特許第6049883号(P6049883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049883
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-528077(P2015-528077)
(86)(22)【出願日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2013070252
(87)【国際公開番号】WO2015011823
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】西山 識
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−227249(JP,A)
【文献】 特開2006−261325(JP,A)
【文献】 特開2006−269794(JP,A)
【文献】 特開2013−69799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着する複数の吸着ノズルを保持する複数のノズルホルダが円周方向に所定間隔で下降可能に取り付けられた回転ヘッドと、
前記回転ヘッドを交換可能に保持するヘッド保持ユニットと、
前記ヘッド保持ユニットを移動させるヘッド移動装置と
を備えた部品実装機において、
前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記回転ヘッドを回転させることで前記複数のノズルホルダを前記複数の吸着ノズルと一体的に該回転ヘッドの円周方向に旋回させるR軸駆動機構と、
前記複数のノズルホルダにそれぞれ設けられたレバー係合片と、
前記複数のノズルホルダのうちの部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダの前記レバー係合片を上下両側から押し下げ部材とZ軸レバーとで係合して該ノズルホルダを下降及び上昇させることで該ノズルホルダに保持された前記吸着ノズルを下降及び上昇させるZ軸駆動機構とを備え、
前記R軸駆動機構により前記回転ヘッドを所定角度ずつ回転させて前記複数のノズルホルダをその並びの順番に前記Z軸駆動機構により下降及び上昇させて部品吸着及び実装動作を行うと共に、最初に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダである1番ホルダの前記レバー係合片と最後に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダである最終ホルダの前記レバー係合片との間隔を前記Z軸レバーとの係合が外れる間隔に設定して、前記ヘッド保持ユニットに対して前記回転ヘッドを着脱するときに前記1番ホルダの前記レバー係合片と前記最終ホルダの前記レバー係合片との間の隙間を前記Z軸レバーを上下方向にすり抜けさせる通路として使用し、
前記1番ホルダのレバー係合片と前記最終ホルダの前記レバー係合片との間隔を除いて前記各ノズルホルダの前記レバー係合片間の間隔を前記Z軸レバー及び前記押し下げ部材と該レバー係合片との係合が外れない間隔に設定して、部品吸着及び実装動作時に前記Z軸駆動機構により前記ノズルホルダを下降及び上昇させる動作と前記R軸駆動機構により前記回転ヘッドを回転させる動作とをオーバーラップさせて実行することを特徴とする部品実装機。
【請求項2】
前記押し下げ部材は、ローラにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記1番ホルダの下降動作及び前記最終ホルダの上昇動作を行うときには前記回転ヘッドの回転を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品を吸着する複数の吸着ノズルを保持する回転ヘッドを自動交換する機能を備えた部品実装機に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
この種の部品実装機においては、特許文献1(特開2006−261325号公報)に記載されているように、複数の吸着ノズルを保持する回転ヘッドを、吸着する部品の種類(サイズ、形状、重さ等)に応じて自動交換できるようにするために、部品実装機のヘッド保持部に回転ヘッドを負圧吸引力で吸着保持するようにしたものがある。この特許文献1の部品実装機では、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッドを保持するヘッド保持部を昇降させることで、該ヘッド保持部の昇降に連動して回転ヘッド側の回動レバーを部品実装機側のレバー駆動部材に係合させて該回動レバーを回動させて吸着ノズルを昇降させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−261325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッドに保持させた吸着ノズルを昇降させるときに、ヘッド保持部を昇降させて回転ヘッドを昇降させる必要があるため、回転ヘッドに保持させた複数の吸着ノズルにそれぞれ部品を吸着させるには、回転ヘッドの昇降動作を吸着ノズルの本数分の回数だけ繰り返さなければならない。同様に、複数の吸着ノズルに吸着した部品を回路基板に実装するときにも、回転ヘッドの昇降動作を吸着ノズルの本数分の回数だけ繰り返さなければならない。このため、上記特許文献1の構成では、部品実装機の分野における近年の重要な技術的課題である部品吸着及び実装動作の高速化に限界があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、複数の吸着ノズルを保持する回転ヘッドを自動交換する機能を備え、且つ、部品吸着及び実装動作の高速化に対応できる部品実装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、部品を吸着する複数の吸着ノズルを保持する複数のノズルホルダが円周方向に所定間隔で下降可能に取り付けられた回転ヘッドと、前記回転ヘッドを交換可能に保持するヘッド保持ユニットと、前記ヘッド保持ユニットを移動させるヘッド移動装置とを備えた部品実装機において、前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記回転ヘッドを回転させることで前記複数のノズルホルダを前記複数の吸着ノズルと一体的に該回転ヘッドの円周方向に旋回させるR軸駆動機構と、前記複数のノズルホルダにそれぞれ設けられたレバー係合片と、前記複数のノズルホルダのうちの部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダの前記レバー係合片を上下両側から押し下げ部材とZ軸レバーとで係合して該ノズルホルダを下降及び上昇させることで該ノズルホルダに保持された前記吸着ノズルを下降及び上昇させるZ軸駆動機構とを備え、前記R軸駆動機構により前記回転ヘッドを所定角度ずつ回転させて前記複数のノズルホルダをその並びの順番に前記Z軸駆動機構により下降及び上昇させて部品吸着及び実装動作を行うと共に、最初に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダである1番ホルダの前記レバー係合片と最後に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダである最終ホルダの前記レバー係合片との間隔を前記Z軸レバーとの係合が外れる間隔に設定して、前記ヘッド保持ユニットに対して前記回転ヘッドを着脱するときに前記1番ホルダの前記レバー係合片と前記最終ホルダの前記レバー係合片との間の隙間を前記Z軸レバーを上下方向にすり抜けさせる通路として使用し、前記1番ホルダのレバー係合片と前記最終ホルダの前記レバー係合片との間隔を除いて前記各ノズルホルダの前記レバー係合片間の間隔を前記Z軸レバー及び前記押し下げ部材と該レバー係合片との係合が外れない間隔に設定して、部品吸着及び実装動作時に前記Z軸駆動機構により前記ノズルホルダを下降及び上昇させる動作と前記R軸駆動機構により前記回転ヘッドを回転させる動作とをオーバーラップ(重複)させて実行するようにしたものである。
【0007】
この構成では、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッドを所定角度ずつ回転させて、Z軸駆動機構により複数のノズルホルダをその並びの順番に昇降させることができるため、前記特許文献1とは異なり、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッドを昇降させる必要がない。しかも、1番ホルダのレバー係合片と最終ホルダのレバー係合片との間隔を除いて、各ノズルホルダのレバー係合片間の間隔をZ軸レバー及び押し下げ部材と該レバー係合片との係合が外れない間隔に設定しているため、部品吸着及び実装動作時にZ軸駆動機構によりノズルホルダを下降及び上昇させる動作とR軸駆動機構により回転ヘッドを回転させる動作とをオーバーラップさせて実行することができる。これにより、ノズルホルダを下降及び上昇させる動作と回転ヘッドを回転させる動作とをオーバーラップさせない場合と比較して、各ノズルホルダの下降及び上昇動作の時間間隔を短くすることができ、部品吸着及び実装動作の高速化に対応できる。更に、1番ホルダのレバー係合片と最終ホルダのレバー係合片との間隔をZ軸レバーとの係合が外れる間隔に設定しているため、ヘッド保持ユニットに対して回転ヘッドを着脱するときに、1番ホルダのレバー係合片と最終ホルダのレバー係合片との間の隙間をZ軸レバーを上下方向にすり抜けさせる通路として使用することで、回転ヘッドの着脱時にZ軸レバーをレバー係合片と干渉しない位置へ退避移動させることなく、回転ヘッドを迅速に着脱することができる。しかも、Z軸レバーをレバー係合片と干渉しない位置へ退避移動させる機構が不要であるため、構成が複雑化しない利点もある。
【0008】
この場合、Z軸駆動機構の押し下げ部材でノズルホルダのレバー係合片を押し下げる際に、オーバーラップ動作により回転ヘッドが回転して押し下げ部材に対してレバー係合片が移動するため、押し下げ部材とレバー係合片との間に摩擦力が発生する。この点を考慮して、押し下げ部材をローラにより構成すると良い。これにより、オーバーラップ動作時の押し下げ部材とレバー係合片との間の摩擦力を大幅に低減できて、スムーズなオーバーラップ動作が可能となると共に、耐久性も向上できる。
【0009】
また、1番ホルダの下降動作及び最終ホルダの上昇動作を行うときには回転ヘッドの回転を停止させてオーバーラップ動作を行わないようにすると良い。回転ヘッドを部品吸着位置や実装位置の上方へ向かってXY方向(水平方向)に移動させる過程で、回転ヘッドを回転させて1番ホルダをZ軸駆動機構で下降させる位置まで移動させるようにすれば、1番ホルダを下降させるときに回転ヘッドを回転させる必要はない。また、最終ホルダの上昇動作を行うときには、その隣のノズルホルダである1番ホルダの部品吸着及び実装動作は既に終了しているため、回転ヘッドを回転させる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の一実施例における部品吸着装置のヘッド保持ユニットから回転ヘッドを取り外した状態を示す斜視図である。
図2図2は部品吸着装置のヘッド保持ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
図3図3は回転ヘッド全体の斜視図である。
図4図4は回転ヘッドの上部側の斜視図である。
図5図5はZ軸駆動機構の主要部の構成を示す正面図である。
図6図6はZ軸駆動機構の部品吸着及び実装動作時の状態を示す平面図である。
図7図7はZ軸駆動機構の回転ヘッド着脱時の状態を示す平面図である。
図8図8は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、部品実装機の部品吸着装置10の構成を説明する。
【0012】
図1に示すように、部品吸着装置10の回転ヘッド11には、その円周方向に所定間隔で複数のノズルホルダ12が下降可能に保持され、各ノズルホルダ12の下部には、それぞれ部品を吸着する吸着ノズル13が下向きに交換可能(着脱可能)に係合保持されている。
【0013】
回転ヘッド11は、部品実装機のヘッド移動装置20(図8参照)によって移動されるヘッド保持ユニット21の下方に延びるR軸22(図2参照)に交換可能(着脱可能)に保持される。ヘッド保持ユニット21には、R軸22を回転させるR軸駆動機構23(ヘッド回転駆動機構)が組み付けられている。R軸駆動機構23は、R軸22の上端に固定されたR軸ギア24(歯面図示せず)をR軸モータ25により回転させて、回転ヘッド11をR軸22を中心にして回転させることで、複数のノズルホルダ12が複数の吸着ノズル13と一体的に該回転ヘッド11の円周方向に旋回するようになっている。
【0014】
R軸22には、Q軸駆動機構26(ノズル回転駆動機構)の駆動源となるQ軸ギア27(歯面図示せず)が回転可能に挿通され、該Q軸ギア27がQ軸モータ28によりR軸22の回りを回転するようになっている。
【0015】
図2に示すように、R軸22の下端部には、回転ヘッド11を着脱可能に係合保持するための複数(例えば4個)の係合部材31が上下方向に移動可能に設けられ、各係合部材31の近傍には、それぞれ係合部材31を上下方向に駆動するエアシリンダ(図示せず)が設けられている。各係合部材31は、それぞれL字状又はJ字状に形成されて、R軸22の円周方向に等間隔に配列され、各係合部材31の爪部の向きがR軸22の正回転方向(又は逆回転方向)と同じ方向となるように揃えられている。
【0016】
一方、回転ヘッド11には、Q軸ギア27の回転力を各ノズルホルダ12に伝達するノズル回転ギア機構32(図3図4参照)が設けられている。ノズル回転ギア機構32は、回転ヘッド11の上部側に同心状に回転可能に保持された円筒ギア33(歯面図示せず)と、各ノズルホルダ12にそれぞれ取り付けられた小ギア34とを噛み合わせ、ヘッド保持ユニット21のQ軸ギア27とノズル回転ギア機構32の円筒ギア33とをリング状クラッチ部材61,62(図2図3参照)の凹凸の噛み合いによって回転伝達可能に連結して、Q軸ギア27によって円筒ギア33を回転させて各ノズルホルダ12の小ギア34を回転させることで、各ノズルホルダ12がそれぞれ各ノズルホルダ12の軸心線の回りを回転して、各ノズルホルダ12に保持された各吸着ノズル13に吸着した各部品の向き(角度)を修正するようになっている。
【0017】
円筒ギア33内にヘッド保持ユニット21のR軸22を挿入できるように該円筒ギア33の内径寸法がR軸22の外径寸法よりも若干大きく形成されている。図4に示すように、回転ヘッド11の上面部のうちの円筒ギア33の内側の位置には、R軸22の各係合部材31を挿通して係合するための複数の長孔状の係合孔35が円周方向に等間隔に形成されている。
【0018】
部品実装機のヘッド保持ユニット21の移動範囲内の所定位置には、交換用の回転ヘッド11を載置するヘッド載置部(図示せず)が設けられている。このヘッド載置部は、複数種類の回転ヘッド11を載置できるように構成されている。このヘッド載置部に載置された回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に取り付ける場合は、ヘッド保持ユニット21のR軸22を円筒ギア33内に挿入してR軸22の各係合部材31を回転ヘッド11の各係合孔35に挿通し、R軸ギア24の回転によりR軸22を回転させて各係合部材31を各係合孔35の端縁部に係合させた状態で各係合部材31を引き上げて保持する。
【0019】
部品実装機には、交換用の回転ヘッド11を載置するヘッド載置部の他に、交換用の吸着ノズル13を載置するノズル載置部(図示せず)が設けられ、回転ヘッド11のノズルホルダ12に保持させる吸着ノズル13を自動交換できるようになっている。
【0020】
R軸駆動機構23とQ軸駆動機構26の他に、Z軸モータ37(図8参照)を駆動源とするZ軸駆動機構51(図5図6参照)がヘッド保持ユニット21と一体的に移動するように設けられている。Z軸駆動機構51は、部品吸着及び実装動作時にZ軸モータ37によって昇降する略L字形のZ軸レバー52と、このZ軸レバー52に軸53を介して回動可能に取り付けられた押し下げローラ54(押し下げ部材)とを備え、Z軸レバー52と押し下げローラ54とでコ字形の係合溝を形成して、各ノズルホルダ12の上端部に固定されたレバー係合片55を上下両側から押し下げローラ54とZ軸レバー52とで係合するようになっている。本実施例では、押し下げローラ54とレバー係合片55との係合と、Z軸レバー52とレバー係合片55との係合の少なくとも一方は、各部材間に小さな隙間のある状態で係合するようになっているが、押し下げローラ54とレバー係合片55との間にレバー係合片55を挟み込んで各部材間に隙間が無いように係合しても良い。押し下げローラ54の軸53は、回転ヘッド11の径方向と平行に支持され、該回転ヘッド11の回転に伴って押し下げローラ54がレバー係合片55の上面を転動して摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0021】
図3に示すように、各ノズルホルダ12は、それぞれスプリング40(ばね部材)により上方へ付勢され、Z軸駆動機構51の押し下げローラ54から解放されたノズルホルダ12は、スプリング40の押し上げ力で上限位置(図3に示す状態)に保持されるようになっている。図3図4に示すように、各ノズルホルダ12が上限位置に保持された状態では、各ノズルホルダ12のレバー係合片55が回転ヘッド11と同心の同一円周に円環状に並んで配列された状態に保持される。
【0022】
部品吸着及び実装動作を行う場合は、R軸駆動機構23により回転ヘッド11を所定角度ずつ回転させて、該回転ヘッド11に保持された複数のノズルホルダ12をその並びの順番にZ軸駆動機構51により下降及び上昇させて、各ノズルホルダ12に保持された吸着ノズル13を下降及び上昇させて部品吸着及び実装動作を行う。
【0023】
本実施例では、最初に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダ12である1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最後に部品吸着及び実装動作を行うノズルホルダ12である最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間隔を、Z軸レバー52との係合が外れる間隔(Z軸レバー52の幅より広い間隔)に設定して、ヘッド保持ユニット21に対して回転ヘッド11を着脱するときに、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間を、Z軸レバー52を上下方向にすり抜けさせる通路として使用する。
【0024】
更に、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間隔を除いて、各ノズルホルダ12のレバー係合片39間の間隔を、Z軸レバー52及び押し下げローラ54と該レバー係合片39との係合が外れない間隔(Z軸レバー52の幅より狭い間隔)に設定して、部品吸着及び実装動作時にZ軸駆動機構51によりノズルホルダ12を下降及び上昇させる動作とR軸駆動機構23により回転ヘッド11を回転させる動作とをオーバーラップ(重複)させて実行するようにしている。但し、1番ホルダ12(A)の下降動作及び最終ホルダ12(L)の上昇動作を行うときには、回転ヘッド11の回転を停止させてオーバーラップ動作を行わないようにしている。回転ヘッド11を部品吸着位置や実装位置の真上へ向かってXY方向(水平方向)に移動させる過程で、回転ヘッド11を回転させて1番ホルダ12(A)をZ軸駆動機構51で下降させる位置まで移動させるようにすれば、1番ホルダ12(A)を下降させるときに回転ヘッド11を回転させる必要はない。また、最終ホルダ12(L)の上昇動作を行うときには、その隣のノズルホルダ12である1番ホルダ12(A)の部品吸着及び実装動作は既に終了しているため、回転ヘッド11を回転させる必要はない。
【0025】
部品実装機の制御装置43(図8参照)は、コンピュータを主体として構成され、生産プログラムに従って、ヘッド移動装置20、ヘッド保持ユニット21のR軸モータ25、Q軸モータ28及びZ軸モータ37等を制御して、部品実装機にセットされたフィーダ44から供給される部品を回転ヘッド11の複数の吸着ノズル13に吸着して回路基板に実装する動作を制御すると共に、ヘッド載置部上の回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に保持させる動作や、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11を取り外す動作等を制御する。
【0026】
回転ヘッド11をヘッド載置部に載置する場合は、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間が部品実装機のZ軸駆動機構51のZ軸レバー52に対応する位置となるように載置する。部品実装機の制御装置43は、ヘッド載置部上の回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に保持させる際に、ヘッド移動装置20によりヘッド保持ユニット21をヘッド載置部上の回転ヘッド11の上方へ移動させて、Z軸駆動機構51のZ軸レバー52をヘッド載置部上の回転ヘッド11の1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間の真上に位置させる。
【0027】
この後、ヘッド移動装置20によりヘッド保持ユニット21を下降させてR軸22をヘッド載置部上の回転ヘッド11の円筒ギア33内に挿入し、Q軸ギア27のリング状クラッチ部材61の凹凸を円筒ギア33のリング状クラッチ部材62の凹凸に噛み合わせて両者を回転伝達可能に連結する。このヘッド保持ユニット21の下降動作により、Z軸駆動機構51のZ軸レバー52がヘッド載置部上の回転ヘッド11の1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間をすり抜けて、該Z軸レバー52の下端の水平な爪部がレバー係合片39(A),39(L)の下面の高さより僅かに低い位置まで下降し、且つ、押し下げローラ54がレバー係合片39(A),39(L)の上面の高さより僅かに高い位置まで下降した状態となる。更に、上記ヘッド保持ユニット21の下降動作により、R軸22の各係合部材31が回転ヘッド11の各係合孔35に挿通された状態となる。その後、R軸モータ25によりR軸22を少しだけ回転させて各係合部材31を各係合孔35の端縁部に係合させた後、エアシリンダ(図示せず)により各係合部材31を引き上げて係合状態を保持する。これにより、R軸22に回転ヘッド11が取り付けられた状態となる。
【0028】
その後、回転ヘッド11の複数のノズルホルダ12に保持された複数の吸着ノズル13にそれぞれ部品を保持させる場合は、部品実装機の制御装置43は、ヘッド移動装置20により回転ヘッド11を部品吸着位置の上方へ向かってXY方向(水平方向)に移動させると共に、その移動過程で、R軸22を回転させて回転ヘッド11を回転させ、図6に示すように、1番ホルダ12(A)をZ軸駆動機構51の押し下げローラ54に対応させる位置[つまり1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)が押し下げローラ54とZ軸レバー52との間に挿入される位置]まで移動させて、回転ヘッド11の回転を停止させる。
【0029】
この後、Z軸駆動機構51の押し下げローラ54とZ軸レバー52を下降させて1番ホルダ12(A)をスプリング40の押し上げ力に抗して押し下げて、1番ホルダ12(A)に保持された吸着ノズル13を下降させ、その最下点で、該吸着ノズル13にフィーダ44から供給される部品を吸着する。
【0030】
部品吸着後、Z軸駆動機構51の押し下げローラ54とZ軸レバー52を元の高さまで上昇させて1番ホルダ12(A)の吸着ノズル13を上昇させると共に、その上昇動作とオーバーラップさせて、R軸22により回転ヘッド11を回転させて、押し下げローラ54とZ軸レバー52との間に位置する1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)を移動させ、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)の端が押し下げローラ54とZ軸レバー52との間に挿入される位置まで回転ヘッド11を回転させる。
【0031】
そして、1番ホルダ12(A)が元の高さ(上限位置)まで上昇した時点で、更に回転ヘッド11を回転させて、2番目のノズルホルダ12のレバー係合片39の端がZ軸駆動機構51の押し下げローラ54とZ軸レバー52との間に挿入された時点で、Z軸駆動機構51の押し下げローラ54とZ軸レバー52を下降させて2番目のノズルホルダ12を押し下げて、2番目のノズルホルダ12に保持された吸着ノズル13を下降させる。この下降動作とオーバーラップさせて、R軸22により回転ヘッド11を回転させて、2番目のノズルホルダ12の吸着ノズル13が最下点に降下するまでに2番目のノズルホルダ12の吸着ノズル13を部品吸着位置へ移動させて、回転ヘッド11の回転を停止させる。
【0032】
その後、2番目のノズルホルダ12の吸着ノズル13が最下点に降下した時点で、該吸着ノズル13に部品を吸着した後、Z軸駆動機構51の押し下げローラ54とZ軸レバー52を元の高さまで上昇させて2番目のノズルホルダ12の吸着ノズル13を上昇させると共に、その上昇動作とオーバーラップさせて、回転ヘッド11を回転させて、押し下げローラ54とZ軸レバー52の間に挿入された2番目のノズルホルダ12のレバー係合片39を移動させ、2番目のノズルホルダ12のレバー係合片39の端が押し下げローラ54とZ軸レバー52との間に挿入される位置まで回転ヘッド11を回転させる。
【0033】
そして、2番目のノズルホルダ12が元の高さ(上限位置)まで上昇した時点で、更に回転ヘッド11を回転させて、3番目のノズルホルダ12の部品吸着動作に移行し、上記2番目のノズルホルダ12の部品吸着動作と同様の動作を実行して、3番目のノズルホルダ12の吸着ノズル13に部品を吸着して元の高さ(上限位置)まで上昇する。
【0034】
以後、4番目以降のノズルホルダ12の部品吸着動作も同様の動作を実行する。そして、最終ホルダ12(L)の下降動作と回転ヘッド11の回転動作とをオーバーラップさせて行って、最終ホルダ12(L)の吸着ノズル13に部品を吸着した後、最終ホルダ12(L)を元の高さ(上限位置)まで上昇させる。この最終ホルダ12(L)の上昇動作を行うときには、回転ヘッド11の回転を停止させてオーバーラップ動作を行わない。
【0035】
その後、回転ヘッド11を回路基板の上方へ向かってXY方向に移動させる過程で、回転ヘッド11を回転させて1番ホルダ12(A)をZ軸駆動機構51で下降させる位置まで移動させる。以後、上述した部品吸着動作と同様に、1番ホルダ12(A)から順番にノズルホルダ12を下降及び上昇させる動作と回転ヘッド11を回転させる動作とをオーバーラップさせて実行し、回路基板に部品を実装する。最終ホルダ12(L)を下降させて部品を実装した後に最終ホルダ12(L)を上昇させるときには、回転ヘッド11の回転を停止させてオーバーラップ動作を行わない。そして、最終ホルダ12の上昇動作が終了した時点で、回転ヘッド11を部品吸着位置の上方へ向かってXY方向に移動させ、その移動過程で、回転ヘッド11を回転させて1番ホルダ12(A)をZ軸駆動機構51で下降させる位置まで移動させる。以後、1番ホルダ12(A)から順番に上述した部品吸着動作を実行する。
【0036】
その後、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11を取り外す場合は、回転ヘッド11をヘッド載置部の上方へ移動させる過程で、回転ヘッド11を回転させて、図7に示すように、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間をZ軸駆動機構51のZ軸レバー52に対応させる位置まで移動させて、回転ヘッド11の回転を停止させる。その後、回転ヘッド11をヘッド載置部の空きスペースに載置して、R軸22の係合部材31と係合孔35との係合を解除して、ヘッド保持ユニット21を真上に上昇させる。この際、Z軸駆動機構51のZ軸レバー52が1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間をすり抜けて、Z軸レバー52がレバー係合片39と干渉することなく、分離される。これにより、回転ヘッド11がヘッド保持ユニット21から取り外されてヘッド載置部に載置される。
【0037】
以上説明した本実施例によれば、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッド11を所定角度ずつ回転させて、Z軸駆動機構51により複数のノズルホルダ12をその並びの順番に昇降させることができるため、前記特許文献1とは異なり、部品吸着及び実装動作時に回転ヘッド11を昇降させる必要がない。しかも、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の隙間を除いて、各ノズルホルダ12のレバー係合片39間の間隔をZ軸レバー52及び押し下げローラ54と該レバー係合片39との係合が外れない狭い間隔に設定しているため、部品吸着及び実装動作時にZ軸駆動機構51によりノズルホルダ12を下降及び上昇させる動作とR軸駆動機構23により回転ヘッド11を回転させる動作とをオーバーラップさせて実行することができる。これにより、ノズルホルダ12を下降及び上昇させる動作と回転ヘッド11を回転させる動作とをオーバーラップさせない場合と比較して、各ノズルホルダ12の下降及び上昇動作の時間間隔を短くすることができ、部品吸着及び実装動作の高速化に対応できる。更に、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間隔をZ軸レバー52との係合が外れる広い間隔に設定しているため、ヘッド保持ユニット21に対して回転ヘッド11を着脱するときに、1番ホルダ12(A)のレバー係合片39(A)と最終ホルダ12(L)のレバー係合片39(L)との間の広い隙間をZ軸レバー52を上下方向にすり抜けさせる通路として使用することで、回転ヘッド11の着脱時にZ軸レバー52をレバー係合片39と干渉しない位置へ退避移動させることなく、回転ヘッド11を迅速に着脱することができる。しかも、Z軸レバー52をレバー係合片39と干渉しない位置へ退避移動させる機構が不要であるため、構成が複雑化しない利点もあり、低コスト化の要求も満たすことができる。
【0038】
更に、本実施例では、部品吸着及び実装動作時にノズルホルダ12のレバー係合片39を押し下げる押し下げ部材を押し下げローラ54で構成しているため、オーバーラップ動作時の押し下げローラ54とレバー係合片39との間の摩擦力を大幅に低減できて、スムーズなオーバーラップ動作が可能となると共に、耐久性も向上できる利点がある。
【0039】
但し、本発明は、押し下げローラ54を用いる構成に限定されず、押し下げ部材とレバー係合片39とを互いに摩擦抵抗の小さい滑りやすい部材で形成して、摩擦力を低減するようにしても良いことは言うまでもない。
【0040】
また、本実施例では、ヘッド保持ユニット21のR軸22に回転ヘッド11を取り付ける際に、ヘッド保持ユニット21の下降動作によりZ軸駆動機構51が下降して、押し下げローラ54とZ軸レバー52をレバー係合片39に係合させるようにしたが、ヘッド保持ユニット21のR軸22に回転ヘッド11を取り付けた後に、Z軸駆動機構51を下降させて押し下げローラ54とZ軸レバー52をレバー係合片39に係合させるようにしても良い。
【0041】
その他、本発明は上記実施例に限定されず、例えば、ヘッド保持ユニット21に実装ヘッド11を係合保持させる構成や、ノズルホルダ12に吸着ノズル13を係合保持させる構成を適宜変更しても良く、また、回転ヘッド11に保持させるノズルホルダ12の本数を適宜変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10…部品吸着装置、11…回転ヘッド、12…ノズルホルダ、12(A)…1番ホルダ、12(L)…最終ホルダ、13…吸着ノズル、20…ヘッド移動装置、21…ヘッド保持ユニット、22…R軸、23…R軸駆動機構(ヘッド回転駆動機構)、24…R軸ギア、25…R軸モータ、26…Q軸駆動機構(ノズル回転駆動機構)、27…Q軸ギア、28…Q軸モータ、31…係合部材、32…ノズル回転ギア機構、33…円筒ギア、34…小ギア、35…係合孔、37…Z軸モータ、39…レバー係合片、40…スプリング(ばね部材)、43…制御装置、44…フィーダ、51…Z軸駆動機構、52…Z軸レバー、54…押し下げローラ(押し下げ部材)
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8