【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
製造例1
アシルアミノ酸処理扁平状セルロースの調製:
精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(日本製紙ケミカル社製:KC−フロックW−400(風乾状態の水分量7%))を40℃で減圧乾燥を行い、吸着水分を0.1%以下までに除去した。このセルロース粉末49gを密閉可能なジルコニア製粉砕容器(容積500ml)にジルコニア製粉砕ボール(直径20mm)と共に投入し、更に、純水をセルロース粉末に対して3%、N
ε−ラウロイル−Lリジン(アミホープ(登録商標)LL:味の素社製)を2%となるように添加した。
【0033】
その後、上記粉砕容器を遊星型ボールミル(ドイツフリッチェ社製:P−5型)に設置して、10分間回転粉砕−10分間休止を1サイクルとし、連続して72サイクル繰り返して粉砕を行った。この際の回転数は200rpmであった(約10G(重力加速度)の粉砕エネルギーに相当)。得られた粉砕物は粉体であった。
【0034】
この粉体をフローセルにて水中分散状態とし、そこでの平均粒径(幅と長さの装置上の平均値)を、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(セイシン社製:LMS−24型)を用いて求めた。ここでの平均粒径としては積算体積50%の粒径値を用いた。
【0035】
実際の粒度分布測定は、得られた粉体の50mgを蒸留水10mlに分散させた懸濁液を、粒度分布測定装置の水を媒体とする試料循環槽に滴下し、適切な濃度になった後に行われた。その結果、粉体の平均粒径は21μmであった。
【0036】
また、得られた粉体の平均厚さを、粉体中の粒子を走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製:S−3400N)にて直接観察し、前記で求めた平均粒径と同等の大きさの粒子を複数選択し、厚さを測定し、それらを平均することにより求めた。
【0037】
走査型電子顕微鏡による観察は、次のようにして行われた。まず、得られた粉体の極少量を走査型電子顕微鏡の試料台に載せ、減圧にて乾燥後、金あるいは白金等の金属を蒸着して検鏡試料とした。この検鏡試料を加速電圧20〜25kVで拡大率500〜10,000倍にて観察して得た画像から、前記で測定した平均粒径と同等の大きさの粒子を複数選択し、厚さを測定し、それらから平均厚さを求めた。その結果、平均厚さは0.3μmであった。
【0038】
このようにして得られた粉体は、平均粒径21μ、平均厚さ0.3μm、扁平度70のアシルアミノ酸処理扁平状セルロースであった。
【0039】
製造例2
黒酸化鉄被覆アシルアミノ酸処理扁平状セルロースの調製:
精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(日本製紙ケミカル社製:KC−フロックW−400(風乾状態の水分量7%))を40℃で減圧乾燥を行い、吸着水分を0.1%以下までに除去した。このセルロース粉末49gを密閉可能なジルコニア製粉砕容器(容積500ml)にジルコニア製粉砕ボール(直径20mm)と共に投入し、更に、純水をセルロース粉末に対して3%加え、N
ε−ラウロイル−Lリジン(アミホープ(登録商標)LL:味の素社製)を2%、黒酸化鉄を30%となるように添加した。
【0040】
その後、上記粉砕容器を遊星型ボールミル(ドイツフリッチェ社製:P−5型)に設置して、10分間回転粉砕−10分間休止を1サイクルとし、連続して72サイクル繰り返して粉砕を行った。この際の回転数は200rpmであった(約10G(重力加速度)の粉砕エネルギーに相当)。得られた粉砕物は粉体であった。
【0041】
この粉体の平均粒径、平均厚さおよび扁平度を、製造例1と同様にして求めたところ、平均粒径18μ、平均厚さ0.4μm、扁平度45の黒酸化鉄被覆アシルアミノ酸処理扁平状セルロースであった。
【0042】
参考製造例1
脂肪酸処理セルロース粒子の調製:
精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(日本製紙ケミカル社製:KCフロックW−400(風乾状態の水分量7%))を40℃で減圧乾燥を行い、吸着水分を0.1%以下まで十分に除去した。このセルロース粉末の49gを、密閉可能なジルコニア製粉砕容器(容積500ml)に、ジルコニア製粉砕ボール(直径20mm)とともに投入し、更に、ステアリン酸をセルロース粉末に対して2%になるように添加した。
【0043】
その後、上記粉砕容器を遊星型ボールミル(ドイツ・フリッチュ社製:P−5型)に設置し、10分間回転粉砕−10分間休止を1サイクルとし、連続して72サイクル繰り返して粉砕を行った。この際の回転数は200rpmであった(約10G(重力加速度)の粉砕エネルギー)。粉砕物は粉体として得られた。また、参考例1と同様にしてこの粉体の平均粒径、平均厚さおよび扁平度を測定したところ、平均粒径16μ、平均厚さ3μm、扁平度5.3の脂肪酸処理扁平セルロース粒子であった。
【0044】
参考製造例2
不定形セルロース粉末とアシルアミノ酸の混合物の調製:
不定形セルロース粉末(日本製紙ケミカル社製:KCフロックW−400、平均粒径24μ)にN
ε−ラウロイル−Lリジン(アミホープ(登録商標)LL:味の素社製)を3%添加、混合して(粉砕処理は行わずに)混合物を調製した。
【0045】
試験例1
分散性の確認試験:
製造例1で調製したアシルアミノ酸処理扁平状セルロース、参考製造例1で調製した脂肪酸処理扁平セルロース粒子、参考製造例2で調製した不定形セルロース粉末とアシルアミノ酸の混合物、タルク(平均粒径12μ)のそれぞれ1gを、8号規格瓶に入れた軽質流動イソパラフィン40gに添加し、5分間超音波にて分散させた。分散後、瓶を静置し、2分後の状態を目視し、評価した。また、軽質流動イソパラフィンをデカメチルシクロペンタシロキサンに代える以外は同様にした試験も行った。
【0046】
上記試験の結果、製造例1で調製したアシルアミノ酸処理扁平状セルロースを軽質流動イソパラフィンまたはデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた場合、静置2分後でも、分散状態が維持されていた。一方、参考製造例1で調製した脂肪酸処理扁平セルロース粒子、参考製造例2で調製した不定形セルロース粉末とアシルアミノ酸の混合物またはタルクを、軽質流動イソパラフィンまたはデカメチルシクロペンタシロキサンに分散させた場合、静置2分後ですら、分散状態が維持できず、粉体が沈降していた。
【0047】
試験例2
毛髪付着性の確認試験:
試験例1と同様にして各混合物を調製し、5分間超音波にて分散させた。分散直後の分散液に毛髪束を4cm浸漬し、静置1分経過後取り出し、2日間、50℃にて乾燥させた。浸漬前と乾燥後の毛髪束の質量を測定し、毛髪に付着した粉体量から毛髪質量に対する粉体増加率を算出し、参考製造例2の増加率を1とした時のそれぞれの増加率を
図1に示した。
【0048】
毛髪質量に対する粉体増加率から、製造例1で調製したアシルアミノ酸処理扁平状セルロースは毛髪への付着性が高いことがわかった。特に、製造例1で調製したアシルアミノ酸処理扁平状セルロースを軽質流動イソパラフィンに分散させた場合には、参考製造例1で調製した脂肪酸処理扁平セルロース粒子、参考製造例2で調製した不定形セルロース粉末とアシルアミノ酸の混合物やタルクと比べて付着性が非常に高いことがわかった。
【0049】
実施例1〜4および比較例1〜5
油性マスカラ:
表1の処方で以下の製造方法により油性マスカラを製造した。また、これらの油性マスカラについて、下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。これらの結果も表1に併せて記載した。
【0050】
【表1】
【0051】
<製造方法>
A.成分(1)〜(5)を100℃に加熱し、均一に混合する。
B.成分(6)〜(9)を80℃で均一に加熱混合する。
C.A及びBに成分(10)〜(16)を加え、均一に分散混練する。
D.成分(17)〜(19)を110℃に加熱溶解した後、成分(20)〜(21)を添
加し均一に分散する。
E.DにCを加え、均一に分散する。
F.Eをコーム付きの容器に充填して製品とする。
【0052】
<評価項目>
a.塗布膜の均一性(滑らかさ、ダマ付きのなさ)
b.発色効果
c.ボリュームアップ効果
d.化粧持続効果
(評価方法)
評価項目a〜dについて、各試料について専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。なお、絶対評価は、各試料を5回睫に塗布した後、乾燥した化粧膜について評価した。
【0053】
[絶対評価基準]
(評点):(評価)
6:非常によい
5:よい
4:ややよい
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
[4段階判定基準]
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える :非常に良好
○ :3点を超える5点以下:良好
△ :1点を超える3点以下:やや不良
× :1点以下 :不良
【0054】
表1から明らかな如く、本発明の実施例1〜4の睫用化粧料は、塗布膜の均一性、発色効果、ボリュームアップ効果および化粧持続効果の全ての項目において優れた化粧料であった。これに対して、アシルアミノ酸処理扁平状セルロースを配合しない比較例1では、睫への付着が弱く、睫を太く見せ、目元を際立たせる化粧効果(ボリュームアップ効果)の点で、また、アシルアミノ酸処理扁平状セルロースの代わりに、不定形セルロース粉末を配合した比較例2と更にN
ε−ラウロイル−Lリジンを添加した比較例3では、試料を塗布する際に、睫への付着が滑らかでなく塗布膜の均一性の点で満足のいくものが得られなかった。更に、アシルアミノ酸処理扁平状セルロースの代わりに、脂肪酸処理扁平セルロース粒子を配合した比較例4では、化粧膜が十分な厚みをもって形成することができず、ボリュームアップ効果の点で満足のいくものが得られず、また、アシルアミノ酸処理扁平状セルロースの代わりに、タルクを配合した比較例5では、睫毛を黒々させて目立たせる発色効果およびボリュームアップ効果の点で満足のいくものが得られなかった。
【0055】
また、実施例1および比較例3〜5の睫用化粧料を、台座に固定したポリブチレンテレフタラート樹脂製のつけ睫に5回塗布した後、乾燥した化粧膜の状態を
図2に示した。この図から明らかな如く、本発明の実施例1の睫用化粧料は、比較例3〜5の睫用化粧料と比べて格段のボリュームアップ効果があることがわかった。
【0056】
実施例5
水中油型マスカラ:
以下の処方および製造方法で水中油型マスカラ(繊維入りタイプ)を製造した。
【0057】
(成分) (%)
(1)ステアリン酸 1.5
(2)キャンデリラワックス 3
(3)ロジン酸ペンタエリスリット 4
(4)パルミチン酸デキストリン※10 0.1
(5)パラフィン 2
(6)軽質流動イソパラフィン※1 2
(7)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O. ) 2
(8)セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
(9)アシルアミノ酸処理扁平状セルロース※6 5
(10)ベンガラ 1
(11)黄酸化鉄 2
(12)タルク 1
(13)雲母チタン 1
(14)トリエタノールアミン 1.5
(15)グリセリン 5
(16)ポリビニルアルコール※11 1
(17)水性アルカリ増粘型エマルションポリマー※12 0.5
(18)スチレン・ビニルピロリドンポリマーエマルション※13 15
(19)ポリ酢酸ビニルポリマーエマルション※14 5
(20)ナイロン繊維(8デニール、2mm) 2
(21)1,2−ペンタジオール 0.2
(22)精製水 残量
※10:レオパールKL(千葉製粉社製)
※11:PVA−EG05(日本合成化学工業社製)
※12:プライマルASE−60(日本アクリル化学社製)
※13:ANTARA 430(固形分40%)(アイエスピー・ジャパン社製)
※14:ビニブランGV−5651(固形分40%)(日信化学工業社製)
【0058】
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)を90℃まで加熱し、均一に混合する。
B.成分(9)〜(22)を90℃で加熱し、均一に混合する。
C.BにAを加え、乳化し、室温まで冷却する。
D.Cを容器に充填して製品とする。
【0059】
このマスカラについて実施例1〜4と同様にして塗布膜の均一性、発色効果、ボリュームアップ効果、化粧持続効果について評価したところ、全ての項目において優れたものであった。
【0060】
実施例6
眉用オーバーコート:
以下の処方および製造方法で眉用オーバーコートを製造した。
(成分) (%)
(1)トリオクタン酸グリセリル 1
(2)軽質流動イソパラフィン※1 25
(3)ポリオキシエチレン(30E.O.)セチルエーテル 2
(4)アシルアミノ酸処理扁平状セルロース※6 1
(5)シリコーン樹脂粉体※15 0.5
(6)カーボンブラック 0.5
(7)ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末 2
(8)水性アルカリ増粘型ポリマーエマルション 5
(9)L−アルギニン 2
(10)ポリビニルアルコール 2
(11)ポリビニルピロリドン 0.1
(12)ローズマリエキス 0.1
(13)エタノール 5
(14)精製水 残量
※15:TOSPEARL 145A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
【0061】
(製造方法)
A.成分(1)〜(3)を均一に加熱溶解し、80℃にする。
B.成分(4)〜(14)を均一に混合し、80℃まで加熱する。
C.BにAを加え乳化する。
D.Cを容器に充填して製品とする。
【0062】
この眉用オーバーコートについて実施例1〜4と同様にして塗布膜の均一性、発色効果、ボリュームアップ効果、化粧持続効果について評価したところ、全ての項目において優れたものであった。
【0063】
実施例7
油中水型ヘアマスカラ:
以下の処方および製造方法で油中水型ヘアマスカラ(クリーム状)を製造した。
(成分) (%)
(1)イソステアリン酸デキストリン 3
(2)ロジン酸ペンタエリスリトール 10
(3)キャンデリラレジン 1
(4)ポリビニルピロリドン 0.1
(5)軽質流動イソパラフィン※1 残量
(6)デキストリン脂肪酸エステル※16 2
(7)煙霧状無水ケイ酸※17 8
(8)有機変性ベントナイト 2
(9)チタン・酸化チタン焼結物※18 5
(10)黒酸化鉄被覆アシルアミノ酸処理扁平状セルロース※19 5
(11)1,3−ブチレングリコール 8
(12)精製水 3
(13)香料 0.1
※16:レオパールTL2(千葉製粉社製)
※17:AEROSIL R974(日本アエロジル社製)
※18:TILACK D(赤穂化成社製)
※19:製造例2で調製したもの
【0064】
(製法)
A.成分(1)〜(10)を100℃に加熱溶解し、常温になるまで冷却する。その後、
成分(11)〜(13)を加えて乳化する。
B.Aを容器に充填して製品とする。
【0065】
このヘアマスカラについて実施例1〜4と同様にして塗布膜の均一性、発色効果、ボリュームアップ効果、化粧持続効果について評価したところ、全ての項目において優れたものであった。また、このヘアマスカラは速乾性があり、しかも毛髪が束づかず重ねづけすることによって効果が上がり、毛量が増加したかのように見え、更には色の均一性が高まる効果が得られた。