(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
本開示の実施態様は、鋼組成物、鋼組成物を使用して形成される管状棒(例えば、管)およびそれぞれの製法、を提供する。管状棒は例えば、石油およびガス産業における使用のためのライン管および上昇管として使用することができる。特定の態様において、管状棒は約35mm以上の肉厚および、実質的なフェライト、上部ベイナイトまたは粒状ベイナイトを含まない、マルテンサイトと下部ベイナイトの微細組織、を有することができる。そのように形成された管状棒は約65ksiと70ksiの最小降伏強さを有することができる。更なる態様において、管状棒は低温における良好な靭性および硫化物応力腐食亀裂(SSC)と水素誘発亀裂(HIC)に対する抵抗を有し、それにより酸性使用環境における管状棒の使用を可能にすることができる。しかし、管状棒は本開示の実施態様から形成することができる製品の一例を含んでなり、そして、決して、開示された実施態様の応用性を限定するものと考えてはならないことを理解することができる。
【0017】
本明細書で使用されるような用語「棒」は広義の用語であり、その通常の辞書にある意味を含み、そして更に、真っすぐであり、またはベンドもしくは湾曲物をもち、そして前以て決定された形状に形成することができる、全般的に中空の、細長い部材並びに、その意図される場所に、形成された管状棒を固定するために必要なあらゆる更なる成形材料、を表す。棒は、他の形状および断面も同様に想定されるが、実質的に円形の外面と内面をもつ管状であることができる。本明細書で使用される用語「管状」は、円形または円筒形である必要はない、あらゆる細長い中空の形状を表す。
【0018】
本明細書で使用される用語「大体」、「約」および「実質的に」は、記載量に等しい、またはそれに近い量であって、所望の機能を尚実施するか、または所望の結果を達成する量を表す。例えば、用語「大体」、「約」および「実質的に」は、記載量の10%未満内、5%未満内、1%未満内、0.1%未満内、そして0.01%未満内にある量を表すことができる。
【0019】
本明細書で使用される用語「室温」は、当業者に知られたその通常の意味をもち、約16℃(60°F)〜約32℃(90°F)の範囲内の温度を含むことができる。
【0020】
本開示の実施態様は、一般に低合金の炭素鋼管および製法を含んでなる。以下に更に詳述されるように、鋼の組成と熱処理の組み合わせにより、高い肉厚の管(例えば、約35mm以上のWT)において、最小降伏強さ、靭性、硬度および腐食抵抗の1種または複数を含む、興味を引かれる特定の機械的特性を与える、最終的微細組織を達成することができる。
【0021】
本開示の鋼組成物は、炭素(C)のみならずまた、マンガン(Mn)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、窒素(N)およびカルシウム(Ca)を含んでなることができる。更に
、場合により1個または複数の以下の元素:タングステン(W)、ニオビウム(Nb)、チタン(Ti)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)およびタンタル(Ta)、が存在しても、そして/または同様に添加されてもよい。組成物の残りは鉄(Fe)および不純物を含んでなることができる。特定の態様において、不純物の濃度はできるだけ低い量に減少させることができる。不純物の態様は、それらに限定はされないが、銅(Cu)、硫黄(S)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、酸素(O)および水素(H)を含むことができる。
【0022】
例えば、低合金の鋼組成物は以下(別記されない限り重量%):
約0.05%〜約0.16%間の範囲内の炭素;
約0.20%〜約0.90%間の範囲内のマンガン;
約0.10%〜約0.50%間の範囲内のケイ素;
約1.20%〜約2.60%間の範囲内のクロム;
約0.050%〜約0.50%間の範囲内のニッケル;
約0.80%〜約1.20%間の範囲内のモリブデン;
約0.80%以下のタングステン;
約0.030%以下のニオビウム;
約0.020%以下のチタン;
約0.005%〜約0.12%間の範囲内のバナジウム;
約0.008%〜約0.040%間の範囲内のアルミニウム;
約0.0030%〜約0.012%間の範囲内の窒素;
約0.3%以下の銅;
約0.01%以下の硫黄;
約0.02%以下のリン;
約0.001〜約0.005%間の範囲内のカルシウム;
約0.0020%以下のホウ素;
約0.020%以下のヒ素;
約0.005%以下のアンチモン;
約0.020%以下の錫;
0.03%以下のジルコニウム;
0.03%以下のタンタル;
約0.0050%未満のビスマス;
約0.0030%未満の酸素;
約0.00030%以下の水素;および
鉄と不純物を含んでなる組成物のバランス:
を含んでなることができる。
【0023】
熱処理操作は焼き入れと焼き戻し(Q+T)操作を含むことができる。焼き入れ操作は、熱形成後、管を、ほぼ室温から、管をオーステナイト化する温度に再加熱し、その後急速に焼き入れする工程を含むことができる。例えば、管を約900℃〜約1060℃間の範囲内の温度に加熱し、特定の浸漬時間中、ほぼオーステナイト化温度に維持することができる。焼き入れ期間中の冷却速度は、管の壁の中央の付近で特定の冷却速度を達成するように選択される。例えば、管を、壁の中央において約7℃/秒以上の冷却速度を達成するように冷却することができる。
【0024】
約35mm以上のWTおよび前記の組成を有する管を焼き入れする工程は、管内に約50%を超える、好適には約70%を超える、そしてより好適には約90%を超える容量パーセントのマルテンサイトの形成を促進することができる。管の残りの微細組織は、実質的にフェライト、上部ベイナイトまたは粒状ベイナイトを含まずに、下部ベイナイトを含むことができる。
【0025】
焼き入れ操作後、管を更に、焼き戻しにかけることができる。焼き戻しは、鋼の組成と目的の降伏強さに応じて、約680℃〜約760℃間の範囲内の温度で実施することができる。微細組織は、マルテンサイトと下部ベイナイトに加えて更に、約15μmもしくは20μm〜約100μmの、ASTM E112に従って測定された、平均旧オーステナイト粒度を示すことができる。微細組織はまた、約6μm未満の平均パケットサイズを示すことができる。微細組織は更に、約40nm以下の平均粒径をもつMX、M
2X(ここ
でM=V、Mo、Nb、CrそしてX=CまたはN)の微細沈殿物および、約80〜約400nm間の平均粒径をもつタイプM
3C、M
6C、M
23C
6の粗い沈殿物を示すことがで
きる。
【0026】
一つの態様において、約35mmを超えるWTおよび前述の組成と微細組織をもつ鋼管は、以下の特性をもつことができる:
・最小降伏強さ(YS) = 約65ksi(450MPa)
・最大降伏強さ = 約87ksi(600MPa)
・最小極限引っ張り強さ(UTS) = 約78ksi(535MPa)
・最大極限引っ張り強さ = 約110ksi(760MPa)
・破断時延び率 = 約20%を超える
・YS/UTS = 約0.91以下。
【0027】
他の態様において、約35mmを超えるWTをもつ鋼管を、以下の特性をもって形成することができる:
・最小降伏強さ(YS) = 約70ksi(485MPa)
・最大降伏強さ = 約92ksi(635MPa)
・最小極限引っ張り強さ(UTS) = 約83ksi(570MPa)
・最大極限引っ張り強さ = 約110ksi(760MPa)
・破断時延び率 = 約18%を超える
・YS/UTS = 約0.93以下。
【0028】
前記の各態様において、形成される管は更に以下の衝撃および硬度の特性を示すことができる:
・最小衝撃エネルギー(平均/個別、約−70℃における):
= 約200J/約150J
・平均剪断面積(約−70℃におけるCVN;ISO148−1)
= 最小約80%
・延性−脆性変態温度(ASTM E23)
= 約−70℃以下
・硬度
= 最大約248HV
10。
【0029】
前記の各態様において、形成される管は更に、硫化物応力腐食(SSC)亀裂および水素誘発亀裂(HIC)に対し以下の抵抗を示すことができる。SSCテストは720時間のテスト期間とともに溶液Aを使用してNACE TM0177に従って実施される。HICテストはNACE溶液Aとテスト期間 96時間を使用して、NACE TM0284−2003 第21215項に従って実施される:
HIC:
・亀裂の長さの比率、CLR = 約5%以下、
・亀裂の厚さの比率、CTR = 約1%以下、
・亀裂の感受性の比率、CSR = 約0.2%以下、
SSC:
・90%の特定最小降伏応力(SMYS)における破壊寿命=約720時間を超える。
【0030】
図1において、管状棒を製造するための方法100の一態様を表すフロー図が示される。方法100は、製鋼操作102、熱形成操作104、オーステナイト化106A、焼き入れ106B、焼き戻し106Cを含むことができる熱処理操作106、および仕上げ操作110を含む。方法100は、より多数の操作またはより少数の操作を含むことができ、その操作は、必要に応じて、
図1に示されたものと異なる順序で実施することができることは理解することができる。
【0031】
方法100の操作102は好適には、鋼の加工および、穿孔、圧延されて、金属の管状棒を形成することができる固形金属鋼片の製造、を含んでなる。更なる態様において、鋼組成物の原料を調製するために、特定の鋼スクラップ、鋳鉄および海綿鉄を使用することができる。しかし、鋼組成物の調製には、鉄および/または鋼の他の原料を使用することができることを理解することができる。
【0032】
鋼を熔融し、リンと他の不純物を減少させ、そして特定の温度を達成するために、電気アーク炉を使用して、一次製鋼を実施することができる。更に、タッピングと脱酸素、並びに合金元素の添加を実施することができる。
【0033】
製鋼工程の主要な目的の一つは不純物の除去により鉄を精錬することである。とりわけ、硫黄とリンは、それらが鋼の機械的特性を劣化させるために、鋼に不利益である。一つの態様において、特定の精錬工程を実施するために、一次的製鋼後に、レードル炉とトリミングステーションにおいて、二次的製鋼を実施することができる。
【0034】
これらの操作期間中に、鋼内に、非常に低い硫黄含量を達成することができ、カルシウム包含処理を実施し、そして包含物浮選が実施される。一つの態様において、包含物と不純物を浮揚させるために、レードル炉内で不活性ガスを泡立てることにより、包含物浮選を実施することができる。この方法は、不純物と包含物を吸収することができる流体スラッグを生成する。この方法で、包含物含量の低い、所望の組成を有する高品質の鋼を提供することができる。
【0035】
表1は、別記されない限り、重量パーセント(重量、%)における、鋼組成物の態様を表す。
【0037】
炭素(C)は、鋼組成物へのその添加が、鋼の強度を安価に高め、そして微細組織を微細化し、それにより変態温度を低下させることができる元素である。一つの態様において、鋼組成物のC含量が約0.05%未満であると、幾つかの態様においては製造製品、特に管状製品に所望される強度を得ることが困難であるかも知れない。他方、他の態様において、鋼組成物が約0.16%を超えるC含量を有する場合には、幾つかの態様においては、靭性が損なわれ、溶接性が減少し、それにより、接合がねじ接合により実施されない場合は、あらゆる溶接工程を、より困難で高価なものにさせる可能性がある。更に、炭素含量とともに、高い焼き入れ性をもつ鋼における焼き入れ亀裂の発生の危険が増加する。従って、一つの態様において、鋼組成物のC含量は約0.05%〜約0.16%間の範囲内、好適には約0.07%〜約0.14%間の範囲内、そしてより好適には約0.08%〜約0.12%間の範囲内に選択することができる。
【0038】
マンガン(Mn)は、鋼組成物に対するその添加が、鋼の焼き入れ性、強度および靭性を増加するのに有効であることができる元素である。一つの態様において、鋼組成物のMn含量が約0.20%未満であると、幾つかの態様においては、鋼に所望の強度を得ることが困難である可能性がある。しかし、他の態様において、鋼組成物のMn含量が約0.90%を超えると、幾つかの態様においては、バンド構造が著明になり、靭性とHIC/
SSC抵抗が減少する可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のMn含量は約0.20%〜約0.90%間の範囲内、好適には約0.30%〜約0.60%間の範囲内、そしてより好適には約0.30%〜約0.50%間の範囲内に選択することができる。
【0039】
ケイ素(Si)は、鋼組成物に対するその添加が、製鋼工程中に脱酸素効果をもつことができ、そして更に鋼の強度を増加する可能性がある(例えば、固溶体の強化)元素である。一つの態様において、鋼組成物のSi含量が約0.10%未満である場合は、幾つかの態様において、鋼は製鋼工程中に脱酸素が低く、高濃度の微細包含物を示す可能性がある。他の態様において、鋼組成物のSi含量が約0.50%を超えると、幾つかの態様で鋼の靭性と形成性の双方が減少する可能性がある。表面の酸化物(スケール)の付着は鉄カンラン石形成により増加し、表面の欠陥の危険が高まるために、鋼が酸化雰囲気中で、高温(例えば、約1000℃を超える温度)で処理される時には、0.5%を超えるSi含量はまた、表面の品質に有害な影響を有することが認められる。従って、一つの態様において、鋼組成物のSi含量は約0.10%〜約0.50%間の範囲内、好適には約0.10%〜約0.40%間の範囲内、そしてより好適には約0.10%〜約0.25%間の範囲内に選択することができる。
【0040】
クロム(Cr)は、鋼組成物に対するその添加が、焼き入れ性を増加し、変態温度を低下し、そして鋼の焼き戻し抵抗を増加することができる元素である。従って、鋼組成物に対するCrの添加は、高い強度と靭性レベルを達成するために望ましい可能性がある。一つの態様において、鋼組成物のCr含量が約1.2%未満である場合は、幾つかの態様において、所望される強度と靭性を得ることが困難かも知れない。他の態様において、鋼組成物のCr含量が約2.6%を超える場合は、価格が高すぎ、そして幾つかの態様でにおいては、粒子の境界における粗いカーバイドの高い堆積により、靭性が減少するかも知れない。更に、生成される鋼の溶接性が減少され、それにより、接合がネジ接合により実施されない場合は、溶接工程を、更に困難で、高価なものにさせる可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のCr含量は、約1.2%〜約2.6%間の範囲内、好適には約1.8%〜約2.5%間の範囲内、そしてより好適には約2.1%〜約2.4%間の範囲内に選択することができる。
【0041】
ニッケル(Ni)は、その添加が鋼の強度と靭性を増加する可能性がある元素である。しかし、一つの態様において、Niの添加が約0.5%を超えると、表面の欠陥形成のより高い危険とともに、スケールの付着に対する不都合な効果が認められた。更に、他の態様において、約1%を超えるNi含量は、硫化物応力腐食亀裂に有害な効果をもつことが認められる。従って、一つの態様において、鋼組成物のNi含量は、約0.05%〜約0.5%間の範囲内で変動することができる。
【0042】
モリブデン(Mo)は、鋼組成物に対するその添加が、固溶体と微細沈殿物により焼き入れ性と硬化を改善することができる元素である。Moは焼き戻し中の柔軟化を遅らせる助けをし、それにより非常に微細なMCとM
2C沈殿物の形成を促進することができる。これらの粒子はマトリックス内に実質的に均一に分布され、そして更に、有益な水素トラップとして働き、それにより亀裂の核部位として振舞う、通常は粒子の境界において危険なトラップに向かう原子水素の拡散を遅らせることができる。Moは更に、粒子の境界へのリンの分離を減少させ、それにより粒子内破断に対する抵抗を改善し、水素脆弱化を被る高強度の鋼は粒子内破断形態を示すため、SSC抵抗に対しても有益な効果を伴う。従って、鋼組成物のMo含量を増加することにより、より良い靭性レベルを促進する、より高い焼き戻し温度で、所望の強度を達成することができる。一つの態様において、その効果を発揮するために、Mo含量は約0.80%以上であることができる。しかし、他の態様において、約1.2%を超えるMo含量に対して、焼き入れ性に対する飽和効果が認め
られ、溶接性が減少される可能性がある。Moの鉄合金は高価であるため、一つの態様において、鋼組成物のMo含量は約0.8%〜約1.2%間の範囲内、好適には約0.9%〜約1.1%間の範囲内、そしてより好適には約0.95%〜約1.1%間の範囲内に選択することができる。
【0043】
タングステン(W)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そして二次的硬化を発生するタングステンカーバイドを形成することにより、室温および高温における強度を増加することができる元素である。Wは好適には、高温で鋼の使用が必要な時に添加される。Wの動態は焼き入れ性に関してはMoの動態に類似しているが、その効果はMoの効果の約半分である。タングステンは鋼の酸化を減少し、そして、その結果、高温における再加熱処理期間に、スケールの形成がより少ない。しかし、その価格が非常の高いので、一つの態様において、鋼組成物のW含量は約0.8%以下であるように選択することができる。
【0044】
ニオビウム(Nb)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そしてカーバイドおよびニトリドを形成するために提供され、そして更に熱間圧延および焼き入れ前の再加熱中に、オーステナイトの粒度を微細化するために使用することができる元素である。しかし、Cr、MoおよびCのような他の化学元素の適当なバランスにより、低い変態温度が促進される時には、主要なマルテンサイト組織が形成され、そして粗いオーステナイト粒子の場合ですら、微細なパケットが形成されるので、オーステナイト粒子を微細化するために、本発明の鋼組成物の態様にはNbは必要ではない。
【0045】
カーボニトリドとしてのNb沈殿物は粒子の分散硬化により鋼の強度を増加することができる。これらの微細な丸い粒子は、マトリックス内に実質的に均一に分布され、そして更に水素トラップとして働き、それにより、亀裂の核部位として振舞う、通常は粒子の境界における、危険なトラップに向かう原子水素の拡散を有益に遅らせることができる。一つの態様において、Nb含量が約0.030%を超えると、靭性を損なう粗い沈殿物の分布が形成される可能性がある。従って、一つの態様において、鋼組成物のNb含量は約0.030%以下、好適には約0.015%以下、そしてより好適には約0.01%以下であるように選択することができる。
【0046】
チタン(Ti)は、鋼組成物に対するその添加が、場合により実施され、そして高温の工程においてオーステナイト粒度を微細化して、それによりニトリドとカーボニトリドを形成するために提供されることができる元素である。しかし、特に25mmを超える肉厚をもつ管の場合に、それが、焼き入れ性を改善する固溶体中に残るホウ素を保護するために使用される場合を除いて、それは本発明の鋼組成物の態様には必要でない。例えば、Tiは窒素を結合して、BN形成を回避する。更に、特定の態様において、Tiが約0.02%より高い濃度で存在する場合に、靭性を損なう粗いTiNの粒子が形成され得る。従って、一つの態様において、鋼組成物のTi含量は約0.02%以下、そしてより好適には、ホウ素が約0.0010%未満である時に、約0.01%以下であることができる。
【0047】
バナジウム(V)は、鋼組成物に対するその添加が、焼き戻し中にカーボニトリドの沈殿により強度を増加することができる元素である。これらの微細な丸い粒子はまた、マトリックス内に実質的に均一に分布され、そして有益な水素トラップとして働くことができる。一つの態様において、V含量が約0.05%未満である場合に、幾つかの態様において、所望の強度を得ることが困難かも知れない。しかし、他の態様において、V含量が0.12%より高い場合には、大容量分率(a large volume fraction)のバナジウムカーバイド粒子が形成されて、その後に靭性の減少を伴うことができる。従って、特定の態様において、鋼組成物のNb含量は約0.12%以下、好適には約0.05%〜約0.10%間の範囲内、そしてより好適には約0.05%〜約0.07%
間の範囲内であるように選択することができる。
【0048】
アルミニウム(Al)は、鋼組成物に対するその添加が、製鋼工程中、脱酸素効果を有し、そして鋼粒子を微細化することができる元素である。一つの態様において、鋼組成物のAl含量が約0.040%より高い場合には、靭性を損なうAlNの粗い沈殿物並びに/または、HICおよびSSC抵抗を損なうAl濃度の高い酸化物(例えば、非金属包含物)が形成され得る。従って、一つの態様において、鋼のAl含量は約0.04%以下、好適には約0.03%以下、そしてより好適には約0.025%以下であるように選択することができる。
【0049】
窒素(N)は、一つの態様において、V、Nb、MoおよびTiのカーボニトリドを形成するために、鋼組成物内のその含量が好適には約0.0030%以上であるように選択される元素である。しかし、他の態様において、鋼組成物のN含量が約0.0120%を超えると、鋼の靭性が劣化される可能性がある。従って、鋼組成物のN含量は約0.0030%〜約0.0120%間の範囲内、好適には約0.0030%〜約0.0100%間の範囲内、そしてより好適には約0.0030%〜約0.0080%間の範囲内に選択することができる。
【0050】
銅(Cu)は、鋼組成物の態様には必要でない不純物元素である。しかし、製造工程に応じて、Cuの存在は不可避である可能性がある。従って、Cu含量はできるだけ低く限定することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のCu含量は約0.3%以下、好適には約0.20%以下、そしてより好適には約0.15%以下であることができる。
【0051】
硫黄(S)は、鋼の靭性と加工性の双方、並びにHIC/SSC抵抗を減少させることができる不純物元素である。従って、幾つかの態様において、鋼のS含量はできるだけ低く維持することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のS含量は約0.01%以下、好適には約0.005%以下、そしてより好適には約0.003%以下であることができる。
【0052】
リン(P)は、高強度の鋼の靭性とHIC/SSC抵抗を減少させることができる不純物元素である。従って、P含量は、幾つかの態様において、できるだけ低く維持することができる。例えば、一つの態様において、鋼組成物のP含量は約0.02%以下、好適には約0.012%以下、そしてより好適には約0.010%以下であることができる。
【0053】
カルシウム(Ca)は、鋼組成物へのその添加が、包含物の形状の制御および、微細な、実質的に丸い硫化物を形成することによりHIC抵抗の促進を補助することができる元素である。一つの態様において、これらの利点を提供するために、鋼組成物のCa含量は、鋼組成物の硫黄含量が約0.0020%を超える時は、約0.0010%以上であるように選択することができる。しかし他の態様において、鋼組成物のCa含量が約0.0050%を超える場合には、Ca添加の効果は飽和されて、HICとSSC抵抗を軽減する、Ca濃度の高い、非金属包含物の塊を形成する危険が増大する可能性がある。従って、特定の態様において、最少のCa含量は約0.0010%以上、そして最も好適には約0.0015%以上であるように選択することができるが、鋼組成物の最大Ca含量は約0.0050%以下、そしてより好適には約0.0030%以下であるように選択することができる。
【0054】
ホウ素(B)は、鋼組成物へのその添加が、場合により実施され、そして鋼の焼き入れ性を改善するために提供されることができる元素である。Bはフェライト形成を妨げるために使用することができる。一つの態様において、有益な効果は約0.0020%を超え
るホウ素含量により飽和され得るが、これらの有益な効果を提供するための鋼組成物のB含量の下限は約0.0005%であることができる。従って、特定の態様において、鋼組成物の最大のB含量は約0.0020%以下であるように選択することができる。
【0055】
ヒ素(As)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)およびビスマス(Bi)は鋼組成物の態様には必要でない不純物元素である。しかし、製鋼工程に応じて、これらの不純物元素の存在が不可避である可能性がある。従って、鋼組成物内のAsとSn含量は約0.020%以下、そしてより好適には約0.015%以下であるように選択することができる。SbとBi含量は約0.0050%以下であるように選択することができる。
【0056】
ジルコニウム(Zr)とタンタル(Ta)はNbおよびTiと同様な、強力なカーバイドおよびニトリド形成物として働く元素である。これらの元素はオーステナイト粒子を微細化するためには、本発明の鋼組成物の態様には必要でないので、鋼組成物に、場合により添加されることができる。ZrとTaの微細なカーボニトリドは粒子の分散硬化により鋼の強度を増加し、そして更に有益な水素トラップとして働き、それにより危険なトラップの方向への原子水素の拡散を遅延させることができる。一つの態様において、ZrまたはTa含量が約0.030%以上である場合には、鋼の靭性を損なう可能性がある粗い沈殿物の分布が形成され得る。ジルコニウムはまた、鋼中の脱酸素元素として働き、硫黄と結合するが、球体の非金属包含物を増進するための、鋼に対する添加物としてはCaが好まれる。従って、鋼組成物中のZrとTaの含量は約0.03%以下であるように選択することができる。
【0057】
鋼組成物の総酸素(O)含量は、可溶性酸素と、非金属包含物(酸化物)中の酸素の合計である。それは実際的には、十分に脱酸素された鋼中の酸化物中の酸素含量であるので、高すぎる酸素含量は、非金属包含物の高い容量の割合およびHICとSSCに対する少ない抵抗を意味する。従って、一つの態様において、鋼の酸素含量は約0.0030%以下、好適には約0.0020%以下、そしてより好適には約0.0015%以下であるように選択することができる。
【0058】
前記のような組成を有する流体スラグの製造後に、鋼は、鋼の軸に沿って実質的に均一な直径を有する丸い固形の鋼片に鋳型することができる。この方法で、例えば、約330mm〜約420mm間の範囲内の直径を有する丸い鋼片を製造することができる。
【0059】
このように加工された鋼片は熱形成工程104により管状の棒に形成することができる。一つの態様において、清浄な鋼の、固形の、円筒形の鋼片は約1200℃〜1340℃、好適には約1280℃の温度に加熱することができる。例えば鋼片は回転ヒース(heath)炉により再加熱することができる。鋼片は更に圧延機にかけることができる。圧延機内で、鋼片は、特定の好適な態様において、マネッスマン法を使用して穿孔することができ、そして熱間圧延を使用して、長さを実質的に増加させながら、管の外径と肉厚を実質的に減少させる。特定の態様において、マネッスマン法は約1200℃〜約1280℃間の範囲内の温度で実施することができる。得られる中空の棒を更に、保持マンドレル連続圧延機内で約1000℃〜約1200℃間の範囲内の温度で熱間圧延することができる。正確なサイジングはサイジング圧延機により実施することができ、継ぎ目なし管が冷却床中でほぼ室温に空気冷却される。この方法で、例えば、約6インチ(約15cm)〜約16インチ(約40cm)間の範囲内の外径(OD)をもつ管を形成することができる。
【0060】
圧延後、温度をより均一にするために、室温で冷却することなしに、中間炉により、管をインラインで加熱することができ、そして正確なサイジングはサイジング圧延機により実施することができる。その後、継ぎ目なし管を冷却床中で室温に空気冷却することがで
きる。約16インチ(約40cm)を超える最終ODをもつ管の場合に、中間サイズの圧延機により製造される管は回転膨張圧延機により加工することができる。例えば中間サイズの管は移動(walking)ビーム炉により約1150℃〜約1250℃間の範囲内の温度に再加熱され、約1100℃〜約1200℃間の範囲内の温度でエクスパンダ圧延機により所望の管径に膨張され、そして最終的サイジングの前にインラインで再加熱されることができる。
【0061】
限定されない例において、固形の棒は、約6インチ(約15cm)〜約16インチ(約40cm)間の範囲内の外径および約35mmを超える肉厚、を有する管に、前記の通りに熱形成されることができる。
【0062】
形成された管の最終的微細組織は、操作102において提供される鋼の組成および、操作106において実施される熱処理、により決定されることができる。組成と微細組織は順次、形成される管の特性を与えることができる。
【0063】
一つの態様において、マルテンサイト形成の促進は、パケットサイズ(亀裂の生長に対して、より高い抵抗を与える高角度の境界により分離された領域のサイズ、ずれ(misorientation)が高いほど、亀裂が境界を横断するために要するエネルギーが高い)を微細にし(refine)、そして一定の降伏強さに対する鋼管の靭性を改善することができる。焼き入れされたままの管中のマルテンサイト量を増加すると更に、与えられた強度レベルに対して、より高い焼き入れ温度の使用を許すことができる。従って、一つの態様において、比較的低温で、主としてマルテンサイトの微細組織を達成することが本方法の目的である(例えば、約450℃以下の温度におけるオーステナイトの変態)。一つの態様において、マルテンサイトの微細組織は約50%以上の容量パーセントのマルテンサイトを含んでなることができる。更なる態様において、マルテンサイトの容量パーセントは約70%以上であることができる。更なる態様において、マルテンサイトの容量パーセントは約90%以上であることができる。
【0064】
他の態様において、鋼の焼き入れ性、すなわち、焼き入れされる時にマルテンサイトを形成する鋼の相対的能力、は組成と微細組織により改善することができる。一つの様相において、CrとMoのような元素の添加は、マルテンサイトとベイナイトの変態温度を低下させることに有用であり、焼き戻しに対する抵抗を増加する。有益なことには、その場合、与えられた強度レベル(例えば、降伏強さ)を達成するために、より高い焼き戻し温度を使用することができる。他の様相において、比較的粗い旧オーステナイトの粒度(例えば、約15もしくは20μm〜約100μm)は焼き入れ性を改善することができる。
【0065】
更なる態様において、鋼の硫化物応力腐食亀裂(SSC)抵抗は組成と微細組織により改善することができる。一つの様相において、SSCは管内のマルテンサイトの増加した含量により改善されることができる。他の様相において、非常に高温における焼き戻しは以下に更に詳述されるように、管のSSCを改善することができる。
【0066】
約450℃以下の温度でマルテンサイト形成を促進するために、鋼組成物は更に等式1を満たすことができ、その各元素の量は重量%で与えられる:
60C% + Mo% + 1.7Cr% >10 等式1
【0067】
焼き入れ後に有意量のベイナイト(例えば、約50容量%未満)が存在する場合は、実質的に上部ベイナイトまたは粒状ベイナイト(ベイナイト状のずれた(dislocated)フェライトおよび、高Cのマルテンサイトと保持オーステナイトの島の混合物)を含まない、比較的微細なパケットを増進するためには、ベイナイトが形成する温度は約540℃以下でなければならない。
【0068】
約540℃以下の温度でベイナイト形成(例えば、下部ベイナイト)を増進するためには、鋼組成物は更に等式2を満たすことができ、そこで各元素の量は重量%で与えられる:
60C% + 41Mo% + 34Cr% >70 等式2
【0069】
図2は、膨張計測(dilatometry)により示された、請求された範囲内の組成をもつ鋼の連続的冷却変態(CCT)図を表す。
図2は、高いCrとMo含量の場合でも、フェライトの形成を実質的に回避し、そして約50容量%以上のマルテンサイト量を有するためには、約20μmを超える平均オーステナイト粒度(AGS)および約7℃/秒を超える冷却速度を使用することができることを明白に示す。
【0070】
明らかに、約35mm〜約60mm間の肉厚の管に対する約800℃と500℃間の典型的平均冷却速度は約1℃/秒より低いので、焼きならし(例えば、オーステナイト化とその後の静止空気中の冷却)は、所望のマルテンサイト微細組織を達成することができない。管の壁の中央付近に所望の冷却速度を達成し、そしてそれぞれ約450℃と約540℃より低い温度でマルテンサイトと下部ベイナイトを形成するためには、水の焼き入れを使用することができる。従って、圧延したままの管は炉内で再加熱され、熱間圧延から空気冷却後に、焼き入れ操作106Aにおいて水で焼き入れされることができる。
【0071】
例えば、オーステナイト化操作106Aの一つのの態様において、炉の領域の温度は、管に、約±20℃より小さい許容範囲を伴う目標のオーステナイト化温度を達成させるように選択することができる。目標のオーステナイト化温度は、約900℃〜約1060℃間の範囲内に選択することができる。加熱速度は約0.1℃/秒〜約0.2℃/秒間の範囲内に選択することができる。浸漬期間、すなわち管が最終目標温度マイナス約10℃を達成する時間と、炉から排出するまでの時間は約300秒〜約1800秒間の範囲内に選択することができる。オーステナイト化温度と保持時間は、化学組成、肉厚および所望のオーステナイト粒度に応じて選択することができる。炉の出口において、管は表面酸化物を除去するために、スケールを除去され、水の焼き入れシステムに早急に移される。
【0072】
焼き入れ操作106Bにおいて、管の壁の中央付近で所望の冷却速度(例えば、約7℃/秒を超える)を達成するために、外部および内部からの冷却を使用することができる。前述されたように、この範囲内の冷却速度は、約50%を超える、好適には約70%を超える、そしてより好適には約90%を超えるマルテンサイトの容量パーセントの形成を促進することができる。残りの微細組織は下部ベイナイト(すなわち、通常約540℃より高い温度で形成される上部ベイナイトの場合におけるように、ラス境界に粗い沈殿物を伴わずにベイナイトのラス(laths)内に微細な沈殿物を含む典型的な形態をもつ約540℃より低い温度で形成されるベイナイト)を含むことができる。
【0073】
一つの態様において、焼き入れ操作106Bの水による焼き入れは、撹拌された水を含むタンク内に管を浸漬することにより実施することができる。管は、熱の移動を、高く、均一にさせ、そして管のゆがみを回避するために、焼き入れ期間中、急速に回転することができる。更に、管内に発生する蒸気を除去するために、内部の水噴射を使用することもできる。特定の態様において、焼き入れ操作106B期間中の水温は、約40℃以下、好適には約30℃未満であることができる。
【0074】
焼き入れ操作106B後に、管を、焼き戻し操作106Cのために他の炉内に導入することができる。特定の態様において、比較的低いずれ(dislocation)密度のマトリックスおよび、実質的に丸い形状(すなわち、より高度の球状化)をもつ、より多いカーバイドを生成するように、焼き戻し温度を十分に高いように選択することができる。ラスと粒子の境界における針型カーバイドは、より容易な亀裂経路を提供することができるので、この球状化は管の衝撃靭性を改善する。
【0075】
より球状の、分散されたカーバイドを生成するのに十分に高い温度でマルテンサイトを焼き戻しすることは、粒子を横断する亀裂、およびより良いSSC抵抗を増進することができる。亀裂の生長は多数の水素捕捉部位をもつ鋼においてより遅いことができ、そして球形をもつ、微細な、分散された沈殿物は、より良い結果を与える。
【0076】
結束(banded)微細組織(例えば、フェライト−パーライトまたはフェライト−ベイナイト)と反対に、焼き戻しマルテンサイトを含む微細組織を形成することにより、鋼管のHIC抵抗は更に増加することができる。
【0077】
一つの態様において、焼き戻し温度は、鋼の化学組成と目標の降伏強さに応じて、約680℃〜約760℃間の範囲内に選択することができる。選択された焼き戻し温度の許容範囲は約±15℃の範囲内にあることができる。管は、選択された焼き戻し温度まで、約0.1℃/秒〜約0.2℃/秒の間の速度で加熱することができる。管は、更に、約1800秒〜約5400秒間の範囲内の期間中、選択された焼き戻し温度に維持することができる。
【0078】
明らかに、パケットサイズは焼き戻し操作106Cにより有意には影響を受けない。しかしパケットサイズは、オーステナイトが変態する温度の低下とともに縮小することができる。約0.43%未満の炭素当量を含む伝統的な低炭素鋼においては、焼き戻しベイナイトは本適用内の焼き戻しマルテンサイトの値(例えば、約6μm以下、例えば約6μm〜約2μmの範囲内)に比較して、より粗いパケットサイズ(例えば、7〜12μm)を示すことができる。
【0079】
マルテンサイトのパケットサイズは平均オーステナイト粒度とはほとんど独立しており、比較的粗い平均オーステナイト粒度(例えば、15μmもしくは20μm〜約100μm)の場合でも、微細(例えば、約6μm以下の平均粒度)のままであることができる。
【0080】
仕上げ操作110はそれらに限定はされないが、歪取りまたは曲げ操作を含むことができる。歪取り操作は焼き戻し温度より下〜約450℃より上の温度で実施することができる。
【0081】
一つの態様において、曲げ操作は熱誘導曲げにより実施することができる。熱誘導曲げは、誘導コイル(例えば、加熱リング)と、曲げられる構造物の外面上に水を噴霧する焼き入れリング、により規定される、ホットテープと呼ばれる狭い領域内に集中する熱変形過程である。真っすぐな(母)管が、管の前方が円形経路を表すように拘束されたアームに固定されながら、その背部から押し込まれる。この拘束が全構造物上に曲げのモーメントを誘発するが、管は実質的にホットテープの対応(correspondence)内でのみ可塑的に変形される。従って、焼き入れリングは2種の同時の役目を果たす:区域を可塑的変形下で規定し、そして熱ベンドをインラインで焼き入れる。
【0082】
加熱リングと焼き入れリング双方の管径は、母管の外径(OD)より約20mm〜約60mm大きい。管の外面および内面双方の曲げ温度は、高温計により連続的に測定することができる。
【0083】
従来の管加工において、ベンドは、最終的機械特性を達成するために、曲げおよび焼き入れ後に、比較的低温における焼き戻し処理により応力緩和処理を受けることができる。しかし、仕上げ操作110期間中に実施されるインラインの焼き入れと焼き戻し操作は、オフラインの焼き入れと焼き戻し操作106B、106Cから得られるものと異なる微細組織を製造することができることが認められる。従って、本開示の一つの態様において、操作106B、106C後に得られる微細組織を実質的に再生するために、操作106B、106Cにおいて前述されたように、オフラインの焼き入れと焼き戻し処理を実施することができる。従って、ベンドは炉内で再加熱され、次に撹拌水を含む焼き入れタンク内に早急に浸漬され、次に炉内で焼き戻しされる。
【0084】
一つの態様において、曲げ後の焼き戻しは、約710℃〜約760℃間の範囲内の温度で実施することができる。管は約0.05℃/秒〜約0.2℃/秒間の範囲内の速度で加熱することができる。目標の焼き戻し温度が達成された後に、約1800秒〜約5400秒間の範囲内の保持時間を使用することができる。
【0085】
図3は、開示態様に従って形成される圧延されたままの管の微細組織を表す光学顕微鏡写真(2%ナイタール(nital)エッチング)である。管の組成は0.14%のC、
0.46%のMn、0.24%のSi、2.14%のCr、0.95%のMo、0.11%のNi、0.005%〜0.12%の範囲のV、0.014%のAl、0.007%のN、0.0013%のCa、0.011%のP、0.001%のS、0.13%のCuであった。管は約273mmの外径(OD)と約44mmの肉厚を有した。
図3に示したように、圧延されたままの管は、主としてベイナイトおよび、旧オーステナイトの境界における幾らかのフェライトである微細組織を示す。リニアルインターセプトとしてASTM E112に従って測定された焼き入れしたままの管の平均オーステナイト粒度(AGS)は約102.4μmであった。
【0086】
図4は、開示態様に従う焼き入れ後の管の微細組織を示す光学顕微鏡写真である。
図4に示されるように、焼き入れしたままの管は50%(ASTM E562−08に従って測定)を超える容量百分率をもつマルテンサイトと、約40%未満の容量百分率をもつ下部ベイナイトである微細組織を示す。微細組織は実質的にフェライト、上部ベイナイトまたは粒状ベイナイト(ベイナイトのずれた(dislocated)フェライトおよび高Cのマルテンサイトと保持オーステナイトの島の混合物)は含まない。
【0087】
図5は
図4の焼き入れしたままの管の中央の壁を表す光学顕微鏡写真である。焼き入れしたままの管の旧オーステナイト粒子の境界を示すために選択的エッチングを実施し、旧オーステナイトの粒度を約47.8μmであると決定される。
【0088】
この場合におけるように、オーステナイト粒子が粗い時でも、主要なマルテンサイト構造物(例えば、約50容量%より多いマルテンサイト)が形成され、下部ベイナイトが比較的低温で(<540℃)形成する場合は、焼き入れと焼き戻し後の鋼のパケットサイズはほぼ6μm未満に維持されることができる。
【0089】
パケットサイズは、電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用し、そして高角度境界を約
45°より大きいずれ(misorientation)をもつものと考えて、走査電子顕微鏡(SEM)により採られた画像上の平均リニアルインターセプトとして測定される。旧オーステナイトの粒度は約47.8μmの平均値を有したが、リニアルインターセプト法による測定は、約5.8μmの平均パケットサイズ値を伴って
図6に示した分布を与えた。
【0090】
焼き入れおよび焼き戻し管上において、約80nm〜約400nm間の範囲内の平均粒径をもつ、タイプM
3C、M
6C、M
23C
6の粗い沈殿物に加えて、約40nm未満の粒度をもつ、MX、M
2Xタイプ[ここで、MはMoまたはCr、あるいは存在する場合はV、Nb、Tiであり、そしてXはCまたはNである]の微細沈殿物もまた、透過電子顕微鏡(TEM)により検出された。
【0091】
非金属包含物の総容量百分率は約0.05%未満、好適には約0.04%未満である。約15μmより大きい粒度をもつ酸化物の検査面積の平方mm当たりの包含物数は約0.4/mm
2未満である。
実質的に修飾された丸い硫化物のみが存在する。
【実施例】
【0092】
以下の実施例において、前述の製鋼法の態様を使用して形成された鋼管の微細組織および機械的特性および衝撃が考察される。とりわけ、前述の組成物および熱処理条件の態様に対して、オーステナイトの粒度、パケットサイズ、マルテンサイトの容量、下部ベイナイトの容量、非金属包含物の容量および約15μmより大きい包含物、を含む微細組織のパラメーターを調べる。更に、降伏強さおよび引っ張り強さ、硬度、延び率、靭性およびHIC/SSC抵抗を含む対応する機械的特性も考察される。
【実施例1】
【0093】
焼き入れおよび焼き戻し厚肉管の機械的および微細組織の特性
表2の鋼の微細組織および機械的特性を研究した。微細組織のパラメーターの測定に関連して、オーステナイト粒度(AGS)はASTM E112に従って測定し、パケットサイズは電子逆散乱回折(EBSD)信号を使用する走査電子顕微鏡(SEM)により採られた画像上の平均リニアルインターセプトを使用して測定され、マルテンサイトの容量はASTM E562に従って測定され、下部ベイナイトの容量はASTM E562に従って測定され、非金属包含物の容量百分率はASTM E1245に従って光学顕微鏡を使用する自動画像分析により測定され、そして沈殿物の存在は抽出複製法を使用する透過電子顕微鏡(TEM)により研究された。
【0094】
機械的特性に関して、降伏強さ、引っ張り強さおよび延び率をASTM E8に従って測定し、硬度はASTM E92に従って測定し、衝撃エネルギーはISO148−1に従って、横方向シャルピーV−ノッチ試験片上で評価し、延性−脆性転移温度はASTM
E208に従って横方向シャルピーV−ノッチ試験片上で評価し、亀裂先端開口部のずれはBS7488の第1部に従って約−60℃で測定し、HIC評価はNACE溶液Aと96時間の試験期間を使用してNACE標準TM0284−2003、第21215項に従って実施した。SSC評価はNACE TM0177に従って、約90%の降伏応力において、試験溶液Aと約720時間の試験期間とを使用して実施した。
【0095】
表2に示した化学組成範囲をもつ約90tの熱がアーク炉により製造された。
【0096】
【表2】
【0097】
タッピング(tapping)、脱酸素および合金添加後に、レードル炉とトリミングステーション中で二次的冶金学的操作を実施した。次に、カルシウム処理および真空脱気後に、液体鋼を約330mm直径の丸い棒として垂直鋳造機上で連続的に鋳造した。
【0098】
鋳造したままの棒を約1300℃の温度まで回転ヒース炉により再加熱し、熱穿孔し、中空物を保持マンドレルの複数スタンドの管圧延機により熱間圧延し、そして
図1において前述された方法に従って、熱サイジングにかけた。製造された継ぎ目なし管は、約273.1mmの外径と約44mmの肉厚を有した。生成された圧延されたままの継ぎ目なし管上で測定された化学組成は表3に報告される。
【0099】
【表3】
【0100】
その後、圧延されたままの管を移動ビーム炉により約5400秒間、約920℃の温度に加熱することによりオーステナイト化し、高圧水ノズルによりスケール除去し、そして撹拌水を含むタンクと内部の水ノズルを使用して、外部、内部から水で焼き入れした。オーステナイト化加熱速度は約0.16℃/秒であった。焼き入れ中に使用された冷却速度は約15℃/秒であった。焼き入れされた管は、約9000秒の総合時間および約4200秒の浸漬時間にわたり、約740℃の温度における焼き戻し処理のために、他の移動ビーム炉に早急に移された。焼き戻し加熱速度は約0.12℃/秒であった。焼き戻し中に使用された冷却速度は、ほぼ0.1℃/秒未満であった。すべての焼き入れおよび焼き戻し(Q&T)管は熱により歪みとりを実施された。
【0101】
実施例1の管の微細組織と非金属包含物の特徴を表す主要なパラメーターは表4に示される。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例1の管の機械的特性は表5、6および7に示される。表5は焼き入れおよび焼き戻し管の引っ張り、延び率、硬度および靭性の特性を表す。表6はシミュレートされた溶接後の熱処理後の降伏強さ、破断出現転移温度、亀裂先端開口部のずれおよび延性転移温度、を表す。溶接後熱処理は、5時間の浸漬時間を伴って約690℃の温度までの、約80℃/時間の速度の加熱および冷却、よりなった。表7は焼き入れおよび焼き戻し管の、測定されたHICおよびSSC抵抗を示す。
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
前記の試験結果(表5、表6および表7)から、焼き入れおよび焼き戻し管は65ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴を示すことが認められた:、
・降伏強さ,YS:最小約450MPa(65ksi)および最大約600MPa(87ksi)、
・極限引っ張り強さ,UTS:最小約535MPa(78ksi)および最大約760MPa(110ksi)、
・硬度:最大約248HV
10、
・伸び率、約20%以上、
・YS/UTS比率、約0.91以下、
・横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対する約−70℃における約200J/約150J(平均/個別)の最小衝撃エネルギー、
・標準ISO148−1に従ってテストされた横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された、50%FATT(約50%剪断面積をもつ破断出現の転移温度)および80%FATT(約80%剪断面積をもつ破断出現に対する転移温度)に関して優れた靭性、
・ASTM 208標準に従い、落錘試験(DWT)により測定された、−70℃未満の延性−脆性転移温度、
・約−60℃における優れた縦の亀裂先端開口部のずれ(CTOD)(>0.8mm)、・シミュレートされた溶接後の熱処理:約80℃/時間の加熱および冷却速度、約650℃の浸漬温度;浸漬時間:5時間、後に、最小約450MPaの降伏強さ,YS、
・HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間の試験期間を使用して、NACE 標準TM0284−2003 第21215項に従ってテスト)およびSSC(試験溶液Aおよび、約90%の特定最小降伏強さ、SMYSで応力をかけた1バールのH
2Sを使用して、NACE TM0177に従ってテスト)に対して良好な抵抗。
【実施例2】
【0108】
焼き入れおよび焼き戻し厚肉管におけるベンドの微細組織および機械的特性
実施例1の焼き入れおよび焼き戻し管を使用して、管の外径の約5倍の半径(5D)をもつベンドを製造した。
【0109】
管を、約850℃±−25℃の温度への加熱と、インラインの水焼き入れにより熱誘導曲げにかけた。次に、ベンドを移動炉内で約15分間の保持のために、約920℃の温度に再加熱し、水槽に移し、そして撹拌水中に浸漬した。ベンドの最低温度は水槽中への浸漬直前に約860℃より高く、水槽水の温度は約40℃未満に維持された。管の中央の壁付近における焼き入れしたままのベンドの微細組織が
図7に示される。
【0110】
焼き入れ操作後、焼き入れしたままのベンドを約40分間の保持時間を使用して、約730℃の温度に設定された炉内で焼き戻しした。
【0111】
【表8】
【0112】
【表9】
【0113】
前記の試験結果(表8、表9)から、焼き入れおよび焼き戻し管が70ksi等級を形成するのに適し、以下の特徴をもつことが認められた:
・降伏強さ,YS:最小約485MPa(70ksi)および最大約635MPa(92ksi)、
・極限引っ張り強さ,UTS:最小約570MPa(83ksi)および最高約760MPa(110ksi)、
・最大硬度:約248HV
10、
・伸び率、約18%以上、
・YS/UTS比率、約0.93以下、
・横方向シャルピーV−ノッチ試験片に対し約−70℃において、約200J/約150J(平均/個別)の最小衝撃エネルギー、
・横方向シャルピーV−ノッチ試験片において測定された50%FATT(約50%の剪断面積をもつ破断出現の転移温度)および80%FATT(約80%の剪断面積をもつ破断出現に対する転移温度)に関する優れた靭性、
・約−45℃における優れた縦方向の亀裂先端開口部のずれ(CTOD)(>1.1mm)、
・HIC(NACE 溶液Aおよび約96時間のテスト期間を使用して、NACE 標準TM0284−2003 第21215項に従ってテスト)およびSSC(試験溶液Aおよび、約90%の特定最小降伏強さ、SMYSで応力をかけた1バールのH
2Sを使用して、NACE TM0177に従ってテスト)に対して良好な抵抗。
【0114】
焼き入れおよび焼き戻し管の比較例
本比較例において、0.4%の低炭素当量を含む典型的なライン管鋼(表10)でできた、約219.1mmの外径と約44mmの肉厚をもつ焼き入れおよび焼き戻し管を使用して、以前に説明された方法の態様を使用して、熱誘導ベンドを製造し、オフラインで焼き入れ、そして焼き戻しをした。
【0116】
製造された継ぎ目なし管は、移動ビーム炉により、前述のように約600秒の浸漬時間を使用して、約920℃でオーステナイト化した。管を更に高圧水ノズルによりスケール除去し、そして撹拌水を含むタンクと内部水ノズルを使用して外部、内部から水で焼き入れした。焼き入れした管を約660〜670℃における焼き戻し処理のために他の移動ビーム炉に早急に移した。すべての焼き入れおよび焼き戻し管を熱により歪取り処理を実施した。
【0117】
Q&T管を更に、約850℃±−25℃の温度への加熱により熱誘導曲げにかけ、インラインで水により焼き入れした。次に、ベンドを移動炉内で約30分の保持時間にわたり、約920℃で再加熱し、水槽に移し、そして撹拌水中に浸漬した。ベンドの最低温度は水槽中への浸漬直前に約860℃より高く、水槽水の温度は約40℃未満に維持された。焼き入れしたままのベンドの中央の壁付近の微細組織が
図8に示される。
【0118】
焼き入れしたままの管内の主要微細組織は、
図7の高Cr−高Mo鋼の組織と著しく異なる、粒状ベイナイト(ベイナイト状のずれた−フェライトと、高Cマルテンサイトと保持オーステナイトの島の混合物、MA構成物)であった。
【0119】
焼き入れしたままのベンドを更に、約30分間の保持時間を使用して、約670℃に設定された炉内で焼き戻しした。
【0120】
Q&Tベンドの微細組織と非金属包含物の特徴を示す主要パラメーターが表11に示される。
【0124】
以上から、焼き入れおよび焼き戻しベンドをもつ管は、それらが十分な焼き入れ性を形成しない鋼で製造されているので、主要な粒状ベイナイトの微細組織を示すことを認めることができる。更に、そのパケットサイズは実施例2のものより大きい。
【0125】
更に、これらの焼き入れおよび焼き戻しベンドは450MPa、すなわち等級X65(表12)の最小降伏強さを達成することができるが、それらは、それらの異なる微細組織により、実施例2に比較して、より高い転移温度を伴う最悪の靭性と、SSCに対するより低い抵抗を有する。
【0126】
以上の説明は、本教示の基礎的な新規の特徴物を示し、説明しそして指摘したが、示された装置の詳細の形状の、様々な省略、置き換えおよび変更並びにそれらの使用は、本教示の範囲から逸脱せずに、当業者により実施されることができることは理解されると考えられる。従って、本教示の範囲は、以上の考察に限定されるべきではなく、付記の請求の範囲により規定されるべきである。