(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
目標全体ブレーキトルク量(28)を考慮したうえで、および最大限及ぼすことが可能な可能発電機ブレーキトルクに関して判定もしくは提供される情報を考慮したうえで、前記制御装置(26)によって追加的に液圧ブレーキトルク量を設定可能であり、前記制御装置(26)により少なくとも1つのバルブ制御信号および/またはポンプ制御信号(34)を前記液圧ブレーキ装置(10)の少なくとも1つのバルブ(36,38,54,56)および/または少なくとも1つのポンプ(40,58)に出力可能であり、該信号により、設定された液圧ブレーキトルク量に応じた液圧ブレーキトルクを少なくとも前記第1のホイール(20)に及ぼすことが可能であるように少なくとも1つの前記バルブ(36,38,54,56)および/または少なくとも1つの前記ポンプ(40,58)を制御可能である、請求項1に記載のブレーキシステム。
前記第1のブレーキ回路(18)は第1のホイール取込弁(36)と、第1のホイール吐出弁(38)と、第1のポンプ(40)とを含んでいる、請求項1から3に記載のブレーキシステム。
前記液圧ブレーキ装置(10)は第2のブレーキ回路(50)を含んでおり、該第2のブレーキ回路には前記第1のホイールブレーキシリンダ(14)または前記第1のホイール(20)に付属可能な第2のホイールブレーキシリンダ(52)が接続されており、もしくは接続可能である、請求項1から4に記載のブレーキシステム。
前記第2のブレーキ回路(50)は第2のホイール取込弁(54)と、第2のホイール吐出弁(56)と、第2のポンプ(58)とを含んでいる、請求項5に記載のブレーキシステム。
前記第2のブレーキ回路(50)は前記第1のマスタブレーキシリンダ(12)または第2のマスタブレーキシリンダ(62)に接続されており、もしくは接続可能である、請求項5または6に記載のブレーキシステム。
前記モータサイクルは単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターである、請求項8に記載のモータサイクル。
目標全体ブレーキトルク量(28)と、最大限及ぼすことが可能な可能発電機ブレーキトルクに関して判定または提供される情報とを考慮したうえで液圧ブレーキトルク量が設定され、
前記液圧ブレーキ装置(10)の少なくとも1つのバルブ(36,38,54,56)および/または少なくとも1つのポンプ(40,58)が制御され、それにより、設定された液圧ブレーキトルク量に応じた液圧ブレーキトルクが少なくとも前記第1のホイール(20)に及ぼされるようにされる追加のステップ(S13)を有している、請求項10に記載の方法。
単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターが前記モータサイクルとして制動される、請求項10または11に記載の方法。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成要件を備えるモータサイクルためのブレーキシステム、請求項9の構成要件を備えるモータサイクル、請求項11の構成要件を備えるモータサイクルにブレーキシステムを組み付ける方法、および請求項13の構成要件を備えるモータサイクルを制動する方法を提供する。
【0005】
付言しておくと、道路交通法上の分類(Krad)に基づくモータサイクルとはオートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターであると理解することができる。さらに指摘しておくと、このような種類のモータサイクルは厳密に2つのホイールの装備だけに限定されるものではない。これに代えて、このような種類のモータサイクルは単軌道車両として構成されていても3輪車として構成されていてもよい。
【0006】
本発明により具体化されるブレーキシステムは、従来のブレーキシステムと比べたとき、少なくとも電動モータによって制動可能なアクスルに、特にホイールブレーキシリンダのような液圧ブレーキコンポーネントが必要なくなることによって簡素化されている。その代わりに本発明では、1つのホイールまたは1つのアクスルを、電動モータの発電機としての動作だけによって制動することができる。このようにして、少なくとも従来の仕方では追加的に必要であるホイールブレーキシリンダについての費用、所要設計スペース、および/または組立コストが不要となる。
【0007】
該当するブレーキシステムは、大量生産で製造可能である既存のコンポーネントを組み合わせて構成可能であるので、ブレーキシステムの製造にあたっては比較的少ないコストしか発生しない。さらに、本発明によって利用可能なモータサイクルのためのブレーキシステムは、比較的小さい重量を有している。本発明によって利用可能なブレーキシステムの所要設計スペースも同じく少ない。さらに、本発明によって利用可能なブレーキシステムの組立は迅速であり、比較的確実に実行可能である。
【0008】
本発明の特別に好ましい実施形態では、少なくとも1つのホイールないしアクスルを駆動するために電動モータを追加的に利用可能である。このような電動モータの多機能性により、モータサイクルの追加の加速コンポーネントを節減することができる。このようにして、従来の仕方では追加的に必要な加速コンポーネントの費用、重量、および/または所要設計スペースも不要となる。
【0009】
好ましい実施形態では、ブレーキシステムは制御装置を含むことができ、この制御装置は、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって設定されて少なくとも1つの第1のホイールおよび少なくとも1つの第2のホイールに少なくとも及ぼされるべき目標全体ブレーキトルクに関して判定または提供される目標全体ブレーキトルク量を考慮したうえで、および/または少なくとも1つの第1のホイールに対する少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダの液圧ブレーキトルクに関して判定された、設定された、または見積もられた液圧ブレーキトルク量を考慮したうえで、制御装置により目標発電機ブレーキトルク量を決定可能であるように設計されており、制御装置により電動モータ制御信号を電動モータに出力可能であり、該電動モータ制御信号によって、目標発電機ブレーキトルク量に応じた発電機ブレーキトルクを電動モータにより少なくとも第2のホイールに及ぼすことが可能であるように電動モータを制御可能である。このように、制御装置によって簡単な回生を実行可能である。
【0010】
1つの発展例では、目標全体ブレーキトルク量を考慮したうえで、および最大限及ぼすことが可能な可能発電機ブレーキトルクに関して判定もしくは提供される情報を考慮したうえで、制御装置によって追加的に液圧ブレーキトルク量を設定可能であり、制御装置により少なくとも1つのバルブ制御信号および/またはポンプ制御信号を液圧ブレーキ装置の少なくとも1つのバルブおよび/または少なくとも1つのポンプに出力可能であり、該信号により、設定された液圧ブレーキトルク量に応じた液圧ブレーキトルクを少なくとも第1のホイールに及ぼすことが可能であるように、少なくとも1つのバルブおよび/または少なくとも1つのポンプを制御可能である。このケースでは、比較的大きい可能発電機ブレーキトルクを及ぼすことが可能である場合、比較的低い液圧ブレーキトルクを少なくとも第1のホイールに対して及ぼすことができる。このようにして、比較的大きい発電機ブレーキトルクを電動モータにより少なくとも第2のホイールに対して及ぼすことが可能であり、それにより、比較的大きいエネルギー量を発電により回収して取得可能である。このように制御装置の好ましい設計は、ブレーキプロセス中における回生効率を向上させることができる。
【0011】
電動モータはホイールハブモータであるのが好ましい。少なくとも1つの第2のホイールは、本発明に基づき、これに配置されるホイールブレーキシリンダなしに使用可能であるという利点があるので、少なくとも1つの第2のホイールに存在している設計スペースを、電動モータの自由な構成のために活用することができる。このように、本発明は向上した設計の自由度も保証するものであり、それによって電動モータをホイールハブモータとして施工可能である。さらに本発明により、少なくとも1つの第2のホイールの外側周辺にある自由空間を、より良く活用することができる。
【0012】
第1のブレーキ回路は、第1のホイール取込弁と、第1のホイール吐出弁と、第1のポンプとを含んでいるのが好ましい。このように第1のブレーキ回路の前述した各コンポーネントによって、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダで生じるブレーキ圧に影響を及ぼすことができるという利点がある。さらに、第1のブレーキ回路によってアンチブロックシステムを製作可能である。それによって実現可能なABS機能に基づき、モータサイクルの制動中における少なくとも1つの第1のホイールのブロックに対処することができる。
【0013】
1つの好ましい発展例では、液圧ブレーキ装置は第2のブレーキ回路を含んでおり、該第2のブレーキ回路には、第1のホイールブレーキシリンダ、または第1のホイールに付属可能な第2のホイールブレーキシリンダが接続されており、もしくは接続可能である。このようにして、少なくとも1つの第1のホイールに対して及ぼされるブレーキ出力を、2つのブレーキ回路の間で分割することもできる。
【0014】
たとえば第2のブレーキ回路は、第2のホイール取込弁と、第2のホイール吐出弁と、第2のポンプとを有している。このように第2のブレーキ回路は、第1のホイールブレーキシリンダまたは第2のホイールブレーキシリンダでブレーキ圧を生成/阻止するためにも利用することができる。
【0015】
第2のブレーキ回路は、第1のマスタブレーキシリンダまたは第2のマスタブレーキシリンダに接続されており、もしくは接続可能であるのが好ましい。運転者はそれによって第2のブレーキ回路に介入することができる。
【0016】
ここに挙げた利点は、相応のブレーキシステムを備えるモータサイクルでも保証される。このことが特に当てはまるのは、モータサイクルが単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、モータ付き自転車、アシストモータを備える自転車、および/または電動スクーターである場合である。
【0017】
さらにこれらの利点は、モータサイクルにブレーキシステムを組み付けるこのような種類の方法の実施によって具体化可能であり、および、モータサイクルを制動する対応する方法の実施によって具体化可能である。
【0018】
次に、本発明のそのほかの構成要件や利点について図面を参照しながら説明する。図面は次のとおりである:
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ブレーキシステムの第1の実施形態の模式図を示している。
【0021】
図1に模式的に示すブレーキシステムは、特にモータサイクルで利用するために設計されている。モータサイクルとは、道路交通法の分類(Krad)に準じて、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターであると理解することができる。モータサイクルは単軌道車両として設計されていてよい。同様にモータサイクルは、原動機付きの三輪車として構成されていてもよい。あとで詳しく説明するとおり、
図1のブレーキシステムはその少ない重量、少ない所要設計スペース、安価な製造可能性に基づき、ここに列挙したモータサイクル型式の購買者/利用者にとって容易に受入可能であり、したがって購買者/利用者が自分のモータサイクルに環境適合的なブレーキシステムを装備するよう奨励する。
【0022】
図1のブレーキシステムは液圧ブレーキ装置10を有している。液圧ブレーキ装置10は、少なくとも1つの第1のマスタブレーキシリンダ12と、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14とを含んでいる。第1のマスタブレーキシリンダ12は、たとえばハンドブレーキレバーのような(第1の)ブレーキ操作部材16に配置されており、それにより、(第1の)ブレーキ操作部材16の操作によって少なくとも1つの位置調節可能なピストンを第1のマスタブレーキシリンダ12の内部で位置調節可能であり、それにより、第1のマスタブレーキシリンダ12の少なくとも1つの圧力室の内圧を高めることが可能であるようになっている。少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14は、少なくとも1つの第1のブレーキ回路18を介して、第1のマスタブレーキシリンダ12と液圧式に接続されており、もしくは接続可能であり、それによって少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14のブレーキ圧を、第1のマスタブレーキシリンダ12の圧力室の高められた内圧によって生成可能である。さらに少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14は、少なくとも1つの第1のホイール20に付属可能であり/付属しており、それにより、少なくとも1つの(回転する)第1のホイール20を少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14によって制動可能であるようになっている。このように、少なくとも1つの第1のホイール20は、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14をそのすぐ外側の周辺に有している。
【0023】
これに加えてブレーキシステムは電動モータ22も有しており、この電動モータは第2のホイール24に付属可能であり/付属しており、それにより、少なくとも第2のホイール24を電動モータ22によって制動可能であるようになっている。
図1のブレーキシステムでは、さらに電動モータ22は少なくとも1つの第2のホイール24としての、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24に付属可能である。その意味は、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24を、電動モータ22のみによって(ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24へのホイールブレーキシリンダの配置および利用をすることなく)制動可能であるように電動モータ22が設計されており、もしくは(あとで詳しく説明する制御装置26によって)そのように制御可能であることとして理解することができる。このように、少なくとも1つの第2のホイール24は、ブレーキシステムの組立が終わった後、そのすぐ外側の周辺にホイールブレーキシリンダを有していない。このように、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24とは、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24のすぐ外側の周辺に、ホイールブレーキシリンダがないこととして理解することもできる。
【0024】
さらに、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つの第2のホイール24と、少なくとも1つのマスタブレーキシリンダ12ないしこれに相当する液圧モジュールとの間には、ケーブル接続が存在しない。その意味は、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24のすぐ外側の周辺にケーブルがなく、ないしはケーブルのコンポーネントがないことであると理解することもできる。
【0025】
図1のブレーキシステムは、特にハイブリッド車両または電動車両として構成されたモータサイクル用として適用可能である。ホイールブレーキシリンダのないホイール24における少なくとも1つのホイールブレーキシリンダの欠如に基づき、電動モータ22の発電機としての動作によって、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイール24が制動されたときに大きな発電機ブレーキトルクを実行可能であり、それにより、電動モータ22の回生効率を高めることが可能である。このような向上した電動モータの回生利用により、追加のエネルギーを回収して得ることができ、これを車内ネットワークへ供給可能であり、またはバッテリの再充電のために利用可能である。したがって、本発明によりモータサイクルのCO2排出量も削減可能であり、それによってモータサイクルの動作をいっそう環境適合的に構成可能である。
【0026】
ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つの第2のホイール24に基づき、モータサイクルのためのこのブレーキシステムは低い重量、少ない所要設計スペース、削減された製造費を有しており、それにより、ハイブリッド車両または電動車両として構成されたモータサイクルの受入性がブレーキシステムの利用者のあいだで向上する。このようにして、ハイブリッド車両または電動車両として構成されたモータサイクルを購入するように、利用者を的確に奨励することができる。
【0027】
好ましい実施形態では、電動モータはホイールハブモータである。本発明は少なくとも1つの第2のホイール24の制動を、そのために少なくとも1つの第2のホイール24のすぐ外側の周辺にホイールブレーキシリンダを取り付けることなく惹起するので、電動モータ22の構成にあたって大きな設計の自由が実現される。したがって、特に少なくとも1つの第2のホイール24に存在している自由スペースをより良く活用することができる。
【0028】
好ましい発展例では、電動モータ22は少なくとも第2のホイール24を加速させるためにも設計されていてよく/制御可能であってよい。電動モータ22のこうした多機能性により、モータサイクルのホイール22および24を加速させる追加のモータを節減することができる。このことはモータサイクルの低い重量を可能にするとともに、その製造費を低減させる。
【0029】
好ましい実施形態では、モータサイクルは厳密に第1のホイール20と第2のホイール24とを有している。しかしながらここで説明しているブレーキシステムは、このような厳密に2つのホイール20および24を備えるモータサイクルの設計だけに限定されるものではない。好ましい実施形態では、少なくとも1つの第1のホイール20は前輪であり、少なくとも1つの第2のホイール24は後輪である。たとえば、1つだけの第1のホイール20に代えて、2つの第1のホイール20が共通の車軸に、たとえばフロントアクスルに付属していてもよい。それに応じて2つの第2のホイール24が、たとえばリヤアクスルである共通の車軸に付属していてもよい。いずれのケースでも、それぞれのホイール接地面の中心の間隔は465mmを上回らないのが好ましい。しかしながら、ここで説明しているブレーキシステムの適用可能性は、このような種類のホイール分割だけに限定されるものではない。
【0030】
好ましい発展例では、ブレーキシステムは制御装置26も有している。制御装置26は、目標発電機ブレーキトルク量を制御装置26によって決定可能であるように設計されているのが好ましい。目標発電機ブレーキトルク量の決定は、運転者による(第1の)ブレーキ部材16の操作によって設定されて2つのホイール20および24に少なくとも及ぼされるべき目標全体ブレーキトルクに関して判定または提供された目標全体ブレーキトルク量28を考慮したうえで行うことができる。目標全体ブレーキトルク量28は、たとえば第1のマスタブレーキシリンダ12または第1のブレーキ回路18に接続された圧力センサ30のセンサ信号であってよい。特に、フィード圧力を目標全体ブレーキトルク量28として設計可能であるのが好ましい。しかしながらその代替または補足として、ブレーキ操作部材16に配置され、それによって(第1)のブレーキ操作部材16の操作の操作強度を判定可能かつ出力可能であるセンサのセンサ信号を、目標全体ブレーキトルク量28として制御装置26により考慮することもできる。
【0031】
さらに目標発電機ブレーキトルク量の決定は、少なくとも第1のホイール20に及ぼされる少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14の液圧ブレーキトルクに関して判定された、設定された、または見積もられた液圧ブレーキトルク量を(追加的に)考慮したうえで行うここともできる。目標発電機ブレーキトルク量は、特に、目標全体ブレーキトルク量28と、判定された、設定された、または見積もられた液圧ブレーキトルク量との差異に相関させることができる。
【0032】
さらに、目標発電機ブレーキトルク量の決定にあたっては、電動モータによって最大限実行可能な可能発電機ブレーキトルクに関して判定および/または提供された少なくとも1つの情報提供も行うことができる。判定および/または提供される情報は、たとえば車両の速度および/または少なくとも1つの車両バッテリの充電状態に関わる情報を含むことができる。電動モータ22の発電機としての動作は、通常、車両の速度が発電機利用最低速度を上回っており、電動モータ22によって接続される車両バッテリがまだ完全に充電されていないときに限って可能である。したがって、目標発電機ブレーキトルク量を決定するにあたり、電動モータにより最大限実行することが可能な可能発電機ブレーキトルクに関わる少なくとも1つの情報を考慮することで、電動モータ22の活動化した動作をこれらのパラメータに合わせて適合化することができる。
【0033】
制御装置26により、電動モータ制御信号32を電動モータ22に出力可能であるのが好ましく、この電動モータ制御信号により、(決定された)目標発電機ブレーキトルク量に呼応する発電機ブレーキトルクを少なくとも第2のホイール24に及ぼすことが可能であるように、電動モータ22を制御可能である。目標発電機ブレーキトルク量は、発電機ブレーキトルクが目標全体ブレーキトルクと液圧ブレーキトルクの間の差異に相当するように決定可能であり、電動モータをそのように制御可能であるのが好ましい。このようにして、運転者により設定された車両減速を高い信頼度で守ることが可能である。
【0034】
さらに、液圧ブレーキトルク量を制御装置26により追加的に決定可能であってよい。液圧ブレーキトルク量の決定は、目標全体ブレーキトルク量28と、可能発電機ブレーキトルクに関して判定または提供される情報とを考慮したうえで行われるのが好ましい。このように、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14と電動モータ22の機能形態を、最新に存在する電動モータ22の発電機としての利用可能性に合わせて適合化できるという利点がある。最新の車両速度、およびバッテリの充電状態に基づき、電動モータ22を発電機としてフルに利用可能であるときには、それに伴って比較的低い液圧ブレーキトルクを少なくとも1つの第1のホイール20に及ぼすことができる。このケースでは、比較的大きい電動モータ22の発電機ブレーキトルクをバッテリの迅速な充電のために利用することができる。それに対して、電動モータ22の発電機としての利用可能性が保証されないとき/ほとんど保証されないときには、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14の液圧ブレーキトルクを比較的高く設定することができる。このように、電動モータ22の発電機としての利用可能性が保証されない/ほとんど保証されないにもかかわらず、モータサイクルの迅速な制動が依然として可能である。
【0035】
少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14の液圧ブレーキトルクを決定された液圧ブレーキトルク量に準じて調整するために、制御装置26は少なくとも1つのバルブ制御信号および/またはポンプ制御信号34を、液圧ブレーキ装置10の少なくとも1つのバルブ36および38および/または少なくとも1つのポンプ40に出力することができ、該信号により、設定された液圧ブレーキトルク量に応じた液圧ブレーキトルクを少なくとも第1のホイール20に及ぼすことが可能であるように、少なくとも1つのバルブ36および38および/または少なくとも1つのポンプ40を制御可能である。このように、決定された液圧ブレーキトルク量は、少なくとも1つのバルブ36および38および/または少なくとも1つのポンプ40の動作形態を記述もしくは決定する少なくとも1つの量を含むことができる。たとえば液圧ブレーキトルク量は、少なくとも1つのバルブ36および38および/または少なくとも1つのポンプ40の目標状態、目標出力、および/または目標供給流量を含むことができる。しかしながら液圧ブレーキトルク量は、ここに列挙した例だけに限定されるものではない。
【0036】
第1のブレーキ回路18は、第1のホイール取込弁36と、第1のホイール吐出弁38と、第1のポンプ40とを含んでいるのが好ましい。このことは、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダ14の液圧ブレーキトルクの高い信頼度の調整可能性を保証する。たとえば低圧リザーブ室のようなリザーブ室42を第1のブレーキ回路18に装備することで、第1のブレーキ回路18をABSコントロール用として設計することもできる。しかしながら付言しておくと、ここで説明している第1のブレーキ回路18の各コンポーネントは一例としてのみ解釈されるべきものである。本発明によるテクノロジーの適用可能性は、ブレーキシステムへのこのようなブレーキ回路18の装備だけに限定されるものではない。
【0037】
図1に模式的に示すブレーキシステムは、制御装置26の簡単なプログラミングによって、上に説明した機能を遂行するように設計することができる。運転者のブレーキ要求がたとえば圧力センサ30によって認識されるとき、通常のブレーキングとの関連で、電動モータ22を回生のために利用することができる。液圧ブレーキトルク量を制御装置26によって決定可能ではないとき、運転者は速度が落ちていく過程で再ブレーキによって、失われていく電動モータ22の制動作用を補うことができる。特にこのケースでは、制御装置26は減速がわずかであるときにのみ、発電機としての電動モータ22による制動が行われるように設計することができる。
【0038】
上記の代替として制御装置26は、発電機として作動する電動モータ22の電流推移を通じて、第2のホイール24のブロック傾向を認識するために設計することもできる。このケースでは、減速エネルギーをより良く活用することができる。
【0039】
さらに、制御装置26が適切にプログラミングされていれば、ホイール20および24が最大限に使用されているときでも回生を行うことができる。このように、ここで説明しているブレーキシステムにより、非常に短い停止距離を実現することができる。特に、第1のホイール20が前輪であり第2のホイール24が後輪である場合、後輪/第2のホイール24が過度の割合で負荷軽減され、それにより制動エネルギーの最大90%までが前輪/第1のホイール20によって道路に伝達されるように、ダイナミックな軸荷重配分を活用することができる。このようにして、電動モータ22の限られた制動出力を補うことができるという利点がある。
【0040】
制御装置26の特別に好ましい実施形態では、第1のホイールブレーキシリンダ14の液圧ブレーキ出力は、ブレーキングの開始時に低減/抑制される。すなわち車両はブレーキングの開始時には、実質的に電動モータ22の発電機としてのブレーキ出力によって制動される。発電機としての電動モータ22の利用可能性が低下してからは、第1のブレーキ回路18の遮断部を調量式に開くことで、たとえばホイール取込弁36を調量式に開くことで、電動モータ22と第1のホイールブレーキシリンダ14の全体ブレーキ作用を一定に保つことができる。その際に発生する可能性のあるブレーキ操作部材16の若干の追加の滑りは、大半の運転者にはほとんど気づかれることがなく、もしくは受け入れられるものと判断される。
【0041】
制御装置26は、1つの好ましい発展例では、ABSモジュレータの機能を遂行するために設計されていてもよい。このような制御装置26の多機能性により、ブレーキシステムのさらに別の電子コンポーネントを節減することができる。
【0042】
図2は、ブレーキシステムの第2の実施形態の模式図を示している。
【0043】
図2に模式的に掲げるブレーキシステムは、上に説明した実施形態の補足として、液圧ブレーキ装置10の第2のブレーキ回路50をさらに有しており、この第2のブレーキ回路に、第1のホイール20に付属可能な/付属する第2のホイールブレーキシリンダ52が接続されており、もしくは接続可能である。第1のホイール20への2つのホイールブレーキシリンダ14および52の配置の別案として、2つのブレーキ回路18および50にそれぞれ接続された1つのホイールブレーキシリンダを使用することもできる。
【0044】
第2のブレーキ回路50は、たとえば第2のホイール取込弁54と、第2のホイール吐出弁56と、第2のポンプ58とを含むことができる。さらに第2のブレーキ回路50は、たとえば低圧リザーバ室のようなリザーバ室60を装備していてよい。このケースでは、第2のブレーキ回路50によってもABSコントロールを遂行可能である。別の圧力センサ59を同じく第2のブレーキ回路50に配置可能である。しかしながら、ここに挙げている第2のブレーキ回路50の各コンポーネントは一例として解釈されるべきものであり、第2のブレーキ回路50の構成可能性を限定するものではない。
【0045】
図2の実施形態では、第2のブレーキ回路50は第2のマスタブレーキシリンダ62に接続されており、もしくは接続可能である。第2のマスタブレーキシリンダ62には、たとえばフットブレーキレバーのような別のブレーキ操作部材64が付属しているのが好ましい。このようにして運転者は、自分のモータサイクルの2つのブレーキ操作部材16および64のうちの一方を選択的に利用するという可能性を有する。しかしながら
図2の実施形態の別案として、第2のブレーキ回路50は第1のマスタブレーキシリンダ12に接続されていてもよく、このケースでは、第1のマスタブレーキシリンダはタンデム型マスタブレーキシリンダとして設計されているのが好ましい。
【0046】
第2のブレーキ回路50のバルブ54および56とポンプ58も、制御装置26のバルブ制御信号および/またはポンプ制御信号34によって制御可能であってよい。このように
図2のブレーキシステムは、上に説明したすべての利点を保証する。特に
図2のブレーキシステムでは、実行可能なブレンドの反作用を運転者がブレーキ操作部材12および64で(ほぼ)感じないことが保証される。さらに、発電機として作動可能な電動モータ22を備える
図2の2回路式のブレーキシステムは、ABSシステムの機能を実行するために設計することも容易にできる。
【0047】
次に、以上に説明した各実施形態の好ましい動作について説明する:
【0048】
少なくとも1つのブレーキ操作部材16(または64)が操作されると、ブレーキ液が、接続されたマスタブレーキシリンダ12(または52)から少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)の方向へ移送される。それと同時に、電動モータ22を発電機モードへと切り換えることができる。少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)のエアギャップが克服された後、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)の液圧ブレーキ作用を、少なくとも1つのバルブ36(および54)の閉止によって阻止することができる。このようにして、電動モータ22の発電機としての利用可能性を保証しながら、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)でのブレーキ圧生成を(ほぼ)阻止し、発電機によってのみ制動をすることができる。このことは、高い回生効率を保証するという利点がある。
【0049】
少なくとも1つのバルブ36(および54)の閉止前に、エアギャップを橋渡ししておくことが推奨される。このことは、発電機としての電動モータ22のブレーキ作用/利用可能性が低下したときに、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)の液圧ブレーキトルクの迅速な生成可能性/上昇可能性を実現させる。エアギャップの橋渡しは、たとえば判定された減速および/または測定された圧力によって決定することができる。
【0050】
発電機としての電動モータ22の利用可能性が低下したとき、少なくとも1つのバルブ36(および54)を開くことで、少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)のブレーキ圧を引き上げることができる。このようにして、電動モータ22のブレーキ作用の低下を自動的に補うことができ、それにより運転者は追加のブレーキをかけなくてよい。ABSシステムは圧力センサ30(および59)も有しているのが好ましく、この圧力センサを用いて、運転者のブレーキ要求を調整されたブレーキ作用と照合可能である。
【0051】
運転者のブレーキ要求が電動モータの最大限実行可能な可能発電機ブレーキトルクを上回ったとき、追加のブレーキ圧を少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14(および52)で生成することができる。運転者のブレーキ要求による最大限実行可能な可能発電機ブレーキトルクの超過は、少なくとも1つの圧力センサ30(および59)により簡単かつ確実に判定することができる。
【0052】
ブレーキ状況がABSコントロールを生じさせるとき、ブレーキシステムを従来式の方法ステップに従って調節することができる。発電機としての領域でも低下していく発電機出力を調節することで、少なくとも1つの第2のホイール20のブロックを防止することができる。付言しておくと、制御装置26は既存の/従来式のABS制御装置と協働作用することもできる。
【0053】
電動モータ22に不具合が発生したとき、液圧ブレーキ装置18がバックアップとして機能を保ちつづける。液圧ブレーキ装置10の少なくとも1つのブレーキ回路18(または50)が失陥したとき、少なくとも電動モータ22の発電機としてのブレーキ作用はまだ成立する。ブレーキシステムが2つのブレーキ回路18(または50)を装備しているとき、他方のブレーキ回路18(または50)の不具合発生に該当していないほうのブレーキ回路を追加的に利用可能である。
【0054】
単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターであってよい、上に説明した各実施形態のうちの1つに準ずるブレーキシステムを備えるモータサイクルは、上述した
図1および
図2によって説明されている。
【0055】
図3は、モータサイクルにブレーキシステムを組み付ける方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0056】
方法ステップS1で、少なくとも1つの第1のマスタブレーキシリンダと、少なくとも1つの第1のブレーキ回路を介して第1のマスタブレーキシリンダと液圧的に接続された、もしくは接続可能である、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダとを備える液圧ブレーキ装置が、モータサイクルに配置される。液圧ブレーキ装置の構成可能性に関しては、上に説明した各実施形態を参照されたい。少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダは、モータサイクルの少なくとも1つの第1のホイールに配置され、それにより、少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダにブレーキ圧が存在するときに、少なくとも1つの第1のホイールが少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダにより制動されるようにされる。
【0057】
方法ステップS2で電動モータがモータサイクルに配置され、それにより、モータサイクルの少なくとも1つの第2のホイールが、電動モータの発電機としての作動時に制動されるようにされる。
【0058】
方法ステップS1およびS2の順序は任意である。ブレーキシステムは、(モータサイクルとしての)単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターに組み付けることができる。しかしながら明文をもって指摘しておくと、液圧ブレーキ装置は、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイールとしての少なくとも1つの第2のホイールが、電動モータの発電機としての作動時にのみ制動されるように、モータサイクルに配置される。
【0059】
図4は、モータサイクルを制動する方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0060】
図4の方法の実施形態では、単軌道車両、原動機付き三輪車、オートバイ、小型オートバイ、軽量オートバイ、スクーター、原動機付き自転車、アシストモータ付き自転車、および/または電動スクーターをモータサイクルとして制動することができる。このとき特に、上に説明したブレーキシステムの各実施形態を適用することができる。しかしながら
図4の方法の実施可能性は、上に説明したブレーキシステムの実施形態の適用だけに限定されるものではない。
【0061】
方法ステップS10で、運転者によるブレーキ操作部材の操作によって設定され、モータサイクルの少なくとも1つの第1のホイールおよび第2のホイールに及ぼされるべき目標全体ブレーキトルクに関して、目標全体ブレーキトルク量が判定される。その際には、たとえば上に説明したセンサのうちの1つを利用することができる。
【0062】
次いで方法ステップS11で、判定された目標全体ブレーキトルク量を少なくとも考慮したうえで、目標発電機ブレーキトルク量が決定される。さらに、目標発電機ブレーキトルク量の決定にあたっては、液圧ブレーキ装置の第1のマスタブレーキシリンダと少なくとも1つの第1のブレーキ回路を介して液圧的に接続された、もしくは接続可能である、液圧ブレーキ装置の少なくとも1つの第1のホイールブレーキシリンダによってモータサイクルの少なくとも第1のホイールに及ぼされる液圧ブレーキトルクに関して判定された、設定された、または見積もられた液圧ブレーキトルク量が追加的に考慮される。
【0063】
方法ステップS12で、目標発電機ブレーキトルク量に呼応する発電機ブレーキトルクが電動モータにより少なくとも第2のホイールに及ぼされるように、電動モータが制御される。目標発電機ブレーキトルク量は、目標全体ブレーキトルクと液圧ブレーキトルクとの間の差異に発電機ブレーキトルクが相当しており、ホイールブレーキシリンダのない少なくとも1つのホイールとしての少なくとも1つの第2のホイールが電動モータによってのみ制動されるように決定されて、電動モータがそのように制御される。
【0064】
任意選択として、本方法は方法ステップS11の前に実施される方法ステップS13を含むこともできる。方法ステップS13では、目標全体ブレーキトルク量と、最大限及ぼすことが可能な可能発電機ブレーキトルクに関して判定または提供される情報とを考慮したうえで、液圧ブレーキトルク量が設定される。方法ステップS13は、液圧ブレーキ装置の少なくとも1つのバルブおよび/またはポンプの制御も含んでおり、それにより、設定された液圧ブレーキトルク量に応じた液圧ブレーキトルクが少なくとも第1のホイールに及ぼされるようになっている。