(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050400
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】有機電子デバイスを製造する方法および有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20161212BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20161212BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/02
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-28381(P2015-28381)
(22)【出願日】2015年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-164129(P2015-164129A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年4月13日
(31)【優先権主張番号】10 2014 202 945.7
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】シュタネル ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】モック シュテファン
【審査官】
濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−138683(JP,A)
【文献】
特開2007−299616(JP,A)
【文献】
特開2013−229258(JP,A)
【文献】
特開2013−062497(JP,A)
【文献】
特開2011−065801(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0181914(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電子デバイス(10)を製造する方法であって、
電気伝導性材料を有する基板層(12;64)を提供するステップ(110)と、
フレキソグラフ印刷によって、パッシベーション領域(16)に、パッシベーション層(14;52)を配置するステップ(120)と、
有機半導体材料(18)を配置するステップ(130)と、
前記パッシベーション層(14;52)と前記有機半導体材料(18)が前記基板層(12;64)と電極層(22)の間に配置されるように、前記電極層(22)を配置するステップ(140)と、
を備え、
前記パッシベーション層(14;52)を配置するステップ(120)は、
パッシベーション材料(52)を提供するステップと、
前記パッシベーション材料(52)を、印刷フォームシリンダ(58)上に配置されたフレキシブル印刷フォーム(59)の持ち上げられた領域上に配置するステップと、
前記フレキシブル印刷フォーム(59)を、前記基板層(12;64)またはその上に配置された層に接触させるステップと、
を備え、
前記パッシベーション材料(52)は、樹脂またはポリマーであって、
前記方法は、UV照射を用いて前記樹脂またはポリマーを硬化させるステップを更に備える、
方法。
【請求項2】
前記有機電子デバイス(10)は、有機発光ダイオードである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パッシベーション層(14;52)を配置するステップ(120)は、前記パッシベーション層(14;52)が、前記基板層(12;64)から前記電極(22)に向かって、少なくとも1−20μmの伸張を有するように実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、ロールツーロール法であって、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置する前に、前記基板層(12;64)を第1のロール(66)から一度に提供するステップと、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置した後に、前記基板層(12;64)を第2のロール(68)上に一度に受け取るステップと、
を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記基板層(12;64)を提供するステップ(110)は、金属膜を提供するステップまたは透明な電気伝導性基板を提供するステップのいずれかを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、ロールツーロール法であって、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置する前に、前記基板層(12;64)を第1のロール(66)から一度に提供するステップと、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置した後に、前記基板層(12;64)を第2のロール(68)上に一度に受け取るステップと、
を更に備え、
前記基板層(12;64)を提供するステップ(110)は、透明な電気伝導性基板を提供するステップを備える、
請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
有機電子デバイス(10)を製造する方法(100)であって、前記方法は、ロールツーロール法であって、
前記方法は、
電気伝導性材料を有する基板層(12;64)を提供するステップ(110)と、
フレキソグラフ印刷によって、パッシベーション領域(16)に、パッシベーション層(14;52)を配置するステップ(120)と、
有機半導体材料(18)を配置するステップ(130)と、
前記パッシベーション層(14;52)と前記有機半導体材料(18)が前記基板層(12;64)と電極層(22)の間に配置されるように、前記電極層(22)を配置するステップ(140)と、
を備え、
前記パッシベーション層(14;52)を配置するステップ(120)は、
パッシベーション材料(52)を提供するステップと、
前記パッシベーション材料(52)を、印刷フォームシリンダ(58)に配置されたフレキシブル印刷フォーム(59)の持ち上げられた領域上に配置するステップと、
前記フレキシブル印刷フォーム(59)を、前記基板層(12;64)またはその上に配置された層と接触させるステップと、
を備え、
前記パッシベーション材料(52)は、樹脂またはポリマーであって、
UV照射を用いて前記樹脂またはポリマーを硬化させるステップと、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置する前に、前記基板層(12;64)を第1のロール(66)から一度に提供するステップと、
前記パッシベーション層(14;52)を前記基板層(12;64)上に配置した後に、前記基板層(12;64)を第2のロール(68)上に一度に受け取るステップと、
を更に備え、
前記基板層(12;64)を提供するステップ(110)は、透明な電気伝導性基板を提供するステップを備えた、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイスを製造する方法およびこの方法によって製造された有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
広範な電子デバイスの製造方法において、例えば、有機太陽電池、有機発光ダイオード(OLED)または有機電界効果トランジスタ(OFET))のような特定の有機電子デバイスで、それぞれのデバイスの層の特定の表面領域をパターン化するまたはパッシベーション化(不動態化)する要求がある。
【0003】
非特許文献1は、例えば、フレキソグラフ印刷法(非特許文献2)によって、電気伝導性金属ペーストによる格子構造を製造する方法を記載している。非特許文献3は、フレキソグラフ印刷を用いて、電気伝導性金属ペーストによるアンテナを製造する方法を記載している。
【0004】
非特許文献4は、太陽電池の製造に対して、表面の湿潤を改善するために、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)‐以下、PEDOT:PSSと略す‐により、N-オクタノールによってデバイス表面をプリウェッティングすることを記載している。プリウェッティングは、フレキソグラフ印刷法によって実行される。
【0005】
非特許文献5は、特定のディウェッティングを用いて、PEDOT:PSSの自己配向性に対して、強い疎水性材料を印刷することによって、有機電界効果トランジスタ(OFET)を製造するフレキソグラフ印刷法を記載している。
【0006】
非特許文献6は、フレキソグラフ印刷によって、センサ素子に対して、疎水性バリア構造を製造する方法を記載している。
【0007】
広範な有機発光ダイオードは、現在、ポリマーまたはプラスチック基板上に配置することができている。プラスチック基板は、バリア層から離れた陽極層を備える。陽極層は、例えば、透明な伝導性酸化物(TCO)の様な透明な伝導層とすることができる。透明な伝導層によるバリア膜のパターン化は、加算法または減算法によって実行することができる。
【0008】
有機電子デバイスの層の特定の表面領域のパターン化またはパッシベーション化は、加算法または減算法によって実行することができる。
【0009】
加算法においては、パッシベーション化するとき、パッシベーション化された領域において電流が陽極から陰極へ流れることを防止するために、例示的に陽極上に絶縁材料を塗布することができる。減算法においては、電流が流れることを防止するために、パッシベーション化されるまたはパターン化される領域において、例示的に陽極を除去することができる。
【0010】
非特許文献7は、陽極がレーザーによって部分的に侵食され、従って有機発光ダイオードの発光エリアが互いから分離される減算法を記載している。しかしながら、このプロセスは、残りのアクティブ素子または領域を汚染する可能性がある粒子化を引き起こす。
加えて、このプロセスは、TCOコーティングのみをバリア膜にダメージを与えずに侵食することができるので、プラスチックバリア膜に対してほとんどロールツーロールコンパチブルでない。これは、例えば、基板のウェブガイド、基板の厚さ公差、バリア層の厚さ交差およびTCOコーティングまたはレーザーの焦点深度のような全てのプロセスパラメータに対して高い必要条件に結果としてなる。
【0011】
加算法において、陽極の部分的なパッシベーションは、パターン化された誘電体を堆積させることによってなすことができる。非特許文献8は、パターン化された誘電体を堆積させるフォトリソグラフプロセスを記載している。しかしながら、フォトリソグラフプロセスは複雑であり、高価であり、ロールツーロールプロセスとコンパチブルでないまたは単に不十分にコンパチブルである。
【0012】
いわゆるインクジェット印刷プロセスは、また、特にパッシベーション化される大きなエリアに対して、ほとんどロールツーロールコンパチブルでもなく、非効率的である。この方法の間、ミスアドレスされたドロップは、付加的にデバイスのアクティブ素子または領域に到達し、それをまたはその機能を妨げる可能性がある。加えて、低粘性の液体しかインクジェット法を用いて印刷することができない。
【0013】
スクリーン印刷において、印刷フォームは、パッシベーション化される領域とパッシベーション化されない領域の両方の領域に接触し、従って、非特許文献8に例示的に記載されているように、粒子によってこれらをスクラッチするまたは汚染する可能性があるアクティブ素子にも接触する。さらにまた、スクリーン印刷法は、ロータリースクリーン印刷法を除いて、ほとんどロールツーロールコンパチブルでない。
【0014】
凹版印刷法はロールツーロールコンパチブルであるが、ここで用いる印刷フォームは、アクティブ素子に接触し、粒子によってそれをスクラッチするまたは汚染する可能性があり、従ってデバイスの機能を妨げる。加えて、印刷シリンダからこすり落されないパッシベーション残留物は、アクティブ素子を汚染する可能性がある。凹版印刷法については、低粘性の印刷物質と吸収性の基板が大抵用いられる。この種の方法は、プラスチックまたは金属膜のような粘性のある非吸収性の基板とすることができるパッシベーション層には適していない。
【0015】
図5は、凹版印刷法によってパターン化された基板を備えるOLED 1005の写真を示し、ここで、パッシベーション領域は、文字“COMEDD”と“R2flex”および発光領域1006a〜cの間の(暗い)領域として認知される。OLED 1005は、汚れたOLED発光エリア(アクティブ領域)1006a〜cを有し、それはパッシベーション残留物によるアクティブ素子の汚染によって生じる。
【0016】
それゆえに、有機電子デバイスにおいて、高スループットと、高信頼性のパッシベーションと、デバイスのアクティブ領域の高品質を可能とする、領域をパッシベーション化する方法が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Yu, J.-S., Kim I., Kim, J.-S., Jo, J., Larsen-Olsen, T. T., Sondergaard, R. R., Hosel, M., Angmo, D., Jorgensen M., Krebs, F. C.: Silver front electrode grids for ITO-free all printed polymer solar cells with embedded and raised topographies, prepared by thermal imprint, flexographic and inkjet roll-to-roll processes. In: Nanoscale 4, Stovring 2012: 6032-6040
【非特許文献2】Kipphan, H.: Handbook of Print Media, Technologies and Production Methods. Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, New York 2001
【非特許文献3】Siden, J., Nilsson, H.-E.: Line width limitations of flexographic-screen- and inkjet printed RFID antennas. In: Antennas and Propagation Society Inter-national Symposium, Honolulu 2007
【非特許文献4】Krebs, F.C., Fyenbo, J., Jorgensen M.: Product integration of compact roll-to roll processed polymer solar cell modules: methods and manufacture using flexographic printing, slot-die coating and rotary screen printing. In: Journal of Materials Chemistry 20, London 2010: 8994-9001
【非特許文献5】Schmidt, G.: Oberflachenspannungsstrukturiertes Drucken zur Herstellung polymerelektronischer Bauelemente. Dissertation, Chemnitz 2011
【非特許文献6】Olkkonen, J., Lehtinen, K., Erho, T.: Flexographically Printed Fluidic Structures in Paper. In: Anal.Chem. 82 (24), Urbana-Champaign 2010: 10246-10250
【非特許文献7】Karnakis, D., Kearsley, A., Knowles, M.: Ultrafast Laser Patterning of OLEDs on Flexible Substrate for Solid-state lightning. In: JLMN-Journal of Laser Micro/Nanoengeniiering Vol. 4, No. 3, Osaka 2009: 218-223
【非特許文献8】Philipp, A., Hasselgruber, M., Hild, O. R., May, C.: Substratstrukturierung fur organische Leuchtdioden mittels Siebdruck: Technologietag-Siebdruck, Landshut 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、アクティブ領域のダメージおよび/または汚染が低くなるように、そしてそれが高いスループットレートで製造できるように、有機電子デバイス、特に有機発光ダイオードを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、請求項1または8にかかる方法および請求項9にかかる有機電子デバイスによって達成される。
【0020】
本発明の実施形態は、フレキソグラフ印刷によってパッシベーション層が広範な陽極と陰極の間のパッシベーション領域に配置される、有機電子デバイスを製造する方法を提供する。加えて、本方法は、有機半導体材料を配置するステップと、パッシベーション層と有機半導体材料が基板層と電極層の間に配置されるように電極層を配置するステップとを備える。
【0021】
本実施形態の利点は、フレキソグラフ印刷(法)によってアクティブ領域の汚染を最小化するまたは防止することができ、パッシベーション領域の外側の間隔保持領域において印刷フォームを基板から間隔を置いて配置することによって、これらの間隔保持領域において基板と印刷フォームのコンタクトを防止することができ、従って、アクティブエリアまたは領域のダメージを最小化するまたは防止することができるという事実である。本方法は、この方法を用いたときの製造スループットを高くすることができるように、ロールツーロール法として実現することができる。加えて、本方法は、連続法として実現することができる。
【0022】
他の実施形態は、フレキソグラフ印刷法によって有機発光ダイオードを製造する方法を提供する。
【0023】
これらの実施形態の利点は、有機発光ダイオードの発光領域が均質な発光エリアを呈することができるという事実である。
【0024】
本発明の更なる実施形態は、基板またはベース電極が金属膜である有機電子デバイスを製造する方法を提供する。
【0025】
本実施形態の利点は、TCO基板に対して、金属膜の電気伝導率、熱伝導率、機械的ストレス耐性および/またはバリア特性を増加することができるという事実である。
【0026】
更なる有利な実施形態は、従属クレームの主題である。
【0027】
本発明の好ましい実施態様は、以下の添付図面を参照して引き続いて詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態にかかる、有機デバイスを製造する方法の概略フローチャートを示す。
【
図2】本発明の実施形態にかかる、ベース電極、パッシベーション領域において基板から離れて有機半導体材料と間隔を置くパッシベーション層を備える有機発光ダイオードの概略断面側面図を示す。
【
図3】発明の方法によって製造することができる、パターン化された有機発光ダイオードの平面図を示す。
【
図4】本発明の実施形態にかかる、フレキソグラフ印刷法の概略図を示す。
【
図5】従来技術にかかる、凹版印刷法によってパターン化された基板と、パッシベーション残留物によって汚染された発光エリアを備える、パターン化された有機発光ダイオードの写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して更に詳細に述べる前に、同一の要素、目的および/または構造またはそれらの等しい機能または等しい効果は、異なる実施形態において図示されるこれらの要素の記述が相互に交換可能であるまたは互いに適用可能であるように、図面を通じて同じ参照符号によって提供されることが指摘される。
【0030】
引き続いて、用語「基板層」は、ベース電極を備える層を意味する。基板層は、例示的に、アルミニウム、鋼、銀、銅またはその他の金属でできている金属膜とすることができる。基板層は、例えば金属膜として実現するとき、ベース電極とすることができる。あるいは、基板層は、例えば、TCO層または金属層のような、透明な電気伝導層を有する(おそらく透明な)高分子バリア膜または透明な電気伝導層を有するフレキシブルガラスとすることもできる。基板層が透明な電気伝導層を有する高分子バリア膜またはフレキシブルガラスであるとき、基板層は透明な電気伝導基板とすることができる。透明な電気伝導層は、TCO層、ナノワイヤおよび/またはカーボンナノチューブ(CNT)とすることができる。透明な電気伝導層または金属層は、ベース電極として用いることができる。例示的に、ベース電極は銀を含むことができる。銀は、例示的に、蒸着またはスパッタリング(陰極蒸着)によって基板層上に配置することができる。基板層は、ベース電極(例示的にTCOによるプラスチック膜)のキャリアとベース電極自体(例示的に金属膜)の両方とすることができる。用語「ベース電極」および「基板層」は、引き続いて同義的に用いられ、相互に交換可能となると解釈される。
【0031】
図1は、有機デバイスを製造する方法100の概略フローチャートを示す。方法100は、電気伝導材料を有する基板層が提供される第1のステップ110を備える。
【0032】
方法100は、フレキソグラフ印刷によって、すなわちフレキソグラフ印刷法によって、パッシベーション領域にパッシベーション層が配置される第2のステップを含む。パッシベーション領域は、基板層の表面領域とすることができ、その結果、基板層は、パッシベーション領域においてパッシベーション層でカバーされる。あるいは、または加えて、例えば、有機または無機の導電性のまたは半導体の機能材料のような材料層を基板上に配置することも可能であり、その結果、パッシベーション領域は機能材料の表面領域をカバーすることができる。
【0033】
方法100は、有機半導体材料が配置される第3のステップを備える。有機半導体材料は、例示的に基板層のエリア上に完全にまたは部分的に配置することができ、その結果、有機電子材料は、基板層のアクティブ領域において、それにまたはベース電極に接触し、パッシベーション領域において、パッシベーション層によって基板層から間隔を置いて配置される。
【0034】
方法100は、電極層が配置され、その結果、パッシベーション領域において、パッシベーション層と有機半導体材料が基板層と電極層の間に配置される第4のステップ140を備える。電極層は、1つまたはいくつかの対電極を備えることができる、すなわち(対電極の)全てのエリア上にまたは異なる領域において電極層に電位を印加することができる。言い換えれば、電極層は、一体化されたまたはいくつかのピースとしてなすことができる。電極層がいくつかのピースをなすように実装されるとき、電位は、電極層の1つまたはいくつかの小領域に印加することができ、それはいくつかの対電極が一緒にまたは別々に駆動することができることを意味する。
【0035】
有機半導体材料は、アクティブ領域において陽極と陰極の間を流れる電流を許容することができる。方法100によって製造されたデバイスは、OLED、有機太陽電池またはOFETとすることができる。
【0036】
ベース電極と電極層の間の極性に基づいて、ベース電極または電極層は陽極として、それぞれの反対側の電極層またはベース電極は陰極として用いることができる。このことは、基板層の電気伝導性材料が陽極と陰極の両方を形成することができることを意味する。パッシベーション層は、陽極または陰極に配置することができる。言い換えれば、、パッシベーション層は基板層または電極層に配置することができ、その結果、第3のステップ130は第2のステップ120に追従することができる、または、第2のステップ120は第3のステップ130に追従することができる。
【0037】
パッシベーション層は、例示的に、樹脂、ポリマーまたはプラスチック、またはパッシベーションペーストとすることができる。パッシベーション層は、1μm以上、15μm以上、または20μm以上の層厚を呈することができる。
【0038】
高い粘性のパッシベーションペーストは、堆積された、すなわち基板層または有機電子材料上に配置された後に「フローする」、従ってピンホールを閉じるまたは封止するおよび/または均一な厚さの層および/または平滑な層を形成する、すなわち低い表面粗さのみを呈することを可能とする。平均表面粗さは、5-1000nm、50-800nm、または200-500nmの範囲とすることができる。
【0039】
パッシベーションペーストは、例示的に、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂とすることができ、および/または20℃において500と5000、600と2500または1000と3000m/pasの間の範囲の粘性を呈することができ、フレキソグラフ印刷法の間、例えば、1-100N/mm、5-50N/mmまたは7-20N/mmの、好ましくは10N/mm±10%の範囲の接触圧を用いて基板上に配置することができる。あるいは、パッシベーションペーストのパッシベーション層は、高分子材料を備えることができる。
【0040】
あるいは、または加えて、パッシベーションペーストは、例示的に紫外線(UV)光下の樹脂またはポリマーの硬化とすることができる。あるいは、樹脂またはポリマーは、アニーリング温度に達したとき、硬化することもできる。アニーリング温度は、例えば、50℃、120℃、または400℃以上とすることができる。 開始状態において、硬化する前に、樹脂またはポリマーは、例示的に硬化の間に樹脂またはポリマーから逃れ、結果的に硬化する溶剤を備えることができる。
【0041】
これまで、パッシベーション層の配置に対して、従来技術から知られるように、フレキソグラフ印刷法を実行する装置のアニロックスローラのスクリーンパターンは、印刷結果においても可視とすることができ、完全にシールされた層を形成することを防止することができることから、当業者はフレキソグラフ印刷法と異なる方法を用いていた。
【0042】
パッシベーション層のパッシベーション材料は、前述の特徴に基づいて「フローする」ことができ、従って均一の層厚を形成することを可能とする。
【0043】
例示的にアンテナ構造によるインクジェット法で使用されているような電気伝導性材料を用いて印刷することとは対照的に、パッシベーション領域におけるボイドは、陰極と陽極の間の短絡に結果としてなる可能性があり、他方では導電性材料におけるローカルなボイドは増加した線抵抗に結果としてなる可能性がある。増加した線抵抗は、例示的にデバイスの効率を減少させる可能性があるが、短絡は、結果として完全にデバイスを故障させる可能性があり、その結果、封止されたまたは閉止されたまたは完全な表層に関する必要条件は、導電層に対してよりもパッシベーション層に対して、より高くなる可能性がある。
【0044】
言い換えれば、方法100として、フレキソグラフ印刷法においてパッシベーション層を印刷することは、例えば、フレキソグラフ印刷方法においてパッシベーション層を印刷することによって、非導電性パッシベーション材料(絶縁層)による広範なフレキシブル有機電子デバイスのロールツーロールパターン化を可能とする。
【0045】
この方法の利点は、これが加算法であり、基板層のベース電極、例示的に陽極(高分子バリア膜または金属膜上のTCO層のような)が、減算法とは対照的に、ダメージを受けることなく残ることである。
【0046】
特に、陽極が例示的にレーザーによって部分的に侵食される減算法とは対照的に、方法100は、基板層が金属膜であるときに依然として適用することができるという利点を有する。
【0047】
特に、方法100は、電子デバイスの大きなエレアのパッシベーション化に対して用いることができる。解像度、すなわちパッシベーション化エリアを配置する位置は、例示的に50μm、200μm、または1000μmとすることができる。この方法は、フレキソグラフ印刷法でパッシベーション層を印刷することによって、ロールツーロールプロセスにおいて広範なフレキシブル有機電子デバイスを製造するために用いることができる。
【0048】
図2は、ベース電極12と、パッシベーション領域16において有機半導体材料18をベース電極12から間隔を置いて配置するパッシベーション層14とを備える有機発光ダイオード10の概略断面側面図である。パッシベーション層14は、例示的にステップ120によって配置することができる。対電極層22は、有機半導体材料18上に配置される。ベース電極12、パッシベーション材料14、有機半導体材料18および対電極層22は、カプセル化層24によってカバーされる。カプセル化層24は、例えば機械的接触、または対電極層22、半導体材料18および/またはパッシベーション層14の外部オブジェクトとの接触による機械的損傷を防止するように、および/または、それらを水および酸素の浸透から保護するように構成される。
【0049】
有機電子デバイス10のベース電極12は、第1の電気接点26aに接続されている。有機電子デバイス10の対電極層22の対電極22aおよび22bは、電気接点26bおよび26cに接続され、それらは電気接点26bに接続される対電極層22の部分(対電極)22aと電極26aまたはベース電極12の間に第1の電位を印加することができるように対電極層22に結合されている。第2の電位は、電気接点26cと、ベース電極12に結合される電極層22の領域(対電極)22bに印加することができる。
【0050】
これは、有機発光ダイオード10が、領域28aと領域28bにおいて、電気接点26bと26cによって、独立に駆動することができ、電気接点26aに印加することができる電圧が、領域28aおよび28bに対する共通の(参照)電位を形成することを意味する。電位差の符号に基づいて、ベース電極12の電気伝導材料を例示的に陽極とし、電極層22を有機デバイス10の陰極とする、またはその逆とすることができる。
【0051】
透明な電気伝導層を有する金属膜または高分子バリア膜または透明な電気伝導層を有するフレキシブルガラスは、有機電子デバイスに対する電気的基本接点を形成することができる。ベース電極12を有する基板または基板層は、ロールツーロール法との互換性を可能とするために、フレキシブルとすることができる。例示的にその上に堆積される有機電子(半導体)層の機能は、電子導電性有機材料と正孔導電性有機材料の間の異質接合(ヘテロジャンクション)によって可能となる。アクティブエリアを定義するために、電気的基本接点は、所々で、絶縁層(パッシベーション)によって、特に有機電子対接点から分離される。絶縁層、すなわちパッシベーション層に対する必要条件は、それが完全性を呈する、すなわち、基本的な対接点の効果的な分離(絶縁)を確実にするために、ピンホールを有さないことである。加えて、パッシベーション層が、引き続くコーティングとカプセル化のプロセスをできるだけまたは全く妨げないために、低い粗さと小さい厚さを呈することが必要であるかもしれない。あるいは、例えば有機電子デバイスの予め定められたセットアップ高さを達成するために、高い厚さが望ましいかもしれない。
【0052】
好ましくは、例えばアクティブ領域または素子のような非パッシベーション化領域は、制限のない機能を確実にするために、機械的にダメージを受けない、粒子が混入しない、またはパッシベーション材料によって汚染されない。
【0053】
図3は、発明の方法、例えば方法100によって製造することができるパターン化された有機発光ダイオード30の平面図を示す。
図5の有機発光ダイオード105とは対照的に、有機発光ダイオード30は、発光エリア上に、均質な発光エリア32a-cと最小数の欠陥およびパターン化残留物を備える。
【0054】
言い換えれば、
図3は、フレキソグラフ印刷法によってパターン化された基板を備える有機発光ダイオード30を示す。肉眼によって、アクティブなOLED発光エリアにおいて、いかなる欠陥もパターン化残留物も認識することができない。
【0055】
図4は、フレキソグラフ印刷法の概略図を示す。パッシベーション材料52は、ドクターブレードバス54に配置され、それを用いたアニロックスローラ56上に投与される。アニロックスローラ56によって、パッシベーション材料52は、印刷フォームシリンダ58の持ち上げられた領域上あるいは印刷フォームシリンダ58上に配置されるフレキシブル印刷フォーム59の持ち上げられた領域上に堆積または配置される。
【0056】
対印刷シリンダ62は、印刷フォームシリンダ58に隣接して配置されている。例示的に
図2の基板層またはベース電極12とするまたはそれを備えることができる基板64は、印刷フォームシリンダ58と対印刷シリンダ62の間に移送される。フレキシブル印刷フォーム59と基板64間の機械的接触に基づいて、パッシベーション材料52は、パッシベーション領域における基板64上に配置される。パッシベーション領域は、少なくとも部分的に、印刷フォームシリンダ58の持ち上げられた位置あるいはフレキシブル印刷フォーム59上に配置されたエリアによって定義することができる。フレキシブル印刷フォーム59は、持ち上げられた領域に配置されたパッシベーション材料52を、部分的にまたは完全に、基板64に転写することができる。これは、フレキシブル印刷フォーム59と基板64の間の接触がなされた後に、パッシベーション材料52の残留物がフレキシブル印刷フォーム59上に残る可能性があることを意味する。
【0057】
図示されたフレキソグラフ印刷法は、ロールツーロール法として実施することができ、基板64がフレキシブル印刷フォーム59の持ち上げられた領域に接触する前に、例えば第1のロール66から基板64を提供する(アンロールする)ことができるように実行することができる。パッシベーション材料52が基板64上に配置された後であって、可能な定着時間の後またはUVライトを用いたパッシベーション材料の照射の後、基板を受け取る、すなわち第2のロール68に引き取るまたは巻き取ることができる。あるいは、フレキソグラフ印刷法は、基板64の個々の広範なウェブが、印刷フォームシリンダ58と対印刷シリンダ62の間の領域にガイドされるように実行することもでき、ウェブは、更なる処理ステップに対して、例えば、個々の層において、積み重ねる方法でまたは互いに隣接して提供することができる。
【0058】
言い換えれば、
図4は、フレキシブルな有機電子デバイスに対して、パターン化された方法で絶縁層を転写するフレキソグラフ印刷法を示し、印刷材料(パッシベーション材料52)は、ドクターブレードチャンバによって全てのエリア上にスクリーニングされるローラー(アニロックスローラ56)上に投与され、パターン化されたパッシベーション層は、例えば、印刷フォームシリンダ58またはフレキシブル印刷フォーム59が基板64に接触するそれらの位置において電気的基本接点を有する、透明な伝導性の酸化物基板のような、基板64上に転写される。
【0059】
ここで有利な点は、基板64またはその上に配置される電極が不変のままである事実である。
【0060】
ここで記載された方法(フレキソグラフ印刷法)の更なる利点は、シールされた層を基板64上に転写することができるということである。シールされた層は、より小さい厚さとより大きな厚さの両方を呈することができる。厚さと粗さは、アニロックスローラ56のスクリーニング、パッシベーション材料52の粘性のような物理的特性および乾燥パラメータによって影響される可能性がある。例えば、アクティブのままである領域(印刷されない領域)において、印刷フォームシリンダ58またはフレキシブル印刷フォーム59と基板64との間の接触は防止される。これは、アクティブ素子のダメージまたはアクティブ素子の粒子またはパッシベーション材料52からの/による混入または汚染が低減されるまたは防止されることを意味する。印刷フォームシリンダ58またはフレキシブルな印刷フォーム59は基板64に接触するが、フレキシブルなまたは弾性のある印刷フォーム59は基板64に対して低減された応力を可能とする。
【0061】
さらにまた、フレキソグラフ印刷法は、非常に効率的なロールツーロール法として実施することができる。これは、有機電子デバイスを、高スループット、すなわち高速で、かつ安価に製造することができることを意味する。特に、プレートまたはスリーブの形状において、安価で高速交換できる印刷フォームに基づいて、例えば、用いる製造装置は、少ない時間および/またはコスト因子で適合させることができる。
【0062】
いくつかの態様が装置との関連において記載されているが、これらの態様は、装置のブロックまたはデバイスが対応する方法ステップまたは方法ステップの特徴をも表していると理解されるように、対応する方法の記載をも表していると理解される。同様に、方法ステップに関連してまたは方法ステップとして記述された態様は、対応するブロックまたは詳細または特徴の記載をも表している。
【0063】
前述された実施形態は、本発明の原理の具体例を示すだけである。ここで記載された構成および詳細の修正および変更は、他の当業者にとって明らかであると理解される。従って、本発明は、単に以下の特許請求の範囲のスコープによって制限され、実施形態の記載および記述を用いて本願明細書において示された特定の詳細によっては制限されないことを意図する。