特許第6050004号(P6050004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050004
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】アーク溶接モニタ装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20161212BHJP
   B23K 9/12 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B23K9/095 515Z
   B23K9/12 331T
   B23K9/095 505Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-24211(P2012-24211)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-158819(P2013-158819A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 周吾
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−026640(JP,A)
【文献】 特開2011−045913(JP,A)
【文献】 特開2011−194497(JP,A)
【文献】 特許第3852635(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0185088(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0041834(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/095
B23K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の教示ステップからなるとともに、アーク溶接を行う教示ステップでは溶接条件及びマニピュレータの姿勢データが教示されている作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶部と、前記作業プログラムに従って前記マニピュレータを制御する制御部を備えたアーク溶接ロボット制御装置のアーク溶接モニタ装置であって、
前記アーク溶接中に取得した溶接電流及び溶接電圧のうち少なくとも一方を時系列データとして記憶する時系列データ記憶部と、
前記時系列データと前記作業プログラムを関連付けする関連付け部と、
前記時系列データを表示するとともに、前記関連付けされた作業プログラムの教示ステップを第1マーカーで、前記時系列データ上に表示する表示部を備え、
前記制御部が前記作業プログラムによる前記マニピュレータの移動をチェックするためのチェックモードが設定可能であり、
前記制御部のチェックモードにおいて、前記作業プログラムの教示ステップを指定する、または前記教示ステップ間における任意の時点を指定する手動操作部を備え、
前記手動操作部により指定された教示ステップまたは任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記マニピュレータの前記時系列データ上での現在位置を示す第2マーカーを表示することを特徴とするアーク溶接モニタ装置。
【請求項2】
前記手動操作部は、前記作業プログラムの教示ステップの編集が可能な編集操作部を含むことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接モニタ装置。
【請求項3】
前記チェックモードにおいて、前記手動操作部により指定された教示ステップまで、または前記教示ステップ間における任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記マニピュレータの作動と前記時系列データを同期させて表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアーク溶接モニタ装置。
【請求項4】
前記チェックモードにおいて、前記手動操作部により指定された教示ステップまで、または前記教示ステップ間における任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、当該チェックの対象となっている作業プログラムの内容を前記マニピュレータの作動と同期させて表示することを特徴とする請求項3に記載のアーク溶接モニタ装置。
【請求項5】
前記手動操作部により指定された教示ステップまたは任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記第2マーカーを前記表示部の表示画面上で固定して表示し、前記時系列データを前記マニピュレータの作動と同期させて移動して表示することを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接モニタ装置。
【請求項6】
前記手動操作部は、前記第2マーカーを前記表示部に表示された前記時系列データの時系列方向に移動操作するマーカー移動操作部を含み、
前記制御部は、前記マーカー移動操作部の移動操作に基づく当該第2マーカーの移動に連動するように、前記マニピュレータの位置及び姿勢を前記作業プログラムに基づいて変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載のアーク溶接モニタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアーク溶接モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アーク溶接ロボット制御装置のアーク溶接モニタ装置は特許文献1が公知である。このアーク溶接モニタ装置では、溶接電流、溶接電圧を検出するとともに各種センサによって各種データを取得するとともに、溶接ロボットの動作軌跡を保存するようにしている。さらに、特許文献1のアーク溶接モニタ装置は、前記溶接電流、溶接電圧、及び前記各種データと溶接ロボット動作軌跡とを同期させて記録し、ディスプレイ上に表示するようにしている。そして、該アーク溶接モニタ装置では、溶接異常判定も行うことができ、異常があった部分は前記取得したデータおよび溶接ロボット動作軌跡の表示色を変えるようにしている。
【0003】
ところで、アーク溶接ロボットによるアーク溶接では、アーク切れや溶着などの溶接異常、溶け込み不足や溶け落ち、溶接ビードの形成不良などの施工不良が発生した場合、その原因として、アーク溶接ロボットの動作軌跡およびその軌跡上の溶接姿勢が影響していることが多い。この場合、前記現象が発生した部分において、溶接電流、溶接電圧および各種センサによって取得されたデータと、溶接ロボットの溶接位置およびその溶接姿勢がどうなっていたかを確認することが原因究明に有効となる。
【0004】
上記アーク溶接モニタ装置では、アーク溶接中の溶接電流、溶接電圧および各種センサにより得られたデータとロボットの動作軌跡とを同期させて記録できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3852635号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、溶接電流または溶接電圧の少なくともいずれかの時系列データが、作業プログラムの教示ステップとどのように関連しているかを時系列で確認することができない問題がある。
【0007】
本発明の目的は、溶接電流または溶接電圧の少なくともいずれかの時系列データと、作業プログラムの教示ステップとを時系列で確認することができるアーク溶接モニタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1の発明は、複数の教示ステップからなるとともに、アーク溶接を行う教示ステップでは溶接条件及びマニピュレータの姿勢データが教示されている作業プログラムを記憶する作業プログラム記憶部と、前記作業プログラムに従って前記マニピュレータを制御する制御部を備えたアーク溶接ロボット制御装置のアーク溶接モニタ装置であって、前記アーク溶接中に取得した溶接電流及び溶接電圧のうち少なくとも一方を時系列データとして記憶する時系列データ記憶部と、前記時系列データと前記作業プログラムを関連付けする関連付け部と、前記時系列データを表示するとともに、前記関連付けされた作業プログラムの教示ステップを第1マーカーで、前記時系列データ上に表示する表示部を備える
【0009】
そして、前記制御部が前記作業プログラムによる前記マニピュレータの移動をチェックするためのチェックモードが設定可能であり、前記制御部のチェックモードにおいて、前記作業プログラムの教示ステップを指定する、または前記教示ステップ間における任意の時点を指定する手動操作部を備え、前記手動操作部により指定された教示ステップまたは任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記マニピュレータの前記時系列データ上での現在位置を示す第2マーカーを表示することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、前記手動操作部は、前記作業プログラムの教示ステップの編集が可能な編集操作部を含むことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2において、前記チェックモードにおいて、前記手動操作部により指定された教示ステップまで、または前記教示ステップ間における任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記マニピュレータの作動と前記時系列データを同期させて表示することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、前記チェックモードにおいて、前記手動操作部により指定された教示ステップまで、または前記教示ステップ間における任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、当該チェックの対象となっている作業プログラムの内容を前記マニピュレータの作動と同期させて表示することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1において、前記手動操作部により指定された教示ステップまたは任意の時点まで、前記制御部の制御により前記マニピュレータを作動させた際、前記表示部は、前記第2マーカーを前記表示部の表示画面上で固定して表示し、前記時系列データを前記マニピュレータの作動と同期させて移動して表示することを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記手動操作部は、前記第2マーカーを前記表示部に表示された前記時系列データの時系列方向に移動操作するマーカー移動操作部を含み、前記制御部は、前記マーカー移動操作部の移動操作に基づく当該第2マーカーの移動に連動するように、前記マニピュレータの位置及び姿勢を前記作業プログラムに基づいて変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、溶接電流または溶接電圧の少なくともいずれか一方の時系列データと、作業プログラムの教示ステップとを時系列で対応付けて確認することができる。
【0016】
また、請求項1の発明によれば、第2マーカーにより時系列データ上でのマニピュレータの現在位置が分かる。具体的には、チェックモードの際、溶接異常が発生した時系列データがある場合は、指定部により、溶接異常が発生した時系列データ範囲である作業プログラムの教示ステップを指定すると、または溶接異常が発生した時系列データ範囲である教示ステップ間における任意の時点を指定すると、マニピュレータは、当該指定されたところに移動する。溶接異常が発生した時系列データ範囲における溶接ロボットの動作軌跡をディスプレイ上ではなく、現物のワーク上の溶接箇所に対して確認することができる。このようにすることによって、現物のワーク上の溶接異常の溶接箇所を把握できるとともに、マニピュレータの動作軌跡上の溶接姿勢を確認することができる。もちろん、溶接異常がない箇所においても、第2マーカーで時系列データでのマニピュレータの現在位置が分かるので、現物のワーク上の溶接箇所に対してマニピュレータの動作軌跡上の溶接姿勢を確認することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、溶接異常が発生した時系列データがある場合は、編集操作部を使用して溶接異常が発生した時系列データが属する教示ステップを編集することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、チェックモードにおいて、制御部の制御によりマニピュレータを作動させた際、表示部がマニピュレータの作動に同期させて時系列データを表示するようにしたので、作業者は表示部を操作することなく、マニピュレータの現在位置を示す第2マーカーと時系列データを視認することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、チェックモードにおいて、制御部の制御によりマニピュレータを作動させた際、表示部がマニピュレータの作動に同期させて、時系列データ及び当該チェックの対象となっている作業プログラムの内容を表示するようにしたので、作業者は、マニピュレータの現在位置での作業プログラムの内容を確認するための表示操作を行うことなく、作業プログラムの教示ステップの内容を確認することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、手動操作部により指定された教示ステップまたは任意の時点まで、制御部の制御によりマニピュレータを作動させた際、表示部が第2マーカーを表示部の表示画面上で固定して表示し、時系列データをマニピュレータの作動と同期させて移動して表示することによっても、請求項2の効果を容易に実現できる。
【0021】
請求項6の発明によれば、マーカー移動操作部の移動操作に基づく当該第2マーカーの移動に連動するように、制御部がマニピュレータの位置及び姿勢を作業プログラムに基づいて変化させることができるため、第2マーカーを溶接異常があった時系列データに合わせれば、現実のマニピュレータの位置姿勢を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を具体化した一実施形態のアーク溶接モニタ装置の概略図。
図2】ロボット制御装置RCのブロック図。
図3】作業プログラムの説明図。
図4】記憶部の概略説明図。
図5】表示画面32に表示された時系列データの例を示す説明図。
図6】表示画面32に表示された時系列データ及びマニピュレータのトーチの時間的位置の表示の例を示す説明図。
図7】表示画面32に表示された時系列データ及びマニピュレータのトーチの時間的位置の表示の例を示す説明図。
図8】表示画面32に表示された溶接異常がある時系列データ及びマニピュレータのトーチの時間的位置の表示の例を示す説明図。
図9】(a)は前進後退角の説明図、(b)は狙い角の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のアーク溶接ロボット制御装置のアーク溶接モニタ装置を具体化した一実施形態を図1図9に従って説明する。
図1に示す、アーク溶接ロボット制御装置(以下、単にロボット制御装置という)RCは、作業台16上のワークWに対してアーク溶接を自動で行うように溶接作業を行う6軸(すなわち、6個の関節軸)のマニピュレータ10を制御する。作業台16は、単にワークWを設置するだけのフロアに固定された作業台としてもよいし、ワークWに対するトーチ姿勢を最適に維持するためのポジショナとしてもよい。作業台16としてポジショナを採用する場合は、ロボット制御装置RCによってポジショナの軸が駆動制御される。
【0025】
マニピュレータ10は、フロア等に固定されるベース部材12と、ベース部材12上に設けられるとともに前記複数の関節軸を介して連結された複数のアーム20を備える。
マニピュレータ10の最も先端側に位置するアーム20の先端部には、溶接トーチ(以下、単にトーチという)Tが設けられている。トーチTは、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対して溶接を施す。各アーム20は図示しない各駆動モータの駆動によってトーチTを並進、回転自在に移動できるように構成されている。前記図示しない駆動モータに直結された図示しないエンコーダから各アームの関節角度が検出される。
【0026】
ロボット制御装置RCには、可搬式操作手段としてのティーチペンダントTPが接続されている。ティーチペンダントTPの操作面には液晶ディスプレイ等からなる表示装置30及び各種キーが設けられている。ティーチペンダントTPは、マニピュレータ10の動作を作業者が教示するための装置である。表示装置30は図示しない表示制御部を備えており、図示しないROMに 記憶された教示プログラムに従って表示画面32に、各種の表示モードで種々の表示が可能である。
【0027】
前記キーには、マニピュレータ10を動作させるための操作面には複数のキー、ボタン等を備えた操作盤45が設けられている。
操作盤45は、複数のボタン群40、登録キー41、実行キー42、モード切替キー43、トーチ姿勢ファイル作成キー44、及びテンキー各種の文字入力キー(図示しない)等が設けられている。これらのキーまたはボタンの操作により、入力されたデータ、或いは、各種情報をロボット制御装置RCが備える記憶部56(図2参照)に格納可能である。また、モード切替キー43の切替操作により、ティーチングモード(教示モード)、再生モード、複数のモニターモード等の各種のモードの選択が可能である。
【0028】
図1に示すようにボタン群40は、座標系の方向(±X,±Y,±Z)及び姿勢(±RX,±RY,±RZ)に応じた複数のボタンが装備されている。ボタン群40のいずれかのボタンの押下により、そのボタンに対応した座標系の方向又は回転方向にマニピュレータ10が移動又は姿勢変化する。例えば、ロボット制御装置RCは、設定されている座標系の下でマニピュレータ10を移動させる場合は、ボタン群40のX+ボタンを押すと、当該設定されている座標系のX+方向にマニピュレータ10が移動する。又、姿勢(±RX,±RY,±RZ)に応じた複数のボタンを操作すると、操作されたボタンに対応する前記アームがその軸心の周りに回転する。
【0029】
このように、作業者はボタン群40を操作することにより、マニピュレータ10を所望の位置に移動又は姿勢を変化させて、溶接作業を行わせるための作業経路、すなわち、作業経路上の教示点並びに姿勢を教示又は教示修正する。教示された作業経路(教示点)は作業プログラムに、及びトーチ姿勢はトーチ姿勢ファイルとしてそれぞれ記述されて図4に示すように記憶部56に記憶されている。
【0030】
トーチ姿勢ファイルは、本実施形態では、トーチ姿勢、すなわち、前進後退角と、狙い角がそれぞれ数値で記述されたファイルである。狙い角、前進後退角は、姿勢データに相当する。
【0031】
前進後退角は、図9(a)に示すように、教示点A1,A2間を結ぶ接線を溶接線YSとしたとき、該溶接線YSの接線に対する垂線La(すなわち、法線)を立てた際に同垂線Laに対してトーチTの長手方向軸線を表わす直線L1、L2がなす角度である。垂線Laに対して、L1のように0°を越える場合(+)には、前進角といい、L2のように0°を下回る場合(すなわち、「−」)場合には、後退角という。ここで、トーチTの長手方向軸線は、ワイヤ送給方向に向く軸に相当する。本明細書では、この前進角、後退角を合わせて前進後退角という。
【0032】
又、図9(b)に示すように、教示点A1を溶接の開始点Psとし、教示点A2を目標点Peとしたとき、基準面PLに対して、トーチTの長手方向軸線と溶接線YSとが共に乗る平面Hのなす角を狙い角θという。なお、基準面PLは、ワークW上面にともに位置する教示点A1,A2、及び補助点(図示しない)の三点を含む平面として定義される。図9(a)、(b)において、アーク溶接の進行方向は、教示点A1から教示点A2に向かう方向である。
【0033】
図2に示すようにロボット制御装置RCは、CPU(中央処理装置)50、マニピュレータ10を制御するための制御ソフトウェアを記憶する書換可能なEEPROM52、作業メモリとなるRAM54、及び作業プログラム、トーチ姿勢ファイル、及び各種座標系の定義パラメータ等を記憶する書換可能な不揮発性メモリからなる記憶部56を備える。又、ロボット制御装置RCは、マニピュレータ10の前記駆動モータを制御するサーボドライバ58を備え、前記作業プログラムに従って図示しない前記エンコーダからの現在位置情報(すなわち、関節角度)等に基づいて、マニピュレータ10の駆動モータを駆動制御して、トーチTを教示点に移動させるとともに姿勢を変えることが可能である。
【0034】
前記CPU50は、制御部、関連付け部に相当する。前記記憶部56は作業プログラム記憶部及び時系列データ記憶部に相当する。また、ティーチペンダントTPの表示装置30は表示部に相当する。ティーチペンダントTPの操作盤45は手動操作部及び編集操作部に相当する。
【0035】
溶接電源装置60は、ロボット制御装置RCから出力される溶接電流・電圧指令に基づいて、溶接電流・溶接電圧をトーチTに付与する。また、溶接電源装置60は、アーク溶接で流れる溶接電流をサンプリング周期で検出して、その検出結果である溶接電流(なお、実溶接電流ということがある)をロボット制御装置RCに送信する。また、溶接電源装置60は、ワイヤ15とワークW間の溶接電圧(実溶接電圧ということがある)を前記サンプリング周期で検出し、その検出結果である溶接電圧をロボット制御装置RCに通信線Lを介して送信する。
【0036】
ロボット制御装置RCは、溶接電源装置60により検出された実溶接電流及び実溶接電圧を、作業プログラムの最初の教示ステップの教示データに基づいてマニピュレータ10を制御する時点から当該作業プログラムの最終教示ステップの実行が終了するまで時系列で前記記憶部56の所定の記憶領域に記憶する。
【0037】
本実施形態では、ロボット制御装置RCと、ティーチペンダントTPとによりアーク溶接モニタ装置が構成されている。
(実施形態の作用)
(1.再生モード)
次に、上記のように構成されたアーク溶接モニタ装置の作用を説明する前に、ロボット制御装置RCが再生モードでマニピュレータ10を作動する場合について説明する。
【0038】
作業者がティーチペンダントTPの操作盤45を操作してプログラム番号Nの作業プログラムを選択して、モード切替キー43で再生モードにすると、ロボット制御装置RCのCPU50は、記憶部56に記憶したプログラム番号Nの作業プログラムを再生する。CPU50は、この再生時において、当該作業プログラムの各ステップに記述された各種命令及び併記された各種条件(移動速度、溶接条件)に従って、マニピュレータ10を教示点に移動させるとともに、トーチTに加工作業を行わせる。
【0039】
以下には、作業プログラムの説明とともに、再生モードでのCPU50の処理について説明する。なお、本実施形態では、図3に示す作業プログラムが記憶部56に記憶されているものとする。なお、前記プログラム番号Nの作業プログラムは一例であり、限定されるものではない。図3に示すように該作業プログラムは、作業プログラム名(すなわち、プログラム番号)が「N」とされるとともに教示ステップ1〜8からなる。
【0040】
教示ステップ1は、原点を教示点として教示されたものであり、原点の「位置決め命令」が記述されている。CPU50はこの「位置決め命令」に基づいてトーチTを原点に向かって関節補間で後述する移動速度V1で移動させる。なお、ティーチングモードにおいて、原点位置は、原点にトーチTが位置するまでにマニピュレータ10の駆動モータに直結されたエンコーダから出力される各アームの関節角度に基づいてCPU50が算出し、作業プログラムに記述されている。以下、後述する他の教示ステップにおける教示点についても、原点位置の教示と同様に、教示点の位置は各アームの関節角度に基づいて算出されている。
【0041】
図3において、「教示ステップ1」と「位置決め命令」との間は、トーチ姿勢ファイルのファイル名が記述される領域である。原点位置では、トーチ姿勢ファイルの指定はされていない。教示ステップ1の行において、V1は原点までのトーチTの移動速度を示している。
【0042】
教示ステップ2は、教示点として溶接開始直前点の位置が記述されたものであり、その行には、「位置決め命令」及び移動速度V1が記述されている。CPU50はこの「位置決め命令」に基づいて当該教示点に対して関節補間を行って移動速度V1でトーチTを移動させる。
【0043】
教示ステップ3は、教示点として溶接開始点の位置が記述されたものであり、この教示点におけるトーチTが取るべきトーチ姿勢を規定するために、トーチ姿勢ファイル「TR01」が記述されている。また、教示ステップ3の行には、「位置決め命令」、及び移動速度V1が記述されている。CPU50はこの「位置決め命令」に基づいて当該教示点に対して関節補間でトーチTを移動速度V1で移動させるとともに、当該姿勢ファイルを読込みして、トーチTが姿勢ファイルTR01に記述されている狙い角、前進後退角となるようにマニピュレータ10の駆動モータを制御する。
【0044】
教示ステップ4は、教示ステップ3で記述された教示点を溶接開始点として、「溶接開始命令」、溶接電流(溶接電流指令)a1、溶接電圧(溶接電圧指令)b1、及びトーチTの移動速度V2が記述されている。CPU50は、この溶接電流(溶接電流指令)a1、溶接電圧(溶接電圧指令)b1を、溶接電源装置60に出力し、溶接電源装置60は当該指令に基づいて溶接電流及び溶接電圧をトーチTに出力する。
【0045】
教示ステップ5は、アーク溶接の進行方向において、教示ステップ3で教示された教示点に隣接する次の教示点の位置、この教示点におけるトーチTが取るべきトーチ姿勢を規定するためのトーチ姿勢ファイル「TR02」、「直線補間命令」、及び移動速度V2が記述されている。CPU50は、この「直線補間命令」に基づいて当該教示点に対して直線補間を行ってトーチTを移動速度V2で移動させるとともに、当該姿勢ファイルを読込みして、トーチTが姿勢ファイルTR02に記述されている狙い角、前進後退角となるようにマニピュレータ10の駆動モータを制御する。
【0046】
教示ステップ6は、アーク溶接の進行方向において、教示ステップ5で教示された教示点に隣接する次の教示点(すなわち、溶接終了点)の位置、この教示点におけるトーチTが取るべきトーチ姿勢を規定するためのトーチ姿勢ファイル「TR03」、「直線補間命令」、及び移動速度V2が記述されている。CPU50は、この「直線補間命令」に基づいて当該教示点に対して直線補間を行ってトーチTを移動速度V2で移動させるとともに、当該姿勢ファイルを読込みして、トーチTが姿勢ファイルTR03に記述されている狙い角、前進後退角となるようにマニピュレータ10の駆動モータを制御する。
【0047】
教示ステップ7は、教示ステップ6で記述された教示点を溶接終了点として、「溶接終了命令」が記述されている。CPU50は、この「溶接終了命令」に基づいて溶接電源装置60に溶接終了指令を出力し、溶接電源装置60は当該指令に基づいて溶接電流及び溶接電圧をトーチTに出力を停止する。
【0048】
教示ステップ8は、教示点としての溶接終了点に隣接する退避点である教示点が記述されたものであり、その行には、「位置決め命令」及び移動速度V1が記述されている。CPU50はこの「位置決め命令」に基づいて当該教示点に対して関節補間を行って移動速度V1でトーチTを移動させる。
【0049】
教示ステップ9は、教示点としての溶接終了点に隣接する退避点からさらに離間した待機点である教示点の位置が記述されたものであり、その行には、「位置決め命令」及び移動速度V1が記述されている。CPU50はこの「位置決め命令」に基づいて当該教示点に対して関節補間を行って移動速度V1でトーチTを移動させる。
【0050】
上記のようにして、再生モードで作業プログラムを実行している間、溶接電源装置60は、実溶接電流及び実溶接電圧を検出して、ロボット制御装置RCに通信線Lを介して送信する。ロボット制御装置RCは、溶接電源装置60により検出された実溶接電流及び実溶接電圧を、作業プログラムの最初の教示ステップの教示データに基づいてマニピュレータ10を制御する時点から当該作業プログラムの最終教示ステップの実行が終了するまで時系列で前記記憶部56の所定の記憶領域にファイル化して記憶する。すなわち、前記サンプリング周期で検出された各実溶接電流及び各実溶接電圧は、時系列的に整理されて、それぞれ実溶接電流ファイル61及び実溶接電圧ファイル62にされる。これらの時系列的な実溶接電流及び実溶接電圧は時系列データに相当する。また、実溶接電流ファイル61及び実溶接電圧ファイル62は作業プログラムのプログラム番号Nに関連付けされて記憶される。
【0051】
さらに、ロボット制御装置RCは、前記作業プログラムが再生モードで実行された際、マニピュレータ10が付設された各種センサのサンプリング周期での検出信号、例えば、ワイヤ15の送給装置(図示しない)に設けられたワイヤ送給速度を検出するセンサの検出結果等を前記実溶接電流ファイルと同様に時系列的に整理されて、それぞれ各種のセンサ検出ファイル63にされる。これらの時系列的な各センサの検出結果(データ)は時系列データに相当する。また、これらのファイルは作業プログラムのプログラム番号Nに関連付けされて記憶される。
【0052】
(2.アーク溶接モニタ装置の作用の説明)
(2.1 第1モニターモード)
次に、上記のように再生モードが実行されて記憶部56に実溶接電流ファイル61、実溶接電圧ファイル62、各種センサ検出ファイル63が記憶された状態で、ティーチペンダントTPの表示装置30によりモニタする場合について説明する。
【0053】
作業者は、ティーチペンダントTPの操作盤45のモード切替キー43を操作し上で、第1モニターモードとする。第1モニターモードは、作業プログラムを実行処理したときに得られた時系列データのみを確認したいときに使用されるモードである。この第1モニターモードの状態では、表示装置30にロボット制御装置RCの記憶部56に格納されている各種の作業プログラムのプログラム番号が表示される。
【0054】
この状態で、作業者は、操作盤45を図示しない選択キーを操作して作業プログラムのプログラム番号Nを選択操作すると、ティーチペンダントTPからロボット制御装置RCのCPU50に選択指令が送信される。CPU50は、選択指令に基づいてプログラム番号Nの作業プログラム及び当該作業プログラムが再生モードで実行されたときに記憶された当該プログラム番号Nに関連付けられた各種ファイルの内容を読み出して、ティーチペンダントTPに送信する。
【0055】
ティーチペンダントTPの表示装置30は、例えば表示画面32に図5に示すように、表示画面32には横軸を時間軸とし、縦軸を電流(すなわち実溶接電流)及び電圧(すなわち実溶接電圧)として、送信されてきたデータを線グラフで表示する。合わせて、表示装置30は、プログラム番号Nの内容である教示ステップ(図5では、説明の便宜上、教示ステップを単に「ステップ」とその「番号」で記載している。)、及び各種命令を時間軸に沿って表示する。さらに、表示装置30は、図5に示すように各ステップを示す第1マーカーM1〜M4を直線(実線)で表示する。なお、第1マーカーM1〜M4は時間軸に対して垂直線となっている。ここでは、表示装置30は、溶接区間である教示ステップ3の教示点(溶接開始点)から教示ステップ7の教示点(溶接終了点)までを表示している。なお、時系列データ(ここでは、実溶接電流と実溶接電圧)と教示ステップを示す第1マーカーM1〜M4の時間的位置合わせは、時系列データが作業プログラムの処理開始時点からサンプリング周期で検出されていることと、各教示ステップの処理がCPU50により既知の所定時間間隔で行われることにより可能である。
【0056】
このようにして、本実施形態では、第1マーカーM1〜M4により、時系列データ(ここでは、実溶接電流と実溶接電圧)と、教示ステップとの関係が明示され、時系列データにおいてどの時点でどのような命令が出されたかが明示され、さらに、各教示ステップ間において、実溶接電流及び実溶接電圧がどのように変化したかが作業者に分かる。なお、図5において、第1マーカーM1〜M4に平行の点線は、所定の時間間隔を示すためのグリッド線である。また、グリッド線に近傍のt1〜t4は、時系列データの検出開始時刻等の基準時刻からの経過時間を示している。
【0057】
(2.2.第2モニターモード)
次に、第2モニターモードの場合について説明する。この第2モニターモードは、作業プログラムを再生モードで実行処理したときに得られた時系列データと、第2モニターモードで作業プログラムにより実行処理したときのマニピュレータ10のトーチTの位置を確認するために使用される。
【0058】
作業者は、ティーチペンダントTPの操作盤45のモード切替キー43を操作し上で、第2モニターモードとする。第2モニターモードでは、アーク溶接は行われない。第2モニターモードは、チェックモードに相当する。
【0059】
第2モニターモードの状態では、表示装置30にロボット制御装置RCの記憶部56に格納されている各種の作業プログラムのプログラム番号が表示される。この状態で、作業者は、操作盤45を図示しない選択キーを操作して作業プログラムのプログラム番号Nを選択操作すると、ティーチペンダントTPからロボット制御装置RCのCPU50に選択指令が送信される。CPU50は、選択指令に基づいてプログラム番号Nの作業プログラム及び当該作業プログラムが再生モードで実行されたときに記憶された当該プログラム番号Nに関連付けられた各種ファイルの内容を読み出して、ティーチペンダントTPに送信する。
【0060】
ティーチペンダントTPの表示装置30は、第1モニターモードと同様にプログラム番号Nの内容である教示ステップ及び各種命令を時間軸に沿って表示するとともに、図6に示すように各ステップを示す第1マーカーM1等を表示する。そして、作業者がティーチペンダントTPの操作盤45を操作してモニター対象の作業プログラム(ここでは、プログラム番号Nの作業プログラム)を起動すると、ロボット制御装置RCのCPU50は、記憶部56に記憶したプログラム番号Nの作業プログラムを再生する。なお、この場合の再生は、ティーチペンダントTPの操作盤45の特定のキー操作、すなわち、正順方向に教示ステップを再生するキーの操作によって正順のステップ送り指令をその都度CPU50に対して送信し、その正順のステップ送り指令をCPU50が受信する毎に教示ステップ1〜9が正順(昇順)に順次実行されることにより行われる。
【0061】
また、逆順(降順)に実行されるように操作盤45の特定のキー操作、すなわち逆順方向に教示ステップを再生するキーの操作によって逆順のステップ送り指令をCPU50に送信する。この場合、逆順のステップ送り指令がその都度CPU50に対して送信されると、その指令をCPU50が受信する毎に教示ステップ9〜1が逆順(降順)に順次実行することによりマニピュレータ10が作動する。
【0062】
CPU50は、各教示当該作業プログラムの各教示ステップに記述されたトーチTの移動、及び姿勢に関する各種命令及び併記された各種条件(移動速度)に従ってマニピュレータ10のトーチTを各教示点に移動するとともに姿勢を、当該教示ステップに関した姿勢ファイル記述された姿勢データに基づいて変化させる。また、CPU50は、作業プログラムに記述された教示ステップの教示点を通過してからの経過時間に基づいて、マニピュレータ10のトーチTの時間軸上の位置を特定し、CPU50は、ティーチペンダントTPの表示装置30に当該教示ステップの教示点からの時間軸上の位置を送信する。ティーチペンダントTPの表示装置30は、その時間軸上の位置を、図6に示すように表示画面32上に第2マーカーMaにより表示する。本実施形態では、第2マーカーMaは、第1マーカーM1と同様に時間軸に垂直な実線である。
【0063】
図6では、教示ステップ5と教示ステップ6の間に第2マーカーMaが示されており、教示ステップ5が実行されて、トーチTが教示ステップ5(教示点)と教示ステップ6(教示点)間に位置することが示されている。
【0064】
なお、図6で示す表示画面32では、教示ステップ3〜教示ステップ7までが主に図示されているが、表示装置30は、例えば、教示ステップ1〜ステップ3、或いは教示ステップ7〜9において、トーチTの時間軸上の位置を示す場合は、時系列データを左右に動的に移動させて、当該教示ステップ1〜ステップ3における時系列データを表示する。すなわち、CPU50の制御によりマニピュレータ10を作動させた際、表示装置30は、マニピュレータ10の作動と時系列データを同期させて表示する。また、本実施形態では、この場合、第2マーカーMaは、表示画面32に表示している時間軸において、中央に位置するように表示する。すなわち、第2マーカーMaは移動せず、すなわち表示画面32上で固定されて表示され、時系列データのみが移動するように表示装置30が表示する。
【0065】
また、第2モニターモードにおいて、任意の教示ステップの再生中に停止させたい場合、作業者は、ティーチペンダントTPの操作盤45の停止キー47を操作する。この結果、CPU50は停止指令を受けて、マニピュレータ10の動作を停止させる。このとき、図7に示すように第2マーカーMaで示す位置が、マニピュレータ10のトーチTの時間軸上の停止位置となる。
【0066】
図8は、時系列データに溶接異常が見られた場合の表示装置30の表示例である。同図において、前述したように、トーチTが、溶接異常の時系列データに一致したときに、作業者がティーチペンダントTPの操作盤45の停止キー47を操作すると、CPU50は、停止キー47により停止指令を受けて、マニピュレータ10の動作を停止させる。
【0067】
このように表示されたときに、作業者は、マニピュレータ10のトーチTの実際の位置及び姿勢を確認する。そして、教示点、トーチTの位置または姿勢を修正したい場合は、作業者は、操作盤45のボタン群40の操作によりジョグ送りを行って、トーチTの教示点の修正、即ち、教示点の追加、或いは教示点の削除を行うか、或いは前記操作盤45を操作して、CPU50に記憶部56が記憶している当該教示ステップに関して作成されている当該姿勢ファイルを読み出して、操作盤45の図示しない数字キーを使用して姿勢データ(狙い角、前進後退角)を修正した後、記憶部56に保存する。また、追加した教示点がある場合は、その教示点に関する教示ステップが作業プログラムに追加されて、当該追加された教示ステップにおける、姿勢ファイル、移動速度、或いは溶接条件を作成する。このようにして、手動操作部であるティーチペンダントTPの操作盤45は作業プログラムの教示ステップの編集(修正、削除を含む)を行う。
【0068】
また、逆順(降順)に実行されるように操作盤45の特定のキー操作がされた場合には、すなわち、逆順に教示ステップを再生する場合は、表示装置30の表示画面32に表示される時系列データもそれに合わせて、時系列の時間的順序とは逆方向に再生する。
【0069】
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
(1) 本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、アーク溶接中に取得した溶接電流及び溶接電圧の両方を時系列データとして記憶する記憶部56(時系列データ記憶部)と、時系列データと作業プログラムを関連付けするCPU50(関連付け部)と、時系列データを表示するとともに、CPU50(関連付け部)により時系列データと関連付けされた作業プログラムの教示ステップを第1マーカーM1〜M4で、時系列データ上に表示する表示装置30(表示部)を備える。この結果、本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、溶接電流及び溶接電圧の両方の時系列データと、作業プログラムの教示ステップとを時系列で対応付けて確認することができる。
【0070】
(2) 本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、CPU50(制御部)が作業プログラムによるマニピュレータ10の移動をチェックするための第2モニターモード(チェックモード)が設定可能である。また、CPU50(制御部)の第2モニターモードにおいて、作業プログラムの教示ステップを指定する操作盤45(手動操作部)を備える。そして、操作盤45により指定された教示ステップまで、CPU50の制御によりマニピュレータ10を作動させた際、表示装置30は、マニピュレータ10の時系列データ上での現在位置を示す第2マーカーMaを表示する。
【0071】
この結果、本実施形態のアーク溶接モニタ装置によれば、第2マーカーMaにより時系列データ(実溶接電流、実溶接電圧)上でのマニピュレータ10の現在位置が分かる。このため、第2モニターモードの際、溶接異常が発生した時系列データがある場合は、指定部により、溶接異常が発生した時系列データ範囲である作業プログラムの教示ステップを指定すると、マニピュレータ10は、当該指定されたところに移動するため、溶接異常が発生した時系列データ範囲における溶接ロボットの動作軌跡をディスプレイ上ではなく、現物のワーク上の溶接箇所に対して確認ができる。このため、現物のワーク上の溶接異常の溶接箇所を把握できるとともに、マニピュレータの動作軌跡上の溶接姿勢を確認できる。すなわち、マニピュレータの動作軌跡上のどの時点で溶接異常の原因となるのかの把握ができやすい効果がある。
【0072】
もちろん、溶接異常がない箇所においても、第2マーカーで時系列データでのマニピュレータの現在位置が分かるため、現物のワーク上の溶接箇所に対してマニピュレータの動作軌跡上の溶接姿勢を確認できる。
【0073】
(3) 本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、操作盤45(手動操作部)は、作業プログラムの教示ステップの編集が可能な編集操作部として機能する。
この結果、本実施形態によれば、溶接異常が発生した時系列データがある場合は、操作盤45を使用して溶接異常が発生した時系列データが属する教示ステップを編集することができる。
【0074】
この結果、溶接位置、溶接姿勢の修正ができるため、今後予想される溶接異常によるダウンタイムを早期に回避することが可能となる。
(4) 本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、操作盤45(手動操作部)により指定された教示ステップまで、CPU50(制御部)の制御によりマニピュレータ10を作動させた際、表示装置30(表示部)は、第2マーカーMaを表示画面32上で固定して表示し、時系列データをマニピュレータ10の作動と同期させて移動して表示する。この結果、本実施形態によれば、操作盤45により指定された教示ステップまで、CPU50の制御によりマニピュレータ10を作動させた際、表示装置30が第2マーカーMaを表示画面32上で固定して表示し、時系列データをマニピュレータ10の作動と同期させて移動して表示することによっても、上記(2)の効果を容易に実現できる。
【0075】
(5) 本実施形態のアーク溶接モニタ装置は、時系列データを、時系列の時間的順序とは逆方向に再生することができる。この結果、本実施形態によれば、時系列データを、時系列の時間的順序とは逆方向に再生することによっても、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0076】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態ではティーチペンダントTPの表示装置30を表示部とし、操作盤45を手動操作部としたが、ロボット制御装置RCに手動操作部としての操作盤及び表示部としての表示装置を設けてもよい。
【0077】
・ 前記実施形態では、トーチ姿勢ファイルを記憶部56に記憶するようにしたが、作業プログラムに狙い角、前進後退角を記述するようにしてもよい。
・ 前記実施形態では、作業プログラムの教示ステップの内容を、図5乃至図8に示すように、時間軸に沿って表示するようにしたが、教示ステップ及びその教示ステップの内容の表示方法は、この表示方法に限定されるものではなく、作業プログラムの全体構成を、例えば、図3に示すように「行」が上下に並ぶように表示したり、グラフ表示された表示領域の左右、または上下のいずれかに該作業プログラムの内容を表示したりしてもよく、限定されるものではない。この場合、表示装置30は、現在実行している教示ステップが作業者に分かるように、他の教示ステップとは色を変えて表示したり、点滅表示したりするようにして、実行している教示ステップと、第2マーカーMaが指し示す時系列データとが同期するように表示する。
【0078】
・ 前記実施形態では、アーク溶接中に取得した溶接電流及び溶接電圧の両方の時系列データを記憶する記憶部56(時系列データ記憶部)に記憶するようにしたが、溶接電流及び溶接電圧の両方の時系列データのうち、いずれか一方を記憶部56(時系列データ記憶部)に記憶するようにしてもよい。
【0079】
・ 前記実施形態では、表示画面32に溶接電流及び溶接電圧の両方の時系列データを表示するようにしたが、各種センサのセンサ検出ファイル63に記憶した時系列データを溶接電流及び溶接電圧の両方の時系列データと組み合わせて表示画面32に表示するようにしてもよい。
【0080】
・ 前記実施形態では、表示装置30は、第2マーカーMaは移動せず、時系列データのみが移動するように表示したが、逆に時系列データを固定して、第2マーカーMaを、作業プログラムの教示ステップの再生によるトーチTの移動に応じて移動させるようにしてもよい。
【0081】
・ 前記実施形態では、第2モニターモード(チェックモード)の際、教示ステップを順次指定することにより、作業プログラムの最初の教示ステップから、或いは作業プログラムの最終教示ステップからマニピュレータ10のチェックを行うようにした。これに代えて、ティーチペンダントTPを第2モニターモードに設定した際、チェックしたい教示ステップを操作盤45に設けられた図示しない入力キーで直接指定して、その入力した教示ステップから正順方向に、或いは、逆順方向に順次再生するようにしてもよい。
【0082】
この場合、CPU50は、当該指定された教示ステップにジャンプしたところに待機位置から直接移動しかつ、当該指定された教示ステップにおける姿勢をとるようにこの教示ステップに行き着くために必要な教示ステップに関連する教示点、姿勢データを読み込みして演算し、指定された時点でのトーチの位置、及び姿勢となるようにCPU50はマニピュレータ10を制御するようにする。なお、この場合にも前記実施形態度と同様に表示装置30はマニピュレータ10の作動と時系列データを同期させて表示する。この変形態様においても、前記実施形態と同様に、教示ステップの内容を前記マニピュレータの作動を同期させて表示する。
【0083】
このようにしても、第2モニターモード(チェックモード)において、作業者は表示装置30(表示部)を操作することなく、マニピュレータ10の現在位置を示す第2マーカーMaと時系列データを視認することができる。また、この変形態様によれば、第2モニターモード(チェックモード)において、作業者は、マニピュレータ10のトーチTの現在位置での作業プログラムの内容を確認するための表示操作を行うことなく、作業プログラムの教示ステップの内容を確認することができる。
【0084】
・ また、教示ステップを上述のように指定するとともにその教示ステップと正順方向または逆順方向に隣接する他の教示ステップ間において、当該指定した教示ステップの経過時間0から離間した任意の時点を数値入力等により指定してもよい。例えば、図8に示す、溶接異常があった時点を指定してもよい。なお、この任意の時点(例えば、前記溶接異常が生じた時点)の数値入力は、表示画面32に表示された時系列データから作業者がその時点を読み取って入力が行われる。この任意の時点の指定を操作盤45から行うと、CPU50は、当該指定された教示ステップから指定された時点にジャンプしたところに待機位置から、直接移動し、かつその任意の時点における姿勢をとるようにこの教示ステップに行き着くために必要な教示ステップに関連する教示点、姿勢データを読みとりして演算し、指定された時点でのトーチの位置、及び姿勢となるようにCPU50はマニピュレータ10を制御するようにする。なお、この場合にも前記実施形態度と同様に表示装置30はマニピュレータ10の作動と時系列データを同期させて表示する。
【0085】
また、この場合、操作盤45(手動操作部)により指定された任意の時点まで、CPU50(制御部)の制御によりマニピュレータ10を作動させた際、表示装置30は、第2マーカーMaを表示画面32上で固定して表示し、時系列データをマニピュレータ10の作動と同期させて移動して表示するようにするものとする。
【0086】
この変形態様によれば、上記変形態様と同様に、第2モニターモード(チェックモード)において、作業者は表示装置30(表示部)を操作することなく、マニピュレータ10の現在位置を示す第2マーカーMaと時系列データを視認することができる。また、この変形態様においても、第2モニターモード(チェックモード)において、作業者は、マニピュレータ10のトーチTの現在位置での作業プログラムの内容を確認するための表示操作を行うことなく、作業プログラムの教示ステップの内容を確認することができる。
【0087】
・ 前記実施形態または上記変形態様では、第2モニターモード(チェックモード)において、作業プログラムの教示ステップまたは任意の時点の指定で、マニピュレータ10を作動するように、これに同期するように時系列データと第2マーカーMaとを相対移動するようにした。
【0088】
これに代えて、第2マーカーMaを操作盤45からの特定キーの入力より、教示ステップの正順方向または逆順方向に時間軸上で時系列的に移動させるようにしてもよい。この場合、第2マーカーMaの時間軸上での操作前を基準にした移動量に基づき、当該第2マーカーの移動後の時間的位置を近位の教示点からの時間経過に換算することにより、どの教示ステップ上に第2マーカーMaが位置することが分かる。このことは、前述した任意の時点を指定することと同義である。このため、CPU50は、第2マーカーMaの時間的な移動量を算出することにより、当該第2マーカーMaが位置する教示ステップに基づいてマニピュレータ10を制御することにより、第2マーカーMaの移動に連動するように、マニピュレータ10の位置及び姿勢を作業プログラムに基づいて変化させる。この場合、操作盤45はマーカー移動操作部に相当する。
【0089】
この結果、本変形態様によれば、操作盤45(マーカー移動操作部)の移動操作に基づく第2マーカーの移動に連動するように、CPU50(制御部)がマニピュレータ10の位置及び姿勢を作業プログラムに基づいて変化させることができる。このため、当該第2マーカーを溶接異常があった時系列データに合わせることが容易にできるため、現実のマニピュレータ10のトーチTの位置姿勢を容易に確認できる。
【符号の説明】
【0090】
M1〜M4…第1マーカー、Ma…第2マーカー、
RC…アーク溶接ロボット制御装置、10…マニピュレータ、
30…表示装置(表示部)、32…表示画面、
45…操作盤(手動操作部、編集操作部、マーカー移動操作部)、
50…CPU(制御部、関連付け部)、56…記憶部(時系列データ記憶部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9