特許第6050114号(P6050114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050114オーバーレイ法による歯列矯正用アライナの製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050114
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】オーバーレイ法による歯列矯正用アライナの製造
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20161212BHJP
   A61C 7/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   A61C7/08
   A61C7/00
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-525729(P2012-525729)
(86)(22)【出願日】2010年8月20日
(65)【公表番号】特表2013-502290(P2013-502290A)
(43)【公表日】2013年1月24日
(86)【国際出願番号】US2010046175
(87)【国際公開番号】WO2011022654
(87)【国際公開日】20110224
【審査請求日】2013年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/274,821
(32)【優先日】2009年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/307,668
(32)【優先日】2010年2月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503366450
【氏名又は名称】デンツプリー・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(74)【代理人】
【識別番号】100168594
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,マイケル・シー
(72)【発明者】
【氏名】クラット,ブラッドフォード・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ヒリアード,ジャック・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリー,ダニエル
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−532563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0188834(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0177789(US,A1)
【文献】 特開2008−307281(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0050692(US,A1)
【文献】 特表2006−511243(JP,A)
【文献】 特開2003−211529(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/032310(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
A61C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列矯正用アライナトレイを製造する方法であって、
患者の歯の原型デジタル模型を取得するステップと、
前記原型デジタル模型によって表される前記歯をセグメント化するステップと、
前記原型デジタル模型によって規定される開始位置と最終的な歯の位置を表す最終的な歯科模型によって規定される最終位置とを含むデジタルオーバーレイ模型を作成するように前記最終的な歯科模型を前記原型デジタル模型と重ね合わせるステップと、
歯受入れ区画を各アライナ内に有する少なくとも1つのアライナトレイを製造するステップであって、前記歯受入れ区画は、元の歯の位置に第1の壁を有し、最終的な歯の位置に前記第1の壁に対向する第2の壁を有する、ステップと、
選択された力を選択された歯に掛けるように前記歯受入れ区画内に位置付けられる少なくとも1つの推進器具を、前記少なくとも1つのアライナトレイ内に挿入または形成するステップとを含み、
前記原型デジタル模型によって規定される開始位置は、元の歯の位置における前記歯の全表面を表し、前記最終的な歯科模型によって規定される最終位置は、最終的な歯の位置における前記歯の全表面を表す、歯列矯正用アライナトレイを製造する方法。
【請求項2】
少なくとも1つのアライナトレイを製造する前記ステップが、前記オーバーレイ模型のラピッドプロトタイプ模型を作成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ラピッドプロトタイプ模型の作成が、立体リソグラフィ、レーザ焼結、または溶融堆積の1つによって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者の歯の原型デジタル模型を取得する前記ステップが、患者の歯科印象から石膏模型を鋳込み成形するステップと、前記石膏模型をデジタルファイルにスキャンするステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
スキャンする前記ステップが、スキャニングソフトウェアシステムを使用して行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
患者の歯の原型デジタル模型を取得する前記ステップが、前記患者の歯列の口腔内スキャンに基づいて前記原型デジタル模型を作成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記歯および歯列弓幅を測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記最終的な歯の模型がデジタル模型である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのアライナトレイを製造する前記ステップが、真空成形機およびプラスチック熱成形シートを使用して、物理的なオーバーレイ模型の上に前記アライナトレイをそれぞれ真空熱成形するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記原型デジタル模型によって表される前記歯をセグメント化する前記ステップがデジタル的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのアライナトレイが複数の同一のアライナトレイを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
スキャンする前記ステップが、前記患者の不正咬合歯列における前記歯の元の位置をデジタル形式で表すステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
歯列矯正治療計画に従って歯を再配置するためのアライナトレイであって、
オーバーレイ模型と、トレイ部分と、少なくとも1つの推進器具とを備えており、
前記オーバーレイ模型は、
アライナトレイの歯受入れ区画に対応する、元の歯の位置、最終的な歯の位置、および各歯の進路を備え、
元の歯の位置が、患者の歯の原型デジタル模型を形成する各歯の全表面を表し、
最終的な歯の位置が、適正なアライメントに再配置されて最終的な歯科模型を形成する少なくとも1つのセグメント化した歯の全表面を表し、
前記最終的な歯科模型が、前記原型デジタル模型と重ね合わされ、
前記トレイ部分は、前記トレイ部分内に前記歯受入れ区画を規定し、熱成形可能なプラスチックシートから形成され、前記歯受入れ区画は、前記オーバーレイ模型に基づいており、元の歯の位置に第1の壁を有し、最終的な歯の位置に前記第1の壁に対向する第2の壁を有しており、
前記少なくとも1つの推進器具は、選択された力を選択された歯に掛けるように前記歯受入れ区画内に位置決めされている、
歯列矯正治療計画に従って歯を再配置するためのアライナトレイ。
【請求項14】
前記歯受入れ区画が、患者の治療前の前記原型デジタル模型から前記最終的な歯の模型への開けた進路を提供して、前記歯受入れ区画内での歯の移動を可能にする、請求項13に記載のアライナトレイ。
【請求項15】
前記推進器具が前記アライナトレイの内壁に熱成形される隆起部である、請求項13に記載のアライナトレイ。
【請求項16】
前記推進器具が前記アライナトレイの壁に挿入されるタックである、請求項13に記載のアライナトレイ。
【請求項17】
歯列矯正用アライナトレイを製造する方法であって、
患者の歯の石膏模型を鋳込み成形し、スキャニングソフトウェアシステムを使用して、原型デジタル模型を作成するように前記石膏模型をデジタルファイルにスキャンするステップと、
前記原型デジタル模型によって表される前記歯をセグメント化するステップと、
前記歯および歯列弓幅をデジタル的に測定するステップと、
前記原型デジタル模型によって規定される開始位置と最終的な歯の位置を表す最終的な歯科模型によって規定される最終位置とを含むデジタルオーバーレイ模型を作成するように前記最終的な歯科模型を前記原型デジタル模型と重ね合わせるステップと、
歯受入れ区画を各アライナ内に規定するように前記オーバーレイ模型に基づいて複数の同一のアライナトレイのラピッドプロトタイプ模型を作成するステップと、
前記歯受入れ区画に、元の歯の位置で第1の壁を形成し、最終的な歯の位置で前記第1の壁に対向する第2の壁を形成するステップと、
真空成形機およびプラスチック熱成形シートを使用して、物理的な前記オーバーレイ模型の上に前記アライナトレイをそれぞれ真空熱成形するステップと、
選択された力を選択された歯に掛けるように前記歯受入れ区画内に位置付けられる少なくとも1つの推進器具を、前記複数のアライナトレイの少なくとも1つのアライナトレイに挿入するステップとを含み、
前記原型デジタル模型によって規定される開始位置は、元の歯の位置における前記歯の全表面を表し、前記最終的な歯科模型によって規定される最終位置は、最終的な歯の位置における前記歯の全表面を表す、歯列矯正用アライナトレイを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月21日出願の米国特許仮出願第61/274,821号、名称「ORTHODONTIC ALIGNER AND METHOD」、および2010年2月24日出願の米国特許仮出願第61/307,668号、名称「ORTHODONTIC ALIGNER FABRICATION BY OVERLAY METHOD」の利益を主張する。これら仮出願の開示を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
[0002]本発明は、全体として、歯列矯正の分野に関する。より具体的には、本発明は、歯列矯正用の歯列トレイ(alignment tray)、ならびに手作業でまたはデジタルプログラミング技術を使用して、かかるトレイを製造し、歯を整列させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]歯列矯正の分野は十分に発達している。従来のブラケット、ワイヤなどを使用し、また患者の不整列歯(misaligned teeth)の性質に基づいて、歯科専門家は、歯を移動してより良好に整列させるのに適した力を加えるための進路を決定することができる。歯は、そのような従来の処置で移動させると、他の歯によって妨害される場合が多い。最初の不整列により、単に歯を一方向に移動させ、または再配置して、その位置を矯正するという問題ではない場合が多い。それよりも、治療計画は、歯を移動させるにつれて歯同士の物理的接触に配慮しなければならない場合がほとんどである。
【0004】
[0004]所与のトレイ自体が不整列歯に力を掛けて移動を促すような形で製造された歯科用トレイを使用して、不整列歯の位置を矯正する方法が開発されてきた。これらとしては、例えば、Align Technology,Inc.(Santa Clara,California)製のInvisalign(登録商標)トレイが挙げられる。多くの場合、これらの歯列トレイは透明プラスチック材料から製造され、また、後続のトレイがそれぞれその前のトレイよりもさらに、または異なるように漸増的に歯を移動させて、処方された治療計画を達成するようにして連続した一組の形で提供される。したがって、各トレイは、特定の歯を開始位置、すなわち「処置前」位置から、選択された最終位置、すなわち「処置後」位置へと移動させることになる。「処置後」位置は、その直前の「処置前」位置の性質にのみ基づいている。さらに、従来システムの治療プロセスにおける連続したアライナトレイそれぞれの形状、およびそれによって掛けられる力は、その前のトレイが歯の移動をどこで止めたかという性質にのみ基づいている。歯科専門家が最終的にどこに歯を移動させたいかに関して、何らかの目標を念頭に置いている可能性があるが、患者の治療処置の最後の最後まで、この最終位置および最初の開始位置は、漸増的なまたは中間の治療ステップには影響しない。すなわち、従来のシステムは「クローズド」と言うことができる。
【0005】
[0005]したがって、このため、歯を所望の適切な方向で移動させることができるように、歯に過度のストリッピングを施す必要がある場合が多かった。過度のストリッピングの結果は、ストリッピングを施した歯の審美的な魅力を損なうか、またはさらには健康を損なう場合が多かった。従来の処置は歯を移動させるものであるが、歯がその自然なまたは開けた進路を移動できるようにするものではない。
【0006】
[0006]したがって、歯の自由なまたは自然な移動を可能にするような形で、歯列トレイを製造し使用することが有利であろう。すなわち、トレイおよびそれによって得られる処置は、所与の歯の最初の不整列位置および最終的な所望の位置だけではなく、歯の間に存在する、または歯が移動するにつれて生じる物理的相互作用、下にある骨構造の可変性なども含む、歯の移動に対するばらつきにより容易かつ適切に適応するべきである。これまで、従来の歯列矯正用アライナトレイは、歯列矯正処置におけるこの種の自然な歯の移動を考慮していなかった。
【0007】
[0007]歯列矯正医が使用する別の技法は、ポリマー製のシェル型アライナを、その元々形成された形体を超えて改造することを伴う。一般的に、歯収容区画(tooth−accommodating compartment)の内側の歯接触面は、アライナに形成される。任意の1つの区画の内表面は、器具を適所に設置すると、歯を完全に取り囲むとともに歯に密接に接触する。単一の隆起部をアライナの内壁に導入することによって作り出されるような力が、歯を移動させるのに有効であるように、区画の対向面の内壁は、歯をその方向で移動できるように緩和または除去しなければならない。障害物が取り除かれ、歯をそこに移動させるための自由空間が設けられない限り、歯は移動しない。そのような状況に対処するため、歯列矯正医は、歯科模型の材料を切り取るか、または部分的に塞いで歯をその中に移動させる自由空間を作り出すことによって、アライナを改造してもよい。自由空間またはウィンドウは、所望の歯の移動方向にあるアライナ材料をトリミングすることによって作成される。アライナのウィンドウは、例えば、治療計画において隆起部を舌側に形成することが求められる場合、歯の唇側に作成される。トレイを形成する際にトレイ材料を手作業で切り取る必要なしに、または歯科模型を部分的に塞ぐ必要なしに、標的の歯を中に移動させてもよい空間を含む歯の区画を備えた、アライナトレイを提供することも有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]したがって、本発明の1つの目的は、歯の自然なまたは自由な移動に適応するようにして製造され使用されるアライナトレイを提供することである。以下の説明から明白になるような本発明のこの目的および他の目的は、以下に記載し請求する本発明によって実施される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明によれば、歯列トレイは、歯の最初の不整列(もしくは中間の不整列)と、歯を最終的に移動させたい目標位置または最終位置との両方の物理的オーバーレイである模型に基づいて製造される。模型は、物理的模型、デジタル模型、またはそれらの両方であり得る。かかるオーバーレイ模型から製造したトレイは、選択された歯に選択された力を掛けて歯を所望のように移動させるためにトレイに入れられる、ある種の推進用隆起部(force bump)または器具を有することになる。したがって、トレイ自体は、歯の開始点と終点の両方を含むオーバーレイであるが、歯を移動する力を掛けるのは、本発明のトレイの形に製造された加力(force exerting)隆起部または器具である。この配置により、トレイはオープンシステムであり、下にある骨構造の性質によって、かつ他の歯との相互作用によって抵抗を受ける歯のより自然な移動を可能にする。歯同士の物理的接触、骨密度などに基づく異なる移動速度などは、許容されるだけではなく、治療処置全体を達成するため、歯科専門家の処方によって積極的に計画され、さらには採用される。
【0010】
[0010]一実施形態では、歯列矯正用アライナトレイを製造する方法は、患者の歯の原型デジタル模型を取得するステップと、デジタル模型によって表される歯をセグメント化するステップと、最終的な歯の位置を表す最終的な歯科模型を作成するため、歯の少なくとも1つを適正なアライメントに再配置するステップと、原型デジタル模型によって規定される開始点と最終的な歯科模型によって規定される終点とを含むデジタルオーバーレイ模型を作成するため、最終的な歯科模型を原型デジタル模型と重ね合わせるステップと、歯受入れ区画を各アライナ内に規定するため、オーバーレイ模型に基づいて少なくとも1つのアライナトレイを製造するステップと、選択された力を選択された歯に掛けるために歯受入れ区画内に位置付けられる少なくとも1つの推進器具を、少なくとも1つのアライナトレイに挿入するステップとを含む。
【0011】
[0011]別の実施形態では、歯列矯正治療計画にしたがって歯を再配置するためのアライナトレイがある。アライナトレイは、トレイ部分内の歯受入れ区画を規定するとともに、熱成形可能なプラスチックシートから形成されるトレイ部分を含む。歯受入れ区画はオーバーレイ模型に基づく。オーバーレイ模型は、元の歯の位置、最終的な歯の位置、および各歯の進路を含む。元の歯の位置、最終的な歯の位置、および各歯の進路は、アライナトレイの歯受入れ区画に収まる。最終的な歯科模型は、適正なアライメントに再配置されて最終的な歯科模型を作り出す少なくとも1つのセグメント化した歯を表す。最終的な歯科模型は原型デジタル模型と重ね合わされる。推進器具は、歯受入れ区画内に位置付けられて、選択された力を選択された歯に掛ける。
【0012】
[0012]さらに別の実施形態では、歯列矯正用アライナトレイを製造する方法は、患者の歯の石膏模型を鋳込み成形し、スキャニングソフトウェアシステムを使用して石膏模型をスキャンしてデジタルファイルにするステップと、デジタル模型によって表される歯をセグメント化するステップと、歯および歯列弓幅をデジタル的に測定するステップと、隣接歯間縮小処方(IPR)および所望の歯移動を使用した事例を分析し、IPR処方の妥当性を検討するステップと、処方が容認できるものである場合にIPRを行うステップと、治療計画を作り上げて通信するステップと、最終的な歯の位置を表す最終的な歯科模型を作成するため、歯の少なくとも1つを適正なアライメントに再配置するステップと、原型デジタル模型によって規定される開始点と最終的な歯科模型によって規定される終点とを含むデジタルオーバーレイ模型を作成するため、最終的な歯科模型を原型デジタル模型と重ね合わせるステップと、歯受入れ区画を各アライナ内に規定するため、オーバーレイ模型に基づいて複数の同一のアライナトレイのラピッドプロトタイプ模型を作成するステップと、真空成形機およびプラスチック熱成形シートを使用して、物理的なオーバーレイ模型の上にアライナトレイをそれぞれ真空熱成形するステップと、治療計画にしたがって選択された歯を漸増的に再配置するように、少なくとも1つのアライナトレイに少なくとも1つの推進器具をプログラミングするステップと、選択された力を選択された歯に掛けるために歯受入れ区画内に位置付けられる少なくとも1つの推進器具を、複数のアライナトレイの少なくとも1つのアライナに挿入するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]アライナトレイを製造するオーバーレイ法の一実施形態を示す流れ図である。
図2】[0014]本発明による矯正治療前の患者の歯列の模型を示す平面図である。
図3】[0015]図2の模型によって歯列が表される患者に対して処方される歯列矯正計画による最終位置または目標位置である最終的な歯の位置を表す、患者の歯列の模型を示す平面図である。
図4】[0016]図2の模型および図3の模型の両方を互いに重ね合わせ、それによって図2の模型における歯の位置と図3の模型における歯の位置との間に空間が作り出されたデジタル表現を示す平面図である。
図5】[0017]図4のデジタル重畳模型の物理的オーバーレイ模型を示す複数の図である。
図6】[0018]図5の物理的オーバーレイ模型から準備したアライナトレイの平面図である。
図7a】[0019]推進用隆起部が挿入された図6のアライナの一部分を示す拡大図である。
図7b】[0019]推進用隆起部が挿入された図6のアライナの一部分を示す拡大図である。
図7c】[0019]推進用隆起部が挿入された図6のアライナの一部分を示す拡大図である。
図8】[0020]アライナトレイに挿入されるアライナ補助具を示す図である。
図9】[0021]デジタル画像診断を使用してアライナトレイを製造するオーバーレイ法の別の実施形態を示す流れ図である。
図10】[0022]患者の歯のCAD画像を示す図である。
図11】[0023]推進用隆起部を含む図10による患者の歯のCAD画像を示す図である。
図12】[0024]基準線、中心線、ならびに二次元および三次元スプラインを含む、図10による患者の歯のCAD画像を示す図である。
図13】[0025]ディボットマーカ(divot marker)を含む図10による患者の歯のCAD画像の一区画を示す図である。
図14】[0026]アライナ補助具とも呼ばれる例示的な保定タック(retaining tack)を示す図である。
図15】[0027]1つの立体構造としてのタックおよび仮想模型を示す図である。
図16】[0028]図16a、16b、16cは、例示的な一連のタックを示す図である。
図17】[0029]図17a、17b、17cは、例示的な代替形態の一連のタックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0030]本発明による方法は複数のステップを含む。以下のステップはすべてが必須なものではなく、代案がある。例えば、本発明は、本発明の模型およびアライナを作成するのに例えばデジタル歯科模型およびソフトウェアを用いることを特徴とするが、処置は手作業で達成できることが理解されるであろう。同様に、様々な本発明の構成要素を物理的に作成する製造方法は、やはり他の製造技術を本発明の範囲内で用いることができるという理解の下、後述するような従来のラピッドプロトタイピング手法によるものであり得る。
【0015】
[0031]したがって、本発明の構成要素を用いる本発明の方法は、好ましくは、患者の歯列の石膏もしくは硬膏模型またはさらにはその従来の歯科印象を受け取る、取得する、または別の方法で準備することを含む。本発明は歯科専門家が実施できるものであり得るが、本発明は、歯科専門家と研究室など専門家の延長上にあるものとの間でともに実施されるものとして本明細書に記載される。かかる区分に関していかなる区別もなされたり暗示されたりするものではなく、本発明の本質は個々の関係者ではなく全体であることを理解されたい。歯科専門家と研究室との間の区分、および単一の人間もしくは実体による、または実際には任意の複数の実体間での本発明の実施は両方とも、限定なしに本発明の範囲内にある。
【0016】
[0032]歯列の物理的模型、印象、デジタルスキャンなどを含む、用いられるような適切な材料がすべて出荷時に同梱されていることを確保するため、受け取られると事例ごとに検査される。やはり、これは上述の分業にしたがって異なってもよく、それ自体が本発明の必須の限定ではない。例えば、研究室が印象として受け取る事例のみが鋳込み成形された石膏模型を有し、次に、各模型が個別に検査されて、その模型が完全なものであり、患者の歯列の正確な表現であることが判断される。あるいは、模型自体が上流側のソースから受け取られた場合、それがそのように検査される。歯列のデジタルスキャンは同じようにして処理される。
【0017】
[0033]図1を参照すると、100として全体が示される、歯列矯正治療用のアライナトレイを製造するためのオーバーレイ法が以下のように記載される。上述したように、患者の歯の印象が受け取られ検査される。ステップ102で、石膏模型10(図2)を印象から鋳込み成形(pour)する。ステップ104で、次に、例えば、歯科用石膏模型をスキャンするために開発された3Dスキャナシステムである、3shape A/S(以下、3shapeと呼ぶ)(Copenhagen,Denmark)製の3Shape R700などのスキャニングソフトウェアシステムを使用して、石膏模型10をスキャンしてデジタルファイルにする。ステップ106で、例えば、Ortho Analyzerソフトウェアを使用して、歯および歯列弓幅をデジタル的に測定する。ステップ108で、処方された隣接歯間縮小処方(IPR)および所望の歯の移動を使用して、患者の不正咬合を分析する。ステップ110で、ソフトウェアを、例えば3shape製のOrtho Analyzer Next Generationソフトウェアを使用して、歯の表現を手作業で区分化またはセグメント化する。
【0018】
[0034]スキャナまたはスキャンのタイプは必ずしも本発明の限定ではない。1つの有用な市販のスキャナは、例えば、DENTSPLY International(York,PA)製のOrthoPlex歯科矯正用デジタルモデリングソリューションである。OrthoPlexスキャナおよびその関連ソフトウェアは、コンピュータなどでアクセスすることができ、STLファイルとして格納される三次元(3D)デジタル模型を作成する。STLファイルは、立体リソグラフィ装置上で3D模型を作るのに必要な情報を生成するのに、立体リソグラフィソフトウェアによって使用される場合が多い従来の形式である。このファイル形式を使用することは必須ではないが、後述するように立体リソグラフィステップを使用するのが好ましいため、この形式は本発明と併用するのに有用である。
【0019】
[0035]ステップ112で、IPR処方の妥当性を検討する。次に、ステップ114で、処方が容認できるものである場合はIPRを手作業で行い、必要な変更を歯科医が承認する。ステップ116で、一組の臨床検証フォームを使用して、治療計画を作り上げて歯科医に通信する。次に、ステップ118で、最終模型12(図3)を作成するため、歯の手作業でセグメント化された表現を適正なアライメントへと物理的に移動させる。次に、最終模型12をスキャンして、最終模型12に相当する最終的な歯の位置のデジタル模型を作成してもよい。ステップ120で、最終的な歯の位置のデジタル模型を原型模型10のデジタル模型と重ね合わせて、デジタルオーバーレイ模型14(図4)を作成する。例示的な一実施形態では、デジタルオーバーレイ模型14は、専用ソフトウェアソリューションであるMaterialise 3−maticを使用して作成されてもよい。デジタルオーバーレイ模型14は、例えばMaterialise 3−maticを使用した、ラピッドプロトタイピングに適していてもよい。次に、ステップ122で、オーバーレイ構造のラピッドプロトタイプまたは物理的なオーバーレイ模型16(図5)を作成する。
【0020】
[0036]次に、物理的なオーバーレイ模型16をラピッドプロトタイピング方法によって作成する。ラピッドプロトタイピング技術は、材料を添加もしくは硬化することによって層ごとまたはポイントごとに物体を構築する、すべての技術であるものと理解すべきである(立体創成とも呼ばれる)。この種の最もよく知られている技術は、例えば、コンピュータ制御の電磁ビームを用いて、液体合成材料を備えた液溜めを層ごとに選択的に硬化させる、立体リソグラフィおよび関連技術、電磁ビームを用いて粉末粒子を焼結する、または特定のパターンにしたがって溶接する、選択的レーザ焼結、あるいは、線パターンにしたがって合成材料を溶融し積み重ねる、溶融堆積モデリングである。
【0021】
[0037]次に、ステップ124で、物理的なオーバーレイ模型16を使用して、複数の同一のアライナトレイ18(図6)を製造する。アライナの数は事例ごとに異なる。例示的な一実施形態では、アライナトレイ18は、好ましくは、例えば、Essix真空成形機およびEssix Aceプラスチック熱成形シートを使用して、物理的なオーバーレイ模型16の上に熱成形される。シートおよび熱成形機は両方とも、DENTSPLY Internationalから市販されており、熱成形プロセス自体は従来のものであって歯科分野で知られている。物理的なオーバーレイ模型16を使用してアライナトレイ18を作ることによって、上述したように、歯の移動を可能にするように作成される、患者の治療前の歯の位置から治療後の歯の位置までの空間の開けた進路が得られる。
【0022】
[0038]製造プロセスのこの時点では、アライナトレイ18は受動的であり、すなわち、アライナトレイ18は患者の口に挿入したときに歯に対して力を掛けない。元のおよび最終的な歯の位置、ならびに各歯に対する進路は、アライナの境界内にある。次に、アライナトレイ18がオーバーレイ模型16を使用して熱成形される。各アライナトレイ18は、ステップ1、2、3などとして同定される。結果として得られるアライナトレイ18は、歯の移動を誘発するために任意の単一の歯を能動的に係合するものではなく、予め選択された個々の歯を移動させることができる受動的なアライナトレイ18を生成する。予め選択された個々の歯の移動は、隆起部20(例えば、図7aを参照)などの特徴を受動的なアライナにプログラミングまたは形成して、歯に圧力を加えることによって誘発される。特徴は、例えば、いずれも参照により本明細書に組み込まれる、2001年9月25日にHilliardに対して発行された米国特許第6,293,790号、および2006年7月18日にHilliardに対して発行された米国特許第7,077,646号に開示されている、特許されたHilliard熱成形プライヤシステムを使用して形成されてもよい。
【0023】
[0039]ステップ126で、アライナトレイ18を熱成形した後、例えば、治療計画ステップによる臨床検証計画で処方されたように、同定された治療アライナトレイ18それぞれに推進用(換言すれば、押圧用)隆起部20をプログラミングする。アライナトレイ18への推進用隆起部20のプログラミングは、熱成形器具を、例えば、DENTSPLY Raintree−Essix(Sarasota,Florida)から入手可能なHilliard Thermopliers(登録商標)を使用して、研究室において各隆起部20を手作業で熱成形することによって行われてもよい。オーバーレイ模型16から熱成形されるアライナトレイ18は、Thermopliers(登録商標)を使用して、推進用隆起部20を用いて手作業で調節されてもよい。次に、手作業の推進用隆起部20を含むアライナトレイ18は、歯科専門家のもとに送られる。最終的なアライナ構造を検査した後、最終模型12を使用して最終的な保定装置を熱成形し、アライナトレイ18および最終的な保定装置が歯科医に発送される。
【0024】
[0040]物理的なオーバーレイ模型16は、別の従来技術によって完全に手作業のプロセスで作成されてもよいことが理解されるであろう。物理的なオーバーレイ模型16がいかなる手法で準備されても、結果は、互いに重ね合わされた、患者の開始時の歯の位置と、目標位置、最終位置、または終了位置との両方の表現である。元の歯の位置を表す構造と最終的な歯の位置を表す構造との間に、開けた領域または空間があることが理解されるであろう。物理的なオーバーレイ模型16のこの開けた性質により、上述のように歯を自然に移動させるとともに、物理的なオーバーレイ模型16を使用したアライナトレイ18の準備に関する以下の考察から理解されるように、歯同士の物理的接触、下にある骨の密度などを考慮することが可能になる。当然ながら、所望であれば、アライナトレイ18を直接作成するため、デジタルオーバーレイ模型14を使用して製造装置を制御することも可能であり、依然として本発明の範囲内にあるであろう。
【0025】
[0041]アライナトレイ18を物理的な模型16の上に形成した後、アライナトレイ18は、歯科用トレイの従来のやり方で除去されトリミングされてもよい。アライナトレイ18がトリミングされると、患者がアライナトレイ18を口腔に挿入し、処方された期間の間それを着用するにつれて、処方された歯科矯正による歯の移動または再配置処置を実行する形で、ある種の加力構造がアライナトレイ18に入れられる。例えば、やはりDENTSPLY International製のHilliard熱成形プライヤを好ましくは使用することによって、トレイ材料自体の歪みが作り出されて、推進用隆起部20を提供してもよい。隆起部は、処方された治療計画による各歯の所望の移動を作り出すため、予め定められた位置に置かれる。推進用隆起部20はそれぞれ、物理的なオーバーレイ模型16を使用することによって作り出されるアライナ内の空間の進路に歯を押し込む。加力構造は、追加のプラスチック製アタッチメント、ピン、ボタン、または実際には、歯科矯正学的に容認できる形で適切で選択可能な力を加えることができる、有用な任意の構造を含んでもよいことが理解されるであろう。患者の治療計画にしたがって調節された加力構造を有する、アライナトレイ18または新しいアライナトレイ(図示なし)を患者に提供することができる。
【0026】
[0042]本発明の別の実施形態では、アライナトレイ18は、上述のように準備されるが、アライナトレイ18を充填または部分的に充填するのに使用することができる流動性材料の形態の加力構造を備える。流動性材料は、所望の力を選択された単一または複数の歯に掛けて処方された治療計画を実施するように、形作るか、または選択的に固化することができる。デュロメータ定格または粘性が異なる流動性材料を提供して、患者の治療計画全体の部分または異なる部分を実現できることも可能である。同様の方式で、歯の間に空隙または空間がある場合、または場合によっては余分な空間が必要な場合、追加のまたは異なる選択された空間が引き続いて製造されたアライナトレイ18に導入されてもよいように、かかる材料またはさらには標準的な歯科印象材料で物理的なオーバーレイ模型16を覆うか、もしくは部分的に覆ってもよい。
【0027】
[0043]「Heated Orthodontic Pliers」という名称の、参照により組み込まれる米国特許第6,293,790号は、ポリマー製のシェル状アライナを修正するのに有用な一連の鋼製歯科用プライヤを開示している。Thermopliers(登録商標)は、使用の際に予め定められた温度まで加熱される手持ち型の鋼製器具類を指す。加熱されると、それらはアライナに向けられて、アライナ構造の局所的な熱軟化および熱流をもたらし、それによって様々なタイプの有用な特徴および改造を形成する。
【0028】
[0044]トルキングおよび傾斜タイプの矯正力とは対照的に、アライナを使用して回転をもたらすことはより困難である。回転を完全に矯正するアライナの能力を増大するため、歯列矯正医は、アライナの構造に小さく鋭い内向きに面する隆起部20を熱成形するように構成された一連のThermopliers(登録商標)の1つを使用する(図7aを参照)。かかる熱成形された隆起部20は、アライナの歯受入れ区画の壁に位置付けられる隆起部20を形成するため、プライヤの熟練した操作を必要とする。かかる修正されたアライナを口内の適所に設置すると、隆起部20の位置は、歯を機械的に回転させる力ベクトルを生み出すような位置になる。
【0029】
[0045]治療におけるかかる隆起部の使用を例証するため、第1の隆起部20を遠心面切端面位置に置いて歯の遠心面舌面に接触するようにし、第2の隆起部20を同じ区画の近心面唇面切端位置に形成することによって、遠心面舌面方向に回転した上顎左外側歯を回転させてもよい。治療中、かかる一対のともに働く隆起部は、この例によれば近心面舌面方向の結合した回転力を作り出すように協働する。捻転歯を完全に矯正するのに必要な矯正は、上述したような適切なThermoplierを使用することによってアライナを活性化することにより実現できる。このようにして累進的に活性化させることは、歯が反応して移動するにつれて矯正力が散逸することによる反力レベルの低減に役立つ。かかる修正はまた、一般に最も迅速な歯の移動を促進すると考えられる、再配置されている歯に対するより一定した生物学的力を維持するのに役立つ。一組のアライナトレイ18は、一般的に、上述したように一連の治療過程に対して各アライナトレイ18にプログラミングされた隆起部を備えて作られてもよい。しかし、代替実施形態では、例えば特徴を付加するか、または既存の特徴を拡大することによって、単一のアライナトレイ18が修正されてもよい。1つまたは複数の修正により、消費され廃棄される前に単一のアライナトレイ18が複数の累進的な治療過程に役立つようにすることができる。
【0030】
[0046]上述したような隆起部は、隆起部20に隣接したアライナ構造の領域に局所的に蓄積されたエネルギーを集中させるのに役立つ。内向きに突出する隆起部20は、歯の表面から離れる方向の領域でアライナ材料を外向きに屈曲させる。このように構成されると、隆起部はより広い範囲から蓄積エネルギーを集め、そのエネルギーを最も機械的に有利なポイントで歯に衝突させ、結果として矯正力を最も効率的に集中させる。
【0031】
[0047]歯が本質的にその適正位置にあり、所望の向きへのトルキングのみを必要とする別の例では、隆起部20は、舌側の切縁付近に導入されてもよく、歯冠の切縁は、唇側にあるウィンドウの逃げ角に向かうことによってゆっくりと反応することになる。
【0032】
[0048]「Orthodontic Aligner Auxiliary System」という名称の同一出願人による米国特許第6,702,575号は、アライナの有用性を拡張する他の技術を教示しており、参照により本明細書に組み込まれる。第575号特許は、別個の補助デバイスを従来のアライナの物理的構造に導入すること、ならびにそれに関連して、かかるデバイスを受け入れ保定するようにアライナを準備する方法を含む。以下は、それらデバイスをオーバーレイ法にいかに組み込むことができるか、またオーバーレイ法を使用してアライナトレイ18をいかに形成するかの説明、ならびにそれらがいかに機能するか、またかかるデバイスをアライナ構造に導入することができるように最初に講じなければならない準備段階の説明である。
【0033】
[0049]第575号特許は、戦略的に位置付けられアライナ構造に取り付けられることが意図される小さいデバイス群を導入することを含む。かかるデバイスは「アライナ補助具」と称される。かかるデバイスを導入するのに先立って、医師は、治療途中の事例の進行を評価し、例えば、また特に、所望の歯の反応が遅れている問題領域を、または治療力に反応して特定の歯が強硬に移動していない例に注目してもよい。アライナの矯正力を増幅し集中させて、矯正を向上させるため、アライナ補助具がそれらの位置に導入される。例えば、アライナの歯収容区画の壁に予め定められた直径の穴を開けた後に、タック(tack;換言すれば、留め具)30(図8を参照)として知られる補助具を導入することができる。穴の直径はタックのシャンク部分の直径よりもわずかに小さい。次に、タックの導入用のプライヤを使用して、タック30の保定用ヘッド(retentive head)を穴から飛び出させて、アライナ構造内でのタックのきつくしっかりした保定を得る。タックは、穿孔した穴の中でアライナにきつく保定される位置に飛び出す。かかる累進的にサイズ決めされたタックおよび他の補助デバイスは、アライナの歯位置矯正力を増大し拡張するためにそれらを使用する歯列矯正医に対して市販されている。
【0034】
[0050]タック30などの補助デバイスを導入して歯移動力の送達を実現することは、上述した隆起部20を導入することによって実現される効果に類似している。しかし、個別のタックを使用することで、図8に示され第575号特許に記載されているような累進的に長くなる一連の連続的なタックを使用することによって、歯に送達される力を時間とともに累進的に調整することが可能になる。隆起部に関して上述したように、一連のアライナトレイ18が生成されてもよい。タックに隣接したアライナ構造に蓄積されたエネルギーが歯の移動によって消費されるにつれて、中間の長さのタックが消費され、除去され、廃棄された後、3つのタックのうち最も長いものを備えたアライナを導入することができる。
【0035】
[0051]デジタルオーバーレイ法
次に図9を参照すると、本発明の別の態様では、以下の方法を使用して、矯正治療用アライナを製造するオーバーレイ法がデジタル的に実施されてもよい。最初に、患者の歯の印象を受け取り検査する。ステップ202で、石膏模型10を印象から鋳込み成形する。ステップ204で、例えば、歯科用石膏模型をスキャンするように開発された3Dスキャナシステムである、3shape製の3Shape R700などのスキャニングソフトウェアシステムを使用して、石膏模型をスキャンして、患者の不正咬合歯列における歯の元の位置を表すデジタル形式にする。ステップ206で、例えばOrtho Analyzerソフトウェアを使用して、歯および歯列弓幅をデジタル的に測定する。次に、ステップ208で、処方された隣接歯間縮小処方(IPR)および所望の歯の移動を使用して、患者の不正咬合を分析する。ステップ210で、ソフトウェアを、例えば3shape製のOrtho Analyzer Next Generationソフトウェアを使用して、歯の表現をデジタル的に区分化する。代替実施形態では、デジタルファイルは、患者の歯列の口腔内スキャンから直接作成されて、石膏模型10を作成しスキャンする必要なしに元の不正咬合歯列をデジタル形式で提供してもよい。
【0036】
[0052]方法は、ステップ210からステップ212に進み、IPR処方の妥当性を検討する。ステップ214で、処方が容認できるものである場合、IPRをデジタル的に行い、必要な変更を歯科医が承認する。ステップ216で、一連の臨床検証フォームを使用して、治療計画を作り上げて歯科医に通信する。ステップ218で、歯のセグメント化した表現を適正アライメントへとデジタル的に移動させて、最終模型12を作成する。次に、最終模型12をスキャンして、最終的な歯の位置のデジタル模型を作成する。ステップ220で、最終的な歯の位置のデジタル模型を原型模型と重ね合わせて、デジタルオーバーレイ模型14を作成する。デジタルオーバーレイ模型14は、例えばMaterialise 3−maticを使用した、ラピッドプロトタイピングに適していてもよい。ステップ222で、オーバーレイ構成のラピッドプロトタイプまたは物理的なオーバーレイ模型16を作成する。次に、物理的なオーバーレイ模型16をラピッドプロトタイピング方法によって作成する。
【0037】
[0053]次に、ステップ224で、例えば物理的なオーバーレイ模型16を使用して、複数の同一のアライナトレイ18を製造する。物理的なオーバーレイ模型16は、アライナトレイ18を作成するために使用される。アライナの数は事例ごとに異なる。例示的な一実施形態では、アライナトレイ18は、好ましくは、例えばEssix真空成形機およびEssix Aceプラスチック熱成形シートを使用して、物理的な模型16の上に熱成形される。手作業でのオーバーレイ法に関して上述したように、物理的なオーバーレイ模型16を使用してアライナトレイ18を作ることで、上述したような歯の移動を可能にするように作り出される、患者の治療前の歯の位置から治療後の歯の位置までの空間の開けた進路が得られる。
【0038】
[0054]製造プロセスでのこの時点では、アライナトレイ18は受動的であり、すなわち、アライナトレイ18は患者の口に挿入したときに歯に対して力を掛けない。元のおよび最終的な歯の位置、ならびに各歯に対する進路は、アライナの境界内にある。次に、アライナトレイ18がオーバーレイ模型16を使用して熱成形される。各アライナトレイ18は、ステップ1、2、3などとして同定される。結果として得られるアライナトレイ18は、歯の移動を誘発するために任意の単一の歯を能動的に係合するものではなく、予め選択された個々の歯を移動させることができる受動的なアライナトレイ18を生成する。予め選択された個々の歯の移動は、隆起部20などの特徴を受動的なアライナにプログラミングまたは形成して、歯に圧力を加えることによって誘発される(例えば、図7a〜7cを参照)。特徴は、特許されたHilliard熱成形プライヤシステムを使用して形成されてもよい。
【0039】
[0055]アライナトレイ18を熱成形した後、ステップ226で、手作業のオーバーレイ法に関して上述したように、推進用隆起部20を同定された治療用アライナトレイ18それぞれにプログラミングする。
【0040】
[0056]アライナトレイ18への推進用隆起部20のプログラミングは、熱成形器具を、例えば、DENTSPLY Raintree−Essix(Sarasota,Florida)製のHilliard Thermopliers(登録商標)を使用して、研究室において各隆起部20を手作業で熱成形することによって行われてもよい。オーバーレイ模型16から熱成形されるアライナトレイ18は、Thermopliers(登録商標)を使用して、推進用隆起部20を用いて手作業で調節されてもよい。次に、手作業の推進用隆起部20を含むアライナトレイ18は、歯科専門家のもとに送られる。最終的なアライナ構造を検査した後、最終模型12を使用して最終的な保定装置を熱成形し、次にアライナトレイ18および最終的な保定装置が歯科医に発送される。
【0041】
[0057]一実施形態では、患者の歯列の石膏模型をスキャンし、デジタルコンピュータ支援設計(CAD)ファイル形式で格納してもよい。次に、患者の模型にスキャニングプロセスを施し、上顎および下顎歯列弓に対して結果として得られるデータをデジタル形式で格納して、患者の歯の解剖学的形状の少なくとも一部分のCAD模型を作成する。実際の物理的な物体を三次元画像診断向けにデジタルコードに変換する最も頻繁に使用される手段、つまりレーザスキャニング、ならびに他の方法は、「ポイントクラウド」と呼ばれるものを最初に生み出す。ソフトウェアは、実際の物体の特徴と関連付けられることが分かっているポイントの位置を、物体を複数の角度からスキャンしながら得られた他のスキャンで位置決めされた同じポイントとともに有理化することを目指す。異なる眺望がきく角度(vantage angles)からの複数のスキャンから得たポイントのすべてを重複させ解釈することで、ソフトウェアが、場合によっては50万の個別のポイントのクラウドによって表される複雑な表面を作成することが可能になる。ポイントはそれぞれ、患者の歯の物理的な石膏模型上における予め定められた原点に対する三次元空間での特定座標を割り当てられる。ポイントはすべて、理論上は撮像されている部分の表面上にあり、ポイントをすべて見ることによって、元の部分の大まかな視覚的イメージをコンピュータモニタ上で視覚的に見ることができることを理解されたい。
【0042】
[0058]CAD技術者が利用可能な他のソフトウェアを使用して、ポイントクラウドをさらに処理して、立体モデリングCADソフトウェアを使用して後で操作し修正することができる真の立体模型として知られる形にすることができる。図10は、結果として得られる患者の歯のCAD画像15の一例である。しかし、歯列矯正患者の事例を処理する際にCAD技術者が達成する必要がある動作のいくつかは、初期のポイントクラウド段階で行うことができる。
【0043】
[0059]本発明にしたがってポイントクラウドをいかに操作できるかの一例として、市販のソフトウェアによってCAD技術者はポイントの領域を同定することができる。かかる領域内部のポイントは、領域外部の影響を受けないポイントとは異なる性質を割り当てられる。例えば、CAD技術者は、取り込まれた一連の模型から特定の歯の咬合領域を表すポイントの領域を同定してもよい。ポイントのその領域は、例えば、内向きに延在する隆起部20または外向きに延在するバブルとほぼ同じサイズであってもよい。同定された領域内のポイントをいかに動的に連係させるかに影響を及ぼす従来のアルゴリズムにより、技術者が領域の中心付近に位置する任意の1つのポイントを把握することができ、そのポイントは次にマスタポイントと見なされる。例えば、技術者は、デジタル化タブレット上のデジタル化パック(digitizing puck)を操作することによって、またはマウスを用いてこれを達成するであろう。技術者はそのマスタポイントを引っ張るであろう。引っ張られると、同定された領域内にある周囲の連係させたポイントはすべて、マスタポイントからの相対距離に比例して、引っ張られるマスタポイントとともにある程度移動することになる。例えば、マスタポイントに比較的近いポイントは最も多く移動することになり、マスタポイントからより離れたポイントはわずかだけ移動することになる。この作用により、同定された領域内のポイントはすべてある程度移動することになり、その後、領域内部のポイントは内向きに移動させられて、図11に示されるような推進用隆起部20の全体形状および外観の形となる。
【0044】
[0060]同様に、外向きに延在するバブルは、技術者がマスタポイントを押すのではなく引くことによって形成することができる。やはり、領域内のポイントをいかに動的に連係させるかの論理によって決まるように、領域内のポイントはすべてある程度付いて動く。
【0045】
[0061]代替例として、手持ち型のスキャニングワンド(例えば、Orometrix.RTM.system)を歯列矯正医の診察室で使用して、患者の口腔の解剖学的形状を直接スキャンすることができる。結果として得られるデジタルデータは、次に、歯列矯正サービスセンタに電子的に伝送される。同様に、上述のスキャニング方法を、一連の歯科印象から直接凹状にくぼんだ溝(concave negative trough)をスキャンすることを対象とすることが可能である。
【0046】
[0062]Thermopliers(登録商標)などを用いて行うことができる、直接的なアライナ改造の様々な一連のタイプ、および一連の別個の補助デバイスによって得られる多くの程度の活性化により、元の幾何学形状と最終的な幾何学形状を混合して組み合わせたオーバーレイアライナトレイ18を使用することで累進的な歯の移動が実現されてもよい。単一のオーバーレイアライナトレイ18の複数のアライナトレイ18を、次に、上述したように、隆起部、タック、挿入物などを含むように順次的にプログラミングすることができる。例えば、直接歯に接触する短い、中間の、および長いタック30(図16a、16b、および16c)が使用されてもよく、あるいは順次的な弾性を有する他のデバイス(図17a、17b、および17c)が使用されてもよい。圧開ねじで可能であるように、様々なねじ式デバイスを累進的に活性化させてもよい。歯列矯正用ハードウェアで一般的であるように、カンチレバーアームなどのステンレス鋼または金属製の補助具を時間とともに累進的に活性化させることができる。このように、本発明の方法によって作られるアライナトレイ18を、歯列矯正治療において「累進的」であると見なすことができる。
【0047】
[0063]技術者はコンピュータモニタ上で見られる患者の模型を分析するので、技術者は、治療の開始時における不正咬合または部分的に治療済みの咬合を表す画像を見ることになる。図10に示されるように、模型を使用して患者の口腔の解剖学的形状の真の三次元画像を生成することができるので、技術者は、厳重に検査するために歯のトポロジを動的に回転させることができる。技術者は、口の裏側、または骨および組織によって閉塞された眺望がきくポイントから見るなど、生きた患者では解剖学的に不可能であろう眺望がきくポイントを含む、文字通りあらゆる角度または眺望がきくポイントから仮想歯を見渡すことができる。
【0048】
[0064]模型は仮想三次元CAD空間に存在するので、技術者は、事例を評価し測定を行って、上顎対下顎の歯列弓長さ、歯列弓幅、犬歯間幅、歯列弓形態、ならびに離開/過蓋咬合の程度、臼歯の関係、水平被蓋、スピーの湾曲、および対称性など、治療に対する様々な基準を定量化することができる。技術者はまた、すべて担当医の指示/処方を考慮して、乳歯、脱落歯、欠損歯、および埋状歯に注意し、統計的な解剖学的値を調べることができる。例えば、技術者がCADソフトウェアを使用して、図12に示されるように、任意の数の基準線、中心線などを描画することができる。CADソフトウェアを用いて任意の立体模型を寸法決めできるのと同じく、歯列を調べることができる。図12に示されるように、二次元および三次元スプラインを取り込まれた表面の特徴の間に一列に並べてもよい。技術者は、調査および意思決定のため、特定の特徴にズームインし拡大してもよい。技術者が指定した基準線から、または解剖学的形状の他の特徴に対して、任意の数の特徴を寸法決めしてもよい。一般に、測定および調査のこのプロセスに基づいて、技術者は、確立された解剖学的歯科基準、または年齢、性別、および民族的属性が同じ患者に見られる一般的なトルク、先端の突出、および歯列弓形態の値など、他の基準の既知の統計データを後で参照し使用してもよい。これらの活動はすべて、治療目的を実現する多数のアライナおよびアライナ補助具を設計する準備の際の最適な意思決定に到達するために取り組まれる。
【0049】
[0065]CAD技術者は、自由に使える技術およびデジタルツールをすべて活用して、併用して歯の移動を活性化させるのに役立つ様々な隆起部、バブル、ウィンドウ、活性化デバイス用の様々な穴、スタンドオフ、およびアウトセットランド(outset land)などをどこに形成するのが最良であるか、ならびに上述の種々のアライナ補助具30をどこに位置決めするのが最適であるかなどを決めることができる。技術者は、分析ツール、測定ツール、および調査ツールを手近に有する。したがって、技術者は、内向きに延在する隆起部などのアライナの特徴をどこに位置決めするかを決定することができる。様々なタイプのアライナ補助具30は、CAD技術者が最適に理想的に位置決めすることもできる。
【0050】
[0066]例えば、技術者は、直立することが必要な唇側に傾斜した(labially−flaired)前歯を同定してもよい。吸引(suck−down)アライナによるかかる矯正を達成するため、技術者は、その歯に対する正確な位置にタックを位置決めすることを選んでもよい。技術者は、直立させるためにタックの機械的利点を最大限にする理想的な位置を決定し、そのポイントに正確に位置インジケータ(例えば、ディボットマーカ32)が作成される。それについて、一連のアライナ補助具全体のためにアライナを穴開けする最適な位置は、手作業でかかる分析を行うと同時に、実際の患者を扱うのに伴う他の懸念事項および邪魔なものすべてに対処しようとする医師ではなく、CAD技術者が最良に決定することができる。
【0051】
[0067]一般に、技術者は、CAD模型を操作して、患者の歯列矯正治療中に順次的に使用されるアライナ補助具を収容する特徴を備えた一連の累進的なアライナを作成する。CADシステムを用いて作業をする技術者は、「スキャンされた」咬合と所望の最終的な咬合との間の漸増的であるが累進的な歯の移動を表す、複数の仮想模型を作成することができる。それに加えて、技術者は、アライナ補助具を用いるべき治療の特定の段階の終了時に理想的であると見なされるような所望の位置へと、特定の歯を治療目的にしたがって移動させるため、CADシステムを使用することができる。CAD技術者によって達成される移動は、トルク、先端の突出、回転、全体の移動、ならびにある程度の圧下および挺出に関する個々の歯の矯正を含むことができる。
【0052】
[0068]例えば、技術者は、コンピュータモニタおよび技術者の視野が分析されている単一の歯のみに適応するように、細かい詳細をズームインすることができる。ポップイン(pop−in)タックなどのアライナ補助具の最適な位置を確立するため、図13に示されるように、ディボットマーカ32を技術者が模型に導入することができる。ディボットマーカ32は、図11の内向きに延在する推進用隆起部20に非常に類似しているが、楕円形ではなく球状であり、直径がはるかに小さい。ディボットマーカ32を形成するため、技術者は、検査中の歯に対して正確な正しい位置にあるポイントクラウドの小さな円形領域を同定する。技術者は、領域の中心付近にあるマスタポイントを選択して押し、すべての連係するポイントがある程度それに追随する。結果として得られるのは、位置異常の歯に対して穴を導入する位置を示す視覚的マーカとして役立つように、歯列弓の周りに必要に応じてあちこちに位置する一連の離散的で鋭い形状の陥凹部である。
【0053】
[0069]別のポイントクラウドに基づく動作は、アライナトレイ18全体を口内の適所で保持するのに役立つ、図15に記載されるような保定タック30の位置決めである。要約すると、技術者が位置決めしたディボットマーカは、上述した様々なタイプのアライナ補助具を導入するためにプライヤで形成される穴を後で導入する位置を印付けするのに役立つ。技術者がアライナトレイ18を複数の区画に分けることを決定した場合、切り目または切り込みの位置を印付けするのに一連のディボットを使用することができる。
【0054】
[0070]ウィンドウまたはアウトセットランドを備えたアライナを形成するための模型の準備には、隆起部、バブル、およびディボットマーカを形成するのに使用されるのとは異なる方法が求められる。ウィンドウは、通常、歯の歯冠の一部分の縁部、または歯の歯冠全体に追随する平面形態または輪郭を有する。かかる形状は、フットボール形よりもデカルト形状に近い隆起部、バブル、および丸いディボットマーカであり、一般的により大きい。それでもなお、本発明の方法を用いるCAD技術者は、ポイントクラウドのうち関与するポイントの領域の周りに多角形の境界を形成することができ、やはりその境界内部のポイントすべての連係を含む領域が作り出される。しかし、別のポイント連係アルゴリズムを使用して、CAD技術者はマスタポイントを引っ張ることができ、指定された領域内のポイントクラウドの連係ポイントすべてが均等にそれに追随する。ポイント連係の論理から、歯表面から外向きに立ち上がる領域全体が得られる。かかる特徴は、後で、実際に形成されたアライナに存在することになり、物理的テンプレートとして役立つか、または医師もしくは研究室の技術者がアライナ材料を切り取ってウィンドウを形成する助けとなる。それはアライナに直接形成される隆起したプラトーなので、医師は、技術者が決定したどの材料を除去する必要があったかを簡単に見ることができる。
【0055】
[0071]上述したように、それらの内向きに延在する特徴が歯に接触しないことを確保するため、ポップインする弾性フックおよび他のアライナ補助具をアウトセットランドに導入することができる。仮想模型上にアウトセットランドを確立する際、技術者は、ポイントすべてが引っ張られたマスタポイントと均等に付いてくるウィンドウの形状および位置を確立するのに使用されるのと同じポイント連係アルゴリズムを使用する。
【0056】
[0072]図14に示されるように、ポイントの円形領域を同定し、それらのポイントすべてを歯の表面から垂直に離れる方向で外向きに引っ張ることによって、丸いアウトセット34が形成されている。理解できるように、アライナがかかるパターンの上で吸引されると、対応するアウトセットランドがアライナに形成されることになる。アライナに形成されると、次に、Raintree−Essix(Metairie,LA)から入手可能なカタログ番号82730などの専用のプライヤを使用して、アウトセットの平坦な頂部の中心に穴を開けることができる。穴が開けられると、一連のポップインアライナ補助具の任意の1つを必要に応じて導入することができる。
【0057】
[0073]上述したように、タックは、短い、中間、長いなどと特徴付けられる累進的な長さで提供されてもよい。かかる一連のものでは、短いタックと中間のタックとの間、次に長いタックまでの長さの増加は、約0.75mmであってもよい。例えば、歯がわずかな矯正のみを必要とする、または必要な矯正の正確な量が、短いもの、中間のもの、および長いものの間で0.75mmの増分に収まる事例ではCAD技術者は、精密に制御した高さの目立たないアウトセットランドを構築してもよい。例えば、非常に短いアウトセットランドが0.37mmの高さで形成され、中間のタックがアウトセットランドに導入される場合、下にある歯に加えられる力は、短いタックと中間のタックとの間のほぼ中間にあるタックと均等になる。このように、予め定められた力を生成する寸法のデバイスは、それらを選択された高さのアウトセットランドに取り付けることによって、必要に応じてさらに校正されてもよい。
【0058】
[0074]治療の終わりに最終的な審美的位置付けを得るのに必要な仕上げの矯正など、歯の非常に精密に制御された矯正的移動に役立つ本発明の態様について続けるが、以下の方法は、1mm程度の望ましくない舌側への傾斜をもつ下顎切歯の例を通して記載する。CAD技術者は、ディボット、または隆起部20と関連するくぼみに類似した、ただしタックのノーズ部を収容するようにサイズおよび形状が決められた仮想のくぼみを形成することができる。かかる幾何学的に離散的なくぼみは、仮想歯の舌側でその切歯縁部に形成される。CAD技術者は、必要な矯正量に正確に対応する深さで、この事例では1mmの深さで、舌側に傾斜した下顎切歯にくぼみを形成する。くぼみを形成した後、CAD技術者は、中間のタックの仮想模型を仮想空間に取り込み、それをくぼみに近接するように移動させる。「噛合(mating)」として知られるCADステップを使用して、CAD技術者は、図15に示されるように、タック30および仮想模型が1つの立体構造となるように、タックのノーズ部をくぼみと密接に接触させる。
【0059】
[0075]吸引パターンがこの仮想模型から生み出され、次にアライナがその上に吸引されると、結果として得られるアライナは、タックの露出部分が基準の下顎切歯から舌側に突き出した、望ましくなく舌側に向いた歯の隣接したアウトセットの特徴を呈するようになる。アライナを(特にそのキャビティを内側から)見ると、対象の下顎切歯から舌側に延在する舌側アウトセットの特徴が、タック30の露出部分に正確に対応する内寸を有することが分かるであろう。アライナ材料の弾力性により、このアウトセットの特徴へのタックの強制的な配置が可能になる。次に、タックは陥凹部内で保持され保定される。
【0060】
[0076]アライナを準備する際にCAD技術者が実行することができる、様々な作業および動作の上述の説明は、ほとんどが最初のデジタルポイントクラウドの操作を伴っていた。CAD技術者が取り組む必要があってもよい他のタイプの動作は、ポイントクラウドをさらに処理した後に最良に達成することができる。かかる動作は、CADソフトウェアを使用して精密な特徴を仮想模型上に構築することを伴うので、かかるプロセスの第1のステップは、ポイントクラウドデータを表面に変換し、次に立体模型として知られるものに変換することである。生のポイントクラウドデータを複雑な生物学的表面に変換するのに適したソフトウェアは、次に挙げる供給元からこの目的で入手可能である。Raindrop Geomagic,Inc.P.O.Box 12219 Research Triangle Park,N.C.27709、Lightware Enterprises,Inc.2396 Innovation Way Rochester,N.Y.14624、およびParaform,Inc.3052 Bunker Hill,Santa Clara,Calf.95054。ポイントクラウドが表面に変換されれば、ソフトウェアをさらに使用して表面を閉止する。ここでの「閉止」は、歯と歯茎の小さな部分とがほぼ蹄鉄型の形状を形成するものと理解すべきであることを示す。歯茎および歯を規定する表面は、数学的意味において無限に薄い。CAD用語では、「軽量」と呼ばれる。例えば、軽量の蹄鉄型歯科模型をその裏面から見た場合、単なる中空のシェルに見える。ソフトウェアは、表面を閉止する際、実質的にその上に底部を置く。この段階では、まだ無限に薄い表面(すなわち、軽量)であって、ただしその上に底部を有するものと見なされてもよく、「水密」として知られる品質を呈する。
【0061】
[0077]SolidWorks Corporation,300 Baker Avenue,Concord,Mass.01742、およびPTC(Pro−Engineer),140 Kendrick Street,Needham,Mass.02494から入手可能であるような、立体モデリングタイプのCADソフトウェアは、表面を軽量かつ水密にし、それらを立体モデリングCADソフトウェアによって通常処理されるタイプの標準的な十分に稠密なまたは十分に立体の模型に変換する能力を有する。かかる立体に変換されれば、結果として得られる歯科模型を従来のやり方でCAD環境において操作することができる。
【0062】
[0078]次に、CAD技術者が本発明の方法によって取り組む操作の1つは、仮想立体CAD模型から直接派生する構造の導入である。例えば、牽引により保定された(draft−retained)介在デバイスに必要とされる構造が構築されてもよい。アライナ補助具の2つの基本的なタイプを上述した。アライナ補助具の1つの群をポップインとして記載し、第2の群を、アウトセットランドの望ましくない歯への接触を防ぐためにそれらに導入しなければならないデバイスとして記載した。「牽引により保定されたデバイス」と呼ばれるアライナ補助具の第3の群も、本発明に適応させることができる。牽引により保定されたデバイスを付着させるためのCAD模型の修正は、好ましくは、ポイントクラウドをCAD操作可能な立体模型に変換した後に行われる。立体模型のCAD操作は精密であり、ポイントクラウドの引っ張りまたは推進を伴う操作よりも一般に高度化されている。
【0063】
[0079]上述したように、本出願の範囲内にある実施形態は、格納された機械実行命令もしくはデータ構造を保持するまたは有する機械可読媒体を備えるプログラム製品を含む。かかる機械可読媒体は、汎用もしくは専用コンピュータ、またはプロセッサを有する他の機械がアクセスできる、任意の利用可能な媒体であることができる。一例として、かかる機械可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、または他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、もしくは他の磁気記憶装置、または機械実行命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを保持もしくは格納するのに使用することができ、かつ汎用もしくは専用コンピュータ、またはプロセッサを有する他の機械がアクセスすることができる他の任意の媒体を含むことができる。情報をネットワークまたは他の通信接続(有線、無線、もしくは有線や無線の組み合わせのいずれか)によって機械に転送または提供すると、機械は接続を機械可読媒体として適切に見なす。したがって、かかる任意の接続は適切に機械可読媒体と呼ばれる。上述のものの組み合わせも機械可読媒体の範囲に含まれる。機械実行命令は、例えば、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または専用処理装置に特定の機能もしくは機能群を行わせる命令およびデータを含む。
【0064】
[0080]本明細書の図面は、方法ステップの特定の順序を示すことがあるが、それらのステップの順序は図示されるものと異なってもよいものと理解されることに留意されたい。また、2つ以上のステップが同時にまたは部分的に並行して行われてもよい。かかる変形は、選択されるソフトウェアおよびハードウェアシステムに応じて、かつ設計者の選択に応じて決まる。かかる変形はすべて本出願の範囲内にあることが理解される。同様に、様々な接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、および決定ステップを達成するための、規則に基づく論理および他の論理を有する標準的なプログラミング技術によって、ソフトウェア実装を達成することができる。
【0065】
[0081]したがって、本発明は、歯列矯正的に歯を整列させるための新規かつ有用な方法および装置を提供することが理解されるであろう。方法ステップ、および機器、構成要素、ソフトウェアなどは、当然ながら変更または変形させることができ、依然として本発明の範囲内にあることができる。本発明を、本明細書に記載され図面に示されるものとして例示してきたが、本発明の実際の範囲は添付の請求項によってのみ限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16(a)】
図16(b)】
図16(c)】
図17(a)】
図17(b)】
図17(c)】