(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の壁部は、前記第二延出部から更に前記第一延出部逆側へ、前記第一の壁部の根本部分を被覆して延出する第三延出部を備えることを特徴とする請求項3記載の取付部材。
前記第二延出部は、前記保持空間内部から、押圧力を前記第一の壁部を介して受ける部分が、前記第二の壁部の他の部分よりも厚肉に形成されていることを特徴とする請求項3乃至5いずれか記載の取付部材。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグモジュール装備シートとして、シートバックフレームのサイドフレームにエアバッグモジュールを取り付け、トリムカバーの各端末と二枚の力布の片端末を共縫いしてトリムカバーの破断部を形成し、破断部からトリムカバーの内側に引き込んだ二枚の力布でエアバッグモジュールを包み込んで、このエアバッグモジュールを含むシートバック全体をトリムカバーで被包するものが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、エアバッグモジュールを内部に収容するモジュールカバーに、上下方向に伸びる棒状の掛け止めピンが設けられ、トリムカバーの破断部から連続する力布の破断部逆側端部には引っ掛けフックが連結されている。力布の破断部逆側端部は、引っ掛けフックをモジュールカバーの掛け止めピンに掛け止めることにより、モジュールカバーに連結固定されている。
特許文献1の発明によれば、力布をバックパッドの開口縁から空洞部の内側に夫々引き込み、空洞の内側でトリムコードの引掛けフックをモジュールカバーの掛止めピンに掛け止めるだけでよいため、力布をコンパクトにかつ簡単に組み付けられる。
【0004】
このように、力布の端部に連結したフックをエアバッグモジュール側に係止する技術が知られているが、特許文献1のような引っ掛けフックでは、エアバッグモジュール側に係止したフックが、エアバッグの展開時に掛かる力により回転する虞があった。
そこで、本発明者らは、特願2011−260623号で、力布をエアバッグモジュール側に取付ける取付部材であって、エアバッグ展開時の回転が抑制されたものを提案した。
この取付部材は、取付部材自体をエアバッグモジュール側に取付ける連結部と、エアバッグモジュールの展開方法を案内する力布の端部を内部に保持する保持空間とを備えており、保持空間と連結部との位置関係が調整されることにより、エアバッグ展開時の取付部材の回転が抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特願2011−260623号で提案された取付部材では、保持空間の内壁で力布の端部を保持する構造となっていることから、力布の端部の支持剛性を更に高めることが望まれていた。
また、特願2011−260623号で提案された取付部材では、保持空間内に力布の端部を保持するため、力布の引張力が掛かったときに、この引張力が伝達された力布の端部側が、保持空間の壁部を押圧し、保持空間の壁部が変形する恐れがあった。
更に、エアバッグモジュール周りのコンパクト化の要請のため、取付部材の更なるコンパクト化も望まれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、取付部の保持空間内における、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材の端部側の支持剛性が向上された取付部構造,取付部材及びエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材に引張力が掛かったときに、この引張力が伝達された案内部材の端部側からの押圧力により、取付部の保持空間の壁部が変形することが抑制された取付部構造,取付部材及びエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材を被取付部に取付ける取付部分をコンパクトにすることが可能な取付部構造,取付部材及びエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、請求項1の取付部構造によれば、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材の端部側を被取付部に取付ける取付部の構造であって、前記取付部は、前記案内部材の端部側を着脱可能に内部に保持する保持空間を備え、
前記保持空間は、平面と、該平面の一端に設けられた第一の湾曲面と、前記平面の他端に設けられた第二の湾曲面と、前記第一の湾曲面から連続して延長し、前記平面と略平行で、前記平面よりも短く形成された第一の壁部の内壁面と、前記第一の壁部の前記第一の湾曲部逆側の先端に隙間をもって対向しながら、前記第二の湾曲面から連続して延長する第二の壁部の内壁面と、に囲まれており、前記第一の壁部と前記第二の壁部との間は、前記
保持空間から前記取付部の外側面まで伸び
て前記保持空間から引き出される前記案内部材の通路となるスリット
を構成しており、前記
第二の壁部
の内壁面のうち、前記第一の壁部の前記先端に対向する部分は、
前記第一の壁部に対して、
前記平面から遠ざかるに従って前記第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜していること、により解決される。
【0009】
このように、
保持空間から前記取付部の外側面まで伸びて保持空間から引き出される案内部材の通路となるスリットを構成する、第一の壁部と第二の壁部との間において、第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分は、
第一の壁部に対して、
平面から遠ざかるに従って第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜しているので、保持空間内に保持される案内部材の端部側に、
第二の壁部
の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分が覆い被さるように位置する。従って、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
【0010】
このとき、請求項2のように、請求項1記載の取付部構造を備えた取付部材であって、前記被取付部は、前記エアバッグモジュールを装備するシートのサイドフレームであり、前記取付部材は、前記サイドフレームとは別体からなり、前記取付部と、前記サイドフレームに係止される溝とを備え
、前記第二の壁部は、前記第一の壁部の前記先端に対向しながら、前記第一の壁部に対して傾斜して前記保持空間の外側へ延出する第一延出部を備えると好適である。
【0011】
このように、第二の壁部は、第一の壁部の先端に対向しながら、第一の壁部に対して傾斜して保持空間の外側へ延出する第一延出部を備えるため、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
また、エアバッグモジュール装備シートのサイドフレームに案内部材の端部側を取付けたときに、案内部材の端部側がサイドフレーム側から外れることを抑制できる。
【0012】
このとき、請求項3のように、前記第二の壁部は、前記第一延出部から更に前記保持空間の外側へ、前記第一の壁部の外壁面に沿って延出する第二延出部を備え、該第二延出部の前記第一の壁部側の面は、前記第一延出部に対して角度を持っていると好適である。
このように、第二の壁部は、第一延出部から更に保持空間の外側へ、第一の壁部の外壁面に沿って延出する第二延出部を備えているため、第一の壁部の外側面と第二延出部との間に、案内部材の通路となるスリットを形成できる。また、第二延出部が第一の壁部の外壁面に沿って延出するため、スリットをコンパクトに形成することができる。
【0013】
このとき、請求項4のように、前記第二の壁部は、前記第二延出部から更に前記第一延出部逆側へ、前記第一の壁部の根本部分を被覆して延出する第三延出部を備えると好適である。
このように構成しているため、第一延出部,第二延出部,第三延出部に亘って、スリットを形成することができる。また、第一延出部,第二延出部,第三延出部に亘って、第一の壁部を被覆するので、第一の壁部が、保持空間内からの圧力によって、外側に倒れて変形し、保持空間が広がることを抑制できる。また、第三延出部により、案内部材の撓みを抑制できる。
【0014】
このとき、請求項5のように、前記第二延出部及び第三延出部は、前記第一の壁部の外壁との間に一定の隙間を備えていると好適である。
このように構成しているため、スリットの幅を一定に形成して、スリットをコンパクトに形成することができる。
【0015】
このとき、請求項6のように、前記第二延出部は、前記保持空間内部から、押圧力を前記第一の壁部を介して受ける部分が、前記第二の壁部の他の部分よりも厚肉に形成されていると好適である。
案内部材に引張力が掛かったときに、保持空間に保持された案内部材の端部側から最も大きい押圧力を受ける部分が、第一の壁部である。第二延出部のうち、この押圧力を、第一の壁部を介して受ける部分が、他の部分よりも厚肉に形成されているため、第一の壁部が押圧力により外側に倒れて変形し、保持空間が広がることを効率的に抑制できる。
【0016】
前記課題は、請求項7のエアバッグモジュール装備シートによれば、エアバッグを格納するエアバッグモジュールを装備したシートであって、前記エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材と、該案内部材の端部側を被取付部に取付ける取付部と、該取付部により前記案内部材の端部側が取付けられる前記被取付部と、を有し、前記取付部は、前記案内部材の端部側を着脱可能に内部に保持する保持空間を備え、
前記保持空間は、平面と、該平面の一端に設けられた第一の湾曲面と、前記平面の他端に設けられた第二の湾曲面と、前記第一の湾曲面から連続して延長し、前記平面と略平行で、前記平面よりも短く形成された第一の壁部の内壁面と、前記第一の壁部の前記第一の湾曲部逆側の先端に隙間をもって対向しながら、前記第二の湾曲面から連続して延長する第二の壁部の内壁面と、に囲まれており、前記第一の壁部と前記第二の壁部との間は、前記
保持空間から前記取付部の外側面まで伸び
て前記保持空間から引き出される前記案内部材の通路となるスリット
を構成しており、前記
第二の壁部
の内壁面のうち、前記第一の壁部の前記先端に対向する部分は、
前記第一の壁部に対して、
前記平面から遠ざかるに従って前記第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜していること、により解決される。
【0017】
このように、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分は、
第一の壁部に対して、
平面から遠ざかるに従って第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜しているので、保持空間内に保持される案内部材の端部側に、
第二の壁部
の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分が覆い被さるように位置する。従って、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分は、
第一の壁部に対して、
平面から遠ざかるに従って第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜しているので、保持空間内に保持される案内部材の端部側に、
第二の壁部
の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分が覆い被さるように位置する。従って、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、第二の壁部は、第一の壁部の先端に対向しながら、第一の壁部に対して傾斜して保持空間の外側へ延出する第一延出部を備えるため、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
また、このように構成しているため、エアバッグモジュール装備シートのサイドフレームに案内部材の端部側を取付けたときに、案内部材の端部側がサイドフレーム側から外れることを抑制できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、第二の壁部は、第一延出部から更に保持空間の外側へ、第一の壁部の外壁面に沿って延出する第二延出部を備えているため、第一の壁部の外側面と第二延出部との間に、案内部材の通路となるスリットを形成できる。また、第二延出部が第一の壁部の外壁面に沿って延出するため、スリットをコンパクトに形成することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、第一延出部,第二延出部,第三延出部に亘って、スリットを形成することができる。また、第一延出部,第二延出部,第三延出部に亘って、第一の壁部を被覆するので、第一の壁部が、保持空間内からの圧力によって、外側に倒れて変形し、保持空間が広がることを抑制できる。また、第三延出部により、案内部材の撓みを抑制できる。
【0022】
請求項5の発明によれば、スリットの幅を略一定に形成して、スリットをコンパクトに形成することができる。
請求項6の発明によれば、案内部材に引張力が掛かったときに、保持空間に保持された案内部材の端部側から最も大きい押圧力を受ける部分が、第一の壁部である。第二延出部のうち、この押圧力を、第一の壁部を介して受ける部分が、他の部分よりも厚肉に形成されているため、第一の壁部が押圧力により外側に倒れて変形し、保持空間が広がることを効率的に抑制できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分は、
第一の壁部に対して、
平面から遠ざかるに従って第一の壁部に近付く向きに、鈍角の角度を有して傾斜しているので、保持空間内に保持される案内部材の端部側に、
第二の壁部
の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分が覆い被さるように位置する。従って、
第二の壁部の内壁面のうち、第一の壁部の先端に対向する部分によって、スリット内に通された案内部材を介して、案内部材の端部側を保持空間内に押し戻す方向の力が掛かるため、案内部材の端部側が保持空間から外れることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材の端部側を被取付部に取付ける取付部の構造に関する。本発明は、エアバッグモジュールの展開を案内する案内部材と取付部の構造があれば、車両用シートに限らず、その他ドア等の車両用内装材にも用いることができる。
エアバッグモジュールとしては、車両前席のシートのサイドフレームやドアに設けられるサイドエアバッグのほか、ハンドルやインパネに設けられる運転席用,助手席用エアバッグ,ニーエアバッグや、車両のサイドウインドウ上部に設けられるサイドカーテンエアバッグ,後部座席のセンターコンソールに設けられる後席センターエアバッグ等、車両に設けられるあらゆるエアバッグモジュールを含む。
【0026】
本発明の案内部材は、表皮よりも伸縮性に乏しいシート状部材であって、エアバッグモジュールの格納箇所の表皮等に設けられた破断部に一端が縫合されて、エアバッグ展開時に掛かる力を破断部に伝達して、エアバッグの展開を促進する力布や、エアバッグ展開時にエアバッグ膨張に伴う力によりクッションパッド等の他の部材が破損しないよう、エアバッグモジュールと他の部材との間に配置される力布等を含む。
取付部は、被取付部に一体に形成されていてもよいし、被取付部と別体の取付部材に形成されていてもよい。
以下、本発明の一実施形態に係る取付部構造,取付部材及びエアバッグモジュール装備シートについて、
図1〜
図7を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートの外観図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートのシートフレームの斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るトリムカバーと力布を破断部で共縫いした状態を示す説明図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をシートバックフレームに連結した状態を示す説明図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る取付部材の斜視図である。
図7は、
図5のB−B断面図であって、力布を省略した断面説明図である。
【0028】
本実施の形態に係るエアバッグモジュール装備シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されている。
【0029】
エアバッグモジュール装備シートSの中には、
図2に示すようなシートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバックS1のフレームであるシートバックフレーム1と、着座部S2のフレームである着座フレーム2とから構成されている。着座フレーム2とシートバックフレーム1は、リクライニング機構3を介して連結されている。シートバックフレーム1および着座フレーム2の外側には、クッションおよびトリムカバーが設けられることで、シートバックS1および着座部S2が構成される。
【0030】
シートバックS1は、
図1乃至
図3に示すように、シートバックフレーム1と、シートバックフレーム1上に載置されるクッションパッド5と、シートバックフレーム1及びクッションパッド5を覆うトリムカバー4と、トリムカバー4の破断部40に一端が縫い付けられた力布32を主要構成要素とする。
シートバックフレーム1は、
図1,
図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレーム21と、下端部を連結する下部フレーム22とにより枠状に構成されている。
上部フレーム21には、ピラー支持部23が設けられ、ピラー支持部23には、不図示のヘッドレストフレームが設けられる。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレストS3が構成される。
【0031】
サイドフレーム10は、板金をプレス加工して成形され、前端の辺が湾曲して前端の下側部分が前方に張り出した略D字状の略板体からなる。
図3に示すように、ほぼ平板状の側板11と、この側板11の前端部を内側にU字状に折り返してなる前縁部12と、後端部をL字型に内側に屈曲させた後縁部13とを有している。サイドフレーム10の前縁部12は、特許請求の範囲の被取付部に対応する。
サイドフレーム10には、エアバッグモジュール6が固定されている。
【0032】
エアバッグモジュール6は、公知の構成からなり、少なくともインフレータとエアバッグを備えたものをいい、モジュールケースの有無は問わない。モジュールケースを備えたエアバッグモジュール6の例としては、特に図示しないが、インフレータをリテーナで保持し、そのリテーナの締付けボルトをエアバッグより外部に突出させて、インフレータをリテーナと一体にエアバッグの取付基部寄り内部に組み付け、更に、リテーナの締付けボルトを外部に突出させて全体をモジュールケースの内部に収容し、衝撃センサー等の関連機器と回路構成するのに必要なハーネス,コネクタを備えることにより組み立てられたものがある。
【0033】
モジュールケースとしては、開閉可能なリッドをケース本体にヒンジ接続したもの、または、V溝等による脆弱部を前部面に設けたケース本体とロアプレートとからなるハウジングにより、エアバッグの膨張圧で開放可能なものが備え付けられている。
クッションパッド5には、
図3に示すように、エアバッグモジュール6を格納するための空間7が形成されている。
【0034】
トリムカバー4は、公知の材料からなり、
図3,
図4に示すように、座面中央から左右の土手面を被包する前面マチ部41と周側面から背面に至る側面マチ部42とを縫い合わせ、更に、不図示の背面マチ部を不図示のスライドファスナーで側面マチ部42に対して開閉自在に連結することにより袋状に縫製されている。
トリムカバー4には、前面マチ部41と側面マチ部42との土手部において膨出した頂点に、破断部40が形成されている。破断部40は、前面マチ部41と側面マチ部42の端部を、通常の使い勝手に耐えられる強度を保ちつつ、エアバッグの膨張による引張力で裂断可能なように、相互に縫製されている。
【0035】
図4に示すように、側面マチ部42の破断部40逆側の端辺42eは、中央付近の領域が両側の領域よりも長く形成され、樹脂製からなり断面略J字状で長尺の係止部材33が縫い付けられている。係止部材33は、端辺42eの中央の領域をサイドフレーム10の後縁部13に係止するために用いられる。
力布32は、伸縮性の小さい布状素材からなり、エアバッグの膨張による応力を破断部40に伝達する役割を果たす。力布32は、特許請求の範囲の案内部材に対応する。
【0036】
力布32は、
図4に示すように、破断部40側の辺34と破断部40逆側の辺35とが略平行で、破断部40側の辺34が長く形成された略台形の布からなる。破断部40逆側の辺35は、矩形状に突出したトリムプレート37取付用の取付部36が、複数設けられている。取付部36が、特許請求の範囲の案内部材の端部側に対応する。
トリムプレート37は、硬質樹脂製からなる矩形の板体である。トリムプレート37は、力布32の取付部36の端末の形状を保持するために用いられる力布端末形状保持部材である。力布32の端末にトリムプレート37が固定されていることにより、力布32の端末を係止部55に差込む際の作業性が向上する。本実施形態では、力布32の取付部36にトリムプレート37を固定しているが、これに限定されるものではなく、トリムプレート37を用いずに、力布32の取付部36の端末を複数回折り返して縫製したものや、複数重に巻回して縫製したもの、複数重に巻回して縫製したものを一方向に押し潰したものを係止部55に挿入してもよい。
【0037】
力布32は、
図3に示すように、破断部40より空間7へ引き込まれている。力布32の他端のトリムプレート37は、取付部材50を介してサイドフレーム10の前縁部12に係止されている。また、サイドフレーム10の後縁部13には、側面マチ部42の破断部40逆側の端辺42eの中央の領域に縫い付けられた係止部材33が係止されている。
【0038】
取付部材50は、硬質樹脂から一体成形されてなり、
図5,
図6に示すように、サイドフレーム10の前縁部12の内壁の断面U字状の形状に略沿った断面略U字状の外面形状を有する幅広部51と、幅広部51の前縁部12端部側に形成された掛け止め部52と、掛け止め部52の幅広部51逆側の端部が力布32の延長側へ延出し、前縁部12の外側の面に覆い被さるように設けられた延出部54を備えている。取付部材50は、取付時前縁部12に沿う方向に略同じ断面形状を備えている。
掛け止め部52には、幅広部51の前縁部12端部側に、取付部材50を前縁部12に掛け止めるための溝53が、幅広部51から連続して形成されている。溝53は、幅広部51と、幅広部51の根本の部分から分岐する延出部54との間の空間からなる。溝53は、前縁部12の端部を挟持している。
幅広部51には、トリムプレート37を内部に保持して係止する係止部55と、係止部55から引き出される力布32の通路となるスリット69の両壁面を形成する第一の壁部59,第二の壁部60を備えている。係止部55は、特許請求の範囲の保持空間に該当する。
【0039】
係止部55は、トリムプレート37を内部に係止可能な大きさの空間からなり、上端及び下端が開放されて、上端から下端まで達する開口として形成されている。
なお、係止部55は、上端又は下端の一方、好ましくは上端のみが開放され、他方が閉塞されていてもよい。係止部55の上端が開放され、下端が閉塞された取付部材50は、左右のサイドフレーム10のいずれか一方のみに用いる場合に特に適している。係止部55の上端及び下端の双方が開放された取付部材50は、左右のサイドフレーム10の双方に用いる場合に特に適している。このとき、左右のうち一方のサイドフレーム10に用いるときに上端だった側は、他方のサイドフレーム10に用いるときに下端側となる。
【0040】
図6,
図7に示すように、係止部55は、平面55cの一端に、トリムプレート37の断面長さ方向の一端側を囲む湾曲面55a
(第一の湾曲面)を備え、他端に、トリムプレート37の断面長さ方向の他端側を囲む湾曲面55b
(第二の湾曲面)を備えている。湾曲面55aは、スリット69側から見て奥側、湾曲面55bは、スリット69に近い側にある。
また、平面55cに対向して、湾曲面55aから連続する第一の壁部59の内壁面59iを備えている。内壁面59iは、平面55cよりも短く形成されている。湾曲面55a,55b,平面55cによって形成される壁面が、係止部55を区画する側壁を構成している。
【0041】
第一の壁部59は、湾曲面55aから延長し、第二の壁部60は、湾曲面55bから延長している。第一の壁部59と第二の壁部60とは、相互に逆方向に向かって延出し、係止部55の掛け止め部52逆側の壁を構成している。
図7に示すように、第二の壁部60は、第一延出部64,第二延出部65,第三延出部66を備えている。第一延出部64は、その内壁面64iが、第一の壁部59の端部59e
(先端)に対向しながら、第一の壁部59に対して、係止部55の外側に向かうに従って第一の壁部59側に近づく向きに、傾斜して延出している。
従って、係止部55内に保持されるトリムプレート37取付用の取付部36側に、第二の壁部60の内壁面64iのうち、第一の壁部59の端部59eに対向する部分が覆い被さるように位置する。従って、第二の壁部60の内壁面64iのうち、第一の壁部59の端部59eに対向する部分によって、スリット69内に通された力布32を介して、トリムプレート37取付用の取付部36を係止部55内に押し戻す方向の力が掛かるため、トリムプレート37取付用の取付部36が係止部55から外れることを抑制できる。
第一延出部64の外壁面64oは、取付部材50の前縁部12取付時に、サイドフレーム10の側板11の内壁面に当接する
。
【0042】
第一延出部64の湾曲面55b逆側には、第一延出部64から屈曲して、更に係止部55の外側へ延出する第二延出部65が設けられている。
第二延出部65は、その内壁面65iが、第一の壁部59の外壁面59oに沿って略平行に延出している。
第二延出部65の第一延出部64逆側には、第二延出部65から屈曲して、更に係止部55の外側へ延出する第三延出部66が設けられている。第三延出部66は、第一の壁部59の根元部分59bを被覆している。
第二延出部65の内壁面65i及び第三延出部66の内壁面66iは、第一の壁部59の外壁面59oとの間に一定の間隔の隙間を備えており、この隙間がスリット69を構成している。
【0043】
第一延出部64の内壁面64i,第二延出部65の内壁面65i,第三延出部66の内壁面66iは、相互に角度を持って屈曲しており、第一延出部64の内壁面64iと第三延出部66の内壁面66iとの角度は略90°となっている。
また、第二延出部65は、
図7に示すように、第一延出部64及び第三延出部66よりも厚肉に形成されている。第二延出部65は、力布32に掛かる引っ張り力を受けてトリムプレート37が第一の壁部59を外側に押圧したときに、第一の壁部59の端部59eから力布32を介して第二延出部65が押圧力を受ける位置である。
【0044】
すなわち、
図5のように、取付部材50に力布32が取り付けられたトリムプレート37が組み付けられたとき、力布32には、矢印E方向の引っ張り力が掛かる。この引っ張り力は、トリムプレート37に伝達され、トリムプレート37は、
図7に示すように、第一の壁部59を第二延出部65方向であるF方向へ押圧する。第一の壁部59のうち、このトリムプレート37による押圧力によって最も大きく変位するのは、端部59eである。本実施形態では、第二延出部65が厚肉に形成されているので、端部59eが力布32を介して第二延出部65の内壁面65iに支持され、トリムプレート37が係止部55から外れることが抑制される。
【0045】
第一延出部64,第二延出部65,第三延出部66の厚みは、第二延出部65が最も厚く、その次に第一延出部65が厚く形成され、力布32の引張り力に起因する押圧力を最も受けにくい第三延出部66が、最も薄く形成されている。第三延出部66が薄く形成されているので、スリット69へ力布32を挿入する作業の作業性も向上される。
また、サイドフレーム10の前縁部12への取付時、
図7に示すように、第一延出部64は、サイドフレーム10の側板11に当接するため、トリムプレート37からの押圧力を側板11によっても受けることができることから、第二延出部64よりも薄く形成可能である。
【0046】
図5,
図7に示すように、取付部材50は、係止部55内に、力布32の端部が縫着されたトリムプレート37が保持された状態で、溝53が、サイドフレーム10の前縁部12に係止されることにより、サイドフレーム10に取付けられる。
取付部材50を介した力布32のサイドフレーム10への取付は、次の手順で行われる。
作業者はまず、力布32の取付部36を、トリムプレート37と取付部36の境界で一回折り曲げ、トリムプレート37と取付部36とを、トリムプレート37の幅分重ねる。
【0047】
次いで、トリムプレート37と取付部36とを保持しながら、
力布32を、スリット69に挿入する。次いで、トリムプレート37を係止部55に挿入し、押し込んで、力布32が取付けられたトリムプレート37と取付部材50との連結を完了する。
次いで、取付部材50の溝53を、サイドフレーム10の前縁部12の所定の位置に係止する。
以上の作業を、すべての取付部材50について行い、取付部材50を介した力布32のサイドフレーム10への取付を完了する。