(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における地盤不飽和化システムを示す。
図2は、
図1のA−A断面を示す。ここで、地盤不飽和化システムを構成する地下水流生成システムについては、その作動状態が、
図1及び
図2では、後述する第1の作動状態である一方、
図3では、後述する第2の作動状態である。
【0013】
尚、
図1及び
図2において、後述する第1のドレーン材41a及び第2のドレーン材41bのうち、注水用ドレーン材として機能しているものについては、斜線で図示している。また、揚水用ドレーン材として機能しているものについては、白抜きで図示している。
また、説明の便宜上、
図1〜
図3に示すように上下・前後・左右をそれぞれ規定して、以下説明する。
【0014】
図1に示すように、地盤不飽和化システム1は、地盤2の改良対象領域3内及びその周辺(換言すれば、液状化対策の対象領域内及びその周辺)に設置される。
地盤不飽和化システム1は、地下水流生成システム4と、マイクロバブル水注入システム7とを備える。
【0015】
地下水流生成システム4は、シール層40、複数のドレーン材41、バルブ42、注水管43a、揚水管43b、給水槽44、真空ポンプ45、集水タンク46を含んで構成される。
シール層40は、改良対象領域3の地盤上面を覆うように配置されている。シール層40は例えば粘土により構成される。
【0016】
ドレーン材41は鉛直方向に延びる帯状であり、
図2に示すドレーン材41の配置では、60個のドレーン材41が、改良対象領域3内にて、平面視でマトリクス状(図では前後6個×左右10個)に互いに平行に配置されている。尚、改良対象領域3内に配置されるドレーン材41の個数はこれに限らない。
図2に示すドレーン材41の配置では、帯状のドレーン材41の幅方向が前後方向に沿うように配置され、また、帯状のドレーン材41の厚さ方向が左右方向に沿うように配置されている。
【0017】
本実施形態では、60個のドレーン材41が、30個の第1のドレーン材41aと、30個の第2のドレーン材41bとにより構成されている。
左右方向に並ぶ10個のドレーン材41については、左側から右側に向かって、第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとが交互に配置されている。
【0018】
また、
図1に示すように、左右方向で隣り合う第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとについては、両者の間に、所定の間隔Cが空いている。ここで、所定の間隔Cについては、改良対象領域3の不飽和化を行うときの、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aの近傍の地下水位と、第2のドレーン材41bの近傍の地下水位とを考慮して、予め設定される。また、所定の間隔Cの設定については、改良対象領域3の透水係数や、不飽和化作業の作業時間等も考慮され得る。これらを勘案すると、所定の間隔Cは0.6m〜5.0mの範囲内であることが好ましい。
【0019】
ドレーン材41は、その上端がシール層40の下面に位置するように、改良対象領域3内に埋設されている。
ドレーン材41は、例えば、ペーパードレーン又はプラスチックボードドレーンである。ドレーン材41は、例えば、通水路となる溝が延在方向(鉛直方向)に沿って形成されたプラスチック樹脂製の芯体(図示せず)と、この芯体を囲う透水性フィルタ(図示せず)とを備える。それゆえ、ドレーン材41は、鉛直方向に延在して通水性を有する。また、ドレーン材41は、透水性フィルタを介して、全面的に水の出し入れを行うことができる。ドレーン材41は、専用の打設機(図示せず)を用いて改良対象領域3内に容易に打設され得る。
【0020】
全てのドレーン材41の上端には、ホース48を有するキャップ49が設けられている。キャップ49は気密性を有する。ホース48は、バルブ42に接続されている。
全てのバルブ42には、注水ホース50a及び揚水ホース50bが接続される。注水ホース50aは、注水管43aの枝管である。揚水ホース50bは、揚水管43bの枝管である。注水管43aは、給水槽44に接続されている。揚水管43bは、真空ポンプ45及び集水タンク46に接続されている。尚、注水管43a、揚水管43b、給水槽44、真空ポンプ45、及び、集水タンク46は、それぞれ、地盤2の表面上に配置されている。
【0021】
各ドレーン材41は、それぞれに接続されたバルブ42によって流体の出入りを切り替えることにより、単独で揚水用と注水用とに切り替えが可能である。ドレーン材41を注水用ドレーン材として用いる場合には、バルブ42によって揚水ホース50b側の流れが遮断される。ドレーン材41を揚水用ドレーン材として用いる場合には、バルブ42によって注水ホース50a側の流れが遮断される。ここで、注水用ドレーン材とは、地盤2の表面上から改良対象領域3内への注水に用いられるドレーン材を意味する。また、揚水用ドレーン材とは、改良対象領域3から地盤2の表面上への揚水(地下水の汲み上げ)に用いられるドレーン材を意味する。
【0022】
尚、本実施形態では、
図1及び
図2に示す地下水流生成システム4の第1の作動状態において、第1のドレーン材41aが注水用ドレーン材として機能し、第2のドレーン材41bが揚水用ドレーン材として機能する。また、
図3に示す地下水流生成システム4の第2の作動状態において、第1のドレーン材41aが揚水用ドレーン材として機能し、第2のドレーン材41bが注水用ドレーン材として機能する。
また、本実施形態では、第1のドレーン材41aに接続されたバルブ42が、本発明の「第1の切替手段」に対応して、第1のドレーン材41aを、地盤2の表面上から改良対象領域3への注水用と、改良対象領域3から地盤2の表面上への揚水用と、に切り替える機能を実現する。同様に、第2のドレーン材41bに接続されたバルブ42が、本発明の「第2の切替手段」に対応して、第2のドレーン材41bを、改良対象領域3から地盤2の表面上への揚水用と、地盤2の表面上から改良対象領域3への注水用と、に切り替える機能を実現する。
【0023】
マイクロバブル水注入システム7は、マイクロバブル水製造装置71、供給管72、及び、複数の注入管73を含んで構成される。尚、マイクロバブル水製造装置71及び供給管72は、それぞれ、地盤2の表面上に配置されている。
マイクロバブル水生成装置71は、マイクロバブル水を生成して、供給管72に送出する。マイクロバブル水生成装置71では、例えば、空気と水とを同時に加圧して空気を水に溶解させた後にこの水を減圧して水中の空気を気化させることで、マイクロバブル水を生成する。又は、マイクロバブル発生用の特殊管路内に水を高速で流通させることで、マイクロバブル水を生成する。マイクロバブル水の生成に用いられる水の一例としては、集水タンク46から還流された水を挙げることができる。マイクロバブル水生成装置71は、例えば、株式会社ニクニ製のマイクロバブルジェネレータを含んで構成される。マイクロバブル水生成装置71にて生成されたマイクロバブル水は、加圧状態で供給管72に供給される。ここで、マイクロバブル水発生装置71が、本発明の「気泡含有液体生成装置」に対応する。また、マイクロバブル水生成装置71にて生成されたマイクロバブル水が、本発明の「気泡を含有する液体(気泡含有液体)」に対応する。
【0024】
改良対象領域3内において、左右方向で隣り合う第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間(例えば中央部)には、孔部(図示せず)が予め掘削形成される。この孔部には、注入管73が挿入される。
注入管73は、供給管72の枝管であり、鉛直方向に延びている。注入管73は、その上端74にて供給管72に連通している。
図2に示す注入管73の配置では、54個の注入管73が、改良対象領域3内にて、平面視でマトリクス状(図では前後6個×左右9個)に配置されている。尚、改良対象領域3内に配置される注入管73の個数はこれに限らない。
【0025】
図1に示すように、注入管73の下端には注入口75が形成されている。この注入口75は、改良対象領域3内において、左右方向で隣り合う第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間(例えば中央部)に位置している。マイクロバブル水生成装置71から供給管72に供給されたマイクロバブル水は、注入管73内を通って、注入口75から改良対象領域3内に注入される。尚、本実施形態では、注入管73の下端部に逆止弁等を設置することで、改良対象領域3内への注入直前までマイクロバブル水の減圧を抑制する。これにより、マイクロバブル水の高圧状態が、改良対象領域3内への注入直前まで良好に維持され得るので、注入時の減圧による気泡径の拡大を抑制することができ、また、注入時の減圧による気泡量の減少を抑制することができる。従って、所望の平均径のマイクロバブルを多量に改良対象領域3内に注入することができる。尚、マイクロバブル水に含まれるマイクロバブル(微細気泡)については、注入管73の注入口75から改良対象領域3内へのマイクロバブル水の注入時に、マイクロバブルの平均径が200μm以下であることが好ましく、平均径が10μm〜60μmの範囲内であることが更に好ましい。また、このときのマイクロバブル水の注入圧は、例えば0.4MPa程度である。
【0026】
複数の注入管73については、各々の注入口75の、地盤上面からの深さ位置が互いに異なるように配置され得る。換言すれば、複数の注入管73については、各々から改良対象領域3内に注入されるマイクロバブル水の注入深さが互いに異なるように配置され得る。このように複数の注入管73を配置することにより、比較的不均一な性状の改良対象領域3であっても、マイクロバブル水と地下水との置換をより確実に行うことができる。また、注入管73から改良対象領域3内に注入されるマイクロバブル水の注入深さを適宜変更し、改良対象領域3内にマイクロバブル水を均質に注入することで、地盤不飽和化システム1の作動時間の短縮を図ることが可能である。
【0027】
次に、地盤不飽和化システム1を用いて改良対象領域3を不飽和化する方法について説明する。
改良対象領域3を不飽和化するには、まず、改良対象領域3に複数のドレーン材41(第1のドレーン材41a及び第2のドレーン材41b)を埋設して、地下水流生成システム4を構築する。
次に、注入管73の注入口75が、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に位置するように、注入管73を改良対象領域3内に設置して、マイクロバブル水注入システム7を構築する。
【0028】
次に、第1のドレーン材41aを注水用ドレーン材として機能させ、第2のドレーン材41bを揚水用ドレーン材として機能させて、地下水流生成システム4を第1の作動状態で作動させる。この作動では、真空ポンプ45を用いた揚水により改良対象領域3内に負圧をかけ、改良対象領域3内から第2のドレーン材41b、揚水ホース50b、揚水管43bを介して地下水を揚水する。同時に、給水槽44から注水管43a、注水ホース50a、第1のドレーン材41aを介して改良対象領域3内に流体(例えば、集水タンク46から還流された水)を注水し、改良対象領域3内に複数の水循環の流れを形成する。換言すれば、この工程では、第1のドレーン材41aから改良対象領域3への注水と、第2のドレーン材41bを介する改良対象領域3からの揚水とが同時に行われて、改良対象領域3内に第1のドレーン材41aから第2のドレーン材41bへ向かう地下水の流れが形成される。
【0029】
次に、マイクロバブル水注入システム7を作動させて、注入管73の注入口75から、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に、マイクロバブル水を注入する。
注入されたマイクロバブル水は、第1のドレーン材41aから第2のドレーン材41bへ向かう地下水の流れにより、改良対象領域3のうち、注入管73と第2のドレーン材41bとの間の部分(
図2に示す一点鎖線によって囲まれた部分S1)に浸透する。これにより、部分S1の土粒子にマイクロバブルが吸着して固定化される。このようにして、部分S1の不飽和化が実現される。
この後、地盤不飽和化システム1の作動を一旦停止する。
【0030】
次に、第1のドレーン材41aに接続されたバルブ42を用いて、第1のドレーン材41aを、注水用から揚水用へ切り替える。また、第2のドレーン材41bに接続されたバルブ42を用いて、第2のドレーン材41bを、揚水用から注水用へ切り替える。このようにして、第1のドレーン材41aを揚水用ドレーン材として機能させ、第2のドレーン材41bを注水用ドレーン材として機能させるようにした上で、地下水流生成システム4を第2の作動状態で作動させる。
この作動状態では、真空ポンプ45を用いた揚水により改良対象領域3内に負圧をかけ、改良対象領域3内から第1のドレーン材41a、揚水ホース50b、揚水管43bを介して地下水を揚水する。同時に、給水槽44から注水管43a、注水ホース50a、第2のドレーン材41bを介して改良対象領域3内に流体(例えば、集水タンク46から還流された水)を注水し、改良対象領域3内に複数の水循環の流れを形成する。換言すれば、この工程では、第2のドレーン材41bから改良対象領域3への注水と、第1のドレーン材41aを介する改良対象領域3からの揚水とが同時に行われて、改良対象領域3内に第2のドレーン材41bから第1のドレーン材41aに向かう地下水の流れが形成される。
【0031】
次に、マイクロバブル水注入システム7を再び作動させて、注入管73の注入口75から、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に、マイクロバブル水を注入する。
注入されたマイクロバブル水は、第2のドレーン材41bから第1のドレーン材41aに向かう地下水の流れにより、改良対象領域3のうち、注入管73と第1のドレーン材41aとの間の部分(
図3に示す二点鎖線によって囲まれた部分S2)に浸透する。これにより、部分S2の土粒子にマイクロバブルが吸着して固定化される。このようにして、部分S2の不飽和化が実現される。
このようにして、改良対象領域3の全域にわたって効率良く不飽和化が行われ得る。
【0032】
尚、揚水された地下水については、集水タンク46にて貯留された後に、図示しない配管を通って、給水槽44及び/又はマイクロバブル水生成装置71に戻され得る。
また、本実施形態では、専用の打設機を用いて容易に打設できるドレーン材41を用いて揚水及び注水を行うため、井戸を設置する場合と比較して、揚水・注水作業以前の準備に要する工期の短縮及び費用の削減が可能であり、また、多数のドレーン材41を設置することができる。また、ドレーン材41は打設深度の設定が容易であるため、改良対象領域3の地層構造が複雑な場合にも対応しやすい。更に、打設位置の変更を容易に行うことができるため、マイクロバブルによる地下水置換の均質性を向上させることができる。
また、本実施形態では、各ドレーン材41を揚水用と注水用とに切り替えることにより水流を逆転できるので、ドレーン材41の目詰まりの発生を抑制することができる。
【0033】
ところで、一般に、地下水流が形成されていない状態でマイクロバブル水を地盤中に高圧状態で注入すると、その注入圧によって地盤が局所的に破壊されることで地盤の強度が低下する可能性があり、また、ボイリング現象が発生する可能性がある。また、マイクロバブル水注入用の注入管の打設に伴う地盤の乱れ(弱部形成)に対応するために、注入管周りにシールグラウト等の措置が必要となる。また、一般に、地盤中に何らかの液体を注入する場合、注入された液体は、地盤のうち透水性の高い部分を選択的に流れるため、地盤のうち透水性が低い部分には注入液体が通過しない可能性がある。これらの要因から、地下水流が形成されていない状態で単にマイクロバブル水を地盤中に注入しただけでは、地盤内の均一な不飽和化が難しい場合がある。
【0034】
それゆえ、本実施形態では、マイクロバブル水を改良対象領域3内に均一に浸透させるため、複数のドレーン材41及び複数の注入管73を、それぞれ、上述のようにマトリクス状に配置している。また、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に地下水の流れを形成して、この地下水の流れにより、改良対象領域3の強度を上昇させた上で、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に、マイクロバブル水を注入している。
【0035】
ここで、地盤の地下水流と、地盤の強度との関係について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、地盤における最大主応力σ
1と最小主応力σ
3との関係を示す。
図4(b)は、最小主応力σ
3に関して、地下水流が発生していない状態(静水圧状態α)の間隙水圧u
3α及び有効応力σ’
3αと、地下水流が発生している状態(地下水流発生状態β)の間隙水圧u
3β及び有効応力σ’
3βとの関係を示す。
図4(c)は、モールの応力円及び、モール・クローンの破壊包絡線を示す図である。尚、
図4(c)に示すモール・クローンの破壊包絡線において、c’は粘着力を示し、また、tanφ’は摩擦係数を示す。
【0036】
図4(a)に示すように、地盤の全応力σについては、鉛直方向に作用する最大主応力σ
1と、水平方向に作用する最小主応力σ
3とが存在する。また、全応力σと、間隙水圧uと、有効応力σ’とについては、以下の式(1)の関係が成り立つ。
σ=u+σ’ ・・・(1)
尚、有効応力σ’は、土粒子骨格が負担する応力を意味する。また、間隙水圧uは、通常、地下水圧を表す。
【0037】
ここで、地盤の状態が、静水圧状態αから地下水流発生状態βに変化したとすると、最小主応力σ
3については、
図4(b)に示すように、全応力σ(最小主応力σ
3)は一定のままで、間隙水圧u
3αは間隙水圧u
3βにΔσ’
3分減少する一方、有効応力σ’
3αは有効応力σ’
3βにΔσ’
3分増加する。この地下水流形成に伴う有効応力増分をサクションと呼ぶ。
また、この有効応力の増加により、
図4(c)に示すように、モール・クローンの破壊包絡線に接するモールの応力円の半径が大きくなる。すなわち、せん断応力τについては、静水圧状態αにおける最大せん断応力τ
αmaxから地下水流発生状態βにおける最大せん断応力τ
βmaxにΔτ分増加する。それゆえ、地下水流の発生により、地盤の強度(せん断強度等)が上昇する。また、地下水流の流速が速いほど、上述の有効応力σ’及びせん断応力τが増大する傾向がある。
【0038】
本実施形態では、シール層40を設けた地下に地下水流を形成することで、改良対象領域3内の圧力と大気圧との差圧が改良対象領域3にサクションとして負荷され、この結果、全応力σが変わらないまま、間隙水圧uが低下して、その低下分だけ有効応力σ’が増加する。それゆえ、上述の
図4に示したように、地下水流の発生により、改良対象領域3の強度(せん断強度等)が上昇する。このようにして、地下水流を発生させて、改良対象領域3の強度を上昇させた上で、改良対象領域3内にマイクロバブル水を注入することにより、高圧状態のマイクロバブル水の注入による地盤の破壊を抑制することができる。
【0039】
次に、マイクロバブル水を用いて行った地盤の不飽和化に関する実験について
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、実験装置の概略構成を示す。
図5(a)は実験装置の垂直断面図である。
図5(b)は
図5(a)のB−B断面図である。
図6は実験の条件及び結果を示す表である。
【0040】
〔1〕実験装置の概略構成
実験装置100は、鋼製の容器101と、マイクロバブル水注入管102と、揚水用ドレーン材103と、注水用ドレーン材104と、を備える。
容器101は上面開口の直方体状であり、その寸法が、横W×縦L×高さH=1000mm×600mm×1500mmである。
容器101内には、改良対象層105を作成した。改良対象層105については、容器101内に、ケイ砂7号(均等係数1.6)を水中落下法によって相対密度28%に深さD=1000mmで堆積させて作成した。
【0041】
揚水用ドレーン材103及び注水用ドレーン材104は、それぞれ、鉛直方向に延びる帯状のプラスチックボードドレーンであり、容器101の横方向で互いに対向するように、改良対象層105内に設置されている。また、揚水用ドレーン材103と注水用ドレーン材104との間には、間隔C1=600mmが空いている。
揚水用ドレーン材103の上端には、キャップ106を介して、揚水管107の一端が接続されている。揚水管107の他端には、図示しない負圧ポンプに接続されている。改良対象層105からの揚水は、揚水用ドレーン材103を介し、負圧ポンプに0.08MPaの負圧を作用させることで実現される。
注水用ドレーン材104の上端には、キャップ108を介して、注水管109の一端が接続されている。注水管109の他端には、図示しない給水槽に接続されている。
【0042】
改良対象層105内において、揚水用ドレーン材103と注水用ドレーン材104との間には、マイクロバブル水注入管102が設置されている。マイクロバブル水注入管102の下端には注入口110が形成されており、この注入口110も、改良対象層105内において、揚水用ドレーン材103と注水用ドレーン材104との間に位置している。図示しないマイクロバブル水生成装置からマイクロバブル水注入管102に供給されたマイクロバブル水は、注入口110から改良対象層105内に注入される。尚、本実験において、マイクロバブル水生成装置では、それを構成する株式会社ニクニ製のマイクロバブルジェネレータ(MBG20ND07Z-1BH)によりマイクロバブル水を生成した。また、マイクロバブル生成圧を0.4MPaとした。ここで、マイクロバブル水注入管102と揚水用ドレーン材103との間には、間隔C2=500mmが空いている。
【0043】
改良対象層105内において、マイクロバブル水注入管102と揚水用ドレーン材103との間には、その4箇所に、簡易土壌水分計111(デカゴン社製ECH20-EC-5)が設けられている。本実験では、簡易土壌水分計111を用いて、改良対象層105の飽和度を計測した。
【0044】
〔2〕実験ケース
実験ケースとして、以下3つのケース(ケースA〜C)を実施した。
【0045】
・ケースA:マイクロバブル水注入管102を介して、改良対象層105内にマイクロバブル水を注入した。尚、揚水用ドレーン材103を介する改良対象層105からの揚水を実施しなかった。また、注水用ドレーン材104を介する改良対象層105への注水も実施しなかった。
【0046】
・ケースB:マイクロバブル水注入管102を介して、改良対象層105内にマイクロバブル水を注入した。また、揚水用ドレーン材103を介する改良対象層105からの揚水を実施した。尚、注水用ドレーン材104を介する改良対象層105への注水を実施しなかった。
【0047】
・ケースC:マイクロバブル水注入管102を介して、改良対象層105内にマイクロバブル水を注入した。また、揚水用ドレーン材103を介する改良対象層105からの揚水を実施した。更に、注水用ドレーン材104を介する改良対象層105への注水も実施した。
【0048】
尚、ケースB及びCについては、改良対象層105の上面+300mmに水位を設け、これを維持することによって、改良対象層105の上面から改良対象層105内に水を供給した。
また、ケースA〜Cにおけるマイクロバブル水の注入速度と、ケースB及びCにおける改良対象層105の上面からの給水の速度(注水速度)及び揚水用ドレーン材103を介する揚水の速度(揚水速度)と、ケースCにおける注水用ドレーン材104を介する注水の速度(注水速度)とについては、
図6に示されている。
【0049】
〔3〕実験結果
ケースA〜Cの実験結果が
図6に示されている。ここで、
図6に示す運転時間とは注水・揚水を行った総時間を意味し、また、最終飽和度とは運転終了後の改良対象層105内の飽和度を意味する。
【0050】
ケースAでは、改良対象層105の飽和度を殆ど低下できなかった。また、100L/h程度のマイクロバブル水の注入速度で実験を行ったが、注入圧によって改良対象層105に液状化が発生した。
ケースBにおいて、改良対象層105内の飽和度を7〜11%程度低下させるには、180h程度の運転時間を要した。また、揚水及びマイクロバブル水注入を停止した状態で、改良対象層105内におけるマイクロバブルの滞留時間は5h程度であり、この時間を超えると改良対象層105内の飽和度の上昇が顕著となるため、揚水及びマイクロバブル水注入を再開しなければならなかった。
【0051】
ケースCにおいて、改良対象層105内の飽和度を7〜11%程度低下させるには、115h程度の運転時間を要した。また、揚水、注水、及びマイクロバブル水注入を停止した状態で、改良対象層105内におけるマイクロバブルの滞留時間は20h程度であった。従って、ケースBに比べて、マイクロバブルの滞留時間が長くなった。また、ケースCでは、マイクロバブル水の注入速度をケースAの約3倍まで増やしても、揚水用ドレーン材103を介する揚水と、注水用ドレーン材104を介する注水とを行って改良対象層105内に水流を形成することで、上述のサクションの効果によって、マイクロバブル水の注入圧による改良対象層105の破壊を抑制することができた。また、ケースCでは、ケースBよりも短時間でこれと同等の飽和度低下を実現することができた。
【0052】
本実施形態によれば、地盤不飽和化システム1は、地盤2の改良対象領域3内に設置され、鉛直方向に延在して通水性を有し、地盤上から改良対象領域3内への注水に用いられる第1のドレーン材41aと、第1のドレーン材41aと平行に改良対象領域3内に設置され、第1のドレーン材41aと所定の間隔Cを有し、鉛直方向に延在して通水性を有し、改良対象領域3内から地盤上への揚水に用いられる第2のドレーン材41bと、マイクロバブル水(気泡を含有する液体)を生成するマイクロバブル水生成装置71(気泡含有液体生成装置)と、マイクロバブル水生成装置71から供給されるマイクロバブル水を改良対象領域3内に注入する注入口75を有して改良対象領域3内に設置される注入管73(気泡含有液体注入管)と、を含んで構成される。注入管73の注入口75は、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に位置する。これにより、第1のドレーン材41aから改良対象領域3への注水と、第2のドレーン材41bを介する改良対象領域3からの揚水と、を同時に行って、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に地下水の流れを生じさせ、この地下水の流れをマイクロバブル水の改良対象領域3への浸透流として利用することができる。従って、改良対象領域3内にて地下水位差を極端に設けることなく、改良対象領域3内でのマイクロバブル水の流れに指向性を持たせて、改良対象領域3内の地下水をマイクロバブル水に置換することができるので、特に改良対象領域3内の揚水側(第2のドレーン材41b側)においても、地下水からマイクロバブル水への置換が確実に行われ得る。また、改良対象領域3内にて地下水位差を極端に設ける必要がないので、揚水停止後に改良対象領域3内に流入する自然地下水の流入量を抑制することができる。従って、改良対象領域3内に浸透した気泡(マイクロバブル)が、流入する自然地下水により当該領域外に押し出される可能性を大幅に低減でき、ひいては、地盤の不飽和化作業を効率良く行うことができる。
【0053】
また本実施形態によれば、地盤不飽和化システム1は、第1のドレーン材41aを、地盤上から改良対象領域3への注水用と、改良対象領域3から地盤上への揚水用と、に切り替える第1の切替手段(バルブ42)と、第2のドレーン材41bを、改良対象領域3から地盤上への揚水用と、地盤上から改良対象領域3への注水用と、に切り替える第2の切替手段(バルブ42)と、を含んで構成される。これにより、第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に形成される地下水の流れの方向を容易に反転させることができるので、改良対象領域3内の地下水の流れ方向を容易に変更することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、地盤不飽和化システム1は、改良対象領域3の地盤上面を覆うように設置されるシール層40を含んで構成される。これにより、改良対象領域3については、降雨等の地下浸透を抑制することができるので、降雨浸透に伴う下向きの地下水流によるマイクロバブル水の逸散を抑制することができる。また、真空ポンプ45を用いて地下水を吸引するときに、地上から改良対象領域3内への空気の流入を抑制することができるので、真空ポンプ45による地下水の汲み上げを効率良く行うことができる。
【0055】
また本実施形態によれば、地盤不飽和化システム1は、複数の注入管73(気泡含有液体注入管)を含んで構成され、各注入管73の注入口75の、地盤上面からの深さ位置が互いに異なる。このように複数の注入管73を配置することで、改良対象領域3の地層構造が複雑な場合にも対応することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間の所定の間隔Cは、0.6m〜5.0mの範囲内である。これにより、改良対象領域3の揚水側にて極端な地下水位の低下を生じさせることなく、地下水の流れを形成することができるので、地下水位低下による地盤沈下のリスクを軽減することができる。尚、第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間の間隔については、改良対象領域3の排水性や透水性等に応じて、任意に狭めたり広げたりすることが可能である。
【0057】
また本実施形態によれば、注入管73(気泡含有液体注入管)の注入口75から改良対象領域3内へのマイクロバブル水(気泡含有液体)の注入時に、気泡(マイクロバブル)の平均径が10μm〜60μmの範囲内である。このように、一般的な気泡に比べて平均径が小さい気泡は、水中における気泡上昇速度が極めて低い。また、土粒子に吸着して固定しやすい。それゆえ、改良対象領域3内にて、気泡が比較的長期にわたって滞留することができ、ひいては、地盤の不飽和化の効果を、比較的長期にわたって持続することができる。
【0058】
また本実施形態によれば、ドレーン材41は、ペーパードレーン又はプラスチックボードドレーンである。これにより、ドレーン材41を密集させた状態で任意の位置に配置できる。ドレーン材41を平面的に細かく配置することで、改良対象領域3の透水係数が小さい場合でも、地下水流を効率的に形成することができる。
【0059】
また本実施形態によれば、地盤不飽和化システム1を用いて地盤の改良を行う方法として、改良対象領域3内に第1のドレーン材41a及び第2のドレーン材41bを設置し、注入管73(気泡含有液体注入管)の注入口75が、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に位置するように、注入管73を改良対象領域3内に設置し、第1のドレーン材41aから改良対象領域3への注水と、第2のドレーン材41bを介する改良対象領域3からの揚水と、を同時に行って、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に地下水の流れを生じさせ、注入管73の注入口75から、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に、マイクロバブル水(気泡含有液体)を注入する。これにより、第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間の地下水の流れをマイクロバブル水の改良対象領域3への浸透流として利用することができる。従って、改良対象領域3内にて地下水位差を極端に設けることなく、改良対象領域3内でのマイクロバブル水の流れに指向性を持たせて、改良対象領域3内の地下水をマイクロバブル水に置換することができるので、特に改良対象領域3内の揚水側においても、地下水からマイクロバブル水への置換が確実に行われ得る。また、改良対象領域3内にて地下水位差を極端に設ける必要がないので、揚水停止後に改良対象領域3内に流入する自然地下水の流入量を抑制することができる。従って、改良対象領域3内に浸透した気泡(マイクロバブル)が、流入する自然地下水により当該領域外に押し出される可能性を大幅に低減でき、ひいては、地盤の不飽和化作業を効率良く行うことができる。
【0060】
尚、上述の実施形態では、複数のドレーン材41をマトリクス状に配置したが、ドレーン材41の配置はこれに限らない。
図7は、ドレーン材4の配置の変形例を示す。
図7に示すように、複数のドレーン材41(第1のドレーン材41a及び第2のドレーン材41b)を千鳥状に配置してもよい。この場合においても、注入管73の注入口75が、改良対象領域3内における第1のドレーン材41aと第2のドレーン材41bとの間に位置するように、注入管73が改良対象領域3内に設置される。
また、上述の実施形態では、給水槽44を用いてドレーン材41への注水を行ったが、給水槽以外に給水ポンプや注水ポンプを使用してもよい。
また、上述の実施形態では、揚水された地下水を集水タンク46にて貯留するように構成したが、これに代えて、揚水された地下水を場外排水するように構成してもよい。