(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050243
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】光電気化学セルを含み、バイパス手段および紫外線フィルタを備えたDSSC光起電力装置
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20161212BHJP
H01L 31/0443 20140101ALI20161212BHJP
H01L 31/044 20140101ALI20161212BHJP
H01L 31/0216 20140101ALI20161212BHJP
【FI】
H01G9/20 307
H01G9/20 311
H01G9/20 203Z
H01L31/04 522
H01L31/04 520
H01L31/04 240
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-543977(P2013-543977)
(86)(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公表番号】特表2014-504434(P2014-504434A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】IT2011000405
(87)【国際公開番号】WO2012081046
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年11月27日
(31)【優先権主張番号】RM2010A000662
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513087194
【氏名又は名称】ダイパワー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ラヌティ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】マストロヤンニ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】レアーレ,アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,トーマス,メレディス
(72)【発明者】
【氏名】ペンナ,ステファノ
【審査官】
松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−198932(JP,A)
【文献】
特表2009−507379(JP,A)
【文献】
特開2000−252510(JP,A)
【文献】
特開2001−030999(JP,A)
【文献】
臼井弘紀 他,色素増感太陽電池モジュールの屋外暴露試験,フジクラ技報,2009年11月,第117号、Vol.2,p.38−42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01L 31/0216
H01L 31/044
H01L 31/0443
H02S 40/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負電極または光電極と、正電極または対向電極とを備えた少なくとも1つの光電気化学セル(4)を含み、前記少なくとも1つの光電気化学セル(4)は、2つの基板であって、向かい合った前記正電極側の第1の基板(9)と、前記負電極側の第2の基板(10)との間に挟持され、前記第1の基板(9)は、関連する第1の面(2)と、前記第1の面と反対側の関連する第2の面(22)とを有し、前記第2の基板(10)は、関連する第3の面(3)と、前記第3の面と反対側の関連する第4の面(33)とを有し、前記第1の基板(9)の前記第1の面(2)は、前記第2の基板(10)の前記第3の面(3)に対面する、DSSC光起電力装置において、
− 前記第1および第2の基板上の一体化バイパス手段であって、前記バイパス手段は、前記少なくとも1つの光電気化学セル(4)ごとにバイパスダイオード(5、5’)を含み、前記バイパスダイオード(5)は、前記光起電力装置の1つの側面上に設けられ、前記側面は、前記第1の基板(9)の側面部、前記第2の基板(10)の側面部、および前記第1および第2の基板の間に挟持された電気絶縁材料を含む封入材料(41)の側面部からなる、一体化バイパス手段と、
− 前記第1および第2の基板(9、10)の面から前記側面へと延在し、前記バイパスダイオード(5、5’)のアノードおよびカソードを前記セルの前記負および正電極にそれぞれ接続する2つの導電性トラック(6、7)と、
− 前記少なくとも1つのセルに少なくとも対応して、前記第1および第2の基板(9、10)の少なくとも1つの面(2、22、3、33)上に適用される、紫外線放射を少なくとも部分的にフィルタリングするための紫外線フィルタリング手段と、
をさらに含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項2】
請求項1に記載のDSSC光起電力装置において、直列接続された複数の光電気化学セル(4)を含み、前記バイパス手段は、前記光電気化学セル(4)の各々に対してバイパスダイオード(5、5’)を含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項3】
請求項1に記載のDSSC光起電力装置において、直列接続された複数の光電気化学セル(4)を含み、前記バイパス手段は、2つ以上の前記光電気化学セル(4)ごとに、前記2つ以上の光電気化学セル(4)の内の第1のセルの負電極に接続されたアノードと、前記2つ以上の光電気化学セル(4)の内の最後のセルの正電極に接続されたカソードとを有するバイパスダイオード(5、5’)を含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、各バイパスダイオード(5、5’)に対して、前記バイパスダイオード(5、5’)が位置する側面とは反対の前記光起電力装置の側面上に位置する第2のバイパスダイオード(5’、5)を含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、少なくとも1つの研磨縁部を前記第1および第2の基板(9、10)の少なくとも1つの側面部上に設けることと、前記バイパス手段を前記研磨縁部上に配置することとを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、対応する数のバイパスダイオード(5、5’)を収容するために、1つまたは複数のハウジングを前記第1および第2の基板(9、10)の少なくとも1つの上に設けることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、各バイパスダイオード(5、5’)がショットキーダイオードであることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、導電性トラック(6、7)が、導電性接着剤または樹脂を用いて得られることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、導電性トラック(6、7)が、導電性金属ストリップを用いて得られることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載のDSSC光起電力装置において、前記導電性トラック(6、7)上に、金属ストリップ(13)をさらに適用することを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、390nm〜410nmの範囲内の閾値よりも低い波長を有する紫外線放射または太陽スペクトル部分をフィルタリングすることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、太陽に暴露される前記第1または第2の基板(9、10)の少なくとも1つの面(2、22、3、33)の全表面上に適用されることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、太陽に暴露されない前記第1または第2の基板(9、10)の少なくとも1つの面(2、22、3、33)の全表面上に適用されることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、高分子材料のシートまたはプレートを含む紫外線フィルタ(11)を含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項15】
請求項14に記載のDSSC光起電力装置において、前記紫外線フィルタ(11)は、ポリエステルまたはポリカーボネートまたはポリビニルを含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項16】
請求項1乃至13の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、フィルムまたはコーティング層を含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項17】
請求項1乃至13の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、前記フィルタリング手段は、前記第1および第2の基板の少なくとも1つから構成されることを特徴とするDSSC光起電力装置。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載のDSSC光起電力装置において、少なくとも1つの光電気化学セルは、互いに並列接続された複数のセルを含むことを特徴とするDSSC光起電力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感太陽セル型の光起電力装置(DSSC(Dye Sensitized solar Cell)光起電力装置としても知られる)のための電気的保護技術および紫外線放射保護の分野に関する。
【0002】
前記DSSC光起電力装置は、1つの光起電力モジュールまたは互いに接続された複数の光起電力モジュールを含み、各光起電力モジュールは、1つまたは複数の光電気化学セルまたはDSSCセルを含み得る。
【0003】
より具体的には、本発明は、電流があるモジュールから別のモジュールへ、またはある光電気化学セルから別の光電気化学セルへと流れることを許可することにより、モジュールまたは日陰になったセルや故障したセルをバイパスし、それと同時に、前記セルの電解質の光退色などのDSSCセルの劣化と、同セルおよびDSSC光起電力装置の紫外線との相互作用によるさらなる劣化現象とを防止する、上記の種類のDSSC光起電力装置の構造に関する。
【0004】
DSSCセルは、2つの基板によって範囲を定められた多層構造を含む光起電力セルである。一般的に、前記基板は、透明材料(好ましくはガラスであるが、PETまたはPENでもよい)を含み、多層構造の内部に面する側には、同じく透明層である導電性コーティング(一般的には、透明導電性酸化物、好ましくは、フッ素またはヨウ素でドープされた酸化チタン(それぞれFTOおよびITO))が塗布されている。
【0005】
2つの基板の内の一方の導電性コーティング上に設けられた光電極(アノード)と、他方の基板の導電性コーティング上に設けられた対向電極(カソード)と、前記光電極および前記対向電極間の電解質とが、2つの基板間に設けられている。
【0006】
特に、光電極は一般的に、酸化チタンや酸化亜鉛のように、バンドギャップの大きな、メソ多孔性形態の、吸収材を支持し、光子の吸収後に電子を移動させることが可能な着色物質を含む半導体で構成される。
【0007】
対向電極は一般的に白金を含むが、電解液は一般的に、ヨウ素レドックス対(I
−/I
3−)に基づくものである。
【0008】
現在のところ、第1世代(単結晶および多結晶シリコンウエハを含む光起電力セルおよびモジュール)および第2世代(アモルファスまたは微結晶半導体材料薄膜を含む光起電力モジュール)の光起電力装置が、バイパスダイオードを提供している。
【0009】
前記光起電力装置のバイパスダイオードは、p−n接合を保護すると考えられ、万一反転した分極領域でセルが作動した場合に、前記接合が破損(破壊現象)を受けることを防止し、そのため、電流発生器の代わりに、電力消費負荷として機能する。
【0010】
例えば、公知の結晶シリコン光起電力装置では、18個のセルごとにバイパスダイオードが存在する。これは、簡潔さの要求、コスト、並びに、先行する要求との妥協点を探す必要性によるものである。
【0011】
幾つかの特定のケースにおいてのみ、すなわち、技術的問題が、一時的または永久的に光起電力セルが日陰になる場合に、それを最大出力電力にすることである、または、前記複数のセル用に設けられたダイオードが過剰な過熱を受けることを防止することである場合に、各太陽セルにバイパスダイオードの導入を行う。
【0012】
しかしながら、結晶シリコン光起電力装置へのバイパスダイオードの適用には、幾つかの欠点がある。
【0013】
1つの欠点は、前記バイパスダイオードが、前記光起電力装置内で関連する物理的空間を占有する事実である。
【0014】
第1の欠点の結果である第2の欠点は、光起電力装置のパッシブ領域、すなわち太陽エネルギーを電気エネルギーに変換するために役立っていない領域が、前記光起電力装置の電気的保護に比例して増加する点である。
【0015】
従って、アクティブ領域、すなわち太陽放射を電気エネルギーに変換する領域が、光起電力装置に設けられたバイパスダイオードの数に比例して減少する。
【0016】
バイパスダイオードは、シリコン光起電力装置に関して上記に記載したのと同じ目的で、DSSC光起電力装置にも適用される。
【0017】
しかしながら、前記DSSC光起電力装置へのバイパスダイオードの適用も、幾つかの欠点を持つ。
【0018】
第1の欠点は、前記バイパスダイオードによって占有される領域が装置のパッシブ領域を増加させる事実によるものである。実際、アクティブ領域の減少は、1つまたは複数のバイパスダイオードによって占有される表面によって決まり、その存在は、効率が光起電力装置のアクティブ領域と相関するので、DSSC光起電力装置の全領域に対する効率を損なう。特に、DSSC光起電力装置の総合効率の指標は、アクティブ領域と全領域とのパーセンテージ割合(いわゆる開口率)である。
【0019】
特に、DSSCセルおよびそれらの正および負の電極が基板内で一体化している場合には、多数のバイパスダイオードの取り付けは複雑になる。
【0020】
さらなる欠点は、DSSC光起電力装置におけるバイパスダイオードは、光起電力装置の基板と機械的に一体となっておらず、それにとって不可欠でもなく、光起電力装置の電極と接続された電線によって、それらが単純に適用されることである。
【0021】
従って、前記バイパスダイオードと電線との、または電線と光起電力装置の電極との接触点は、装置が光起電力装置の最終的な組み立てのための異なる作業工程を受ける際、熱または機械的または発光応力などの環境応力を受ける際に、停電または電気的接触が失われることによって引き起こされる場合がある。セルごとにバイパスダイオードを備えたDSSC光起電力装置などの場合のように、DSSC光起電力装置が複数のバイパスダイオードを備える場合には、停電または電気エネルギーの接触損失が生じる可能性が増加することは十分明白である。
【0022】
パッシブ領域の増加による別の欠点は、アクティブ領域に対する非活動領域(すなわち電気エネルギーへの太陽エネルギーの変換に役立たず、互いに接続された光起電力モジュールのストリング間に存在する)の異なる透明度による光起電力装置の見た目の美しさの悪化に関係する。
【0023】
さらに別の欠点は、前記バイパスダイオードの適用が、多大な手作業の介入を必要とする点である。その結果、光起電力モジュールに対するバイパスダイオード適用工程の遅さ、それを適用する際の誤りの可能性、DSSC光起電力装置を得るために低速で行う前記工程の再現性の低下は、光起電力装置に対する前記バイパスダイオードの手作業での適用によるさらなる欠点を表し得る。
【0024】
さらに、公知のDSSC光起電力装置は、紫外線放射が電解質の光退色および他のセル劣化現象が生じる理由の1つであることから、紫外線フィルタを備え得る。実際、紫外線放射は、色素で覆われた、基板の二酸化チタン導電性コーティング上で光酸化を生じさせ、前記光酸化は、色素分子および電解質の一方を劣化させ、その結果、三ヨウ化物(I
3−)濃度、すなわち対向電極から光電極への電荷移動に関与するイオンの減少が引き起こされる。セルが限定された電流条件下で機能する場合(これは、三ヨウ化物濃度に正比例する)、これは、不足電流(shortage current)の大幅な低下、ひいては、性能の低下に関与する。
【0025】
しかしながら、紫外線フィルタの存在は、DSSCセルのあらゆる動作状態の下で、主にこのDSSCセルが他のセルと電気的に相互接続されている場合に、電解質の光退色を完全に防止することはない。
【0026】
本発明の目的は、前記欠点を克服し、DSSC光起電力装置の電気的保護に専念するパッシブ領域(すなわち前記光起電力装置に適用された1つまたは複数のバイパスダイオードによって占有される領域)の部分が、光起電力装置の全領域に対して減少する、あるいはゼロとなるDSSC光起電力装置を提供し、あらゆる動作状態下でDSSCセルの色素分子の劣化および/またはDSSCセルの光退色を防止することにより、前記DSSCセルの劣化の低下による、DSSC光起電力装置の安定性の向上を保証することである。
【0027】
あるモジュールから別のモジュールへ、またはあるDSSCセルから別のDSSCセルへと電気エネルギーが流れることを許可することにより、日陰になったモジュールまたはセルをバイパスするバイパス手段であって、アクティブ領域を最大にするためにDSSC光起電力装置上に配置されるバイパス手段と、DSSCセルの電解質光退色現象と、セルのさらなる劣化現象とを防止する、太陽放射をフィルタリングするための紫外線フィルタリング手段とを組み合わせて含み、前記バイパス手段は、前記フィルタリング手段と相まって、前記現象をさらに抑制するDSSC光起電力装置を提供することにより、上記が得られた。
【0028】
DSSC光起電力装置におけるバイパス手段および紫外線フィルタリング手段の組み合わせは、セルが達し得る負電圧および潜在的に危険な電気化学反応にバイパス手段が制限を課すことから、紫外線フィルタリング手段のみが存在する場合と比較して、より効率的に、上記の劣化現象に対してセルを有利には保護する。
【0029】
従って、本発明の具体的な目的は、負電極または光電極と、正電極または対向電極とを備えた少なくとも1つの光電気化学セルを含み、前記少なくとも1つの光電気化学セルは、2つの基板である、前記正電極側の第1の基板と、前記負電極側の第2の基板との間に挟持され、前記基板の各々は、関連する第1の面と、前記第1の面と反対側の関連する第2の面とを有し、前記第1の基板の第1の面は、前記第2の基板の前記河口(firth)面に対面する、DSSC光起電力装置において、
−前記基板上の一体化バイパス手段であって、前記バイパス手段は、前記少なくとも1つの光電気化学セルごとにバイパスダイオードを含み、前記バイパスダイオードは、光起電力装置の1つの縁部上に設けられ、前記縁部は、少なくとも2つの部分である、前記第1の基板の部分および前記第2の基板の部分と、前記2つの部分間に挟持され、電気絶縁材料を含む封入材料とによって規定される、一体化バイパス手段と、
−前記バイパスダイオードのアノードおよびカソードを前記セルの負および正電極にそれぞれ接続する2つの導電性トラックと、
−前記少なくとも1つのセルに少なくとも対応して、前記基板の少なくとも1つの面上に適用される、紫外線放射を少なくとも部分的にフィルタリングするための紫外線フィルタリング手段と、
をさらに含むDSSC光起電力装置である。
【0030】
本発明によれば、DSSC光起電力装置は、直列接続された複数の光電気化学セルを含んでいてもよく、前記バイパス手段は、前記光電気化学セルの各々に対してバイパスダイオードを含む。
【0031】
さらに本発明によれば、DSSC光起電力装置は、直列接続された複数の光電気化学セルを含んでいてもよく、前記バイパス手段は、2つ以上の前記光電気化学セルごとに、前記2つ以上の光電気化学セルの内の第1のセルの負電極に接続されたアノードと、前記2つ以上の光電気化学セルの内の最後のセルの正電極に接続されたカソードとを有するバイパスダイオードを含む。
【0032】
DSSC光起電力装置は、有利には、各バイパスダイオードに対して、前記バイパスダイオードが位置する縁部とは反対側の光起電力装置の縁部上に位置する第2のバイパスダイオードを含んでいてもよい。
【0033】
さらに、少なくとも1つの研磨縁部を前記少なくとも1つの基板上に設けてもよく、前記バイパス手段は、前記研磨縁部上に配置される。
【0034】
好ましくは、対応する数のバイパスダイオードを収容するために、1つまたは複数のハウジングを前記基板の少なくとも1つの上に設ける。
【0035】
各バイパスダイオードは、有利には、ショットキーダイオードでもよい。
【0036】
第1の構成では、導電性トラックは、導電性接着剤または樹脂を用いて作成されてもよい。
【0037】
第2の構成では、導電性トラックは、導電性金属ストリップによって作成されてもよい。
【0038】
さらに、導体ペーストのスクリーン印刷によって、または接着剤または導電性樹脂によって得られた前記導電性トラック上に金属ストリップをさらに適用してもよい。
【0039】
フィルタリング手段について言及すると、フィルタリング手段は、390nm〜410nmの範囲内の閾値よりも低い波長を有する紫外線放射または太陽スペクトル部分をフィルタリングし得る。
【0040】
前記フィルタリング手段は、有利には、太陽に暴露される基板の少なくとも1つの面の全表面上および/または太陽に暴露されない基板の少なくとも1つの面の全表面上に適用され得る。
【0041】
第1の構成によれば、前記フィルタリング手段は、高分子材料を含む紫外線フィルタを含み得る。特に、前記紫外線フィルタは、ポリエステルまたはポリカーボネートまたはポリビニルのシートまたはプレートでもよい。
【0042】
第2の構成では、前記フィルタリング手段は、フィルムまたはコーティング層を含み得る。
【0043】
第3の構成では、前記フィルタリング手段は、前記基板の少なくとも1つを含み得る。
【0044】
最後に、少なくとも1つの光電気化学セルは、互いに並列接続された複数のセルを含み得る。
【0045】
以下、本発明を、限定する目的ではなく、例示目的で、その好適な実施形態に従って、添付の図面を具体的に参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、8つの光電気化学セルと、バイパスダイオードと、紫外線フィルタとを備えた光起電力モジュールを含む光起電力装置の第1の実施形態を概略的に示す。
【
図2】
図2は、前記光起電力モジュールにおいて光電気化学セルごとにバイパスダイオードを備え、その内部接触には外側から達することができ、かつ紫外線フィルタを備えた光起電力モジュールを含む光起電力装置の第2の実施形態を概略的に示す。
【
図3】
図3は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールが、バイパスダイオードと、紫外線フィルタとを備えた光起電力装置の第3の実施形態を概略的に示す。
【
図5】
図5は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールが、バイパスダイオードおよび紫外線フィルタを備え、両ダイオードは、各モジュールの関連する基板上のシルク印刷された導体ペースト上に溶接された金属ストリップに溶接される光起電力装置の第4の実施形態を概略的に示す。
【
図7】
図7は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールは、紫外線フィルタを備え、バイパスダイオードは、右側の光起電力モジュールを保護するために2つの基板にまたがって位置する光起電力装置の第5の実施形態を概略的に示す。
【
図9】
図9は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールは、紫外線フィルタを備え、研磨された基板の縁部を有し、バイパスダイオードは、右側の光起電力モジュールを保護するために前記研磨縁部にまたがって位置する光起電力装置の第6の実施形態を概略的に示す。
【
図12】
図12は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールは、紫外線フィルタを備え、バイパスダイオードは、2つの光起電力モジュールの基板間に得られる台座内に収納される光起電力装置の第7の実施形態を概略的に示す。
【
図14】
図14は、並んだ2つの光起電力モジュールを含み、各モジュールは、紫外線フィルタを備え、2つのバイパスダイオードが光起電力モジュールの対向する縁部上に位置し、各バイパスダイオードが2つの基板の縁部にまたがる光起電力装置の第8の実施形態を概略的に示す。
【
図16】
図16は、地面に対して縦に固定され、太陽放射に暴露され、各々が直列接続された13個のDSSCセルを備えた3つのDSSC光起電力モジュールを含む、4つの異なるDSSC光起電力装置が挿入されるフレームを示し、第1の光起電力装置は、DSSCセルごとのバイパスダイオードと、紫外線フィルタとを備え、第2の光起電力装置は、DSSCセルごとにバイパスダイオードのみを備え、第3の光起電力装置は、紫外線フィルタのみを備え、第4の光起電力装置は、バイパスフィルタおよび紫外線フィルタを持たない。
【
図17】
図17は、
図16の第1のDSSC光起電力装置に関する、1ヶ月の期間後に測定された1組のI−V曲線を示す。
【
図18】
図18は、
図16の第2のDSSC光起電力装置に関する、1ヶ月の期間後に測定された1組のI−V曲線を示す。
【
図19】
図19は、
図16の第3のDSSC光起電力装置に関する、1ヶ月の期間後に測定された1組のI−V曲線を示す。
【
図20】
図20は、
図16の第4のDSSC光起電力装置に関する、1ヶ月の期間後に測定された1組のI−V曲線を示す。
【0047】
特に
図1に言及すると、導電性ガラスを含む2つの基板、すなわち第1の基板9および第2の基板10と、前記基板9および10間に挟持され、電気絶縁または封入材料41によって封入され、かつ垂直コンタクト8によって直列接続された複数の光電気化学セルまたはDSSCセル4と、電気的に互いに分離された基板の各々の上の前記セル4の電極とを含む光起電力モジュール1を含むDSSC光起電力装置の第1の実施形態が提供されている。
【0048】
第1の基板9および第2の基板10は、第1の面2、3と、前記第1の面2、3の反対側の第2の面22、23をそれぞれ有し、前記第1の基板9の第1の面2は、第2の基板10の第1の面3と対面し、前記第2の面22、33の各々は、外側に向いている。
【0049】
特に、第1の基板9の第1の面2は、光起電力モジュール1の正電極であるが、第1の面は、同光起電力モジュールの負電極であり、光起電力モジュール1は、太陽放射が第2の基板10の第2の面33に入射するように太陽放射に暴露される。
【0050】
DSSC光起電力装置は、
−一体化バイパス手段であって、光起電力モジュール1の負電極3と接続された第1の導電性トラック6と、光起電力モジュール1の正電極2に接続された第2の導電性トラック7と、前記導電性トラックと接続された電気端子を有するバイパスダイオード5とを含む前記バイパス手段と、
−DSSCセルと太陽放射との間に挟持されるように光起電力装置に適用される、紫外線放射をフィルタリングするためのフィルタリング手段と、
をさらに含む。
【0051】
特に、前記バイパスダイオード5のカソードは、光起電力モジュール1の正電極2に電気的に接続され、一方、前記バイパスダイオード5のアノードは、負電極3に電気的に接続される。
【0052】
ある変更形態(不図示)では、前記バイパスダイオード5のカソードを、前記光起電力モジュール1に直列接続される別の光起電力モジュールの正電極と接続することが可能である。
【0053】
前記バイパスダイオード5を光起電力モジュール1の電極2、3と接続する導電性トラック6、7は、電流の低抵抗経路を実現する。
【0054】
第1の構成では、導電性トラック6、7が、導体ペーストのシルク印刷による堆積によって得られることが好ましい。
【0055】
バイパスダイオードおよび光起電力モジュール1間の導電性トラックのシルク印刷を容易にするために、ガラス基板の角を研磨してもよい。
【0056】
第2の構成では、導電性トラック6、7は、ストリップまたは導電性金属リボンによって、あるいは、第1および第2の構成の組み合わせによって得られてもよい。
【0057】
第3の構成では、導電性トラック6、7は、接着剤または導電性樹脂を含み得る。
【0058】
バイパス手段に言及すると、本発明の1つの基本的特徴によれば、前記バイパス手段は、DSSC光起電力装置の側縁部上に位置する。前記側縁部は、少なくとも2つの部分である、前記第1の基板9の部分および前記第2の基板10の部分と、前記2つの部分間に挟持され、電気絶縁材料を含む封入材料41とによって規定される。
【0059】
フィルタリング手段に関しては、本実施形態において、これらは、第2の基板10、すなわち太陽に暴露される基板の第2の面33上に適用される。
【0060】
しかしながら、図面には示されなくとも、前記フィルタリング手段が、第1の基板9、すなわち太陽に向けて暴露されない基板の第2の面22上に適用されることが好ましい。
【0061】
本実施形態では、前記フィルタリング手段11は、参照符号11によって示される紫外線フィルタを含む。
【0062】
この特定のケースにおいては、前記紫外線フィルタは、390nm〜410nmの範囲内に包含される閾値よりも低い波長を有する紫外線放射または太陽スペクトル部分を遮断する規定の波長を有するポリエステルのシートまたはプレートである。
【0063】
例えば、前記プレートは、ポリカーボネートまたはポリビニルを含み得る。
【0064】
しかしながら、前記フィルタリング手段は、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる方法で得ることが可能である。
【0065】
例えば、第1の構成では、前記フィルタリング手段は、前記第2の基板10上に適用されたフィルムを含み得る。
【0066】
第2の構成では、前記フィルタリング手段は、直接的に第2の基板10から構成されてもよい。この場合、第2の基板10は、内部に化学添加物を含むガラスまたは外側のコーティング層を備えたガラスなどの紫外線放射をフィルタリングする物理特性を持つ材料を含む必要がある。
【0067】
第3の構成では、前記フィルタリング手段は、紫外線放射をフィルタリングする物理特性を持つ材料でできたコーティング層を含み得る。
【0068】
記載した実施形態では、基板9、10は、長方形であり、長辺に沿って並置される突出部を生じさせるために、ずらして配置される。8つの光電気化学セル4が、2つの基板の対向部分間に存在する。さらに、関連する紫外線フィルタが、太陽に暴露される各基板の第2の面上に適用される。
【0069】
それぞれ基板9の突出部上の正電極2と、基板10の突出部上の負電極3とである光起電力モジュールの電極には、前記基板の各々を通って到達できる。
【0070】
バイパスダイオード5は、第2の基板10よりも短い長さを持つ側縁部の1つの上に適用され、導電性トラック6、7は、基板の突出部の各々の上にそれぞれ第1の部分61、71と、前記第1の部分61、71にそれぞれ接続され、ダイオードが適用される前記短い方の縁部上に設けられる第2の部分62および72とをそれぞれ含む。
【0071】
前記第1の構成では、セルが日陰になった場合に、バイパスダイオード5は、電流が光起電力モジュール1をバイパスすることを可能にする。
【0072】
特に、バイパスダイオード5は、日陰になった光電気化学セル4の電圧が、日陰になっていない光電気化学セル4の電圧と、前記バイパスダイオード4の閾値電圧との合計以上である場合に導通する。
式中、
V
s=日陰になったセルの負電圧
V
ns=日陰になっていないセルの正電圧
V
d=ダイオードの閾値電圧
電圧V
sが全ての日陰になった光電気化学セル4に関して等しく、電圧V
nsが全ての日陰になっていない光電気化学セル4に関して等しいと仮定すると、
|nV
S|≧|V
D|+mV
NS
が得られる。
【0073】
第1の実施形態とは異なって
図2に示される第2の実施形態では、光起電力モジュール1の各光電気化学セル4に対してバイパスダイオード5が設けられる。
【0074】
前記第2の実施形態は、単一の光電気化学セル4が日陰になった場合に、電流がそのセルをバイパスすることを有利には可能にする。
【0075】
第1のダイオードバイパス5は、導電性トラック6によって、光起電力モジュール1にアクセスするために負電極3(これは、第1の光電気化学セル4の負電極でもある)と接続され、一方、他の7つのバイパスダイオード5は、関連する導電性トラック7によって、光電気化学セル4間の対応する垂直コンタクト8と接続され、電気的に互いに分離された基板の各々の上の前記セルの電極と接続される。
【0076】
つまり、8つの整列したダイオード5がガラス基板10の縁部上に設けられ、第1のダイオード5は、光起電力モジュール1へアクセスするために負電極3に接続され、第8のバイパスダイオード5は、前記光起電力モジュール1の正電極に接続され、6つの中間のバイパスダイオード5は、セル4の垂直コンタクト8に接続される。
【0077】
図3および
図4に示される第3の実施形態では、2つの光起電力モジュールが互いに並んで配置されており、光起電力モジュールは、前記モジュールの各々ごとのバイパスダイオード5と、紫外線フィルタとを含む。
【0078】
関連する導電性トラック6は、各モジュール1の基板9、10上に設けられて、光起電力モジュールの負電極3と接触し、導電性トラック7は、正電極2と接触している。
【0079】
バイパスダイオード5は、各光起電力モジュールに対して設けられ、前記導電性トラックにそれぞれ接続される電気端子を有するように、前記基板9、10にまたがって配置される。
【0080】
図5および
図6に示される第4の実施形態では、光起電力装置は、
図1に示すもののような2つの光起電力モジュール1を含み、導電性トラック6、7は、まず導体ペーストをシルク印刷し、次に2つのバイパスダイオードが溶接される金属ストリップ13を前記導体ペースト上に溶接することによって得られる。
【0081】
前記実施形態の光起電力装置は、有利には、機械的応力に対してより強い。
【0082】
図7および
図8に示される第5の実施形態では、光起電力装置は、並んだ2つの光起電力モジュール1を含み、各モジュールは、紫外線フィルタを備え、関連する下縁部に対応して、2つの基板10にまたがるバイパスダイオード5を備える。その結果、バイパスダイオード5が、第1の光起電力モジュールの導電性トラック6および第2の光起電力モジュールの導電性トラック7をそれぞれ介して、第1の光起電力モジュールの負電極3を第2の光起電力モジュールの正電極2に接続できるように、2つの光起電力モジュールが互いに固定される。
【0083】
図9および
図10に示される第6の実施形態では、光起電力モジュールは、紫外線フィルタを備え、バイパスダイオード5および導電性トラック6、7が設けられる両光起電力モジュールの基板上に関連する研磨縁部を設ける。
【0084】
特に、研磨は、下縁部および基板壁の下縁部間の角の1つに対応して、各基板10上で行われる。
【0085】
バイパスダイオード5は、研磨縁部上に設けられ、2つの基板10間の接触領域にまたがり、導電性トラック6、7の各々は、実質的に関連する研磨縁部上に設けられる。
【0086】
記載した例では、研磨は、下縁部と、外側に向く基板壁との間の基板10の角上で行われるが、研磨は、同基板10の反対側の角、すなわち、同縁部と、光電気化学セル4と対面する基板壁10との角上で行ってもよい(
図11)。
【0087】
バイパスダイオード5は、研磨が行われる基板10に対向する各光起電力モジュールの基板9によって部分的に覆われるので、有利には、外側から見えにくい。透明性に関しては、バイパスダイオード5が見えにくいという事実は、光起電力装置全体のより高い均一性を伴う。
【0088】
図12および
図13に示される第7の実施形態では、光起電力装置は、紫外線フィルタを備え、2つのガラス基板間の接触領域に設けられるバイパスダイオード5のハウジング用の台座を有する。
【0089】
ある変更形態(不図示)では、前記台座は、基板10の一方の短い縁部上の、好ましくは前記縁部の中央部分に設けられ得る。
【0090】
適切なハウジングの存在により、バイパスダイオード5が光起電力装置の縁部上に設けられ、その結果、パッシブ領域が減少することが有利には防止される。
【0091】
さらなる変更形態(不図示)では、記載した実施形態の各々に関して、光起電力モジュールを含む各モジュールの少なくとも1つの面上に適用される紫外線フィルタと共に、鏡面像となるように、バイパスダイオード5が設けられる縁部とは反対側の光起電力装置の縁部上に1つまたは複数のさらなるバイパスダイオード5’の存在を設けることが可能である。
【0092】
例えば、
図14および
図15に示されるように、第8の実施形態では、光起電力装置は、バイパスダイオードが設けられる縁部とは反対側の縁部上に位置する、すなわち、またがってそれが設けられる基板10の2つの短い縁部とは反対側の基板10の2つの短い縁部にまたがるさらなるバイパスダイオード5’を有する。バイパスダイオード5は、紫外線フィルタと共に、各光起電力モジュールの第2の基板の第2の縁部上に位置する。
【0093】
1つまたは複数のさらなるダイオード5’の使用により、ダイオードに到達するために電流が進まなければならない経路が有利には縮小し、その結果、ダイオードの抵抗が減少する。
【0094】
さらに、さらなるバイパスダイオード5’の存在により、1つまたは複数のバイパスダイオードが故障した場合に、追加的保護が保証される。
【0095】
上記の実施形態の各々に関して、光電気化学セルを保護するために、バイパスダイオードが導通状態にある必要がある。
【0096】
各バイパスダイオード5の導通状態は、同バイパスダイオード5に接続される光電気化学セル4の数によって決まる。
【0097】
バイパスダイオード5が導通状態にあるためには、日陰になった光電気化学セル4の電圧V
Sが以下の式を満たす必要がある。
V
s≧V
d+(n−1)V
oc
式中、
V
d=導通状態にあるダイオードの絶対値としての電圧、
V
oc=開セル回路の電圧、
N=ダイオードに接続されたセルの数である。
【0098】
本発明によれば、互いに直列に接続されたセルの不均衡による劣化に対する各光起電力モジュール1の光電気化学セル4の完全な保護を保証するためには、前記光電気化学セルの各々に対してバイパスダイオード5を設ける必要がある。
【0099】
上記を確認するために、以下の値を上記の式に導入した場合に、
V
s=1.2V(絶対値としての閾値負電圧の値、これを超えると、セルはすぐに障害を起こす)、
V
d=約0.6V(p−n接合ダイオードが導通を開始するための閾値電圧の値)、
V
oc=約0.75V(直接分極(direct polarization)下でセルを提供できる最大電圧の値)である。
n
max≦1+(V
s−V
d)/V
oc
n
max≦1+(1,5−0,8)/0,75
n
max≦1,9
従って、1.2Vの閾値電圧およびp−n接合ダイオードを用いて、各セルに対してバイパスダイオードを設ける必要がある。
【0100】
導通を開始するためのバイパスダイオード5の電圧V
dの値が低いほど、前記バイパスダイオードに接続され得る光電気化学セル4の数が増え、その結果、前記セルの各々の負電圧が(絶対値として)規定値1.2Vを超えないことが保証される。
【0101】
さらに、より低い電圧値V
dにより、各セルが、部分的に日陰となった場合でさえも電流によってバイパスされるように、バイパスダイオード5が導通前に起動することが可能となる。
【0102】
従って、p−n接合ダイオードの閾値電圧よりも低い約0.2Vの閾値電圧を持つショットキーダイオードなどのダイオードに可能な限り低い閾値電圧を印加することが好ましい。
【0103】
0.6Vのp−n接合を持つダイオードの電圧値V
dをショットキーダイオードの0.2Vの値に置き換えると、
n
max≦2,6
が得られる。
【0104】
上記は、同じ閾値電圧であれば、ダイオードがショットキーダイオードの場合、2つのセルごとに1つのショットキーダイオードを適用することが可能である。
【0105】
ショットキーダイオードにより、光起電力ダイオードの出力における電力を有利には最大にすることも可能となる。
【0106】
しかしながら、閾値電圧が絶対値として確実に可能な限り低いことが好ましい。
【0107】
ある実験的指摘は、セルが劣化を受けないように、前記電圧閾値は、0.5V以下であることを示唆している。
【0108】
p−n接合ダイオードは、0.5Vの閾値電圧値V
sを保証することができない。
【0109】
ショットキーダイオードが用いられた場合、約0.2Vの同じ電圧V
d値およびV
oc=約0.75Vであるとすると、
n
max≦1+(V
s−V
d)/V
oc
n
max≦1+(0,5−0,2)/0,75
n
max≦1,4
【0110】
従って、光起電力装置のDSSSCセルの数に対応した多数のショットキーダイオードを用いることによって、規定の閾値を超えないことを確実にできる。
【0111】
光起電力装置が、並んだ2つの光起電力モジュールである、それぞれが紫外線フィルタを備えた第1の光起電力モジュールおよび別の光起電力モジュールを含む実施形態の場合、前記2つの光起電力モジュール間の接続を実現するためには、通常、第1のモジュールの基板9の正電極と、前記別のモジュールの基板10の負電極との間に材料を挟持させることにより、2つの光起電力モジュールの封入材料41間の空間を埋める。
【0112】
前記導電性材料は、第1のモジュールの基板9の前記正電極と、同モジュールの基板10の負電極との間、または前記別のモジュールの基板10の負電極と、同別のモジュールの正電極9との間に不足素子(shortage element)を実現できる。
【0113】
例えばレーザースクライビング技術を用いることにより、ショートが防止されて、2つの電気絶縁、すなわち、導電性トラック7の前記第1の部分71に近い、前記第1の光起電力モジュールの第2の基板10の導電性コーティング上の第1の電気絶縁と、導電性トラック6の第1の部分61に近い、前記別の光起電力モジュールの第1の基板9の導電性コーティング上の第2の電気絶縁とが実現する。
【0114】
上記の実施形態の各々に関して、図面に示されていない場合でも、各DSSCセルは、互いに並列接続された複数のセルを含み得る。
【0115】
さらに、各DSSCセルの負および正電極に到達できない場合は、例えば、基板の外に導電性トラックを延長させるために、基板の角およびDSSC光起電力装置の側縁部上に銀を堆積することによって、それらを外に出してもよい。
【0116】
さらに、既に述べたように、バイパス手段は、DSSC光起電力装置の少なくとも1つの側縁部上、または対向する側縁部上に位置する。
【0117】
上記の実施形態では、基板9、10は、長方形で表され、互いにずらして配置した状態で連結されるが、2つの基板がその他の形状を持ち、互いに重なり合うように設けることが可能である。
【0118】
図16は、地面に対して縦に固定され、それぞれ参照記号A、B、C、およびDで示され、老化試験を受けるために太陽放射に暴露される、4つの異なるDSSC光起電力装置を支持するフレームを示す。前記光起電力装置を90°の傾斜角で南に向け、それらの各々の動作点は、最大出力点に調整した。
【0119】
各DSSC光起電力装置は、互いに直列接続された3つのDSSC光起電力モジュールを含み、各モジュールは、直列接続された13個のDSSCセルを備える。
【0120】
特に、第1の光起電力装置Aは、DSSCセルごとのバイパスダイオードと、紫外線フィルタとを備える。
【0121】
第2の光起電力装置Bは、DSSCセルごとのバイパスダイオードのみを備える。
【0122】
第3の光起電力装置Cは、紫外線フィルタのみを備える。
【0123】
第4の光起電力装置Dは、バイパスダイオードおよび紫外線フィルタを持たない。
【0124】
図17〜20を参照すると、各図は、それぞれのDSSC光起電力装置に関して、1ヶ月後に測定された1組のI−V曲線を示す。
【0125】
特に、
図17は、参照記号Aで示される第1の光起電力装置DSSCの1組のI−V曲線を示す。
【0126】
図18は、参照記号Bで示される第2の光起電力装置DSSCの1組のI−V曲線を示す。
【0127】
図19は、参照記号Cで示される第3の光起電力装置DSSCの1組のI−V曲線を示す。
【0128】
図20は、参照記号Dで示される第4の光起電力装置DSSCの1組のI−V曲線を示す。
【0129】
上記の
図17〜20に示したI−V曲線の組から、第1の光起電力装置Aにおけるバイパスダイオードおよび紫外線フィルタの存在が、しばらく後の、より優れた安定性を保証することが観測される。一方、
図18〜20に示される曲線からは、DSSC光起電力装置の性能の著しい低下が分かる。
【実施例】
【0130】
より少ないパッシブ領域および供給されるより高い電力による本発明のDSSC光起電力装置の利点の証拠を提示するために、以下において、前記DSSC光起電力装置を公知のDSSC光起電力装置と比較する。
【0131】
公知のDSSC光起電力装置は、どの基板とも一体とならず、電線によって光起電力モジュールの電極と接続されたバイパスダイオードを備えた光起電力モジュールを含むが、本発明によるDSSC光起電力装置は、基板上で一体化された(例えば、基板中に得られる適切なハウジング内に挿入された)バイパスダイオードと、前記ダイオードを同モジュールの電極に接続するシルク印刷された導電性トラックとを備えたDSSC光起電力モジュールを含む。
【0132】
公知の光起電力装置は、以下のパラメータ、
全領域:182.76cm
2
アクティブ領域:108.8cm
2
開口率:59%
によって特徴付けられ、
ここで、全領域は、2つの領域である、バイパスダイオードを除く光起電力モジュールの表面に関連する177.76cm
2の第1の領域と、バイパスダイオードによって占有される領域と、前記ダイオードを囲み、前記モジュールと、同モジュールに直列接続される別のモジュールとの間に設けられる領域との5cm
2の第2の領域との合計によるものである。
【0133】
本発明による装置は、以下のパラメータ、
全領域:177.76cm
2
アクティブ領域:108.8cm
2
開口率:61%
を有する。
【0134】
留意され得るように、バイパスダイオードの適用は、バイパスダイオードによって占有される領域と、前記ダイオードの周囲の領域との両方を考慮に入れなければならないので、装置の全領域の面積を増加させる。あるモジュールと、そのモジュールに接続される別のモジュールとの間の領域である前記領域は、使用されない。
【0135】
上記は、同じ光起電力モジュールの全領域に関する効率を損ねる。
【0136】
光起電力モジュールによって生成される電力として、0.6ワットの標準検査条件(STC:standard test condition)下で生成された電力を考慮すると、5.6%のアクティブ領域の効率が得られる。
【0137】
公知の装置では、前記効率を開口率値と乗算すると、約3.3%の総合効率パーセンテージが得られるが、本発明による装置の場合には、約3.4%、従って、公知の装置より高い総合効率パーセンテージが得られる。
【0138】
上記で既に述べたように、光起電力装置の透明性に関しては、適切なハウジング内に挿入されたバイパス装置により、ダイオードが基板と一体となっていない場合、または基板が基板上に位置する場合と比較して、光起電力装置がより均一な透明性を持つことが可能となる。
【0139】
光起電力モジュールの透明領域と非透明領域とのパーセンテージ割合を特定するパラメータを考慮に入れると、上記のことは、十分に明白である。
【0140】
約154cm
2の同じ透明領域の場合、公知の光起電力モジュールでは前記割合は84%であるが、本発明による光起電力の場合、前記割合は86%であり、光起電力モジュールの総合透明性が約2%向上している。
【0141】
既に述べたように、1つまたは複数のバイパスダイオードを光起電力モジュールの少なくとも1つの基板と一体に形成する、または前記バイパスダイオードを研磨する、または同基板内に得られる適切なハウジング内に設置することによって、バイパスダイオードによって占有されるパッシブ領域が、光起電力装置の全領域に対して有利には最小にされる。
【0142】
第2の利点は、前記パッシブ領域が、例えば、導体ペーストのシルク印刷によって、または金属ストリップを適用することによって得られる適切な導電性トラックによってさらに減少すると同時に、手作業による介入が減少するという事実によるものである。
【0143】
さらに別の利点は、バイパス手段および紫外線フィルタリング手段の組み合わせが、DSSCセル劣化過程の促進を防止するという事実によるものである。実際、一方では、バイパス手段が、日陰になった、または故障したDSSCセルが、それと直列接続された他のセルらの性能を損なうことを防止し、他方では、最大閾値の逆電圧を修正し、前記DSSCセルの動作状態とは無関係に電解質の光退色反応を防止し、前記光退色反応は、前記紫外線フィルタリング手段によってさらに防止される。
【0144】
別の利点は、本発明による光起電力装置が、環境条件によって引き起こされる、および/または同光起電力装置の組み立てによる、および/または後者の装置の設置による応力に対してより耐性がある点である。
【0145】
さらに別の利点は、光起電力装置の電気的保護用の領域の視覚的インパクトの低減である。
【0146】
全領域が同じ場合、パッシブ領域の減少は、それと同一面積の減少したパッシブ領域を持つ1つまたは複数の追加の光起電力モジュールを備えた光起電力装置を実現する機会を提供する。例えば、全領域が0.677m
2の光起電力装置を実現するためには、182.76cm
2の公知の光起電力モジュールの場合、22.2ワットの電力を生成する36個のモジュールが設けられ、従って、以前のケースと比較して、2.7%増加している。
【0147】
DSSCバイパスダイオードなどの、DSSC光起電力モジュールにおける別々の構成要素の一体化が複雑であり、DSSC光起電力モジュールの従来の組み立てとすぐさま適合しない場合であっても、上記の利点が得られる。
【0148】
本発明を限定する目的ではなく、例示目的で、その好適な実施形態に従って記載したが、添付の特許請求の範囲に規定されるような関連の範囲から逸脱することなく、変更形態および/または修正形態が当業者によって導入可能であることを理解されたい。