特許第6050169号(P6050169)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050169
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】通信不正成立防止システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20161212BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20161212BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   B60R25/24
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-66643(P2013-66643)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190046(P2014-190046A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】武智 和洋
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 誠也
(72)【発明者】
【氏名】染田 大輔
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−40474(JP,A)
【文献】 特開2010−216079(JP,A)
【文献】 特開2010−242446(JP,A)
【文献】 特開平11−210287(JP,A)
【文献】 特開2012−233328(JP,A)
【文献】 特開2012−117293(JP,A)
【文献】 特開2012−25253(JP,A)
【文献】 特開2011−144625(JP,A)
【文献】 特開2004−190419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からの通信を契機に電子キーから電子キーIDを車両に無線送信させ、当該電子キーをID照合するとき、当該ID照合の際に行われる通信の正当性を確認する通信不正成立防止システムにおいて、
前記電子キーは、
前記電子キーの動きを検出可能な動き検出部の検出信号を基に、当該電子キーの動きの正当性を判定するキー動き正当性判定部と、
当該キー動き正当性判定部の判定結果に基づく信号を、無線によって前記車両に送信させる送信制御部とを備え、
前記車両は、
前記電子キーから受信した前記信号を基に、前記ID照合の成立許可の可否を判断する照合成立許可判断部を備え
前記送信制御部は、前記キー動き正当性判定部の判定結果である判定結果通知データを、ユーザが車外ドアハンドルに触れたときに、前記電子キーから前記車両に無線送信させる
ことを特徴とする通信不正成立防止システム。
【請求項2】
前記電子キーは、前記キー動き正当性判定部の判定結果に基づく前記信号を、暗号化して前記車両に無線送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項3】
前記動き検出部は、前記電子キーが前記車両の通信エリアに進入して電波を受信したとき、起動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項4】
前記動き検出部は、前記電子キーから前記車両への信号送信が完了すると、電源がオフとなる待機状態に切り替わる
ことを特徴とする請求項1〜のうちいずれか一項に記載の通信不正成立防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーにおいて不正な通信成立を防止する通信不正成立防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等において、電子キーから電子キーIDを車両に無線送信してID照合を行う電子キーシステムが周知である。ところで、この種の電子キーシステムにおいては、ユーザの意志によらないところでID照合成立を謀る不正行為として、中継器を使った不正行為(中継器使用不正行為:特許文献1等参照)というものがある。中継器使用不正行為は、例えば電子キーが車両から遠い場所に位置する際に、この電子キーを複数の中継器によって車両と繋いで電波を中継し、これら2者間の通信を成立させる行為である。よって、ユーザが気付かないところでID照合が成立されてしまうので、第三者によって不正にドア解錠やエンジンが始動されてしまう可能性がある。
【0003】
この中継器を使用した不正通信に対する対策としては、例えば電子キーに加速度センサを内蔵しておき、加速度センサによって検出される加速度によって電子キーの動きを判定することにより、通信の正当性を判定する技術が周知である(例えば特許文献2等参照)。特許文献2は、電子キーにおいて加速度センサが検出した加速度データを、ID照合の通信の過程で車両に送信する。そして、車両は、受信した加速度データを基に電子キーの動きの正当性を判定し、例えば加速度が「0」より大きくかつ閾値以下のとき、車両ドアの解錠を許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−161545号公報
【特許文献2】特開2010−216079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2は、ID照合の通信過程時、電子キーにおいて検出した加速度データそのものを車両に無線送信する。このため、通信時に電子キーから車両に送信するデータ量が多くなってしまうので、電子キーで消費される電力が大きくなり、これが電子キーの電池寿命の悪化に繋がっていた。また、ID照合の通信は、セキュリティ上、暗号通信とするのが好ましいが、データ量の大きい加速度データの暗号化には、電子キーにおいて大電力を消費してしまうこととなる。よって、この点からも電子キーの電池寿命が短縮する傾向にあった。
【0006】
本発明の目的は、電子キーの電源を長寿命化することができる通信不正成立防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決する通信不正成立防止システムは、車両からの通信を契機に電子キーから電子キーIDを車両に無線送信させ、当該電子キーをID照合するとき、当該ID照合の際に行われる通信の正当性を確認する構成において、前記電子キーは、前記電子キーの動きを検出可能な動き検出部の検出信号を基に、当該電子キーの動きの正当性を判定するキー動き正当性判定部と、当該キー動き正当性判定部の判定結果に基づく信号を、無線によって前記車両に送信させる送信制御部とを備え、前記車両は、前記電子キーから受信した前記信号を基に、前記ID照合の成立許可の可否を判断する照合成立許可判断部を備え、前記送信制御部は、前記キー動き正当性判定部の判定結果である判定結果通知データを、ユーザが車外ドアハンドルに触れたときに、前記電子キーから前記車両に無線送信させる
【0008】
本構成によれば、電子キーに設けた動き検出部の検出信号を基に電子キーの動きの正当性を判定して不正通信の成立を防止する構成において、電子キーの動き判定を電子キー側で行い、その判定結果に基づく信号を電子キーから車両に送信する。このため、電子キーから車両へは、単なる判定結果のみを送信すればよいので、この通信に必要となる電子キーの電力が少なく済む。よって、電子キーの電源の省電力化が可能となり、電子キーの電源の長寿命化に寄与する。
また、動き判定結果が正当である場合、又は不当である場合のどちらでも、電子キーで行った電子キーの動き判定結果として、電子キーから判定結果通知データが、ユーザが車外ドアハンドルに触れたときに車両に送信されるので、動き判定結果をより正確に車両に通知することが可能となる。
【0009】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記電子キーは、前記キー動き正当性判定部の判定結果に基づく前記信号を、暗号化して前記車両に無線送信することが好ましい。この構成によれば、キー動き正当性判定部の判定結果に基づく信号は、暗号化されて電子キーから車両に送信される。このため、キー動き正当性判定部の判定結果をセキュリティ性よく電子キーから車両に送信することが可能となる。また、信号を暗号化して送信する場合、電子キー側で信号を暗号化するための電力が必要となるが、本構成のように、電子キーから車両へ単なる判定結果のみを送信するのであれば、暗号化する情報量が少なく済むので、この点から電子キーの電源の省電力化に有利であると言える。
【0012】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記動き検出部は、前記電子キーが前記車両の通信エリアに進入して電波を受信したとき、起動することが好ましい。この構成によれば、通信エリアに進入する前の電子キーを電源オフの待機状態にしておけるので、電子キーの電源の長寿命化に一層寄与する。
【0013】
前記通信不正成立防止システムにおいて、前記動き検出部は、前記電子キーから前記車両への信号送信が完了すると、電源がオフとなる待機状態に切り替わることが好ましい。この構成によれば、電子キーから車両への信号送信が完了すると、電子キーを電源オフの待機状態とするので、電子キーの電源の長寿命化に一層寄与する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信不正成立防止システムにおいて、電子キーの電源を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の通信不正成立防止システムの構成図。
図2】キー所持者が車外において車両に近づくときの様子図。
図3】(a)〜(c)は電子キーの動き判定の具体的処理を示す加速度の波形図。
図4】正常通信時の車外スマート照合を示す模式図。
図5】不正通信時の車外スマート照合を示す模式図。
図6】(a),(b)は別例の通信不正成立防止システムの例示図。
図7】(a),(b)は他の別例の通信不正成立防止システムの例示図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、通信不正成立防止システムの一実施形態を図1図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2と無線によりID照合を行う電子キーシステム3が搭載されている。電子キーシステム3は、車両1からの通信を契機に狭域無線(通信距離:数m)によりID照合(スマート照合)を行うキー操作フリーシステムである。
【0017】
この場合、車両1には、電子キー2とID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載電装品の電源を管理するボディECU5と、エンジン7を制御するエンジンECU6とが設けられ、これらがバス8を通じて接続されている。照合ECU4のメモリ(図示略)には、車両1に登録された電子キー2の電子キーIDが書き込み保存されている。照合ECU4には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外送信機9と、車内にLF電波を送信可能な車内送信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機11とが接続されている。照合ECU4には、車外ドアハンドル12のタッチ操作を検出するタッチセンサ13と、車外ドアハンドル12に設けられたドアロックボタン14とが接続されている。ボディECU5には、車両ドアの施解錠を切り替える際の駆動源となるドアロックモータ15が接続されている。照合ECU4には、車両1の電源状態を切り替える際に操作するプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ16が接続されている。
【0018】
電子キー2には、電子キー2の動作を制御するキー制御部17が設けられている。キー制御部17のメモリ(図示略)には、各キー固有の電子キーIDが書き込み保存されている。キー制御部17には、LF電波を受信可能な受信アンテナ18と、UHF電波を送信可能な送信アンテナ19とが接続されている。
【0019】
車外送信機9は、電子キー2が車外に位置するとき、車外において車体周囲にリクエスト信号SrqをLF送信する。また、車内送信機10は、電子キー2が車内に位置するとき、車内全域にリクエスト信号SrqをLF送信する。電子キー2は、リクエスト信号Srqを受信すると起動し、ID信号SidをUHF送信する。ID信号Sidは、電子キー2に登録された電子キーIDを含む信号である。照合ECU4は、電子キー2のID信号Sidを車両受信機11で受信すると、ID信号Sidを基にID照合(スマート照合)を行い、ID照合が成立すれば、ドア施解錠や電源遷移操作を許可又は実行する。
【0020】
電子キーシステム3には、例えば中継器を使用した不正な通信成立を防止する通信不正成立防止機能(通信不正成立防止システム)が設けられている。本例の場合、電子キー2には、電子キー2に発生する加速度を検出する加速度センサ20が設けられている。加速度センサ20は、例えば常時起動し、起動中、電子キー2に発生する加速度を監視し、検出した加速度信号(加速度データ)をキー制御部17に出力する。なお、加速度センサ20が動き検出部の一例である。
【0021】
キー制御部17には、加速度センサ20から入力する加速度信号を基に電子キー2の動きの正当性を判定する加速度判定部21と、加速度判定部21の判定結果を車両1に無線送信する送信制御部22とが設けられている。加速度判定部21は、加速度センサ20の加速度信号を確認することにより、電子キー2が正規ユーザによって所持されている際に発生し得る動きをとるか否かを判定する。送信制御部22は、加速度判定部21の判定結果として、例えば「0」又は「1」の1ビット信号からなる判定結果通知データDdcをID信号Sidに付加することにより、車両1に無線通知する。また、電子キー2は、ID信号Sidを暗号化して車両1に無線送信する。なお、加速度判定部21がキー動き正当性判定部の一例である。
【0022】
照合ECU4には、受信したID信号Sid内の判定結果通知データDdcを基に、いま実施されているID照合の成立許可の可否を判断する照合成立許可判断部23が設けられている。照合成立許可判断部23は、判定結果通知データDdcとして例えば「0」のビット信号を読み込むと、電子キー2が正常な動きをとったと認識し、判定結果通知データDdcとして例えば「1」のビット信号を読み込むと、電子キー2が正常な動きをとっていないと認識する。照合ECU4は、ID照合の照合結果とともに、判定結果通知データDdcの読み込み結果も踏まえ、最終的なID照合の正当性を判断する。
【0023】
次に、図2図5を用いて、通信不正成立防止システムの動作を説明する。なお、ここでは、例えば車両ドアを解錠する際の動作を例に挙げることとする。
[通常の乗車動作]
図2に示すように、正規ユーザは、駐車状態(車両ドア施錠、エンジン停止)の車両1に乗車するとき、電子キー2を所持した状態で車両1に近づく、つまり車外送信機9が形成するリクエスト信号Srqの車外通信エリアに近づく動作をとる。本例の場合、加速度センサ20は、常時起動しており、その加速度信号をキー制御部17に逐次出力する。このため、加速度判定部21は、加速度センサ20から入力する加速度信号を基に、電子キー2に発生している動きが正規ユーザの所持に準じた動きであるか否かを逐次判定している。
【0024】
図3(a)に示すように、電子キー2の動き判定の一例としては、例えば判定時間内において加速度が下限閾値以上となる状況が存在すること、つまり電子キー2がある程度動いた状態であるのかを定期的に判定する処理がある。これは、電子キー2が完全停止状態ではないことを確認するためである。また、図3(b)に示すように、電子キー2の動き判定の他の例としては、例えば判定時間内に加速度が上限閾値未満となること、つまり電子キー2に発生する加速度が所定値以内に収まっているか否かを定期的に判定する処理がある。これは、電子キー2があまりに動き過ぎていないかどうかを確認するためである。また、図3(c)に示すように、電子キー2の動き判定の他の例としては、加速度の変化波形が、正規ユーザが乗車に取り得る加速度変化の基準波形と一致するか否かをマッチングする判定がある。
【0025】
図4に示すように、リクエスト信号Srqの車外通信エリアに電子キー2が進入すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答し、ID信号Sidの返信動作に入る。このとき、送信制御部22は、電子キー2がID信号Sidを車両1に送信するに際し、加速度判定部21の判定結果である判定結果通知データDdcとして「0」又は「1」のビット信号をID信号Sidに付加することにより、加速度判定部21の判定結果を車両1に通知する。送信制御部22は、電子キー2の動き判定が正当と判定されていれば、ビット信号として例えば「0」を付加し、電子キー2の動き判定が不当と判定されていれば、ビット信号として例えば「1」を付加する。このため、ID信号Sidは、電子キー2に登録された電子キーIDと、1ビットの判定結果通知データDdcとを含む信号となっている。また、ID信号Sidは、暗号化されて電子キー2から車両1に無線送信される。
【0026】
ちなみに、ID照合においてチャレンジレスポンス認証も行う場合は、チャレンジコードの演算結果として、ID信号Sidにレスポンスコードも含まれる。チャレンジレスポンス認証の場合、車両1から電子キー2にチャレンジコードを送信し、このチャレンジコードを電子キー2の暗号鍵によって演算させ、その演算結果をレスポンスコードとして電子キー2から車両1に返信させる。車両1も、自身が持つ暗号鍵によって同様にチャレンジコードを演算してレスポンスコードを演算し、これと電子キー2のレスポンスコードとを比較する。そして、これらが一致すれば、チャレンジレスポンス認証が成立する。
【0027】
正規ユーザが所持する電子キー2でのID照合時、電子キー2がリクエスト信号Srqに対する応答としてID信号Sidを返信するとき、送信制御部22は、加速度判定部21の判定結果である判定結果通知データDdcとして「0」のビット信号をID信号Sidに付加して送信する。正規ID照合時、ID信号Sidは、例えば電子キーID、判定結果通知データDdcの「0」を有する信号で送信される。また、このID信号Sidは、キー制御部17によって暗号化されて車両1に送信される。
【0028】
照合ECU4は、電子キー2から送信されたID信号Sidを車両受信機11で受信すると、ID信号Sidに含まれる電子キーIDを基に、車外におけるID照合(車外スマート照合)を実行する。このとき、照合ECU4は、ID信号Sidに含まれる電子キーIDと、自身に登録されている電子キーIDとを比較し、これらが一致すれば、ID照合を成立として処理する。一方、これら電子キーIDが一致しなければ、ID照合を不成立として処理する。
【0029】
また、車両受信機11がID信号Sidを受信したとき、照合成立許可判断部23は、ID信号Sidに含まれる判定結果通知データDdcを読み出し、「0」又は「1」を確認することにより、電子キー2の動きの正当性を確認する。照合成立許可判断部23は、判定結果通知データDdcが「0」であればID照合の成立を許可し、判定結果通知データDdcが「1」であればID照合の成立を不許可とする。ここでは、正規ユーザの操作例を説明しているので、判定結果通知データが「0」であり、ID照合の成立が許可される。これにより、車両ドアの施解錠が許可され、例えば車外ドアハンドル12のタッチ操作がタッチセンサ13により検出されると、車両ドアが解錠される。
【0030】
本例の場合、電子キー2の動きの正当性の判定を電子キー2で行い、その判定結果のみを単なる「0」「1」の1ビット信号として電子キー2から車両1に通知する。このため、ID照合時、電子キー2から車両1に送信する信号のデータ量が少なくなるので、電子キー2の信号送信時の消費電力が少なく済む。よって、電子キー2の電池寿命確保に有利である。また、ID照合は暗号通信であるので、信号のデータ量が少なく済めば、暗号化しなければならないデータ量も少なく済む。よって、キー制御部17が暗号化する際に消費する電力も少なく済むことになり、この点でも有利である。
【0031】
[中継器を使用した不正通信の操作例]
図5に示すように、例えば車両1及び電子キー2の間に介在させた中継器24によって電波を中継することにより、車両1及び電子キー2の間のID照合の通信が不正に確立されたとする。このとき、車両1から送信されるリクエスト信号Srqは中継器24を経由して電子キー2に至り、電子キー2から返信されるID信号Sidは中継器24を再度経由して車両1に至る。これにより、車両1のリクエスト信号Srqの通信エリアに電子キー2が存在しないにもかかわらず、中継器24によってID照合の通信(スマート通信)が確立してしまうことになる。
【0032】
ところで、中継器24を使用した不正な通信の場合、電子キー2には、正規ユーザが車両ドアの解錠時にとる動作に準じた動きが発生していないはずである。例えば、電子キー2が自宅に置かれていて加速度が発生していなかったり、動きがあるにしてもユーザが乗車するときとは異なる加速度が発生していたりする。よって、このときの加速度判定部21は、加速度センサ20の加速度信号を基にして行う動き判定において、正規ユーザの所持による動きではないと判定する。
【0033】
中継器24が使用された不正通信時、電子キー2がリクエスト信号Srqに対する応答としてID信号Sidを返信するとき、送信制御部22は、加速度判定部21の判定結果である判定結果通知データDdcとして「1」のビット信号をID信号Sidに付加して送信する。中継器24が使用された不正通信時、ID信号Sidは、例えば電子キーID、判定結果通知データDdcの「1」を有する信号で送信される。また、このID信号Sidは、キー制御部17によって暗号化されて車両1に送信される。
【0034】
車両受信機11がID信号Sidを受信したとき、照合成立許可判断部23は、ID信号Sidに含まれる判定結果通知データDdcとして「1」を読み出すことにより、ID照合の成立を不許可とする。このため、中継器24を使用した不正通信時、仮にID照合が成立したとしても、動き判定結果によってID照合の成立が不許可とされるので、結果としてID照合が成立しなくなる。よって、第三者によって中継器を使用して不正に通信が確立されたとしても、車両ドアを解錠されずに済む。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2に設けた加速度センサ20の加速度信号を基に電子キー2の動きの正当性を判定して不正通信の成立を防止する通信不正成立防止機能において、電子キー2の動き判定を電子キー2側で行い、その動き判定結果としてビット信号からなる判定結果通知データDdcを電子キー2から車両1に送信する。このため、電子キー2から車両1へは、動き判定結果として単なる「0」「1」のビット信号のみを送信すればよいので、この通信に必要となる電子キー2の電力が少なく済む。よって、電子キー2の電源の省電力化が可能となり、電子キー2の電源を長寿命化することができる。
【0036】
(2)受信したリクエスト信号Srqに対する応答として電子キー2が返信するID信号Sid、つまり電子キーID及び判定結果通知データDdcを含む信号は、暗号化されて電子キー2から車両1に送信される。このため、ID信号Sidひいては判定結果通知データDdcをセキュリティ性よく電子キー2から車両1に送信することができる。
【0037】
(3)ID信号Sid(判定結果通知データDdc)を暗号化して電子キー2から車両1に送信する場合、電子キー2側で送信信号を暗号化するための電力が必要となるが、本例のように、判定結果通知データDdcとして単なるビット信号のみ送信するようにすれば、暗号化しなければならない情報量が少なく済む。よって、電子キー2の電源の省電力化に有利であると言える。
【0038】
(4)電子キー2の動きが正当と判定されたときは、電子キー2から判定結果通知データDdcとして「0」が車両1に通知され、電子キー2の動きが不当と判定されたときは、電子キー2から判定結果通知データDdcとして「1」が車両1に通知される。このように、電子キー2に発生した動きが正当/不当のどちらであるのかが電子キー2から車両1に通知されるので、動き判定結果をより正確に電子キー2から車両1に通知することができる。
【0039】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
図6(a),(b)に示すように、電子キー2は、電子キー2の動きから正常通信と判定したとき、電子キーIDのみ(即ち、判定結果通知データDdsを含まない)をID信号Sidとして車両1に無線送信し、電子キー2の動きから不正通信と判定したとき、ID信号Sidを車両1に無線送信しないようにしてもよい。この場合、車両1側で実施する制御は、電子キー2に加速度センサ20を設けない従来システムと同じで済む。よって、車両1側の構造に変更を加えることなく、電子キー2のみ変更することによって、中継器24による不正通信に対する対策を講じることができる。
【0040】
図7(a),(b)に示すように、電子キー2がリクエスト信号Srqの通信エリアに入った時点で、まずはスマート照合を行い、例えばユーザが車外ドアハンドル12に触れたときに、電子キー2から判定結果通知データDdcを車両1に送信してもよい。この場合、ユーザが車外ドアハンドル12にタッチしたとき、車両1から判定結果通知送信要求を電子キー2に送信することにより、電子キー2から判定結果通知データDdcを返信させる。
【0041】
・通常、加速度センサ20を電源オフの待機状態とし、電子キー2がリクエスト信号Srqを受信して起動したとき、加速度センサ20を起動状態に切り替えるようにしてもよい。この場合、電子キー2の電源を省電力化することができる。
【0042】
・加速度センサ20は、電子キー2から判定結果通知データDdcを車両1に通知後、電源オフの待機状態に切り替わってもよい。この場合、電子キー2の電源の省電力化に有利である。
【0043】
・動きが正当であるときに「1」が通知され、動きが不当であるときに「0」が通知されてもよい。
・判定結果通知データDdcは、数ビットから構築される信号でもよい。
【0044】
・判定結果通知データD dcは、動きの判定結果を相手側に通知できる情報から構築される信号であればよい。
・動き検出部は、加速度センサ20に限定されず、傾きセンサ等の他のセンサに変更可能である。
【0045】
・キー操作フリーシステムは、電子キー2が車両1に近づくと車両ドアが自動で解錠され、電子キー2が車両1から離れると車両ドアが自動で施錠されるものでもよい。
・キー操作フリーシステムは、例えば車体右側及び車体左側に送信機を各々設け、これら送信機から送信される電波に対する電子キー2の応答の組み合わせを確認することにより、電子キー2の車内外判定を行うものでもよい。この場合、車両1に設置する送信機が少なく済む。
【0046】
・キー操作フリーシステムは、往路及び復路で電波の周波数が異なることに限らず、同じとしてもよい。また、電波の周波数は、LFやUHFに限定されず、他の周波数に変更可能である。
【0047】
・電子キー2の動き判定は、電子キー2が車外に位置するときの判定に限定されず、車内に位置するときの判定でもよい。
・電子キー2の動きの正当性を確認する判定方法は、実施形態に述べたような手法に限定されず、電子キー2の動きの正否を判断することができれば、種々の手法が採用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…車両、2…電子キー、20…動き検出部としての加速度センサ、21…キー動き正当性判定部としての加速度判定部、22…送信制御部、23…照合成立許可判断部、Ddc…判定結果通知データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7