特許第6049954号(P6049954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6049954
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   A61B5/05 380
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-541731(P2016-541731)
(86)(22)【出願日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2015072424
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】越智 久晃
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
(72)【発明者】
【氏名】黒川 眞次
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007-20829(JP,A)
【文献】 特開2011-24926(JP,A)
【文献】 米国特許第5068610(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の再構成画像および当該再構成画像を取得する際に従った撮影シーケンスの信号関数を用いて、被検体に依存する1以上の被検体パラメータおよび装置に依存する1以上の装置パラメータの少なくとも1つの推定パラメータの値を推定するパラメータ推定部、を備え、
前記複数の再構成画像は、複数の撮影パラメータセットを用いて、前記撮影シーケンスに従って撮像を行い、それぞれ、取得されたものであり、
前記信号関数は、前記撮影シーケンス毎に、前記撮影パラメータ、前記被検体パラメータおよび前記装置パラメータと、前記再構成画像の各画素値との関係を定めた関数であり、
前記パラメータ推定部は、前記推定パラメータ毎に最適な解像度の前記再構成画像を用いて前記値を推定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数の再構成画像は、それぞれ、前記推定パラメータ毎の最適な解像度のうち最も高い解像度である最高解像度を有し、
前記パラメータ推定部は、前記最適な解像度が前記最高解像度より低い推定パラメータについては、前記再構成画像の解像度を当該推定パラメータに最適な解像度に低減し、前記値を推定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パラメータ推定部は、前記最適な解像度が低い前記推定パラメータから順に前記値を推定するとともに、推定する際、既に推定されている推定パラメータの値を、推定対象の前記推定パラメータに最適な解像度に調整し、前記信号関数とともに用いること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記推定パラメータは、受信コイル感度、高周波磁場強度、および共鳴周波数差の少なくとも一つを含むこと
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置イメージング装置であって、
前記推定パラメータは、縦緩和時間、横緩和時間、およびプロトン密度の少なくとも一つを含むこと
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数の再構成画像は、前記推定パラメータのうち、前記最適な解像度が最も高い推定パラメータの当該最適な解像度である第一の解像度を有する第一の再構成画像と、前記第一の解像度とは異なる第二の解像度を有する第二の再構成画像とからなること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項6記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記第一の再構成画像は、マルチエコーシーケンスによって取得されたマルチエコー画像であり、
前記パラメータ推定部は、前記マルチエコー画像から、前記推定パラメータのうち、共鳴周波数差の値を推定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記パラメータ推定部は、前記マルチエコー画像の解像度を前記第二の解像度に調整し、調整後のマルチエコー画像と前記第二の再構成画像とを前記信号関数とともに用い、前記共鳴周波数差以外の前記推定パラメータの値を推定すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数の再構成画像を取得する再構成画像取得部をさらに備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記複数の撮影パラメータセットは、前記撮像パラメータのうち、繰り返し時間、高周波磁場の強度、高周波磁場の位相の少なくとも一つの値が、それぞれ異なること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記再構成画像の枚数は、前記推定パラメータ数以上であること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
推定した前記推定パラメータの値と、予め定めた撮影シーケンスの信号関数とを用い、当該撮影シーケンスの、予め定めた画質の画像を得る表示画像作成部をさらに備えること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記推定パラメータの指示を受け付ける受付部をさらに備え、
前記受付部は、推定パラメータ受付画面を介して、前記推定パラメータの設定を受け付け、
前記再構成画像取得部は、受け付けた推定パラメータに対応づけて予め保持される前記最適な解像度を含む撮影条件に従って、前記再構成画像を取得すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記信号関数は、複数の異なる前記撮影パラメータおよび前記被検体パラメータの組み合わせそれぞれについて、数値シミュレーションを実行し、得られた結果を補間することにより生成されること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI;Magnetic Resonance Imaging)技術に関する。特に、計算によって被検体パラメータを推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体を横切る任意の平面内の水素原子核に核磁気共鳴を起こさせ、発生する核磁気共鳴信号(NMR信号;エコー信号)からその平面内における断層像を撮影する医用画像診断装置である。一般的には、撮影面を特定するスライス傾斜磁場を印加すると同時にその面内の磁化を励起させる励起パルスを与え、これにより励起された磁化が収束する段階で発生するエコー信号を得る。このとき、磁化に位置情報を与えるため、励起からエコー信号を得るまでの間に、断層面内で互いに垂直な方向の位相エンコード傾斜磁場とリードアウト傾斜磁場を印加する。
【0003】
エコー信号を発生させるための励起パルスと位置情報を与える各傾斜磁場は、あらかじめ設定されたパルスシーケンスに基づいて印加される。このパルスシーケンスは、目的に応じて種々のものが知られている。例えば、グラディエントエコー(GE)タイプの高速撮影法では、そのパルスシーケンスを繰り返して作動させ、繰り返しごとに位相エンコード傾斜磁場を順次変化させることにより、1枚の断層像を得るために必要な数のエコーを順次計測する。
【0004】
MRIでは、一般に、得られたエコー信号を再構成することにより画像を得る。この他、異なる撮影パラメータを用いてパルスシーケンスを実行して得られた複数の画像から、ピクセル毎に所望の定量値を計算で求めることにより得る、定量値画像(計算画像、パラメータ分布、パラメータマップ)がある。計算される定量値には、被検体パラメータ、装置パラメータなどがある。
【0005】
撮影パラメータは、繰り返し時間、高周波磁場の設定強度、高周波磁場の位相など、撮影時に設定するパラメータであり、被検体パラメータは、縦緩和時間T1、横緩和時間T2、スピン密度ρ、共鳴周波数f0、拡散係数D、高周波磁場の照射強度分布(B分布)など、被検体の物性値やそれに依存した値であり、装置パラメータは、磁場強度B、受信コイルの感度分布Sなど、撮影に用いるMRI装置に依存するパラメータである。
【0006】
一般に、撮影パラメータと、被検体パラメータあるいは装置パラメータとピクセル値との関係を信号関数として解析的に求め、この信号関数を用いて、上述の定量値を得る。しかし、撮影シーケンスによっては、信号関数が解析的に求められていないものがある。このような撮影シーケンスの場合、数値シミュレーションによって信号関数を作成することによって計算画像を生成する手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−024926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
計算画像は、推定対象のパラメータによって、最適な解像度が異なる。例えば、被検体パラメータであるB分布は、空間的に滑らかに変化するため、T1、T2分布に比べ、高い解像度は必要でない。個々のパラメータを別々に計測して算出する従来の手法の場合、各パラメータに最適な解像度で計算画像を算出できる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の手法では、複数の被検体パラメータと装置パラメータとの計算画像を同時に生成する。このため、最適な解像度が最も高いパラメータの解像度に固定して全ての計算画像を算出する。例えば、B、T1、T2、ρの分布を同時に算出する際には、B分布の解像度もその他の分布と同じ高い解像度で求めることとなる。しかし、高い解像度を必要としないパラメータの計算画像(例えば、B分布)を高い解像度で算出することにより、SN比が低下し、その結果、計算画像の画質や精度の低下につながる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、複数のパラメータの計算画像を同時に生成する手法を用いる場合であっても、計算画像の画質やパラメータ推定精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、個々の推定対象のパラメータに最適な解像度の再構成画像を用い、当該パラメータの値を推定し、当該パラメータの値の分布である計算画像を得る。最適な解像度の再構成画像は、撮影時に推定対象のパラメータのうち、最適な解像度が最も高い推定パラメータの最適な解像度で取得した再構成画像の解像度を調整することにより得る。または、撮影時に、所定の推定対象パラメータの算出に用いる再構成画像についてのみ、当該推定対象パラメータに最適な解像度で取得する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のパラメータの計算画像を同時に生成する場合であっても、計算画像の画質やパラメータ推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一の実施形態のMRI装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】第一の実施形態の計算機の機能ブロック図である。
図3】第一の実施形態の計算画像作成処理のフローチャートである。
図4】(a)は、第一の実施形態の撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)は、第一の実施形態の撮影シーケンスによるk空間を説明するための説明図である。
図5】第一の実施形態の信号関数作成処理のフローチャートである。
図6】第一の実施形態の信号関数の強度分布例を説明するための説明図である。
図7】第一の実施形態のパラメータ推定処理のフローチャートである。
図8】第一の実施形態のパラメータ推定処理の流れの具体例を説明するための説明図である。
図9】(a)は、図8に示す処理において、当初得られる再構成画像例を説明するための説明図であり、(b)〜(e)は、図8に示す処理途中に得られる再構成画像またはパラメータ分布例を説明するための説明図であり、(f)は、従来手法により得られるパラメータ分布例を説明するための説明図である。
図10】(a)〜(d)は、第一の実施形態の手法で得たパラメータ分布と、従来手法で得たパラメータ分布とをそれぞれ説明するための説明図である。
図11】(a)は、第二の実施形態のシングルエコーシーケンスを説明するための説明図であり、(b)は、第二の実施形態のマルチエコーシーケンスを説明するための説明図である。
図12】(a)〜(c)は、第二の実施形態のパラメータ推定処理を説明するための説明図である。
図13】本発明の各実施形態の受付画面例を説明するための説明図である。
図14】(a)は、本発明の変形例の撮影シーケンスを説明するための説明図であり、(b)は、(a)の撮影シーケンスによるk空間を説明するための説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。以下、本発明の実施形態を説明するための全図において、基本的に同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
まず、本実施形態のMRI装置について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100の概略構成を示すブロック図である。MRI装置100は、静磁場を発生するマグネット101と、傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル102と、シーケンサ104と、傾斜磁場電源105と、高周波磁場発生器106と、高周波磁場を照射するとともに核磁気共鳴信号を検出する送受信コイル107と、受信器108と、計算機109と、表示装置110と、記憶装置111とを備える。送受信コイル107は、図では単一のものを示しているが送信コイルと受信コイルとを別個に備えていてもよい。
【0016】
被検体(例えば、生体)103は、寝台(テーブル)等に載置され、マグネット101の発生する静磁場空間内に配される。
【0017】
シーケンサ104は、傾斜磁場電源105と高周波磁場発生器106に命令を送り、それぞれ傾斜磁場および高周波磁場を発生させる。高周波磁場は、送受信コイル107を通じて被検体103に印加される。被検体103から発生した核磁気共鳴信号(NMR信号;エコー信号)は送受信コイル107によって受波され、受信器108で検波が行われる。
【0018】
検波の基準とする核磁気共鳴周波数(検波基準周波数;共鳴周波数f)は、シーケンサ104によりセットされる。検波されたエコー信号は、計算機109に送られ、ここで画像再構成などの信号処理が行われる。その結果は、表示装置110に表示される。必要に応じて、記憶装置111に検波された信号や測定条件を記憶させてもよい。
【0019】
シーケンサ104は、通常、予めプログラムされたタイミング、強度で各装置が動作するように制御を行う。プログラムのうち、特に、高周波磁場、傾斜磁場、信号受信のタイミングや強度を記述したものはパルスシーケンス(撮影シーケンス)と呼ばれる。
【0020】
計算機109は、パルスシーケンスに従って、各部を動作させ、エコー信号を計測する。また、得られたエコー信号に対し、各種の信号処理を施し、所望の画像を得る。なお、エコー信号の計測は、シーケンサ104によりなされる。
【0021】
計算機109は、CPUとメモリとを備える。そして、計算機109が実現する各機能は、記憶装置111に格納されたプログラムを、計算機109のCPUがメモリにロードして実行することにより実現される。また、全部または一部の機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(field−programmable gate array)などのハードウェアによって実現してもよい。また、各機能の処理に用いる各種のデータ、処理中に生成される各種のデータは、記憶装置111に格納される。
【0022】
なお、マグネット101は、静磁場発生部、傾斜磁場コイル102および傾斜磁場電源105は、傾斜磁場発生部、送受信コイル107および高周波磁場発生器106は、高周波送信部、送受信コイル107および受信器108は、受信部、シーケンサ104と計算機109は制御部、計算機109は、さらに画像再構成部として、それぞれ機能する。
【0023】
本実施形態では、撮影パラメータを変えて取得した複数の再構成画像から、それぞれ最適な解像度で被検体パラメータおよび/または装置パラメータの計算画像を得る。これを実現するため、本実施形態の計算機109は、図2に示すように、受付部210と、再構成画像取得部220と、パラメータ推定部230と、表示画像作成部240と、を備える。また、後述するように、信号関数を作成する必要がある場合、信号関数作成部250をさらに備える。
【0024】
以下、本実施形態では、撮影シーケンス実行時に、ユーザが任意に設定可能なパラメータを撮影パラメータと呼び、被検体103に依存するパラメータを被検体パラメータ、MRI装置固有のパラメータを装置パラメータと呼ぶ。
【0025】
撮影パラメータには、例えば、繰り返し時間(TR)、エコー時間(TE)、高周波磁場の強度(フリップ角(Flip Angle:FA))、高周波磁場の位相(θ)などがある。また、被検体パラメータには、縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)、スピン密度(ρ)、共鳴周波数差(Δf)、拡散係数(D)、高周波磁場強度(高周波磁場の照射強度分布;B)などがある。さらに、装置パラメータには、静磁場強度(B)、受信コイルの感度分布(S)などがある。なお、共鳴周波数差Δfは、各ピクセルの共鳴周波数と基準周波数fとの差である。
【0026】
[受付部]
受付部210は、ユーザからの指示を受け付ける。受付部210は、再構成画像取得部220が撮影を実行するにあたり、必要な情報を受け付ける。さらに、本実施形態では、計算画像(パラメータ分布)を作成する対象の被検体パラメータおよび/または装置パラメータ(推定パラメータ)の指定、撮影に用いる撮影パラメータセットの指定を受け付ける。これらの情報は、表示装置110に表示する受付画面を介して受け付ける。また、指定可能なパラメータの情報は、予め記憶装置111に保持される。
【0027】
[再構成画像取得部]
本実施形態の再構成画像取得部220は、予め定めた撮影シーケンスに従って、予め設定された撮影パラメータを用い、撮影を実行し、再構成画像を得る。撮影は、撮影パラメータと撮影シーケンスに従って、各部を制御するよう、シーケンサ104に指示を行うことにより実行される。
【0028】
本実施形態では、1以上の撮影パラメータの値が異なる複数の撮影パラメータセットを用いて、予め定めた撮影シーケンスに従って、撮影を行い、撮影パラメータセット毎に再構成画像を取得する。
【0029】
このとき、本実施形態の再構成画像取得部220は、受付部210が受け付けた各推定パラメータに応じた撮影条件に従って、撮影を行い、再構成画像を取得する。なお、各推定パラメータに応じた撮影条件は、当該推定パラメータに最適な解像度を含み、予め記憶装置111等に保持される。
【0030】
[パラメータ推定部]
パラメータ推定部230は、複数の再構成画像および当該再構成画像を取得する際に従った撮影シーケンスの信号関数を用いて、被検体103に依存する被検体パラメータおよび装置に依存する装置パラメータの少なくとも1つのパラメータであって、推定対象のパラメータ(推定パラメータ)の値を推定する。本実施形態では、推定パラメータ毎に最適な解像度の再構成画像を用いて、推定パラメータの値を推定する。
【0031】
推定パラメータの値の推定は、画素毎に行う。従って、本実施形態のパラメータ推定部230は、画素毎のパラメータ値であるパラメータ分布を結果として出力する。本実施形態のパラメータ推定部230によるパラメータ推定処理の詳細は、後述する。
【0032】
[表示画像作成部]
表示画像作成部240は、パラメータ推定部230が作成したパラメータ分布から表示画像を生成し、表示装置110に表示する。なお、表示画像作成部240は、備えなくてもよい。
【0033】
まず、これらの各部による、計算画像作成処理の流れの概略を図3に示す。
【0034】
まず、再構成画像取得部220が、予め定めた撮影シーケンスに従って、撮影を行い、複数の再構成画像320を得る(ステップS1101)。このとき、本実施形態では、上述のように、1以上の撮影パラメータの値が異なる複数の撮影パラメータセット310を用いて、撮影を行う。そして、パラメータ推定部230は、信号関数330と複数の再構成画像320とを用い、パラメータ推定処理を行い(ステップS1102)、所望の推定パラメータの、画素毎のパラメータ値(パラメータ分布)340を得る。そして、表示画像作成部240が表示画像を作成し(ステップS1103)、表示装置110に表示し(ステップS1104)、処理を終了する。
【0035】
[パラメータ推定処理]
以下、本実施形態のパラメータ推定処理を説明する。
【0036】
上述のように、パラメータ推定部230は、パラメータ推定時に信号関数330を用いる。パラメータ推定処理の説明に先立ち、信号関数330について説明する。
【0037】
信号関数330は、撮影シーケンス毎に、撮影パラメータ、被検体パラメータおよび装置パラメータと、再構成画像の各画素値との関係を定めた関数である。一般に、撮影シーケンス毎に、解析的に算出し、定式化されている。定式化されている信号関数を有する撮影シーケンスを、パラメータ推定時に用いる場合は、当該信号関数330を用いる。
【0038】
一方、信号関数が定式化されていない撮影シーケンスを用いる場合、本実施形態では、信号関数作成部250が、予め信号関数330を作成する。すなわち、本実施形態の信号関数作成部250は、計算画像作成時に用いる撮影シーケンスが、信号関数を解析的に求めることができないシーケンス、あるいは、既知ではないシーケンスである場合、数値シミュレーションにより信号関数330を作成する。なお、信号関数が解析的に求められる撮影シーケンス、あるいは、既知であるシーケンスが用いられる場合、信号関数作成部250は、備えなくてもよい。
【0039】
[撮影シーケンス]
信号関数作成部250による信号関数作成処理の詳細の説明に先立ち、信号関数を解析的に求められない撮影シーケンスの例を説明する。ここでは、当該撮影シーケンスとして、RF−Sppoiled GEシーケンスを例にあげて説明する。
【0040】
図4(a)は、RF−Spoiled GEシーケンス610のタイミングチャートである。RF、Gs、Gp、Grは、それぞれ、高周波磁場(RF)パルス、スライス選択傾斜磁場パルス、位相エンコード傾斜磁場パルス、リードアウト傾斜磁場パルスの印加タイミングを示す。以下、本明細書において、同様とする。
【0041】
このRF−Spoiled GEシーケンス610では、まず、スライス傾斜磁場パルス611の印加とともに高周波磁場(RF)パルス612を照射し、対象物体内の所定のスライスの磁化を励起する。次いで、スライスリフェーズ傾斜磁場パルス613と、磁化の位相に位相エンコード方向の位置情報を付加するための位相エンコード傾斜磁場パルス614と、ディフェーズ用リードアウト傾斜磁場615とを印加する。その後、リードアウト方向の位置情報を付加するためのリードアウト傾斜磁場パルス616を印加しながら磁気共鳴信号(エコー信号)617を計測する。そして、最後にディフェーズ用位相エンコード傾斜磁場パルス619を印加する。
【0042】
RF−Spoiled GEシーケンス610を用いて撮影を行う場合、再構成画像取得部220は、以上の手順を、位相エンコード傾斜磁場パルス614およびディフェーズ用位相エンコード傾斜磁場パルス619の強度(位相エンコード量kp)を変化させるとともにRFパルス612の位相の増分値を117度ずつ変化させながら、繰り返し時間TRで繰り返し、1枚の画像を得るのに必要なエコーを計測する。なお、このとき、n番目に印加されるRFパルス612の位相θ(n)は、θ(n−1)+117nとなる。
【0043】
これにより、各エコー信号は、図4(b)に示すように、k空間上に配置される。そして、再構成画像取得部220は、2次元逆フーリエ変換によって画像を再構成する。なお、RF−Spoiled GEシーケンス610を用いると、T1(縦緩和時間)を強調した再構成画像が得られる。
【0044】
[信号関数作成処理]
以下、信号関数作成部250による、RF−Spoiled GEシーケンス610の信号関数を作成する処理を説明する。
【0045】
図5に示すように、信号関数作成部250は、それぞれ、1以上の撮影パラメータの値が異なる、複数の撮影パラメータセット410を用いて、数値シミュレーションを行い(ステップS1201)、信号関数420を生成する。複数の撮影パラメータセット410は、複数の異なる前記撮影パラメータおよび前記被検体パラメータを組み合わせたものである。
【0046】
[信号関数]
RF−Spoiled GEシーケンス610の信号関数fは、被検体パラメータの縦緩和時間T1、横緩和時間T2、スピン密度ρ、高周波磁場強度Bと、装置パラメータの受信コイル感度Sと、RF−Spoiled GEシーケンス610において、変更可能な撮影パラメータであるフリップ角FA、繰返し時間TR、エコー時間TE、RF位相像分値θと、を用いて、以下の式(1)で表わされる。
【数1】
なお、Bは撮影時にはFAの係数となるため、FAとの積の形にしておく。また、ρおよびSは、信号強度に対して比例係数として作用するため、関数の外側に出しておく。
【0047】
[撮影パラメータセット]
本実施形態の信号関数作成部250は、被検体パラメータのT1、T2の任意の値に対して、撮影パラメータFA、TR、TEを網羅的に変化させ、数値シミュレーションにて信号を得、得られた信号を補間することにより信号関数を作成する。
【0048】
なお、RF−Spoiled GEシーケンス610において、変更可能な撮影パラメータは、上述のように、FA、TR、TE、θである。しかし、このうち、RF位相増分値θは、117度に固定される。θが固定されているのは、高速撮影法の一つであるFLASHと同等のT2依存性の少ない画像コントラストが得るためである。θを変化させると、画像コントラストのT2依存性が大きく変化する。
【0049】
また、このとき、撮影対象のスピン密度ρとB、Sは、一定(例えば1)とする。
【0050】
信号関数作成時に用いる被検体パラメータT1、T2の値と、変化させる撮影パラメータFA、TR、θの値の一例を以下に示す。それぞれ、実際の撮影に用いる撮影パラメータの範囲と、被検体のT1、T2の範囲が含まれるようにする。
【0051】
T1(15個)[s]:0.05,0.07,0.1,0.14,0.19,0.27,0.38,0.53,0.74,1.0,1.5,2.0,2.8,4.0,5.6
T2(17個)[s]:0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.07,0.1,0.14,0.19,0.27,0.38,0.53,0.74,1.0,1.4,2.0,2.8
TR(4個)[ms]:10,20,30,40
FA(10個)[度]:5,10,15,20,25,30,35,40,50,60
θ(17個)[度]:0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,16,18,20,22
【0052】
この場合、信号関数作成部250は、以上の撮影パラメータおよび被検体パラメータの全ての組み合わせからなる173400個の撮影パラメータセット410を生成し、それぞれの撮影パラメータセット410による信号値を数値シミュレーションによって算出する。
【0053】
[数値シミュレーション]
数値シミュレーションは、格子点上にスピンを配置した被検体モデルと撮影シーケンスと撮影パラメータと装置パラメータとを入力とし、磁気共鳴現象の基礎方程式であるBlochの式を解いて磁気共鳴信号を出力する。
【0054】
被検体モデルはスピンの空間分布(γ,M,T1,T2,Cs)として与えられる。ここで、γは磁気回転比、M0は熱平衡磁化(スピン密度)、T1とT2はそれぞれ縦緩和時間と横緩和時間である。
【0055】
Blochの式は1階線形常微分方程式であり、次式で表される。
【数2】
ここで、(x,y,z)は、3次元の直交座標系を表し、zは静磁場(強度がB)の向きに等しい。また、(Mx,My,Mz)は、スピン、G,G,Gは、それぞれ添字方向の傾斜磁場強度、Hは、高周波磁場強度、fは、回転座標系の周波数である。
【0056】
[補間]
上記式(2)により、撮影パラメータセット410毎の信号値を得ると、信号関数作成部250は、それらを補間し、信号関数f(420)を作成する。補間には、1次から3次程度の線形補間やスプライン補間を用いることができる。
【0057】
上記手法で、本実施形態の信号関数作成部250が作成した信号関数420の強度の一部を、図6に示す。ここでは、T1を900ms、T2を100ms、θを5度とした場合の、FAとTRの値毎の強度を示す。横軸がFA[deg.]で縦軸がTR[s]である。信号強度が大きいほど、濃い色で示す。
【0058】
[パラメータ推定処理]
次に、本実施形態のパラメータ推定部230によるパラメータ推定処理の詳細を説明する。上述のように、本実施形態では、推定パラメータ毎に、最適な解像度の再構成画像を用いて、推定パラメータの値を推定する。推定パラメータ毎の最適な解像度は、上述のように、予め記憶装置111等に保持される。
【0059】
推定の際、パラメータ推定部230は、複数の再構成画像320と、撮影シーケンスの信号関数330とを用いる。この複数の再構成画像320は、再構成画像取得部220が、複数の撮影パラメータセット310を用いて、予め定めた撮影シーケンスに従って撮像を行って、それぞれ、取得する。複数の撮影パラメータセットの中には撮影パラメータが同一のものが含まれていても良い。
【0060】
このとき、取得する再構成画像320の枚数は、推定対象の推定パラメータ数以上とする。また、取得する複数の再構成画像320は、推定対象とする推定パラメータのうち、最適な解像度が最も高い推定パラメータの解像度(最高解像度)で取得する。
【0061】
例えば、被検体パラメータのT1、T2、B、ρと装置パラメータSの積であるa(=ρS)とを推定する場合、Bについては、上述のように、空間的に滑らかに変化するため、T1、T2に比べ、高い解像度は必要ない。従って、この場合、T1、T2の推定に必要な解像度の画像を取得する。
【0062】
なお、解像度は、撮像視野FOVとエンコードステップ数で定まる。これらの撮影パラメータは受付部210を介して設定される。
【0063】
また、パラメータ推定部230は、最適な解像度が最高解像度より低い推定パラメータについては、再構成画像取得部220が取得した再構成画像の解像度を、その推定パラメータの最適な解像度に低減し、推定パラメータの値を推定する。
【0064】
このとき、パラメータ推定部230は、最適な解像度が低い推定パラメータから順に推定パラメータの値を推定する。推定を行う際、既に推定されている推定パラメータの値を、推定対象の推定パラメータの最適な解像度に調整し、信号関数330とともに用いる。
【0065】
以下、本実施形態のパラメータ推定部230によるパラメータ推定処理の詳細を、処理の流れに従って、説明する。図7は、本実施形態のパラメータ推定処理の処理フローである。ここでは、推定パラメータ数をM(Mは2以上の整数)とする。
【0066】
この場合、予め、複数の撮影パラメータセット(FA,TR,θ)310が用意され、上述のステップS1101において、再構成画像取得部220は、用意された撮影パラメータセット310の数の再構成画像320を取得する。
【0067】
用意する撮影パラメータセット310の数は、一般に、推定パラメータ数であるM以上とする必要がある。これは、方程式の解を求める際に、未知数(推定パラメータ)の数よりも方程式(撮影パラメータセットとそれによって撮影された画像)の数が等しいか多くなければならないからである。ここでは、一例としてN(NはM以上の整数)セット用意するものとする。従って、再構成画像320の数もN枚である。
【0068】
例えば、推定パラメータ数が4つ(T1、T2、B、a)である場合、撮影パラメータセット310の数は、4組より多めの例えば6組とする。なお、撮影パラメータセット数を多くすればするほど推定精度は向上するが、撮影時間が長くなる。また、ここでは、推定対象の推定パラメータのうち、最も高解像度が求められる推定パラメータの解像度で複数の再構成画像320を取得する。
【0069】
パラメータ推定部230は、M個の推定パラメータを推定する。本実施形態では、最適な解像度の小さい推定パラメータから順に推定を行う(ステップS1301)。また、最適な解像度が同じ推定パラメータについては、同時に推定する。以下、m番目に最適な解像度の低い推定パラメータ数をk(m)個とする。
【0070】
まず、N枚の再構成画像320を、m番目に最適な解像度の低い、k(m)個の推定パラメータに最適な解像度に調整する(ステップS1302)。ここでは、N枚の再構成画像320の解像度を低減する。低解像度化は、例えば、複数ピクセルの値を加算する等により行う。
【0071】
なお、低解像度化する際、どの程度の解像度にするかは、再構成画像320のSN比と処理対象の推定パラメータに最適な解像度とにより決定する。すなわち、再構成画像320のSN比が十分に高い場合は任意に解像度を決定してよい。しかし、SN比が低い場合は、推定パラメータの分布に応じてできるだけ低解像度とする。これにより、SN比が低くてもパラメータの推定精度を可能な限り高く保つことができる。
【0072】
既に推定されている推定パラメータのパラメータ分布の解像度を、ステップS1302で調整した画像の解像度に合わせ、調整する(ステップS1303)。ここでは、先に推定されている推定パラメータのパラメータ分布の解像度は、現在推定中の推定パラメータ以下であるため、補間拡大処理を行い、解像度を調整する。補間拡大には、例えば、以下の式(3)に示す、予め定めた次数n以下の同次関数の和を用いる。例えば、次数nは6程度が望ましい。
【数3】
【0073】
そして、ステップS1302で得た解像度の画像と、既に推定済みの推定パラメータの、解像度調整済みのパラメータ分布と、先に作成した信号関数330とを用い、推定対象のパラメータを推定する(ステップS1304)。その結果、当該推定パラメータのパラメータ分布340を得る。
【0074】
具体的には、ピクセル毎の信号値Iを、式(1)を変形した、以下の式(4)の関数fにフィッティングすることにより、推定パラメータを推定する。
【数4】
【0075】
なお、関数フィッティグは、以下の式(5)で表される最小二乗法により行う。
【数5】
ここで、χは、信号関数とファントムのピクセル値の残差の総和、Iは、(FA、θ、TR)におけるピクセル値である。
【0076】
以上の処理を、全推定パラメータについて、繰り返し(ステップS1305、S1306)、処理を終了する。
【0077】
<実施例>
以下、本実施形態のパラメータ以上の、パラメータ推定部230によるパラメータ推定処理を、図8、および、図9(a)〜図9(f)を用いて、具体例で説明する。
【0078】
ここでは、推定パラメータを、(B、a、T1、T2)の4つとする。このため、用意する撮影パラメータセット310の数は、それより多めの6組とする。各撮影パラメータセット310を、それぞれ、P1〜P6とする。
【0079】
P1からP6までの撮影パラメータセット310は、それぞれFAが10度と30度、θが2度、6度、20度、TRが10ms、40msの組み合わせで得られる12組の撮像パラメータセットの中の6組とした。なお、TEは5msに固定した。なお、撮影パラメータセット310は、例えば、誤差伝搬の法則等に従って、高精度に推定可能なセットを選択する。
【0080】
また、推定対象の推定パラメータのうち、Bのみ、最適な解像度が、他の推定パラメータに比べ低いものとする。すなわち、この例では、1番目に最適な解像度が低い推定パラメータは、Bのみの1つであり、2番目に最適な解像度の低い推定パラメータは、a、T1、T2の3つである。
【0081】
従って、まず、再構成画像取得部220は、6枚の再構成画像320を、a、T1、T2の最適な解像度に合わせて取得する。再構成画像取得部220が、各撮影パラメータセット310を用いて得た、6枚の再構成画像320の例を、図9(a)に示す。
【0082】
パラメータ推定部230は、まず、Bのパラメータ値(B分布)を推定する(ステップS1410)。この際、Bの最適な解像度に合わせて画像を低解像度化し、推定する。
【0083】
分布の推定では、まず、6枚の再構成画像320の解像度を、推定パラメータBに最適な解像度に低減する(ステップS1401)。図9(a)に示す再構成画像320を、それぞれ、低解像度化した画像321を、図9(b)に示す。
【0084】
図9(b)に示す画像321は、元の再構成画像320の4×4ピクセルを加算し、1つのピクセルとしたものである。例えば、元の再構成画像320の解像度が1.6mmx1.6mmである場合、4x4ピクセルを加算して一つのピクセルにし、6.4mmx6.4mmとし、画像321を得る。
【0085】
そして、信号関数330と、低解像度化した6枚の画像321とを用いて、Bの、画素毎のパラメータ値を推定し(ステップS1402)、パラメータ分布(B分布)341を得る。なお、このとき、a、T1、T2も、Bと同じ解像度で推定される。これらの推定結果341を図9(c)に示す。
【0086】
次に、パラメータ推定部230は、残りの推定パラメータ(T1、T2、a)を推定する(ステップS1420)。ここでは、補間拡大したB分布と取得時の解像度の複数の再構成画像320とを用いる。
【0087】
そのため、まず、B分布341を補間拡大し、その解像度を、元の6枚の再構成画像320の解像度と等しくする(ステップS1421)。補間拡大したB分布342を、図9(d)に示す。
【0088】
そして、図9(a)に示す元の再構成画像320と補間拡大後のB分布342と信号関数330とを用い、元の再構成画像320の解像度で、a、T1、T2、aの3つのパラメータを推定し(ステップS1402)、パラメータ分布を得る。補間拡大されたB分布342と、推定されたa、T1、T2のパラメータ分布343とを、図9(e)に示す。
【0089】
なお、ステップS1402における推定処理では、Bについては、補間拡大されたB分布342を正解値として使用するため、既知となり、未知数はa、T1、T2の3個である。未知数の数が減るため、処理速度が速くなり、推定精度が向上する。
【0090】
ここで、従来の手法、すなわち、最適な解像度が最も高い推定パラメータに応じた解像度で得た再構成画像から、全ての推定パラメータ(B、a、T1、T2)の分布を推定した場合の結果(パラメータ分布)344を、図9(f)に示す。
【0091】
図9(e)に示すパラメータ分布343と図9(f)に示すパラメータ分布344とを比較すると、本実施形態の手法による結果343の方が、従来よりもノイズが減少していることがわかる。
【0092】
効果をより明確に示すため、図9(e)のB分布とa分布343の、縦方向の1ライン(横方向の概略中心位置のライン)のプロファイル513、523を、それぞれ、図10(a)および図10(b)に、また、図9(f)のB分布とa分布344の、同プロファイル514、524を、それぞれ、図10(c)および図10(d)に示す。なお、本図において、横軸は、1ライン上の位置、縦軸は、信号強度である。
【0093】
本図に示すように、B分布については、本実施形態の手法によるプロファイル513と従来手法のプロファイル514とを比較すると、補間拡大されているため、本実施形態の手法による分布には、ノイズがほとんどないことがわかる。a分布についても、本実施形態の手法のプロファイル523と従来手法のプロファイル524とを比較すると、本実施形態の手法で得た分布の方が、ノイズが少ないことがわかる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、複数の再構成画像320および当該再構成画像320を取得する際に従った撮影シーケンスの信号関数330を用いて、被検体103に依存する被検体パラメータおよび装置に依存する装置パラメータの少なくとも1つの推定パラメータの値を推定するパラメータ推定部230、を備え、前記複数の再構成画像320は、複数の撮影パラメータセット310を用いて、前記撮影シーケンスに従って撮像を行い、それぞれ、取得され、前記信号関数330は、前記撮影シーケンス毎に、前記撮影パラメータ、前記被検体パラメータおよび前記装置パラメータと、前記再構成画像の各画素値との関係を定めた関数であり、前記パラメータ推定部230は、前記推定パラメータ毎に最適な解像度の前記再構成画像を用いて前記値を推定する。
【0095】
このように、本実施形態によれば、推定対象のパラメータについて、それぞれに最適な解像度の画像を用いて、その値を推定する。従って、高速に、高精度に、SN比が低下することなく、計算画像を得ることができる。
【0096】
また、前記複数の再構成画像320は、前記推定パラメータのうち、前記最適な解像度が最も高い推定パラメータの当該最適な解像度である最高解像度を有し、前記パラメータ推定部230は、前記最適な解像度が前記最高解像度より低い推定パラメータについては、前記再構成画像320の解像度を当該推定パラメータに最適な解像度に低減し、前記値を推定してもよい。
このとき、前記パラメータ推定部230は、前記最適な解像度が低い前記推定パラメータから順に前記値を推定するとともに、推定する際、既に推定されている推定パラメータの値を、推定対象の前記推定パラメータの最適な解像度に調整し、前記信号関数330とともに用いてもよい。
【0097】
このため、本実施形態によれば、計算量の少ない、最適な解像度の低い推定パラメータから推定され、かつ、最適な解像度が高くなるにつれて、未知の推定対象パラメータ数が少なくなる。従って、処理中の発散等が低減し、高精度な推定結果を得ることができる。
【0098】
<<第二の実施形態>>
次に、本発明の第二の実施形態を説明する。第一の実施形態では、最適な解像度が最も高い推定パラメータの計算画像に合わせた解像度で画像を取得し、パラメータ値の推定時に、それぞれ、最適な解像度に低減する。一方、本実施形態では、推定パラメータ毎に寄与する再構成画像がはっきりしている場合、当該再構成画像については、再構成画像取得時に、最適な解像度で取得する。
【0099】
本実施形態のMRI装置は、基本的に第一の実施形態のMRI装置100と同様の構成を有する。ただし、パラメータ推定時の処理が異なるため、計算機109の各部の処理内容が異なる。以下、本実施形態について、第一の実施形態と異なる処理に主眼をおいて説明する。
【0100】
なお、独立した画像を用い、定量値を算出可能な推定パラメータには、例えば、共鳴周波数差Δfがある。Δfは、磁化率画像算出に用いられる。
【0101】
すなわち、Δfは、位相と比例関係にある。従って、Δf分布の各ピクセル値に所定の係数を乗算することにより、位相画像を得ることができる、また、位相画像は、組織間の磁化率を反映したものである。従って、位相画像を元に逆問題を解くことにより、磁化率マップを得ることができる。
【0102】
このΔf分布は、TEの異なる2枚以上の画像があれば、算出することができる。また、Δf分布の算出には、T1、T2、a等のパラメータに比べ、高い解像度が要求される。
【0103】
従って、本実施形態では、まず、TEの異なる2枚の第一の再構成画像を得、その2枚の画像から、Δf分布を算出する。そして、第一の再構成画像とは異なる解像度で、撮影パラメータを変化させて複数の第二の再構成画像を得、第一の実施形態と同様の手法で、他の推定パラメータを推定する。このとき、第一の再構成画像を、第二の再構成画像の解像度に変換し、用いる。そして、本実施形態では、TEの異なる2枚の第一の再構成画像を、マルチエコーシーケンスで取得する。
【0104】
すなわち、本実施形態の再構成画像取得部220は、推定パラメータのうち、最適な解像度が最も高い推定パラメータの、最適な解像度である第一の解像度を有する第一の再構成画像と、第一の解像度とは異なる第二の解像度を有する第二の再構成画像とを取得する。この第一の再構成画像は、マルチエコーシーケンスによって取得されたマルチエコー画像とする。なお、第二の解像度は、他の推定パラメータに最適な解像度の中で、最も高い解像度とする。
【0105】
そして、本実施形態のパラメータ推定部230は、マルチエコー画像から、推定パラメータのうち、Δfの値を推定する。そして、パラメータ推定部230は、マルチエコー画像の解像度を、第二の解像度に調整し、調整後のマルチエコー画像と第二の再構成画像とを、信号関数とともに用い、Δf以外の推定パラメータの値を推定する。
【0106】
以下、本実施形態のパラメータ推定部230の処理の詳細な説明に先立ち、TEの異なる画像を取得する撮像シーケンスについて説明する。本実施形態においても、第一の実施形態同様、基本的には、RF−spoiled GEシーケンス610を用いる。TEの異なる画像を取得する場合、1回のTRで、2以上のエコー信号を計測する、マルチエコーシーケンスを用いる。
【0107】
図11(a)は、シングルエコーシーケンスのRF−spoiled GEシーケンス(以下、シングルエコーシーケンスと呼ぶ。)610であり、図11(b)は、マルチエコーシーケンスのRF−spoiled GEシーケンス(以下、マルチエコーシーケンスと呼ぶ。)630である。なお、ここでは、マルチエコーシーケンス630として、1回のTR内に2つのエコー信号を取得する場合を例示する。なお、本図において、A/Dは、エコー信号取得タイミングを示す。
【0108】
図11(a)に示す、シングルエコーシーケンス610は、図4(a)で説明したとおりである。ただし、図11(a)には、3次元撮像の場合のシーケンスを示す。従って、613は、スライスリフェーズ兼スライス位相エンコード傾斜磁場パルスである。
【0109】
再構成画像取得部220は、以上の手順を位相エンコード傾斜磁場パルス613および614の強度(位相エンコード量ks,kp)を変化させるとともに、RFパルス612の位相の増分値を117度ずつ変化させながら(n番目のRFパルスの位相はθ(n)=θ(n−1)+117nとなる)繰り返し時間TRで繰り返し、画像を得るのに必要なエコーを計測する。各エコーは3次元のk空間(kr−kp−ks空間)上に配置される。
【0110】
そして、再構成画像取得部220は、3次元逆フーリエ変換によって画像を再構成する。このパルスシーケンス610で得られる画像は、T1(縦緩和時間)を強調した画像である。
【0111】
図11(b)に示す、マルチエコーシーケンス630は、印加されるパルスは、シングルエコーシーケンス610の場合と基本的に同様である。すなわち、まず、スライス傾斜磁場パルス611の印加とともに高周波磁場(RF)パルス612を照射し、対象物体内のあるスライスの磁化を励起する。次いでスライスリフェーズ兼スライス位相エンコードパルス613と位相エンコード傾斜磁場パルス614、ディフェーズ用リードアウト傾斜磁場パルス615を印加した後、リードアウト方向の位置情報を付加するためのリードアウト傾斜磁場パルス616を印加しながら第一の磁気共鳴信号(エコー信号)617を計測する。
【0112】
エコー信号617計測後、続いてリードアウト傾斜磁場パルス618を印加しながら2個目のエコー信号622を計測する。最後に、ディフェーズ用位相エンコード傾斜磁場パルス619、620、およびクラッシャーパルス621を印加する。
【0113】
本シーケンス630において、エコー信号617とエコー信号622とは、RFパルス612からの時間(TE)が異なる。
【0114】
再構成画像取得部220は、シングルエコーシーケンス610と同様に動作を制御し、TEの異なる2つのエコー信号617、622をそれぞれ、異なる3次元のk空間に配置する。そして再構成画像取得部220は、3次元逆フーリエ変換によって、各k空間からそれぞれ画像を再構成する。再構成された2枚の画像は、TEが異なるためT2強調度が異なる。
【0115】
[パラメータ推定処理]
パラメータ推定部230は、まず、このTEの異なる2枚の画像から、Δf分布を算出する。
【0116】
励起されたスピンの横磁化の回転量(位相)は、その横磁化の位置における周波数と基準とする共鳴周波数f0との差(Δf)にTEを乗算した値である。従って、2枚の画像の位相差をTEの差で割ると、Δfが得られる。これを画素毎に算出し、Δf分布を得る。
【0117】
なお、TEが異なる画像の数は2個に限らない。例えば、リードアウトパルスをさらに追加して3個目以上のTEの異なるエコーを計測するマルチエコーシーケンスを用いて、TEの異なる画像をさらに増やしてΔf分布の計算に用いてもよい。画像数を増やした方が、Δf分布の算出精度が向上する。このため、1回のTRにおいて3個以上(通常は5個程度)のエコー信号を計測するシーケンスを用いるのが一般的である。
【0118】
本実施形態のパラメータ推定部230は、Δfを含む、予め定めた推定パラメータを推定する。
【0119】
上述のように、第一の実施形態では、パラメータ推定部230がパラメータ推定処理を行うため、推定パラメータ数以上の画像を、それぞれ撮影パラメータの値を1つ以上変えて取得する。しかしながら、本実施形態では、Δf分布を算出するためにマルチエコーシーケンス630を実行する。このマルチエコーシーケンス630により、撮影パラメータは同じではあるものの、TEの異なる2枚以上の画像が得られる。Δf分布を算出するためにマルチエコーシーケンス630を実行して得られる画像(マルチエコー画像と呼ぶ)の枚数をJ枚、推定パラメータ数をMとすると、本実施形態では、M−J枚以上の画像(シングル画像)を、シングルエコーシーケンス610に従って、取得させる。
【0120】
このとき、シングル画像は、Δf以外の推定パラメータのうち、そのパラメータ分布(計算画像)の最適な解像度が最も高い推定パラメータの最適な解像度に合わせて取得する。
【0121】
その後の処理は、第一の実施形態と同様である。すなわち、最適な解像度が低い推定パラメータから順に、推定パラメータの値を推定し、パラメータ分布を得る。推定には、予め用意した信号関数fと、J枚のマルチエコー画像、(M−J)枚のシングル画像を用いる。このとき、J枚のマルチエコー画像は、シングル画像の解像度に合わせ、解像度を調整する(ここでは、低減させる)。
【0122】
なお、例えば、本実施形態において、Δf以外の推定パラメータに最適な解像度が同レベルである場合、または、マルチエコー画像、シングル画像がともに十分なSN比を有する場合は、Δf以外の推定パラメータは、シングル画像の解像度を変化させることなく、推定してもよい。
【0123】
[パラメータ推定処理の流れ]
本実施形態のパラメータ推定処理の流れを、図12(a)〜図12(c)を用いて説明する。ここでは、推定パラメータは、T1、T2、B、ρS(=a)、Δfの5つとする。そして、シングルエコーシーケンス610とマルチエコーシーケンス630とを用い、各推定パラメータの3次元の分布を取得する場合を例にあげて説明する。マルチエコーシーケンス630では、TEの異なる2枚のマルチエコー画像を得るものとする。
【0124】
なお、信号関数fは、第一の実施形態で説明した手法等により、予め作成しておく。
【0125】
この場合も、第一の実施形態同様、推定する推定パラメータ数より多い数の、FA、TR、θのいずれかの値が異なる撮影パラメータセット310を用意する。すなわち、FAが10度と30度、θが2度、6度、20度、TRが10ms、40msの組み合わせで得られる12組の撮像パラメータセットの中から、第一の実施形態同様、選択する。ただし、本実施形態では、マルチエコーシーケンス630でも2枚のマルチエコー画像を取得する。従って、第一の実施形態では、6組の撮影パラメータセット(P1〜P6)310を用意したが、ここでは、5組の撮影パラメータセット(P1〜P5)310を用意する。これにより、6枚の画像を得る。
【0126】
また、マルチエコーシーケンス630では、TRが適度に長くなければTEの長いエコーを計測できない。従って、マルチエコーシーケンス630に用いる撮影パラメータセット310は、長いTRのセットとする。例えば、TRが10msと40msの撮影パラメータセット310が用意されている場合、マルチエコーシーケンス630に適用する撮影パラメータセット310は、TRが40msのものとする。
【0127】
また、第一の実施形態の例では、TEは5msに固定している。本実施形態では、マルチエコーシーケンス630において、第1エコーのTE(TE1)をシングルエコーシーケンス610と同じ5ms、第2エコーのTE(TE2)を20msとした。
【0128】
さらに、上述のように、Δfは、その後、磁化率分布の算出に用いる。この磁化率分布の算出には、通常の形態画像よりも高い解像度が必要である。そのため、マルチエコーシーケンス630で得られる画像(マルチエコー画像)の解像度が、シングルエコーシーケンス610で得られる画像(シングルエコー画像)よりも高くなるよう、撮影パラメータは設定される。
【0129】
例えば、撮影パラメータは、Δfから磁化率分布を算出する精度を得るため、マルチエコー画像の解像度を示すボクセルサイズが、0.5mmから1mm程度となるよう設定することが望ましい。ここでは、0.8mmとした。一方、シングルエコー画像の解像度は、1.6mmとした。これは、その他の推定パラメータT1、T2、B、aの最適な解像度のうち、最も高いものである。
【0130】
なお、マルチエコーシーケンス630の実行に用いた撮影パラメータセットをP1、シングルエコーシーケンス610の実行に用いた撮影パラメータセットを、P2〜P5とする。
【0131】
これらの撮影パラメータセットを用いて得られた画像を図12(a)に示す。本図において、画像711および712は、マルチエコーシーケンス630で得たマルチエコー画像であり、それぞれ、TE1、TE2で得たマルチエコー画像とする。
【0132】
また、画像713〜716は、それぞれ、シングルエコーシーケンス610を、撮影パラメータセットP2〜P5で実行することにより得たシングルエコー画像である。これらの画像713〜716は、TE1で得た画像である。
【0133】
本実施形態のパラメータ推定部230は、まず、マルチエコー画像711、712を用い、Δfを推定する。
【0134】
次に、パラメータ推定部230は、図12(b)に示すように、マルチエコー画像711、712の解像度を、シングルエコー画像713〜716と同じ解像度に変換する。ここでは、解像度を低減させる。低減後のマルチエコー画像を721、722とする。
【0135】
ここでは、マルチエコー画像711、712のボクセルサイズが、シングルエコー画像713〜716の2倍と設定されているため、例えば、マルチエコー画像711、712の2x2x2ボクセルを単純に加算して1ボクセルとすることにより、解像度の低減を実現する。他に、線形補間や2次から3次程度の補間を用いてもよい。
【0136】
そして、パラメータ推定部230は、予め用意した信号関数fと、マルチエコー画像721、722と、シングルエコー画像713〜716とを用い、推定パラメータB、a、T1、T2を推定する。これらの推定パラメータの推定手法は、第一の実施形態と同様である。例えば、上記式(4)および式(5)を用い、最小二乗フィッティングにより、これらの推定パラメータを推定する。このとき、第一の実施形態と同様に、まず、低解像度でBマップを求めてから、T1、T2、aを、元の解像度で求めてもよい。
【0137】
以上により、図12(c)に示すように、Δf、B、a、T1、T2それぞれのパラメータ分布(計算画像)740を得る。
【0138】
以上説明したように、本実施形態のMRI装置100は、第一の実施形態と同様のパラメータ推定部230を備える。そして、推定パラメータの値を推定する際に用いる前記複数の再構成画像は、前記推定パラメータのうち、前記最適な解像度が最も高い推定パラメータの当該最適な解像度である第一の解像度を有する第一の再構成画像(711、712)と、前記第一の解像度とは異なる第二の解像度を有する第二の再構成画像(713〜716)とからなる。
【0139】
そして、前記第一の再構成画像(711、712)は、マルチエコーシーケンスによって取得されたマルチエコー画像であり、前記パラメータ推定部230は、前記マルチエコー画像から、前記推定パラメータのうち、共鳴周波数差Δfの値を推定してもよい。また、前記パラメータ推定部230は、前記マルチエコー画像の解像度を前記第二の解像度に調整し、調整後のマルチエコー画像と前記第二の再構成画像(713〜716)とを前記信号関数とともに用い、前記共鳴周波数差以外の前記推定パラメータの値を推定する。
【0140】
このとき、前記パラメータ推定部230は、前記最適な解像度が前記第二の解像度より低い推定パラメータについては、前記再構成画像の解像度を当該推定パラメータに最適な解像度に低減し、前記値を推定してもよい。さらに、Δf以外の推定パラメータについては、前記最適な解像度が低い前記推定パラメータから順に前記値を推定するとともに、推定する際、既に推定されている推定パラメータの値を、推定対象の前記推定パラメータの最適な解像度に調整し、前記信号関数とともに用いてもよい。
【0141】
このように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様、必要十分な解像度で所望の定量値(被検体パラメータ、装置パラメータの値)を得ることができる。このため、高い品質の計算画像を得ることができる。また、推定時の発散発生回数を抑えることができ、効率よく値を推定できる。
【0142】
また、本実施形態では、マルチエコーシーケンスで取得した高解像度の画像からΔfを算出し、また、高解像度の画像を低解像度にし、他の低解像度画像とともに用いて、T1、T2、B、aといった推定パラメータを推定する。このように、マルチエコーシーケンスを用いることにより、取得するパラメータ推定用の画像数を減らすことができる。従って、それぞれ別々に撮影、推定するよりも撮影効率を向上させることができる。
【0143】
なお、上記各実施形態は、ユーザから推定対象のパラメータの指定を受け付ける、受付画面を備えてもよい。受付画面は、受付部210が生成し、表示装置110に表示する。この受付画面800の例を図13に示す。
【0144】
本図に示すように、受付画面800は、例えば、推定対象の推定パラメータの指定を受け付ける推定パラメータ受付領域810と、設定する撮像パラメータセットを受け付けるパラメータセット受付領域820と、を備える。
【0145】
受付部210は、ユーザからの指示を受け付け、それを再構成画像取得部220およびパラメータ推定部230に通知する。再構成画像取得部220は、受け付けた指示に従って、画像を取得し、パラメータ推定部230は、その指示に従って、所定の推定パラメータを推定する。
【0146】
このとき、例えば、Δfなど、推定するために最適な撮影シーケンスが予め決まっている推定パラメータについては、撮影シーケンスを対応づけて保持しておいてもよい。これにより、ユーザが当該推定パラメータを選択した場合、撮影シーケンスを設定しなくても、自動的に対応づけて保持される撮影シーケンスが選択される。
【0147】
<変形例>
上記各実施形態の表示画像作成部240は、得られた計算画像と信号関数fとを用い、推定された被検体パラメータと装置パラメータ、撮影シーケンス、撮影パラメータの一部を変更した画像(例えば、T1強調像とT2強調像)を任意に生成できる。
【0148】
ただし、変更可能な撮影シーケンスは、信号関数fが既知、あるいは、既に数値シミュレーションによって作成されている任意の撮影シーケンスである。
【0149】
以下、撮影シーケンスとして、最も一般的であるスピンエコー(SE)シーケンスを用いる場合を例に挙げて説明する。まず、SEシーケンスを説明する。図14(a)は、SEシーケンス900の例である。
【0150】
SEシーケンス900では、まず、スライス選択傾斜磁場パルス901の印加とともに高周波磁場(RF)パルス902を照射し、対象物体内のあるスライスの磁化を励起する。次いでスライスリフェーズ傾斜磁場パルス903と磁化の位相に位相エンコード方向の位置情報を付加するための位相エンコード傾斜磁場パルス904、ディフェーズ用リードアウト傾斜磁場パルス905を印加する。そして、不要な信号を抑圧するクラッシャーパルス906、907、908を各軸に印加した後、スライス選択傾斜磁場パルス909とともにリフォーカスパルス910を照射し、再びクラッシャーパルス911、912、913を印加する。その後、リードアウト方向の位置情報を付加するためのリードアウト傾斜磁場パルス914を印加しながらエコー信号918をA/D915により計測し、最後にクラッシャーパルス916と917を印加する。RFパルス902の照射からエコーピークまでの時間はエコー時間TEと呼ばれる。
【0151】
以上の手順を位相エンコード傾斜磁場パルス904の強度(位相エンコード量kp)とスライス位置を変化させながら繰り返し時間TRで繰り返し、必要なスライス枚数分のエコー信号を計測する。スライス位置は、RFパルス902の周波数によって変化させる。
【0152】
各エコー信号918は、スライス毎に図14(b)に示すようにk空間上に配置され、逆フーリエ変換によって画像が再構成される。
【0153】
このSEシーケンス900では、TRとTEとを適宜変化させることにより、T1を強調したコントラストの画像(T1強調像)や、T2を強調したコントラストの画像(T2強調像)が得られる。例えば、TRを数百ミリ秒、TEを十ミリ秒程度とするとT1強調像が得られ、TRを数秒、TEを百ミリ秒程度にするとT2強調像が得られる。
【0154】
SEシーケンス900の信号関数は、解析的に求められ、SEシーケンス900で撮影される画像の輝度値ISは、以下の式(6)で表される。
【数6】
【0155】
式(6)において、推定した被検体パラメータT1、T2を用い、かつ、撮影パラメータのTRとTEとの値を指定することにより、任意の強調度にて、T1強調像およびT2強調像を自由に作成することができる。また、被検体パラメータの一つであるBを均一(例えば、B=1と設定する)とすることにより、B分布が均一な場合の画像を得ることができる。
【0156】
また、例えば、上記各実施形態で推定した被検体パラメータT1、T2を用い、TRを500ms、TEを15msに設定すると、T1強調像が得られる。SEシーケンス900で得たT1強調像では、T1が長い方が、輝度値は小さくなる。例えば、TEをそのまま15msとし、TRを100msと短くすると、コントラストが強調され、さらにT1強調度を高めたT1強調像が得られる。
【0157】
一方、TRとTEとをより長くすると(例えば(TR、TE)=(4000ms、100ms))、T2強調像が得られる。T2強調像では、T2が長い方が、輝度値が大きくなる。
【0158】
なお、対象とするパルスシーケンスは、SEシーケンス900に限定されない。グラディエントエコーシーケンスやRSSGシーケンスなど、上述のように信号関数fを解析的に得られるシーケンス、あるいは、数値シミュレーションにより作成可能なシーケンスであればよい。
【0159】
なお、信号関数fが既知でないかあるいは数値シミュレーションによって作成されていない場合には、設定された撮影シーケンス、撮影パラメータ、被検体パラメータ、装置パラメータを用いて数値シミュレーションによって画像を作成してもよい。
【0160】
このように、本変形例によれば、推定した推定パラメータの値と、予め定めた撮影シーケンスの信号関数とを用い、当該撮影シーケンスの、予め定めた画質(任意のコントラスト)の画像を得ることができる。
【0161】
なお、上記各実施形態では、パラメータ推定部230、表示画像作成部240、信号関数作成部250は、MRI装置100が備えるものとしたが、これに限定されない。この中の少なくとも一つの構成が、例えば、MRI装置100とデータの送受信が可能な、MRI装置100とは独立した情報処理装置上に構築されていてもよい。
【符号の説明】
【0162】
100…MRI装置、101…マグネット、102…傾斜磁場コイル、103…被検体、104…シーケンサ、105…傾斜磁場電源、106…高周波磁場発生器、107…送受信コイル、108…受信器、109…計算機、110…表示装置、111…記憶装置、210…受付部、220…再構成画像取得部、230…パラメータ推定部、240…表示画像作成部、250…信号関数作成部、310…撮影パラメータセット、320…再構成画像、321…低解像度化した画像、330…信号関数、340…パラメータ分布、341…パラメータ分布、342…補間拡大後のパラメータ分布、343…パラメータ分布、344…従来手法によるパラメータ分布、410…撮影パラメータセット、420…信号関数、513…B分布のプロファイル、514…B分布のプロファイル、523…a分布のプロファイル、524…a分布のプロファイル、610…RF−Spoiled GEシーケンス、611…スライス傾斜磁場パルス、612…RFパルス、613…スライスリフェーズ(兼スライス位相エンコード)傾斜磁場パルス、614…位相エンコード傾斜磁場パルス、615…ディフェーズ用リードアウト傾斜磁場パルス、616…リードアウト傾斜磁場パルス、617…エコー信号、618…リードアウト傾斜磁場パルス、619…ディフェーズ用位相エンコード傾斜磁場パルス、620:ディフェーズ用位相エンコード傾斜磁場パルス、621…クラッシャーパルス、622…エコー信号、630…マルチエコーシーケンス、711…マルチエコー画像、712…マルチエコー画像、713…シングルエコー画像、714…シングルエコー画像、715…シングルエコー画像、716…シングルエコー画像、721…マルチエコー画像、722:マルチエコー画像、740:パラメータ分布、800…受付画面、810…推定パラメータ受付領域、820…パラメータセット受付領域、900…SEシーケンス、901…スライス選択傾斜磁場パルス、902…RFパルス、903…スライスリフェーズ傾斜磁場パルス、904…位相エンコード傾斜磁場パルス、905…ディフェーズ用リードアウト傾斜磁場パルス、906…クラッシャーパルス、907:クラッシャーパルス、908:クラッシャーパルス、909…スライス選択傾斜磁場パルス、910…リフォーカスパルス、911…クラッシャーパルス、912:クラッシャーパルス、913:クラッシャーパルス、914…リードアウト傾斜磁場パルス、915…A/D、916…クラッシャーパルス、918…エコー信号
【要約】
複数のパラメータの計算画像を同時に生成する手法を用いる場合であっても、計算画像の画質やパラメータ推定精度を向上させる技術を提供する。このため、個々の推定対象のパラメータに最適な解像度の再構成画像を用い、当該パラメータの値を推定し、当該パラメータの値の分布である計算画像を得る。最適な解像度の再構成画像は、撮影時に推定対象のパラメータのうち、最適な解像度が最も高い推定パラメータの最適な解像度で取得した再構成画像の解像度を調整することにより得る。または、撮影時に、所定の推定対象パラメータの算出に用いる再構成画像についてのみ、当該推定対象パラメータに最適な解像度で取得する。
図1
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