(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けていない状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを外乱計測データ記憶部に記憶し、
前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けた状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置と、タイヤ押し付け装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを試験計測データ記憶部に記憶するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の試験装置。
前記外乱計測データ記憶ステップにおいて、前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けていない状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを外乱計測データ記憶部に記憶し、
前記試験計測データ記憶ステップにおいて、前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けた状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置と、タイヤ押し付け装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを試験計測データ記憶部に記憶するように構成したことを特徴とする請求項8に記載の試験方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2のタイヤ試験装置300では、走行ドラム302に凸部308を直接形成して試験を行うように構成しているので、凸部308の形状が固定されてしまい、実際の道路の形状、縁石、小石などの障害物の種々の形状に対応することができず、実際の道路形状などとはかけ離れたタイヤ試験しかできないことにもなる。
【0014】
また、特許文献2のタイヤ試験装置300では、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、走行ドラム302に凸部308を形成した状態のタイヤ試験とを比較して同時に行うことは不可能である。
【0015】
一方、特許文献3のタイヤ試験装置400では、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、走行ドラム402の表面408から突起部406が突出する状態のタイヤ試験とを行うことができるようには構成されている。
【0016】
しかしながら、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うためには。
図21の部分拡大断面図に示したように、アクチュエータ404が縮んだ状態で、突起部406の表面410が、走行ドラム402の表面408と同じ形状の表面(円弧状の平坦な表面)を形成する必要があり、突起部406の形状が固定される(円弧状の平坦な表面に固定される)ことになる。
【0017】
このため、特許文献3のタイヤ試験装置400では、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などの障害物に応じて、これらの障害物を乗り越える際に、これらの障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定することは不可能である。
【0018】
本出願人は、このような現状に鑑み、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を簡単容易に行うことが可能なタイヤ試験装置を開発している。
【0019】
また、本出願人は、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能なタイヤ試験装置を開発している。
【0020】
この本出願人の開発したタイヤ試験装置500の概略を説明すると、
図22のような構成である。
【0021】
図22(A)は、タイヤ試験装置500を説明する走行ドラム502の短手方向の断面概略図、
図22(B)は、タイヤ試験装置500の作動を説明する走行ドラム502の
長手方向の断面概略図である。
【0022】
図22(A)、
図22(B)に示したように、タイヤ試験装置500は、図示しないドラム駆動装置によって、A方向に回転駆動する走行ドラム502を備えている。また、走行ドラム502の表面504に対して離接可能に配置され、走行ドラム502の回転に応じてタイヤTが回転するように保持する図示しないタイヤ押し付け装置を介して、走行ドラム502の表面504にタイヤTを押し付けるように構成されている。
【0023】
さらに、タイヤ押し付け装置に保持されたタイヤTが走行ドラム502の表面504に押し付けられるタイヤ接触位置C1と、タイヤ接触位置C1から走行ドラム502の軸方向に離間し、タイヤTが走行ドラム502の表面504と接触しないタイヤ待機位置C2との間で、走行ドラム502の表面504から突設する突設部材(図示せず)を、走行ドラム502の軸方向Bに移動させるように構成した突設部材移動装置506を備えている。
【0024】
この突設部材移動装置506には、図示しないが、センサから構成される荷重検出器が備えられている。
【0025】
この場合、荷重検出器が、走行ドラム502のドラム回転円周上に配置されているので、
図23のグラフのNに示したように、走行ドラム502の回転ムラや動バランスの影響によって、この荷重検出器の計測値に外乱が入力されることになる。
【0026】
また、
図22(C)に示したように、突設部材移動装置506の走行ドラム502の軸方向Bへの移動は、ステップ入力によって動作するので、
図23のグラフのHに示したように、この動作による慣性力もまた外乱として荷重検出器に入力されることになる。
【0027】
このため、これらの外乱を除去する方法として、従来、例えば、ローパスフィルタ(低域通過フィルタ)、ハイパスフィルタ(高域通過フィルタ)を通す方法がある。
【0028】
しかしながら、このようなローパスフィルタ、ハイパスフィルタを通す方法では、実信号との間に位相差が生じ、また、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合には、
図23のグラフのI部分の計測したい信号の一部成分まで除去してしまい、計測結果に影響を及ぼすおそれがあり、正確な試験を実施することができないことになる。
【0029】
本発明は、このような現状に鑑み、実信号との間に位相遅れが生じず、しかも、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合にも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の試験装置は、
被試験対象物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験装置であって、
前記試験装置に被試験対象物を取り付けていない状態で、前記試験装置を作動させて、試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを記憶する外乱計測データ記憶部と、
前記試験装置に被試験対象物を取り付けた状態で、前記試験装置を作動させて、試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを記憶する試験計測データ記憶部と、
前記外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データと、前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタを介して、前記外乱計測データの外乱データの位置を特定して、前記試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得るデータ解析部と、
を備えることを特徴とする。
【0031】
また、本発明の試験方法は、
被試験対象物に対して、外力を負荷して各種の試験を行うための試験方法であって、
試験装置に被試験対象物を取り付けていない状態で、前記試験装置を作動させて、試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを記憶する外乱計測データ記憶ステップと、
前記試験装置に被試験対象物を取り付けた状態で、前記試験装置を作動させて、試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを記憶する試験計測データ記憶ステップと、
前記外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データと、前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタを介して、前記外乱計測データの外乱データの位置を特定して、前記試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得るデータ解析ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0032】
このように構成することによって、外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データと、試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタを介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定することができる。
【0033】
そして、試験計測データから位置が特定された外乱データを除去することにより、計測データを得ることができ、正確な試験を実施することができる。
【0034】
しかも、実信号との間に位相遅れが
生じず、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合にも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【0035】
さらに、時系列データ内のどの時点でも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【0036】
また、本発明の試験装置は、
前記データ解析部が、
前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データを読み込み、フーリエ変換を実施し、
前記外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データを読み込み、フーリエ変換を実施し、
前記試験計測データのフーリエ変換結果と、前記外乱計測データのフーリエ変換結果とに基づいて、畳み込み積分を実施し、
前記畳み込み積分の結果について、逆フーリエ変換を実施して、強調された外乱データを得て、
前記強調された外乱データに基づいて、前記外乱計測データの外乱データの位置を特定して、前記試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得るように構成したことを特徴とする。
【0037】
また、本発明の試験方法は、
前記データ解析ステップが、
前記試験計測データ記憶ステップで記憶された試験計測データを読み込み、フーリエ変換を実施する試験計測データフーリエ変換ステップと、
前記外乱計測データ記憶ステップで記憶された外乱計測データを読み込み、フーリエ変換を実施する外乱計測データフーリエ変換ステップと、
前記試験計測データフーリエ変換ステップのフーリエ変換結果と、前記外乱計測データフーリエ変換ステップのフーリエ変換結果とに基づいて、畳み込み積分を実施する畳み込み積分ステップと、
前記畳み込み積分ステップの畳み込み積分の結果について、逆フーリエ変換を実施して、強調された外乱データを得る外乱データ強調ステップと、
前記外乱データ強調ステップで強調された外乱データに基づいて、前記外乱計測データの外乱データの位置を特定して、前記試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得る計測データ取得ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0038】
このように構成することによって、外乱データ強調ステップで強調された外乱データに基づいて、外乱計測データの外乱データの位置を特定して、試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得ることができ、正確な試験を実施することができる。
【0039】
また、本発明では、
前記試験装置が、被試験対象物であるタイヤの耐久性能を試験するタイヤ試験装置であって、
走行ドラムを回転駆動するドラム駆動装置と、
前記走行ドラムの表面に対して離接可能に配置され、前記走行ドラムの表面にタイヤを押し付けることによって、走行ドラムの回転に応じてタイヤが回転するように保持するタイヤ押し付け装置と、
前記タイヤ押し付け装置に保持されたタイヤが走行ドラムの表面に押し付けられるタイヤ接触位置と、前記タイヤ接触位置から走行ドラムの軸方向に離間し、タイヤが走行ドラムの表面と接触しないタイヤ待機位置との間で、前記走行ドラムの表面から突設する突設部材を、前記走行ドラムの軸方向に移動させるように構成した突設部材移動装置と、
を備えることを特徴とする。
【0040】
このように構成することによって、突設部材移動装置の作動により、走行ドラムの表面から突設する突設部材が、タイヤ接触位置と、この位置から走行ドラムの軸方向に離間したタイヤ待機位置とを移動する。
【0041】
突設部材がタイヤ待機位置にある状態では、タイヤ接触位置には、走行ドラムの表面から突設する突設部材が、走行ドラムの表面に存在しない状態であるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うことができる。
【0042】
また、突設部材移動装置の作動により、走行ドラムの表面から突設する突設部材が、タイヤ待機位置から走行ドラムの軸方向に移動して、タイヤ押し付け装置に保持されたタイヤが走行ドラムの表面に押し付けられるタイヤ接触位置に移動する。
【0043】
突設部材がタイヤ接触位置にある状態では、タイヤ接触位置には、走行ドラムの表面から突設する突設部材が、走行ドラムの表面に存在している状態であるので、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0044】
これにより、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を簡単容易に行うことが可能である。
【0045】
また、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能である。
【0046】
また、外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データと、試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタを介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定することができる。
【0047】
そして、試験計測データから位置が特定された外乱データを除去することにより、計測データを得ることができ、正確な試験を実施することができる。
【0048】
しかも、実信号との間に位相遅れが
生じず、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合にも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確なタイヤ試験を実施することができる。
【0049】
さらに、時系列データ内のどの時点でも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確なタイヤ試験を実施することができる。
【0050】
また、本発明の試験装置は、
前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けていない状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを外乱計測データ記憶部に記憶し、
前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けた状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置と、タイヤ押し付け装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを試験計測データ記憶部に記憶するように構成したことを特徴とする。
【0051】
また、本発明の試験方法は、
前記外乱計測データ記憶ステップにおいて、前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けていない状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた外乱計測データを外乱計測データ記憶部に記憶し、
前記試験計測データ記憶ステップにおいて、前記タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けた状態で、前記ドラム駆動装置と、突設部材移動装置と、タイヤ押し付け装置を作動させて、前記試験装置に設けたセンサによって得られた試験計測データを試験計測データ記憶部に記憶するように構成したことを特徴とする。
【0052】
このようにタイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けていない状態で、ドラム駆動装置と、突設部材移動装置を作動させることによって、試験装置に設けたセンサによって外乱計測データを得て、外乱計測データを外乱計測データ記憶部に記憶することができる。
【0053】
また、タイヤ押し付け装置にタイヤを取り付けた状態で、ドラム駆動装置と、突設部材移動装置と、タイヤ押し付け装置を作動させることによって、試験装置に設けたセンサによって試験計測データを得て、試験計測データを試験計測データ記憶部に記憶することができる。
これにより、外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確なタイヤ試験を実施することができる。
【0054】
また、本発明の試験装置は、
前記データ解析部において、マッチドフィルタの原理に基づいて、外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データを除去すべき信号とし、
前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データと、前記除去すべき信号との自己相関を計算して、
前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データの中から、前記除去すべき信号の
周波数形状が最大エネルギーとなる場所を時系列上で特定し、
前記特定した位置を、除去すべき信号の除去対象位置として、前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データから、前記除去すべき信号を時系列上で除去するように構成したことを特徴とする。
また、本発明の試験方法は、
前記データ解析ステップにおいて、マッチドフィルタの原理に基づいて、外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データを除去すべき信号とし、
前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データと、前記除去すべき信号との自己相関を計算して、
前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データの中から、前記除去すべき信号の
周波数形状が最大エネルギーとなる場所を時系列上で特定し、
前記特定した位置を、除去すべき信号の除去対象位置として、前記試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データから、前記除去すべき信号を時系列上で除去するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、外乱計測データ記憶部に記憶された外乱計測データと、試験計測データ記憶部に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタを介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定することができる。
【0056】
そして、試験計測データから位置が特定された外乱データを除去することにより、計測データを得ることができ、正確な試験を実施することができる。
【0057】
しかも、実信号との間に位相遅れが生じず、しかも、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合にも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【0058】
さらに、時系列データ内のどの時点でも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
(実施例1)
【0061】
図1は、本発明の試験装置および試験方法を、試験装置として、タイヤ試験装置に適用した実施例を説明するタイヤ試験装置全体の概略図、
図2は、
図1のタイヤ試験装置のブロック図、
図3は、
図1のタイヤ試験装置のタイヤ試験装置本体の一部を切り欠いた状態の正面図、
図4は、
図3のタイヤ試験装置本体のA方向の側面図、
図5は、
図4のタイヤ試験装置本体の部分拡大図、
図6は、
図3のタイヤ試験装置本体の部分拡大図、
図7は、
図6において突設部材64がタイヤ接触位置C1にある状態を示す部分拡大図である。
【0062】
図1において、符号1は、全体で本発明のタイヤ試験装置を示しており、タイヤ試験装置1は、タイヤ試験装置本体10を備えている。
【0063】
本発明のタイヤ試験装置1は、例えば、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うためのものである。
【0064】
図3〜
図6に示したように、本発明のタイヤ試験装置本体10は、例えば、床などに設置される基台12を備えており、基台12の上面には、走行ドラム14を回転可能に支持する一対の走行ドラム支持フレーム16が立設されている。
【0065】
そして、
図3〜
図6に示したように、走行ドラム支持フレーム16には、それぞれ、ベアリング18が設けられており、走行ドラム14の円管形状の軸部20の端部22、24が挿通されることによって、走行ドラム14が回転可能に支持されている。
【0066】
また、
図3〜
図6に示したように、走行ドラム14の軸部20の一方の端部22は、一方の走行ドラム支持フレーム16aを通り、駆動モータ32に接続されている。これにより、駆動モータ32の回転が、走行ドラム14に伝達されるように構成されている。なお、駆動モータ32には、例えば、図示しないが、速度検知センサが付設されている。
【0067】
さらに、
図3〜
図6に示したように、走行ドラム14には、突設部材移動装置42が備えられている。この突設部材移動装置42は、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに走行ドラム14の内部に配置した内部移動機構44から構成されている。
【0068】
すなわち、内部移動機構44として、
図3〜
図6に示したように、走行ドラム14の軸部20の内部には、シリンダ室46が形成されており、このシリンダ室46内にピストン48が軸方向に移動可能に収納されている。
【0069】
そして、
図3〜
図6に示したように、ピストン48の一端48aは、シリンダ室46の外部まで延びており、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに対して、垂直方向で半径方向に延びる移動板部材50に連結されている。
【0070】
この移動板部材50の一方の端部50aは、軸部20の軸線方向に形成されたスリット開口部20aを介して、平行な4つのフランジ38の間に架け渡すように設けたガイド支持フレーム52に形成されたスリット開口部52aを通り、半径方向に延びて軸方向移動部54に連結されている。
【0071】
図3〜
図6に示したように、軸方向移動部54は、矩形板形状のベース部材56を備えている。このベース部材56の下面に形成された案内機構58によって、ベース部材56が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように構成されている。
【0072】
すなわち、案内機構58は、例えば、いわゆるLMガイドから構成されており、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の両端部に形成され、走行ドラム14の軸方向に延びる2つの平行な案内レール60と、ベース部材56の下面に形成され、この案内レール60に沿って案内される案内部材62とから構成されている。
【0073】
また、
図3〜
図6に示したように、軸方向移動部54には、ベース部材56の上面に、走行ドラム14の軸方向に、突設部材64が配置される突設部66と、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68とが隣接して配置されている。
【0074】
この場合、
図6の拡大図に示したように、走行表面部68は、走行ドラム14の表面(走行面)36と略同一の円弧形状の表面68aを形成するような形状に構成されている。
【0075】
一方、突設部66の突設部材64は、走行ドラム14の表面(走行面)36から半径方向外側に突設するような形状に構成されている。すなわち、この突設部材64の形状は、特に限定されるものではなく、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じた形状とすればよく、適宜変更可能である。
【0076】
また、この実施例の突設部66の突設部材64には、その下面のベース部材56の上面との間に、荷重検知センサ70が備えられている。
【0077】
このように構成することによって、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部材64に、荷重検出部である荷重検知センサ70が備えられているので、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部材64にタイヤTによって負荷される圧力を測定することができ、より正確にタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0078】
また、
図3に示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36には、突設部材移動装置42の軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように、矩形形状の開口部72が形成されている。
【0079】
さらに、
図3、
図4に示したように、移動板部材50の一方の端部50aと、中心角180°離間した位置にある、移動板部材50の他方の端部50bも、移動板部材50の一方の端部50aとほぼ同様な構成となっている。従って、同じ構成部材には、同じ参照番号を付して簡単に説明する。
【0080】
すなわち、移動板部材50の他方の端部50bは、軸部20の軸線方向に形成されたスリット開口部20aを介して、平行な2つのフランジ枠40の間に架け渡すように設けたガイド支持フレーム52に形成されたスリット開口部52aを通り、半径方向に延びて軸方向移動部54に連結されている。
【0081】
図3〜
図6に示したように、軸方向移動部54は、矩形板形状のベース部材56を備えている。このベース部材56の下面に形成された案内機構58によって、ベース部材56が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように構成されている。
【0082】
すなわち、案内機構58は、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の両端部に形成され、走行ドラム14の軸方向に延びる2つの平行な案内レール60と、ベース部材56の下面に形成され、この案内レール60に沿って案内される案内部材62とから構成されている。
【0083】
また、走行ドラム14の表面(走行面)36には、突設部材移動装置42の軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように、矩形形状の開口部72が形成されている。
【0084】
なお、
図3に示したように、移動板部材50の他方の端部50bに連結された軸方向移動部54には、突設部66の突設部材64が形成されておらず、突設部66の突設部材64の部分まで、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が延設された形状となっている。
【0085】
また、この実施例のタイヤ試験装置本体10では、
図3に示したように、外部移動機構として、サーボ式の移動機構13を用いている。
【0086】
すなわち、このサーボ式の移動機構13では、
図3に示したように、ピストン48の他方の端部48cが、回転継手11を介して、走行ドラム14の軸部20の外部に設けられたボールスプライン15のスプライン軸17の一端17aに接続されている。
【0087】
そして、スプライン軸17の他端17bが、サーボモータ19に連結されている。
【0088】
また、
図3に示したように、ボールスプライン15のスプライン軸17の一端17aには、スプライン軸17の走行ドラム14の軸部20の軸線X方向への移動量を検知するために、変位センサ21が設けられている。
【0089】
このように構成することによって、サーボモータ19の作動によって、ボールスプライン15のスプライン軸17が伸縮することによって、ピストン48が、走行ドラム14の軸部20の軸線X方向に沿って移動するようように構成されている。
【0090】
すなわち、サーボモータ19の作動によって、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、タイヤ接触位置C1と、この位置から走行ドラムの軸方向に離間し、タイヤTが走行ドラム14の表面36と接触しないタイヤ待機位置C2とを移動するように構成されている。
【0091】
なお、この実施例では、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに走行ドラム14の外部に配置した外部移動機構として、サーボ式の移動機構13を配置したが、図示しないが、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに走行ドラム14の内部に配置した内部移動機構として、サーボ式の移動機構を配置することも可能である。
【0092】
さらに、
図3に示したように、一方の走行ドラム支持フレーム16aには、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80が設けられている。
【0093】
一方、
図4に示したように、基台12の上面には、上面視で略コ字形状のタイヤ支持フランジ84が立設されており、タイヤ支持フランジ84は、一対の平行に配置するように立設されたタイヤ支持フランジ部84aを備えている。そして、図示しないが、これらのタイヤ支持フランジ部84aの間には、2組の平行なタイヤ案内レールが設けられている。
【0094】
さらに、2組の平行なタイヤ案内レールの間には、タイヤ押し付け装置90が設けられており、タイヤ押し付け装置90には、これらのタイヤ案内レールに案内される。また、タイヤ押し付け装置90には、回転装着軸90aが設けられており、この回転装着軸90aに、被試験体であるタイヤTが回転可能に脱着自在に装着されている。
【0095】
さらに、タイヤ押し付け装置90の基端部90bには、タイヤ支持フランジ84に固定された、例えば、ピストンシリンダ機構からなる押し付け駆動装置92が連結されているとともに、この押し付け駆動装置92のピストン92aには、荷重検出器94が設けられている。
【0096】
従って、このように構成することによって、タイヤ押し付け装置90により、
図4の矢印Bに示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36に対してタイヤTが離接可能に配置される。
【0097】
そして、押し付け駆動装置92を駆動させて、走行ドラム14の表面(走行面)36にタイヤTを押し付けることによって、走行ドラム14の回転に応じてタイヤTが回転するように構成されている。
【0098】
従って、上記のように構成することによって、
図3、
図6に示したように、本発明のタイヤ試験装置1では、
(1)タイヤ押し付け装置90に保持されたタイヤTが走行ドラム14の表面(走行面)36に押し付けられるタイヤ接触位置C1と、
(2)
図7に示したように、タイヤ接触位置C1から走行ドラム14の軸方向に離間し、タイヤTが走行ドラム14の表面36と接触しないタイヤ待機位置C2との間で、
走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64を、突設部材移動装置42を作動させることによって、走行ドラム14の軸方向に移動することができるように構成されている。
【0099】
このように構成することによって、突設部材移動装置42の作動により、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、タイヤ接触位置C1と、この位置から走行ドラムの軸方向に離間したタイヤ待機位置C2とを移動する。
【0100】
突設部材
64がタイヤ接触位置C1にある状態から、突設部材移動装置42の作動により、ピストン48が、
図3、
図6において、走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0101】
これにより、ピストン48の一端48aに連結された移動板部材50が、ピストン48の一端48aを介して走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。これに伴って、移動板部材50に連結された軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0102】
この際、移動板部材50の一方の端部50aに連結された軸方向移動部54が、ベース部材56に備えられた案内機構58、すなわち、ベース部材56の案内部材62が、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の案内レール60に沿って走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0103】
図6で説明すると、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動して、タイヤ待機位置C2に移動する。そして、この状態で、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになる。
【0104】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面に存在しない状態であるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うことができる。
【0105】
次に、
図7の状態から、突設部材移動装置42の作動により、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の軸方向に移動して、タイヤ待機位置C2から、タイヤ押し付け装置90に保持されたタイヤTが走行ドラム14の表面(走行面)36に押し付けられるタイヤ接触位置C1に移動する。
【0106】
すなわち、突設部材64がタイヤ待機位置C2にある状態から、突設部材移動装置42の作動により、すなわち、サーボモータ19の作動によって、
図3、
図6の状態から、ピストン48が、
図3、
図6において、走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0107】
これにより、ピストン48の一端48aに連結された移動板部材50が、ピストン48の一端48aを介して走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。これに伴って、移動板部材50に連結された軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0108】
この際、移動板部材50の一方の端部50aに連結された軸方向移動部54が、ベース部材56に備えられた案内機構58、すなわち、ベース部材56の案内部材62が、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の案内レール60に沿って走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0109】
図7で説明すると、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の左側に移動して、タイヤ接触位置C1に移動する。
【0110】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面(走行面)36に存在している状態である。
【0111】
従って、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0112】
これにより、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を簡単容易に行うことが可能である。
【0113】
また、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能である。
【0114】
この場合、
図4に示したように、突設部材移動装置42の作動のタイミングは、
(1)突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1と、
(2)突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2との間を回転する間に、
すなわち、
図4の矢印Fで示した角度範囲で、突設部材64が、タイヤ接触位置C1とタイヤ待機位置C2との間を、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動するようにすればよい。
【0115】
すなわち、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1で、突設部材移動装置42を作動させる。
【0116】
これによって、突設部材64をタイヤ待機位置C2(
図6の状態)からタイヤ接触位置C1(
図7の状態)へ、走行ドラム14の表面(走行面)36での軸方向の移動を開始する。
【0117】
この状態では、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け位置Eには位置しないので、突設部材64をタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1へ、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動できる。
【0118】
さらに、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2まで、この状態が持続して、突設部材64をタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1へ移動することができる。
【0119】
そして、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2で、突設部材64のタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1への移動が完了する。
【0120】
これにより、所定の回数、突設部材64をタイヤTが乗り越え、障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0121】
そして、所定の回数、突設部材64をタイヤTが乗り越えるタイヤ試験が完了した後、再び、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dに、タイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1で、突設部材移動装置42を作動させる。
【0122】
これによって、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ、走行ドラム14の表面(走行面)36での軸方向の移動を開始する。
【0123】
この状態では、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け位置Eには位置しないので、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動できる。
【0124】
さらに、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2まで、この状態が持続して、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ移動することができる。
【0125】
そして、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2で、突設部材64のタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2への移動が完了する。
【0126】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面(走行面)36に存在しない状態である。また、この状態では、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うことができる。
【0127】
従って、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じてこれらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能である。
【0128】
なお、この場合、第1の角度位置θ1、第2の角度位置θ2は、特に限定されるものではなく、走行ドラム14の回転速度に応じて適宜設定することができる。
【0129】
また、この実施例では、軸方向移動部54には、ベース部材56の上面に、走行ドラム14の軸方向に、1つの突設部材64が配置される突設部66と、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する1つの走行表面部68とが隣接して配置している。
【0130】
しかしながら、図示しないが、軸方向移動部54に、走行ドラム14の軸方向に、複数の突設部材64が配置される突設部66を備えるようにしても良い。
【0131】
ところで、この場合、荷重検出器である荷重検知センサ70が、走行ドラム14のドラム回転円周上に配置されているので、前述した
図23のグラフのNと同様に、走行ドラム14の回転ムラや動バランスの影響によって、この荷重検出器の計測値に外乱が入力されることになる。
【0132】
また、前述の
図22(B)と同様に、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向Bへの移動は、ステップ入力によって動作するので、前述した
図23のグラフのHと同様に、この動作による慣性力もまた外乱として荷重検出器に入力されることになる。
【0133】
このため、これらの外乱を除去する方法として、従来、例えば、ローパスフィルタ(低域通過フィルタ)、ハイパスフィルタ(高域通過フィルタ)を通す方法がある。
【0134】
しかしながら、このようなローパスフィルタ、ハイパスフィルタを通す方法では、実信号との間に位相差が生じ、また、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合には、
図23のグラフのI部分の計測したい信号の一部成分まで除去してしまい、計測結果に影響を及ぼすおそれがあり、正確な試験を実施することができないことになる。
【0135】
このため、本発明のタイヤ試験装置1は、下記のように構成されている。
【0136】
すなわち、本発明のタイヤ試験装置1では、
図1に示したように、タイヤ試験装置本体10の走行ドラム14の駆動モータ32の回転駆動を制御するドラム制御装置100を備えている。
【0137】
このドラム制御装置100は、駆動モータ32に対して、指令信号を出すとともに、駆動モータ32に付設された、図示しない速度検知センサからの回転角信号を受信するように構成されている。
【0138】
そして、このドラム制御装置100は、ユーザーインターフェイス(PC Sysytem)102に接続されており、ユーザーインターフェイス102から動作指令を受けとるように構成されている。また、ドラム制御装置100は、駆動モータ32から受け取った速度検知センサからの回転角信号に基づいて、ユーザーインターフェイス102へ、回転角計測データを送るように構成されている。
【0139】
また、突設部材移動装置42と、荷重検出部である荷重検知センサ70とは、突設部材移動装置制御装置104に接続されている。そして、この突設部材移動装置制御装置104から、突設部材移動装置42に指令信号が送られるとともに、荷重検知センサ70で計測された位置・荷重信号が、突設部材移動装置制御装置104に送られるように構成されている。
【0140】
さらに、突設部材移動装置制御装置104は、ユーザーインターフェイス102に接続されており、ユーザーインターフェイス102から位置の動作指令を受けとるように構成されている。また、突設部材移動装置制御装置104は、荷重検知センサ70から受け取った位置・荷重信号に基づいて、ユーザーインターフェイス102へ、位置・荷重信号計測データを送るように構成されている。
【0141】
一方、タイヤ押し付け装置90は、タイヤTの走行ドラム14の表面(走行面)36への押し付けを制御するタイヤ押し付け装置制御装置106に接続されている。そして、このタイヤ押し付け装置制御装置106から、タイヤ押し付け装置90に指令信号が送られるとともに、タイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け荷重検出器94で計測された位置・荷重信号が、タイヤ押し付け装置制御装置106に送られるように構成されている。
【0142】
さらに、タイヤ押し付け装置制御装置106は、ユーザーインターフェイス102に接続されており、ユーザーインターフェイス102から動作指令を受けとるように構成されている。また、タイヤ押し付け装置制御装置106は、タイヤ押し付け荷重検出器94から受け取った位置・荷重信号に基づいて、ユーザーインターフェイス102へ、位置・荷重信号等計測データを送るように構成されている。
【0143】
すなわち、
図2のブロック図に示したように、突設部材移動装置42、走行ドラム14(駆動モータ32)、および、タイヤ押し付け装置制御装置106は、制御装置108(ドラム制御装置100、突設部材移動装置制御装置104、タイヤ押し付け装置制御装置106)を介して、ユーザーインターフェイス102と接続されている。
【0144】
これによって、前述したように、突設部材移動装置42、走行ドラム14(駆動モータ32)、および、タイヤ押し付け装置制御装置106と、ユーザーインターフェイス102との間で、動作指令、各計測データを交信することができるように構成されている。
【0145】
そして、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102は、後述するように、外乱計測データ(参照信号)を記憶する外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110を備えている。また、ユーザーインターフェイス102は、試験計測データを記憶する試験計測データ記憶部(記憶領域2)112を備えている。
【0146】
さらに、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102は、後述するように、データ解析部においてマッチドフィルタを介して、試験計測データから外乱データを除去することにより得られた計測データを記憶する解析データ記憶部(記憶領域3)114を備えている。
【0147】
また、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102は、試験条件を記憶する試験条件記憶部(記憶領域4)116を備えている。
【0148】
このように構成される本発明のタイヤ試験装置1は、
図8〜
図10のフローチャート、
図11の本発明のタイヤ試験装置1の作動の概念図、
図12〜
図15のグラフに示したように作動するように構成されている。
【0149】
すなわち、
図8のフローチャートに示したように、タイヤ試験装置1が始動して、ステップS1において、外乱を予め計測する。このステップS1の外乱の計測では、ドラム制御装置100の指令信号によって、駆動モータ32を駆動させて、走行ドラム14を回転させる。また、突設部材移動装置制御装置104の指令信号によって、突設部材移動装置42を任意の時間で作動させる。
【0150】
これにより、突設部材移動装置42の荷重検出部である荷重検知センサ70によって、突設部材移動装置42の作動によって生じる慣性力と回転ムラによって生じる力を外乱として計測し、
図2に示したように、外乱計測データを外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶する。
【0151】
この外乱計測データは、
図11、
図12のグラフに示したように、突設部材移動装置42の突設部材64のタイヤ接触位置C1とタイヤ待機位置C2との間の移動によって生じる慣性力による外乱である荷重波形部分Jと、回転ムラなどによって生じる外乱部分Kとから構成されている。
【0152】
具体的には、このステップS1の外乱の計測は、
図9のフローチャートに示したように実施される。
【0153】
先ず、ステップS11において、
図3、
図6に示したように、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部66に、突設部材64を設置する。
【0154】
次に、ステップS12において、
図6に示したように、突設部材移動装置制御装置104の指令信号によって、突設部材移動装置42を作動させて、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64を、走行ドラム14の軸方向の右側に移動させて、タイヤ待機位置C2(初期位置)に移動させる。
【0155】
そして、ステップS13において、ドラム制御装置100の指令信号によって、駆動モータ32を駆動させて、走行ドラム14を回転させる。
【0156】
ステップS14において、走行ドラム14が、予め設定された所定の回転数に到達したか否かが、ドラム制御装置100によって判断される。そして、ステップS14において所定の回転数に到達したと判断された場合には、ステップS15に進み、計測が開始される。
【0157】
一方、ステップS14において所定の回転数に到達していないと判断された場合には、再び、ステップS14に戻り、走行ドラム14が、予め設定された所定の回転数に到達したか否かが、ドラム制御装置100によって判断される。
【0158】
そして、ステップS15に進み、計測が開始された後、ステップS16において、
図7に示したように、突設部材移動装置制御装置104の指令信号によって、突設部材移動装置42を作動させて、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64を、走行ドラム14の軸方向の左側に移動して、タイヤ接触位置C1に移動させる。
【0159】
次に、ステップS17において、突設部材移動装置制御装置104の指令信号によって、突設部材移動装置42を作動させて、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64を、走行ドラム14の軸方向の右側に移動させて、元のタイヤ待機位置C2(初期位置)に移動させる。
【0160】
そして、ステップS15、ステップS16において、突設部材移動装置42の荷重検出部である荷重検知センサ70によって、突設部材移動装置42の作動によって生じる慣性力と回転ムラによって生じる力を外乱として計測し、
図2に示したように、外乱計測データを外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶する。
そして、ステップS18において、計測を終了する。
【0161】
このように、
図8のフローチャートに示したように、ステップS1において、外乱を予め計測し、外乱計測データを外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶した後、
図8のフローチャートのステップS2において、外乱計測データの計測、記憶が終了したか否かが判断される。
【0162】
そして、ステップS2において、外乱計測データの計測、記憶が終了していないと判断された場合には、ステップS1に戻り、外乱の計測が行われる。
【0163】
一方、ステップS2において、外乱計測データの計測、記憶が終了したと判断された場合には、ステップS3に進み、試験が実施される。
【0164】
すなわち、ドラム制御装置100の指令信号によって、駆動モータ32を駆動させて、走行ドラム14を回転させる。また、タイヤ押し付け装置90の回転装着軸90aに被試験体であるタイヤTを回転可能に装着する。そして、タイヤ押し付け装置制御装置106の指令信号によって、押し付け駆動装置92を駆動させて、走行ドラム14の表面(走行面)36にタイヤTを押し付ける。
【0165】
また、突設部材移動装置制御装置104の指令信号によって、突設部材移動装置42を任意の時間で作動させる。
【0166】
これにより、
図8のフローチャートに示したように、ステップS4において、突設部材移動装置42の荷重検出部である荷重検知センサ70からの試験計測データを、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102の試験計測データを記憶する試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶する。
【0167】
また、ステップS4において、押し付け駆動装置92のピストン92aに付設した荷重検出器94からの試験計測データを、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102の試験計測データを記憶する試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶する。
【0168】
なお、この試験計測データは、
図11、
図13のグラフに示したように、突設部材移動装置42の突設部材64のタイヤ接触位置C1とタイヤ待機位置C2との間の移動によって生じる慣性力による外乱である荷重波形部分Lと、突設部材64をタイヤTが乗り越える際の計測データ部分Mと、回転ムラなどによって生じる外乱部分Oとから構成されている。
【0169】
なお、ステップS3、ステップS4の試験の実施、試験計測データの記憶は、
図9のフローチャートに示したように、前述のステップS1の外乱の計測と同様に実施される。
【0170】
但し、ステップS1の外乱の計測では、
図9のフローチャートのステップS15、ステップS16において、外乱計測データが、外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶されるように構成されている。
【0171】
この代わりに、ステップS3、ステップS4の試験の実施、試験計測データの記憶は、突設部材移動装置42の荷重検出部である荷重検知センサ70からの試験計測データが、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102の試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶される。
【0172】
また、押し付け駆動装置92のピストン92aに付設した荷重検出器94からの試験計測データが、
図2に示したように、ユーザーインターフェイス102の試験計測データを記憶する試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶されるように構成されている。
【0173】
このようにステップS3、ステップS4の試験の実施、試験計測データの記憶が行われた後、
図8のフローチャートに示したように、ステップS5において、データ解析部において、データ解析が実施される。
【0174】
すなわち、
図11に示したように、外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶された外乱計測データ(
図11(A)のグラフ、
図12のグラフ参照)と、試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶された試験計測データ(
図11(B)のグラフ、
図13のグラフ参照)とに基づいて、マッチドフィルタ120を介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定する(
図11(c)のグラフ、
図14のグラフ参照)。
【0175】
そして、マッチドフィルタ
120を介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定した後、試験計測データから外乱データを除去することにより、計測データを得て(
図11(D)のグラフ、
図15のグラフ参照)、得られた計測データを、ユーザーインターフェイス102の解析データ記憶部(記憶領域3)114に記憶するように構成されている。
【0176】
そして、
図8のフローチャートに示したように、ステップS6において、試験を終了する。
【0177】
ところで、このデータ解析部におけるデータ解析は、下記のようなマッチドフィルタの理論に基づいて行われる。
【0178】
先ず、目標信号(今回は予め計測した外乱信号)をs(t)、その周波数スペクトルをs(f)、目標信号のエネルギーをEとし、
【数1】
と定義する時、マッチドフィルタの出力V(x
0)は、
【数2】
で与えられ、X=X
0の時、最大のエネルギーを得る事が出来るフィルタをマッチドフィルタと定義し、本提案はこの理論を利用して特定信号を除去し計測信号を得る方法である。
【0179】
すなわち、X=X
0の時(場所が一致した時)、その周波数形状と場所が一致した時に、最大のエネルギーを得る理論を用いる方法である。
【0180】
具体的には、
図10のフローチャート、
図11の本発明のタイヤ試験装置1の作動の概念図、
図16のマッチドフィルタ120の概念図、
図17のグラフに基づいて、以下のように実施される。
【0181】
先ず、
図10のフローチャートに示したように、ステップS20において、ユーザーインターフェイス102の解析データ記憶部(記憶領域3)114に記憶された計測データ(
図11(B)のグラフ、
図13のグラフ参照)を読み込み、マッチドフィルタ120に入力される。
【0182】
一方、ステップS21において、ユーザーインターフェイス102の外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶された外乱計測データ(
図11(A)のグラフ、
図12のグラフ参照)を読み込み、マッチドフィルタ120に入力される。
【0183】
そして、ステップS22において、マッチドフィルタ120に入力された計測データについて、フーリエ変換が実施される。
【0184】
同様に、ステップS23において、マッチドフィルタ120に入力された外乱計測データについて、フーリエ変換が実施される。
【0185】
次に、ステップS24において、ステップS23においてフーリエ変換された外乱計測データについて、共役数に変換する演算処理が行われる。
【0186】
そして、ステップS25において、ステップS22においてフーリエ変換された計測データと、ステップS24において共役数に変換された外乱計測データとに基づいて、畳み込み積分が実施される。
【0187】
次に、ステップS26において、ステップS25において畳み込み積分されたデータについて、逆フーリエ変換が実施される。これにより、ステップS27において、外乱信号が強調された信号を得る(
図11(c)のグラフ、
図14のグラフ参照)。
【0188】
そして、ステップS28において、外乱計測データの外乱データの位置を特定した後、試験計測データから外乱データを除去(D=B−C)する。
【0189】
これにより、ステップS29において、計測データのみが抽出され(
図11(D)のグラフ、
図15のグラフ参照)、得られた計測データを、ユーザーインターフェイス102の解析データ記憶部(記憶領域3)114に記憶するように構成されている。
【0190】
これらのステップS20〜S29は、詳細に説明すれば、
図16のマッチドフィルタ120の概念図に基づいて、以下のように演算処理がなされるようになっている。
【0191】
先ず、信号関数x(t)があり、この関数の周波数次元の関数をx(f)とする時、以下の関係が成り立つ。
【数3】
【0192】
ここで、下記のように矩形波信号を考える。
【数4】
【0193】
そして、式(1)に(3)を代入すると、
【数5】
となる。
【0194】
ここで、積分範囲を−τ/2〜τ/2とすると、
【数6】
と表され、
図17に示したようなグラフが描かれる。
【0195】
ここで、
図17のグラフにおいて、横軸は周波数となり、実際の値は正しかとらないが、式(5)は、
図17のグラフに示すように、負の値も有している。
【0196】
これは、時間遅れの信号(ここでは、x(t−t
0))とオリジナルな信号のフーリエ変換後の関数をかけたものに等しい。
【0197】
すなわち、時間遅れの信号x(t−t
0)のフーリエ変換をx'(f)とすると、
【数7】
の様になり、tをt'として、t−t
0を式(6)に与えると、
【数8】
となる。逆演算も同様に、周波数をシフトする式で展開すれば、同じような事になる。
【0198】
次に、自己相関関数(外乱計測データ(参照信号))は、共役時間軸上の複素数で考える。すなわち、
【数9】
で定義される。ここで、τは関数x(t)の時間遅れであり、自己相関関数は、
【数10】
【0199】
式(8)をフーリエ変換すると、
【数11】
となり、この式を展開すると、
【数12】
のように、スペクトルの2乗となる(最大のエネルギー)。
【0200】
この証明は、下記のように、δ関数を用いることによってできる。
【数13】
【0201】
ここで、f(0)とf(t
0)は、関数f(□)のはじめ(0)とt
0遅れた時の値である。
【0202】
この時、矩形波について考える。矩形波は、
【数14】
で定義したとする。
【0203】
この矩形波の幅がτで振幅が(1/τ)とすると、τが0に限りなく近づく時を、次のように近似する。
【数15】
【0204】
この時、τが0となる場合は、∞になる事から、δ関数として取り扱うと、
式(11)から、δ関数は、
【数16】
で表現できる。このI(f)の解は1となる。この式(14)の逆変換は、
【数17】
で表現できる。
【0205】
ここで、|x(f)|
2の逆変換を考える。
【数18】
【0206】
そして、式(1)に、X(f)と共役のx
*(f)について代入すると、式(16)は、
【数19】
となる。これを周波数fについて展開すると、
【数20】
となる。これを、さらに、t'について展開すると、
【数21】
【0207】
この式は、自己相関の定義と同じになる。
【0208】
このような考え方に基づいて、
図16のマッチドフィルタ120の概念図に示したように、目標とする外乱信号をs(t)、計測した信号をx(t)、出力信号をv(t)とすると、
【数22】
となる。
【0209】
すなわち、この式(25)のようになり、前述した自己相関の定義から、t=t
0の時、すなわち、τの時に最大のエネルギーを得ることができ、強調された信号が出てくることになる。
【0210】
これにより、
図10のステップS28において、場所が一致した時、すなわち、その周波数形状と場所が一致した時に、最大のエネルギーを得ることができるので、これにより、外乱計測データの外乱データの位置を特定した後、試験計測データから外乱データを除去(D=B−C)する。
【0211】
そして、
図10のステップS29において、計測データのみが抽出され(
図11(D)のグラフ、
図15のグラフ参照)、得られた計測データを、ユーザーインターフェイス102の解析データ記憶部(記憶領域3)114に記憶するように構成されている。
【0212】
このように構成することによって、外乱計測データ記憶部(記憶領域1)110に記憶された外乱計測データと、試験計測データ記憶部(記憶領域2)112に記憶された試験計測データとに基づいて、マッチドフィルタ120を介して、外乱計測データの外乱データの位置を特定することができる。
【0213】
そして、試験計測データから位置が特定された外乱データを除去することにより、計測データを得ることができ、正確な試験を実施することができる。
【0214】
しかも、実信号との間に位相遅れが生じず、計測波形の周波数成分と外乱の周波数が重なる場合にも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【0215】
さらに、時系列データ内のどの時点でも外乱信号のみを除去でき、計測結果に影響を及ぼすおそれがなく、正確な試験を実施することができる。
【0216】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、本発明の試験装置および試験方法を、試験装置として、タイヤ試験装置に適用した実施例を説明した。
【0217】
しかしながら、本発明の試験装置および試験方法を、例えば、金属材料・樹脂材料・複合材料などの材料、自動車部品などの機械部品、これらの完成品、さらには、橋梁・ビル・住宅などの建築物などの構造物からなる被試験対象物に対して、外力を負荷して行われる、加速度試験、衝撃試験、振動試験、疲労試験、耐久試験、特性試験などの各種の試験のための試験装置および試験方法に適用することができる。
【0218】
また、上記実施例では、1つの走行ドラム14に対して、1つの突設部材移動装置42、1つのタイヤ押し付け装置90を設けたが、例えば、図示しないが、1つの走行ドラム14に対して、複数の突設部材移動装置42、複数のタイヤ押し付け装置90を設けて、複数のタイヤTに対して同時にタイヤ試験を実施することもできる。
【0219】
さらに、上記実施例では、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じてこれらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うようにしたが、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験のみを行ってもよい。
【0220】
また、例えば、悪路の道路を走行する悪路状態を模したタイヤ試験を行うように、突設部材64の形状、材質、濡れ具合、温度状態、試験環境などを変更して、様々なその他のタイヤ試験を行うようにすることも可能である。
【0221】
また、上記実施例では、軸方向移動部54のベース部材56の上面に、走行ドラム14の軸方向に、突設部材64が配置される突設部66と、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68と
を隣接して配置したが、突設部材64が配置される突設部66のみを設けても良い。
【0222】
これにより、突設部材64をタイヤが乗り越え、障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験のみを行うように構成しても良い。
【0223】
また、
本発明のタイヤ試験装置1に適用されるタイヤとしては、ゴム製のタイヤに限らず、樹脂製のタイヤ、金属製のタイヤなど種々のタイヤに適用することが可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。