(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
送信信号のOFDMシンボル期間においてパイロットシンボルが送信される直交周波数分割多元接続(OFDMA)変調方式を用いて送信された受信信号のノイズ電力推定方法であって、
インタリーブされたパイロットシンボルを生成するため、前記送信信号のOFDMシンボル期間に送信されたパターン解除済パイロットシンボルを、前記送信信号における前のOFDMシンボル期間に送信されたパターン解除済パイロットシンボルとともにインタリーブするステップと、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルのノイズ成分を残して信号成分を除去するため、前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルをフィルタリングするステップと、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルのノイズ電力推定値を生成するため、前記フィルタリングにより生成された前記ノイズ成分を処理するステップと、
周波数領域の前記受信信号の前記パターン解除済パイロットシンボルの位相回転を行うステップと、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルの前記フィルタリング中に生じた誤差を補償するため、前記ノイズ電力推定値をスケーリングするステップと、
を含むノイズ電力推定方法。
送信信号のOFDMシンボル期間においてパイロットシンボルが送信される直交周波数分割多元接続(OFDMA)変調方式を用いて送信された信号を受信する受信機であって、
インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルを生成するため、前記送信信号のOFDMシンボル期間に送信されたパターン解除済パイロットシンボルを、前記送信信号における前のOFDMシンボル期間に送信されたパターン解除済パイロットシンボルとともにインタリーブするインタリーバと、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルのノイズ成分を残して信号成分を除去するため、前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルをフィルタリングするフィルタと、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルのノイズ電力推定値を生成するため、前記フィルタリングにより生成された前記ノイズ成分を処理するプロセッサと、
周波数領域の受信信号の前記パターン解除済パイロットシンボルの位相回転を行う位相回転器と、
前記インタリーブされたパターン解除済パイロットシンボルの、前記フィルタによるフィルタリング中に生じた誤差を補償するため、前記ノイズ電力推定値をスケーリングするスケーリング部と、
を含む受信機。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、
図1に示すように、例えば上述のLTEやLTE−A標準に基づいて送信されたフレームのような、OFDMA変調方式を用いて送信された信号のフレームは、全体として10で表される。フレーム10は10ミリ秒の持続時間を有し、それぞれ1ミリ秒の持続時間を有する10個のサブフレーム20からなり、各サブフレーム20は同様に、それぞれ0.5ミリ秒の持続時間を有する2個のスロット12に分割される。
【0017】
図2の概略説明図に示すように、各スロット12は7個のOFDMシンボル22を有し、各サブフレーム20は14個のOFDMシンボル22を有する。各OFDMシンボル22は複数の互いに直交するサブキャリア間で分割され、利用可能なサブキャリア数は、その信号を送信するシステムの送信帯域幅に依存する。
【0018】
OFDMA方式においてデータの割り当てが可能な最小単位であるリソースブロック30は、1スロットの持続時間の周波数において連続した12個のサブキャリアからなり、その概略は
図3で説明される。
図3は2個のリソースブロック30を示しており、各リソースブロックは、7個のOFDMシンボル22(水平方向で表される)である1スロットの周波数において連続した12個のサブキャリア(垂直方向で表される)を有する。
【0019】
図3で描かれた格子はリソースグリッドと呼ばれ、格子の各区画は1シンボル期間のOFDMサブキャリアを意味している。このリソースグリッドの区画はリソースエレメント(REs)と呼ばれる。
【0020】
LTE受信機(例えば携帯電話の受信機)には、一般的に、チャネル推定ブロック、又は、受信機と、受信機に信号を送信する送信機との間の伝搬路の状況を表すチャネル状態情報を推定するよう構成されたサブシステムが備えられる。
【0021】
送信機は、既知であるパイロット信号を受信機に送信し、チャネル推定ブロックはパイロット信号を復元すべく受信した信号の復号を行うが、パイロット信号は、その信号が送信機から受信機へと伝えられた伝搬路の影響を受ける。チャネル推定ブロックは、復号されたパイロット信号と既知である元のパイロット信号を比較することにより、パイロット信号に対するチャネルの影響を測定することができ、この測定結果から、そのチャネルの送信信号に対する影響を表すチャネルインパルス応答の推定値を算出することができる。
【0022】
複数の互いに直交したサブキャリアから選択されたサブキャリアにあるパイロット信号のパイロットシンボルや参照シンボルは、送信機において逆高速フーリエ変換(IFFT:inverse fast Fourier transform)を用いて変調され(逆高速フーリエ変換は複数のサブキャリアのデータシンボルの変調にも用いられる)、送信される。
【0023】
図3で示されるように、パイロットシンボルR0はリソースブロック30に埋め込まれ、パイロット信号を送信するシステムの送信機により送信される。パイロットシンボルR0は、各リソースブロック30に対して繰り返される予め設定されたパターンに従って送信される。
【0024】
図3に示される例では、パイロットシンボルR0はリソースブロック30の1番目と5番目のシンボル期間に送信される。また、上記パイロットシンボルR0が複数のOFDMサブキャリアの異なるサブキャリアで送信される一方、パイロットシンボルR0の連続したものも別の周波数において送信される。
【0025】
図3に示される例では、パイロットシンボルR0は1番目のシンボル期間の1番目と6番目のOFDMキャリア、5番目のシンボル期間の4番目と10番目のOFDMキャリアで送信される。パイロットシンボルp
k(i)がi番目のOFDMシンボルのk番目のサブキャリアで送信される場合の、受信機により受信されるパイロットシンボルのバージョンy
k(i)(送信機においてパイロットシンボルに施された逆高速フーリエ変換を反転させるため、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)処理を経る)は次のように表記することができる。
【数1】
ここで、H
k(i)はi番目のOFDMシンボルのk番目のサブキャリアにおけるチャネル状態情報であり、p
k(i)はパイロットシンボル、n
k(i)は
【数2】
(E{}は期待値演算子)の分散を持つ加法性白色ガウス雑音(AWGN:Additive White Gaussian Noise)を表す。
【0026】
高速フーリエ変換処理後、パイロットシンボルR0はパターン解除(de-pattern)される。シンボルのパターン解除とは、
図3で示すように、パイロットシンボルが割り当てられている位置である時間周波数区画(又はリソースグリッド)から、受信したパイロットシンボルを抽出し、そのパイロットシンボルをローカルで生成したパイロットシンボルで割ることをいう。パターン解除されたパイロットシンボルはチャネル状態情報の推定値(ハット)H
k(i)に等しく、パイロットシンボルp
k(i)が実際に送信されるチャネルを表し、それは次のように表現することができる。
【数3】
上記から以下が導かれる、
【数4】
上記式は以下のように書き替えることができる。
【数5】
ここで、
【数6】
である。p
k(i)が電力を有する場合、(チルダ)n
k(i)は依然、n
k(i)と同じ電力を有する加法性白色ガウス雑音である。
【0027】
送信信号全体のチャネル推定値
【数7】
は、送信信号の周波数帯域全体をまたぐパイロットシンボルのチャネル推定値(ハット)H
k(i)を補間することにより導出することができる。パイロット位置におけるチャネル推定値(ブリーブ)H
k(i)は、ノイズ除去後のパターン解除されたパイロットシンボルが送信されるチャネルのチャネル推定値とみなすことができる。従って、受信信号のノイズ電力は、パイロットシンボルのチャネル推定値(ハット)H
k(i)から、パイロット位置におけるチャネル推定値(ブリーブ)H
k(i)を減ずることで推定することができる。しかし、当然のことではあるが、ノイズ推定の精度はこの方法を用いたチャネル推定の精度に左右される。また、ノイズ電力推定値が必要な状況においてチャネル推定値が利用できない場合もあり得る。
【0028】
以下に説明するように、受信信号のノイズ電力推定をチャネル推定から独立して行うことが可能である。チャネルインパルス応答はパイロットシンボル間で大きくは変わらないと仮定することができ、すなわち、
【数8】
である。ここで、lは2つのパイロットシンボル間の時間を表す。この仮定はlがチャネルの可干渉時間(coherence time)よりも小さい場合に有効である。この仮定によると、前回受信されたOFDMシンボルのパターン解除済パイロットシンボルR0は、今回受信されたOFDMシンボルのパターン解除済パイロットシンボルR0とともにインタリーブすることができる。
【0029】
このことは
図4により模式的に示される。
図4では、1番目のOFDMシンボル期間のパターン解除済パイロットシンボルR0が、5番目のOFDMシンボル期間にあるパターン解除済パイロットシンボルR0とともにインタリーブされるべく、5番目のシンボル期間に移動していることが分かる。
【0030】
パターン解除済パイロットシンボルをこのようにインタリーブすることは、これらシンボルが現れるシンボル期間における周波数スペクトルに存在するパターン解除済パイロットシンボルのイメージ数を減らし、そのシンボル期間におけるパターン解除済パイロットシンボルのスペクトルのノイズ帯域幅を効果的に増やし、所望信号からのノイズのフィルタリングを容易にし、以下に説明するように、ノイズ電力の推定を容易にする。
【0031】
図5は、
図3で示される2番目のリソースブロックの5番目のOFDMシンボル期間(破線で示される領域)におけるパターン解除済パイロットシンボルR0の正規化周波数スペクトルを表したものである。
図5から分かるように、パイロットシンボルの周波数スペクトルは、0付近を中心とする主信号帯域と、複数のイメージ信号帯域(例えば、約0.3と約0.7をそれぞれ中心とするもの)を有する。一つの主信号帯域と五つのイメージ信号帯域があるのは、二つの隣接するパイロットシンボル間のサブキャリア間隔が6だからである(つまり、2番目のパイロットシンボルは1番目のパイロットシンボルのサブキャリアから数えて6つ目のサブキャリアにおいて変調される。)。尚、二つの隣接するパイロットシンボル間のサブキャリアはゼロ値で埋められている。
【0032】
主信号帯域と1番目のイメージ信号帯域の間はノイズ帯域である。受信信号のノイズ電力を推定するため、帯域通過フィルタにより、ノイズ帯域だけを残して信号帯域を除去する必要がある。しかしながら、当業者において理解されるように、信号帯域とノイズ帯域は周波数において非常に近接しており、ノイズだけを残して信号を除去するためには、非常に鋭いロールオフ特性を備えたフィルタが必要になる。かかるフィルタの実装は複雑であり、また、コストがかかる。
【0033】
これに対し、
図6は、
図4に示される2番目のリソースブロックの5番目のOFDMシンボル期間(破線で示される領域)におけるパターン解除済パイロットシンボルR0の正規化周波数スペクトルを表したものである。上述のように、
図4に示される2番目のリソースブロックの5番目のOFDMシンボルは、前回のOFDMシンボルからのインタリーブされたパイロットシンボルを有する。このパイロットシンボルのインタリーブにより、パイロットシンボルR0の周波数スペクトルの信号帯域イメージ数が減り、主信号帯域とその最初のイメージ信号帯域の間のノイズ帯域の帯域幅が増えるという効果が生じる。
【0034】
この理由は、パターン解除済パイロットシンボルをインタリーブすることにより、隣接するパイロットシンボル間のサブキャリア間隔が6から3に減り、信号処理の定説通り、主信号帯域とイメージ信号帯域の総数が3に減るためである。当業者において理解されるように、増幅したノイズ帯域から信号帯域を除去するフィルタの設計は大きく困難性が下がり、結果的に、
図5で示される主信号帯域を除去するフィルタと比較し、よりシンプルで低コストなフィルタとなる。
【0035】
図7は、受信機において上述の参照信号のインタリーブを機能させる模範的アーキテクチャの略図である。
図7の略図は一連の機能ブロックからなるアーキテクチャを提示しているが、この機能ブロックは必ずしも“現実世界”において実装されるアーキテクチャの物理的な構成要素を表すものではなく、受信信号に対して行われる処理を表すことを意図したものである。
【0036】
図7で示されるアーキテクチャ40は、受信信号のタイミング同期を行うよう構成された同期ブロック42を有する。タイミング同期がなされた信号は、同期ブロック42により高速フーリエ変換ブロック44へ出力され、高速フーリエ変換ブロック44は、タイミング同期がされた受信信号に高速フーリエ変換を施すことにより、送信側においてパイロットシンボルに施された逆高速フーリエ変換の効果を反転させ、受信信号を周波数領域信号へと変換する。
【0037】
高速フーリエ変換ブロック44は周波数領域信号を、パイロットシンボルのパターン解除を行うパイロットシンボルパターン解除ブロック46へ出力する。パターン解除されたパイロットシンボルは、パイロットシンボルパターン解除ブロック46により位相回転ブロック48へ出力される。
【0038】
高速フーリエ変換ブロック44に用いられる高速フーリエ変換ウィンドウの始点は、受信信号の開始と一致するよう構成されている。しかし、同期ブロック44によるタイミング同期は完全には正確ではないこともあり、高速フーリエ変換ブロック44に用いられる高速フーリエ変換ウィンドウの始点も、厳密には受信信号の開始と一致しない場合もある。そのため、高速フーリエ変換ブロック44により受信信号が周波数領域信号に変換されるときに、移相に対応する時間オフセットが受信信号に適用され得る。
【0039】
位相回転ブロック48はこの適用された時間オフセット/移相を補償することを目的とする。移相回転ブロック48はパターン解除されたパイロットシンボルのベクトル(チルダ)H(i)をパイロット解除ブロック46から受け取る。ここで、
【数9】
であり、Kは当該OFDMシンボル期間のパイロットシンボル数である。
【0040】
位相回転ブロック48は、変調の遅延により生じた線形位相を以下の式により推定する。
【数10】
ここで、d
pは周波数のパイロット間隔であり、∠は複素変数の角度を示す。(ハット)H
k(i)はi番目のOFDMシンボル期間におけるk番目のパターン解除済パイロット、Kは観測ウィンドウ内のパイロットシンボル数である。
【0041】
線形位相の検出後の位相回転は次のように表すことができる。
【数11】
このように、位相回転ブロック48は受信信号のパターン解除済パイロットシンボルに位相回転を付与し、(
図6で示されるように)パイロットシンボルの正規化スペクトルの主信号帯域の中心を0付近に再調節する。上述の通り、同期ブロック42により適用される時間オフセットは必ずしも一定ではなく、これに対して位相回転ブロック48により付与される動的補償は、受信信号に対するその後のフィルタリングが正しく行われることを補助し、ノイズ電力推定の精度を向上させる。
【0042】
位相回転ブロック48はベクトル(チルダ)H(i)の位相を回転させたものをバッファ50へ出力し、バッファ50は受信したOFDMシンボルのパイロットシンボルR0を保持又は保存する。これによりそのシンボルを、その後に受信されるOFDMシンボルのパイロットシンボルR0と共にインタリーブすることができる。
【0043】
位相回転ブロック48とバッファ50の出力は結合されてパイロットシンボルのインタリーブブロック52に入力され、バッファ50により出力される前回のOFDMシンボルのバッファされたパイロットシンボルR0と、位相回転ブロック48により出力される今回のOFDMシンボルのパイロットシンボルR0とともに、インタリーブブロック52によりインタリーブされる。
【0044】
インタリーブブロック52の出力はバンドパスフィルタ54へ入力され、バンドパスフィルタ54は、入力信号のノイズ帯域のみを残して信号帯域を除去する。実施形態によっては、バンドパスフィルタ54はその入力において、受信した信号をアップサンプルするよう構成される。例えば、バンドパスフィルタ54が3倍アップサンプリングバンドパスフィルタである場合、Kが当該OFDMシンボル期間におけるパイロットシンボル数であるとすると、バンドパスフィルタ54は3Kのサンプルを出力する。
【0045】
バンドパスフィルタ54により出力された信号は、ノイズ電力推定ブロック56に入力され、ノイズ電力推定ブロック56は、バンドパスフィルタ54により出力されたノイズ帯域に基づいて受信信号のノイズ電力の推定値を算出する。
【0046】
ノイズ電力推定ブロック56は、受信信号のノイズ電力の推定値σ
2を次のように算出する。
【数12】
ここで、w
m(i)はサンプルがm=0,1,...,M−1のときのバンドパスフィルタ54の出力である。
【0047】
ノイズ電力推定ブロック56はノイズ電力の推定値σ
2をスケーリングブロック58へ出力し、スケーリングブロック58はノイズ電力の推定値σ
2へ倍率αを適用する。倍率αはバンドパスフィルタの帯域幅とサンプリング周波数に依存し、以下の関係にある。
【数13】
ここで、f
sはバンドパスフィルタ48のサンプリング周波数であり、f
highはバンドパスフィルタ54の上限カットオフ周波数、f
lowはバンドパスフィルタ54の下限カットオフ周波数である。