(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上説明した従来の構造は、複雑な形状のカム部品が使われており、また部品点数の多い構造でもある。反転体を構成する固定体の溝をガイドにして、軸線方向へ移動させる構造のものは、反転体の形状が複雑であり、この製造方法が限定される上、構造上安定化のために当接部位が2つの部材でバランスをとり挟持する構造である。この構造は、カム部品の形状が複雑である上その動作範囲も限定され、かつ動作の安定性に欠ける。更に、この構造のカム面に対する当接部は、手動操作においては常に当接状態の安定性、耐摩耗性の確保のために硬度を要する部位であるが、その加工上の困難性もあり、設計上要求される高硬度部位にするのは限界がある。
【0007】
特に、カム構造においての従来からの構成は、平面カム構造のため、上下のカムが一定の荷重で接触状態となり、開閉時の動きに対して常に擦り合わせが行なわれるという構造である。このため特に可動カム面に対しては、一定で安定した当接状態が望まれる。このことにより開閉状態が良好に維持されることになる。更に、開閉状態の途中位置でも開いた状態を維持できる構成も望まれ、又、開閉角度が180度以上を可能とする機能の開閉装置も望まれている。手動操作で開閉させる場合は、両方のカム部材は常にすべり接触で移動する構造である。
【0008】
この従来の構造は、ばねの付勢力で可動体が常に面すべり状態で押圧され、カム面を擦る状態になるので、大きな磨耗が発生する。この磨耗が激しいと、可動体またはカム面に変形を生じさせ、特に可動カムは磨耗が大きく停止位置が定まらず、結果的に携帯電話等の電子機器を使用中に開閉位置が狂ってしまうおそれを生じさせる。これを避けるため、特に、使用頻度が高い磨耗の伴うカム、ピン等の接触部材は構造を簡素化し、かつ安定的な動作を保証する構造が求められている。
【0009】
本発明は以上のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
本発明の目的は、構造が簡素化され、開閉動作が確実で、低コスト化を図った電子機器の開閉装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、開閉途中の位置で、固定筐体に対し、可動筐体を開閉途中位置でも確実に停止保持できるようにした電子機器の開閉装置を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、180度以上開閉可能な構造の電子機器の開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明1の電子機器の開閉装置は、
第1の筐体(2)に対して第2の筐体(3)を相互に回動可能に連結し折り畳み構造をなし、開いた状態と閉じた状態を繰り返す電子機器の開閉装置(1)であって、
前記第1の筐体(2)に固定されるホルダ(5)と、
前記第1の筐体(2)に固定して前記ホルダ(5)と一体的に設けられ、軸線方向に面したカム面(6a)を有する固定カム(6)と、
前記第2の筐体(3)に内蔵され前記
固定カム(6)のカム面(6a)に対向して配置され、前記固定カム(6)に対し相対回転自在で、且つ前記軸線方向に移動可能
で前記固定カム(6)のカム面(6a)に当接するカム部(7a)を有する可動カム(7)と、
前記可動カム(7)
のカム部(7a)を前記固定カム(6)
の前記固定カム(6)のカム面(6a)側へ付勢する第1ばね(13)と、
前記第2の筐体(3)に固定的に設けられた保持体(4)と、
前記保持体(4)内に設けられ、前記可動カム(7)の移動姿勢を支持し、前記保持体(4)とともに回転する支持部材(8)と、
前記固定カム(6)の前記軸線方向に形成された貫通孔(6b)に進退自在に保持され、一端が前記可動カム(7)のカム面
(7a)に当接されるピン体(10)と、
前記ホルダ(5)に回転自在に保持され、前記ピン体(10)の
他端と当接する第1カム部(9a)を有する回転カム(9)と、
前記回転カム(9)を回転方向に付勢する第2ばね(14)と、
前記回転カム(9)の第2カム部(9b)に
当接する当接部(11a)を有し、前記第2ばね(14)の付勢力に抗し押圧することにより、前記回転カム(9)
の前記第2カム部(9b)を押圧して、前記第2ばね(14)が付勢する回転方向とは逆の回転方向に前記回転カム(9)を強制的に回転させる押圧部材(11)と、
前記押圧部材(11)を移動自在に保持し、前記ホルダ(5)に固定される保持部材(12)と、
前記押圧部材(11)を前記保持部材(12)
側に付勢する第3ばね(15)とからなる。
【0011】
本発明2の電子機器の開閉装置は、本発明1において、前記ピン体(10)は、丸棒状体であり、前記貫通孔(6b)が円筒孔であることを特徴とする。
本発明3の電子機器の開閉装置は、本発明1又は2において、前記ピン体(10)の端部は、球面体であることを特徴とする。
本発明4の電子機器の開閉装置は、本発明1又は2において、前記可動カム(7)のカム面の中間位置に、軸線方向に対し略直角方向に平面形状の部位(7c)を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子機器の開閉装置は、簡素な構造でワンタッチの開閉動作を実現できたので、低コストのものとなった。又、本発明は、開閉装置の内部構造において、従来の可動カムの採用に加え、ピン体構造としたことで、ワンタッチ操作の構造が簡素化された上、低コスト化が図られ、更に、開閉動作角度が大きくなった。固定カムの貫通孔で構成されるピン孔に、保持されている丸棒状のピン体を採用することにより、開閉状態の安定化が図られ、180度以上の開閉角度も可能となった。
【0013】
更に、可動カム面の形状に略水平面(図示上)を設ける構造にしたことで、開閉途中の角度位置でも安定して筐体を停止保持できるようになった。以上の理由で、本発明の電子機器の開閉装置は、部品点数がすくないので、構造が簡素化され、開閉動作が確実で、しかも低コスト化を図ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を図に基づき説明する。本発明は、小型の電子機器に適用されるものであるが、本実施の形態は携帯電話に適用するものとして説明する。
図1の構造は、本発明を適用した折り畳み構造の携帯電話の外観図であり、開いた状態を示す。本実施の形態は、折り畳み式の携帯電話のヒンジ部に組み込まれた電子機器の開閉装置(以下、「開閉装置」という。)1である。
【0016】
本例の折り畳み式の携帯電話は2体の筐体で構成され、一方の筐体は常時片手で手持ち状態にある固定側の固定筐体2であり、キー等の操作機能のあるものである。他方の筐体は、この固定側の固定筐体2に対し、可動可能な蓋状の可動筐体3でありヒンジ部を介して揺動する。この蓋状の可動筐体3は、表示部を構成する。可動筐体3は手動操作で開閉できるが、又、他方の手を使わずワンタッチの片手操作で開くこともできる。これらの基本構造、機能は、前述した特許文献以外にも多数のものが提案されており公知技術である。
【0017】
本発明はこれらの機器のヒンジ部に関わり、以下、本発明に関わる開閉装置1の構造を詳細に説明する。
図2〜
図7をもとに、実施の形態の開閉装置1の構造及び動作を詳細に説明する。
図2は、筐体のない状態の開閉装置1の全体を示す外観図である。
図3は、開閉装置1の構成部品を示す展開図である。開閉装置1は、
図3に示すように、主な部品として、ケース4、ホルダ5、カム面6aを有する固定カム6、カム部7aを有する可動カム7、支持部材8、回転カム9、カムピン10、レバー11、このレバー11を保持する保持部材12、付勢部材としてばね13、14、15等で構成されている。
【0018】
図4は、電子機器の開閉装置1を立体状の模式図として示す説明図であり、前述した2つの固定筐体2、可動筐体3が閉じている場合の状態を示す。
図5は、実施の形態1の電子機器の開閉装置1を立体状の模式図として示す説明図であり、ワンタッチで可動筐体3が開き始める状態を示している。
図6は、開閉装置1の開閉に伴う動作の工程を示し、ワンタッチの場合の説明図である。
図7は、開閉装置1の開閉に伴う動作の工程を示し、手動操作の場合の説明図である。
【0019】
ホルダ5は、固定筐体2に固定されるとともに、外周のつば部を介して固定カム6を一体的に結合し固定している。従って、固定カム6は、可動筐体3の開閉動作に関わらず固定状態を維持している。この固定カム6のカム面6aに、対向して可動カム7のカム部7aが当接されている。可動カム7は、第1ばね13の付勢力(F1)で、ホルダ5に固定されている固定カム6側に押されている。従って、可動カム7は、回動可能で、且つ軸線方向にも移動可能である。即ち、カム面6a側に位置するカム部7aが、可動カム7の自転に伴い、固定カム6のカム面6aに当接しながら、可動カム7は自転しながら軸線方向に移動する。
【0020】
固定カム6は、筒状体で軸線方向の端部に位置してカム面6aを有している。このカム面6aの筒状の一部に、この中心軸線と平行な方向に貫通孔であるピン孔6bが設けられている。このピン孔6bには、カムピン10が軸線方向に摺動自在に挿入されている。カムピン10は、中実の丸棒状体である。カムピン10は、ピン孔6b内を自転することも可能であり、制約なしに進退移動する。カムピン10を単純な丸棒状体としたことで、旋削加工等が容易な上、耐摩耗性のある高硬度の部材で作ることができる。
【0021】
本実施の形態においてカムピン10は、その断面形状が円の丸棒状体が好ましいとしているが、矩形状のものであってもよい。カムピン10の両端部は半球状体をなしている。このことは、カムピン10の半球状体がカム面に当接したとき、運動がフリーで安定した接触を保つので運動と力の伝達が円滑にできる。カムピン10の可動カム7の端部は、固定カム6のカム面6aから張り出し、可動カム7のカム面7aに当接している。又、固定カム6を挟んで、可動カム7の反対側には、固定カム6に隣接して回転カム9が配置されている。この回転カム9は、軸線方向の移動が規制され回転自在にホルダ5に支持されている。この回転カム9には、傾斜面を有する2つのカム部が軸線方向に相対して設けられている。
【0022】
一方の第1カム部9aのカム面には、カムピン10の半球状体である端部に当接している。この回転カム9は、その中心線を中心に自転するねじり方向に付勢されている。この付勢のために、回転カム9は、ねじりばねである第2ばね14の端部と連結されている。また、この第2ばね14の他端は、固定側に結合している。従って、この回転カム9は、第2ばね14の付勢力(F2)により、ホルダ5である固定側を基点に、
図4で示す矢印で示す回転方向にねじられ、付勢された状態で回転可能な状態である。
【0023】
また、回転カム9は、第1カム部9aの反対側に第2カム部9bが形成されている。この第2カム部9bのカム面は、傾斜のカム面となっていて、第1カム部9aと第2カム部9bが対の形で形成されている。この第2カム部9bの軸線方向には、これと対向して一対のレバー11が配置されている。このレバー11の回転カム9側の当接部11aが、第2カム部9bに当接している。このレバー11は、ホルダ5に固定される保持部材12に軸線方向に進退自在に保持されている。
【0024】
又、このレバー11は、シャフト16の端部側に位置し内蔵されている第3ばね15の付勢力(F3)により、保持部材12側に常時付勢され保持されている。レバー11は、その端部がホルダ5の外部に露出し、フラット部11bを構成し、これがワンタッチのための押圧部を構成する。このレバー11は、2つの当接部11aから構成され、その端部が回転カム9の第2カム部9bのカム面に当接している。
【0025】
レバー11のフラット部11bを、第3ばね15の付勢力に抗して強制的に押圧すると、
図5に示すように、カムピン10の端部が第1カム部9aの底部に達する。それに伴い、カムピン10は移動し、固定カム6のピン孔6b内に入り込む。この状態は、可動カム7の制止状態が外れることになり、可動カム7は自転と軸線方向の移動が可能となる。レバー11の当接部11aは、第2カム部9bのカム面を押圧することになり、回転カム9は第2ばね14の付勢力に抗して、自転である回転方向に移動させることが可能となる。この動作で第1カム部9aも一体移動し、カムピン10は第1カム部9aのカム面に沿って軸線方向に移動可能となる。
【0026】
一方、取り付け状態は図示していないが、ケース4はこの開閉装置1の全体を覆う状態の形状になっていて、可動筐体3に固定されている。このケース4は、開閉装置1を内蔵させた部材であるとともに、可動筐体3の保持体を構成しているので、このケース4は、可動筐体3の開閉動作に合せて一体的に回動する。開閉装置1の中心部にはシャフト16が設けられ、ケース4はこのシャフト16にSUSワッシャ17及び樹脂ワッシャ18を介してEリング(E型止め輪)19で係止されている(
図3参照)。このケース4内に筒状の支持部材8が収納され、この支持部材8はケース4に対し相互回転が規制して内蔵され、側壁に溝8aが設けられ可動カム7の軸線方向のガイドとなっている。
【0027】
この溝8aに可動カム7のつば部7bが軸線方向に摺動自在に嵌まり込み、相対的に可動カム7を軸線方向にガイドしている。又、この支持部材8内には第1ばね13が内蔵されている。この第1ばね13はコイルばねで、可動カム7を固定カム6側に常時付勢している。この第1ばね13は1個の構成でよいが、ばねの耐久性の向上と付勢力を強くするため複数のばね構成にしてもよい。
図3に示した展開図では2個としているが、1個でもよい。
【0028】
固定カム6のカム面6aは、軸線方向の端部にカム面が形成されたものである。可動カム7のカム部7aは、カム面6aに当接しているときは、支持部材8に軸線方向に移動自在であるが、回転自在に支持されているので、回転しながら軸線方向に移動する。可動カム7のカム部7aは、常時このカム面6aに当接し、カム面6aに沿って軸線方向と回転方向に相対して移動する。可動筐体3が閉状態にあるとき固定カム6は固定のままであるが、回動可能な可動カム7も固定カム6から最も離れた部位で制止状態にある。
【0029】
本実施の形態において、カムピン10は、1本で構成している。このことは、可動カム7の回転を180度以上にできることを意味する。即ち、カムに負荷される力を分散させるために、等角度間隔に配置された2本のカムピン10を配置すると、原理的に180度しか回転できない。しかしながら、1本のカムピン10であると、カムを駆動するとき、円周面上の1箇所のみの接触なので、カムピン10の姿勢を変えるような片荷重が発生する。このために、本実施の形態のカムピン10は、その保持状態を、ピン孔6bで摺動自在に支承し、安定的にその姿勢を保持して、片荷重のマイナスを補っている。更に、カムピン10は、単純形状の丸棒状体としているので、加工の容易さは勿論のこと、硬度を高める材質でも使用が容易である。又、可動カム7のカム面は、中間部に軸線方向に対し略直角方向に平坦部7cを設けた構成としている(
図6(d)参照)。これはカムピン10がこの位置に達したときに、このカムピン10には第1ばね13の軸線方向のみの付勢力しか受けない構成となる。
【0030】
可動筐体3の開閉端の位置は、可動カム7の初期位置及び最終移動位置になる。筐体3を開く場合は、当然のことながら手動で開くことを可能とし、可動カム7をこの開く動作で移動させることにより、可動筐体3を第1ばね13の付勢力に抗して最終位置まで開閉させる。このように手動で容易に開閉させる構成であるが、可動筐体3をワンタッチモーションで開くことができる構造になっている。次にこの構成について説明する。
【0031】
[ワンタッチ機構]
ホルダ5の一端には、ワンタッチの開きを可能にするレバー11が組み込まれている。このレバー11は、位置が制止状態にある(
図6(a)の状態)可動カム7の回動動作を可能にするための解除手段である。ホルダ5の端部には保持部材12が取り付けられ、この保持部材12に保持された状態で、レバー11が軸線方向進退自在となっている。レバー11は常時第3ばね15の付勢力(
図6(a)のF3参照)により、保持部材12側に押圧され位置が規制されている。一方レバー11の一端の当接部11aは、回転カム9の第2カム部9bに当接している。可動筐体3が閉状態にあるときは、
図4に示すように、回転カム9は、第2ばね14のねじり方向の付勢力(F2)により矢印で示す方向に(
図4参照)回転移動している。
【0032】
この状態はレバー11が回転カム9の第2カム部9bの傾斜面で保持部材12側に移動する状態であるとともに、第3ばね15の付勢力で保持部材12に当接押圧されている状態でもある。一方、回転カム9の第1カム部9aに対しては、カムピン10がカム面に沿って押し上げられ第1カム部9aの頂部に位置している。カムピン10の固定カム6側の端部は、固定カム6のカム面6a上に張り出し、可動カム7のカム部7aの背面に当接し、可動カム7の移動を制止する状態となっている。可動カム7は常時第1ばね13の付勢力により、固定カム6側に押圧されている。第1ばね13の付勢力(F1)は第2ばね14、第3ばね15の付勢力よりも強いばねとなっている。
【0033】
しかし、可動カム7のカム部7aがカムピン10に当接しても、カムピン10の端部は回転カム9の第1カム部9aの頂部に位置しているので、カムピン10は第1ばね13の付勢力で押圧を受けても押し戻されることはない。従って、2つの固定筐体2、可動筐体3は閉の状態を維持できる。次に、この状態にある開閉装置1をワンタッチで開状態にする構成を説明する。それは、開閉装置1の端部に張り出して設けられるレバー11のフラット部11bを手で押圧することにより、筐体を瞬時に開の状態にすることができる。
図5はその状態を示した図である。
【0034】
レバー11のフラット部11bを、第3ばね15の付勢力に抗して
図5に示す矢印のように手で押圧すると、レバー11の当接部11aが回転カム9の第2カム部9bのカム面を押圧する。このレバー11の当接部11aへの押圧により、第2カム部9bを回転方向に強制的に移動させる。即ち、回転カム9は、
図5の矢印で示す方向に第2ばね14の付勢力に抗しで回転する。これに伴い、回転カム9の第1カム部9aも同方向に回転移動し、カムピン10は矢印で示すように、第1カム部9aの頂部から傾斜のカム面に移動する。このカムピン10が、第1カム部9aの底部まで達したときに、カムピン10の固定カム6側の端部は、第1ばね13の付勢力で押される可動カム7のカム部7aによりピン孔6b内に引き込む。
【0035】
それと同時に可動カム7はカムピン10による規制が解除されるので、カム部7aは第1ばね13の付勢力で付勢され続けながら、固定カム6のカム面6aに沿って移動する。この可動カム7の移動は回転方向の移動であるので、これに伴い支持部材8、ケース4とともに可動筐体3は回動して開くことになる。レバー11のフラット部11bから手を離しても、第2ばね14の付勢力によりカムピン10は、固定カム6側に押圧されているので、移動過程における可動カム7のカム面にカムピン10は当接状態を維持する。
【0036】
この状態で可動カム7は、固定カム6のカム面6a上を当接しながら相対移動する。開閉動作の最終段階においてカムピン10は回転カム9の第1カム9aの頂部に達するようになって、カムピン10は固定された状態となる。又、ワンタッチ開きの押圧部材をレバー11のフラット部11bとしているが、このレバー11のフラット部11bはデザイン等を考慮しボタン形状の外形にしてもよい。ワンタッチで開いた後、再び閉じる場合は逆の動作となり、この場合の可動カム7はカムピン10に乗り上げる状態で移動し、元の位置に戻される。
【0037】
[電子機器の開閉装置の動作]
次に、開閉装置の動作工程について、
図6、7をもとに詳細に説明する。この図は回転方向の展開図であり、可動カム7と固定カム6の相対位置関係を示すため、カム部を平面に展開した模式的な説明図である。この実施の形態では、180度以内の範囲の開きを前提に説明する。
図6(a)〜(f)はワンタッチ動作により筐体を開く状態にする工程を示した説明図である。
図6(a)に示す工程は、可動筐体3が閉じた状態である。可動カム7は、第1ばね13の付勢力(F1)で常に矢印の方向に押圧されている。この可動カム7の初期状態は、可動カム7が固定カム6から最も離れた軸線方向の位置にある。この工程は
図4で示す状態である。
【0038】
回転カム9は、第2ばね14の付勢力(F2)で矢印の方向に押圧された状態である。カムピン10の端部は、下側(図示上)が第1カム部9aの頂部に位置し、上側(図示上)が可動カム7のカム部7a背面に位置している。レバー11は、第3ばね15の付勢力(F3)で矢印の方向に押圧された状態になっている。可動カム7は、カムピン10によりその動きが規制され、定位置を保持し可動筐体3を閉じた状態にしている。この状態でレバー11を押圧すると、
図6(b)に示した工程になり、レバー11の当接部11aが回転カム9の第2カム部9bを第2ばね14の付勢力に抗し押圧することになり、回転カム9は矢印の方向に強制的に移動する。これに伴い、カムピン10は第1ばね13の付勢力により押圧される可動カム7の押圧で、ピン孔6bに押し込まれ回転カム9の第1カム部9aのカム面に沿って底部へ移動する。
【0039】
カムピン10が底部に位置すると、固定カム6のカム面6aはカムピン10の突き出しがなくなり平坦な状態になる。この状態になると、可動カム7は固定カム6上を抵抗なくスムースに移動を継続できることになる。このことにより可動カム7は回転可能となり、固定カム6に対し相対的に回転し可動筐体3は開き動作を開始することになる。
図6(b)に示す状態は、可動カム7が移動し始めた直後で、カムピン10上部を通過できる状態を示している。レバー11は押圧してすぐ離すことになるが、瞬時に
図6(b)に示した状態になり、可動カム7は開放された状態となる。可動カム7は連続して移動しているので、レバー11を離しても、回転カム9はレバー11からの押圧はなく、第2ばね14の付勢力により移動しカムピン10を押圧するのみの状態となる。
【0040】
第2ばね14の付勢力は、第1ばね13の付勢力に比し小さいので、可動カム7は固定カム6から離れることなく相対移動を続け、又、カムピン10は、
図6(c)に工程で示すように、第2ばねの付勢力で、可動カム7のカム面に当接した状態を保持する。ワンタッチ動作の場合、カムピン10は開閉途中の状態であっても可動カム7に当接している。レバー11は押圧状態でないので、回転カム9から離間している。
図6(d)は、可動カム7が回転移動の途中位置になるカム面の平坦部7cに、カムピン10が位置した場合の状態を示している。この場合であっても、可動カム7は固定カム6に当接しながら開き時の勢いで連続的に回転移動する。カムピン10の下部は、回転カム9の第1カム部9aの傾斜面途中に位置し頂部に達していない状態である。
【0041】
図6(e)の状態は、可動カム7の平坦部7cがカムピン10位置を通過し、略155度の回転位置に回転移動した状態を示している。この位置に達したとき、可動カム7は固定カム6に当接し移動する状態は維持しつつ、カムピン10は回転カム9の第1カム部9aの頂部に達するようにしている。即ち、カムピン10は、固定カム6のカム面6a上部に突き出したままの固定状態を保持する状態となる。結果的にカムピン10の位置は、初期状態となる。
図6(f)は、可動カムが最終位置になる180度の回転位置に達したときの状態を示している。
図6(e)に示す工程は、カムピン10を(f)の工程になる直前に固定状態にするためである。
図6(e)と
図6(f)に示す状態において、カムピン10の上部を可動カム7のカム面に対し若干離間するようにすれば、この間のカムピン10と可動カム7のカム面との当接がないので接触に伴うこすり状態は避けられる。
【0042】
固定カム6のカム面に対してのみ当接し可動カム7は移動する。このように閉じた状態からレバー11を押圧することにより、瞬時に180度まで連続動作で可動筐体3を開くことができる。閉じるときは、開くときの逆工程になるが、可動筐体3を手動で操作する。この手動操作の場合は、カムピン10はその位置が固定状態にあるので、カム部7aが第1ばねの13付勢力に抗し、カムピン10上を乗り上げる状態で、可動カム7は回転移動する。可動筐体3を閉じたときは
図6(a)の状態に戻る。
【0043】
図7は、手動動作のみで開閉動作を行う場合の動作工程を示している。この場合、カムピン10の下部は回転カム9の第1カム部9a頂部に位置した状態を保持している。この状態は
図6(a)と同じである。手動で直接的に可動筐体3を開いたとき、可動カム7は、カムピン10の上部を乗り上げる状態で回転移動する。この状態を示したのが
図7(a)に示す状態で、開き始めた直後の工程図である。従って、可動カム7はこのように浮き上がり状態で固定カム6のカム形状に沿って、カムピンに当接しながら連続移動する。
図7(b)は可動カム7の平坦部7cにカムピン10が位置した場合の状態を示している。
【0044】
手動により強制的に連続動作で開くと、カムピン10が固定カム6のカム面6a上に張り出した状態であっても、勢いで開き動作を続けることになる。しかし、可動筐体3の開きを途中で制止したい場合、カムピン10は固定状態にあるので、開き動作の途中においては可動カム7の平坦部7cがクッションの役目を果たし、可動カム7をこの平坦部7cで保持することが可能である。この角度位置において、可動カム7を保持できるのは、第1ばね13の付勢力は軸線方向のみの力しか作用していないためである。
【0045】
この平坦部7cは回転方向への分力が生じていない部位である。従って、操作者は開閉途中に手を放しても、開き状態の途中位置で保持できる。可動筐体3は開閉動作の過程で、最終位置まで開かず、途中位置であっても閉じることはできる。その後における開閉操作は前述同様である。開閉装置を閉じる場合は、その工程を省略しているが、手動により可動カム7の動作は前述の逆の動作となる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこの実施の形態に限定されることはなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、カムピンの形状は丸棒材形状のものとして説明したが、断面が矩形状のものであってもよいことはいうまでもない。
【解決手段】固定筐体の固定カム9に、可動筐体の可動カム7を付勢させ、回転と軸方向移動で開閉動作を行う。可動カム7に対してピン孔を介して進退自在に移動する棒状のカムピン10を、固定カム9に保持させている。カムピン10は、ばねの付勢で動作する回転カム9により、可動筐体が閉じた状態のときは固定的に保持され、可動カム7の動作が規制される。ワンタッチで可動筐体を開くときは、レバー11の押圧で回転カム9を付勢力に抗して回転させカムピン10の固定状態を解除し、可動カム7の規制を外し、可動筐体を開けるようにしている。可動筐体を開閉途中位置でも確実に停止保持でき、更に、開閉角度を180度以上可能とする構成である。