(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6050448
(24)【登録日】2016年12月2日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】自動車用の電気接続モジュール
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20161212BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20161212BHJP
H01R 31/06 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 620Z
H01R31/06 P
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-169008(P2015-169008)
(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-59266(P2016-59266A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2015年9月2日
(31)【優先権主張番号】10 2014 113 024.3
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ナセル アブ ダッカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュミット
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−064649(JP,A)
【文献】
特開2010−212960(JP,A)
【文献】
特開平10−277028(JP,A)
【文献】
特開2000−299151(JP,A)
【文献】
特開平09−093012(JP,A)
【文献】
米国特許第06196851(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(40)の電気構成要素(10)用の電気接続モジュール(12)であって、
前記電気構成要素(10)に設けられた接続区域(22)に固定して接続することができる接続開口を有する接続ハウジング(16)を備え、
前記接続ハウジング(16)が少なくとも1つのケーブル開口(18)を有し、前記ケーブル開口(18)は前記接続開口に対して側方に設けられ、前記ケーブル開口(18)を通して引き回される電気接続ライン(14)が、前記電気構成要素(10)の前記接続区域(22)に設けられた少なくとも2つの電気接点(36)に接続されるようになっている電気接続モジュール(12)において、
前記電気接続ライン(14)を前記電気構成要素(10)に対して異なる方向に引き回すために、前記接続ハウジング(16)を異なる回転位置で前記接続区域(22)に固定して接続することができることを特徴とする、電気接続モジュール(12)。
【請求項2】
前記接続ハウジング(16)が正方形の底面を有し、前記接続ハウジング(16)を4つの異なる回転位置で前記接続区域(22)に接続することができることを特徴とする請求項1に記載の電気接続モジュール。
【請求項3】
前記接続ハウジング(16)が直方体の形状に構成されることを特徴とする請求項2に記載の電気接続モジュール。
【請求項4】
前記ケーブル開口が前記接続ハウジング(16)の1つの側面に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項5】
前記接続区域(22)が、前記接続ハウジング(16)の形状に従って凹部(34)として構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項6】
前記接続区域(22)が様々な側縁部(38)を有し、前記電気接点(36)がそれぞれ、前記側縁部(38)のうちの2つに対して異なる距離を空けて配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項7】
前記電気接点(36)が互いに対してずらした位置で配置され、前記電気接点(36)がそれぞれ、2つの隣接し合う側縁部(38)に対して異なる距離を空けて配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項8】
前記接続区域(22)と前記接続ハウジング(16)との間に封止要素が配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項9】
前記電気接点(36)が、前記接続区域(22)に対して突出する接点ピンとして構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気接続モジュール。
【請求項10】
自動車(40)用の電気回路配置構成(10)であって、電気パワーエレクトロニクス構成要素が収容されたハウジング(26)と、前記パワーエレクトロニクス構成要素との電気接点を形成するための請求項1〜8のいずれか一項に記載の電気接続モジュール(12)とを有する電気回路配置構成(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の電気構成要素用の電気接続モジュールに関する。電気構成要素には少なくとも2つの電気接点を有する接続区域が設けられ、この電気接続モジュールは、前記接続区域に接続することができる接続開口を有する接続ハウジングを備え、この接続ハウジングは、少なくとも1つのケーブル開口を有し、ケーブル開口は、接続開口に対して接続ハウジングの側方に設けられ、ケーブル開口を通して引き回される電気接続ラインは上記電気接点に接続される。
【0002】
また、本発明は、自動車用の電気回路配置構成であって、電気パワーエレクトロニクス構成要素が収容されたハウジングと、パワーエレクトロニクス構成要素との電気接点を形成するための電気接続モジュールとを有する電気回路配置構成に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車エンジニアリングおよび自動車用のパワーエレクトロニクスの分野において、一般に、例えば高圧構成要素、パワーエレクトロニクスバッテリなどの電気構成要素を高圧ケーブルおよびケーブルラグに電気的に接続し、電気接続点を個別の高圧カバーによって覆って短絡の危険を最小限にすることが知られている。上記との関連で、通常、高圧ケーブルを側方に延ばし、相応して、高圧カバーの周囲における必要な設置空間を減少させる。
【0004】
高圧カバーおよび側方ケーブルガイド機構を有する上記高圧接触形成配置構成は、例えば(特許文献1)から知られている。
【0005】
既知の高圧接触形成配置構成の欠点は、各高圧構成要素に関して個別の接続モジュールが開発されており、これらの接続モジュールに関しては、自動車での設置位置に従って高圧ケーブルの引回しが予め定められており、このようなケーブル引回しは特定の設置形態でのみしか使用できず、その結果、自動車での異なる用途および設置位置に使用することは可能でないか、または高い開発費をかけなければ可能でないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,741,466 B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、様々な用途にフレキシブルに使用することができる、自動車の電気構成要素用の電気接続モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、冒頭で述べたタイプの電気接続モジュールにおいて、接続ラインを電気構成要素に対して異なる方向に引き回すために、接続ハウジングを異なる回転位置で接続区域に接続することができるようにすることによって実現される。
【0009】
さらに、上記目的は、冒頭で述べたタイプの電気回路配置構成において、本発明による電気接続モジュールによって実現される。
【0010】
接続ハウジングが、異なる回転位置で接続区域に接続可能であることにより、それに対応する異なる方向に、電気接続ラインを電気構成要素または接続区域から延ばすことが可能となる。その結果、設置位置および用途に応じてコンパクトな電気ケーブル配線が可能となり、変更された設置位置に接続ハウジングを適合させるための追加の設計費は必要ない。その結果、例えば振動または締まりなどに関する追加の試験をなくすことが可能となり、かつ、電気接続モジュールを様々な用途にフレキシブルに使用することができるので、上記電気構成要素に関する開発費を大幅に削減することができる。
【0011】
したがって、本発明の目的が完全に実現される。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、接続ハウジングは正方
形の底面を有する。ここで接続ハウジングは4つの異なる回転位置で接続区域に接続することができる。
【0013】
その結果、低い技術的経費で、接続ハウジングの4つの回転位置を実現することができ、接続ラインを電気構成要素に対して4つの異なる方向に延ばすことができる。
【0014】
上記との関連で、接続ハウジングが直方体の形態で構成されることが特に好ましい。
【0015】
これにより、接続ラインを電気構成要素に対して異なる方向に延ばすことができる、接続ハウジングの特にコンパクトで単純な設計が可能となる。
【0016】
また、ケーブル開口が接続ハウジングの側面に設けられることも好ましい。
【0017】
その結果、低い技術的経費で、電気接続ラインを接続ハウジングから側方に延ばすことができる。その結果、全体としてコンパクトな設計が可能となる。当然、接続ハウジングは複数の接続開口を有することもでき、接続ラインのいくつかを接続ハウジング内に個別に延ばして、電気接点との接触を形成することができる。
【0018】
また、接続区域が、接続ハウジングの形状に従って凹部として構成されることも好ましい。
【0019】
その結果、接続ハウジングを少なくとも部分的に接続区域内に埋め込むことができる。その結果、接続区域への固定接続が可能となり、コンパクトな設計を実現することができる。
【0020】
また、接続区域が様々な側縁部を有し、電気接点がそれぞれ、側縁部のうちの2つに対して異なる距離を空けて配置されることも好ましい。
【0021】
その結果、電気接点がそれぞれ、側縁部、したがって接続開口から異なる距離にあるので、異なる回転位置での上記接点への電気接続ラインの不正確なケーブル配線または接続を避けることができる。
【0022】
また、電気接点が互いに対してずれた位置に配置され、電気接点がそれぞれ、2つの隣接し合う側縁部に対して異なる距離を空けて配置されることも好ましい。
【0023】
その結果、電気接続点がそれぞれ、側縁部、したがって接続開口から異なる距離にあるので、異なる回転位置において電気接続点の配置が入れ替わることを避けることもできる。
【0024】
また、接続区域と接続ハウジングとの間に封止要素が配置されることも好ましい。
【0025】
その結果、低い技術的経費で液密電気接続を実現することができる。
【0026】
上記との関連で、接続ハウジングがねじによって接続区域に取り付けられ、接続ハウジングと接続区域との間に封止要素がねじ接続によって固定されることが特に好ましい。
【0027】
その結果、低い技術的経費で電気構成要素を封止することが可能となる。
【0028】
また、電気接点が、接続区域から突出する接点ピンとして構成されることも好ましい。
【0029】
その結果、特に単純で費用対効果の高い取付けが可能となる。取付けは、好ましくはねじ接続およびケーブルラグによって行われる。その結果、低い技術的経費で接触形成配置構成を通して高電流を送ることが可能となる。
【0030】
全体として、本発明による電気接続モジュールは、接続ハウジングを異なる回転位置で接続区域に固定することができ、その結果、対応する回転位置で接続ラインを電気構成要素から延ばすことができるので、自動車における電気構成要素の異なる設置位置および電気接続ラインの異なる引回し配置構成を実現することができる。再構成または交換部品を使用する必要はなく、回転位置のみを変更すればよいので、相応して、追加の試験および再構成をしなくても済むようになる。その結果、自動車において電気構成要素をフレキシブルに使用することが可能となり、相応して開発費およびコストを削減することができる。
【0031】
当然、上述した特徴および後述する特徴は、それぞれの指定した組合せのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく他の組合せでも、または単独でも使用することができる。
【0032】
本発明の例示的実施形態を図面に示し、以下の説明でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】電気接続モジュールを有する自動車用の電気構成要素の概略側面図である。
【
図2】異なる回転位置での電気接続モジュールを有する電気構成要素の概略平面図である。
【
図3】電気接点形成配置構成を説明するための電気接続モジュールの概略断面図である。
【
図4】電気接続モジュールを備える電気構成要素に関する例示的な用途としての、ドライブトレインを有する自動車の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に、自動車の電気構成要素が概略側面図で示されており、全体が参照番号10で表されている。電気構成要素10は、好ましくは、自動車内の高圧構成要素を作動させるための高圧パワーエレクトロニクスまたはパワーインバータなどとして構成される。
【0035】
電気構成要素10は、電気接続ライン14と電気構成要素10の電気接点との間の電気接点を形成するための電気接続モジュール12を有する。電気接続モジュール12は接続ハウジング16を有する。接続ハウジング16には複数のケーブル開口18が形成され、ケーブル開口18を通して電気接続ライン14が引き回される。接続ハウジング16は正方形又は長方形に構成され、接続開口20を有する。接続開口20は、電気構成要素10の接続区域22に接続される。ケーブル開口18は、接続ハウジング16の側面24に設けられる。これにより、電気接続ライン14を接続ハウジング16から側方に引き回して、電気構成要素の上方の対応する設置空間を小さくすることが可能である。
【0036】
電気構成要素10は、一般に、カバー28を有するハウジング26を有する。ここで、カバー28には凹部が設けられ、凹部に、または凹部内に接続ハウジング16が固定される。
【0037】
ケーブルラグによって電気接続ライン14に電気的に接続することができるピンの形態での電気接点が凹部内に設けられる。
【0038】
接続ハウジング16は、電気構成要素10の接続区域22に異なる回転位置で固定することができる。その結果、接続ハウジング16の設置位置に応じて電気接続ライン14をパワーエレクトロニクスから異なる方向に延ばすことが可能となる。相応して、電気構成要素10の設置空間および設置位置に応じて、省スペースでかつ個別に、対応する電気負荷に接続することが可能となる。
【0039】
追加の構成要素なしで、接続ハウジング16をカバー28または接続区域22に異なる設置位置または回転位置で固定可能であることにより、追加の試験または再構成の必要なしに、自動車において電気接続モジュール12をフレキシブルに使用することが可能となる。
【0040】
図2において、電気接続モジュール12を有する電気構成要素10が概略平面図で示されている。同一の構成要素は同一の参照番号で示されており、ここでは特有の特徴のみを説明する。
【0041】
図2において、接続ハウジング16は、矢印30で示されるように4つの異なる回転位置で示されている。電気接続ライン14は、4つの異なる回転位置に従って4つの異なる方向に引き回され、回転位置に従って14、14’、14’’、14’’’で示されている。接続ハウジング16は、4つの異なる回転位置において、いずれの場合にもねじ32を用いて、電気構成要素10のハウジングまたは接続区域22に取り付けることができる。その結果、単に接続ハウジング16を回転させることによって、電気接続ライン14の異なる引回し配置構成が可能となる。
【0042】
図3に、電気接続モジュール12の概略断面図を平面図で示す。同一の要素は同一の参照符号で示されており、ここでは特有の特徴のみを説明する。
【0043】
電気接点36が中に配置される正方形又は長方形の凹部34が、ハウジング26のカバー28に設けられる。電気接点36は、カバー28の表面に対して垂直に設けられたピンまたはボルトとして構成される。電気接点36は、互いにずらした位置で凹部34内に配置される。その結果、電気接点36は、凹部34の外縁部38の1つからそれぞれ異なる距離に位置し、同時に、各電気接点36は、隣接し合う外縁部38から異なる距離に配置される。その結果、電気接続ライン14は、それぞれの回転位置において、ケーブル開口18から、電気接続点に対してそれぞれ異なる距離に位置するので、接続ハウジング16の異なる回転位置での電気接続ライン14の不適切な接触の形成を避けることができる。これにより、確実な電気接点が形成可能となる。
【0044】
したがって、全体として、電気構成要素10の電気接点のフレキシブルかつ単純な取付けまたは形成を一般に保証することができ、その結果、電気接続ライン14の異なる引回し配置構成と共に、電気構成要素10の異なる設置位置が可能となる。
【0045】
図4に、全体を参照番号40によって示す自動車における電気構成要素10の例示的な適用例を示す。
【0046】
自動車40は、一般にドライブトレイン42を有する。ドライブトレイン42は、駆動輪46R、46Lを駆動するために利用可能な駆動力を生成するための電気機械44を有する。電気機械44は、ドライブシャフト48を介してトランスミッション50に接続される。トランスミッション50は、ディファレンシャル52を介して駆動輪46R、46Lに駆動トルクを伝達する。
【0047】
電気機械44は、電気接続ライン14を介して電気構成要素10に接続される。電気構成要素10は、この特定の実施形態ではパワーインバータ10として構成され、直流電圧源54すなわちバッテリ54によって供給される直流電圧を変換して、交流電圧および交流電流で電気機械44を作動または駆動させる。電気構成要素10は、電気接続モジュール12および電気接続ライン14を介して電気機械44に接続される。その結果、相応して電気機械44に電気エネルギーを供給することができる。
【0048】
接続ハウジング16の設置位置または取付け位置が様々に変更可能であることにより、自動車40および電気機械44の形態ならびに電気構成要素10の設置位置に応じて、省スペースの最適な様式で接続ライン14を電気構成要素10から延ばし、電気機械44に直接接続させることができる。
【0049】
当然、電気接続モジュール12は、パワーインバータを電気機械44に接続するための用途のみに限定されず、自動車40での任意の高圧電気構成要素に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 電気構成要素
12 電気接続モジュール
14 電気接続ライン
16 接続ハウジング
18 ケーブル開口
20 接続開口
22 接続区域
24 接続ハウジングの側面
26 ハウジング
28 ハウジングのカバー
30 回転方向
32 ねじ
34 凹部
36 電気接点
38 側縁部
40 自動車
42 ドライブトレイン
44 電気機械
46L、46R 駆動輪
48 ドライブシャフト
50 トランスミッション
52 ディファレンシャル
54 バッテリ