(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6049888
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】メサ形の電流伝導が改善されたALGAINN半導体レーザおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20161212BHJP
H01S 5/343 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H01S5/042 610
H01S5/343 610
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-533509(P2015-533509)
(86)(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公表番号】特表2015-530753(P2015-530753A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013068176
(87)【国際公開番号】WO2014048687
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年4月17日
(31)【優先権主張番号】102012217662.4
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012220911.5
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ステファン アヴラメスク
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ブリューダル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ アイヒラー
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ゲアハート
(72)【発明者】
【氏名】テレーザ ヴアム
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ シュトラウス
【審査官】
里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−077393(JP,A)
【文献】
特開2000−091705(JP,A)
【文献】
特開2012−164981(JP,A)
【文献】
特開2008−300418(JP,A)
【文献】
特開2009−123772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を積層した積層構造体を有する半導体レーザ(1)であって、
前記積層構造体は少なくとも、
a.n型ドープされたクラッド層(10)と、
b.第3の導波層(11)と、
c.内部に発光構造が配置されている活性領域(6)と、
d.第2の導波層(13)と、
e.阻止層(14)と、
f.第1の導波層(15)と、
g.p型ドープされたクラッド層(16)と
の積層体を有し、
前記第1,第2および第3の導波層(15,13,11)は、少なくともAlxInyGa(1−x−y)Nを含み、ここで、xは0〜1の間の値をとり、yは0〜1の間の値をとり、かつ、xとyとの和は0〜1の間の値をとり、
前記阻止層(14)のAl含有率は、隣接する前記第1の導波層(15)のAl含有率より少なくとも2%多く、
前記阻止層(14)のAl含有率は、前記第1の導波層(15)から前記第2の導波層(13)へ向かう方向に増加していき、
前記積層構造体は両側に段部(9)を有し、
前記両側の段部(9)は前記阻止層(14)の領域内に位置していることにより、前記阻止層(14)の一部の幅が前記第1の導波層(15)の幅より大きくなっている
ことを特徴とする半導体レーザ(1)。
【請求項2】
前記Al含有率は、前記第1の導波層(15)から前記第2の導波層(13)に向かう方向に階段状に増大していき、
前記阻止層(14)は、前記第2の導波層(13)側にある第1の阻止層(17)と、前記第1の導波層(15)側にある第2の阻止層(18)とに分かれており、
前記第1の阻止層(17)のAl含有率は、前記第2の阻止層(18)のAl含有率より少なくとも1%多い、
請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記第1の導波層(15)の平均屈折率は、隣接する前記p型ドープされたクラッド層(16)の平均屈折率より高く、
前記第3の導波層(11)の平均屈折率は、隣接する前記n型ドープされたクラッド層(10)の平均屈折率より高い、
請求項1または2記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記両側の段部は、前記第2の阻止層(18)の領域内に、または前記第1の阻止層(17)の領域内に位置する、
請求項2または3記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記阻止層(14)のAl含有率は、前記第1の導波層から前記第2の導波層に向かう方向に、直線状に増大していく、
請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記第1の導波層(15)、前記第2の導波層(13)および前記阻止層(14)はp型ドープされており、
前記阻止層(14)のドープ濃度は前記第1の導波層(15)のドープ濃度以上であり、かつ、前記第2の導波層(13)のドープ濃度は前記第1の導波層(15)のドープ濃度より低濃度であるか、または、前記第2の導波層(13)はアンドープ層である、
請求項1から5までのいずれか1項記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記第1の阻止層(17)のp型ドープは、前記第1の導波層(15)のp型ドープより高濃度であり、
前記第2の阻止層(17,18)はp型ドープされており、
前記第1の阻止層(17)のドープは前記第2の阻止層(18)のドープより高濃度であり、
前記第2の阻止層のドープ濃度は前記第1の導波層(15)のドープ濃度以上であり、
前記第2の導波層(13)のドープは前記第1の導波層(15)のドープより低濃度である、
請求項2から5までのいずれか1項記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記p型ドープされたクラッド層(16)のドープは、前記第1の導波層(15)のドープより高濃度である、
請求項1から7までのいずれか1項記載の半導体レーザ。
【請求項9】
前記第1の阻止層(17)と前記第2の阻止層(18)との間に、中間層(21)が設けられている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の半導体レーザ。
【請求項10】
前記阻止層は、少なくとも1つのAlGaN層および/またはAlInGaN層および/またはAlInN層を含む、
請求項1から9までのいずれか1項記載の半導体レーザ。
【請求項11】
複数の層をY軸に沿って積層した積層構造体を有する半導体レーザの製造方法であって、
前記複数の層は、Z軸とX軸とにより定まる平面内にて延在し、
前記X軸とZ軸とY軸とは相互に直交し、前記Y軸は前記積層構造体の高さを表し、前記X軸は前記積層構造体の幅を表し、前記Z軸は前記積層構造体の長さを表し、
前記Y軸に沿って少なくとも、
a.n型ドープされたクラッド層と、
b.第3の導波層と、
c.内部に発光構造が配置された活性領域と、
d.第2の導波層と、
e.阻止層と、
f.第1の導波層と、
g.p型ドープされたクラッド層と
の積層体を形成する、製造方法において、
前記第1,第2および第3の導波層をAlxInyGa(1−x−y)Nから形成し、ここで、xは0〜1の間の値をとり、yは0〜1の間の値をとり、かつ、xとyとの和は0〜1の間の値をとり、
前記第1の導波層の平均屈折率を、隣接する前記p型ドープされたクラッド層の平均屈折率より高くし、かつ、前記第3の導波層の平均屈折率を、隣接する前記n型ドープされたクラッド層の平均屈折率より高くし、
前記阻止層には、隣接する前記第1の導波層のAl含有率より少なくとも2%多いAl含有率を含ませ、
前記阻止層のAl含有率は、前記第1の導波層から前記第2の導波層に向かう方向に増加するようにし、
前記積層構造体の、YX平面で見て両側に、対称的な段部を設け、
前記両側の段部を前記阻止層の領域内に配置することにより、当該阻止層の一部の幅が前記第1の導波層の幅より大きくなるようにする
ことを特徴とする製造方法。
【請求項12】
前記Al含有率を、前記第3の導波層から前記第2の導波層に向かう方向に階段状に増加させ、
前記阻止層を、前記第2の導波層側にある第1の阻止層と、前記第1の導波層側にある第2の阻止層とに分け、前記第1の阻止層には、前記第2の阻止層のアルミニウムより少なくとも1%多いアルミニウムを含有させる、
請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
前記両側の段部を、前記第1の阻止層または前記第2の阻止層の領域に配置する、
請求項11または12記載の製造方法。
【請求項14】
前記阻止層のAl含有率を、前記第1の導波層から前記第2の導波層に向かう方向に増加させていく、
請求項11から13までのいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
前記阻止層のAl含有率を、前記第1の導波層から前記第2の導波層に向かう方向に直線状に増加させていく、
請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
前記第1の導波層、前記第2の導波層および前記阻止層にp型ドープし、
前記阻止層のドープ濃度を前記第1の導波層のドープ濃度以上に規定し、かつ、前記第2の導波層のドープ濃度を前記第1の導波層のドープ濃度より低く規定する、
請求項11から15までのいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の半導体レーザと、請求項11に記載の半導体レーザの製造方法とに関する。
【0002】
本願は、独国特許出願第102012217662.4号および第102012220911.5号の優先権を主張するものであり、これを引用することにより、その開示内容は本願の開示内容に含まれるものとする。
【0003】
従来技術では、リッジ導波路形態を有する端面発光型半導体レーザが知られている。この半導体レーザは有利には、III-V 族半導体材料から製造される。半導体レーザは、XZ平面上に位置する複数の層の形状で積層されたものである。これらの各層は、Y軸に沿って相互に重なって配置されている。この半導体レーザはYZ平面において、狭幅の上側領域から広幅の下側領域までの段部を有する。半導体レーザのこの積層体は、P型クラッド層と、導波路と、活性領域と、第2の導波路と、第2のクラッド層とを有する。前記段部は、上部の導波路に接するように設けられている。
【0004】
本発明の課題は、半導体レーザの活性領域における電流伝導を改善することである。
【0005】
本発明の前記課題は、請求項1に記載の半導体レーザと、請求項11に記載の製造方法とによって解決される。
【0006】
他の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
前記半導体レーザは、阻止層の領域において2次元キャリアガスを弱めることにより電流伝導が改善されるという利点を奏する。さらに、積層構造体の段部が少なくとも阻止層に隣接して配置されていることにより、電流制限絞りも支援されることになる。したがって、段部は阻止層の上面に配置するか、または阻止層中に配置することができる。さらに、第1の導波路を前記段部と共に設けることにより、予想に反して、半導体レーザのパフォーマンスも改善される。このことにより、活性領域における電流密度を、従来技術と比較して上昇させることができる。
【0008】
電流絞りは、阻止層中のアルミニウム含有率が第2の導波層に向かう方向に、つまり活性領域に向かう方向に増大していくことにより支援される。
【0009】
上記構成により、半導体レーザのレーザデータを、特に閾値および勾配を改善することができる。このことを実現するためには、半導体構造体すなわち活性領域内への電荷担体の注入効率を最適化する。このようにして、移動電子がp型ドープ領域に達し、ここで非発光再結合を行うことを回避することができる。
【0010】
上述の構成の阻止層により、アルミニウム含有率の過度に急激な変化を回避することができ、これにより、導波層と阻止層との界面における2次元正孔ガスの形成が低減する。2次元正孔ガスにおける正孔の横方向伝導率が高いと、側方の縁辺領域に電流が拡開するという欠点が生じる。これらの利点は、極性層でも非極性層でも実現することができる。
【0011】
このように改善した積層体と、段部の、この積層体に合わせて調整した配置とにより、良好な電子注入効率を維持しながら正孔注入効率の改善を実現することができる。
【0012】
他の1つの実施形態では、アルミニウム含有率が非常に高い層を1つ挿入する代わりに、アルミニウム含有率がそれぞれ異なる複数の層を挿入することにより、活性領域内における正孔輸送が改善され、顕著な2次元正孔ガスの発生が低減または防止されるように、阻止層を構成する。たとえば、前記阻止層はAlGaN,AlInGaNまたはAlInNを含むことができ、特に、前記阻止層をAlGaN層および/またはAlInGaN層および/またはAlInN層として構成することができる。
【0013】
p型ドープ側から活性領域の方向にアルミニウム含有率を増加していくことにより、正孔に対して複数の小さな障壁が、または上昇していく1つの障壁が得られる。このようにして、アルミニウム含有率が階段状に上昇するかまたは漸増的に上昇することにより、正孔の輸送が容易になる。このことによって更に、バンド端ジャンプの高さが低下し、ひいては2次元正孔ガスの顕著さも低下する。
【0014】
1つの実施形態では、阻止層は第1の阻止層と第2の阻止層との形態で形成されており、これら2つの阻止層の各アルミニウム含有率は異なり、第2の導波層側にある阻止層のアルミニウム含有率は、第2の阻止層のアルミニウム含有率より少なくとも1%多い。アルミニウム含有率がそれぞれ異なる複数の阻止層を形成することにより、阻止層内の2次元キャリアガスを規定通りに弱めることができる。
【0015】
選択した実施形態に応じて、阻止層のアルミニウム含有率の値を最大30%とすることができる。このことにより、2次元正孔ガスを大きく弱めることができる。
【0016】
選択した実施形態に応じて、両側の段部を第1の導波層の方により近接させるか、または第2の導波層の方により近接させ、かつ、阻止層に隣接するかないしは阻止層中に配置される。段部が第2の導波層に近接するほど、すなわち活性領域に近接するほど、電流はより絞られ、このことによって活性領域中の電流密度が高くなる。
【0017】
他の1つの実施形態では、前記阻止層は一体形の層として形成されており、アルミニウム含有率は第1の導波層から第2の導波層に向かう方向に増大していく。この増大はたとえば直線状とすることができる。さらに、第2の導波層に向かう方向にアルミニウム含有率が直線状よりも大きく増大することも可能である。アルミニウム含有率の増大の態様と、アルミニウム含有率の値とにより、電流絞りを個別に調整することができる。また、段部を阻止層の領域に配置することにより、活性領域中の電流密度の制限絞りを適合することもできる。
【0018】
他の1つの実施形態では、第1の阻止層と、第2の阻止層と、第1の導波路と、第2の導波路とはp型ドープされており、その平均ドープ濃度は、第1の阻止層の平均ドープ濃度が第2の阻止層の平均ドープ濃度より高く、第1の導波層の平均ドープ濃度が第2の阻止層のドープ濃度以上となるように調整されている。また、第2の導波層のドープ濃度は、第1の導波層のドープ濃度より低い。たとえば、第2の導波層をアンドープ層とすることができる。他の1つの実施形態では、第1の阻止層の平均ドープ濃度は第2の阻止層の平均ドープ濃度より高い。また、第2の阻止層の平均ドープ濃度は、第1の導波層の平均ドープ濃度より高い。さらに、第1の導波層の平均ドープ濃度は、第2の導波層の平均ドープ濃度より高い。ドーパントとしては、たとえばマグネシウムを使用することができる。
【0019】
他の1つの実施形態では、p型クラッド層のドープ濃度は第1の導波層のドープ濃度より高い。さらに、選択した実施形態に応じて、各層内にそれぞれ、ドープ濃度に複数の段を設けること、またはドープ濃度の勾配を設けることも可能である。ドープ濃度を低下させることにより、活性領域により生成される光の光学モードの吸収が小さくなる。
【0020】
選択した実施形態に応じて、第1の導波層と第2の導波層との間に少なくとも1つの付加層を設けることもできる。付加層はたとえば、第1の阻止層と第2の阻止層との間に設けることができる。前記付加層はたとえば窒化ガリウムから成ることができ、半導体レーザの機能を支援するもの、または少なくとも阻害しないものとすることができる。
【0021】
以下、図面を参照して、実施例について詳細に説明する。この説明内容を併せて参酌すれば、本発明の上述の特性、特徴および利点と、本発明を実現する態様とを、より明確に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】一実施形態の半導体レーザの概略的な断面図である。
【
図3】
図2の半導体レーザの電流伝導の概略図である。
【
図4】両側の段部の高さ位置が異なる、2つの阻止層を備えた半導体レーザの他の実施形態を示す図である。
【
図5】両側の段部の高さ位置が異なる、2つの阻止層を備えた半導体レーザの他の実施形態を示す図である。
【
図6】複数の阻止層を有する半導体レーザの他の実施形態を示す図である。
【
図7】複数の阻止層を有する半導体レーザの他の実施形態を示す図である。
【
図8】アルミニウム勾配を有する阻止層を備えた半導体レーザの実施形態を示す図である。
【
図10】各層のマグネシウムドープ濃度についての表示と共に示す、半導体レーザの概略図である。
【
図11】第1の導波層と第2の導波層との間に中間層を備えた半導体レーザの別の実施形態を示す図である。
【
図12】半導体レーザの別の実施形態を示す図である。
【
図13】半導体レーザの別の実施形態を示す図である。
【
図14】半導体レーザの別の実施形態を示す図である。
【
図15】半導体レーザの別の実施形態を示す図である。
【0023】
図1に、X,Y,Z軸の座標系を示しており、これらの各軸は相互に直交している。
図1は半導体レーザ1の概略的な斜視図であり、この半導体レーザ1は、基体2と、上部層3とを有する。半導体レーザ1は、ZX平面内に位置する複数の層の形態で構成されており、これらの各層はY軸に沿って積層されている。段部3の終端にはp型コンタクト層4が設けられており、基体2の、このp型コンタクト層4とは反対側の終端部に、n型コンタクト層5が設けられている。基体2内には、p型コンタクト層4とn型コンタクト層5との間に、光を生成するように構成された活性領域6が配置されている。この活性領域6は、水平方向にZ軸に沿って延在している。相互に反対側にある側面7,8には、第1の共振器ミラーおよび第2の共振器ミラーが設けられている。上部層3は、X軸方向に両側に設けられた段部9において、X軸方向の幅がより広い基体2に繋がっている。レーザ光の出射は、これら2つの共振器ミラーのうち1つを介して行われる。
【0024】
図2は、半導体レーザ1をYX平面で切断したときの概略的な断面図である。n型コンタクト層5には、n型ドープされたクラッド層10が接続されており、このn型ドープクラッド層10上に第3の導波層11が配置されている。第3の導波層11上に活性領域6が設けられており、活性領域6上には第2の導波層13が配置されている。第2の導波層13上に阻止層14が設けられており、この阻止層14上に第1の導波層15が配置されている。第1の導波層15上にp型クラッド層16が配置されており、p型クラッド層16上にはp型コンタクト層4が設けられている。図中の実施例では、阻止層14は第1の阻止層17および第2の阻止層18の形態で形成されている。第1の阻止層17と第2の阻止層18とでは、少なくともバンドギャップが異なっており、たとえばアルミニウム含有率によって各バンドギャップを変化させる。第1の阻止層17は第2の導波層13側にあり、特に、第2の導波層上に設けられている。第2の阻止層18は第1の導波層15側に設けられており、たとえば、第1の導波層15と第1の阻止層17とに直接接するように設けられている。n型ドープクラッド層およびp型ドープクラッド層は、ガリウムと窒素、AlInGaN、AlGaNを含むか、またはAlInNを含み、これら両クラッド層はたとえばAlInGaN層として構成されている。
【0025】
第1,第2および第3の導波層15,13,11の組成は、異なる組成とすることができる。第1,第2および/または第3の導波層はAl
xIn
yGa
(1−x−y)Nを含み、ここでxは、0〜1の間の値をとることができ、yは0〜1の間の値をとることができ、和(x+y)は0〜1の間の値をとることができる。
【0026】
さらに、各導波層15,13,11は平均で、p型クラッド層16ないしはn型クラッド層10の屈折率より大きい屈折率を有する。第1の導波層15の厚さを0nm〜300nmの間とすることにより、良好な特性が実現される。第1の導波層15の厚さを20nm〜200nmの間とすることにより、より良好な特性が実現される。更により良好な特性を実現するためには、第1の導波層15の厚さを40nm〜100nmの間とする。第1の導波層15はAl
xIn
yGa
1−x−yNから形成されており、ここでxは、0%〜20%の間とすることができる。他の1つの実施形態では、xを0%〜6%の間とすることができる。他の1つの実施形態では、xを0%〜3%の間とすることができる。Yは0%〜10%の間の値をとることができる。
【0027】
第2の導波層13はAl
xIn
yGa
1−x−yNから成り、たとえば3nm〜300nmの間の厚さを有する。xは0%〜5%の間の値をとることができ、yは0%〜12%の間の値をとることができる。たとえば、xは0%〜2%の間の値をとることができ、yは0%〜7%の間の値をとることができる。
【0028】
阻止層14はアルミニウム含有層である。阻止層14は、それぞれ異なるアルミニウム含有率の複数の単層を有する多層構成とするか、または、アルミニウム含有率の勾配を有する単層とするか、または、アルミニウム含有率がそれぞれ異なる複数の層と、アルミニウム勾配を有する少なくとも1つの層とを組み合わせたもので構成することができる。阻止層14のアルミニウム含有率は、第1の導波層15の含有率より多い。たとえば、前記阻止層のアルミニウム含有率は第1の導波層15に隣接する領域において、当該第1の導波層15のアルミニウム含有率より少なくとも2%多い。選択した実施形態に応じて、第1の導波層15に隣接する場所における阻止層14のアルミニウム含有率を、当該第1の導波層15のアルミニウム含有率よりも少なくとも4%多くすることができる。阻止層14は、窒化アルミニウムガリウム層、アルミニウムインジウムガリウム窒化物層および/または窒化アルミニウムインジウム層を有することができる。さらに、前記阻止層14をAlGaN層またはAlInGaN層またはAlInN層として形成することもできる。インジウムの割合は、20%未満、有利には5%未満とすることができる。その際には、阻止層14の厚さをたとえば10nm〜100nmの間とすることができる。選択した実施形態に応じて、阻止層14は20nm〜60nmの間の厚さを有することができる。
【0029】
阻止層14を第1の阻止層17および第2の阻止層18の形態とする際には、第1の阻止層17の平均アルミニウム含有率は、第2の阻止層18の平均アルミニウム含有率より多い。第1の阻止層および第2の阻止層の各アルミニウム含有率の差は、たとえば1%以上であり、たとえば6%または15%である。この実施形態ではさらに、第2の阻止層18も、前記阻止層14の上記値をとることができる。両側の段部9の高さ位置は、少なくとも阻止層14に隣接して、特に阻止層14内に位置する。
図2の実施例では、段部9は第2の阻止層18の領域に配置されている。
【0030】
図3に、p型コンタクト4からn型コンタクト5に向かう方向の電流伝導19を矢印で概略的に示す。アルミニウム含有率が第1の導波層15より高く、かつ、アルミニウム含有率が階段状に上昇するかまたはアルミニウム含有率が漸増する勾配を示す阻止層14を配置することにより、電流19の、活性領域6の方向に作用する制限絞りを実現することができる。この制限絞りは矢印で示している。段部9の上述の構成と、上述の有利な構成の阻止層14とにより、当該阻止層14内において生成される2次元正孔ガス12が弱まる。正孔ガス12は
図3では、点線で概略的に示されている。
【0031】
図4は、別の実施形態の半導体レーザ1の、XY平面の断面を示す概略図である。この半導体レーザ1の基本的構成は
図2の構成となっているが、段部9は
図2よりも低い位置にあり、第1の阻止層17の領域に設けられている。
【0032】
図5は別の実施形態の半導体レーザを示している。この半導体レーザの基本的構成は
図2の構成となっているが、第2の阻止層18の段部9は、第1の導波層15と第2の阻止層18との境界領域に位置している。
【0033】
図6は、別の実施形態の半導体レーザの、XY平面の断面を示す概略図である。この半導体レーザの基本的構成は
図2の構成となっているが、
図2の構成との相違点としては、第1,2の阻止層17,18を設ける代わりに、第1,第2および第3の阻止層17,18,20が設けられている。これら3つの阻止層は、たとえばそれぞれ異なるアルミニウム含有率を有し、第3の阻止層20のアルミニウム含有率は第2の阻止層18のアルミニウム含有率より少なく、かつ、第2の阻止層18のアルミニウム含有率は第1の阻止層17のアルミニウム含有率より少ない。第1の阻止層17の最大アルミニウム含有率は、たとえば30%である。さらに、第3の阻止層20のアルミニウム含有率は、第1の導波層15のアルミニウム含有率より少なくとも2%多い。有利には、第3の阻止層20のアルミニウム含有率は、第1の導波層15のアルミニウム含有率より少なくとも4%多い。
図6の実施例では、段部9は第1の阻止層17と第2の阻止層18との境界領域に配置されている。
【0034】
図7は別の実施形態を示しており、この実施形態の基本的構成は、
図6の実施形態の構成となっているが、段部9は第1の阻止層17の領域に配置され、特に、第1の阻止層17の高さの半分の位置に配置されている。選択した実施形態に応じて、アルミニウム含有率が異なるおよび/または等しい、3つより多くの阻止層を設けることもできる。第1の阻止層17はたとえば40nm〜60nmの間の厚さとすることができ、特に、たとえば50nmの厚さとすることができる。段部9は、第1の阻止層の0〜30nmの間の深さ位置に配置することができ、たとえば20nmの深さ位置に配置することができる。
【0035】
図8は、別の実施形態の半導体レーザの、XY平面の断面を示す概略図である。この半導体レーザの基本的構成は
図2の構成となっているが、阻止層14は一体形の阻止層として形成されており、当該一体形の阻止層のアルミニウム含有率は、第1の導波層15から第2の導波層13に向かう方向に増加していく。
図9は、阻止層14内においてアルミニウム含有率が第2の導波層13に向かう方向に増加していく様子を示す概略図である。さらに、阻止層14のアルミニウム含有率は第1の導波層15との境界領域において、当該第1の導波層15のアルミニウム含有率より少なくとも2%多い。また、他の1つの実施形態では、阻止層14のアルミニウム含有率は第1の導波層15との境界領域において既に、当該第1の導波層15のアルミニウム含有率より少なくとも4%多くすることもできる。図中の実施例ではアルミニウム含有率は、
図9に示されているように、第2の導波層13に向かう方向に直線状に増加していく。選択した実施形態に応じて、アルミニウム含有率は第2の導波層13に向かう方向に、不連続的または指数関数的に増加していくことも可能である。図中の実施例では段部9は、阻止層14の3分割したうちの最下部分に形成されている。
【0036】
図10は、
図2の半導体レーザ1の、XY平面の断面を示す概略図である。同図ではさらに、p型クラッド層、第1の導波層15、第1の阻止層17、第2の阻止層18および第2の導波層13の各マグネシウムドープ濃度の例を示している。
【0037】
他の1つの実施形態では、第1の阻止層と、第2の阻止層と、第1の導波路と、第2の導波路とには、マグネシウムを用いてp型ドープされており、その平均マグネシウム含有率は、第1の阻止層の平均マグネシウム含有率が第2の阻止層の平均マグネシウム含有率より多く、第1の導波層の平均マグネシウム含有率が第2の阻止層のマグネシウム含有率以上となるように調整されている。また、第2の導波層のマグネシウム含有率は、第1の導波層のマグネシウム含有率より少ない。第2の導波層はアンドープ層とすることもできる。
【0038】
他の1つの実施形態では、p型クラッド層のマグネシウム含有率は第1の導波層のマグネシウム含有率より多い。さらに、選択した実施形態に応じて、各層内にそれぞれ、マグネシウム含有率に複数の段を設けること、またはマグネシウム含有率の勾配を設けることも可能である。Mg含有率を低下させることにより、光学モードの吸収がより小さくなる。マグネシウムのドーピングは、1×10
17〜5×10
20/[1/cm
3]の範囲内、有利には1×10
17〜5×10
19/[1/cm
3]の間の範囲内である。マグネシウムに代えて、たとえば炭素、ベリリウム、亜鉛、カドミウムまたはカルシウムをドーパントとして用いることもできる。
【0039】
図11に、別の実施形態の半導体レーザの、XY平面の断面を概略的に示している。この半導体レーザの基本的構成は、
図2の構成となっている。しかし、
図2の構成の他に更に、第1の阻止層17と第2の阻止層18との間に中間層21が設けられている。中間層21はたとえば窒化ガリウムを含むか、または窒化ガリウムから成ることができる。選択した実施形態に応じて、中間層21の層厚をたとえば20nm未満とすることができる。
【0040】
さらに、中間層21を第1の導波層15と第2の阻止層18との間に、および/または、第2の導波層13と第1の阻止層17との間に配置することもできる。選択した実施形態に応じて、第1の導波層15と第2の導波層13との間に複数の中間層21を設けることも可能である。また、相応の中間層を、アルミニウム勾配を有する一体の阻止層14内に設けることも可能である。段部9は、たとえば適切な縁辺領域をエッチング除去することにより、半導体レーザに形成される。このエッチング除去では、段部9の高さは時間によって、または、エッチングした層の組成の信号識別を行うことによって達成される。その際にはエッチング速度は、層の組成と、使用されるエッチング法とに依存する。
【0041】
段部9を設けるためには、たとえば反応性イオンエッチング(RIE)法またはケミカルアシステッドイオンビームエッチング(CAIBE)法等のドライケミカル除去法を用いることができる。
【0042】
活性領域はたとえば、窒化インジウムガリウム層と窒化ガリウム層とを交互に設けて構成される量子トレンチ構造とすることができる。また、他の種類の活性領域を光生成のために用いることも可能である。
【0043】
有利な実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明は、ここで開示した実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の保護範囲を逸脱することなく、実施例から他の変更を導き出すことが可能である。
【0044】
図12は別の実施形態の半導体レーザを示しており、同図では、上部層3の両側に設けられる段部9の他に、基体2の上面に別の段部23が追加して設けられている。上部層3と前記別の段部23との間の距離は、両側でそれぞれ異なる距離とすることができる。その距離は、0.1μmを上回る範囲、たとえば2μmを上回る範囲とすることができ、有利には10μmを上回る範囲とすることができる。
図12の構成は、メサトレンチを有するリッジレーザとすることができる一実施例を概略的に示している。
【0045】
図13は、互いに隣り合って配置された複数の半導体レーザを有する、一実施例のレーザバーを示しており、その基体は、それぞれ対応する段部9を有する複数の上部層3を備え、当該各段部9間にはさらに、別の段部23を設けることができる。これらの別の段部23がいわゆるメサトレンチを成し、上部層3が半導体レーザを成す。
【0046】
図14は別の実施形態の半導体レーザを示しており、この半導体レーザでは、上部層3の側方に更に別の上部層3が設けられているが、たとえば、これら別の上部層3の電気的コンタクトは行われない。その間隔、すなわち各段部9の幅24,25は、0.1μmを上回る範囲、たとえば2μmを上回る範囲、有利には10μmを上回る範囲内である。
【0047】
図15は別の実施形態の半導体レーザを示しており、この半導体レーザでは、上部層3の側方は半導体材料の段部9によって区切られている。さらに、上部層3の側方には充填材料26が設けられている。この充填材料26は基体2を覆い、図中の実施例では、当該充填材料26の高さは上部層3の高さに等しい。このようにして、段部9は充填材料28に埋め込まれる。
図15の実施例は、埋め込みヘテロ構造レーザとすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 高出力レーザ
2 基体
3 上部層
4 p型コンタクト
5 n型コンタクト
6 活性領域
7 第1の側面
8 第2の側面
9 段部
10 n型クラッド層
11 第3の導波層
12 正孔ガス
13 第2の導波層
14 阻止層
15 第1の導波層
16 p型クラッド層
17 第1の阻止層
18 第2の阻止層
19 電流
20 第3の阻止層
21 中間層
23 別の段部
24 第1の間隔
25 第2の間隔
26 充填材料