(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの
異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することな
くその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って
、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態における発光装置は、ガラスやセラミックなど耐熱性の高い作製基板上に、
剥離層を介して保護膜を含む被剥離層(TFTや発光素子の第1の電極、発光素子などを
含んでも良い)を形成した後、剥離層を境に作製基板と被剥離層とを分離して、分離した
被剥離層を接着剤を用いてプラスチック基板上に接着して作製される。よって、透水性の
高いプラスチック基板側に充分に透水性の低い保護膜が設けられる。このため、本実施の
形態における発光装置はプラスチック基板と保護膜との間に第1の接着剤層が存在する。
本明細書においてプラスチック基板とは、可撓性及び可視光に対する透光性を有する基板
のことである。プラスチック基板としては、可撓性及び可視光に対する透光性を有する基
板であれば特に限定はないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナ
フタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエーテルスル
フォン樹脂(PES)、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポ
リアミドイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、などを好適に用いることができる。また、第
1の接着材層は可視光に対する透光性を有する材料で形成する。例えば、紫外線硬化型等
の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型
接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、シリ
コーン樹脂、フェノール樹脂などが用いられている。保護膜は透水性が低く、且つ可視光
に対する透光性を有する材料で形成する。例えば、窒化ケイ素膜や窒化酸化ケイ素膜、酸
化窒化ケイ素膜などが挙げられ、窒素とケイ素を含む絶縁膜を用いることが好ましい。
【0040】
また、プラスチック基板と発光素子を挟んで反対側の基板には金属基板を用いる。金属基
板は可撓性を得るためにその膜厚は10μm以上200μm以下のものを用いる。なお、
20μm以上100μm以下のものが可撓性が高いため好ましい。金属基板を構成する材
料としては、特に限定はないが、アルミニウム、銅、ニッケル、またはアルミニウム合金
若しくはステンレスなどの金属の合金などを好適に用いることができる。金属基板は充分
に低い透水性と充分な可撓性を有するが、この範囲の膜厚では可視光に対する透光性を有
さないため、本実施の形態における発光装置はTFT層が設けられたプラスチック基板側
から発光を取り出すいわゆるボトムエミッション型の発光装置となる。なお、金属基板は
プラスチック基板と同様に、接着剤層を介して発光素子と接着されるため、発光素子の第
2の電極若しくは膜封止層と金属基板との間には第2の接着剤層が存在する。第2の接着
剤層の材料としては、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの接着剤を
用いることができる。これら接着剤の材質としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、シリコ
ーン樹脂、フェノール樹脂などが用いられている。
【0041】
このような構成を有する本実施の形態におけるフレキシブル発光装置は、透水性の高いプ
ラスチック基板側に当該プラスチック基板の耐熱温度以上の温度をかけて作製した、透水
性の充分に低い保護膜を設けていることから、プラスチック基板側から侵入する水分の影
響を有効に低減することができる。また、プラスチック基板と発光素子を挟んで反対側に
位置する封止基板として、充分な可撓性を有し、透水性の低い金属基板を用いることによ
って、封止基板側からの水分の侵入の影響も良好に抑えることが可能である。このように
、発光素子の両側において、多くの膜を積層しなくとも水分が侵入することを有効に低減
させることができることから、本実施の形態におけるフレキシブル発光装置は、簡便に作
製することができる寿命の長いフレキシブル発光装置であるということができる。
【0042】
作製基板上に形成する被剥離層には保護膜の他TFTや発光素子等を作り込んでおいても
良い。TFTとしては、アモルファスシリコンを用いたTFTや酸化物半導体を用いたT
FTなど高い熱をかけずに作製できるものはもちろん、耐熱性の高い作製基板上でTFT
を作製できることによって結晶質シリコンなど、ある程度の加熱やレーザ処理が必要な結
晶質半導体層を用いたTFTも作製が可能である。このことから、本実施の形態のフレキ
シブル発光装置は、結晶質半導体を用いたTFTを有するアクティブマトリクス型のフレ
キシブル発光装置とすることができる。また、結晶質半導体を用いたTFTを使用できる
ことから、駆動回路部やCPUを画素部と同じ基板上に作り込むこともでき、別途駆動回
路やCPUを装着するよりもコスト面や作製工程面で非常に有利なフレキシブル発光装置
を作製することも可能となる。
【0043】
図1(A)乃至(C)に本実施の形態における発光装置を表す図を示す。
【0044】
図1(A)は、駆動回路部及び画素TFTを設けたフレキシブル発光装置の例である。プ
ラスチック基板110上に第1の接着剤層111が設けられている。第1の接着剤層11
1は保護膜112とプラスチック基板110とを接着している。保護膜112上には、下
地絶縁膜113、画素TFT114、駆動回路部のTFT115、画素TFT114に電
気的に接続する発光素子の第1の電極117及び第1の電極117の端部を覆う隔壁11
8が設けられており、
図1(A)ではそれらの一部が示されている。発光素子127は隔
壁118から露出した第1の電極117と、それを少なくとも覆って形成された有機化合
物を含むEL層119及びEL層119を覆って設けられた第2の電極120を有する。
第2の電極120上には第2の接着剤層121を用いて金属基板122が接着されている
。なお、駆動回路部は必ずしも設ける必要はない。また、さらにCPU部を有していても
良い。また、
図1(A)では、被剥離層116は保護膜112、下地絶縁膜113、画素
TFT114、駆動回路部のTFT115、第1の層間絶縁膜128、第2の層間絶縁膜
129、第1の電極117及び隔壁118を少なくとも含む構成としたが、これは作製が
しやすい一例を示したものであり、被剥離層116を構成する要素はこれに限らない。
【0045】
図1(B)はパッシブマトリクス型のフレキシブル発光装置の例を示した。
図1(A)と
同様、プラスチック基板110上に第1の接着剤層111が設けられている。第1の接着
剤層111は被剥離層116とプラスチック基板110とを接着している。被剥離層11
6には保護膜112、発光素子の第1の電極117及び隔壁118が設けられており、図
ではそれらの一部が示されている。発光素子127は隔壁118から露出した第1の電極
117と、それを少なくとも覆って形成された有機化合物を含むEL層119及びEL層
119を覆ってストライプ状に設けられた第2の電極120を有する。第2の電極120
上には第2の接着剤層121を用いて金属基板122が接着されている。
図1(B)では
被剥離層116は保護膜112、第1の電極117及び隔壁118を少なくとも含む構成
としたが、これは作製がしやすい一例を示したものであり、被剥離層116を構成する要
素はこれに限らない。なお、
図1(B)では、隔壁118の形状が順テーパー型のパッシ
ブマトリクス型発光装置の例を示したが、逆テーパー型のパッシブマトリクス型発光装置
であっても良い。この場合、隔壁118のテーパーによってEL層119及び第2の電極
120を分離形成することができるため、それらの成膜にマスクを用いてパターニングを
行う必要が無い。
【0046】
なお、
図1(C)のように、金属基板122上にさらに樹脂層123を設けて、金属基板
122を保護しても良い。又は、プラスチック基板110の第1の接着剤層111と接す
る面と逆の面側にコート膜124を設けて押圧やひっかき傷からプラスチック基板表面を
保護しても良い。また、プラスチック基板110として予め透水性の低い保護膜125が
成膜された基板を用いたり、第2の電極120上に膜封止層126を設けたりすることに
より、さらに水分の侵入を抑制した構造としても良い。樹脂層123は、エポキシ樹脂、
アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂か
ら選ばれる一種若しくは複数種の樹脂材料、またはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ
カーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエチ
レンナフタレート等の熱可塑性樹脂から選ばれる一種若しくは複数種の樹脂材料を用いて
形成することができる。また、コート膜124は、有機膜、無機膜、若しくはその両方を
用いた積層膜など、様々な材料で形成することができ、柔らかいプラスチック基板110
の表面を傷などから保護することができるハードコート膜(例えば窒化ケイ素膜など)や
、押圧を分散可能な材質の膜(例えばアラミド樹脂膜等)を指すものとする。また、コー
ト膜124は、可視光に対する透光性を有し、高硬度な膜であるのが好ましい。プラスチ
ック基板に予め形成しておく保護膜125や膜封止層126としては、例えば窒化ケイ素
膜や窒化酸化ケイ素膜など、窒素及びケイ素を含む膜を用いることができる。
【0047】
図1(C)におけるフレキシブル発光装置は、保護膜112及び金属基板122によって
、基板面方向からの水分の侵入が有効に抑制されているため、保護膜125または膜封止
層126は、補助的に透水性をさらに低減させる意味では有効な構成である。なお、樹脂
層123、コート膜124、保護膜125及び膜封止層126は、どれか一つを適用して
も良いし、複数、若しくは全てを適用してもよい。また、
図1(C)は
図1(A)を元に
作製したが、これらの構成はもちろん
図1(B)とも組み合わせて使用することができる
。
【0048】
図1(A)乃至(C)において、発光素子127は一つしか示されていないが、画像を表
現するディスプレイ用途で本実施の形態におけるフレキシブル発光装置を用いる場合は、
複数の発光素子127を有する画素部を形成する。また、フルカラーの画像を表示する場
合には、少なくとも赤、緑、青の3色の光を得ることが必要となる。その方法としては、
色ごとにEL層119の必要な部分を塗り分けする方法、すべての発光素子を白色発光と
してカラーフィルタ層を透過させることによって各々の色を得る方法、全ての発光素子を
青もしくはそれより波長の短い発光とし色変換層を介して各々の色を得る方法などがある
。
【0049】
図2(A)乃至(D)にカラーフィルタ層、もしくは色変換層の設置方法について説明す
る図を示す。
図2(A)乃至(D)においては、300がカラーフィルタ層(もしくは色
変換層)を表し、301がバリア膜である。バリア膜301はカラーフィルタ層300(
もしくは色変換層)から発生するガスの影響を発光素子やTFTが受けないようにするた
めに設置されるが、これは必ずしも設ける必要はない。カラーフィルタ層300(もしく
は色変換層)は発光素子127に対応し、色ごとに設けられるが、隣り合う色のカラーフ
ィルタ層同士は、発光素子127の開口領域(第1の電極、EL層、第2の電極が直接重
なっている部分)以外の場所において重なっていても良い。カラーフィルタ層300とバ
リア膜301は画素部のみに形成しても、駆動回路部まで形成してもよい。
【0050】
図2(A)では、TFTの電極307を形成した後、TFTの層間絶縁膜304上にカラ
ーフィルタ層300を形成し、有機絶縁膜によりカラーフィルタ層による段差を平坦化す
る平坦化膜306を形成する。その後、平坦化膜306にコンタクトホールを形成し、発
光素子の第1の電極117とTFTの電極307を接続する電極305を形成して、発光
素子の第1の電極117を設けた一例である。また、平坦化膜306上にバリア膜301
を設けても良い。
【0051】
また、
図2(B)のように層間絶縁膜304の下にカラーフィルタ層300を設けてもよ
い。
図2(B)では、バリア膜301を形成した後、バリア膜301上にカラーフィルタ
層300を形成する。その後、層間絶縁膜304及びTFTの電極305を形成して、発
光素子の第1の電極117を設けた一例である。
【0052】
なお、
図2(A)乃至(D)では1色のカラーフィルタ層(もしくは色変換層)しか示し
ていないが、発光装置においては、赤、青及び緑のカラーフィルタ層(もしくは色変換層
)が適宜所定の配置及び形状で形成されている。カラーフィルタ層(もしくは色変換層)
の配列パターンは、ストライプ配列、斜めモザイク配列、三角モザイク配列などがあるが
、どのような配列をとっても良い。また、白色発光素子とカラーフィルタ層を用いる場合
、RGBW4画素配列を採用しても良い。RGBW4画素配列は、赤、青、緑3色のカラ
ーフィルタ層が設けられた画素と、カラーフィルタ層を設けない画素とを有する画素配置
であり、消費電力の低減などに効果を発揮する。また、白色発光素子は例えば赤、青及び
緑色の光を含み、NTSC(National Television Standar
ds Committee)で定められた赤、青及び緑色の光を含む構成であれば好まし
い。
【0053】
カラーフィルタ層は公知の材料を用いて形成することができる。カラーフィルタ層のパタ
ーンは、感光性の樹脂を使う場合はカラーフィルタ層そのものを露光及び現像して形成し
てもよいが、微細なパターンであるため、ドライエッチングによってパターンを形成する
ことが好ましい。
【0054】
図2(C)は、カラーフィルタ層300が設けられたカラーフィルタ基板302を設置す
る構成の例である。カラーフィルタ基板302のカラーフィルタ層300が形成されてい
ない面をプラスチック基板110に第1の接着剤層111を用いて貼り合わせる場合、カ
ラーフィルタ基板302には、カラーフィルタ層300を傷などから保護する為のコート
膜303を設けていても良い。コート膜303は可視光に対する透光性を有する材料で構
成し、コート膜124と同じ材料を用いることができる。また、図示していないがカラー
フィルタ基板302のカラーフィルタ層300が形成された側をプラスチック基板110
側に向けて貼り合わせても良い。なお、カラーフィルタ基板302とは、可撓性及び可視
光に対する透光性を有する各種基板、例えばプラスチック基板110と同様の材料にカラ
ーフィルタ層300を形成したものである。
【0055】
図2(D)は、あらかじめカラーフィルタ層300をプラスチック基板110に設けたカ
ラーフィルタ基板302を第1の電極を有する被剥離層116に直に貼り合わせる構成の
例である。カラーフィルタ層300を設けたプラスチック基板110からなるカラーフィ
ルタ基板302を、第1の電極を有する被剥離層116に直に貼り合わせることにより、
部品点数を削減し作製コストが低減できる。以上、簡単にカラーフィルタ層(もしくは色
変換層)の設置について説明したが、この他、各発光素子の間にブラックマトリクスが設
けられていても良いし、その他公知の構成が適用されていても良い。
【0056】
続いて、一例として、TFTを有する本実施の形態におけるフレキシブル発光装置の作製
方法を
図3(A)乃至(E)及び
図1(A)乃至(C)を用いて説明する。
【0057】
まず、絶縁表面を有する作製基板200上に剥離層201を介して、TFT及び第1の電
極117等を含む被剥離層116を形成する。(
図3(A)参照)。
【0058】
作製基板200としては、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、表
面に絶縁層が形成された金属基板など、良質な保護膜を形成することができる程度に耐熱
性の高い基板を用いることができる。
【0059】
作製基板は、通常のディスプレイ作製に用いられるような可撓性の小さい基板を用いてい
ることから、高精細に画素TFTを設けることもできる。
【0060】
剥離層201は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、タン
グステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(N
b)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ル
テニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリ
ジウム(Ir)、珪素(Si)から選択された元素、又は元素を主成分とする合金材料、
又は元素を主成分とする化合物材料からなる層を、単層又は積層して形成する。珪素を含
む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれの場合でもよい。なお、ここでは、
塗布法は、スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法、ノズルプリンティング
法、スロットダイコーティング法を含む。
【0061】
剥離層201が単層構造の場合、好ましくは、タングステン層、モリブデン層、又はタン
グステンとモリブデンの混合物を含む層を形成する。又は、タングステンの酸化物若しく
は酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層、又はタングス
テンとモリブデンの混合物の酸化物若しくは酸化窒化物を含む層を形成する。なお、タン
グステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当す
る。
【0062】
剥離層201が積層構造の場合、好ましくは、1層目としてタングステン層、モリブデン
層、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成し、2層目として、タングス
テン、モリブデン又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物、窒化物、酸化窒化物
又は窒化酸化物を含む層を形成する。
【0063】
剥離層201として、タングステンを含む層とタングステンの酸化物を含む層の積層構造
を形成する場合、タングステンを含む層を形成し、その上層に酸化物で形成される絶縁層
を形成することで、タングステン層と絶縁層との界面に、タングステンの酸化物を含む層
が形成されることを活用してもよい。これは、タングステンの窒化物、酸化窒化物及び窒
化酸化物を含む層を形成する場合も同様であり、タングステンを含む層を形成後、その上
層に窒化珪素層、酸化窒化珪素層、窒化酸化珪素層を形成するとよい。さらには、タング
ステンを含む層の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶
液での処理等を行ってタングステンの酸化物を含む層を形成してもよい。またプラズマ処
理や加熱処理は、酸素、窒素、一酸化二窒素、一酸化二窒素単体、あるいは前記ガスとそ
の他のガスとの混合気体雰囲気下で行ってもよい。
【0064】
続いて、剥離層201上に、被剥離層116を形成する。被剥離層116としては、まず
、剥離層201上に保護膜112を形成する。保護膜112は窒化ケイ素や酸化窒化ケイ
素、窒化酸化ケイ素など、窒素とケイ素を含む絶縁膜をプラズマCVDにより形成し、そ
の成膜温度を250℃〜400℃、及びその他の条件を公知の条件にすることによって、
緻密で非常に透水性の低い膜とすることができる。
【0065】
次に、この後作製するTFTの特性安定化のため下地絶縁膜113を形成する。下地絶縁
膜113は、酸化ケイ素や窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素などの無機絶縁
膜を用い、単層若しくは複数層にて作製することができる。なお、保護膜112が下地と
なる絶縁膜を兼ねることが出来る場合は、下地絶縁膜113は形成しなくとも良い。
【0066】
トランジスタが有する半導体層を形成する材料は、シランやゲルマンに代表される半導体
材料ガスを用いて気相成長法やスパッタリング法で作製される非晶質(アモルファス、以
下「AS」ともいう)半導体、該非晶質半導体を光エネルギーや熱エネルギーを利用して
結晶化させた多結晶半導体、或いは微結晶(セミアモルファス若しくはマイクロクリスタ
ルとも呼ばれる。以下「SAS」ともいう)半導体、有機材料を主成分とする半導体など
を用いることができる。半導体層はスパッタ法、LPCVD法、またはプラズマCVD法
等により成膜することができる。
【0067】
微結晶半導体層は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安
定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半
導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対
して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマ
ンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm
−1よりも低波数側に、シフトしている
。即ち、単結晶シリコンを示す520cm
−1とアモルファスシリコンを示す480cm
−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダング
リングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上
含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含
ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体層が得られ
る。
【0068】
この微結晶半導体層は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、ま
たは周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD法により形成することができる。
例えば、SiH
4、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4
などの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に
加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス
元素で希釈して微結晶半導体層を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対
して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好
ましくは100倍とする。
【0069】
アモルファス半導体としては、例えば水素化アモルファスシリコン、結晶性半導体として
は例えばポリシリコンなどがあげられる。ポリシリコン(多結晶シリコン)には、800
℃以上のプロセス温度を経て形成されるポリシリコンを主材料として用いた所謂高温ポリ
シリコンや、600℃以下のプロセス温度で形成されるポリシリコンを主材料として用い
た所謂低温ポリシリコン、また結晶化を促進する元素などを用いて、非晶質シリコンを結
晶化させたポリシリコンなどを含んでいる。もちろん、前述したように、微結晶半導体又
は半導体層の一部に結晶相を含む半導体を用いることもできる。
【0070】
また、半導体層の材料としてはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)などの単体のほ
かGaAs、InP、SiC、ZnSe、GaN、SiGeなどのような化合物半導体も
用いることができる。また酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2
)、酸化マグネシウム亜鉛、酸化ガリウム、インジウム酸化物、及び上記酸化物半導体の
複数より構成される酸化物半導体などを用いることができる。例えば、酸化亜鉛とインジ
ウム酸化物と酸化ガリウムとから構成される酸化物半導体なども用いることができる。な
お、酸化亜鉛を半導体層に用いる場合、ゲート絶縁層をY
2O
3、Al
2O
3、TiO
2
、それらの積層などを用いるとよく、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層とし
ては、インジウム錫酸化物(ITO)、Au、Tiなどを用いるとよい。また、ZnOに
InやGaなどを添加することもできる。なお、半導体層に可視光を透過する酸化物半導
体膜を利用した透明トランジスタを画素部のトランジスタに適用することもできる。この
ような透明トランジスタに発光素子を重ねて形成すると、画素に占める発光素子の面積率
、いわゆる開口率を高めることができ、高輝度で高解像度のフレキシブルな表示装置を形
成できる。また、透明トランジスタのゲート電極、ソース電極乃至ドレイン電極を、可視
光を透過する導電膜を用いて形成すると、さらに開口率を高めることができる。
【0071】
半導体層に、結晶性半導体層を用いる場合、その結晶性半導体層の作製方法は、種々の方
法(レーザ結晶化法、熱結晶化法、またはニッケルなどの結晶化を助長する元素を用いた
熱結晶化法等)を用いれば良い。また、SASである微結晶半導体をレーザ照射して結晶
化し、結晶性を高めることもできる。結晶化を助長する元素を導入しない場合は、非晶質
珪素膜にレーザ光を照射する前に、窒素雰囲気下500℃で1時間加熱することによって
非晶質珪素膜の含有水素濃度を1×10
20atoms/cm
3以下にまで放出させる。
これは水素を多く含んだ非晶質珪素膜にレーザ光を照射すると非晶質珪素膜が破壊されて
しまうからである。
【0072】
非晶質半導体層への金属元素の導入の仕方としては、当該金属元素を非晶質半導体層の表
面又はその内部に存在させ得る手法であれば特に限定はなく、例えばスパッタ法、CVD
法、プラズマ処理法(プラズマCVD法も含む)、吸着法、金属塩の溶液を塗布する方法
を使用することができる。このうち溶液を用いる方法は簡便であり、金属元素の濃度調整
が容易であるという点で有用である。また、このとき非晶質半導体層の表面の濡れ性を改
善し、非晶質半導体層の表面全体に水溶液を行き渡らせるため、酸素雰囲気中でのUV光
の照射、熱酸化法、ヒドロキシラジカルを含むオゾン水又は過酸化水素による処理等によ
り、酸化膜を成膜することが望ましい。
【0073】
また、非晶質半導体層を結晶化し、結晶性半導体層を形成する結晶化工程で、非晶質半導
体層に結晶化を促進する元素(触媒元素、金属元素とも示す)を添加し、熱処理(550
℃〜750℃で3分〜24時間)により結晶化を行ってもよい。結晶化を助長(促進)す
る元素としては、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru
)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)
、白金(Pt)、銅(Cu)及び金(Au)から選ばれた一種又は複数種類を用いること
ができる。
【0074】
結晶化を助長する元素を結晶性半導体層から除去、又は軽減するため、結晶性半導体層に
接して、不純物元素を含む半導体層を形成し、ゲッタリングシンクとして機能させる。不
純物元素としては、n型を付与する不純物元素、p型を付与する不純物元素や希ガス元素
などを用いることができ、例えばリン(P)、窒素(N)、ヒ素(As)、アンチモン(
Sb)、ビスマス(Bi)、ボロン(B)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴ
ン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用
いることができる。結晶化を促進する元素を含む結晶性半導体層に、希ガス元素を含む半
導体層を形成し、熱処理(550℃〜750℃で3分〜24時間)を行う。結晶性半導体
層中に含まれる結晶化を促進する元素は、希ガス元素を含む半導体層中に移動し、結晶性
半導体層中の結晶化を促進する元素は除去、又は軽減される。その後、ゲッタリングシン
クとなった希ガス元素を含む半導体層を除去する。
【0075】
非晶質半導体層の結晶化は、熱処理とレーザ光照射による結晶化を組み合わせてもよく、
熱処理やレーザ光照射を単独で、複数回行っても良い。
【0076】
また、結晶性半導体層を、直接作製基板の下地絶縁膜上にプラズマ法により形成しても良
い。また、プラズマ法を用いて、結晶性半導体層を選択的に作製基板の下地絶縁膜上に形
成してもよい。
【0077】
有機材料を主成分とする半導体層としては、他の元素と組み合わせて一定量の炭素または
炭素の同素体(ダイヤモンドを除く)からなる物質を主成分とする半導体層を用いること
ができる。具体的には、ペンタセン、テトラセン、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレ
ン誘導体、フタロシアニン化合物、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シア
ニン色素等が挙げられる。
【0078】
ゲート絶縁膜、ゲート電極は公知の構造、方法により作製すれば良い。例えばゲート絶縁
膜は酸化ケイ素の単層又は酸化ケイ素と窒化ケイ素との積層構造など、公知の構造で作製
すればよいし、ゲート電極は、CVD法やスパッタ法、液滴吐出法などを用い、Ag、A
u、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、
Ti、Si、Ge、Zr、Baから選ばれた元素、又は元素を主成分とする合金材料もし
くは化合物材料で形成すればよい。また、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シ
リコン膜に代表される半導体層や、AgPdCu合金を用いてもよい。また、単層構造で
も複数層の構造でもよい。
【0079】
なお、
図1においては、トップゲートのトランジスタの一例を示したが、もちろんその他
、ボトムゲートや公知の他の構造のトランジスタを用いても構わない。
【0080】
続いて、層間絶縁膜を形成する。層間絶縁膜は無機絶縁材料又は有機絶縁材料を用いて、
単層又は積層で形成することができる。有機絶縁材料としては、例えば、アクリル、ポリ
イミド、ポリアミド、ポリイミドアミド、ベンゾシクロブテン等を使用することができる
。なお、
図1では2層から成る層間絶縁膜128、129を示したが、これは一例を示し
たものであり、層間絶縁膜の構成はこれに限定されるものではない。
【0081】
層間絶縁膜を形成したら、パターニング及びエッチングを行うことによって、層間絶縁膜
、ゲート絶縁膜などにトランジスタの半導体層に達するコンタクトホールを形成し、導電
性の金属膜をスパッタ法又は真空蒸着法によって成膜してエッチングによってトランジス
タの電極及び配線を形成する。画素トランジスタのドレイン電極は画素電極である第1の
電極と重なる部分を設け、電気的な接続が得られるように形成する。
【0082】
つづいて、可視光に対する透光性を有する導電膜を用いて第1の電極117を形成する。
第1の電極117が陽極である場合は、可視光に対する透光性を有する導電膜の材料は、
酸化インジウム(In
2O
3)や酸化インジウム酸化スズ合金(In
2O
3―SnO
2;
ITO)などをスパッタ法や真空蒸着法などを用いて形成して用いることができる。酸化
インジウム酸化亜鉛合金(In
2O
3―ZnO)を用いても良い。また、酸化亜鉛(Zn
O)も適した材料であり、さらに可視光の透過率や導電率を高めるためにガリウム(Ga
)を添加した酸化亜鉛(ZnO:Ga)などを用いることができる。第1の電極117を
陰極とする場合には、アルミニウムなど仕事関数の低い材料の極薄膜を用いるか、そのよ
うな物質の薄膜と上述のような可視光に対する透光性を有する導電膜との積層構造を用い
ることによって作製することができる。
【0083】
その後、層間絶縁膜、第1の電極117を覆って有機絶縁材料又は無機絶縁材料を用いて
絶縁膜を形成し、当該絶縁膜を第1の電極117の表面が露出し且つ第1の電極117の
端部を覆うように加工して隔壁118を形成する。
【0084】
以上のような工程により、被剥離層116を形成することができる。
【0085】
続いて、被剥離層116と仮支持基板202とを剥離用接着剤203を用いて接着し、剥
離層201を用いて被剥離層116を作製基板200より剥離する。これにより被剥離層
116は、仮支持基板202側に設けられる(
図3(B)参照)。
【0086】
仮支持基板202は、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、金属基
板などを用いることができる。また、本実施の形態の処理温度に耐えうる耐熱性を有する
プラスチック基板を用いてもよいし、フィルムのような可撓性基板を用いても良い。
【0087】
また、ここで用いる剥離用接着剤203は、水や溶媒に可溶なものや、紫外線などの照射
により可塑化させることが可能であるような、必要時に仮支持基板202と被剥離層11
6とを化学的もしくは物理的に分離することが可能な接着剤を用いる。
【0088】
なお、仮支持基板への転置工程は、様々な方法を適宜用いることができる。例えば、剥離
層として、被剥離層と接する側に金属酸化膜を含む膜を形成した場合は、当該金属酸化膜
を結晶化により脆弱化して、被剥離層を作成基板から剥離することができる。また、耐熱
性の高い作製基板と被剥離層の間に、剥離層として水素を含む非晶質珪素膜を形成した場
合はレーザ光の照射またはエッチングにより当該非晶質珪素膜を除去することで、被剥離
層を作成基板から剥離することができる。また、剥離層として、被剥離層と接する側に金
属酸化膜を含む膜を形成し、当該金属酸化膜を結晶化により脆弱化し、さらに剥離層の一
部を溶液やNF
3、BrF
3、ClF
3等のフッ化ハロゲンガスによりエッチングで除去
した後、脆弱化された金属酸化膜において剥離することができる。さらには、剥離層とし
て窒素、酸素や水素等を含む膜(例えば、水素を含む非晶質珪素膜、水素含有合金膜、酸
素含有合金膜など)を用い、剥離層にレーザ光を照射して剥離層内に含有する窒素、酸素
や水素をガスとして放出させ被剥離層と基板との剥離を促進する方法を用いてもよい。
【0089】
または、被剥離層が形成された作製基板を機械的に削除又は溶液やNF
3、BrF
3、C
lF
3等のフッ化ハロゲンガスによるエッチングで除去する方法等を用いることができる
。この場合、剥離層を設けなくとも良い。
【0090】
また、上記剥離方法を複数組み合わせることでより容易に転置工程を行うことができる。
つまり、レーザ光の照射、ガスや溶液などによる剥離層へのエッチング、鋭いナイフやメ
スなどによる機械的な削除を行い、剥離層と被剥離層とを剥離しやすい状態にしてから、
物理的な力(機械等による)によって剥離を行うこともできる。
【0091】
また、剥離層と被剥離層との界面に液体を浸透させて作製基板から被剥離層を剥離しても
よい。また、剥離を行う際に水などの液体をかけながら剥離してもよい。
【0092】
その他の剥離方法としては、剥離層201をタングステンで形成した場合は、アンモニア
水と過酸化水素水の混合溶液により剥離層201をエッチングしながら剥離を行うと良い
。
【0093】
つづいて、作製基板200から剥離され、剥離層201、若しくは保護膜112が露出し
た被剥離層116に剥離用接着剤203とは異なる接着剤による第1の接着剤層111を
用いてプラスチック基板110を接着する(
図3(C)参照)。
【0094】
第1の接着剤層111の材料としては、紫外線硬化型接着剤など光硬化型の接着剤、反応
硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、または嫌気型接着剤など各種硬化型接着剤を用いること
ができる。
【0095】
プラスチック基板110としては、可撓性及び可視光に対する透光性を有する各種基板を
用いることができ、有機樹脂のフィルムなどを好適に使用できる。有機樹脂としては、例
えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等
のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ
メチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエーテルスルフォン樹
脂(PES)、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド
イミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を用いることが出来る。
【0096】
プラスチック基板110には予め窒化ケイ素や酸化窒化ケイ素等の窒素とケイ素を含む膜
や窒化アルミニウム等の窒素とアルミニウムを含む膜や酸化アルミニウム膜のような透水
性の低い保護膜125を成膜しておいても良い。
【0097】
その後、剥離用接着剤203を溶解若しくは可塑化させて、仮支持基板202を取り除く
。仮支持基板202を取り除いたら、発光素子の第1の電極117が露出するように剥離
用接着剤203を水や溶媒などで除去する(
図3(D)参照)。
【0098】
以上により、TFT及び発光素子の第1の電極117までが形成された被剥離層116を
プラスチック基板110上に作製することができる。
【0099】
第1の電極117が露出したら、続いてEL層119を成膜する。EL層119の積層構
造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質を含む層または正孔輸送性の高い物
質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポー
ラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質を含む層等を適宜組み合わせて構成すれ
ばよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組
み合わせて構成することができる。本実施の形態では、EL層は、正孔注入層、正孔輸送
層、発光層、電子輸送層を有する構成について説明する。各層を構成する材料について以
下に具体的に示す。
【0100】
正孔注入層は、陽極に接して設けられ、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデ
ン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物
等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H
2Pc)や銅フタロシアニ
ン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニル
アミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビ
ス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−N−
フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ
(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/
PSS)等の高分子等によっても正孔注入層を形成することができる。
【0101】
また、正孔注入層として、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合
材料を用いることができる。なお、正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有さ
せたものを用いることにより、電極の仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことが
できる。つまり、第1の電極117として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の
小さい材料を用いることができる。アクセプター性物質としては、7,7,8,8−テト
ラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F
4−TCNQ)、ク
ロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元
素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的
には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化
タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特
に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0102】
複合材料に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘
導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、
種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔
輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10
−6cm
2/Vs以上
の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い
物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることので
きる有機化合物を具体的に列挙する。
【0103】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェ
ニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジ
フェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,
4’−ビス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル
}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−
(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B
)等を挙げることができる。
【0104】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(
9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾ
ール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−
イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、
3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−
9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0105】
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−ジ
(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カ
ルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9
−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4
−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用い
ることができる。
【0106】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−
ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−t
ert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5
−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,
10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10
−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセ
ン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnt
h)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、
2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン
、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テ
トラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチ
ル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10
’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル
)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェ
ニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペ
リレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また
、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10
−6c
m
2/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いるこ
とがより好ましい。
【0107】
なお、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい
。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジ
フェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジ
フェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0108】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニ
ルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルア
ミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略
称:PTPDMA)ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フ
ェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもでき
る。
【0109】
正孔輸送層は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、
例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略
称:NPB)やN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,
1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス
(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4
’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン
(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2
−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合
物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10
−6cm
2/Vs以上の正孔
移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら
以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけで
なく、上記物質からなる層が二層以上積層したものでもよい。
【0110】
また、正孔輸送層として、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4
−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)等の高分子化合物を用いることもで
きる。
【0111】
発光層は、発光性の物質を含む層である。発光層の種類としては、発光物質を主成分とす
るいわゆる単膜の発光層であっても、ホスト材料中に発光材料を分散するいわゆるホスト
−ゲスト型の発光層であってもどちらでも構わない。
【0112】
用いられる発光材料に制限は無く、公知の蛍光又は燐光を発する材料を用いることができ
る。蛍光発光性材料としては、例えばN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−
イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YG
A2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アン
トリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、等の他、発光波長が450nm以上
の4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アント
リル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−
(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略
称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(
略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9
H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’
−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビ
ス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABP
A)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェ
ニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,
10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,
4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’
’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,
15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−
2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2P
CAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリ
ル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA
)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−
1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’
−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4
−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェ
ニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェ
ニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニル
アントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)クマリン545T、N,N’−ジフ
ェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフ
ェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{
2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−
イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2
,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテ
ニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N
,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略
称:p−mPhTD)、7,13−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−
メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称
:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラ
メチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−
イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJT
I)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,
3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニ
ル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(
2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4
−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(
8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,
5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン
}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。燐光発光性材料と
しては、例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2
’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、
の他、発光波長が470nm〜500nmの範囲にある、ビス[2−(4’,6’−ジフ
ルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:
FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナ
ト−N,C
2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CF
3ppy)
2(
pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C
2’]
イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、発光波長が50
0nm(緑色発光)以上のトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略
称:Ir(ppy)
3)、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチ
ルアセトナート(略称:Ir(ppy)
2(acac))、トリス(アセチルアセトナト
)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)
3(Phe
n))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(
略称:Ir(bzq)
2(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾ
ラト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)
2(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イ
リジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)
2(acac
))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C
2’)イリジウム(III)アセチ
ルアセトナート(略称:Ir(bt)
2(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4
,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C
3’]イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:Ir(btp)
2(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N
,C
2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)
2(ac
ac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキ
サリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)
2(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略
称:Ir(tppr)
2(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オ
クタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス
(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピ
ウム(III)(略称:Eu(DBM)
3(Phen))、トリス[1−(2−テノイル
)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(I
II)(略称:Eu(TTA)
3(Phen))等が挙げられる。以上のような材料又は
他の公知の材料の中から、各々の発光素子における発光色を考慮し選択すれば良い。
【0113】
ホスト材料を用いる場合は、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)
(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(
略称:Almq
3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(I
I)(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェ
ノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(
II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(I
I)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(I
I)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−te
rt−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビ
ス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル
]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4
−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’
,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミ
ダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュ
プロイン(略称:BCP)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール
−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、
NPB(またはα−NPD)、TPD、BSPBなどの芳香族アミン化合物が挙げられる
。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、
ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられ、具体的には、
9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N−ジフェニル−9−
[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミ
ン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミ
ン(略称:DPhPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェ
ニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9−ジフェニル
−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3
−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニ
ル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:
PCAPBA)、N,9−ジフェニル−N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)
−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、6,12−ジメトキシ−5
,11−ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’
’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(
略称:DBC1)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−
カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−
9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−
ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(
2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(
2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称
:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:
DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:D
PNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称
:TPB3)などを挙げることができる。これら及び公知の物質の中から、各々が分散す
る発光中心物質のエネルギーギャップ(燐光発光の場合は三重項励起エネルギー)より大
きなエネルギーギャップ(三重項励起エネルギー)を有する物質を有し、且つ各々の層が
有すべき輸送性に合致した輸送性を示す物質を選択すればよい。
【0114】
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニ
ウム(略称:Almq
3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウ
ム(略称:BeBq
2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノ
ラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を
有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル
)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX)
2)、ビス[2−(2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ)
2)などのオキサゾール系、
チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外
にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4
−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフ
ェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、
3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1
,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)
、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、
主に10
−6cm
2/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子
の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。
【0115】
また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したも
のでもよい。
【0116】
また、電子輸送層と発光層との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。こ
れは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した
層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節する
ことが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生
する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0117】
また、陰極となる電極に接して電子注入層を設けてもよい。電子注入層としては、フッ化
リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
2)等のよ
うなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を用いることができる。例え
ば、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれ
らの化合物を含有させたもの、例えばAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの
等を用いることができる。なお、電子注入層として、電子輸送性を有する物質からなる層
中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたものを用いることにより、第2の電
極120からの電子注入が効率良く行われるためより好ましい。
【0118】
続いて、EL層119上に第2の電極120を形成する。第2の電極120を形成する物
質としては、第2の電極120を陰極として用いる場合には、仕事関数の小さい(具体的
には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用い
ることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第
2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、お
よびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ
土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イ
ッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしな
がら、陰極と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関
わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸
化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。これら導電性材料は、スパ
ッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である
。
【0119】
また、第2の電極120を陽極として用いる場合には、仕事関数の大きい(具体的には4
.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好
ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Ti
n Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸
化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タング
ステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導
電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作
製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに
対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成
することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(I
WZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0
.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができ
る。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロ
ム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジ
ウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。また、
上述の複合材料を陽極に接して設けることによって、仕事関数の高低にかかわらず電極の
材料を選択することができる。
【0120】
なお、上述のEL層は
図6(A)のように第1の電極600と第2の電極601との間に
複数積層されていても良い。この場合、積層されたEL層800とEL層801との間に
は、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形
成することができる。また、電荷発生層803は複合材料よりなる層と他の材料よりなる
層との積層構造をなしていてもよい。この場合、他の材料よりなる層としては、電子供与
性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、可視光に対する透光性を有する導電膜より
なる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移
動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿
命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方
で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用い
ることができる。
【0121】
次に、EL層が第1の電極と第2の電極との間に2層以上の複数積層されている場合につ
いても説明する。
図6(B)のようにEL層1003が、例えばn(nは2以上の自然数
)層の積層構造を有する場合には、m(mは自然数、1≦m≦n−1)番目のEL層と、
(m+1)番目のEL層との間には、それぞれ電荷発生層1004が挟まれた構造を有す
る。
【0122】
なお、電荷発生層1004とは、第1の電極1001と第2の電極1002に電圧を印加
したときに、電荷発生層1004に接して形成される一方のEL層1003に対して正孔
を注入する機能を有し、他方のEL層1003に電子を注入する機能を有する。
【0123】
電荷発生層1004としては、例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料を用いること
ができる。また、電荷発生層1004は、有機化合物と金属酸化物の複合材料と、他の材
料(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物)とを組み合わせ
て形成しても良い。例えば、有機化合物と金属酸化物の複合材料よりなる層と、他の材料
(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物)よりなる層との積
層構造をなしていても良い。有機化合物と金属酸化物の複合材料としては、例えば、有機
化合物とV
2O
5やMoO
3やWO
3等の金属酸化物を含む。有機化合物としては、芳香
族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デ
ンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、有機化合物
としては、正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10
−6cm
2/Vs以上であるも
のを適用することが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これ
ら以外のものを用いてもよい。なお、電荷発生層1004に用いるこれらの材料は、キャ
リア注入性、キャリア輸送性に優れているため、発光素子の低電流駆動を実現することが
できる。
【0124】
特に
図6(A)の構成は白色の発光を得る場合に好ましく、
図2の構成と組み合わせるこ
とによって長寿命、高効率なフルカラーフレキシブル発光装置を作製することができる。
【0125】
複数の発光層の組み合わせとしては、赤、青及び緑色の光を含んで白色に発光する構成で
あればよく、例えば、青色の蛍光材料を発光物質として含む第1のEL層と、緑色と赤色
の燐光材料を発光物質として含む第2のEL層を有する構成が挙げられる。また、補色の
関係にある光を発する発光層を有する構成であっても白色発光が得られる。EL層が2層
積層された積層型素子において、第1のEL層から得られる発光の発光色と第2のEL層
から得られる発光の発光色を補色の関係にする場合、補色の関係としては、青色と黄色、
あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光する物質とし
ては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。
【0126】
以下に、第1のEL層および第2のEL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を
有し、白色発光が得られる構成の一例を示す。
【0127】
例えば、第1のEL層は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示
す第1の発光層と、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2の
発光層とを有し、第2のEL層は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペク
トルを示す第3の発光層と、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示
す第4の発光層とを有するものとする。
【0128】
この場合、第1のEL層からの発光は、第1の発光層および第2の発光層の両方からの発
光を合わせたものであるので、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両
方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1のEL層は2波長型の白色ま
たは白色に近い色の発光を呈する。
【0129】
また、第2のEL層からの発光は、第3の発光層および第4の発光層の両方からの発光を
合わせたものであるので、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方に
ピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2のEL層は、第1のEL層とは異
なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0130】
したがって、第1のEL層からの発光および第2のEL層からの発光を重ね合わせること
により、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙
色〜赤色の波長領域をカバーする白色発光を得ることができる。
【0131】
なお、上述した積層型素子の構成において、積層されるEL層の間に電荷発生層を配置す
ることにより、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での長寿命素子を実現することが
できる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光
が可能となる。
【0132】
第2の電極120まで形成したら、第2の電極120上に、第2の接着剤層121を用い
て金属基板122を接着する。第2の接着剤層121は第1の接着剤層111と同様の材
料で形成することができる。金属基板を構成する材料としては、特に限定はないが、アル
ミニウム、銅、ニッケルやアルミニウム合金若しくはステンレスなどの金属の合金などを
好適にもちいることができる(
図3(E))。なお、金属基板122は、第2の接着剤層
121を用いて接着する前に、真空中でのベークやプラズマ処理を行うことによって、そ
の表面に付着した水を取り除いておくことが好ましい。
【0133】
金属基板122の接着は、ラミネーターを用いて行うこともできる。例えば、まずシート
状の接着剤をラミネーターを用いて金属基板に貼り合わせておき、それをラミネーターを
用いてさらに発光素子上に接着する方法や、スクリーン印刷などで金属基板に接着剤を印
刷しておき、それをラミネーターを用いて発光素子上に接着する方法などがある。この工
程は、気泡が入るのを低減するため、減圧下で行うことが好ましい。
【0134】
以上のように
図1(A)乃至(C)に示したような本発明の一態様の発光装置を作製する
ことができる。
【0135】
本実施の形態では、TFTを有するフレキシブル発光装置を発光素子の第1の電極117
までを作製基板上に形成し、剥離する方法を例示したが、本明細書中で開示する発明はこ
れに限らず、発光素子127まで形成してから(すなわち、発光素子の第2の電極120
を形成後)剥離、転置を行っても良い。また、保護膜112のみ作製基板に形成し、プラ
スチック基板110に剥離、転置した後、TFTや発光素子を作製しても良い。また、T
FTを設けない場合は、保護膜112上に発光素子の第1の電極117から作り始めるこ
とによって同様に作製することができる。
【0136】
なお、発光素子の第2の電極120まで形成した後、
図1(C)に示したように膜封止層
126を形成し、さらなる透水性の低減を図っても良い。また、プラスチック基板110
の第1の接着剤層111と接する面と逆の面側にコート膜124を設け、画面に付いてし
まう傷や押圧による破損を防止しても良い。また、金属基板122上にも樹脂層123を
設け、金属基板の保護を図ってもよい。
【0137】
また、プラスチック基板110、第1の接着剤層111、第2の接着剤層121及び樹脂
層123には、これらの材料中に繊維体が含まれていても良い。繊維体は有機化合物また
は無機化合物の高強度繊維を用いる。高強度繊維とは、具体的には引張弾性率またはヤン
グ率の高い繊維のことを言い、代表例としては、ポリビニルアルコール系繊維、ポリエス
テル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエチレン系繊維、アラミド系繊維、ポリパラフェニ
レンベンゾビスオキサゾール繊維、ガラス繊維、または炭素繊維が挙げられる。ガラス繊
維としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Qガラス等を用いたガラス繊維が挙げられ
る。これらは、織布または不織布の状態で用い、この繊維体に有機樹脂を含浸させ有機樹
脂を硬化させた構造体をプラスチック基板110として用いても良い。プラスチック基板
110として繊維体と有機樹脂からなる構造体を用いると、曲げや局所的押圧による破損
に対する信頼性が向上するため、好ましい構成である。
【0138】
なお、プラスチック基板110や第1の接着剤層111中に上述のような繊維体が含まれ
る場合、発光素子からの光が外部に出るのを妨げることを低減するために、当該繊維体を
直径100nm以下のナノファイバーとすることが好ましい。また、繊維体と有機樹脂や
接着剤の屈折率を合わせることが好ましい。
【0139】
また、第1の接着剤層111とプラスチック基板110の両方の役割を担うものとしても
、繊維体に有機樹脂を含浸させ有機樹脂を硬化させた構造体を用いることが出来る。この
際、当該構造体の有機樹脂としては、反応硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型など追加処理
を施すことによって硬化が進行するものを用いると良い。
【0140】
次いで、異方性導電材で入出力端子部の各電極にFPC(フレキシブルプリントサーキッ
ト)を貼り付ける。必要があればICチップなどを実装させても良い。
【0141】
以上の工程で、FPCが接続されたモジュール型の発光装置が完成する。
【0142】
続いて、モジュール型の発光装置(ELモジュールとも呼ぶ)の上面図及び断面図を
図4
に示す。
【0143】
図4(A)は、ELモジュールを示す上面図、
図4(B)は
図4(A)をA−A’で切断
した断面図である。
図4(A)において、第1の接着剤層500を介してプラスチック基
板110上に、保護膜501が設けられ、その上に画素部502、ソース側駆動回路50
4、及びゲート側駆動回路503が形成されている。
【0144】
また、400は第2の接着剤層、401は金属基板であり、画素部および駆動回路部上に
第2の接着剤層400が形成され、その第2の接着剤層400によって金属基板401が
接着されている。さらに、金属基板401上に樹脂層を設けて金属基板401を保護して
も良い。
【0145】
なお、508はソース側駆動回路504及びゲート側駆動回路503に入力される信号を
伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC402(フレキシブルプリントサ
ーキット)からビデオ信号やクロック信号を受け取る。なお、ここではFPC402しか
図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていて
も良い。本明細書中で開示するフレキシブル発光装置には、発光装置本体だけでなく、そ
れにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0146】
次に、断面構造について
図4(B)を用いて説明する。第1の接着剤層500上に接して
保護膜501が設けられ、保護膜501の上方には画素部502、ゲート側駆動回路50
3が形成されており、画素部502は電流制御用TFT511とそのドレインに電気的に
接続された画素電極512を含む複数の画素により形成される。また、ゲート側駆動回路
503はnチャネル型TFT513とpチャネル型TFT514とを組み合わせたCMO
S回路を用いて形成される。
【0147】
図4(C)には、
図4(B)と異なる断面構造の例を示す。
図4(C)の例においては、
隔壁118を、窒化ケイ素や酸化窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素及び酸化ケイ素のような無
機材料により形成する。そして、第2の接着剤層400と金属基板401の周辺端部は隔
壁118の周辺端部よりフレキシブル発光装置の中心部に近くなるように設置する。すな
わち、第2の接着剤層400及び金属基板401は隔壁118よりその面積が小さく、隔
壁118の上に収まるように設置する。そして低融点金属520を第2の接着剤層400
の側面を覆うように形成する。これにより、第2の接着剤層400の側面端部からの水分
の侵入を非常に有効に遮断出来、さらなるフレキシブル発光装置の寿命の向上を実現でき
る。低融点金属520としては、特に限定はないが、概ね45℃〜300℃で融着可能な
金属材料を用いると良い。300℃程度の融着温度であれば、画素部周辺且つ隔壁の上で
の部分的な温度上昇であるため、発光素子やプラスチック基板に損傷を与えること無く融
着することが可能である。そのような材料としては、スズ、銀、銅、インジウムなどを含
む金属材料が挙げられる。また、これらにビスマスなどがさらに含まれていても良い。
【0148】
図11(A)及び
図11(B)には、発光装置の周辺端部からの水分の侵入をより効果的
に防ぐ別な構造を示す。
図11(A)に示す発光装置の金属基板401は、第2の接着剤
層400、発光素子518、被剥離層116及びプラスチック基板110に比べ大きく、
金属基板401の端部は第2の接着剤層400、発光素子518、被剥離層116及びプ
ラスチック基板110外周部より外側に延在している。また、封止膜521が第2の接着
剤層400、発光素子518、被剥離層116及びプラスチック基板110を覆い、金属
基板401の表面と接している。封止膜521としては透水性が低く、且つ可視光に対す
る透光性を有する材料で形成する。代表的には窒化ケイ素膜や窒化酸化ケイ素膜、酸化窒
化ケイ素膜のような無機材料などが挙げられ、窒素とケイ素を含む絶縁膜を用いることが
好ましい。封止膜521をこのような構造とすることで、発光装置を構成する第2の接着
剤層400、発光素子518、被剥離層116及びプラスチック基板110の端部及び、
界面から発光装置の内部へ水分が侵入するのを防ぐことができる。
【0149】
また、
図11(B)に示す発光装置は第2の接着剤層400、発光素子518、被剥離層
116及びプラスチック基板110の端部に平坦化層522を有する。平坦化層522は
樹脂を用いることができる。平坦化層522は第2の接着剤層400、発光素子518、
被剥離層116及びプラスチック基板110からなる積層構造がつくる段差を緩和する。
平坦化層522により段差が緩和された端部は、封止膜521による被覆が容易になる。
このような構造とすることで、発光装置を構成する第2の接着剤層400、発光素子51
8、被剥離層116及びプラスチック基板110の端部及び、界面からの水分の侵入を封
止膜521でより効果的に防ぐことができる。なお、平坦化層522は端部だけでなく、
プラスチック基板110全面を覆って塗布してもよい。
【0150】
以上のように、本実施の形態に記載のフレキシブル発光装置は、耐熱性の高い作製基板上
にTFTを作製することができることから、移動度の高い結晶質シリコンなどの結晶質半
導体層を用いたTFTを用いることができるため、このような駆動回路部を同時に作り込
むことが出来、より安価にフレキシブル発光装置を作製することができるようになる。
【0151】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示す発光装置をその一部に含む電子機器について説明
する。
【0152】
実施の形態1に示した発光素子を有する電子機器の一例として、ビデオカメラ、デジタル
カメラなどのカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置
(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(
モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備え
た画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)
等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる
。これらの電子機器の具体例を
図5に示す。
【0153】
図5(A)はテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピ
ーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置の表示部9103
は、実施の形態1に示した発光装置を用いることによって作製される。フレキシブル且つ
長寿命で簡便に作製できる実施の形態1に記載の発光装置を搭載したテレビ装置は、表示
部9103において、曲面の表示が可能かつ軽量化を実現しながら長寿命で価格の比較的
安価な商品とすることが可能となる。
【0154】
図5(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キー
ボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。
このコンピュータの表示部9203は、実施の形態1に示した発光装置を用いることによ
って作製される。フレキシブル且つ長寿命で簡便に作製できる実施の形態1に記載の発光
装置を搭載したコンピュータは、表示部9203において、曲面の表示が可能かつ軽量化
を実現しながら長寿命で価格の比較的安価な商品とすることが可能となる。
【0155】
図5(C)は携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力
部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407等を含む
。この携帯電話の表示部9403は、実施の形態1に示した発光装置を用いることによっ
て作製される。フレキシブル且つ長寿命で簡便に作製できる実施の形態1に記載の発光装
置を搭載した携帯電話は、表示部9403において、曲面の表示が可能かつ軽量化を実現
しながら高い画質の映像を提供することが可能となる。また軽量化が図られた実施の形態
における携帯電話には、様々な付加価値を備えても携帯に適した、重量に止めることがで
き、当該携帯電話は高機能な携帯電話としても適した構成となっている。
【0156】
図5(D)はカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポ
ート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入
力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラの表示部950
2は、実施の形態1に示した発光装置を用いることによって作製される。フレキシブル且
つ長寿命で簡便に作製できる実施の形態1に記載の発光装置を搭載したカメラは、表示部
9502において、曲面の表示が可能かつ軽量化を実現しながら長寿命で価格の比較的安
価な商品とすることが可能となる。
【0157】
図5(E)はディスプレイであり、本体9601、表示部9602、外部メモリ挿入部9
603、スピーカー部9604、操作キー9605等を含む。本体9601には他にテレ
ビ受像アンテナや外部入力端子、外部出力端子、バッテリーなどが搭載されていても良い
。このディスプレイの表示部9602は実施の形態1に示した発光装置を用いることによ
って作製される。フレキシブルな表示部9602は本体9601内に巻き取ることで収納
することが可能であり、携帯に好適である。フレキシブル且つ長寿命で簡便に作製できる
実施の形態1に記載の発光装置を搭載したディスプレイは、表示部9602において、携
帯好適性かつ軽量化を実現しながら長寿命で価格の比較的安価な商品とすることが可能と
なる。
【0158】
以上の様に、実施の形態1に示した発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあ
らゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0159】
(実施の形態3)
フレキシブル発光装置は、プラスチック基板を用いるため、ガラス基板などに比べて帯電
しやすい。そこで本実施の形態では、
図1(C)のコート膜124として透明導電膜を用
い、静電気対策がなされたフレキシブル発光装置を作製する例を示す。
【0160】
プラスチック基板110の第1の接着剤層111と接する面と逆の面側に透明導電膜であ
るコート膜124を設ける構成とする。FPC402を貼り合わせた後に透明導電膜であ
るコート膜124を形成してもよいし、金属基板401を貼り合わせた後に透明導電膜で
あるコート膜124を形成してもよいし、FPC402を貼り合わせる前に透明導電膜で
あるコート膜124を形成してもよい。
【0161】
また、コート膜124に用いる透明導電膜は、酸化インジウム(In
2O
3)や酸化錫や
、酸化インジウム酸化スズ合金(In
2O
3―SnO
2、ITOと略記する)、酸化タン
グステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化
チタンを含むインジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウ
ム錫酸化物、酸化アンチモンなどをスパッタ法や印刷法や真空蒸着法などを用いて形成す
る。
【0162】
静電気を帯びた人体の手、指などが透明導電膜であるコート膜124で覆われたプラスチ
ック基板110にふれた場合に放電が起きても、TFT(nチャネル型TFT513やp
チャネル型TFT514など)や画素部502を保護することができる。
【0163】
また、透明導電膜であるコート膜124は柔らかいプラスチック基板110の表面を傷な
どから保護することもできる。
【0164】
また、透明導電膜であるコート膜124と金属基板401とを導通させることが好ましく
、
図12にその構成の一例を示す。なお、この場合、金属基板401には導電性を有する
基板を用いる。
【0165】
また、
図12は、
図4と一部異なる以外は同一であるため、同じ部位には同じ符号を用い
て説明する。
【0166】
図12(A)は、ELモジュールを示す上面図、
図12(B)は
図12(A)を鎖線A−
A’で切断した断面図である。また、
図12(C)は、
図12(A)を点線X−Yで切断
した断面図である。
【0167】
図12(A)において、第1の接着剤層500を介してプラスチック基板110上に、保
護膜501が設けられ、その上に画素部502、ソース側駆動回路504、及びゲート側
駆動回路503を形成されている。これらの画素部や駆動回路は、上記実施の形態1に従
えば得ることができる。
【0168】
また、400は第2の接着剤層、401は金属基板であり、画素部および駆動回路部上に
第2の接着剤層400が形成され、その第2の接着剤層400によって金属基板401が
接着されている。金属基板401は、プラスチック基板110と重ならない領域を有して
おり、その領域に透明導電膜であるコート膜124を形成する。また、プラスチック基板
110の側面、第1の接着剤層500の側面、保護膜501の側面、ゲート絶縁膜の側面
、層間絶縁膜の側面、第2の接着剤層400の側面などにも透明導電膜であるコート膜1
24を形成する。これらの側面に透明導電膜であるコート膜124を形成することによっ
て、金属基板401とコート膜124とを導通させる。
【0169】
図12(C)に示すように、プラスチック基板110を囲むように金属基板401とコー
ト膜124とを配置し、金属基板401とコート膜124とを導通させることによって効
果的に静電気の帯電を抑制することができる。
【0170】
本実施の形態では、プラスチック基板110及びステンレス基板である金属基板401に
110nmの酸化インジウム酸化スズ合金膜を成膜する。
【0171】
なお、スパッタ法によって透明導電膜を成膜する際にはFPC402の端部に成膜されな
いよう金属ホイルなどで覆って保護した状態で成膜を行い、側面及び金属基板401の一
部(プラスチック基板110と重ならない領域)にも成膜されるようにすることが好まし
い。なお、図示しないが、金属ホイルなどで覆って保護しなければ、FPC402にも透
明導電膜が形成される。
【0172】
また、透明導電膜であるコート膜124は柔らかいプラスチック基板110の表面を傷な
どから保護することもできる。また、側面に設けた透明導電膜であるコート膜124は、
水分の侵入を抑制する保護膜としても機能する。
【0173】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【実施例1】
【0174】
本実施例では、画像表示装置として用いることができるアクティブマトリクス型のフレキ
シブル発光装置を例示する。本実施例で例示する発光装置の構成を
図7(A)、
図7(B
)に示す。
図7(A)はアクティブマトリクス型の発光装置を示す上面図であり、
図7(
B)は
図7(A)をA−A’で切断した断面図である。
【0175】
本実施例で例示するフレキシブル発光装置は、プラスチック基板110と、被剥離層11
6と、発光素子518と金属基板401を有する。
【0176】
被剥離層116が転置されるプラスチック基板110は、可視光に対する透光性が90%
以上であって、熱膨張率が約10ppm/Kの厚み20μmのアラミドフィルムからなる
。また、プラスチック基板110と被剥離層116を接着する第1の接着剤層500は、
二液性エポキシ接着剤(株式会社アルテコ製、商品名:R2007/H−1010)から
なる。
【0177】
被剥離層116は、保護膜501と、画素部502と、ゲート側駆動回路503と、ソー
ス側駆動回路504を有する。また、画素部502は電流制御用TFT511と、画素電
極512を有する。画素電極512は電流制御用TFT511のドレイン電極層と電気的
に接続している。なお、例示する電流制御用TFT511はp型であり、画素電極512
は発光素子518の陽極にあたる。
【0178】
保護膜501は、厚さ200nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層と、厚
さ200nmの窒化シリコン(SiN
y)層と、厚さ200nmの酸化窒化シリコン(S
iO
xN
y、x>y)層と、厚さ140nmの窒化酸化シリコン(SiN
yO
x、x<y
)層と、厚さ100nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層の多層膜からな
る。
このような積層構造により、基板下部からの水蒸気や酸素の浸入を防止することができる
ようになる。
【0179】
本実施例が例示するTFTは、半導体層上にゲート絶縁膜を有し、ゲート絶縁膜を介して
半導体層と重畳するゲート電極層を有し、半導体層のソース領域及びドレイン領域と電気
的に接続するソース電極層及びドレイン電極層を有する順スタガ構造のTFTを有する。
該TFTの半導体層は厚さ50nmのポリシリコン層からなり、ゲート絶縁膜は厚み11
0nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)膜からなる。
【0180】
なお、図示されていないがゲート電極層は2層からなり、下層のゲート電極層が上層のゲ
ート電極層よりも長い形状を有する。下層のゲート電極層は厚み30nmの窒化タンタル
層からなり、上層の電極層は厚み370nmのタングステン(W)層からなる。このよう
な形状により、フォトマスクを追加することなく、LDD(Lightly Doped
Drain)領域を形成できる。
【0181】
ゲート絶縁膜とゲート電極層上に形成される第1の層間絶縁膜515aは、厚さ50nm
の酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層と、厚さ140nmの窒化酸化シリコン
(SiN
yO
x、x<y)層と、厚さ520nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x
>y)層を積層した多層膜からなる。
【0182】
第1の層間絶縁膜515aのコンタクトホールを介して、TFTのソース領域及びドレイ
ン領域と接続するソース電極層及びドレイン電極層が形成されている。ソース電極層及び
ドレイン電極層は、厚さ100nmのチタン層と、厚さ700nmのアルミニウム層と、
厚さ100nmのチタン層の多層膜からなる。このように、電気抵抗が低いアルミニウム
と耐熱性に優れたチタンを積層することにより、配線抵抗を抑制しつつ、工程中のヒロッ
クの発生を防止できる。なお、図示されていないが配線層も同じ層で形成されている。
【0183】
また、TFT上に形成される第2の層間絶縁膜515bは、厚さ150nmの酸化窒化シ
リコン(SiO
xN
y、x>y)層からなる。
【0184】
画素電極(第1の電極)512は厚み125nmの酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(
ITSO)膜からなる。また、画素電極512の端部は感光性ポリイミドからなる隔壁5
19で覆われている。隔壁519の端部は画素電極512の表面に接し、またなだらかな
角度を有する。なだらかな角度を有して接する隔壁519の端部は段差が緩和され、画素
電極512を一方の電極とする発光素子において、画素電極512と他方の電極が短絡し
難くなる。
【0185】
なお、本実施例の被剥離層116は厚さ0.7mmのガラス基板(旭硝子社製、商品名A
N100)に形成された剥離層上に作製する。また、剥離層は厚さ100nmの酸化窒化
シリコン(SiO
xN
y、x>y)層と、厚さ50nmのタングステン層を積層した多層
膜からなる。
【0186】
画素電極512を一方の電極とする発光素子518の構成を
図7(C)に示す。発光素子
518は画素電極512を第1の電極とし、第2の電極517との間にEL層516を有
する。本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0187】
【化1】
【0188】
以下に、本実施例の発光素子の作製方法を示す。
【0189】
まず、画素電極512が形成された面が下方を向くように、画素電極512が形成された
基板を真空蒸着装置内に設けた基板ホルダーに固定した。10
−4Pa程度まで減圧した
後、画素電極512上に、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ
]ビフェニル(略称:NPB)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、有
機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を含む第1の層2111を正孔注入層と
して形成した。その膜厚は140nmとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は
、重量比で1:0.11(=NPB:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共
蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0190】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む第1の層2111上にNPBを1
0nmの膜厚となるように成膜し、第2の層2112を正孔輸送層として形成した。
【0191】
さらに、第2の層2112上に9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル
]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と、緑色の発光物質N−(9,10−ジフェ
ニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称
:2PCAPA)とを共蒸着することにより、第3の層2113を発光層として形成した
。発光層の膜厚は30nmとし、CzPAと2PCAPAの比率は、重量比で1:0.0
5(=CzPA:2PCAPA)となるように蒸着レートを調節した。
【0192】
次に、第3の層2113上にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)
と電子トラップ性物質であるN,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)とを
共蒸着することにより、第1の電子輸送領域2114aを形成した。第1の電子輸送領域
2114aの膜厚は10nmとし、AlqとDPQdの比率は、重量比で1:0.005
(=Alq:DPQd)となるように蒸着レートを調節した。
【0193】
その後、第2の電子輸送領域2114bとしてバソフェナントロリン(略称:BPhen
)を30nm蒸着して、第1の電子輸送領域2114aと第2の電子輸送領域2114b
からなる第4の層2114を電子輸送層として形成した。
【0194】
さらに第4の層2114上に、フッ化リチウム(LiF)を蒸着することにより第5の層
2115を電子注入層として形成した。また、第5の層2115の膜厚は1nmとした。
【0195】
最後に陰極として機能する第2の電極517を形成した。第2の電極517は二層で構成
した。第5の層2115に接する第1の導電層517aは、アルミニウム(Al)とNP
Bとを共蒸着して形成した。ここで、アルミニウムとNPBの重量比は、5:1(=Al
:NPB)となるように調整した。また、膜厚は100nmとした。さらに、第1の導電
層517a上に第2の導電層517bとしてアルミニウムを100nm蒸着した。なお、
第2の電極517は共通電極層を介して、端子部と接続されている。
【0196】
また、上述した蒸着過程において、蒸着は全て抵抗加熱法を用いることができる。
【0197】
金属基板401は第2の接着剤層400を介して被剥離層116と発光素子518に貼り
付けられ、被剥離層116と発光素子518が大気に曝されるのを防いでいる。金属基板
401は熱膨張率が約10ppm/Kであって、厚み20μmのフェライト系のステンレ
ス基板(新日鉄マテリアルズ社製、商品名YUS205−M1)からなる。第2の接着剤
層400は25μmの厚みを有するアクリル系シート状接着剤(住友スリーエム社製、商
品名8171J)からなる。
【0198】
本実施例で例示する発光装置は、実施の形態1において説明した作製方法に従って作製す
る。すなわち、作製基板に形成された剥離層上に保護膜501と、第1の電極として機能
する画素電極512等を有する被剥離層116をはじめに形成した。次に、被剥離層11
6を作製基板から可視光に対する透光性と可撓性を有するプラスチック基板110に仮支
持基板を介して転置した。続いて、画素電極512上にEL層516と第2の電極517
を形成して発光素子518を形成した。最後に、第2の接着剤層400を用いて金属基板
401で被剥離層116と発光素子518を封止して、発光装置を作製した。
【0199】
本実施例で例示するフレキシブル発光装置を直径10mmの円柱に巻き付けた状態で、ビ
デオ信号を入力した。該発光装置は円筒状に撓んだ状態でビデオ信号に応答し、正常に動
作した。また、円柱から解放して駆動しても、平面状態で正常に動作した。発光状態を写
真で
図9に示す。
【0200】
本実施例で例示する発光装置は、耐熱性の高い作製基板を用いて作製した被剥離層を有す
る。その結果、被剥離層に高温プロセスを用いることができるため、防湿性が高い保護膜
の形成が容易になり、発光素子の保護が確実かつ安価にできるようになる。また、例示す
る発光装置は可撓性を有し、撓ませた状態でも、平面状態でも発光できる。
【0201】
また、例示する発光装置は、薄膜と薄いフィルムと薄い金属板で構成されている。そのた
め、重量が軽く落下時に変形が少ないだけでなく、平面性に優れ、使用環境の変化に伴う
カールが少ないため、表示装置の駆動回路が壊れにくい。従って、例示する発光装置はフ
レキシブルディスプレイの用途に適している。
【実施例2】
【0202】
本実施例では、表示装置及び照明装置としても用いることができるフレキシブル発光装置
を例示する。本実施例の発光装置は、スイッチング素子を介さずに端子部に接続している
複数の発光素子の電極層がマトリクス状に配置されているため、パッシブマトリクス型と
いうことができ、表示装置や、表示装置のバックライトに利用できる。なお、複数の発光
素子を配置せず一個の発光素子を配置しても照明装置として利用できる。
【0203】
本実施例で例示する発光装置の画素部の構成を
図8(A)、
図8(B)に示す。
図8(A
)は、パッシブマトリクス型の発光装置を示す上面図であり、
図8(B)は
図8(A)を
A−A’で切断した断面図である。
【0204】
本実施例で例示するフレキシブル発光装置は、プラスチック基板110と、被剥離層11
6と、発光素子518と金属基板401を有する。プラスチック基板110と、発光素子
518と金属基板401は実施例1と同じものを用いたため、説明を省略する。
【0205】
本実施例で例示する被剥離層116は、保護膜501と、画素電極512と、層間絶縁膜
(515a、515b)と隔壁519を有する。
【0206】
保護膜501は、厚さ200nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層と、厚
さ200nmの窒化シリコン(SiN
y)層と、厚さ200nmの酸化窒化シリコン(S
iO
xN
y、x>y)層と、厚さ140nmの窒化酸化シリコン(SiN
yO
x、x<y
)層と、厚さ100nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層の多層膜からな
る。
【0207】
第1の層間絶縁膜515aは、厚さ50nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y
)層と、厚さ140nmの窒化酸化シリコン(SiN
yO
x、x<y)層と、厚さ520
nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層の多層膜からなる。
【0208】
配線層は、厚さ100nmのチタン層と、厚さ700nmのアルミニウム層と、厚さ10
0nmのチタン層の多層膜からなる。また、第2の層間絶縁膜515bは、厚さ150n
mの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)層からなる。
【0209】
画素電極512は第2の層間絶縁膜515bのコンタクトホールを介して配線層と電気的
に接続している。画素電極512は厚み125nmの酸化珪素を含むインジウム錫酸化物
(ITSO)膜からなる。
【0210】
また、画素電極512の端部は感光性ポリイミドからなる隔壁519で覆われている。
【0211】
なお、本実施例の被剥離層116は厚さ0.7mmのガラス基板に形成された剥離層上に
作製した。また、剥離層は厚さ100nmの酸化窒化シリコン(SiO
xN
y、x>y)
層と、厚さ50nmのタングステン層を積層した多層膜からなる。
【0212】
本実施例で例示するフレキシブル発光装置を直径5mmから直径30mmの円柱に巻き付
けた状態で駆動した。該発光装置は円筒状に撓んだ状態で点灯し、正常に動作した。また
、円柱から解放して駆動しても、平面状態で正常に点灯し、撓ませた状態と解放した状態
を複数回繰り返しても正常に発光した。発光状態を写真で
図10に示す。
【0213】
本実施例で例示する発光装置は、耐熱性の高い作製基板を用いて作製した被剥離層を有す
る。その結果、被剥離層に高温プロセスを用いることができるため、防湿性が高い保護膜
の形成が容易になり、発光素子の保護が確実かつ安価にできるようになる。また、例示す
る発光装置は可撓性を有し、撓ませた状態でも、平面状態でも発光できる。
【0214】
また、例示する発光装置は、薄膜と薄いフィルムと薄い金属板で構成されている。厚みが
薄いため狭い場所や、曲面に沿わせて変形して配置ができる。また、重量が軽いため、モ
バイル機器や航空機のように重量の抑制が厳しく求められる装置への適用に適している。