度によって、着磁磁界の磁界方向を調整する例を示す図である。
図17では白矢印が磁石20自体の磁化方向を示している。
図17(a)に示すように、側面矩形形状の一辺と平行な磁化方向を有する着磁磁石20を傾けて、上面側の搬送方向下流側端部での着磁磁界の磁界方向と搬送方向400との間の角度αが−120度となるように、搬送方向400との間の角度βを調整して着磁磁石20を配置する態様であってもよい。また、
図17(b)に示すように、側面矩形形状の着磁磁石20を、該矩形形状の一辺と搬送方向400とが平行となるように配置した際に、上面側の搬送方向下流側の端部での着磁磁界の磁界方向と搬送方向400との間の角度αが−120度となるように、着磁磁石20の磁化方向を調整する態様であっても構わない。例えば、矩形形状に切り出した磁性体を
図17(b)に白矢印で示す磁化方向となるように着磁して着磁磁石20とする態様であってもよいし、所定方向に着磁した磁石から
図17(b)に白矢印で示す磁化方向となるように着磁磁石20を切り出して利用する態様であってもよい。また、着磁磁石20のみとする他、着磁磁石20の一端側に
図17(a)及び(b)に破線矩形で示したように導磁体21を設ける態様であっても構わない。
【0117】
上述してきたように、本実施例によれば、搬送路上の位置P1を含む第1磁界領域と、この位置P1よりも下流側にある搬送路上の位置P2を含む第2磁界領域とで、それぞれの磁界方向1201、1202が所定角度となるように、かつ、第1磁界領域の磁界強度及び第2磁界領域の磁界強度がそれぞれ適切な磁界強度となるように、着磁磁石20の磁界強度、着磁磁石20の形状、導磁体21の形状、着磁磁石20及び導磁体21の配置関係等を適切に設定することにより、磁気検知ユニット2により磁気を検知する位置P4で、各磁性体の磁化方向を保磁力に応じて異なる方向とすることができるので、磁気を検知した検知信号の特徴から保磁力の異なる磁性体の種類を判別することができる。