【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、
一端側が閉塞部材で閉塞され、周壁部にガス排出口を有している点火手段室ハウジングと、
前記点火手段室ハウジング内の閉塞部材側に設けられた、加圧ガスが充填された加圧ガス室を形成する加圧ガス室ハウジングとから筒状ハウジングが形成され、
前記点火手段室ハウジング内の他端側が点火手段によって閉塞され、内部に点火手段室を形成しており、
前記加圧ガス室と前記点火手段室の間が前記閉塞部材で閉塞されているガス発生器であって、
前記点火手段室内には、作動時に軸方向に摺動可能なピストンが配置されており、
前記ピストンが、
前記点火手段室の内周面に沿って摺動可能なベース部と、前記ベース部の外径よりも小さな外径を有している、作動前には前記ベース部に保持されているが作動時には前記ベース部から離脱できる飛翔部からなるものであり、
作動前において、前記ベース部、前記閉塞部材および前記ハウジング周壁部で囲まれた空間によりプレナム室が形成されており、
前記プレナム室内に前記ピストンの飛翔部が位置しており、
前記プレナム室を形成するハウジング周壁部にガス排出口が設けられており、
前記プレナム室を形成するベース部と前記ガス排出口の間のハウジング周壁部には、内側に突き出されたストッパ手段が設けられており、
作動前の状態において、ベース部とストッパ手段との距離よりも、飛翔部の先端から閉塞部材までの距離のほうが長く、
作動時において、前記点火手段が作動したときの圧力を受けて前記ピストンが前記ハウジング軸方向に移動し、前記ピストンのベース部が前記ストッパ手段に衝突したとき、
前記飛翔部が、前記ベース部から離脱し飛翔して前記閉塞部材に衝突した後、さらに飛翔して加圧ガス室内に入り込むことで前記閉塞部材を開口させ、前記加圧ガス室と前記プレナム室を連通させる、ガス発生器を提供する。
【0008】
本発明のガス発生器における点火手段は、公知の電気式点火器、または電気式点火器とガス発生剤の組み合わせからなるものを使用することができる。
本発明のガス発生器における閉塞部材は、加圧ガス室ハウジング側に一体に設けられていてもよいし、点火手段室ハウジング側に一体に設けられていてもよい。例えば、一端側が閉塞された筒状部材を点火手段室ハウジングとして使用して、これの閉塞端面と、一端側が閉塞された筒状部材(加圧ガス室ハウジング)の開口部を溶接固定することで、前記点火手段室ハウジングの閉塞端面を閉塞部材とすることができる。
【0009】
本発明のガス発生器におけるピストンは、ベース部と飛翔部を有するものである。ベース部は平板状であってもよく、また平板状の周縁に軸方向に伸びる筒状部分が存在してもよい。さらにはこの筒状部分から外側に広がる環状フランジが存在してもよい。ベース部の外形は、ハウジング(点火手段室)の内部形状と同じ形状のものである。
ピストン(ベース部)のストッパ手段は、ハウジング周壁部から内側に突き出された突起を使用することができる。
前記突起は、ハウジング周壁部が外側から内側に突き出されるように変形させたもの、ハウジング周壁部の内周面に突起となる部品を溶接固着したものにより形成することができる。
前記突起は、連続した環状のもの、不連続でエンボス状にまたは環状に形成されたものなどにすることができる。
【0010】
飛翔部はその断面形状を限定するものではないが、断面の大きさがベース部の断面よりも小さくなるようにする。例えばベース部も飛翔部も断面形状が円の場合、その外径は飛翔部のほうが小さい。また多角形の場合は、多角形の各点を結んでできる円周の外径で比較することができる。すなわちベース部において点火手段室で発生する圧力の重圧面積を大きくし、ピストンを移動しやすくしている。
【0011】
本発明のガス発生器は、加圧ガス室と点火手段室の間を閉塞する閉塞部材が、ベース部と飛翔部を有するピストンにより破壊されることで、加圧ガス室からプレナム室内のガス排出口に至るガス排出経路が開放されるものである。
点火手段の作動時、ベース部はハウジング周壁部の内周面に沿って軸方向に摺動するようになっており、ストッパ手段により移動が制限されるようになっている。
ベース部がストッパ手段に衝突した時点では、飛翔部は閉塞部材に衝突していないが、ベース部の移動が急激に阻止されることで、閉塞部材は、慣性力によってベース部から離脱された飛翔部により開裂され、飛翔部はそのまま加圧ガス室内に移動する。
そして、閉塞部材とストッパ手段の間のプレナム室のハウジング周壁部にガス排出口が設けられているため、ガス排出口は全てが確実に開口され、加圧ガス室内の加圧ガスが排出される。このとき閉塞部材が開口した部分には少なくとも飛翔部が存在しないことから、閉塞部材の開口した部分が加圧ガスの排出部として機能する。その際加圧ガスの排出を妨げるものがなく、再現性のよい出力が得られる。
【0012】
請求項2の発明は、
一端側が閉塞部材で閉塞され、周壁部にガス排出口を有している点火手段室ハウジングと、
前記点火手段室ハウジング内の閉塞部材側に設けられた、加圧ガスが充填された加圧ガス室を形成する加圧ガス室ハウジングとから筒状ハウジングが形成され、
前記点火手段室ハウジング内の他端側が点火手段によって閉塞され、内部に点火手段室を形成しており、
前記加圧ガス室と前記点火手段室の間が前記閉塞部材で閉塞されているガス発生器であって、
前記点火手段室内には、作動時に軸方向に摺動可能なピストンが配置されており、
前記ピストンが、
前記点火手段室の内周面に沿って摺動可能なベース部と、前記ベース部の外径よりも小さな外径を有している、作動前には前記ベース部に保持されているが作動時には前記ベース部から離脱できる飛翔部からなるものであり、
作動前において、前記ベース部、前記閉塞部材および前記ハウジング周壁部で囲まれた空間によりプレナム室が形成されており、
前記プレナム室内に前記ピストンの飛翔部が位置しており、
前記プレナム室を形成するハウジング周壁部にガス排出口が設けられており、
前記プレナム室を形成するベース部と前記ガス排出口の間のハウジング周壁部には、内側に突き出されたストッパ手段が設けられており、
作動前の状態において、ベース部とストッパ手段との距離よりも、飛翔部の先端から閉塞部材までの距離のほうが短く、
作動時において、前記点火手段が作動したときの圧力を受けて前記ピストンが前記ハウジング軸方向に移動し、飛翔部が前記閉塞部材を開口させた後、前記ピストンのベース部が前記ストッパ手段に衝突して前記ベース部から飛翔部が離脱し飛翔して加圧ガス室内に入り込むことで、前記加圧ガス室と前記プレナム室を連通させる、ガス発生器を提供する。
【0013】
本発明のガス発生器は、加圧ガス室と点火手段室の間を閉塞する閉塞部材が、ベース部と飛翔部を有するピストンにより破壊されることで、加圧ガス室からプレナム室内のガス排出口に至るガス排出経路が開放されるものである。
点火手段の作動時、ベース部は軸方向に摺動するようになっており、ストッパ手段により移動が制限されるようになっている。
閉塞部材は、ベース部がストッパ手段に衝突する前に、あるは衝突時に、ベース部に保持された状態の飛翔部により開裂され、閉塞部材が開裂された後、飛翔部は慣性力によってベース部から離脱して加圧ガス室内に移動する。
そして、閉塞部材とストッパ手段の間のプレナム室のハウジング周壁部にガス排出口が設けられているため、ガス排出口は全てが確実に開口され、加圧ガス室内の加圧ガスが排出される。このときも閉塞部材が開口した部分には少なくとも飛翔部が存在せず、閉塞部材の開口した部分がすべて加圧ガスの排出部として機能する。したがって加圧ガスの排出を妨げるものがなく、再現性のよい出力が得られる。なお、ベース部の形状や、飛翔部との断面の大小関係は、上記した発明と同じである。
【0014】
本発明のガス発生器で使用できるベース部と飛翔部を有するピストンとしては、以下のものを使用することができる。
ピストンの飛翔部は、円柱や角柱のほか、例えば4枚の板材を幅方向の断面形状が+になるように組み合わせたもの、さらに前記の組み合わせに準じて3枚または5枚以上の板材を組み合わせたものにすることができる。
このように3枚以上の板材を組み合わせた飛翔部にすると、円柱や角柱の飛翔部と比べると軽量化できるので好ましい。
ピストンの飛翔部は、閉塞部材に対向する先端部分が鋭利な形状のものであることが好ましく、例えば、円錐または角錐にすることができ、例えば上述のように4枚の板材を組み合わせたものの場合には、4枚の板材(長方形になる)の先端部分を斜めに切断することで鋭利な先端部にすることができる。
【0015】
(第1のピストン)
前記ピストンが、
円板状のベース部と、前記円板状のベース部に離脱可能に取り付けられた円柱または角柱の飛翔部を有するものであり、
前記円板状のベース部が中心部に凹部または貫通孔を有しており、かつ前記凹部または貫通孔が形成されていない部分に点火手段室とプレナム室をつなぐ貫通孔または貫通溝を有しているものであり、
前記円板状のベース部の凹部または貫通孔に前記円柱状の飛翔部の一端面側が圧入されているもの。
【0016】
第1のピストンにおいて、ベース部の前記凹部または貫通孔が形成されていない部分に設けられた貫通孔または貫通溝は、点火手段室にガス発生剤が充填されているときは、点火手段室内で発生した燃焼ガスのガス排出口までのガス排出経路となるものである。
貫通溝は、ベース部の周縁部に設けられるものであり、環状のストッパ手段を設けたときには、貫通溝に代えて貫通孔を設ける。これらの貫通孔や貫通溝については、以下の他のピストンも同様である。
【0017】
第1のピストンは、ベース部と飛翔部が圧入により接続されているものであるため、組立および取付作業も容易であり、作動時においても確実に離脱させることができる。
なお、作動時においては、ベース部は点火手段からの非常に高い圧力を受け、高速でストッパ手段に衝突することになるため、ベース部と飛翔部との圧入部分の結合力よりも、前記衝突により発生する慣性力(慣性抵抗)の方が確実に大きくなるため、飛翔部はベース部から確実に離脱される。
【0018】
(第2のピストン)
前記ピストンが、
円板状のベース部と、前記円板状のベース部に離脱可能に取り付けられた円柱または角柱の飛翔部を有するものであり、
前記円板状のベース部が中心部に凹部または貫通孔を有しており、かつ前記凹部または貫通孔が形成されていない部分に点火手段室とプレナム室をつなぐ貫通孔または貫通溝を有しているものであり、
前記円柱状の飛翔部が一端面に凸部を有しているものであり、
前記円板状のベース部の凹部または貫通孔に前記円柱状の飛翔部の凸部が圧入されているもの。
【0019】
第2のピストンは、ベース部と飛翔部の凸部が圧入により接続されているものであるため、組立および取付作業も容易であり、第1のピストンと同様に作動時においても確実に離脱させることができる。
【0020】
(第3のピストン)
前記ピストンが、
円板状のベース部と、前記円板状のベース部に離脱可能に取り付けられた円柱または角柱の飛翔部を有するものであり、さらにベース部が、点火手段室とプレナム室をつなぐ貫通孔または貫通溝を有しているものであり、
前記円板状のベース部と前記円柱状の飛翔部が、前記円板状のベース部の中心部と前記円柱状の飛翔部の一端面の中心部において、切断可能な軸部により接続されているもの。
【0021】
第3のピストンは、ベース部と飛翔部が切断可能な軸部により接続されているものであるため、取り付け作業も容易であり、第1のピストンと同様に作動時においても確実に離脱させることができる。
【0022】
(第4のピストン)
前記ピストンが、
円板状のベース部と、前記円板状のベース部に離脱可能に取り付けられた円柱または角柱の飛翔部を有するものであり、
前記円板状のベース部が中心部に貫通孔を有しており、かつ前記貫通孔が形成されていない部分に点火手段室とプレナム室をつなぐ貫通孔または貫通溝を有しているものであり、
前記円柱状の飛翔部が一端面に凸部を有しているものであり、
前記円柱状の飛翔部の凸部が前記円板状のベース部の貫通孔から突き出されるまで挿入されており、かつ突出部がかしめられているもの。
【0023】
第4のピストンは、第1〜第3のピストンと比べると、ベース部と飛翔部の接続強度の耐久性が高められている。
本発明のガス発生器を車両のエアバッグ装置に使用したとき、車両の使用状況などによって激しい振動が継続して加えられるような場合であっても、点火器手段が作動する前にベース部から飛翔部が離脱することへの防止能力が高められる。
第4のピストンを使用するときは、飛翔部の離脱の確実性を確保するため、点火手段としてガス発生剤を併用することが好ましい。
【0024】
(第5のピストン)
前記ピストンが、
円板状のベース部と、前記円板状のベース部に離脱可能に取り付けられた円柱または角柱の飛翔部を有するものであり、
前記円板状のベース部が中心部に貫通孔を有しており、かつ前記貫通孔が形成されていない部分に点火手段室とプレナム室をつなぐ貫通孔または貫通溝を有しているものであり、
前記円柱状の飛翔部が一端面に孔部を有しているものであり、
前記円板状のベース部と前記円柱状の飛翔部が、前記円板状のベース部の点火手段側の面から、前記円板状のベース部の貫通孔と前記円柱状の飛翔部底面の孔の両方に跨って接続手段が圧入またはねじ止めされているもの。
【0025】
第5のピストンは、第4のピストンと同様の理由によりベース部と飛翔部の接続強度の耐久性が高められている。