特許第6050306号(P6050306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

<>
  • 特許6050306-射出成形機 図000002
  • 特許6050306-射出成形機 図000003
  • 特許6050306-射出成形機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050306
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20161212BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B29C45/17
   B29C45/84
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-253644(P2014-253644)
(22)【出願日】2014年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-112791(P2016-112791A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】河島 泰弘
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−155133(JP,A)
【文献】 特開2013−018244(JP,A)
【文献】 実開平04−073518(JP,U)
【文献】 実開昭60−062916(JP,U)
【文献】 実開平03−098024(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02181089(GB,A)
【文献】 実開昭62−045112(JP,U)
【文献】 特開平05−237874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出ユニットと、型締ユニットからなり、パージシャッタ装置が前記型締ユニットを構成している固定盤と該固定盤に取り付けられる固定側金型との間に設けられている射出成形機であって、
前記パージシャッタ装置は、板状のパージプレ−トと、該パージプレートに形成されているガイド溝によりその一面がスライド的にガイドされるパージシャッタとからなり、
前記パージプレートが前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に取り付けられると、前記パージシャッタは前記ガイド溝と前記金型取付面とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置とを採るように駆動されることを特徴とする、射出成形機。
【請求項2】
射出ユニットと、型締ユニットからなり、パージシャッタ装置が前記型締ユニットを構成している固定盤と該固定盤に取り付けられる固定側金型との間に設けられている射出成形機であって、
前記パージシャッタ装置は、板状のパージシャッタからなり、前記パージシャッタが前記固定盤と固定側金型との間に組み込まれると、前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に形成されているガイド溝と、該ガイド溝に装着されるガイド栓とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置とを採るように駆動されることを特徴とする、射出成形機。
【請求項3】
射出ユニットと、型締ユニットからなり、パージシャッタ装置が前記型締ユニットを構成している固定盤と該固定盤に取り付けられる固定側金型との間に設けられている射出成形機であって、
前記パージシャッタ装置は、板状のパージシャッタからなり、前記パージシャッタが前記固定盤と固定側金型との間に組み込まれると、前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に形成されているガイド溝と前記固定側金型の被金型取付面とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置とを採るように駆動されることを特徴とする、射出成形機
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが冷却水により冷却されるようになっていることを特徴とする、射出成形機。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが、表面処理されていることを特徴とする、射出成形機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが作動位置にあるときは、前記射出ユニットの射出ノズルが金型にタッチできないように、または射出ノズルが金型にタッチしているときは前記パージシャッタ装置のパージシャッタを作動位置に駆動できないように、インターロック回路が設けられていることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関するもので、より詳細には射出ユニットと型締ユニットとからなり、前記型締めユニットの方にパージシャッタ装置が設けられている射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、概略的には、射出ユニットと型締ユニットとから構成されている。射出ユニットは、加熱シリンダ、この加熱シリンダの内部に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ等からなっている。一方、型締ユニットは、固定盤に取り付けられている固定側金型、可動盤に取り付けられている可動側金型、固定側金型に対して可動側金型を型締めする型締装置等から構成されている。加熱シリンダの基端部にはペレット供給装置が、先端部には射出ノズルがそれぞれ取り付けられ、外周部には加熱用のバンドヒータが設けられている。したがって、加熱シリンダの基端部にペレット供給装置から射出材料を供給すると共に、スクリュを回転駆動して可塑化・計量する工程、可動盤を固定盤に対して型締めする型締め工程、計量が終わってスクリュを軸方向に駆動して射出ノズルから、固定側金型と可動側金型との間に構成されるキャビティに、射出充填する射出工程、保圧工程、型開工程等を実施して成形品を得ることができる。
【0003】
上記のようにして、各工程を実施して成形品を得る過程において、成形品の品種を変えるために金型を交換するとき、加熱シリンダが所定温度に昇温するのを待つとき等においては、成形を中断しなければならない。成形を中断すると、高温状態の加熱シリンダ内に残留している射出材料は熱劣化することがある。次の成形時に劣化した射出材料が混在していると、成形品の品質が落ちる。そこで、成形の実施に先立ち加熱シリンダ内に残留する射出材料は、スクリュを駆動して取り除かれている。すなわち、パージされている。また、射出成形終了時にも加熱シリンダ内に射出材料が劣化して残留しないようにパージされる。さらには、射出材料を変更するときも、あるいは色替え成形するときも、加熱シリンダ内の射出材料はパージされている。
【0004】
このようなパージを、加熱シリンダからスクリュを抜くことなく、より完全に行うために、スクリュの回転数・射出速度は比較的速く設定されている。したがって、パージ樹脂は一層あたりに飛散する。パージ剤が添加されていると飛散距離はさらに広くなる。そこで、射出成形機には、パージカバー、パージシャッター等の色々な装置が設けられている。このようなパージ樹脂飛散防止装置を有する射出成形機の、本発明の直接的な先行文献として特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−155133号公報
【0006】
特許文献1には、図3に示されているように、射出ユニット50と型締ユニット60との間にパージ塊飛散防止装置70が設けられた射出成形機が示されている。射出ユニット50は、従来周知のように加熱シリンダ51からなっている。この加熱シリンダの先端部には軸方向に所定長さの射出ノズル52が設けられ、外周部には加熱用のバンドヒータ53、53、…が設けられている。一方、型締ユニット60は、固定プラテン61、この固定プラテン61に取り付けられている固定側金型62、可動プラテンに取り付けられている可動側金型63、これらの金型を型開閉する型締装置等からなっている。固定プラテン61の中心部には比較的大きな凹部すなわちノズル挿入孔65が形成され、固定側金型にはスプルブッシュ66が嵌められている。
【0007】
パージ塊飛散防止装置70は、一対のプレートガイド部材71、71と、これらのガイド部材により上下方向に摺動的に案内される飛散防止プレート72とからなっている。この飛散防止プレート72には、該プレートが作動位置すなわち下方位置へ駆動されるとき、射出ノズル52が挿通されるノズル先端挿通孔73が形成されている。このように構成されているパージ塊飛散防止装置70が型締ユニット60の固定プラテン61の背面側、すなわち射出ユニット50の先端側に設けられている。なお、符号75はパージカバーを示している。
【0008】
したがって、飛散防止プレート72を上方の非作動位置にスライド的に駆動すると、飛散防止プレート72に邪魔されることなく、射出ユニット50を前進させて射出ノズル52をスプルーブッシュ66にタッチさせることができる。これにより、従来周知のようにして射出成形できる。また、次のようにしてパージすることもできる。すなわち、射出ノズル52の先端部が飛散防止プレート72よりも後方に位置するように射出ユニット50を後方へ駆動する。そうして、飛散防止プレート72を下方の作動位置へ駆動する。飛散防止プレート72は、射出ノズル52に邪魔されることなく作動位置へ下りる。射出ユニット50を所定量だけ前進させる。そうすると、射出ノズル52の先端部は、飛散防止プレート72に形成されているノズル先端挿通孔に73所定量だけ挿通される。挿通されると、ノズル先端挿通孔73は塞がれるので、固定プラテン61に形成されているノズル挿入孔65は、飛散防止プレート72により一応密閉されることになる。従来周知のように射出ユニット50のスクリュを駆動してパージする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のパージ塊飛散防止装置70の飛散防止プレート72は、作動位置と非作動位置とにスライド的に駆動可能になっているので、射出成形もパージもできる。特に、パージ塊飛散防止装置70が射出ユニット50と型締ユニット60との間に設けられているので、パージ塊が加熱シリンダ51の外周部に巻き付けられているバンドヒータ53、53、…を汚染することがない、という利点は認められる。しかしながら、改良すべき問題点も認められる。例えば、パージ塊飛散防止装置70が射出ユニット50と型締ユニット60との間に設けられているので、飛散防止プレート72を下方の作動位置へ駆動するときは、射出ノズル52の先端部が邪魔をしないように、飛散防止プレート72よりも後方に位置するように射出ユニット50を後方へ大きく待避させなければならない。少なくとも、固定プラテン61の厚み分は退避させなければならない。したがって、射出ユニット50の移動距離が長くなり、射出ベットを標準機よりも延長する必要がある。すなわち、射出成形機が大型化する欠点がある。射出ノズル52が長いときは、移動距離も長くなり、機械は更に大型化し製作コストは上昇する。このような理由により既存の射出成形機には簡単には適用できない。また、スプルブッシュ66側は何ら対策がとられていないので、スプル孔の孔径は小さいとしても、パージ塊はスプルを通って金型のキャビティに達し、スプルの内周面、キャビティの内周面等を汚染する可能性もある。高品質の成形品は得られない。
したがって、本発明は、安価で、既存の射出成形機にも容易に適用することができ、特に、パージ樹脂によるスプルブッシュ、キャビティ側の汚染が防止されるパージシャッタ装置を備えた射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、パージシャッタ装置は、型締ユニットの方に設けられる。すなわち、型締ユニットは、固定盤、該固定盤に取り付けられる固定側金型、可動盤に取り付けられている可動側金型、これらの盤あるいは金型を型開閉する型締装置等から構成されているが、本発明に係るパージシャッタ装置は、前記固定盤と前記固定側金型との間に配置される。
【0011】
第1の発明に係るパージシャッタ装置は、パージプレ−トと、該パージプレートに形成されているガイド溝にスライド的にガイドされて作動位置と非作動位置とを採るパージシャッタとから構成される。すなわち、パージプレ−トの方が固定盤に固定的に取り付けられ、パージシャッタの方は固定盤とパージプレ−トとの間でスライド的に駆動されるように構成されている。第2の発明に係るパージシャッタ装置は、パージシャッタからなっている。このパージシャッタは固定盤に形成されているガイド溝にガイドされて、作動位置と非作動位置とを採るようになっている。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、射出ユニットと、型締ユニットからなり、パージシャッタ装置が前記型締ユニットを構成している固定盤と該固定盤に取り付けられる固定側金型との間に設けられている射出成形機であって、前記パージシャッタ装置は、板状のパージプレ−トと、該パージプレートに形成されているガイド溝によりその一面がスライド的にガイドされるパージシャッタとからなり、前記パージプレートが前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に取り付けられると、前記パージシャッタは前記ガイド溝と前記金型取付面とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置とを採るように駆動されるように構成される。
【0013】
請求項2、3のそれぞれに記載の発明は、射出ユニットと、型締ユニットからなり、パージシャッタ装置が前記型締ユニットを構成している固定盤と該固定盤に取り付けられる固定側金型との間に設けられている射出成形機であって、前記パージシャッタ装置は、板状のパージシャッタからなり、前記パージシャッタが前記固定盤と固定側金型との間に組み込まれると、前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に形成されているガイド溝と、該ガイド溝に装着されるガイド栓とにより案内されて、また請求項3に記載の発明は、前記ガイド溝と前記固定側金型の被金型取付面とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置とを採るように駆動されるように構成される。
【0014】
請求項に記載の発明には、請求項1〜3のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが冷却水により冷却されるように構成され、請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが、表面処理され、そして請求項に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載の前記パージシャッタ装置のパージシャッタが作動位置にあるときは、前記射出ユニットの射出ノズルが金型にタッチできないように、または射出ノズルが金型にタッチしているときは前記パージシャッタ装置のパージシャッタを作動位置に駆動できないように、インターロック回路が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、請求項1に記載の発明によると、パージシャッタ装置は、パージプレートとパージシャッタとから構成され、パージプレートを固定盤の金型取付面に取り付けると、型締ユニットの固定盤と固定側金型との間に組み込まれるので、構造は極めて単純である。したがって、安価である。また、パージプレートを固定盤の金型取付面に取り付けるだけで、既存の射出成形機に容易に適用できる。しかも、パージシャッタはガイド溝と金型取付面とにより案内されて、固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置を採ることができるので、作動位置へ駆動してスプルしたがってキャビティに達しようとするパージ樹脂を遮断することができる効果が得られる。
【0016】
請求項2、3のそれぞれに記載の発明によると、パージシャッタからなっているので、構造はさらに簡潔で安価である。そして、固定盤と固定側金型との間に組み込まれると、前記固定盤の、前記固定側金型に面した金型取付面に形成されているガイド溝と、該ガイド溝に装着されるガイド栓とにより案内されて、そして請求項3に記載の発明によると、前記ガイド溝と前記固定側金型の被金型取付面とにより案内されて、前記固定盤に形成されている、スプルに連通した射出ノズル挿入孔の小径部を閉鎖する作動位置と解放する非作動位置を採ることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、既存の射出成形機に容易に適用できると共に、作動位置へ駆動してスプル、キャビティ等に達しようとするパージ樹脂を遮断することができる効果が得られる。
【0017】
請求項に記載の発明によると、パージシャッタは冷却されるようになっているので、また請求項5に記載の発明によると、表面処理されているので、前記のような効果に加えてパージ樹脂の付着を防止することができる効果が、請求項に記載の発明によるとインターロック回路が設けられているので、パージシャッタ装置あるいは射出ユニットを安全に作動させることができる効果がさらに得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形機を示す図で、その(ア)はパージシャッタが非作動状態の、射出ユニットと型締ユニットの実施の形態を部分的に示す正面図、その(イ)は図1の(ア)において矢視イ−イ方向に見た側面図、その(ウ)は図1の(イ)において上方から見た平面図、その(エ)は図1の(イ)において矢視エ−エ方向に見た断面図、そしてその(オ)はパージシャッタが動状態での要部を示す、図1の(エ)に相当する断面図である。
図2】本発明の第2、第3の実施の形態の要部を示す図で、その(ア)は第2の実施の形態に係るパージシャッタが非作動状態の要部を示す断面図、その(イ)は図2の(ア)において上方から見た平面図、その(ウ)は第3の実施の形態に係るパージシャッタが非作動状態の要部を示す断面図、その(エ)は図2の(ウ)において上方から見た平面図である。
図3】従来例を一部断面にして示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1の(ア)に一部が示されているように、本実施の形態に係る射出成形機は、射出ユニット1と型締ユニット10とから構成されている。射出ユニット1は、従来周知のように構成されている。すなわち、射出ユニット1は加熱シリンダ2からなっている。加熱シリンダ2の内部にはスクリュが回転方向と軸方向とに駆動自在に挿入され、外周部には複数本のバンドヒータ3、3、…が設けられている。そして、前方には射出ノズル4が設けられ、後方寄りには材料供給用のホッパが、最後端部にはスクリュ駆動装置が設けられている。このように構成されている加熱シリンダ2は、ノズルタッチ方向と離間する方向とに、すなわち軸方向に駆動される移動架台上に搭載されている。
【0020】
型締ユニット10は、従来周知のように、架台上に固定されている固定盤11、固定盤11と所定の間隔をおいて架台上に軸方向に移動自在に設けられている型締ハウジング、固定盤11と型締ハウジングとの間に設けられている4本のタイバ13、13、…、これらのタイバ13、13、…によって軸方向に案内移動される可動盤、固定盤11に取り付けられている固定側金型14、可動盤に同様に取り付けられている可動側金型16、可動盤を固定盤11に対して型閉じ方向あるいは型開き方向に駆動するトグル機構等から構成されている。
【0021】
本実施の形態によると、固定盤11には、該盤11を前後方向に貫通する形で射出ノズル挿入孔20が形成されている。この射出ノズル挿入孔20は、前方の小径部21と後方の大径部22とからなっている。小径部21の径は、射出ノズル4の径よりも大きく、射出ノズル4が小径部21の内周面に触れることなく、ノズルタッチ方向にも離間する方向にも駆動可能になっている。
【0022】
固定側金型14の、固定盤11に面した被金型取付面15には、従来周知のようにロケートリング23が嵌め込まれている。このロケートリング23は、図1の(ア)に示されている実施の形態では、固定側金型14の後面すなわち固定盤11に取り付けられるときの被金型取付面15よりも後方へ突き出ている。ロケートリング23の軸芯は、射出ノズル挿入孔20の小径部21の軸芯および射出ノズル4の軸芯と整合している。このように構成されているロケートリング23には、図1の(ア)には正確には示されていないが、スプルブッシュ24が取り付けられている。スプルブッシュ24は、周知のように、ランナ、ゲート等を介してキャビティ25に開口している。
【0023】
図1に示されている第1の実施の形態に係るパージシャッタ装置30は、板状のパージプレート31と、同様な板状のパージシャッタ32とから構成されている。そして、固定盤11の前面の、固定側金型14が取り付けられる金型取付面12と、固定側金型14の後面の、固定盤に取り付けられる被金型取付面15との間に設けられている。パージプレート31が、固定盤11の金型取付面12に取り付けられるので、図1の(イ)にも示されているように、その側面形状は固定盤11の側面形状と略同じ方形を呈し、その中心部に射出ノズル挿入孔20の小径部21の径と同径の透孔34が形成されている。この透孔34は、取り付けられると前記小径部21と整合する。また、パージプレート31の4角にはタイバー13、13、…貫通用の透孔35、35、…が形成され、パージプレート取付用のボルト挿通孔36、36、…も適宜形成されている。さらには、図には示されていないが、固定側金型14を固定盤11に取り付けるための取付手段も適宜設けられている。
【0024】
このように構成されているパージプレート31には、図1の(ア)において右側面すなわち後面には、パージシャッタ32を摺動的に案内するガイド溝38が形成されている。このガイド溝38の深さおよび幅は、パージシャッタ32の厚さおよび幅よりも、摺動的に案内できるように所定量だけ大きく形成されている。そして、図示の実施の形態では、前記ガイド溝38はパージプレート31の上縁から透孔34の下縁に達するように、上下方向に形成されている。このような形状のガイド溝38は、図1の(イ)、(ウ)に、その一部が示されている。
【0025】
本実施の形態に係るパージシャッタ装置30は、次のようにして製作あるいは組み立てられる。すなわち、固定側金型14を固定盤11から外しておく。パージシャッタ装置30のパージプレート31をパージシャッタ32側からタイバー13、13、…に挿通する。そうして、取付ボルト39、39、…をボルト挿通孔36、36、…に挿通して、固定盤11の金型取付面12側に予め形成されている雌ねじにねじ込む。これにより、パージシャッタ装置30は固定盤11に取り付けられる。取り付けると、パージシャッタ32は、ガイド溝38と固定盤11の金型取付面12とにより摺動的に案内されるようになる。固定側金型14を固定盤11に取り付ける。これにより、組み立てを終わる。組み立てが終わった状態が図1の(ア)に示されている。
【0026】
次に、上記実施の形態の作用について説明する。射出ユニット1により、従来周知のようにして射出材料を可塑化・計量する。パージシャッタ32を上方の非作動位置へ駆動する。そうすると、パージプレート31の透孔34は開く。射出ユニット1を前進させて、射出ノズル4を固定側金型14のロケートリング23にタッチさせる。そうして、加熱シリンダ2のスクリュを前方へ駆動して、型締めすることにより構成されているキャビティ25に計量されている射出材料を射出・充填する。冷却固化を待って可動側金型16を開く。型開に連動してエジェクタピンが突き出て、成形品が取り出される。以下同様にして成形品を得る。
【0027】
加熱シリンダ2内をパージするときは、射出ノズル4をパージシャッタ32より後方へ待避させる。そうすると、パージシャッタ32を下方の作動位置へ駆動できるようになる。作動位置へ駆動する。駆動した状態が図1の(オ)に示されている。これにより、パージプレート31の透孔34したがって、射出ノズル挿入孔20の小径部21はパージシャッタ32により閉鎖される。すなわち、射出ノズル挿入孔20の前方は密閉される。従来周知のように、スクリュを駆動してパージする。パージプレート31の透孔34は、パージシャッタ32により閉鎖されているので、パージ樹脂がロケートリング23、スプルブッシュ24、キャビティ25等に達することはない。すなわち、これらの部材がパージ樹脂により汚染されることはない。
【0028】
本実施の形態は、色々変形可能である。例えば、パージシャッタ32は手動的に駆動されるように説明されているが、サーボモータ、油圧モータ等で自動的に駆動するように実施することもできる。このとき、パージシャッタ32の上下限位置にリミットスイッチ等を配置し、また射出ノズル4が金型にタッチしているときはパージシャッタ32が作動位置へ駆動されないように、あるいはパージシャッタ32が作動位置にあるときは射出ノズル4が金型タッチ方向に駆動されないように、インターロック回路を設け自動運転もできる。また、上記実施の形態では、パージシャッタ32は上下方向に駆動されるようになっていて、上方が非作動位置、下方が作動位置になっているが、これとは逆に上方へ駆動されると作動位置、下方へ駆動されると非作動位置を採るように実施することもできる。このように実施すると、シャッタ駆動装置の駆動源が喪失したとき、パージシャッタ32は自重により下方の非作動位置へ降下し安全である。さらには、パージシャッタ32は、レイアウトにより上下方向以外の方向、例えば水平方向、斜め方向等にスライド可能に設けることもできる。
【0029】
パージシャッタ32の表面には、高温のパージ樹脂が付着しやすいので、パージシャッタ32に冷却管を配管し、パージ時には冷却水を循環させるように実施することもできる。あるいは、付着を防止するために非金属皮膜処理、化成処理、研磨等の表面処理をすることもできる。さらには、図1の(ア)において点線で示されているように、例えば特開2004−155133号、特開2013−216057号等に示されているようなパージカバーPKを加熱シリンダ2の先端部を覆うように設けることもできる。
【0030】
図2に本発明の第2、第3の実施の形態が示されている。前述した第1の実施の形態ではパージシャッタ装置30は、パージプレート31とパージシャッタ32の2部材から構成されているが、第2、3の実施の形態によると、パージシャッタ32’の1部材から構成されている。そのために、ガイド溝40は固定盤11の金型取付面12側に形成されている。第1実施の形態の構成要素と同じ要素には同じ参照数字を付け、同じような構成部材には同じ参照数字にダッシュ「’」を付けて、あるいは構成部材の一部は省略して重複説明はしない。
【0031】
第2の実施の形態によると、図2の(ア)に示されているように、固定側金型14に取り付けられているロケートリング23が被金型取付面15から後方へ、換言すると射出ノズル挿入孔20の方へ突き出ているので、固定盤11の金型取付面12側には深いガイド溝40が形成されている。すなわち、ガイド溝40は、図2の(イ)に示されているように、その底面に接しているパージシャッタ32’と、このパージシャッタ32’を案内する蓋状のガイド栓41が収まる深さになっている。ガイド栓41の厚みは、ロケートリング23の突出量よりも大きい。したがって、パージシャッタ32’はロケートリング23に邪魔されることなく、下方の作動位置へ駆動される。第3の実施の形態によると、図2の(ウ)に示されているように、ロケートリング23’は固定側金型14の被金型取付面15から後方へ突き出ていない。すなわち、実質的に同じ面になっている。したがって、ガイド溝40’は浅く、図2の(エ)に示されているように、パージシャッタ32’はガイド溝40’と固定側金型14の被金型取付面15とに案内されて非作動位置と作動位置とに駆動されることになる。第2、3の実施の形態が、第1の実施の形態と同様に作用することは明らかである。
【0032】
第1の実施の形態に係るパージシャッタ装置30を既存の射出成形機に適用すると、パージプレート31とパージシャッタ32との厚みが金型14、16の厚みに影響を及びすが、第2、3の実施の形態では固定盤11に溝40、40’を加工するだけで容易に適用できる。第2、3の実施の形態も、第1の実施の形態と同じように変形が可能なことは明らかであるので、重複説明はしない。
【符号の説明】
【0033】
1 射出ユニット 2 加熱シリンダ
4 射出ノズル 10 型締ユニット
11 固定盤 12 金型取付面
14 固定側金型 15 被金型取付面
20 射出ノズル挿入孔 21 小径部
23、23’ ロケートリング 24 スプルブッシュ
30 パージシャッタ装置 31 パージプレート
32、32’ パージシャッタ 34 透孔
38、40、40’ ガイド溝 41 ガイド栓
図1
図2
図3