特許第6050129号(P6050129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050129ターポリンおよびそれから形成されたフレキシブルコンテナバッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050129
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ターポリンおよびそれから形成されたフレキシブルコンテナバッグ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20161212BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20161212BHJP
   D03D 15/00 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 30/04 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20161212BHJP
   B65D 88/22 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B5/02 C
   D03D15/00 D
   D03D15/00 C
   B65D30/04
   B65D65/02 E
   B65D88/22 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-11027(P2013-11027)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141023(P2014-141023A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(72)【発明者】
【氏名】本上 健
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 諭司
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】山地 貴宏
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/067053(WO,A1)
【文献】 特開2013−001027(JP,A)
【文献】 特開2013−031929(JP,A)
【文献】 特開2004−225227(JP,A)
【文献】 実公昭46−000942(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D03D 1/00−27/18
B65D 30/04
B65D 65/02
B65D 88/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性基布およびその両面に積層された熱可塑性樹脂層を含むターポリンであって、繊維性基布は、経糸群と緯糸群とにより構成される織編物であり、経糸群と緯糸群の少なくとも一方は、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを糸条総繊度比率(前者:後者)1:2〜2:1の範囲で含む部分嵩高合撚糸を、6〜39本/2.54cmの配置で含むことを特徴とするターポリン。
【請求項2】
部分嵩高合撚糸が、双糸または三子撚糸のいずれかで、撚数10〜100T/mの範囲である請求項1に記載のターポリン。
【請求項3】
繊維性基布中に部分嵩高合撚糸が、1本交互または2本引揃えて交互で配置されている請求項1または2に記載のターポリン。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項に記載のターポリンを、重ね合わせ融着接合して形成されたフレキシブルコンテナバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルコンテナバッグ、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、フレキシブル水槽などに用いられるターポリンに関する。さらに詳しくは、本発明は、ターポリン同士の熱融着接合が可能であり、ターポリン本体の引裂強度やクリープ性(応力緩和性)を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性(加温時の応力緩和性)に優れるターポリンと、それによって得られるフレキシブルコンテナバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルコンテナバッグ、中大型テント、日除けテント、テント倉庫などの幕構造物に用いる産業資材シートには、繊維織物の表面を熱可塑性樹脂による防水層で被覆したターポリンが使用されている。これらの幕構造物は複数のターポリンのパーツを繋ぎ合わせ、各々端部同士を重ね合わせた状態で熱溶着することで形成される。この接合部分においては、互いのターポリンに含む繊維織物同士が一体化しておらず、熱可塑性樹脂による防水層のみで接合一体化しているため、接合部の強度は本質的にターポリン本体の強度よりも劣っている。特に、樹脂原料製造工場では製造直後の樹脂ペレットをフレキシブルコンテナバッグに充填する工程において、樹脂ペレットの蓄熱により、防水層の熱可塑性樹脂が軟化することで接合部が破壊し易い状態にあり、コンテナバッグを吊り上げた時にコンテナバッグ底部に掛かる荷重により底部接合が破壊して樹脂ペレットが撒き散ることがあった。
このような高温環境でのターポリン幕構造物の接合部の破壊を防止する手段として、熱可塑性樹脂層と繊維織物との接着性改良や、熱可塑性樹脂層の耐熱性改良などが提案されている。
例えば、接着性改良として、熱可塑性樹脂層に対するアンカー(投錨)効果を目的として、フィラメント糸と繊維長の短いステープル糸とを混撚りした撚合糸で形成した繊維基布の少なくとも一方の面に被覆する被覆材とで形成したターポリンが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また経糸に短繊維紡績糸条を含み、緯糸にマルチフィラメント単糸を含む交織織物、または経糸に短繊維紡績糸条を含み、緯糸にマルチフィラメント単糸を短繊維で被覆してなるコアスパン糸条を含む交織織物を用いることで経緯方向のクリープバランス性を得たテント構造物用防水性積層膜材(特許文献2)が提案されている。
また、ポリエステルマルチフィラメントのタスラン糸の撚糸からなる織編物を熱可塑性樹脂で被覆してなる積層体製品の縫製裁断面などから雨水などが毛細管現象により侵入し、一緒に侵入した汚れやバクテリア、カビなどの菌類によりシミが発生して美観を失うことを防止した積層体が提案されている(例えば、特許文献3)。
特許文献1に記載のターポリンは、長繊維にステープル糸を混撚りすることで繊維織物表面にステープル糸の起毛を設け、この起毛に被覆材の溶融部分が入り込んでステープル糸と絡み合うことでアンカーを得ようとするものである。この方法では確かに高温でのクリープ性向上を得ることが可能である。しかし、十分なアンカー効果を得るにはステープル糸の混撚量を多くする必要があり、ステープル糸の混撚量を多くすることで混撚糸本体の強度が大幅に低下するという問題があった。
【0004】
また、特許文献2に記載のテント構造物用防水性積層膜材は、経緯方向のクリープバランスを調整する目的で、経糸と緯糸に各々異なる伸度特性の糸条を用いたものであるが、経糸に短繊維紡績糸条を用いることで経方向の伸び率が大きく、しかも強度に劣るという問題があった。
また、特許文献3に記載の積層体は、タスラン糸の撚糸からなる織編物を用いる理由がタスラン撚糸内に樹脂を浸透させることで積層体断面からの毛管現象による吸水を防止するもので耐熱クリープ性とは無縁である。また、前記の積層体はタスラン撚糸内に樹脂を浸透させることで引き裂き強度が著しく低下するというものであった。
これまで、ターポリン本体の強度やクリープ性を犠牲にすることなく、良好な耐熱クリープ性を容易に得ることができるターポリン、およびそれによるフレキシブルコンテナバッグなどはあまり提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−262382号公報
【特許文献2】特開2005−169655号公報
【特許文献3】特開平8−169070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ターポリン同士の熱融着接合が可能であり、ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリンを提供することにある。また本発明の目的は、フレキシブルコンテナバッグ、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、フレキシブル水槽などの幕構造物用途に適して用いられるターポリン、これらによる融着接合体、特に耐熱クリープ性に優れたフレキシブルコンテナバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ターポリンに用いる繊維性基布に、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを糸条総繊度比率(前者:後者)1:2〜2:1の範囲で束ねて撚糸してなる部分嵩高合撚糸を6〜39本/2.54cmの配置で含ませることによって、ターポリン本体の引裂強度やクリープ性を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるターポリンおよびフレキシブルコンテナバッグが得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、繊維性基布およびその両面に積層された熱可塑性樹脂層を含むターポリンであって、繊維性基布は、経糸群と緯糸群とにより構成される織編物であり、経糸群と緯糸群の少なくとも一方は、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを糸条総繊度比率(前者:後者)1:2〜2:1の範囲で含む部分嵩高合撚糸を、6〜39本/2.54cmの配置で含むことを特徴とするターポリンである。
【0009】
本発明のターポリンは、繊維性基布を構成する糸条に部分嵩高合撚糸を用いることでターポリン本体の引裂強度を維持しながら優れた耐熱クリープ性を有する。すなわち部分嵩高合撚糸を構成する嵩高状マルチフィラメント糸条の嵩高部が熱可塑性樹脂層内に取り込まれることで耐熱クリープ性の発現を担い、一方直線状マルチフィラメント糸条は熱可塑性樹脂層内に取り込まれ難いことでターポリン本体の引裂強度の維持を担う。
【0010】
本発明のターポリンは、部分嵩高合撚糸が、双糸または三子撚糸のいずれかで、撚数10〜100T/mの範囲であることが好ましい。撚数が少ないとターポリン本体強度が不十分となるおそれがあり、逆に、撚数が多過ぎると嵩高状マルチフィラメント糸条の嵩高効果が減少し、熱可塑性樹脂層へのアンカー(投錨食込)効果が不十分となることで耐熱クリープ性が得られないおそれがある。
【0011】
本発明のターポリンは、繊維性基布中に部分嵩高合撚糸が、1本交互または2本引揃えて交互で配置されていることが好ましい。これによってターポリン本体の引裂強度と接合部の耐熱クリープ性とのバランスを調整することを可能とする。
【0012】
本発明のフレキシブルコンテナバッグは、ターポリン同士の重ね合わせ融着により接合されるものである。これによってフレキシブルコンテナバッグ本体の引裂強度を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるフレキシブルコンテナバッグを得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のターポリンは、ターポリン同士の熱融着接合が可能で、ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れる。本発明のターポリンは、フレキシブルコンテナバッグ、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、フレキシブル水槽などの幕構造物用途に適して用いることができ、特に耐熱クリープ性に優れたフレキシブルコンテナバッグを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のターポリンの断面図の一例
図2】本発明に用いる繊維性基布の一例(部分嵩高合撚糸100%)
図3】本発明に用いる繊維性基布の一例(部分嵩高合撚糸:50%)
図4】耐熱クリープ試験片の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のターポリンは、繊維性基布およびその両面に被覆された熱可塑性樹脂層を含む。
【0016】
<繊維性基布>
繊維性基布は、経糸群と緯糸群とにより構成される織編物であり、経糸群と緯糸群の少なくとも一方は、部分嵩高合撚糸を、6〜39本/2.54cmの配置で含む。
繊維性基布は、経糸群と緯糸群とにより構成される織編物である。繊維性基布は、織布、編布のいずれでもよいが織布が好ましい。織布としては平織、綾織、繻子織などが挙げられる。特に平織織布が、得られるターポリンの経・緯方向での物性バランスに優れるため好ましい。
繊維性基布を構成する経糸群と緯糸群の少なくとも一方は、部分嵩高合撚糸を6〜39本/2.54cm、好ましくは12〜27本/2.54cmの配置で含む。
繊維性基布を構成する部分嵩高合撚糸以外の他糸条の素材は、合成繊維、無機繊維、またはこれらの2種以上から成る混用繊維のいずれであってもよい。他糸条は、後述する直線状マルチフィラメント糸条が好ましい。
繊維性基布は、経糸群と緯糸群の両方に後述する部分嵩高合撚糸を含むことが好ましい。フレキシブルコンテナバックのパーツの採寸方向によっては、経糸群、または緯糸群のいずれか一方の群のみ部分嵩高合撚糸が、他糸条との1本交互、または2本引揃えて他糸条(1本もしくは複数本)と交互に配置されているものであってもよい。
【0017】
(部分嵩高合撚糸)
繊維性基布を構成する部分嵩高合撚糸は、嵩高状マルチフィラメント糸条と直線状マルチフィラメント糸条とを糸条総繊度比率(前者:後者)1:2〜2:1、好ましくは2:3〜3:2、より好ましくは1:1の範囲で含む。嵩高状マルチフィラメント糸条の比率が小さいと優れた耐熱クリープ性が得られないおそれがある。逆に、直線状マルチフィラメント糸条の比率が小さいと、優れた引裂強度が得られないおそれがある。
部分嵩高合撚糸は、経糸群と緯糸群の両方に含まれること(部分嵩高合撚糸100%)が好ましいが、フレキシブルコンテナバックのパーツの採寸方向によっては、経糸群、または緯糸群のいずれか一方の群のみが部分嵩高合撚糸で構成されたものであってもよい。
【0018】
(嵩高状マルチフィラメント糸条)
部分嵩高合撚糸は、嵩高状マルチフィラメント糸条を含む。嵩高状マルチフィラメント糸条を構成する繊維には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが適しており、特にポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維など。)が好ましい。
嵩高状マルチフィラメント糸条において、糸条総繊度としては250(278dtex)〜2000(2222dtex)デニールのもの、特に特に250(278dtex)〜750(833dtex)デニールが好ましい。これらの単糸繊度では0.5〜10デニール(0.56〜11.1dtex)の範囲であることが好ましい。
【0019】
嵩高状マルチフィラメント糸条としては、空気加工糸(タスラン加工糸、インターレース加工糸、空気精紡糸など)またはウーリー加工糸が好ましい。より具体的には、マルチフィラメント単糸の製造時に、フィラメントの開繊混繊をタスランノズルによるエアージェット交絡により行ない、乱過流の渦中で巻き込みと絡みを強制することでランダムルーズに絡め、ループ、渦巻きコイル、や結び目を多数形成することで嵩高化したタスラン加工糸が好ましい。マルチフィラメント芯糸の開繊に、マルチフィラメント鞘糸の開繊を立体的に絡めてルーズな絡みを多数形成したコアヤーン形態も好ましい。また、嵩高状マルチフィラメント糸条として、合成繊維によるマルチフィラメントを加撚(仮撚または交仮撚)した状態でヒートセットし、これを解撚して得られる捲縮性のウーリー加工糸(仮撚・交仮撚加工糸)を使用することもできる。これらタスラン加工糸やウーリー加工糸は2種以上の供給糸を用い、供給糸の特性(異繊度、異形、異収縮、異捲縮)とフィード率の制御によって、任意に嵩高性をコントロールすることができる。本発明において嵩高状マルチフィラメント糸条はタスラン加工糸が特に好ましい。
【0020】
(直線状マルチフィラメント糸)
また部分嵩高合撚糸は、直線状マルチフィラメント糸を含む。直線状マルチフィラメント糸条を構成する繊維には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの他、芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維などが例示でき、特にポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維など。)が好ましい。また直線状マルチフィラメント糸条としてはガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの無機繊維も使用できる。これらの繊維性基布には、必要に応じて接着剤の塗布、樹脂含浸加工、吸水防止処理、防炎処理などを施すことができる。
直線状マルチフィラメント糸条の糸条総繊度は、250(278dtex)〜2000(2222dtex)デニールのもの、特に250(278dtex)〜750(833dtex)デニールが好ましい。これらの単糸繊度では0.5〜10デニール(0.56〜11.1dtex)の範囲であることが好ましい。なお、直線状マルチフィラメント糸条とは、嵩高加工や捲縮加工が施されていない、フィラメント同士のルーズな絡みを有さない非嵩高糸(一般的に「生糸」と称される。)である。
【0021】
(部分嵩高合撚糸の例)
部分嵩高合撚糸の好ましい例としては、糸条総繊度250(278dtex)〜750(833dtex)デニールの嵩高状マルチフィラメント糸条、例えば糸条総繊度250(278dtex)デニールの嵩高状マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250(278dtex)〜750(833dtex)デニールの直線状マルチフィラメント糸条、例えば糸条総繊度500(555dtex)デニールの直線状マルチフィラメント糸条1本とを束ねて、それを10〜100T/mの範囲でそれぞれS撚り、またはZ撚りした糸条総繊度1000デニールの双糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)が挙げられる。
【0022】
また糸条総繊度250(278dtex)デニールの嵩高状マルチフィラメント糸条2本と、糸条総繊度500(555dtex)デニールの直線状マルチフィラメント糸条1本とを束ねて、それを10〜100T/mの範囲でそれぞれS撚り、またはZ撚りして得た1000デニールの三子撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)が挙げられる。
また糸条総繊度500(555dtex)デニールの嵩高状マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250(278dtex)デニールの直線状マルチフィラメント糸条2本とを束ねて、それを10〜100T/mの範囲でそれぞれS撚り、またはZ撚りして得た糸条総繊度1000デニールの三子撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)が挙げられる。
これら双糸または三子撚糸の撚り数が10T/m未満であると得られるターポリンの本体強度が不十分となることがあり、また100T/mを越えると部分嵩高合撚糸の緊密性が高くなって嵩高状糸条の有するルーズな嵩高さが減少することで、熱可塑性樹脂層とのアンカー(投錨食込)効果が十分に得られず、得られるターポリンの耐熱クリープ効果が不十分となることがある。また嵩高状マルチフィラメント糸条および直線状マルチフィラメント糸条は撚りが0〜50T/mの範囲が好ましい。
【0023】
(繊維性基布の空隙率)
本発明のターポリンに用いる繊維性基布の空隙率(目抜け)は、5〜30%のもの、特に8〜24%のものが適している。繊維性基布の表裏面に形成される熱可塑性樹脂層は、繊維性基布の空隙部を介して相互にブリッジして融着することで繊維性基布と密着して積層されるため、この積層には空隙率との関係が密接となる。すなわち空隙率が5%未満だと相互のブリッジ融着性を低下させ、動的耐久性を悪くするおそれがある。空隙率が30%を越えると熱可塑性樹脂層相互のブリッジ融着性は向上するが、経緯方向のフィラメント単糸含有量が少なくなることで得られるターポリンの形態安定性が悪くなり、耐引裂性を悪くするおそれがある。空隙率は繊維性基布の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmの平面を単位面積として求めることが好ましい。
【0024】
<熱可塑性樹脂層>
本発明のターポリンにおいて熱可塑性樹脂層は、公知の熱可塑性樹脂およびエラストマーにより形成される組成物でよい。例えば、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤含有)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂などであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどの熱可塑性ゴムをブレンドして補助成分として含んでいてもよい。これらの熱可塑性樹脂のうち、特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、およびフッ素含有共重合体樹脂から選ばれた1種以上を高周波溶着性付与成分として熱可塑性樹脂層に対し50質量%以上含有することが好ましい。本発明のターポリンの熱可塑性樹脂層には、安定剤、フィラー、着色剤、顔料、光輝性顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に用いることができる。
【0025】
本発明のターポリンの熱可塑性樹脂層用フィルム成形方法としては、公知の成型加工方法、例えばT−ダイス押出法、インフレーション法、カレンダー法などによって加工することができる。熱可塑性樹脂層の厚みは、特に限定される物ではないが、80〜800μm、特に160〜400μmであることが好ましい。厚みが80μmよりも薄いと繊維性基布に熱ラミネートした時に繊維性基布の織交点部の凹凸でフィルムの頭切れを起こし、防水性を損なうだけでなく、ターポリンの耐久性、および接合部強度を悪くすることがある。また800μmよりも厚いと、得られるターポリンが重く・硬くなり、折りたたみ・持ち運び等の取り扱い性を悪くするおそれがある。
【0026】
<ターポリンの製造方法>
(積層)
本発明のターポリンは、繊維性基布の両面に熱可塑性樹脂層用フィルムが積層されている。積層の方法は、熱可塑性樹脂層用フィルムの成型加工と同時に繊維性基布の片面ずつに熱ラミネートするトッピング法、または熱可塑性樹脂層用フィルムを一担成型加工した後にラミネーターを使用して2枚の熱可塑性樹脂層用フィルムを一度に熱圧着して繊維性基布のサンドイッチ積層を行う方法が挙げられる。本発明のターポリンの製造は、カレンダー成型した熱可塑性樹脂層用フィルムをラミネーターにより繊維性基布の両面に熱圧着する方法が適している。このとき、繊維性基布の目抜け空隙部を介在して表と裏2枚の熱可塑性樹脂層用フィルム同士が部分的に熱溶融ブリッジして、熱可塑性樹脂層と部分嵩高合撚糸との接触表面積が増し、熱可塑性樹脂層内に部分嵩高合撚糸の嵩高部分が取り込まれそれがアンカー(投錨食込)効果を発揮することで優れた耐熱クリープ性を得ることができる。
【0027】
(接合・縫製)
本発明のターポリンの接合・縫製は、高周波ウエルダー融着法、熱板融着法、熱風融着法、超音波融着法などの熱融着法が可能であり、特に高周波融着法が作業の効率性の観点で好ましい。高周波融着法や熱融着法により、さらに熱可塑性樹脂層と部分嵩高合撚糸とのアンカー(投錨食込)効果が増して強固となることで更に高レベルの耐熱クリープ性を得ることができる。
【0028】
<ターポリンの例>
本発明のターポリンの例を図1〜4により説明する。図1の可撓性積層体(ターポリン)(1)は、経糸群および緯糸群からなる繊維性基布(2)の両面上に熱可塑性樹脂層(3)が設けられている。
図2は、本発明のターポリンに用いる繊維性基布(2)の一例を示すものであり、部分嵩高合撚糸(経糸:2−1)と部分嵩高合撚糸(緯糸:2−2)からなる部分嵩高合撚糸100%の繊維性基布(2)で、各々は嵩高状マルチフィラメント糸条(2−1−1)および直線状マルチフィラメント糸条(2−1−2)、あるいは嵩高状マルチフィラメント糸条(2−2−1)および直線状マルチフィラメント糸条(2−2−2)により構成されるものである。
図3は部分嵩高合撚糸(2−1)を経糸群の一部に含み、また部分嵩高合撚糸(2−2)を緯糸群の一部に含み、他の経糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条(2−3−1)、他の緯糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条(2−3−2)とし、経糸群の構成を部分嵩高合撚糸(2−1)と直線状マルチフィラメント糸条(2−3−1)の1本交互配置、緯糸群の構成を部分嵩高合撚糸(2−2)と直線状マルチフィラメント糸条(2−3−2)の1本交互配置とするものである。
図4は、本発明のターポリンの耐熱クリープ性を評価するために用いる耐熱クリープ試験片(4)で、これは2枚のターポリン(1)の端部同士が特定の幅で重ね合わせて溶着され、その溶着部を接合部(5)とするものである。
【0029】
次に、本発明のフレキシブルコンテナバッグは前記ターポリン同士の重ね合わせ融着により接合され、形成されたフレキシブルコンテナバッグである。かかるフレキシブルコンテナバッグは前記のターポリンを用いているので、引裂強度、および接合部における耐熱クリープ性に優れる。
【実施例】
【0030】
本発明を下記の実施例および比較例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。
【0031】
1.接合体の評価方法
〈経糸方向耐熱クリープ性〉
2枚のターポリンのヨコ方向(緯糸方向)の端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、8cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅8cmをタテ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を18片採取し、うち9片を耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して50℃×40kgf(392N)荷重(条件1)、55℃×40kgf(392N)荷重(条件2)、60℃×40kgf(392N)荷重(条件3)の3条件で経糸方向の耐熱クリープ性を24時間評価した。
【0032】
〈緯糸方向耐熱クリープ性〉
2枚のターポリンのタテ方向(経糸方向)の端部同士を8cm幅で直線状に平行に重ね合わせ、8cm幅×30cm長のウエルドバー(平刃)を装着した高周波ウエルダー融着機(山本ビニター(株)製YF−7000型:出力7KW)を用い、陽極電流1.0Aでターポリンの高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得た。これより融着接合部を重ね合わせ幅8cmをヨコ方向に含む、3cm幅×30cm長の試験片を18片採取し、うち9片を耐熱クリープ試験片とし、クリープ試験機(東洋精機製作所(株)製:100LDR型)を使用して50℃×40kgf(392N)荷重(条件1)、55℃×40kgf(392N)荷重(条件2)、60℃×40kgf(392N)荷重(条件3)の3条件で緯糸方向の耐熱クリープ性を24時間評価した。
【0033】
〈評価の基準〉
1 :24時間経過後、接合部に異変や異常なく良好。
2 :24時間未満で接合部が破壊し、試験片が分断した。破壊した時間(単位:hr)を記録し表1〜2の<>内に示した。
3 :1時間以内に接合部が破壊し、試験片が分断した。破壊した時間(単位:hr)を記録し表1〜2の<>内に示した。
2.本体の引裂強度
JIS L1096 シングルタング法により測定した。以下の基準で評価した。
1 :240N以上
2 :240N未満
3.厚さ
JIS L1096により厚さを測定した。
4.質量
JIS L1096により単位面積当たりの質量を測定した。
【0034】
[実施例1]
<繊維性基布1>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸にフィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布1として用いた。この繊維性基布1の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。この繊維性基布1の両面上に、下記配合1のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物による厚さ0.3mmのカレンダー成形フィルムを150℃で熱ラミネートして、部分嵩高合撚糸表面のルーズな交絡嵩高部をアンカーとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物フィルムと一体化すると同時に、繊維性基布1の空隙部14.3%を介在する表裏フィルム同士のブリッジ積層を行い、表裏に厚さ0.3mmの熱可塑性樹脂層を形成し、厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0035】
<配合1>エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂
(酢酸ビニル含有率20質量%) 100質量部
シリカ 5質量部
オレフィン用着色剤(白顔料) 1質量部
オレフィン用着色剤(青顔料) 2質量部
ベンゾトリアゾール系化合物(紫外線吸収剤) 0.2質量部
【0036】
[実施例2]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布2に変更した。
<繊維性基布2>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群の一部および緯糸群の一部に用い、他の経糸群および他の緯糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条とし、経糸群および緯糸群の構成を、部分嵩高合撚糸と直線状マルチフィラメント糸条との1本交互配置とした。この混合経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また混合緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布2として用いた。この繊維性基布2の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布2に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布3に変更した。
<繊維性基布3>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/mで三子撚りした部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布3として用いた。この繊維性基布1の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布3に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例4]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布4に変更した。
<繊維性基布4>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/mで三子撚りした部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率1:1)を経糸群の一部および緯糸群の一部に用い、他の経糸群および他の緯糸群の構成糸を直線状マルチフィラメント糸条とし、経糸群および緯糸群の構成を、部分嵩高合撚糸と直線状マルチフィラメント糸条との1本交互配置とした。この混合経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また混合緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布4として用いた。この繊維性基布2の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布4に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例5]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布5に変更した。
<繊維性基布5>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/mで合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)2:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間19本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間20本の織組織とする平織物を繊維性基布5として用いた。この繊維性基布1の質量は140g/m、空隙率(目抜け)は13.2%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布5に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.75mm、質量670g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例6]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布6に変更した。
<繊維性基布6>
糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/mで合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:2)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間19本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間20本の織組織とする平織物を繊維性基布6として用いた。この繊維性基布6の質量は140g/m、空隙率(目抜け)は13.2%であった。実施例1において、繊維性基布1を繊維性基布6に変更した以外は実施例1と同様として、厚さ0.75mm、質量670g/mのターポリンを得た。結果を表1に示す。
実施例1のターポリン2枚の端部を重ね合わせて高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。実施例2〜6のターポリンについても実施例1同様にターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。
【0041】
[比較例1]
実施例1の繊維性基布1を構成する経糸群(2.54cm(1インチ)間16本)および緯糸群(2.54cm(1インチ)間16本)をすべて糸条総繊度1000デニール(1111dtex)のポリエステル繊維(フィラメント数192本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にZ撚50T/m撚糸に置換した繊維性基布7を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。このようなターポリンは産業資材として汎用のものである。この繊維性基布7の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0042】
[比較例2]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布8に変更した。
<繊維性基布8>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した糸を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布8として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。この繊維性基布8の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0043】
[比較例3]
実施例1の繊維性基布1を構成する経糸群(2.54cm(1インチ)間16本)および緯糸群(2.54cm(1インチ)間16本)をすべて糸条総繊度1000デニール(1111dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数192本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚50T/mを施したタスラン嵩高状マルチフィラメント糸条に置換した繊維性基布9を使用した以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。この繊維性基布9の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0044】
[比較例4]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布10に変更した。
<繊維性基布10>
糸条総繊度500デニール(555dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数96本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条2本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した糸を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布10として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。この繊維性基布10の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0045】
[比較例5]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布11に変更した。
<繊維性基布11>
糸条総繊度750デニール(833dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数144本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)3:1)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布11として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。この繊維性基布11の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0046】
[比較例6]
実施例1の繊維性基布1を繊維性基布12に変更した。
<繊維性基布12>
糸条総繊度250デニール(278dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数48本)からなるタスラン加工糸に、フィラメント同士がルーズに交絡した状態でS撚10T/mを施したタスラン嵩高マルチフィラメント糸条1本と、糸条総繊度750デニール(833dtex)、ポリエステル繊維(フィラメント数144本)からなり、フィラメント同士のルーズ交絡の無い非嵩高糸にS撚10T/mを施した直線状マルチフィラメント糸条1本を束ね、これをZ撚で50T/m合撚した部分嵩高合撚糸(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:3)を経糸群および緯糸群に用い、経糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とし、また緯糸群は2.54cm(1インチ)間16本の織組織とする平織物を繊維性基布12として用いた以外は実施例1と同様にして厚さ0.85mm、質量680g/mのターポリンを得た。この繊維性基布12の質量は150g/m、空隙率(目抜け)は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0047】
比較例1のターポリン2枚の端部を重ね合わせて高周波融着接合を行い、ターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。比較例2〜6のターポリンについても比較例1同様にターポリン接合体を得て、これをフレキシブルコンテナバッグの一部と見做し、耐熱クリープ試験に供した。
比較例1と2のターポリンはタスラン嵩高マルチフィラメント成分を全く含まない繊維性基布7と8を使用したため、得られたターポリン接合体は耐熱クリープ性に劣るものであった。比較例3と4のターポリンは直線状マルチフィラメント成分を全く含まない繊維性基布9と10を使用したため、得られたターポリン本体は引裂強度に劣るものであった。比較例5のターポリンは直線状マルチフィラメント成分量が少ない繊維性基布11(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)3:1)を使用したため、得られたターポリン本体は引裂強度に劣るものであった。また比較例6のターポリンは嵩高状マルチフィラメント成分量が少ない繊維性基布12(嵩高状糸条と直線状糸条との糸条総繊度比率(前者:後者)1:3)を使用したため、得られたターポリン接合体は耐熱クリープ性に劣るものであった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のターポリンは、ターポリン同士の熱融着接合が可能で、ターポリン本体の引裂強度を犠牲にすることなく、接合部における耐熱クリープ性に優れるので、フレキシブルコンテナバッグ、大型テント(パビリオン)、テント倉庫、日除けテント、フレキシブル水槽などの幕構造物用途に適し、拠って耐熱クリープ性に優れたフレキシブルコンテナバッグを得ることを可能とする。
【符号の説明】
【0051】
1:可撓性積層体(ターポリン)
2:繊維性基布
2−1:部分嵩高合撚糸(経糸)
2−1−1:嵩高状マルチフィラメント糸条
2−1−2:直線状マルチフィラメント糸条
2−2:部分嵩高合撚糸(緯糸)
2−2−1:嵩高状マルチフィラメント糸条
2−2−2:直線状マルチフィラメント糸条
2−3:マルチフィラメント単糸
2−3−1:直線状マルチフィラメント糸条(経糸)
2−3−2:直線状マルチフィラメント糸条(緯糸)
3:熱可塑性樹脂層
4:耐熱クリープ試験片
5:接合部
図1
図2
図3
図4