【実施例】
【0030】
本発明を下記の実施例および比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
【0031】
1.接合体の評価方法
〈経糸方向耐熱クリープ性〉
2枚のターポリンのヨコ方向(緯糸方向)の端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、8cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅8cmをタテ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を18片採取し、うち9片を耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して50℃×40kgf(392N)荷重(条件1)、55℃×40kgf(392N)荷重(条件2)、60℃×40kgf(392N)荷重(条件3)の3条件で経糸方向の耐熱クリープ性を24時間評価した。
【0032】
〈緯糸方向耐熱クリープ性〉
2枚のターポリンのタテ方向(経糸方向)の端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、8cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅8cmをヨコ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を18片採取し、うち9片を耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して50℃×40kgf(392N)荷重(条件1)、55℃×40kgf(392N)荷重(条件2)、60℃×40kgf(392N)荷重(条件3)の3条件で緯糸方向の耐熱クリープ性を24時間評価した。
【0033】
〈評価の基準〉
1 :24時間経過後、接合部に異変や異常なく良好。
2 :24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した。破壊した時間(単位:hr)を記録し表1〜2の<>内に示した。
3 :1時間以内に接合部が破壊し、試験片が分断した。破壊した時間(単位:hr)を記録し表1〜2の<>内に示した。
2.本体の引裂強度
JIS L1096 シングルタング法により測定した。以下の基準で評価した。
1 :240N以上
2 :240N未満
3.厚さ
JIS L1096により厚さを測定した。
4.質量
JIS L1096により単位面積当たりの質量を測定した。
【0034】
[実施例1]
<繊維性基布1>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸にフィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布1として用いた。この繊維性基布1の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。この繊維性基布1の両面上に、下記配合1のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物による厚さ0.3mmのカレンダー成形フィルムを150℃で熱ラミネートして、部分嵩高合撚糸表面のルーズな交絡嵩高部をアンカーとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物フィルムと一体化すると同時に、繊維性基布1の空隙部14.3%を介在する表裏フィルム同士のブリッジ積層を行い、表裏に厚さ0.3mmの熱可塑性樹脂層を形成し、厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0035】
<配合1>エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂
(酢酸ビニル含有率20質量%) 100質量部
シリカ 5質量部
オレフィン用着色剤(白顔料) 1質量部
オレフィン用着色剤(青顔料) 2質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.2質量部
【0036】
[実施例2]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布2に変更した。
<繊維性基布2>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群の一部および緯糸群の一部に用い、他の経糸群および他の緯糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条とし、経糸群および緯糸群の構成を、部分嵩高合撚糸と直線状マルチフィラメント糸条との1本交互配置とした。この混合経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また混合緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布2として用いた。この繊維性基布2の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布2に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布3に変更した。
<繊維性基布3>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/mで三子撚りした部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布3として用いた。この繊維性基布1の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布3に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例4]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布4に変更した。
<繊維性基布4>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/mで三子撚りした部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群の一部および緯糸群の一部に用い、他の経糸群および他の緯糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条とし、経糸群および緯糸群の構成を、部分嵩高合撚糸と直線状マルチフィラメント糸条との1本交互配置とした。この混合経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また混合緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布4として用いた。この繊維性基布2の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布4に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布5に変更した。
<繊維性基布5>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/mで合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)2:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間19本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間20本の織組織とする平織物を繊維性基布5として用いた。この繊維性基布1の質量は140g/m
2、空隙率(目抜け)は13.2%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布5に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.75mm、質量670g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例6]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布6に変更した。
<繊維性基布6>
糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/mで合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:2)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間19本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間20本の織組織とする平織物を繊維性基布6として用いた。この繊維性基布6の質量は140g/m
2、空隙率(目抜け)は13.2%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布6に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.75mm、質量670g/m
2のターポリンを得た。結果を表1に示す。
実施例1のターポリン2枚の端部を重ね合わせて高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。実施例2〜6のターポリンについても実施例1同様にターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。
【0041】
[比較例1]
実施例1の繊維性基布1を構成する経糸群(2.54cm(1インチ)間16本)および緯糸群(2.54cm(1インチ)間16本)をすべて糸条総繊度1000デニール(1111dtex)のポリエステル繊維(フィラメント数192本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にZ撚50T/m撚糸に置換した繊維性基布7を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。このようなターポリンは産業資材として汎用のものである。この繊維性基布7の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0042】
[比較例2]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布8に変更した。
<繊維性基布8>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した糸を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布8として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。この繊維性基布8の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0043】
[比較例3]
実施例1の繊維性基布1を構成する経糸群(2.54cm(1インチ)間16本)および緯糸群(2.54cm(1インチ)間16本)をすべて糸条総繊度1000デニール(1111dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数192本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚50T/mを施したタスラン嵩高状マルチフィラメント糸条に置換した繊維性基布9を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。この繊維性基布9の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0044】
[比較例4]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布10に変更した。
<繊維性基布10>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した糸を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布10として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。この繊維性基布10の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0045】
[比較例5]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布11に変更した。
<繊維性基布11>
糸条総繊度750デニール(833dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数144本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)3:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布11として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。この繊維性基布11の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0046】
[比較例6]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布12に変更した。
<繊維性基布12>
糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度750デニール(833dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数144本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:3)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布12として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/m
2のターポリンを得た。この繊維性基布12の質量は150g/m
2、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0047】
比較例1のターポリン2枚の端部を重ね合わせて高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。比較例2〜6のターポリンについても比較例1同様にターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。
比較例1と2のターポリンはタスラン嵩高マルチフィラメント成分を全く含まない繊維性基布7と8を使用したため、得られたターポリン接合体は耐熱クリープ性に劣るものであった。比較例3と4のターポリンは直線状マルチフィラメント成分を全く含まない繊維性基布9と10を使用したため、得られたターポリン本体は引裂強度に劣るものであった。比較例5のターポリンは直線状マルチフィラメント成分量が少ない繊維性基布11(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)3:1)を使用したため、得られたターポリン本体は引裂強度に劣るものであった。また比較例6のターポリンは嵩高状マルチフィラメント成分量が少ない繊維性基布12(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:3)を使用したため、得られたターポリン接合体は耐熱クリープ性に劣るものであった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】