特許第6050180号(P6050180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6050180積層構造体およびフレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050180
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】積層構造体およびフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/095 20060101AFI20161212BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20161212BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20161212BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20161212BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G03F7/095
   G03F7/004 512
   G03F7/004 503Z
   G03F7/037 501
   H05K1/03 670Z
   H05K3/28 F
   H05K3/28 D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-107519(P2013-107519)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-228664(P2014-228664A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年12月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
(72)【発明者】
【氏名】林 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】小池 直之
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−091430(JP,A)
【文献】 特開2005−300857(JP,A)
【文献】 特開2011−017897(JP,A)
【文献】 特開2009−048170(JP,A)
【文献】 特開2009−025699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性ポリイミドを含まないアルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層(A)と、
該樹脂層(A)を介してフレキシブルプリント配線板に積層される樹脂層(B)と、
を有する積層構造体であって、
前記樹脂層(B)が、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂と光塩基発生剤と熱反応性化合物を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)が共に、光照射によりパターニングが可能である請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方に用いられる請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうちの少なくともいずれか1つの用途として用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の積層構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の積層構造体の少なくとも片面が、フィルムで支持または保護されていることを特徴とするドライフィルム。
【請求項6】
フレキシブルプリント配線板上に請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の積層構造体の硬化物の絶縁膜を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板の絶縁膜として有用な積層構造体およびフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末の普及による電子機器の小型薄型により、回路基板の小スペース化が必要となってきている。そのため、折り曲げて収納できるフレキシブルプリントは配線板の用途が拡大し、かかるフレキシブルプリントは配線板に対する信頼性もこれまで以上に高いものが求められている。
【0003】
これに対し現在、フレキシブルプリント配線板の絶縁信頼性を確保するための絶縁膜として、折り曲げ部(屈曲部)には、耐熱性および屈曲性などの機械的特性に優れたポリイミドをベースとしたカバーレイが用いられ(例えば、特許文献1,2参照)、実装部(非屈曲部)には、電気絶縁性やはんだ耐熱性などに優れ微細加工が可能な感光性樹脂組成物を用いた混載プロセスが広く採用されている。
【0004】
すなわち、耐熱性および屈曲性などの機械的特性に優れるポリイミドをベースとしたカバーレイでは、金型打ち抜きによる加工を必要とするため、微細配線には不向きである。そのため、微細配線が必要となるチップ実装部には、フォトリソグラフィーによる加工ができるアルカリ現像型の感光性樹脂組成物(ソルダーレジスト)を部分的に併用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−263692号公報
【特許文献2】特開昭63−110224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、フレキシブルプリントは配線板の製造工程では、カバーレイを張り合わせる工程とソルダーレジストを形成する工程の混載プロセスを採用せざるを得なく、コストと作業性に劣るという問題があった。
【0007】
このような混載プロセスに対し、従来、ソルダーレジストとしての絶縁膜をフレキシブルプリント配線板のカバーレイとして適用する提案がなされている。しかしながら、かかるソルダーレジスト用の樹脂組成物では、カバーレイとしての耐衝撃性や屈曲性などの信頼性が不十分であり、折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスの実用化には至っていない。また、ソルダーレジスト用の樹脂組成物では、アクリル系の光重合による硬化収縮も伴うため、フレキシブル配線板の反りなど寸法安定性にも課題があった。
【0008】
これに対し、アルカリ溶解性と機械特性が両立できる感光性ポリイミドとして従来、ポリイミド前駆体を利用し、パターニングした後に熱閉環する方法も提案されている。しかしながら、高温処理を必要とするなど配線板製造の作業性には課題が残り、依然として実用化には至っていない。
【0009】
また、カバーレイとしての絶縁膜をフレキシブルプリント配線板のソルダーレジストとして適用することも考えられるが、かかるカバーレイ用のフィルムでは、パターン形成に煩雑な工程を必要とし、またパンチングによる孔空けなどの加工精度が低いことや熱圧着時の樹脂の滲み出しにより、微細パターンの形成に対応しにくいという問題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、耐衝撃性や屈曲性、低反り性などの信頼性と加工精度に優れ、かつ作業性に優れたフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜、特に折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスに適した積層構造体と、その硬化物を保護膜、例えば、カバーレイまたはソルダーレジストとして有する、耐衝撃性や屈曲性などの信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、以下の内容を要旨とする本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の積層構造体は、アルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層(A)と、該樹脂層(A)を介してフレキシブルプリント配線板に積層される樹脂層(B)と、を有する積層構造体であって、前記樹脂層(B)が、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂と光塩基発生剤と熱反応性化合物を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の積層構造体は、前記樹脂層(A)と前記樹脂層(B)が共に、光照射によりパターニングが可能であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の積層構造体は、フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方に用いることができ、また、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうちの少なくともいずれか1つの用途として用いることができる。
【0014】
本発明のドライフィルムは、前記積層構造体の少なくとも片面が、フィルムで支持または保護されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板上に前記積層構造体の層を形成し、光照射によりパターニングし、現像液にてパターンを一括して形成してなる絶縁膜を有することを特徴とするものである。
本発明のフレキシブルプリント配線板は、本発明にかかる積層構造体を使用せずに、樹脂層(A)と樹脂層(B)を順次に形成し、その後に、光照射によりパターニングし、現像液にてパターンを一括して形成してもよい。
なお、本発明において「パターン」とはパターン状の硬化物、すなわち絶縁膜を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐衝撃性や屈曲性、低反り性などの信頼性と加工精度に優れ、かつ作業性に優れたフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜、特に折り曲げ部(屈曲部)と実装部(非屈曲部)の一括形成プロセスに適した積層構造体と、その硬化物を絶縁膜、例えば、カバーレイやソルダーレジスト、層間絶縁層として有する、耐衝撃性や屈曲性などの信頼性に優れるフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。
(積層構造体)
本発明の積層構造体は、アルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層(A)と、該樹脂層(A)を介してフレキシブルプリント配線板に積層される樹脂層(B)とを有する積層構造体であって、前記樹脂層(B)が、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂と光塩基発生剤と熱反応性化合物を含む感光性熱硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【0019】
このような本発明の積層構造体は、フレキシブルプリント配線板上に積層可能で、かつ、フレキシブルプリント配線板上で光照射によりパターニングが可能であり、現像によりパターンを一括して形成することが可能となる。
【0020】
このような本発明の積層構造体によれば、樹脂層(B)として、(1)イミド環が分子中に存在する樹脂を用いたこと、(2)アルカリ溶解性樹脂と熱反応性化合物との付加反応を利用した組成物を用いたことにより、この層が強化層として機能し、従前のソルダーレジスト組成物や層間絶縁材料からなる樹脂層(A)を用いても、耐衝撃性や屈曲性、低反り性などの信頼性と加工精度に優れ、かつ作業性に優れたフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜を提供することができる。
【0021】
本発明の積層構造体は、フレキシブル基板に銅回路が形成されたフレキシブルプリント配線板上に、樹脂層(A)と樹脂層(B)とを順に有し、少なくとも樹脂層(B)が光照射によりパターニングが可能であり、かつ、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが現像によりパターンを一括形成することが可能なものである。
【0022】
(積層構造体を構成する樹脂層(A))
(樹脂層(A)を構成するアルカリ現像型樹脂組成物)
樹脂層(A)を構成するアルカリ現像性樹脂組成物としては、フェノール性水酸基、チオール基およびカルボキシル基のうち1種以上の官能基を含有し、アルカリ溶液で現像可能な樹脂を含む組成物であれば良く、光硬化性樹脂組成物でも熱硬化性樹脂組成物でも用いることができる。好ましくはフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物を含む樹脂組成物が挙げられ、公知慣用のものが用いられる。
【0023】
例えば、従来からソルダーレジスト組成物として用いられている、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する化合物と、光重合開始剤と、熱反応性化合物を含む光硬化性熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0024】
ここで、カルボキシル基含有樹脂またはカルボキシル基含有感光性樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、光重合開始剤、熱反応性化合物としては、公知慣用のものが用いられる。
【0025】
(積層構造体を構成する樹脂層(B))
(樹脂層(B)を構成する感光性熱硬化性樹脂組成物)
樹脂層(B)を構成する感光性熱硬化性樹脂組成物は、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂と光塩基発生剤と熱反応性化合物を含む。
【0026】
(イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂)
本発明において、イミド環を有するアルカリ溶解性樹脂は、カルボキシル基や酸無水物基などのアルカリ溶解性基とイミド環を有するものである。このアルカリ溶解性樹脂へのイミド環の導入には公知慣用の手法を用いることができる。例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分及び/又はイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。イミド化は熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して製造することができる。
【0027】
ここで、カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体を含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0028】
テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3−フルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’”,4,4’”−クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3””,4,4””−キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2−テトラフルオロ−1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−デカフルオロ−1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルシロキサン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタンニ無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス〔3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチニリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、3,3’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロオキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロスルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ビス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、6,6’−ジフルオロ−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’−テトラキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’−ヘキサキス(トリフルオロメチル)−2,2−パーフルオロプロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)などが挙げられる。
【0029】
トリカルボン酸無水物としては、例えば、トリメリット酸無水物や核水添トリメリット酸無水物などが挙げられる。
【0030】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミンを用いることができるが、これらのアミンに限定されるものではない。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン(PPD)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸などのベンゼン核1つのジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン(o−トリジン)、2,2’−ジメチルベンジジン(m−トリジン)、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのベンゼン核2つのジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミンなどの芳香族ジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミンが挙げられ、脂肪族ポリエーテルアミンとしては、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系の多価アミン等が挙げられる。
【0032】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート及びその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類及びその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
ジイソシアネートとして、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート及びその異性体、多量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシシレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、
あるいは前記芳香族ジイソシアネートを水添した脂環式ジイソシアネート類及び異性体、もしくはその他汎用のジイソシアネート類が挙げられる。
【0033】
以上説明したようなイミド環を有するアルカリ溶解性樹脂はアミド結合を有していてもよい。これはイソシアネートとカルボン酸を反応させて得られるアミド結合であってもよく、それ以外の反応によるものでもよい。さらにその他の付加および縮合からなる結合を有していてもよい。
【0034】
また、このアルカリ溶解性樹脂へのイミド環の導入には、公知慣用のカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアルカリ溶解性ポリマー、オリゴマー、モノマーを用いてもよく、例えばこれらの公知慣用のアルカリ溶解性樹脂類を単独でもしくは上記のカルボン酸無水物成分と組み合わせて、上記のアミン/イソシアネート類と反応させて得られる樹脂であってもよい。
【0035】
このようなアルカリ溶解性基とイミド環を有するアルカリ溶解性樹脂の合成においては、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。かかる有機溶媒としては、原料であるカルボン酸無水物類、アミン類、イソシアネート類と反応せず、かつこれら原料が溶解する溶媒であれば問題はなく、特にその構造は限定されない。具体的に例示すると、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、カプロラクタム等のラクタム溶媒、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノ−ル、4−クロロフェノ−ル、4−メトキシフェノール、2,6−ジメチルフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレアなどが挙げられる。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども添加して使用することができる。なかでも原料の溶解性が高いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性溶媒が好ましい。
【0036】
以上説明したようなカルボキシル基又は酸無水物基などのアルカリ溶解性基とイミド環を有するアルカリ溶解性樹脂は、フォトリソグラフィー工程に対応するために、その酸価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好適には60〜150mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が20mgKOH/g以上の場合、アルカリに対する溶解性が増加し、現像性が良好となり、さらには、光照射後の熱硬化成分との架橋度が高くなるため、十分な現像コントラストを得ることができる。また、この酸価が200mgKOH/g以下の場合には、後述する光照射後のPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程でのいわゆる熱かぶりを抑制でき、プロセスマージンが大きくなる。
【0037】
また、このアルカリ溶解性樹脂の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、質量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、さらに2,000〜50,000がより好ましい。
この分子量が1,000以上の場合、露光・PEB後に十分な耐現像性と硬化物性を得ることができる。また、分子量が100,000以下の場合、アルカリ溶解性が増加し、現像性が向上する。
【0038】
(光塩基発生剤)
樹脂層(B)において用いる光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、後述する熱反応性化合物の重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。
光塩基発生剤として、例えば、α−アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N−ホルミル化芳香族アミノ基、N−アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル化合物、α−アミノアセトフェノン化合物が好ましい。α−アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。
【0039】
その他の光塩基発生剤として、WPBG-018(商品名:9-anthrylmethylN,N’-diethylcarbamate),WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine),WPBG-082(商品名:guanidinium2-(3-benzoylphenyl)propionate), WPBG-140 (商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)等を使用することもできる。
【0040】
α―アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成する。α−アミノアセトフェノン化合物の具体例としては、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン(イルガキュア369、商品名、BASFジャパン社製)や4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン(イルガキュア907、商品名、BASFジャパン社製)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア379、商品名、BASFジャパン社製)などの市販の化合物またはその溶液を用いることができる。
【0041】
オキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。かかるオキシムエステル化合物としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI−325、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、アデカ社製N−1919、NCI−831などが挙げられる。また、特許第4344400号公報に記載された、分子内に2個のオキシムエステル基を有する化合物も好適に用いることができる。
【0042】
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0043】
このような光塩基発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂組成物中の光塩基発生剤の配合量は、好ましくは熱反応性化合物100質量部に対して0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは、0.1〜30質量部である。0.1質量部以上の場合、光照射部/未照射部の耐現像性のコントラストを良好に得ることができる。また、40質量部以下の場合、硬化物特性が向上する。
【0044】
(熱反応性化合物)
樹脂層(B)において用いる熱反応性化合物は、熱による硬化反応が可能な官能基を有する樹脂である。エポキシ樹脂、多官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0045】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、公知のものをいずれも使用できる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加された2官能エポキシ化合物であってもよい。
【0046】
多官能エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0047】
その他の液状2官能性エポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、(3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル)−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルメチル)−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0049】
上記熱反応性化合物の配合量としては、アルカリ溶解性樹脂との当量比(カルボキシル基などのアルカリ溶解性基:エポキシ基などの熱反応性基)が1:0.1〜1:10であることが好ましい。このような配合比の範囲とすることにより、現像が良好となり、容易に微細パターンを形成できる。上記当量比は、1:0.2〜1:5であることがさらに好ましい。
【0050】
(高分子樹脂)
以上説明したような樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、得られる硬化物の可撓性、指触乾燥性の向上を目的に公知慣用の高分子樹脂を配合することができる。このような高分子樹脂としてはセルロース系、ポリエステル系、フェノキシ樹脂系ポリマー、ポリビニルアセタール系、ポリビニルブチラール系、ポリアミド系、ポリアミドイミド系バインダーポリマー、ブロック共重合体、エラストマー等が挙げられる。
この高分子樹脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0051】
(無機充填剤)
また、樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために、無機充填剤を配合することができる。このような無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、無定形シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ノイブルグシリシャスアース等が挙げられる。
【0052】
(着色剤)
さらに、樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、公知慣用の着色剤を配合することができる。
従来、プリント配線板における銅回路のエッジ部では、パターン層の着色力が不十分な場合、パターン層の形成後の熱履歴において、銅が変色し、外観上、薄い部分だけ変色して見える。代表的な熱履歴としてはマーキングの熱硬化、反り直し、実装前の予備加熱、実装などがある。
このため、従来はパターン層に着色剤を多く配合して着色力を高めることにより、銅回路のエッジ部分だけ変色して見えるという問題を解消していた。
しかし、着色剤は、光吸収性を有するため、光が深部にまで透過することを阻害してしまう。その結果、着色剤を含有する組成物では、アンダーカットが生じやすいため、十分な密着性を得ることが難しい。
【0053】
これに対して、本発明で用いる樹脂組成物では、深部まで塩基が化学的に増殖することにより、樹脂層の深部まで十分硬化できる。
従って、本発明において用いる樹脂組成物によれば、着色剤を含有する場合でも、銅回路の隠蔽性に優れ、かつ、密着性に優れたパターン層を形成できる。
【0054】
(有機溶剤)
樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、樹脂組成物の調製のためや、基材やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のために、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0055】
(その他の任意成分)
樹脂層(A)および樹脂層(B)において用いる樹脂組成物には、必要に応じてさらに、メルカプト化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知慣用のものを用いることができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0056】
(製造方法)
次に、本発明の積層構造体から本発明のフレキシブルプリント配線板を製造する方法について図1の工程図に基づき説明する。
図1の積層工程は、カルボキシル基含有樹脂などを含むアルカリ現像型樹脂組成物からなる樹脂層3と、樹脂層3上の、1分子中に1個以上のイミド環と1個以上のカルボキシル基とを有するアルカリ溶解性樹脂と、光塩基発生剤と、熱反応性化合物と、を含むアルカリ現像型の感光性熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層4とからなる積層構造体が、銅回路2が形成されたフレキシブルプリント配線基材1に形成されている状態を示す。
【0057】
これまでのソルダーレジスト層のみの樹脂層では、耐衝撃性と耐屈曲性などの機械的特性が悪かったが、本発明の積層構造体によれば、樹脂層4として、(1)イミド環が分子中に存在する樹脂を用いたこと、(2)アルカリ溶解性樹脂と熱反応性化合物との付加反応を利用した組成物を用いたことにより、この層が強化層として機能し、従前のソルダーレジスト組成物からなる樹脂層3を用いても、耐衝撃性や屈曲性、低反り性などの信頼性と加工精度に優れ、かつ作業性に優れたフレキシブルプリント配線板用の絶縁膜を提供することができる。
【0058】
図1の光照射工程は、樹脂層4上にマスク5を配置し、ネガ型のパターン状に光照射することにより、熱硬化性樹脂組成物に含まれる光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する工程を示す。この工程では、光塩基発生剤から塩基性物質(以下、「塩基」と略記する場合がある。)が発生し、この発生した塩基によって光塩基発生剤が不安定化して、さらに塩基が発生する。このようにして塩基が発生することにより樹脂層の深部まで化学的に増殖することにより、樹脂層の深部まで十分に硬化することができると考えられる。その後の熱硬化の際には、この塩基がアルカリ現像性樹脂と熱反応性化合物との付加反応の触媒として作用しながら、付加反応が進行するため、光照射部では、深部まで樹脂層が十分に硬化する。このように、本発明における硬化性樹脂組成物の硬化は、例えば、熱反応によるエポキシの開環反応であるため、光反応で進行する場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。
【0059】
図1の加熱工程は、光照射工程の後、樹脂層を加熱することにより、光照射部を硬化する工程を示す。これにより、光照射工程で発生した塩基にて樹脂層を深部まで十分に硬化して、硬化特性に優れたパターン層を得ることができる。
【0060】
図1の現像工程は、アルカリ性水溶液によって現像することにより、未照射部が除去され、ネガ型のパターン層を形成する工程を示す。
さらに、図1の第2光照射工程は、残った光塩基発生剤を活性化して塩基を発生させるために、所望に応じて紫外線を照射する工程を示す。
さらにまた、図1の熱硬化工程は、パターン層を十分に熱硬化させるために、必要に応じて熱硬化(ポストキュア)を行う工程を示す。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0061】
[積層工程]
積層工程は、基材に、本発明の積層構造体を形成する工程である。ここで、積層構造体を構成する各樹脂層は、例えば、樹脂層3、4を構成する樹脂組成物を、順次、基材に塗布及び乾燥することにより樹脂層3、4を形成するか、あるいは、樹脂層3、4を構成する樹脂組成物をそれぞれドライフィルムの形態にしたものを基材に順次にラミネートする方法により形成することができる。また、2層構造のドライフィルム形態にしたものを基材にラミネートする方法により形成してもよい。
【0062】
樹脂組成物の基材への塗布方法は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の公知の方法でよい。また、乾燥方法は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより支持体に吹き付ける方法等、公知の方法でよい。
【0063】
なお、ここで基材としては、予め回路形成されたフレキシブルプリント配線基材である。
また、樹脂層3と樹脂層4との間に、所期の効果に加え更に別な効果を得るために更なる層を設けてもよい。
【0064】
また、本発明においては、樹脂層3は、銅回路への追従性の観点より樹脂層4よりも厚い方が好ましい。また、本発明の積層構造体は、その特性から、フレキシブルプリント配線板の屈曲部および非屈曲部のうちの少なくともいずれか一方に用いることができ、さらに、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、ソルダーレジストおよび層間絶縁材料のうちの少なくともいずれか1つの用途として用いることができる。
【0065】
[光照射工程]
光照射工程は、ネガ型のパターン状に光照射にて熱硬化性樹脂組成物に含まれる光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する工程である。光照射工程では、光照射部で発生した塩基により、光塩基発生剤が不安定化し、塩基が化学的に増殖することにより、樹脂層の深部まで十分硬化できる。
【0066】
光照射に用いられる光照射機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した光照射機、(超)高圧水銀ランプを搭載した光照射機、水銀ショートアークランプを搭載した光照射機、もしくは(超)高圧水銀ランプ等の紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。パターン状の光照射用のマスクは、ネガ型のマスクである。
【0067】
活性エネルギー線としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光又は散乱光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく光塩基発生剤を活性化させることができる。この範囲のレーザー光を用いていればガスレーザー、固体レーザーのいずれでもよい。また、その光照射量は膜厚等によって異なるが、一般には100〜1500mJ/cm、好ましくは300〜1500mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0068】
[加熱工程]
加熱工程は、加熱により光照射部を硬化する。加熱工程は、光照射工程で発生した塩基により深部まで硬化できる。この工程は、いわゆるPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程と言われる工程である。
加熱温度は、熱硬化性樹脂組成物のうち光照射部は熱硬化するが、未照射部は熱硬化しない温度であることが好ましい。
例えば、加熱工程は、未照射の熱硬化性樹脂組成物の発熱開始温度または発熱ピーク温度よりも低く、かつ、光照射した熱硬化性樹脂組成物の発熱開始温度または発熱ピーク温度よりも高い温度で加熱することが好ましい。このように加熱することにより、光照射部のみを選択的に硬化することができる。
【0069】
ここで、加熱温度は、例えば、80〜140℃である。加熱温度を80℃以上とすることにより、光照射部を十分に硬化できる。一方、加熱温度を140℃以下とすることにより、光照射部のみを選択的に硬化できる。加熱時間は、例えば、10〜100分である。加熱方法は、上記乾燥方法と同様である。
なお、未照射部では、光塩基発生剤から塩基が発生しないため、熱硬化が抑制される。
【0070】
[現像工程]
現像工程は、アルカリ現像により、未照射部を除去して、ネガ型のパターン層を形成する。
現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等公知の方法によることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エタノールアミンなどのアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液またはこれらの混合液を用いることができる。
【0071】
[第2光照射工程]
現像工程の後に、さらに、紫外線照射第2光照射工程を含むことが好ましい。
この第2光照射工程は、光照射工程のパターン層内で活性化せずに残った光塩基発生剤を活性化して、塩基を発生させる。
第2光照射工程における紫外線の波長および光照射量(露光量)は、工程(B)と同じであってもよく、異なっていてもよい。光照射量(露光量)は、例えば、150〜2000mJ/cmである。
【0072】
[熱硬化工程]
現像工程の後に、さらに、熱硬化(ポストキュア)熱硬化工程を含むことが好ましい。
現像工程の後に第2光照射工程と熱硬化工程をともに行う場合、熱硬化工程は、第2光照射工程の後に行うことが好ましい。
この熱硬化工程は、光照射工程、または光照射工程および第2光照射工程により光塩基発生剤から発生した塩基により、パターン層を十分に熱硬化させる。熱硬化工程の時点では、未照射部を既に除去しているため、熱硬化工程は、未照射の熱硬化性樹脂組成物の硬化反応開始温度以上の温度で行うことができる。これにより、パターン層を十分に熱硬化させることができる。加熱温度は、例えば、150℃以上である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例、比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例、比較例によって制限されるものではない。
【0074】
(実施例1、2、比較例1)
合成例:<イミド環・カルボキシル基含有樹脂の合成>
撹拌機、窒素導入管、分留環、冷却環を取り付けたセパラブル3つ口フラスコに、3,5−ジアミノ安息香酸を12.2g、2,2’−ビス[4―(4―アミノフェノキシ)フェニル]プロパン8.2g、NMPを30g、γ−ブチロラクトンを30g、4,4’−オキシジフタル酸無水物を27.9g、トリメリット酸無水物を3.8g加え、窒素雰囲気下、室温、100rpmで4時間撹拌した。次いで、トルエンを20g加え、シリコン浴温度180℃、150rpmでトルエンおよび水を留去しながら4時間撹拌してポリイミド溶液を得た。
<各樹脂層を構成する樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の配合に従って、実施例および比較例に記載の材料をそれぞれ配合、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、各樹脂層を構成する樹脂組成物を調製した。表中の値は、特に断りが無い限り、質量部である。
【0075】
<樹脂層(A)の形成>
銅厚18μmの回路が形成されているフレキシブルプリント配線基材を用意し、メック社CZ−8100を使用して、前処理を行った。その後、前記前処理を行ったフレキシブルプリント配線基材に、実施例1、2および比較例1の樹脂組成物を夫々表1に示すコーティング方法にて乾燥後で膜厚が25μmになるようにコーティングを行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、樹脂組成物からなる樹脂層(A)を形成した。
【0076】
<樹脂層(B)の形成>
上記で形成された樹脂層(A)上に実施例1および2の樹脂組成物を表1に示すコーティング方法にて乾燥後で10μmになるようにコーティングを行った。その後、熱風循環式乾燥炉にて90℃/30分にて乾燥し、樹脂組成物からなる樹脂層(B)を形成した。なお、比較例1には、樹脂層(B)の形成は行わなかった。
【0077】
<現像性(パターニング)、硬化特性評価>
上記で得られた樹脂層を備える基材に対して、ORC社HMW680GW(メタルハライドランプ、散乱光)にて表1に示す露光量でネガ型のパターン状に光照射した。次いで90℃で60分間加熱処理を行った。その後、30℃の、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液中に基材を浸漬して3分間現像を行い、現像性の可否を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃/60分間熱処理を行い、パターン状の硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜に対し、MIT試験(R=0.38mm/宇部興産(株)製ユーピレックス12.5μmの基材使用)および表面硬度試験(鉛筆硬度試験)を実施し、屈曲性及び表面硬度を評価した。得られた結果を下記の表1に示す。
【0079】
【表1】
*1酸価86mgKOH/g Mw:10000
*2ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:380)(三菱化学(株)製)
*3オキシム型光重合開始剤(BASF社製)
*4ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製)
*5トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(東亞合成(株)製)
*6ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:900)(三菱化学(株)製)
*7ビスフェノールA型エポキシ樹脂(分子量:500)(三菱化学(株)製)
*8アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤 (BASF社製)
【0080】
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1および2のフレキシブルプリント配線板は、比較例1のフレキシブルプリント配線板と同様に現像することができ、屈曲性及び表面硬度については大幅に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0081】
1 フレキシブルプリント配線基材
2 銅回路
3 樹脂層
4 樹脂層
5 マスク
図1